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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062038
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】軟質ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/48 20060101AFI20240430BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20240430BHJP
   C08G 18/18 20060101ALI20240430BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20240430BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240430BHJP
【FI】
C08G18/48 004
C08G18/76 014
C08G18/18
C08G18/00 H
C08G18/48 033
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169782
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】高田 佳尚
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DC25
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG09
4J034DG15
4J034DG16
4J034DG23
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC61
4J034HC71
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB05
4J034KC17
4J034KD02
4J034KD03
4J034KD07
4J034KD11
4J034KD12
4J034KE02
4J034NA01
4J034NA02
4J034NA03
4J034NA06
4J034NA07
4J034NA08
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB01
4J034QB14
4J034QB15
4J034QC01
4J034RA03
4J034RA10
4J034RA19
(57)【要約】
【課題】耐摩耗性と沈水性が両立する軟質ポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】軟質ポリウレタンフォームは、ポリオール成分、イソシアネート成分、触媒、発泡剤、整泡剤を含む原料混合物を反応させてなる軟質ポリウレタンフォームであって、ポリオール成分は、重量平均分子量が4000以上6000以下、エチレンオキサイド含有率が70質量%以上であるポリエーテルポリオール(I)と、重量平均分子量が2000以上4000以下、エチレンオキサイド含有率が20質量%以下であるポリエーテルポリオール(II)と、を含み、(I)と(II)の割合が(I)/(II)の質量比で65/35以上85/15以下であり、重量平均分子量の差が1000以上2000以下であり、イソシアネート成分が、TDIであり、触媒がアミン触媒を含み、アミン触媒の割合が、ポリオール成分100質量部に対して、0.5質量部以上1.5質量部以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分、イソシアネート成分、触媒、発泡剤、整泡剤を含む原料混合物を反応させてなる軟質ポリウレタンフォームであって、
前記ポリオール成分は、
重量平均分子量が4000以上6000以下、エチレンオキサイド含有率が70質量%以上であるポリエーテルポリオール(I)と、
重量平均分子量が2000以上4000以下、エチレンオキサイド含有率が20質量%以下であるポリエーテルポリオール(II)と、を含み、
前記ポリエーテルポリオール(I)と前記ポリエーテルポリオール(II)の割合が、ポリエーテルポリオール(I)/ポリエーテルポリオール(II)の質量比で65/35以上85/15以下であり、
前記ポリエーテルポリオール(I)と前記ポリエーテルポリオール(II)の重量平均分子量の差が1000以上2000以下であり、
前記イソシアネート成分が、TDIであり、
前記触媒がアミン触媒を含み、前記アミン触媒の割合が、前記ポリオール成分100質量部に対して、0.5質量部以上1.5質量部以下である、軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記発泡剤は、水のみからなり、割合がポリオール成分100質量部に対して、3質量部以上5質量部以下である、請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記ポリエーテルポリオール(I)の官能基数が2.5~3.5であり、
前記ポリエーテルポリオール(II)の官能基数が2.5~3.5である、請求項1または2に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軟質ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭や工場施設、産業施設等から排出される排水の処理として、好気性微生物を利用した好気的処理、嫌気性微生物を利用した嫌気的処理などの微生物処理が知られている。これらの微生物処理において、より処理効率を高めるために微生物を多孔質体などに担持させることがある。微生物の担持に使用される多孔質体としては、ポリオレフィン系発泡体やポリウレタン系発泡体などの高分子を多孔質化した樹脂発泡体が知られている。
【0003】
樹脂発泡体を用いた微生物処理では、例えば、樹脂発泡体を浄化槽等に設けられた曝気槽中に投入・配設し、樹脂発泡体の内部に微生物を繁殖・担持させ、浄化槽を撹拌することで樹脂発泡体に保持された微生物と水中に溶解している酸素により、排水中の有機物を水と炭酸ガスに分解する。この処理において、樹脂発泡体を用いる理由としては、表面積が大きく、微生物が樹脂発泡体のセルの表面に生物膜を効率よく形成しやすいため、排水の処理能力を高めることができることが挙げられる。
【0004】
樹脂発泡体のポリウレタン系発泡体としては、気泡が連通している軟質ポリウレタンフォームが良く用いられている。しかしながら、軟質ポリウレタンフォームは、一般的に疎水性が強く、水に馴染み難い上、セル内に空気を保持しているために、浄化槽に樹脂発泡体を投入してもなかなか水中に沈みにくく、樹脂発泡体に水が浸漬して攪拌により排水中を旋回しだすまで長い時間、例えば数日間、を要することがあった。生物処理法による排水処理において、担体が排水中に浸漬しないことには、担体の樹脂発泡体に微生物が定着せず、安定した排水の処理性能が得られない。そのため、樹脂発泡体を水へ投入した時点から浸漬するまでに要する時間(以下沈水性と記載することがある)をより短縮することが求められていた。
【0005】
このような問題を解決する樹脂発泡体として、本出願人は、特許文献1において、ポリオール成分として特定の平均分子量でエチレンオキサイド含有率が60%以上であるポリエーテルポリオールと、特定の平均分子量でエチレンオキサイド含有率が20%以下のポリエーテルポリオールを特定の割合で使用し、イソシアネート成分としてジフェニルメタンジイソシアネートを使用した、沈水性の高い、軟質ポリウレタンフォームを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-57327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の軟質ポリウレタンフォームは、沈水性は十分であるものの、水中での耐摩耗性に乏しくなり、耐久性が低い傾向がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、耐摩耗性と沈水性が両立する軟質ポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、以下の構成を含む。
(1)ポリオール成分、イソシアネート成分、触媒、発泡剤、整泡剤を含む原料混合物を反応させてなる軟質ポリウレタンフォームであって、
前記ポリオール成分は、
重量平均分子量が4000以上6000以下、エチレンオキサイド含有率が70質量%以上であるポリエーテルポリオール(I)と、
重量平均分子量が2000以上4000以下、エチレンオキサイド含有率が20質量%以下であるポリエーテルポリオール(II)と、を含み、
前記ポリエーテルポリオール(I)と前記ポリエーテルポリオール(II)の割合が、ポリエーテルポリオール(I)/ポリエーテルポリオール(II)の質量比で65/35以上85/15以下であり、
前記ポリエーテルポリオール(I)と前記ポリエーテルポリオール(II)の重量平均分子量の差が1000以上2000以下であり、
前記イソシアネート成分が、TDIであり、
前記触媒がアミン触媒を含み、前記アミン触媒の割合が、前記ポリオール成分100質量部に対して、0.5質量部以上1.5質量部以下である。
【0010】
(2)前記発泡剤は、水のみからなり、割合がポリオール成分100質量部に対して、3質量部以上5質量部以下である、と好ましい。
【0011】
(3)前記ポリエーテルポリオール(I)の官能基数が2.5~3.5であり、
前記ポリエーテルポリオール(II)の官能基数が2.5~3.5である、と好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、耐摩耗性と沈水性が両立する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る軟質ポリウレタンフォームの製造例を示すフロー図。
図2】本発明の一実施形態に係る軟質ポリウレタンフォームの沈水性を説明するための参考図であり、(a)は時間測定開始時、(b)は時間測定中、(c)時間測定終了時を示す参考図。
図3】本発明の一実施形態に係る軟質ポリウレタンフォームの水中での強制摩耗試験を説明するための参考図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、ポリオール成分、イソシアネート成分、触媒、発泡剤、整泡剤を含む原料混合物を反応させてなる。
【0015】
(ポリオール成分)
本発明の軟質ポリウレタンフォームに係るポリオール成分は、重量平均分子量が4000以上6000以下、エチレンオキサイド含有率が70質量%以上であるポリエーテルポリオール(I)と、重量平均分子量が2000以上4000以下、エチレンオキサイド含有率が20質量%以下であるポリエーテルポリオール(II)と、を含み、ポリエーテルポリオール(I)とポリエーテルポリオール(II)の割合が、ポリエーテルポリオール(I)/ポリエーテルポリオール(II)の質量比で65/35以上85/15以下であり、ポリエーテルポリオール(I)とポリエーテルポリオール(II)の重量平均分子量の差が1000以上2000以下である。
【0016】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、このようにポリオール成分として、異なる2種類のポリエーテルポリオールを含み、より具体的には、重量平均分子量が相対的に高く、かつエチレンオキサイド含有率が高いポリエーテルポリオール(I)と、重量平均分子量が相対的に低く、かつエチレンオキサイド含有率が低いポリエーテルポリオール(II)とを特定の割合で用いる。
【0017】
ここで、ポリエーテルポリオールは、例えば、ポリオールなどの開始剤にアルキレンオキシドを付加重合して得られる重合体である。開始剤に用いられるポリオールとしては、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、芳香族ジアミン、ジエチレントリアミン、ソルビトール、スクロースなどが挙げられる。アルキレンオキシドとしては、プロピレンオキサイドなどの炭素数3以上のアルキレンオキシド、エチレンオキサイドが挙げられる。開始剤に用いられるポリオールを選択することで所望の官能基数のポリエーテルポリオールが得られる。また、ポリエーテルポリオールのエチレンオキサイド含有率(略称:EO含有率)は、アルキレンオキシドに由来する構造中のエチレンオキサイドに由来する構造の含有率である。
【0018】
本発明の軟質ポリウレタンフォームに係るポリエーテルポリオール(I)は、重量平均分子量が4000以上6000以下であり、エチレンオキサイド含有率が70質量%以上であるポリエーテルポリオールである。一方、ポリエーテルポリオール(II)は、重量平均分子量が2000以上4000以下であり、エチレンオキサイド含有率が20質量%以下であるポリエーテルポリオールである。また、ポリエーテルポリオール(I)とポリエーテルポリオール(II)の重量平均分子量の差は1000以上2000以下である。
【0019】
ポリエーテルポリオール(I)およびポリエーテルポリオール(II)のエチレンオキサイド含有率が前述の範囲にあると、発泡体の崩壊が生じにくく、発泡する際に収縮が起こりにくい。
【0020】
ポリエーテルポリオール(I)としては、例えば、ダウ・ケミカル日本株式会社製のCP-1421(重量平均分子量5000、官能基数3、EO含有率78質量%)、万華化学ジャパン株式会社製のF-3140(重量平均分子量4000、官能基数3、EO含有率75質量%)を使用することができる。また、ポリエーテルポリオール(II)としては、例えば、AGC株式会社製のEL-3030(重量平均分子量3000、官能基数3、EO含有率0質量%)を使用することができる。
【0021】
ポリエーテルポリオール(I)とポリエーテルポリオール(II)の重量平均分子量の差が1000以上2000以下である。重量平均分子量の差が1000未満では、十分な沈水性を得られない。このようなポリエーテルポリオールの組み合わせとしては、例えば、前述のポリエーテルポリオール(I)およびポリエーテルポリオール(II)のうち、ダウ・ケミカル日本株式会社製のCP-1421(重量平均分子量5000)とAGC株式会社製のEL-3030(重量平均分子量3000)との組み合わせ、万華化学ジャパン株式会社製のF-3140(重量平均分子量4000)とAGC株式会社製のEL-3030(重量平均分子量3000)との組み合わせなどが挙げられる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0022】
また、ポリエーテルポリオール(I)とポリエーテルポリオール(II)の割合は、ポリエーテルポリオール(I)/ポリエーテルポリオール(II)の質量比で65/35以上85/15以下であれば限定されないが、70/30以上80/20以下であると好ましい。ポリエーテルポリオール(I)とポリエーテルポリオール(II)の割合がこの範囲外にあると、発泡体の崩壊が生じる。
【0023】
ポリエーテルポリオール(I)およびポリエーテルポリオール(II)の官能基数はそれぞれ適宜選択されるが、ポリエーテルポリオール(I)の官能基数は2以上8以下であると好ましく、2以上4以下であるとより好ましく、2.5以上3.5以下であると更に好ましく、3であると特に好ましい。また、ポリエーテルポリオール(II)の官能基数は2以上8以下であると好ましく、2.5以上3.5以下であるとより好ましく、3であると特に好ましい。
【0024】
なお、ポリオール成分としては、本発明の効果を損なわない程度であれば、一般に軟質ポリウレタンフォームに用いられている公知のポリオールを併用することができる。例えば、架橋剤となり得る低分子量ポリオール等を併用することができる。
【0025】
(イソシアネート成分)
本発明の軟質ポリウレタンフォームに係るイソシアネート成分は、トルエンジイソシアネート(略称:TDI)である。イソシアネート成分として、TDIを用いることで、本発明の軟質ポリウレタンフォームが低密度化できる点で優れる。
【0026】
TDIは、2,4-TDIおよび2,6-TDIの異性体のいずれか一方またはその混合物を用いることができる。混合物を用いる場合にはその割合を適宜選択することができる。例えば、市販の2,4-TDIおよび2,6-TDIの混合物(8:2)を用いることができる。
【0027】
イソシアネート成分におけるイソシアネートインデックスは、80以上130以下である。本実施形態において、イソシアネート成分におけるイソシアネートインデックスが80以上130以下であることにより、フォーム状態が良好となる。イソシアネートインデックスは、イソシアネート成分に含まれるイソシアネート基と、ポリオール成分及び発泡剤の水等に含まれる活性水素の当量比(イソシアネート基/活性水素)を算出することで特定することができる。
【0028】
(触媒)
本発明の軟質ポリウレタンフォームに係る触媒は、アミン触媒を含む。アミン触媒は、ポリオール成分とイソシアネート成分との反応を触媒しうるアミン化合物であれば特に限定されず適宜選択されるが、例えば、トリエチルアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエチレンジアミン(TEDA)、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、N-メチルモルホリン、ジメチルアミノメチルフェノール、イミダゾール等の3級アミン化合物を用いることができる。アミン触媒は、単独または2種以上を併用することができる。また、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、アミン触媒と併用して、スタナスオクトエート、オクチル酸第一スズ、ジラウリル酸ジブチル第二スズ等のスズ化合物、ニッケルアセチルアセトネート等のニッケル化合物等の金属系触媒を用いることができる。これらの触媒は、単独または2種以上を併用することができる。中でも、触媒は、アミン触媒およびスズ化合物を含むと好ましく、3級アミン化合物およびスズ化合物を含むとより好ましくい。
【0029】
アミン触媒の割合は、ポリオール成分100質量部に対して、0.5質量部以上1.5質量部以下である。アミン触媒の割合がこの範囲より少ないと発泡体が崩壊し良好な軟質ポリウレタンフォームが得られない。また、アミン触媒の割合がこの範囲より多いと反応が早すぎて正常な軟質ポリウレタンフォームが得られない。
【0030】
(発泡剤)
本発明の軟質ポリウレタンフォームに係る発泡剤は、ポリウレタン樹脂を発泡させることができるものであれば特に限定されず、公知のものが使用できる。発泡剤としては、例えば、低沸点不活性溶剤としてトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のフロン系化合物、ジクロロメタン、ペンタン等の低沸点化合物、水、酸アミド、ニトロアルカン等の反応によって炭酸ガスを発生する化合物、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の熱分解によってガスを発生する化合物などを用いることができる。これらの発泡剤は、単独または2種以上を併用することができる。これらの中でも、水および/またはジクロロメタンが好ましく、水とジクロロメタンの併用がより好ましく、水を単独で使用すること、すなわち発泡剤が水のみからなることが特に好ましい。発泡剤として水のみを用いると、軟質ポリウレタンフォームの耐摩耗性が優れ、環境負荷となるジクロロメタン等が不使用となるので、環境負荷低減の観点で好ましい。
【0031】
発泡剤の割合は適宜選択されるが、例えばポリオール成分100質量部に対して1.5質量部以上10.0質量部以下である。特に、発泡剤が水である場合、水の割合がポリオール成分100質量部に対して、3質量部以上5質量部以下であると好ましい。水の割合がこの上限より少ないと、良好な軟質ポリウレタンフォームが得られる傾向にあり、水の割合がこの下限より多いと、軟質ポリウレタンフォームの耐摩耗性が優れる傾向にある。
【0032】
(整泡剤)
本発明の軟質ポリウレタンフォームに係る整泡剤は、泡の状態を調節することができるものであれば特に限定されず、公知のものが使用できる。例えば各種シロキサン-ポリエーテルブロック共重合体等のシリコーン系整泡剤を使用することができる。中でもシリコーンオイル等の界面活性剤が好ましい。
【0033】
整泡剤の割合は適宜選択されるが、例えばポリオール成分100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下、好ましくは1質量部以上5質量部以下、より好ましくは1.5質量部以上3質量部以下である。整泡剤の割合が高いと整泡効果が得られ易く、割合が低いと通気量や圧縮残留ひずみが良好になる傾向がある。
【0034】
(他の成分)
本発明の軟質ポリウレタンフォームには、ポリオール成分、イソシアネート成分、触媒、発泡剤、および整泡剤に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により更に他の成分を用いることができる。他の成分としては、着色剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、希釈剤などが挙げられる。
【0035】
(軟質ポリウレタンフォーム)
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、図1に示すように、ポリオール成分と、触媒、発泡剤、整泡剤、必要による他の成分等のイソシアネート成分を除いた成分とを混合し、その後イソシアネート成分と混合して原料混合物を調製し、その原料混合物を反応させ、発泡・硬化させることで本発明の軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【0036】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、沈水性および耐摩耗性に優れているので、微生物を担持する用途、特に、下水処理用途などの水中で微生物を担持する担体用途に有用である。
【0037】
本明細書において、沈水性とは、水上に軟質ポリウレタンフォームを投入してから、軟質ポリウレタンフォームが水中へ沈む性質を指す。沈水時間が短いほど沈水性が高く、沈水時間が600秒以下であれば良好である。600秒を超えると沈水時間が長いため排水処理効率が悪くなる。本発明の軟質ポリウレタンフォームの沈水性は600秒以下である為、処理槽に投入した際に、早急に排水に浸漬し、排水処理効率が向上する。沈水性としては400秒以下が好ましく、より好ましくは300秒以下である。
【0038】
軟質ポリウレタンフォームの耐摩耗性は、重量残存率により評価される。本発明の軟質ポリウレタンフォームの重量残存率は、4時間撹拌後において80%以上であり、より好ましくは、8時間撹拌後において80%以上である。軟質ポリウレタンフォームの重量残存率が80%未満であると、十分な量の微生物を担持することができなくなり、排水処理効率が悪くなる虞があり、新たな軟質ポリウレタンフォームの投入が必要となる。
【0039】
(実施例)
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
軟質ポリウレタンフォームは、以下の試料を用いて製造した。
【0041】
<ポリオール成分>
ポリオールA:重量平均分子量5000、官能基数3、EO含有率78質量%のポリエーテルポリオール(ダウ・ケミカル日本株式会社製、CP-1421)
ポリオールB:重量平均分子量4000、官能基数3、EO含有率75質量%のポリエーテルポリオール(万華化学ジャパン株式会社製、F-3140)
ポリオールC:重量平均分子量5100、官能基数2、EO含有率70質量%のポリエーテルポリオール(株式会社ADEKA製、PR-5007)
ポリオールD:重量平均分子量3360、官能基数3、EO含有率75質量%のポリエーテルポリオール(三井化学株式会社製、EP-505S)
ポリオールE:重量平均分子量2950、官能基数2、EO含有率50質量%のポリエーテルポリオール(第一工業製薬株式会社製、ハイフレックス604)
ポリオールF:重量平均分子量3000、官能基数3、EO含有率0質量%のポリエーテルポリオール(AGC株式会社製、EL-3030)
【0042】
<イソシアネート成分>
イソシアネートA:NCO含有率が42.8%のTDI(2,4-TDI/2,6TDI=80/20)(三井化学株式会社製、コスモネートT-80)
イソシアネートB:NCO含有率が31.5%のポリメリックMDI(東ソー株式会社製、MR-200)
【0043】
<触媒>
触媒A:第三級アミン触媒、トリエチレンジアミン33%のジプロピレングリコール溶液(東ソー株式会社製、TEDA L-33)
触媒B:ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(東ソー株式会社製、TOYOCAT ETS)
触媒C:スタナスオクトエート(日東化学株式会社製、ネオスタンU-28)
【0044】
<整泡剤>
整泡剤:シリコーン系界面活性剤(ダウ・東レ株式会社製、SF2904)
【0045】
<発泡剤>
発泡剤A:水(イオン交換水)
発泡剤B:ジクロロメタン
【0046】
軟質ポリウレタンフォームの物性は以下の方法で測定し、評価した。
【0047】
(沈水性)
沈水時間は以下の手順で測定した。
(1)10mm×10mm×10mmにカットした軟質ポリウレタンフォームのブロック1を、水2(水道水)を入れた容器にやさしく投入し(図2(a))、時間測定を開始する。
(2)軟質ポリウレタンフォームは、下面から水が浸み込み、担体が徐々に水中へ沈む(図2(b))。
(3)その後、軟質ポリウレタンフォームが完全に水中へ沈む(図2(c))までの時間を測定した(時間測定終了)。
【0048】
(フォーム状態)
軟質ポリウレタンフォームを所定長さに切り出し、この切り出した試験片を24時間放置した後、軟質ポリウレタンフォーム裁断面を目視により観察し、フォーム状態を以下の通り評価した。
良好:正常なフォームが形成され、セルの大きさが均一で整っている。
崩壊:発泡時の樹脂強度が弱く、発泡時にフォームが沈み、フォームの形状が保てない。
【0049】
(重量残存率)
(1)図3に示すように、500mLビーカーに#100の耐水サンドペーパー5を隙間なく貼付け、水温約23℃の水2(水道水)を500mL入れる。
(2)重量を測定した10mm×10mm×10mmにカットした軟質ポリウレタンフォームのブロック1をこのビーカー中に100mL投入する。
(3)ミキサー4で、回転数400rpmで撹拌を開始し、4時間撹拌後および/または8時間撹拌後の重量を測定した。重量は、ブロック1を水で静かに何度がすすいで、粉末等の固形物が流出しないことを確認した後、脱水し、60℃に設定した真空オーブン中で4時間加熱乾燥させた後、測定した。
(4)初期重量に対する重量残存率(%)を以下の式で求めた。
重量残存率(%)=(4、8時間撹拌後重量)÷(初期重量)×100
本試験では、水容器の内面に耐水サンドペーパー5を貼り付けることで、通常の水処理における軟質ポリウレタンフォームの劣化を加速して測定している。
【0050】
(密度)
軟質ポリウレタンフォームを、スキン層を除き、縦380mm×横380mm×厚み50mmの寸法に裁断してブロック体を作製した。このブロック体を用い、JIS K 7222:2005に準拠して、軟質ポリウレタンフォームの見掛け密度(Kg/m)を測定した。
【0051】
(40%圧縮硬さ)
軟質ポリウレタンフォームの40%圧縮硬さ(N)は、JIS K 6400-2A法に準拠して測定した。
【0052】
(通気量)
軟質ポリウレタンフォームの通気量(ml/cm/s)は、JIS K 6400-7B法(フラジール式通気量)に準拠して測定した。
通気量が、例えば3ml/cm/s以上であると、軟質ポリウレタンフォームを微生物処理に用いた場合に有機物の分解性に優れる。
【0053】
(実施例1~14、比較例1~9)
表1~表4に示す割合でポリオール成分、触媒、発泡剤、整泡剤を混合し、その後イソシアネート成分と混合して原料混合物(ポリウレタンフォーム用組成物)を調製し、この原料混合物を、常温、大気圧下において、自然発泡させ、ウレタン反応により軟質ポリウレタンフォームを得た。得られた軟質ポリウレタンフォームのフォーム性状を観察し、重量残存率、沈水性、密度、40%圧縮硬さ、通気量を測定した。結果を表1~表4に示す。なお、比較例1~4についてはフォーム形状が良好でないため、測定ができなかった。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
表1~表4に示す結果から以下の事がわかる。
実施例1~4、比較例1、2
アミン触媒(TEDA L-33)の割合が、ポリオール成分100質量部に対して、0.5質量部以上1.5質量部以下である実施例1~4と範囲外である比較例1、2を比較すると、範囲外である比較例1、2ではフォーム性状が良好とならない。
【0059】
実施例12、13、比較例3、4、8、9
ポリオール成分のポリエーテルポリオール(I)とポリエーテルポリオール(II)の割合が、ポリエーテルポリオール(I)/ポリエーテルポリオール(II)の質量比で65/35以上85/15以下である実施例12、13に比べて、範囲外の比較例3、4ではフォーム性状が良好とならず、比較例8では重量残存率が十分ではない。また、比較例9では十分な沈水性を得られない。
【0060】
実施例14、比較例7
ポリオール成分のポリエーテルポリオール(I)が重量平均分子量4000以上であって、ポリエーテルポリオール(II)の重量平均分子量との差が1000以上である実施例14に比べて、差が500未満の比較例7では、十分な沈水性を得られない。
【0061】
比較例5、6
イソシアネート成分がMDIである比較例5、6では、沈水性はあるが、重量残存率が十分ではない。
【0062】
実施例5~11
発泡剤が水のみの実施例5~11では、発泡剤の割合がポリオール成分100質量部に対して、3質量部以上5質量部以下であれば、特に耐摩耗性に優れ、8時間後の重量残存率80%以上となる。
【0063】
以上の結果から、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、高い沈水性を示すので、水処理担体として用いれば、水処理担体を処理槽に投入した後、速やかに浸漬し、微生物の定着段階へ速やかに移行することができることがわかる。また、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、更に、高い耐摩耗性を両立することがわかる。
【0064】
なお、本願発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0065】
1:軟質ポリウレタンフォームのブロック
2:水
3:水中への浸漬部
4:ミキサー
5:サンドペーパー
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-07-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
ここで、ポリエーテルポリオールは、ポリオールなどの開始剤にアルキレンオキシドを付加重合して得られる重合体(すなわち、ポリオールのアルキレンオキシド付加重合体(ポリオキシアルキレンポリオール))である。開始剤に用いられるポリオールとしては、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、芳香族ジアミン、ジエチレントリアミン、ソルビトール、スクロースなどが挙げられる。アルキレンオキシドとしては、プロピレンオキサイドなどの炭素数3以上のアルキレンオキシド、エチレンオキサイドが挙げられる。開始剤に用いられるポリオールを選択することで所望の官能基数のポリエーテルポリオールが得られる。また、ポリエーテルポリオールのエチレンオキサイド含有率(略称:EO含有率)は、アルキレンオキシドに由来する構造中のエチレンオキサイドに由来する構造の含有率である。