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特開2024-62039多機能破砕工具、破砕装置および破砕方法
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  • 特開-多機能破砕工具、破砕装置および破砕方法 図1
  • 特開-多機能破砕工具、破砕装置および破砕方法 図2
  • 特開-多機能破砕工具、破砕装置および破砕方法 図3
  • 特開-多機能破砕工具、破砕装置および破砕方法 図4
  • 特開-多機能破砕工具、破砕装置および破砕方法 図5
  • 特開-多機能破砕工具、破砕装置および破砕方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062039
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】多機能破砕工具、破砕装置および破砕方法
(51)【国際特許分類】
   E21C 37/26 20060101AFI20240430BHJP
   E21C 37/04 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
E21C37/26
E21C37/04
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169786
(22)【出願日】2022-10-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】399048869
【氏名又は名称】株式会社神島組
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】神島 昭男
(72)【発明者】
【氏名】神島 充子
【テーマコード(参考)】
2D065
【Fターム(参考)】
2D065AA26
2D065DA17
2D065EA02
2D065EA05
(57)【要約】
【課題】短時間で、かつ効率的に被破砕物の一部を細かく破砕する。
【解決手段】この発明では、割岩部が、削孔の内壁面のうち被破砕物の自由面側の第1壁面部位に当接するとともに反自由面側の第2壁面部位に対して当接しながら削孔形成方向に沿って削孔に押し込まれることで、削孔の内壁面を押圧して削孔から被破砕物の自由面に向けて亀裂を導入する。亀裂が周囲に導入された削孔の第1壁面部位に対してリッピング部が当接しながら工具全体がリッピング方向に移動されることで、被破砕物のうち削孔から自由面側の大割破砕物が掘り起こされる。そして、小割部が上記大割破砕物を小割する。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延設された軸体構造を有し、被破砕物に対して削孔形成方向に予め形成された削孔の周囲を破砕するための多機能破砕工具であって、
前記軸線方向に沿って外部から与えられる外力を受ける後端部と、
前記後端部よりも先端側において、先端に向かって先細りした形状を有し、前記削孔の内壁面のうち前記被破砕物の自由面側の第1壁面部位に当接するとともに反自由面側の第2壁面部位に対して当接しながら前記軸体構造全体が前記削孔形成方向に沿って前記削孔に押し込まれることで、前記削孔の内壁面を押圧して前記削孔から前記被破砕物の自由面に向けて亀裂を導入する割岩部と、
前記後端部と前記割岩部との間に設けられ、前記亀裂が周囲に導入された前記削孔の前記第1壁面部位に当接しながら前記軸体構造全体が前記自由面に向かうリッピング方向に移動されることで、前記被破砕物のうち前記削孔から前記自由面側の大割破砕物を掘り起こすリッピング部と、
前記割岩部の先端から前記軸線方向に突設され、前記大割破砕物に当接しながら前記後端部、前記リッピング部および前記割岩部を介して伝達される前記外力を前記大割破砕物に与えることで、前記大割破砕物を小割する小割部と、
を備えることを特徴とする多機能破砕工具。
【請求項2】
岩盤、岩石、コンクリート構造物などの被破砕物に対して削孔形成方向に予め形成された削孔の周囲を破砕する破砕装置であって、
請求項1に記載の多機能破砕工具と、
前記多機能破砕工具を保持しながら前記後端部を打撃することで、前記外力を前記多機能破砕工具に与えるブレーカーと、
前記ブレーカーを保持しながら前記多機能破砕工具の前記削孔への押込み、前記多機能破砕工具の前記リッピング方向への移動および前記多機能破砕工具の前記大割破砕物への当接を行う建設機械と、
を備えることを特徴とする破砕装置。
【請求項3】
岩盤、岩石、コンクリート構造物などの被破砕物に対して削孔形成方向に予め形成された削孔の周囲を破砕する破砕方法であって、
請求項1に記載の多機能破砕工具を準備する工程と、
前記軸線方向を前記削孔形成方向と一致させるとともに前記多機能破砕工具の前記小割部および前記割岩部を前記削孔に挿入した状態で前記多機能破砕工具の前記後端部に外力を加えながら前記多機能破砕工具を前記削孔形成方向に押込むことによって、前記削孔の周囲を割岩する工程と、
前記多機能破砕工具の前記リッピング部が前記削孔に挿入された状態で前記多機能破砕工具を前記リッピング方向に移動させることによって、前記被破砕物から前記大割破砕物を掘り起こす工程と、
前記多機能破砕工具の前記小割部を前記大割破砕物に当接した状態で前記多機能破砕工具の前記後端部に外力を加えることによって、前記大割破砕物を小割する工程と、
を備えることを特徴とする破砕方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、岩盤、岩石、コンクリート構造物などの被破砕物の一部を細かく破砕する破砕方法、ならびに当該破砕方法に好適な多機能破砕工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、被破砕物を広範囲にわたって効率的に破砕する技術として、先細り形状を有する楔型チゼルを用いた破砕技術を提案してきた(特許文献1~特許文献4)。これらの特許文献1~4に記載の発明では、被破砕物に対して削孔が形成される。また、バックホウ等の建設機械のアームに油圧ブレーカーを装着し、さらに当該油圧ブレーカーに対して楔型チゼルを装着した上で、楔型チゼルの先端が上記削孔に押し込まれる。この楔型チゼルは、先端端面が削孔の内径よりも小さな第1の外径を有するとともに先端端面から後端に進むにしたがって外径が大きくなり削孔の内径よりも大きな第2の外径となる傾斜面を有している。このような構成を有する楔型チゼルの先端を削孔に挿入すると、傾斜面が削孔の内壁に当接する。その当接状態で往復動するピストンによりチゼルの後端を打撃すると、削孔の周囲では、削孔からピストンの往復方向とほぼ直交する方向に引張応力が被破砕物に作用し、その結果、削孔の周囲が破砕される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4636294号公報
【特許文献2】特許第5145503号公報
【特許文献3】特許第5145504号公報
【特許文献4】特許第5352807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
楔型チゼルの主目的は削孔周囲に亀裂を導入する、つまり割岩作業を実行することであり、被破砕物のうち亀裂が導入された部分(後で説明する図5中の被掘起部分32)を被破砕物から掘り起こす(リッピング作業)。こうして掘り起こされた部分の破砕粒度はある程度の分布を持ち、大割破砕物はそのままでは大き過ぎ、搬出作業に支障を来す。このため、分離作業後に、大割破砕物を更に小さく破砕する、いわゆる小割作業が必要となることがある。
【0005】
このように、岩盤、岩石、コンクリート構造物などの被破砕物を細かく破砕するためには、割岩作業、リッピング作業および小割作業が必要である。そこで、従来においては、建設機械のアームに対し、割岩作業では油圧ブレーカーおよび楔型チゼルからなる割岩用アタッチメントが取り付けられ、リンピング作業ではリッパーと称される分離用アタッチメントが取り付けられ、小割作業では油圧ブレーカーおよびハンマーチゼルからなる小割用アタッチメントが取り付けられていた。
【0006】
そして、割岩用アタッチメント、リッピング用アタッチメントおよび小割用アタッチメントがそれぞれ取り付けられた建設機械を予め準備しておき、建設機械を順次入れ替えて作業していた。また、準備する建設機械台数の低減を図るために、上記アタッチメントの全部または一部を交換して作業していた。このため、割岩作業、リッピング作業および小割作業を伴う破砕処理に多大な時間と労力を要していた。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、短時間で、かつ効率的に被破砕物の一部を細かく破砕することができる破砕方法、および当該破砕方法に好適な多機能破砕工具および破砕装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様は、軸線方向に延設された軸体構造を有し、被破砕物に対して削孔形成方向に予め形成された削孔の周囲を破砕するための多機能破砕工具であって、軸線方向に沿って外部から与えられる外力を受ける後端部と、後端部よりも先端側において、先端に向かって先細りした形状を有し、削孔の内壁面のうち被破砕物の自由面側の第1壁面部位に当接するとともに反自由面側の第2壁面部位に対して当接しながら軸体構造全体が削孔形成方向に沿って削孔に押し込まれることで、削孔の内壁面を押圧して削孔から被破砕物の自由面に向けて亀裂を導入する割岩部と、後端部と割岩部との間に設けられ、亀裂が周囲に導入された削孔の第1壁面部位に当接しながら軸体構造全体が自由面に向かうリッピング方向に移動されることで、被破砕物のうち削孔から自由面側の大割破砕物を掘り起こすリッピング部と、割岩部の先端から軸線方向に突設され、大割破砕物に当接しながら後端部、リッピング部および割岩部を介して伝達される外力を大割破砕物に与えることで、大割破砕物を小割する小割部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の第2態様は、岩盤、岩石、コンクリート構造物などの被破砕物に対して削孔形成方向に予め形成された削孔の周囲を破砕する破砕装置であって、上記多機能破砕工具と、多機能破砕工具を保持しながら後端部を打撃することで、外力を多機能破砕工具に与えるブレーカーと、ブレーカーを保持しながら多機能破砕工具の削孔への押込み、多機能破砕工具のリッピング方向への移動および多機能破砕工具の大割破砕物への当接を行う建設機械と、を備えることを特徴としている。
【0010】
さらに、本発明の第3態様は、岩盤、岩石、コンクリート構造物などの被破砕物に対して削孔形成方向に予め形成された削孔の周囲を破砕する破砕方法であって、上記多機能破砕工具を準備する工程と、軸線方向を削孔形成方向と一致させるとともに多機能破砕工具の小割部および割岩部を削孔に挿入した状態で多機能破砕工具の後端部に外力を加えながら多機能破砕工具を削孔形成方向に押込むことによって、削孔の周囲を割岩する工程と、多機能破砕工具のリッピング部が削孔に挿入された状態で多機能破砕工具をリッピング方向に移動させることによって、被破砕物から大割破砕物を掘り起こす工程と、多機能破砕工具の小割部を大割破砕物に当接した状態で多機能破砕工具の後端部に外力を加えることによって、大割破砕物を小割する工程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
上記発明によれば、短時間で、かつ効率的に被破砕物の一部を細かく破砕することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る多機能破砕工具の第1実施形態および当該工具を用いた破砕方法を実施する破砕装置を示す図である。
図2】多機能破砕工具の側面図である。
図3】多機能破砕工具の製造手順および多機能破砕工具の断面を示す図である。
図4図1の破砕装置により岩盤を破砕する破砕方法を模式的に示す図である。
図5図1の破砕装置により岩盤を破砕する破砕方法を模式的に示す図である。
図6】本発明に係る多機能破砕工具の第2実施形態の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明に係る多機能破砕工具の第1実施形態および当該工具を用いた破砕方法を実施する破砕装置を示す図である。また、図2は多機能破砕工具の側面図である。また、図3は多機能破砕工具の製造手順および多機能破砕工具の断面を示す図である。なお、これらの図面および後で説明する図面においては、理解容易の目的で、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また、これらの図面では、岩盤3への削孔4の削孔形成方向を「-Z」方向とし、削孔4から岩盤3の自由面31に向かう方向(本発明の「リッピング方向」に相当)を「+Y」方向とし、これらY方向およびZ方向と直交する方向を「X」方向としている。
【0014】
多機能破砕工具1は、図1に示すように、岩盤破砕を伴う現場において使用されるバックホウ等の建設機械5に装着された油圧ブレーカー2に取り付けられ、後述するように、割岩工程、リッピング工程および小割工程を連続的に行うための工具である。より詳しくは、建設機械5のアーム51にブラケット52を介して油圧ブレーカー2が取り付けられている。この油圧ブレーカー2はブレーカー本体(図示省略)を備えている。また、このブレーカー本体は、中央部にシリンダ21を有している。そして、不図示の油圧供給源から切換弁を介してシリンダ21へ圧油を供給することにより、シリンダ21内に摺嵌されるピストン22が軸方向に前後進可能になっている。なお、図1中の符号53は、ピストン22の打撃時に発生する作動音が騒音として周囲に伝播するのを抑制する防音カバーであり、必要に応じて着脱可能となっている。また、構成各部および動作を明示するため、図2ないし図6では、防音カバー53を外した状態が図示されている。
【0015】
ブレーカー本体の先端部(図1の下方側端部)に、多機能破砕工具1が装着される。多機能破砕工具1は、軸線方向D1に延設された軸体構造を有しており、軸線方向D1を削孔形成方向(-Z)と一致させた状態で割岩工程およびリッピング工程を実行する。そこで、図2および図3では、多機能破砕工具1の軸線方向D1を削孔形成方向(-Z)と一致させた状態で、多機能破砕工具1を図示している。そして、XYZ三次元座標系を参照しつつ多機能破砕工具1の製造手順および構成について、説明する。
【0016】
多機能破砕工具1は軸線方向Zに延設された軸体構造を有している。この多機能破砕工具1では、図2および図3に示すように、後端側(+Z方向側)から先端側(-Z方向側)の順序で、後端部11、リッピング部12、割岩部13および小割部14が設けられている。多機能破砕工具1を製造するにあたって、図3(a)に示すように、軸線方向Zに延設された軸体構造体10が準備される。軸体構造体10は、削孔4の内径d(図1)よりも大きな外径を有する円柱形状の鋼材料で構成されている。
【0017】
この軸体構造体10の(+Z)方向端部に対し、油圧ブレーカー2のロッドピン(図示省略)の配置および構造に対応した位置に切欠部を設けられ、後端部11が油圧ブレーカー2に装着可能な形状に仕上げられている。そして後端部11は、油圧ブレーカー2に装着された状態で、ピストン22による打撃を受けて外力を先端側に伝達する。
【0018】
リッピング部12は後端部11の(-Z)方向側に位置している。リッピング部12は、軸体構造体10のまま円柱形状を有している。
【0019】
一方、割岩部13はリッピング部12の(-Z)方向側に位置しており、軸体構造体10に対して次の加工が施されることで先端側、つまり(-Z)方向に向かって先細り形状に仕上げられている。軸体構造体10の先端面に対して3方向から挿入孔10a~10cが穿設される。挿入孔10cは軸体構造体10の軸線AXに沿って軸線方向Zに延設されている。一方、挿入孔10a、10bは、それぞれ挿入孔10cの(+Y)方向側および(-Y)方向側で、上記先細り形状に対応した傾斜角で延設されている。例えば傾斜角については、軸体構造体10の軸線AXに対して数度程度に設定するのが望ましい。
【0020】
このように形成された挿入孔10a~10cに対し、軸体構造体10よりも高い硬度を有する金属材料、例えばSKD61などのダイス鋼で構成された超硬芯15a~15cをそれぞれ圧入した後で、例えば軸体構造体10を軸線AXまわりに回転させながら軸体構造体10の(-Z)方向端部を旋盤加工して超硬芯15a、15bが露出するまで切削する。これによって、軸体構造体10の先端部が先細り形状に仕上げられる。さらに、先細り部分のうち(+X)方向側面および(-X)方向側面を切削して図3(c)に示すように略オーバル形状の断面を有するように仕上げる。こうして、割岩部13が構成される。
【0021】
より詳しくは、この割岩部13では、リッピング部12に近接する位置は削孔4の内径dよりも大きな外径を有する一方、先端位置では削孔4の内径dよりも小さな外径を有する。また、割岩部13の側面のうち自由面側(+Y方向側)および反自由面側(-Y方向側)がそれぞれ傾斜面13a、13bとなっている。自由面側の傾斜面13aは、削孔4の内壁面のうち自由面側の第1壁面部位(図4の符号41)に沿って湾曲しながら第1壁面部位に対向して設けられている。一方、反自由面側の傾斜面13bは削孔4の内壁面のうち反自由面側の第2壁面部位(図4の符号42)に沿って湾曲しながら第2壁面部位に対向して設けられている。
【0022】
超硬芯15cについては、その(-Z)端部が軸体構造体10の先端面から(-Z)方向に突出した状態で軸体構造体10に圧入されている。そして、突出部分を先細り形状に仕上げることで、小割部14が構成されている。
【0023】
次に、破砕装置(=多機能破砕工具1+油圧圧ブレーカー103+建設機械5)を用いて本発明の「被破砕物」の一例である岩盤3に予め形成された削孔4の周囲を破砕する破砕方法について、図4および図5を参照しつつ説明する。図4および図5図1の破砕装置により岩盤を破砕する破砕方法を模式的に示す図である。図2および図3(b)、(c)に示す多機能破砕工具1の先端部(=小割部14+割岩部13の(-Z)方向端部)を削孔4に挿入すると、図4(a)に示すように、削孔4の内壁面のうち自由面側の第1壁面部位41に割岩部13の(+Y)方向側傾斜面13aが係止されるとともに反自由面側の第2壁面部位42に割岩部13の(-Y)方向側傾斜面13bが係止される。
【0024】
そして、油圧ブレーカー2のピストン22を削孔形成方向(-Z)と略平行に往復動させて多機能破砕工具1の後端部11を直接打撃すると、多機能破砕工具1の割岩部13が削孔4に押し込まれる。このとき、図4(b)に示すように、削孔4からY方向に引張応力が図中の白抜き矢印で示すように削孔4の内壁に作用し、多機能破砕工具1の押込量と上記傾斜角とで決まる距離だけ割岩部13が削孔4の内壁の自由面側、つまり(+Y)方向側を押し遣り、削孔4から亀裂が発生する。そして、多機能破砕工具1の押込に伴って亀裂がさらに延びるとともに岩盤3の内部で削孔4から自由面31に向かって亀裂が入って割岩される。その結果、削孔4から自由面側の被掘起部分32がブロック状で岩盤3から分離されて岩盤3からの破砕除去が容易となる。
【0025】
削孔4への多機能破砕工具1の押込は、図5(a)に示すように、リッピング部12が削孔4に挿入され、その(+Y)方向側の側面が削孔4の第1壁面部位41に当接するまで行われる。これによって、リッピング部12は被掘起部分32と密着している。この状態で、建設機械5のアーム51により油圧ブレーカー2および多機能破砕工具1が一体的に自由面側、つまり(+Y)方向側に移動されることで、リッピング部12が岩盤3から被掘起部分32を掘り起す(リッピング工程)。
【0026】
こうして掘り起こされた被掘起部分32は比較的大きく、さらに小割する必要があるため、本実施形態では、リッピング工程に続いて、多機能破砕工具1を用いた小割工程が実行される。すなわち、建設機械5のアーム51により油圧ブレーカー2および多機能破砕工具1が一体的に削孔4から取り出された後、図5(b)に示すように、被掘起部分32に対して多機能破砕工具1の小割部14が当接した状態で多機能破砕工具1の後端部11がピストン22による打撃を受け、その打撃力(本発明の「外力」に相当)がリッピング部12および割岩部13を介して小割部14に伝達される。こうして被掘起部分32が小割される(小割工程)。図5(b)中の丸印および矢印で示すように、被掘起部分32の表面において小割部14の当接箇所(丸印箇所)を移動させながら小割工程を繰り返すことで、被掘起部分32が所望サイズ以下に細かく割られる。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、1本の多機能破砕工具1を用いて割岩作業、リッピング作業および小割作業を連続して行うことができる。このため、割岩用アタッチメント、リッピング用アタッチメントおよび小割用アタッチメントがそれぞれ取り付けられた建設機械を順次入れ替えて作業する必要がなくなる。また、上記アタッチメントの全部または一部を交換する作業も必要がなくなる。その結果、岩盤3のうち削孔4の周囲を短時間で、かつ効率的に細かく破砕することができる。
【0028】
また、本実施形態では、割岩部13のうち削孔4の第1壁面部位41および第2壁面部位42に対して超硬芯15a、15bが当接して割岩作業を行っている。このため、割岩部13の消耗が抑制され、多機能破砕工具1の寿命を延ばすことができる。その結果、ランニングコストを抑制することができる。
【0029】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、割岩部13において超硬芯15a、15bが露出し、それぞれ第1壁面部位41および第2壁面部位42に当接するように構成しているが、例えば図6に示すように、超硬芯15a、15bを設けることなく、割岩部13が直接第1壁面部位41および第2壁面部位42に当接して割岩作業を行うように構成してもよい。
【0030】
また、特許文献1、4などに記載の楔型チゼルは、本発明の後端部および割岩部に相当する構成を有しているため、当該楔型チゼルに対し、リッピング部12および小割部14を追加したものを本発明の多機能破砕工具1として用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明は、岩盤、岩石、コンクリート構造物などの被破砕物の一部を細かく破砕する破砕技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1…多機能破砕工具
2…油圧ブレーカー
3…岩盤(被破砕物)
4…削孔
5…建設機械
10…軸体構造体
11…後端部
12…リッピング部
13…割岩部
14…小割部
31…(岩盤の)自由面
32…被掘起部分
41…(削孔の)第1壁面部位
42…(削孔の)第2壁面部位
D1…軸線方向
Y…リッピング方向
Z…削孔形成方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6