(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062047
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】使用済み衛生用品を構成する、高吸水性ポリマーを含む構成材料から高吸水性ポリマーを回収する方法、及び、回収された高吸水性ポリマーを用いてリサイクル高吸水性ポリマーを製造する方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
B29B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169799
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝義
(72)【発明者】
【氏名】石川 宜秀
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA17
4F401AB10
4F401AC20
4F401AD07
4F401AD10
4F401BA13
4F401CA25
4F401CA29
4F401CA33
4F401CA48
4F401DA16
4F401EA04
4F401EA10
(57)【要約】
【課題】使用済み衛生用品を構成する、高吸水性ポリマーを含む構成材料から高吸水性ポリマーを回収する方法において、回収率及び純度を向上させる方法を提供する。
【解決手段】本方法は、使用済み衛生用品を構成する、高吸水性ポリマーを含んだ構成材料から前記高吸水性ポリマーを回収する方法であって、不活化された前記高吸水性ポリマーを含んだ前記構成材料を含有した、湿潤な状態の凝集物を準備する準備工程S30と前記凝集物に振動を与えて、前記構成材料から前記高吸水性ポリマーを分離する分離工程S20と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み衛生用品を構成する、高吸水性ポリマーを含んだ構成材料から前記高吸水性ポリマーを回収する方法であって、
不活化された前記高吸水性ポリマーを含んだ前記構成材料を含有した、湿潤な状態の凝集物を準備する準備工程と、
前記凝集物に振動を与えて、前記構成材料から前記高吸水性ポリマーを分離する分離工程と、
を具備する、
方法。
【請求項2】
前記分離工程は、前記凝集物を、前記高吸水性ポリマーが通過可能な目を有する、振動する篩にかける篩分離工程を備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記準備工程は、不活化された前記高吸水性ポリマーを含んだ前記構成材料を含有する水溶液に、固液分離を行い、固体である前記凝集物と液体とを得る固液分離工程を備える、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記固液分離工程は、前記固液分離として前記構成材料を含有する水溶液の遠心分離を行い、前記凝集物と前記液体とを得る遠心分離工程を含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記遠心分離工程で分離された前記高吸水性ポリマーの水分率は80質量%以下である、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記遠心分離工程の前記遠心分離を行う遠心分離装置の下に、前記篩分離工程の前記篩を有する篩装置が配置されている、
請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記固液分離工程で得られる前記液体からスクリーンにより前記高吸水性ポリマーを回収する工程を更に具備する、
請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記準備工程は、前記高吸水性ポリマーの不活化を行う不活化工程を含み、
前記不活化工程は、前記構成材料を、多価金属イオンを供給可能な多価金属イオン供給源に接触させることにより、前記構成材料中の前記高吸水性ポリマーを脱水させる脱水工程を有する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記不活化工程は、前記脱水工程の前に、前記構成材料を、酸性水溶液に浸漬させることにより、前記構成材料中の前記高吸水性ポリマーを事前に脱水する事前脱水工程を更に有する、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記篩分離工程において、前記篩の振動は横振動を含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記篩は、
前記高吸水性ポリマーが通過可能な目をする第1篩部分と、
前記第1篩部分の下側に位置し、前記第1篩部分よりも細かく、前記高吸水性ポリマーが通過可能な目をする第2篩部分と、
を備え、
前記篩分離工程は、
前記凝集物を、振動する前記篩にかけて、前記第1篩部分及び前記第2篩部分の二段階で前記高吸水性ポリマーを篩い分ける工程を含む、
請求項2又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記構成材料はパルプ繊維を含み、
前記篩分離工程は、前記パルプ繊維が前記篩の表面上の外側へ移動し、前記高吸水性ポリマーは前記篩の下側へ移動して、互いに分離される工程を含む、
請求項2又は10に記載の方法。
【請求項13】
前記分離工程で得られた前記高吸水性ポリマーを、アルカリ金属イオンを供給可能なアルカリ金属イオン供給源に接触させることにより、前記高吸水性ポリマーを再活性化する再活性化工程を更に具備する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項14】
リサイクル高吸水性ポリマーを製造する方法であって、
請求項1又は2に記載の、使用済み衛生用品を構成する、高吸水性ポリマーを含む構成材料から高吸水性ポリマーを回収する方法で得られた前記高吸水性ポリマーを、アルカリ金属イオンを供給可能なアルカリ金属イオン供給源に接触させることにより、前記高吸水性ポリマーを再活性化する再活性化工程を具備する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み衛生用品を構成する、高吸水性ポリマーを含む構成材料から高吸水性ポリマーを回収する方法、及び、回収された高吸水性ポリマーを用いてリサイクル高吸水性ポリマーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済み衛生用品から高吸水性ポリマーを回収する方法が知られている。例えば、特許文献1に、使用済み衛生用品の処理方法であって、衛生用品を離解して水に分散させる工程と、衛生用品に含まれる繊維およびSAPを分離回収する工程とを少なくとも含み、前記衛生用品を離解して水に分散させる工程において、架橋剤および酸性物質を加えることを特徴とする、処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、まず、衛生用品を離解して水に分散させる工程として、原料である使用済み紙おむつをパルパーに投入し、水に分散する。その後、紙おむつに含まれる繊維およびSAPを分離回収する工程として、スクリーン、クリーナーを用い処理し、まずSAP分を回収する。
【0005】
ここで、特許文献1によれば、スクリーンは、離解した衛生用品の構成材料を含む流体(液体、気体)を供給され、丸穴スクリーン又はスリットスクリーンにより、リジェクトとアクセプトに分離する方法である。クリーナーは、離解した衛生用品の構成材料を含む流体(液体、気体)を供給され、遠心分離により、比重の異なる材料に分離する方法である。
【0006】
ところが、発明者の検討によれば、スクリーンやクリーナーは、離解した衛生用品の構成材料(SAP、すなわち高吸水性ポリマーを含む)の混合物の中から、高吸水性ポリマーを分離、回収することはできるが、回収率を高め、かつ、純度を高めることは容易ではなかった。
【0007】
本発明の目的は、使用済み衛生用品を構成する、高吸水性ポリマーを含む構成材料から高吸水性ポリマーを回収する方法(以下、単に「高吸水性ポリマーを回収する方法」とも記す。)において、回収率及び純度を向上させる方法、及び、回収された高吸水性ポリマーを用いてリサイクル高吸水性ポリマーを製造する方法(以下、単に「リサイクル高吸水性ポリマーを製造する方法」とも記す。)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、使用済み衛生用品を構成する、高吸水性ポリマーを含んだ構成材料から前記高吸水性ポリマーを回収する方法であって、不活化された前記高吸水性ポリマーを含んだ前記構成材料を含有した、湿潤な状態の凝集物を準備する準備工程と、前記凝集物に振動を与えて、前記構成材料から前記高吸水性ポリマーを分離する分離工程と、を具備する、方法、である。
【0009】
本発明の他の態様は、リサイクル高吸水性ポリマーを製造する方法であって、上記の、使用済み衛生用品を構成する、高吸水性ポリマーを含む構成材料から高吸水性ポリマーを回収する方法で得られた前記高吸水性ポリマーを、アルカリ金属イオンを供給可能なアルカリ金属イオン供給源に接触させることにより、前記高吸水性ポリマーを再活性化する再活性化工程を具備する、方法、である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用済み衛生用品を構成する、高吸水性ポリマーを含む構成材料から高吸水性ポリマーを回収する方法において、回収率及び純度を向上させる方法、及び、回収された高吸水性ポリマーを用いてリサイクル高吸水性ポリマーを製造する方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る高吸水性ポリマーを回収する方法及びリサイクル高吸水性ポリマーを製造する方法の一例を示すフロー図である。
【
図2】実施形態に係る不活化工程の一例を示すフロー図である。
【
図3】実施形態に係る高吸水性ポリマーを回収する方法及びリサイクル高吸水性ポリマーを製造する方法に用いられるシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る第1脱水工程の変形例を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態に係る第1脱水工程に用いられる第1脱水装置の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態は、以下の態様に関する。
[態様1]
使用済み衛生用品を構成する、高吸水性ポリマーを含んだ構成材料から高吸水性ポリマーを回収する方法であって、不活化された前記高吸水性ポリマーを含んだ前記構成材料を含有した、湿潤な状態の凝集物を準備する準備工程と、前記凝集物に振動を与えて、前記構成材料から前記高吸水性ポリマーを分離する分離工程と、を具備する、方法。
【0013】
本方法では、高吸水性ポリマーは、不活化(脱水)されて、小さな粒子径を有する粒状物であるので、他の構成材料とは形状が大きく異なっている。また、その高吸水性ポリマーを含んだ構成材料を含有する凝集物は湿潤な状態であり、したがって、構成材料間には水分が存在する。それゆえ、高吸水性ポリマーは、他の構成材料と水素結合をほとんどしていない状態である。そのような状態の凝集物に振動を与えることで、他の構成材料とは形状が大きく異なり(小さく)、水素結合をしていない高吸水性ポリマーを、他の構成材料から容易に引き離して、分離することができる。すなわち、少なくとも高吸水性ポリマーと他の構成材料とを実質的にばらけた状態にすることができる。そのような状態を作ることで、構成材料の中から高吸水性ポリマーを選択的に取り出し易くすることができる。それにより、高吸水性ポリマーの回収率及び純度を向上させることができる。
【0014】
[態様2]
前記分離工程は、前記凝集物を、前記高吸水性ポリマーが通過可能な目を有する、振動する篩にかける篩分離工程を備える、態様1に記載の方法。
【0015】
本方法では、高吸水性ポリマーは、他の構成材料とは形状が大きく異なり(小さく)、水素結合をほとんどしていない状態である。そのため、高吸水性ポリマーを篩に掛けると、篩の振動により、高吸水性ポリマーを他の構成材料からより容易に引き離すことができる。すなわち、高吸水性ポリマーと他の構成材料とを実質的にばらけた状態にすることができる。そのような状態を篩の上で作ることで、引き離された高吸水性ポリマーを他の構成材料からより容易に篩い分けることができる。それにより、構成材料の中から高吸水性ポリマーを選択的に取り出すことができ、高吸水性ポリマーの回収率及び純度を向上させることができる。その場合、例えば、パルプ繊維やシート部材のような他の構成材料は、篩の上に残って回収され、高吸水性ポリマーは、篩の下に落ちて回収される。
【0016】
[態様3]
前記準備工程は、不活化された前記高吸水性ポリマーを含んだ前記構成材料を含有する水溶液に、固液分離を行い、固体である前記凝集物と液体とを得る固液分離工程を備える、態様2に記載の方法。
【0017】
本方法では、準備工程が、不活化された高吸水性ポリマーを含んだ構成材料を含有する水溶液を、固液分離して、固体である凝集物を得る固液分離工程を備えている。ここで、凝集物(固体)は、構成材料で形成されており、水分を保持し得る。そのため、凝集物中の液体(水分)の量を適度な量に抑えて、適度な湿潤な状態を作ることができる。それにより、凝集物中の液体(水分)の量が多過ぎて振動が減衰されたり、少な過ぎて構成材料間の水素結合が強すぎたりして、高吸水性ポリマーと他の構成材料とを実質的にばらけた状態することができず、高吸水性ポリマーが分離し難くなることを抑制できる。
【0018】
[態様4]
前記固液分離工程は、前記固液分離として前記構成材料を含有する水溶液の遠心分離を行い、前記凝集物と前記液体とを得る遠心分離工程を含む、態様3に記載の方法。
【0019】
本方法では、固液分離として、構成材料を含有する水溶液の遠心分離を行う遠心分離工程を含んでいる。遠心分離では、構成材料に掛かる力の制御が比較的容易であるため、高吸水性ポリマーが潰れないようにし易く、かつ凝集物に含まれる水分(水分率)を所望の数値範囲にし易い。それにより、高吸水性ポリマーの損傷を抑えつつ、凝集物を適度な湿潤な状態にすることができる。
【0020】
[態様5]
前記遠心分離工程で分離された前記高吸水性ポリマーの水分率は80質量%以下である、態様4に記載の方法。
【0021】
本方法では、遠心分離工程後の高吸水性ポリマーの水分率が80質量%以下であるため、高吸水性ポリマーは小さな粒子径を有する粒状物となっている。また、遠心分離工程の前後で不活化された高吸水性ポリマーの水分率がほとんど変化しないと考えると、遠心分離工程後の高吸水性ポリマーの水分率が80質量%以下であるので、遠心分離工程前の高吸水性ポリマーの水分率も概ね80質量%以下といえる。すなわち、高吸水性ポリマーがほとんど水分を含有していない状態で遠心分離を行うため、固液分離(遠心分離)において、高吸水性ポリマーを損傷し難くすることができる。それにより、分離工程において、高吸水性ポリマーをより回収し易くすることができる。
【0022】
[態様6]
前記遠心分離工程の前記遠心分離を行う遠心分離装置の下に、前記篩分離工程の前記篩を有する篩装置が配置されている、態様4記載の方法。
【0023】
本方法では、遠心分離工程の遠心分離を行う遠心分離装置の下に、篩分離工程の篩を有する篩装置が配置されている。そのため、遠心分離工程後の凝集物を直ちに篩にかけることができ、それにより、遠心分離後の凝集物の状態(高吸水性ポリマーの状態や凝集物の水分率)が変動するのを抑制しつつ、篩分離工程を実行できる。それにより、高吸水性ポリマーをより回収し易くすることができる。
【0024】
[態様7]
前記固液分離工程で得られる前記液体からスクリーンにより前記高吸水性ポリマーを回収する工程を更に具備する、態様3に記載の方法。
【0025】
本方法では、固液分離工程で得られる液体からスクリーンにより高吸水性ポリマーを回収する。それにより、高吸水性ポリマーの回収率を向上させることができる。
【0026】
[態様8]
前記準備工程は、前記高吸水性ポリマーの不活化を行う不活化工程を含み、前記不活化工程は、前記構成材料を、多価金属イオンを供給可能な多価金属イオン供給源に接触させることにより、前記構成材料中の前記高吸水性ポリマーを脱水させる脱水工程を有する、態様1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【0027】
本方法では、準備工程が、高吸水性ポリマーの不活化を行う不活化工程を含み、不活化工程は、構成材料を、多価金属イオンを供給可能な多価金属イオン供給源に接触させることで、構成材料中の高吸水性ポリマーを脱水させる脱水工程を有している。不活化(脱水)のために、多価金属イオン供給源を用いることで、より確実に、高吸水性ポリマーを不活化(脱水)して、小さな粒子径を有する粒状物とすることができる。
【0028】
[態様9]
前記不活化工程は、前記脱水工程の前に、前記構成材料を、酸性水溶液に浸漬させることにより、前記構成材料中の前記高吸水性ポリマーを事前に脱水する事前脱水工程を更に有する、態様8に記載の方法。
【0029】
本方法では、不活化工程が、脱水工程の前に、構成材料を、酸性水溶液に浸漬させることで、構成材料中の高吸水性ポリマーを事前に脱水する事前脱水工程を更に有している。ここで、酸で高吸水性ポリマーを不活化(脱水)する場合、多価金属イオンで高吸水性ポリマーを不活化(脱水)する場合と比較して、高吸水性ポリマーの脱水率は低い(水分率は高い)。とはいえ、多価金属イオン供給源による脱水工程の前に、事前に、酸による事前脱水工程を実施することで、不活化工程で得られる高吸水性ポリマーの脱水率をより高く(水分率をより低く)することができる。
【0030】
[態様10]
前記篩分離工程において、前記篩の振動は横振動を含む、態様2に記載の方法。
【0031】
本方法では、篩分離工程において、篩の振動は、縦振動、すなわち、篩面に垂直な方向の振動だけではなく、横振動、すなわち、篩面に平行な面内方向の振動を含んでいる。そのため、凝集物を篩面に垂直な方向だけでなく、平行な方向にも揺することができる。それにより、高吸水性ポリマーを他の構成材料からより容易に引き離すことができ、高吸水性ポリマーと他の構成材料とをより容易に実質的にばらけた状態にすることができる。そのような状態を篩の上で作ることで、引き離された高吸水性ポリマーを他の構成材料からより容易に篩い分けることができる。
【0032】
[態様11]
前記篩は、前記高吸水性ポリマーが通過可能な目をする第1篩部分と、前記第1篩部分の下側に位置し、前記第1篩部分よりも細かく、前記高吸水性ポリマーが通過可能な目をする第2篩部分と、を備え、前記篩分離工程は、前記凝集物を、振動する前記篩にかけて、前記第1篩部分及び前記第2篩部分の二段階で前記高吸水性ポリマーを篩い分ける工程を含む、態様2又は10に記載の方法。
【0033】
本方法では、篩が、高吸水性ポリマーが通過可能な目をする上段の第1篩部分と、第1篩部分よりも細かく、高吸水性ポリマーが通過可能な目をする下段の第2篩部分とを備え、篩分離工程において、高吸水性ポリマーが第1篩部分及び第2篩部分の二段階で篩い分けられる。それにより、回収される高吸水性ポリマーの純度をより高めることができる。
【0034】
[態様12]
前記構成材料はパルプ繊維を含み、前記篩分離工程は、前記パルプ繊維が前記篩の表面上の外側へ移動し、前記高吸水性ポリマーは前記篩の下側へ移動して、互いに分離される工程を含む、態様2又は10に記載の方法。
【0035】
本方法では、高吸水性ポリマーは、パルプ繊維とは形状が大きく異なり、かつ、水素結合をほとんどしていない状態である。そのため、高吸水性ポリマーを篩に掛けると、篩の振動により、高吸水性ポリマーをパルプ繊維からより容易に引き離すことができ、引き離された高吸水性ポリマーを構成材料の中から選択的に取り出すことができる。それにより、高吸水性ポリマーを他の構成材料からより容易に篩い分けることができ、高吸水性ポリマーの回収率及び純度を向上させることができる。その場合、例えば、パルプ繊維やシート部材は、篩の上に残って回収され、高吸水性ポリマーは、篩の下に落ちて回収される。
【0036】
[態様13]
前記分離工程で得られた前記高吸水性ポリマーを、アルカリ金属イオンを供給可能なアルカリ金属イオン供給源に接触させることにより、前記高吸水性ポリマーを再活性化する再活性化工程を更に具備する、態様1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【0037】
本方法では、分離工程で得られた高吸水性ポリマーを、アルカリ金属イオンを供給可能なアルカリ金属イオン供給源に接触させることにより、分離工程で得られた高吸水性ポリマーを吸水性材料として利用可能なように再活性化することができる。
【0038】
[態様14]
リサイクル高吸水性ポリマーを製造する方法であって、態様1乃至12のいずれか一項に記載の、使用済み衛生用品を構成する、高吸水性ポリマーを含む構成材料から高吸水性ポリマーを回収する方法で得られた前記高吸水性ポリマーを、アルカリ金属イオンを供給可能なアルカリ金属イオン供給源に接触させることにより、前記高吸水性ポリマーを再活性化する再活性化工程を具備する、方法。
【0039】
本方法では、使用済み衛生用品を構成する、高吸水性ポリマーを含む構成材料から高吸水性ポリマーを回収する方法で得られた高吸水性ポリマーを、アルカリ金属イオンを供給可能なアルカリ金属イオン供給源に接触させることで再活性化することにより、回収された高吸水性ポリマーを原料として、吸水性材料として利用可能なリサイクル高吸水性ポリマーを製造することができる。それにより、回収率及び純度が向上された高吸水性ポリマーを再活性化するので、リサイクル高吸水性ポリマーの回収率及び純度も向上できる。
【0040】
以下、実施形態に係る、使用済み衛生用品を構成する、高吸水性ポリマーを含む構成材料から高吸水性ポリマーを回収する方法、及び、回収された高吸水性ポリマーを用いてリサイクル高吸水性ポリマーを製造する方法について説明する。ただし、本明細書では、衛生用品とは、衛生に資する物品であって、高吸水性ポリマーを含む物品をいう。使用済み衛生用品(例示:吸収性物品)とは、使用者により使用された衛生用品であって、主に使用者から放出された液状物(例示:排泄物)を吸収・保持した衛生用品をいい、使用されたが液状物を吸収・保持しないものや未使用だが廃棄されたものを含む。使用済み高吸水性ポリマーとは、使用済み衛生用品に含まれていた高吸水性ポリマーをいう。本実施形態では、衛生用品の例として吸収性物品について説明する。吸収性物品としては、例えば、紙おむつ、尿取りパッド、生理用ナプキン、ベッドシート、ペットシートが挙げられ、高吸水性ポリマーを含んでおり、パルプ繊維を更に含んでもよい。
【0041】
まず、吸収性物品の構成例について説明する。吸収性物品は、表面シートと、裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置され、高吸水性ポリマーを含む吸収体と、を備えている。本実施形態では、吸収体はパルプ繊維を更に含む。したがって、吸収性物品は、構成材料として、表面シートと、裏面シートと、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維を含む吸収体と、を含んでいる。吸収性物品の大きさの一例としては長さ約15~100cm、幅5~100cmが挙げられる。なお、吸収性物品は、構成材料として、一般的な吸収性物品が備える他の部材、例えば拡散シートや防漏壁やサイドシートや外装シートやウエストバンドなどを更に含んでもよい。
【0042】
表面シートの構成部材としては、例えば液透過性の不織布、液透過孔を有する合成樹脂フィルム、これらの複合シート等が挙げられる。裏面シートや外装シートの構成部材としては、例えば液不透過性の不織布、液不透過性の合成樹脂フィルム、これらの複合シートが挙げられる。拡散シートの構成部材としては、例えば液透過性の不織布が挙げられる。防漏壁やサイドシートやウエストバンドの構成部材としては、例えば液不透過性の不織布が挙げられ、ウエストバンドや防漏壁はゴムのような弾性部材を含んでもよい。不織布や合成樹脂フィルムの材料としては、吸収性物品として使用可能であれば特に制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂等が挙げられる。不織布の材料として、コットンやレーヨンなどの天然繊維を用いてもよい。本実施形態では、裏面シートの構成部材をフィルムとし、表面シートの構成部材を不織布とする吸収性物品を例にして説明する。
【0043】
吸収体のパルプ繊維及び高吸水性ポリマーのうち、パルプ繊維としては、吸収性物品として使用可能であれば特に制限はないが、例えば、セルロース系繊維が挙げられる。セルロース系繊維としては、例えば木材パルプ、架橋パルプ、非木材パルプ、再生セルロース、半合成セルロース等が挙げられる。パルプ繊維の大きさとしては、繊維の長径の平均値が例えば数十μmが挙げられ、20~40μmが好ましく、繊維長の平均値が例えば数mmが挙げられ、2~5mmが好ましい。
【0044】
高吸水性ポリマー(SuperAbsorbent Polymer:SAP)としては、吸収性物品において吸収性材料として使用可能であれば特に制限はないが、例えばポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系の吸水性ポリマーが挙げられる。高吸水性ポリマーの大きさ(乾燥時)としては、粒径の平均値が例えば数百μmが挙げられ、200~500μmが好ましい。吸収体は、液透過性シートで形成され、吸収性材料を包むアラップを含んでもよい。ただし、使用済みの吸収性物品では、吸収体の一部又は全部、したがって、少なくとも高吸水性ポリマーの一部又は全部が、液体の排泄物(例示:尿)を吸収している場合が多い。その場合、液体の排泄物を吸収した高吸水性ポリマーは、膨潤して元の大きさの数十倍から数百倍程度の大きさになる。
【0045】
吸収体の一方の面及び他方の面は、それぞれ表面シート及び裏面シートに接着剤を介して接合されている。平面視で、表面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)は、裏面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)と接着剤を介して接合されている。したがって、吸収体は表面シートと裏面シートとの接合体の内部に包み込まれている。接着剤としては、吸収性物品として使用可能であれば特に制限はないが、例えばホットメルト型接着剤が挙げられる。ホットメルト型接着剤としては、例えばスチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレン等のゴム系主体、又はポリエチレン等のオレフィン系主体の感圧型接着剤又は感熱型接着剤が挙げられる。
【0046】
次に、実施形態に係る、使用済み衛生用品を構成する、高吸水性ポリマーを含んだ構成材料から高吸水性ポリマーを回収する方法(高吸水性ポリマーを回収する方法)及び、回収された高吸水性ポリマーを用いてリサイクル高吸水性ポリマーを製造する方法(リサイクル高吸水性ポリマーを製造する方法)について説明する。
【0047】
図1は、実施形態に係る高吸水性ポリマーを回収する方法、及び、リサイクル高吸水性ポリマーを製造する方法の一例を示すフロー図である。
図2は、実施形態に係る上記方法における不活化工程の一例を示すフロー図である。
図3は、実施形態に係る高吸水性ポリマーを回収する方法、及び、リサイクル高吸水性ポリマーを製造する方法に使用されるシステムの構成例を示すブロック図である。
【0048】
高吸水性ポリマーを回収する方法は、準備工程S30と分離工程S40とを備えており、再活性化工程S50を更に備えてもよい。高吸水性ポリマーを回収する方法に使用されるシステム20は、準備装置30と分離装置40とを備えており、再活性化装置50を更に備えてもよい。一方、リサイクル高吸水性ポリマーを製造する方法は、再活性化工程S50を備えており、準備工程S30及び分離工程S40を更に備えてもよい。リサイクル高吸水性ポリマーを製造する方法に使用されるシステム20は、再活性化装置50を備えており、準備装置30及び分離装置40を更に備えてもよい。なお、各装置は、複数の装置の組み合わせでもよい。以下、各工程について具体的に説明する。
【0049】
まず、準備工程S30について説明する。準備工程S30は、準備装置30により実行される。準備工程S30は、不活化された高吸水性ポリマーを含んだ構成材料を含有した、湿潤な状態の凝集物を準備する工程である。準備装置30については、不活化された高吸水性ポリマーを含んだ構成材料を含有した、湿潤な状態の凝集物を提供し得る装置(複数の装置の組み合わせを含む)であれば、特に制限はない。
【0050】
不活化された高吸水性ポリマーは、その吸水性が低下された高吸水性ポリマーである。そのような高吸水性ポリマーは、内部に水分を吸収することが困難な状態であるから、内部に水分(例示:液体の排泄物)を吸水していた高吸水性ポリマーは、不活化により、内部の水分を排出して(脱水して)、膨潤した状態から概ね粒状の状態へ変化している。
【0051】
不活化の方法としては、特に制限はないが、高吸水性ポリマー又は高吸水性ポリマーを含む構成材料を、不活化剤を含む水溶液(不活化水溶液)に浸漬させる方法が挙げられる。不活化剤としては、例えば、無機酸や有機酸のような酸、又は、多価金属イオンを供給可能な多価金属イオン供給源が挙げられる。
【0052】
構成材料としては、上述された、表面シート、裏面シート、高吸水性ポリマー、パルプ繊維などの少なくとも一部が挙げられ、少なくとも高吸水性ポリマーが含まれる。凝集物を形成する各構成材料(高吸水性ポリマーを除く)は、複数の使用済み吸収性物品が物理的衝撃や接着部分の薬剤等による剥離により分解される、及び/又は、破砕や細断をされる、ことにより、ほぼ全部が小片化されている。その小片の大きさ(最大寸法)は所定の大きさよりも小さくされている。ただし、所定の大きさ(最大寸法)としては、例えば、2~30mmが挙げられ、3~20mmが好ましく、4~10mm以下がより好ましい。小片の大きさが小さ過ぎると、高吸水性ポリマーと分離し難くなり、大き過ぎると、工程間を移送し難くなる。なお、本方法で取り扱われる複数の使用済み吸収性物品のすべてが高吸水性ポリマーを含む必要は無く、一部が高吸水性ポリマーを含んでいればよい。
【0053】
凝集物は、上記の構成材料の少なくとも一部がまとまって塊状になったものである。ただし、凝集物は、後述される振動により、少なくとも高吸水性ポリマーが分離され得る状態であり、好ましくは個々の構成材料に分離され得る状態である。凝集物の密度は、振動で分離できれば特に制限されるものではないが、下限としては、0.10g/cm3が挙げられ、好ましくは0.11g/cm3、より好ましくは0.12g/cm3、更に好ましくは0.13g/cm3、更により好ましくは0.15g/cm3が挙げられる。上限としては、1.5g/cm3が挙げられ、1.2g/cm3が好ましく、1.0g/cm3がより好ましく、0.80g/cm3が更により好ましい。密度が高過ぎると、構成材料同士が密着して凝集物が分解され難くなり、密度が低過ぎると、構成材料の量が少なくなり、回収率が低下する。
【0054】
凝集物は湿潤な状態にあり、その凝集物の水分率は、振動で分離できれば特に制限されるものではないが、下限としては、10質量%が挙げられ、13質量が%好ましく、15質量%がより好ましく、20質量%が更により好ましい。上限としては、85質量%が挙げられ、80質量%が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下がより好ましい。ただし、凝集物の水分率の測定方法は、以下のとおりである。水分率が大き過ぎると、振動が減衰されて個々の個性材料に分離され難くなり、篩を用いている場合には、篩に貼り付き易くなり、篩の目詰まりや貼り付きによる回収率低下が生じ易く、生産効率も低下し易くなる。水分率が小さ過ぎると構成材料同士が直接水素結合して凝集物が分解され難くなる。
【0055】
<凝集物の水分率>
凝集物の水分率の測定方法は、以下のとおりである。
(1)凝集物を約5g秤取り、試料とする。
(2)上記の試料を、赤外線水分計(FD-720:株式会社ケツト科学研究所製)の試料台に載置する。
(3)水分計の設定温度を120℃として水分率を測定する。
なお、水分率(質量%)は、(乾燥前重量-乾燥後重量)/乾燥前重量×100で算出されている。
【0056】
次に、分離工程S40について説明する。分離工程S40は、分離装置40により実行される。分離工程S40は、凝集物に振動を与えて、構成材料から高吸水性ポリマーを分離する工程である。分離装置40としては、凝集物に振動を与え、構成材料から高吸水性ポリマーを分離し得る装置(複数の装置の組み合わせを含む)であれば特に制限はない。
【0057】
振動は、凝集物が載置された容器や篩などを振動させることにより、それら容器や篩を介して凝集物に与える。振動の方向としては、載置面に平行な面内方向の横振動(載置面の幅方向及び/若しくは奥行方向)、載置面に垂直な方向の縦振動、並びに/又は、それらの組み合わせ(三次元の振動)が挙げられる。振動の振動数としては、分離可能であれば制限はないが、例えば、5Hz(300v.p.m)~500Hz(30000v.p.m)が挙げられ、好ましくは、10Hz(600v.p.m)~250Hz(15000v.p.m)であり、より好ましくは、15Hz(900v.p.m)~100Hz(6000v.p.m)である。
【0058】
構成材料から高吸水性ポリマーを分離する場合、上記の振動と、高吸水性ポリマーと残りの構成材料との分離と、を同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。例えば、凝集物を容器内に入れて振動することで、構成材料が凝集した凝集物を、構成材料が互いに分離したばらけた状態で集合した集合体にし、その後、集合物をスクリーンなどで分離してもよいし、当初から、凝集物を篩いにかけて、振動と分離とを同時に行ってもよい。
【0059】
本方法では、高吸水性ポリマーは、不活化(脱水)されて、小さな粒子径を有する粒状物であるので、他の構成材料とは形状が大きく異なっている。また、その高吸水性ポリマーを含んだ構成材料を含有する凝集物は湿潤な状態であり、したがって、構成材料間には水分が存在する。それゆえ、高吸水性ポリマーは、他の構成材料と水素結合をほとんどしていない状態である。そのような状態の凝集物に振動を与えることで、他の構成材料とは形状が大きく異なり(小さく)、かつ、水素結合をしていない高吸水性ポリマーを、他の構成材料から容易に引き離して、分離することができる。すなわち、少なくとも高吸水性ポリマーと他の構成材料とを実質的にばらけた状態にすることができる。そのような状態を作ることで、構成材料の中から高吸水性ポリマーを選択的に取り出し易くすることができる。それにより、高吸水性ポリマーの回収率及び純度を向上させることができる。
【0060】
次に、再活性化工程S50について説明する。再活性化工程S50は、再活性化装置50により実行される。再活性化工程S50は、準備工程S30及び分離工程S40(高吸水性ポリマーを回収する方法)により得られた高吸水性ポリマーを、アルカリ金属イオンを供給可能なアルカリ金属イオン供給源に接触させることにより、高吸水性ポリマーを再活性化する。
【0061】
準備工程S30及び分離工程S40(高吸水性ポリマーを回収する方法)により得られた高吸水性ポリマーは、不活化されているため、吸水性が低く、そのままでは、水分を吸収するポリマーとしては使用し難い。そこで、再活性化工程S50により、不活化された高吸水性ポリマーとアルカリ金属イオン供給源とを互いに接触させることで、再活性化している。高吸水性ポリマーをアルカリ金属イオン供給源に接触させる場合、直接接触させてもよいし、アルカリ金属イオン供給源を含む水溶液に浸漬させてもよい。
【0062】
本方法は、上記の高吸水性ポリマーを回収する方法で得られた高吸水性ポリマーを、アルカリ金属イオンを供給可能なアルカリ金属イオン供給源に接触させて再活性化することにより、回収された高吸水性ポリマーを原料として、吸水性材料として利用可能なリサイクル高吸水性ポリマーを製造することができる。それにより、回収率及び純度が向上された高吸水性ポリマーを再活性化するので、リサイクル高吸水性ポリマーの回収率及び純度も向上できる。
【0063】
以下、各工程について、詳細に説明する。
【0064】
本実施形態では準備工程S30は不活化工程S31と固液分離工程S32とを備える。
【0065】
まず、不活化工程S31について説明する。不活化工程S31は、不活化装置31により実行される。不活化工程S31は、構成材料中の高吸水性ポリマーの不活化を行う工程である。高吸水性ポリマーが使用済み衛生用品由来の物である場合、液体の排泄物のような水分を内部に吸収しているが、不活化により、それらを排出させる(脱水させる)。それにより、高吸水性ポリマーは、膨潤した状態から概ね粒状の状態へ変化する。したがって、不活化工程S31では、不活化された(脱水された)高吸水性ポリマーを含む構成材料(以下、単に「不活化物」ともいう。)が生成される。
【0066】
本実施形態では、不活化工程S31は、第1脱水工程S311と、第2脱水工程S312と、希釈工程S313と、を備えている。第1脱水工程S311、第2脱水工程S312、及び、希釈工程S313は、それぞれ、不活化装置31の第1脱水装置311、第2脱水装置312、及び、希釈装置313により実行される。ただし、第1脱水装置311、第2脱水装置312、及び、希釈装置313は、互いに独立の装置であってもよいし、いずれか二つが一つの装置であってもよいし、全体として一つの装置であってもよい。
【0067】
まず、第1脱水工程S311について説明する。第1脱水工程S311(事前脱水工程)は、構成材料を、不活化剤である酸を含む水溶液、すなわち、酸性水溶液に浸漬させることにより、構成材料中の高吸水性ポリマーを不活化し、脱水させる。構成材料中の高吸水性ポリマーは、使用済み衛生用品由来であるので、その高吸水性ポリマーを、酸性水溶液に浸漬することで、不活化され、液体の排泄物などを排出させて、不活化された高吸水性ポリマーを形成する。
【0068】
本方法では、不活化工程が、脱水工程の前に、構成材料を、酸性水溶液に浸漬させることで、構成材料中の高吸水性ポリマーを事前に脱水する事前脱水工程を更に有している。ここで、酸で高吸水性ポリマーを不活化(脱水)する場合、多価金属イオンで高吸水性ポリマーを不活化(脱水)する場合と比較して、高吸水性ポリマーの脱水率は低い(水分率は高い)。とはいえ、多価金属イオン供給源による脱水工程の前に、事前に、酸による事前脱水工程を実施することで、不活化工程で得られる高吸水性ポリマーの脱水率をより高く(水分率をより低く)することができる。
【0069】
不活化剤である酸としては、特に限定されず、例えば、無機酸及び有機酸が挙げられる。酸を用いて高吸水性ポリマーを不活化すると、石灰、塩化カルシウム等を用いて高吸水性ポリマーを不活化する場合と比較して、高吸水性ポリマーを含む高税材料に灰分を残留させ難い。無機酸としては、例えば硫酸、塩酸及び硝酸が挙げられるが、塩素を含まない観点や、コスト等の観点から硫酸が好ましい。酸性水溶液の硫酸濃度は、特に限定されないが、例えば、0.1~0.5質量%以下が挙げられる。一方、有機酸としては、例えば、1分子中に複数個のカルボキシル基を有するカルボン酸(例示:クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、シュウ酸)、1分子中に1個のカルボキシル基を有するカルボン酸(例示:グルコン酸、ペンタン酸、ブタン酸、プロピオン酸、グリコール酸、酢酸、蟻酸)、スルホン酸(例示:メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸)等が挙げられる。有機酸としては、排泄物等に含まれる2価以上の金属(例示:カルシウム)とキレート錯体を形成し易く、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維に灰分を残留させ難い観点から、複数個のカルボキシル基を有することが好ましく、クエン酸がより好ましい。酸性水溶液のクエン酸濃度は、特に限定されないが、例えば0.5~4質量%が挙げられる。本実施形態では酸性水溶液における酸として硫酸を用いる。
【0070】
酸性水溶液は、酸性であればよいが、所定のpHを有することが好ましい。所定のpHの上限としては、好ましくは4.5、より好ましくは4.0、さらに好ましくは3.5、さらにいっそう好ましくは3.0である。所定のpHが高過ぎると、高吸水性ポリマーの不活化が十分に行われず、高吸水性ポリマーが保持する水分(例示:液体の排泄物)の排出が不十分になり易く、他の構成材料との分離がし難くなり易い。一方、所定のpHの下限としては、好ましくは0.5、より好ましくは1.0である。所定のpHが低過ぎると、他の構成材料が損傷し易くなる。なお、本明細書において、pHは、25℃における値を意味する。また、pHは、pHメーター(例示:株式会社堀場製作所製のtwin AS-711)を用いて測定することができる。上記の所定のpHは、第1脱水工程S311の終了時点で測定するものとする。
【0071】
第1脱水工程S311を実行する第1脱水装置311としては、高吸水性ポリマーを、酸性水溶液に浸漬させることができれば、具体的な構成は特に限定されない。第1脱水装置311は、例えば、高吸水性ポリマーを含む構成材料を配置可能、かつ、酸性水溶液を貯留可能な槽を有する。第1脱水装置311では、その槽に酸性水溶液が貯留された後に、高吸水性ポリマーを含む構成材料が投入されてもよいし、その槽に高吸水性ポリマーを含む構成材料が配置された後に、酸性水溶液が投入されてもよい。
【0072】
第1脱水工程S311では、温度にもよるが、ムラなく反応を進行させるために、酸性水溶液を含む槽中で、高吸水性ポリマーを含む構成材料を、例えば、約5~60分攪拌することにより、高吸水性ポリマーを不活化できる。第1脱水工程S311では、酸性水溶液の温度は、特に制限がなく、例えば、室温(25℃)が挙げられ、好ましくは室温よりも高温、より好ましくは60~95℃、さらに好ましくは70~90℃である。酸性水溶液中の酸により、酸性水溶液に含まれる、排泄物等に由来する菌を除菌し易くなる。
【0073】
第1脱水工程S311では、得られる高吸水性ポリマーが、好ましくは80~99質量%、より好ましくは80~97質量%、そしてさらに好ましくは80~95質量%の水分率を有するように脱水することが好ましい。それにより、第2脱水工程S312で得られる高吸水ポリマーの水分率を下げやすくなる。
【0074】
ただし、高吸水性ポリマーの水分率は、上述された<凝集物の水分率>と同様に、赤外線水分計(FD-720:株式会社ケツト科学研究所製)を用いて測定できる。
【0075】
本実施形態では、第1脱水工程S311は、構成材料中の高吸水性ポリマーを不活化し、脱水した後に、構成材料を酸性水溶液から分離(スクリーンなどによる固液分離)する酸分離工程を備えていてもよい。また、その後、高吸水性ポリマーを強酸(例示:pH1程度)などで不活化して、不活化の程度が十分であれば、構成材料を水で洗浄してもよい。すなわち、構成材料を、構成材料の数倍(例示:2~10倍)の質量の水(以下、「洗浄水」ともいう。)で洗浄し(複数回の洗浄でも可)、その洗浄水から構成材料を分離(スクリーンなどによる固液分離)する第1洗浄工程を更に備えていてもよい。
【0076】
なお、第1脱水工程S311の処理の終了段階で、高吸水性ポリマーの水分率が85質量%未満になっている場合には、他の構成材料の水分も固液分離工程S32などで十分に除去されれば、その高吸水性ポリマーは分離工程S40で他の構成材料から分離し得る。その場合には、次の第2脱水工程S312(及び希釈工程S313)を省略し得る。
【0077】
なお、構成材料中の高吸水性ポリマーを不活化するのに、第1脱水工程S311を省略して、第2脱水工程S312を実施してもよい。
【0078】
次に、第2脱水工程S312について説明する。第2脱水工程S312(脱水工程)は、構成材料を、不活化剤である多価金属イオンを供給可能な多価金属イオン供給源に接触させることにより、構成材料中の高吸水性ポリマーを更に不活化し、脱水させる。第1脱水工程S311後の高吸水性ポリマーを、更に多価金属イオン供給源の多価金属イオン(例示:カルシウムイオン)に接触させることで、より不活化され、液体の排泄物などをより排出させて、更に不活化された高吸水性ポリマーを形成する。
【0079】
本方法では、準備工程S30が、高吸水性ポリマーの不活化を行う不活化工程を含み、不活化工程は、構成材料を、多価金属イオンを供給可能な多価金属イオン供給源に接触させることで、構成材料中の高吸水性ポリマーを脱水させる第2脱水工程S312を有している。不活化(脱水)のために、多価金属イオン供給源を用いることで、より確実に、高吸水性ポリマーを不活化(脱水)し、小さな粒子径を有する粒状物とすることができる。
【0080】
不活化剤である多価金属イオンとしては、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン等が挙げられる。上記アルカリ土類金属イオンとしては、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン及びバリウムイオンが挙げられる。上記遷移金属イオンとしては、例えば、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン等が挙げられる。
【0081】
上記多価金属イオンがアルカリ土類金属イオンである場合に、上記多価金属イオンを供給可能な多価金属イオン供給源としては、アルカリ土類金属の水酸化物(例示:水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム)、アルカリ土類金属の水酸化物及び酸の塩(例示:塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム)、アルカリ土類金属の酸化物(例示:酸化カルシウム、酸化マグネシウム)等が挙げられ、塩化カルシウムが好ましい。上記酸としては、第1脱水工程S311で説明した、酸性水溶液用の酸が挙げられる。
【0082】
上記多価金属イオンが遷移金属イオンである場合に、上記多価金属イオンを供給可能な多価金属イオン供給源としては、遷移金属の水酸化物(例えば、水酸化鉄、水酸化コバルト、水酸化ニッケル、水酸化銅)、遷移金属の水酸化物及び酸の塩、遷移金属の酸化物(例えば、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅)等が挙げられる。上記酸としては、第1脱水工程S311で説明した、酸性水溶液用の酸が挙げられる。
【0083】
上記遷移金属の水酸化物及び酸の塩の具体例として、無機酸塩又は有機酸塩が挙げられる。上記無機酸塩としては、例えば、塩化鉄、硫酸鉄、燐酸鉄、硝酸鉄等の鉄塩、塩化コバルト、硫酸コバルト、燐酸コバルト、硝酸コバルト等のコバルト塩、塩化ニッケル、硫酸ニッケル等のニッケル塩、塩化銅、硫酸銅等の銅塩等が挙げられる。上記有機酸塩類としては、例えば、乳酸鉄、酢酸コバルト、ステアリン酸コバルト、酢酸ニッケル、酢酸銅等が挙げられる。
【0084】
第2脱水工程S312では、例えば、第1脱水工程S311で脱水された高吸水性ポリマーを、多価金属イオンを供給可能な多価金属イオン供給源そのものと直接接触させ、更に不活化(脱水)された高吸水性ポリマーを形成することができる。あるいは、第2脱水工程S312では、多価金属イオンを供給可能な多価金属イオン供給源を含む水溶液中で、第1脱水工程S311で脱水された高吸水性ポリマーを、温度にもよるが、約5~60分攪拌することにより、更に不活化(脱水)された高吸水性ポリマーを形成することができる。
【0085】
第2脱水工程S312における多価金属イオン供給源を含む水溶液は、加温しなくても、そして加温してもよい。また、その多価金属イオン供給源を含む水溶液の温度は、加温しない場合には、特に制限がなく、例えば、室温(25℃)~40℃、60℃未満等であることができる。加温する場合には、好ましくは室温よりも高温、より好ましくは60~100℃、さらに好ましくは70~95℃、そしてさらにいっそう好ましくは80~90℃である。多価金属イオン供給源の水への溶解性が低い場合には、加温とすることにより、多価金属イオン供給源から効率よく多価金属イオンを供給し、更に不活化(脱水)された高吸水性ポリマーの形成を促進することができる。
【0086】
第2脱水工程S312では、得られる高吸水性ポリマーが、好ましくは50~80質量%、より好ましくは50~75質量%、そしてさらに好ましくは50~70質量%の水分率を有するように、第1脱水工程S311で脱水された高吸水性ポリマーを更に不活化(脱水)する。それにより、得られる高吸水性ポリマー中の排泄物の残存量を少なくすることができると共に、その高吸水性ポリマーから、リサイクル高吸水性ポリマーを形成しやすくなる。なお、その高吸水性ポリマーの水分率が低過ぎると、再活性化工程S50において、その高吸水性ポリマーが、アルカリ金属イオン供給源と反応し難くなり、サイクル高吸水性リポリマーを形成し難くなる。一方、その高吸水性ポリマーの水分率が高過ぎると、分離工程S40において、その高吸水性ポリマーが、他の構成材料から分離し難くなる。
【0087】
第2脱水工程S312を実行する第2脱水装置312としては、高吸水性ポリマーを、上記多価金属イオンに浸漬させることができれば、具体的な構成は特に限定されない。第2脱水装置312は、例えば、高吸水性ポリマーを含む構成材料を配置可能、かつ、多価金属イオン供給源又は多価金属イオン供給源を含む水溶液を貯留可能な槽を有する。第2脱水装置312では、その槽に多価金属イオン供給源又は多価金属イオン供給源を含む水溶液が貯留された後に、高吸水性ポリマーを含む構成材料が投入されてもよいし、その槽に高吸水性ポリマーを含む構成材料が配置された後に、多価金属イオン供給源又は多価金属イオン供給源を含む水溶液が投入されてもよい。
【0088】
第2脱水工程S312において、第1脱水工程S311で脱水された高吸水性ポリマーを、多価金属イオン供給源を含む水溶液と接触させるとき、例えば、その高吸水性ポリマーを、その水溶液に投入する場合には、その水溶液における多価金属イオン供給源の濃度は、好ましくは1.0~30.0質量%、より好ましくは3.0~25.0質量%、そして好ましくは5.0~20.0質量%である。それにより、第2脱水工程S312で得られる高吸水性ポリマーが所望の水分率を有しやすくなる。
【0089】
本実施形態では、第2脱水工程S312は、構成材料中の高吸水性ポリマーを不活化し、脱水した後に、構成材料を、多価金属イオンを含む水溶液から分離(スクリーンなどによる固液分離)する多価金属イオン分離工程を備えていてもよい。また、その後、構成材料を、その数倍(例示:2~10倍)の質量の水(以下、「洗浄水」ともいう。)で洗浄し(複数回の洗浄も可)、その洗浄水から構成材料を分離(スクリーンなどによる固液分離)する第2洗浄工程を更に備えていてもよい。
【0090】
次に、希釈工程S313について説明する。希釈工程S313は、第2脱水工程S312(又は第1脱水工程S311)で得られた、不活化された高吸水性ポリマーを含む構成材料を構成材料の数倍(例示:2~10倍)の質量の水(以下、「希釈水」ともいう。)で希釈する。それにより、後続の固液分離工程S32において、固液分離が容易となる。
【0091】
なお、希釈工程S313を省略してもよい。その場合であって、第2脱水工程S312を省略する場合には、第1脱水工程S311の第1洗浄工程(ただし、固液分離を行わない)を希釈工程S313の代わりとしてもよい。あるいは、第2脱水工程S312の第2洗浄工程(ただし、固液分離を行わない)を希釈工程S313の代わりとしてもよい。
【0092】
希釈工程S313を実行する希釈装置313としては、構成材料を、その数倍の質量の水に浸漬させることができれば、具体的な構成は特に限定されない。希釈装置313は、例えば、構成材料及び水を貯留可能な槽を有する。なお、第1脱水装置311、第2脱水装置312、及び、希釈装置313のうちの少なくとも二つの装置として、同一の槽を有してもよい。
【0093】
また、希釈工程S313において、高吸水性ポリマーを含む構成材料を酸化剤で処理する酸化剤処理工程を有していてもよい。酸化剤としては、構成材料中の高吸水性ポリマーの表面に付着している不純物(例示:臭気物質、有色物質、雑菌)を除去可能であれば特に制限はないが、例えば、オゾンや過酸化水素が挙げられる。酸化剤を水に混入して水溶液として使用する場合、水溶液中の酸化剤の濃度は、例えば0.3~2質量ppmが挙げられる。本実施形態では、不活化された高吸水性ポリマーを含む構成材料を、酸化剤の水溶液、すなわちオゾンを所定濃度だけ含むオゾン水に、所定の時間だけ接触(浸漬)させることで、高吸水性ポリマーの表面の不純物が除去される。
【0094】
オゾン水中のオゾン濃度は、高吸水性ポリマーの表面に付着している菌や他の有機物などを除去することができる濃度であれば、特に限定されないが、好ましくは0.3~2質量ppm、より好ましくは0.5~1.5質量ppmである。濃度が低過ぎると、菌等の除去が難しくなり、濃度が高過ぎると、高吸水性ポリマーが分解し始めるおそれがある。オゾン水と高吸水性ポリマーとの接触時間は、高吸水性ポリマーの表面に付着している菌や他の有機物などを除去することができる時間であれば、特に限定されないが、オゾン水中のオゾン濃度が高ければ短く、オゾン濃度が低ければ長くする。その接触時間は、好ましくは0.3秒~15分、より好ましくは3秒~10分である。オゾン水中のオゾン濃度(質量ppm)と接触時間(分)の積(以下「CT値」ともいう。)は、好ましくは0.01~20ppm・分、より好ましくは0.08~10ppm・分である。CT値が小さ過ぎると、除菌が難しくなり、CT値が大き過ぎると、高吸水性ポリマーが分解するおそれがある。ただし、オゾン水による処理では、高吸水性ポリマーの表面に付着している不純物を除去することにより、菌などの除去と共に漂白も行うことができる。オゾンを水中に供給するオゾン発生装置としては、例えばエコデザイン株式会社製オゾン水曝露試験機ED-OWX-2、三菱電機株式会社製オゾン発生装置OS-25V等が挙げられる。
【0095】
酸化剤処理工程では、ムラなく反応を進行させるため、高吸水性ポリマーを含むオゾン水を槽中で攪拌してもよい。酸化剤処理工程ではオゾン水の温度は、特に制限がなく、例えば、室温(25℃)が挙げられ、好ましくは10~40℃である。オゾン水は高温にし過ぎるとオゾンがガスとして抜け易くなり失活し易くなり、低温にし過ぎるとオゾン処理の時間が長くなり易くなる。それにより、オゾン水のオゾンにより、高吸水性ポリマー表面に付着した菌や有機物を除去し易くなる。
【0096】
酸化剤処理工程を実行する酸化剤処理装置としては、不活化された高吸水性ポリマーを、形状を壊さずにオゾン水に接触(又は浸漬)させることができれば、具体的な構成は特に限定されない。酸化剤処理装置としては、例えば、二軸スクリューポンプ(BQ型:伏虎金属工業株式会社製)が挙げられる。二軸スクリューポンプは容積式自吸ポンプである。二軸スクリューポンプは、ケーシングと、ケーシング内の部屋に配置され、互いに平行に延びる二軸のスクリューと、を備える。高吸水性ポリマーを含むオゾン水は、部屋内に供給され、径方向から、二軸のスクリューに到達した後、二軸のスクリューの回転によって軸方向に押し出され、吐出される。
【0097】
次に、固液分離工程S32について説明する。固液分離工程S32は、固液分離装置32により実行される。固液分離工程S32は、不活化された高吸水性ポリマーを含んだ構成材料を含有する水溶液に、固液分離を行い、固体である凝集物と液体とを得る。本実施形態では、不活化された高吸水性ポリマーを含んだ構成材料は、第1脱水工程S311及び/又は第2脱水工程S312で不活化された高吸水性ポリマーを含んだ構成材料である。水溶液は、第1脱水工程S311の洗浄水(例示:2回目以降の洗浄水、第2脱水工程S312を行わない場合)、第2脱水工程S312の洗浄水(例示:2回目以降の洗浄水)、希釈工程S313の希釈水が挙げられる。
【0098】
本方法では、準備工程S30が、不活化された高吸水性ポリマーを含んだ構成材料を含有する水溶液を、固液分離して、固体である凝集物を得る固液分離工程S32を備えている。ここで、凝集物(固体)は、構成材料で形成されており、水分を保持し得る。そのため、凝集物中の液体(水分)の量を適度な量に抑えて、適度な湿潤な状態を作ることができる。それにより、凝集物中の水分の量が多過ぎて振動が減衰されたり、少な過ぎて構成材料間の水素結合が強すぎたりして、高吸水性ポリマーと他の構成材料とを実質的にばらけた状態することができず、高吸水性ポリマーが分離し難くなることを抑制できる
【0099】
固液分離工程S32における固液分離方法としては、固体として、不活化された高吸水性ポリマーを含む構成材料の凝集物が得られ、液体として水溶液が得られる方法であれば、特に制限はない。その固液分離方法を実現する装置としては、例えば、遠心分離装置、真空脱水装置、多重円板脱水装置、スクリュープレス、ロータリードラムスクリーンなどが挙げられる。言い換えると、固液分離工程S32における固液分離方法としては、これらの装置で行われる固液分離方法を用いることができる。
【0100】
固液分離工程S32における固液分離方法としては、遠心分離装置を用いた方法(遠心分離法)が好ましい。本実施形態では、ギナ遠心分離装置を用いた方法(例示:IHI社製:N型ギナ連続遠心分離装置)を用いる。したがって、固液分離工程S32は、固液分離として構成材料を含有する水溶液の遠心分離を行い、凝集物と液体とを得る遠心分離工程を含んでいる。ギナ遠心分離装置では、回転速度により、分離される凝集物の水分率を調整できる。
【0101】
本方法では、固液分離として、構成材料を含有する水溶液の遠心分離を行う遠心分離工程を含んでいる。遠心分離では、構成材料に掛かる力の制御が比較的容易であるため、高吸水性ポリマーが潰れないようにし易く、かつ凝集物に含まれる水分(水分率)を所望の数値範囲に調整し易い。それにより、高吸水性ポリマーの損傷を抑えつつ、凝集物を適度な湿潤な状態にすることができる。更に、遠視分離では、構成材料に掛かる力の制御が比較的容易であるため、凝集物の密度を所望の数値範囲に調整し易い。
【0102】
遠心分離により調整される凝集物の水分率としては、10質量%以上、85質量%未満が挙げられ、好ましくは、15質量%以上、80質量%以下であり、より好ましくは、20質量%以上、75質量%以下である。また、遠心分離により調整される凝集物の密度としては、0.1g/cm3以上、1.5g/cm3以下が挙げられ、0.13g/cm3以上、1.2g/cm3以下が好ましく、0.15g/cm3以上、1.0g/cm3以下がより好ましい。
【0103】
固液分離工程S32(遠心分離工程)で分離された高吸水性ポリマーの水分率は、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。水分率は、低ければ低いほど良いので、特に下限はないが、例えば(現実的には)50質量%以上である。
【0104】
本方法では、遠心分離工程後の高吸水性ポリマーの水分率が80質量%以下であるため、高吸水性ポリマーは小さな粒子径を有する粒状物となっている。また、遠心分離工程の前後で不活化された高吸水性ポリマーの水分率がほとんど変化しないと考えると、遠心分離工程後の高吸水性ポリマーの水分率が80質量%以下であるので、遠心分離工程前の高吸水性ポリマーの水分率も概ね80質量%以下といえる。すなわち、高吸水性ポリマーがほとんど水分を含有していない状態で遠心分離を行うため、固液分離(遠心分離)において、高吸水性ポリマーを損傷し難くすることができる。それにより、分離工程S40において、高吸水性ポリマーをより回収し易くすることができる。
【0105】
次に、分離工程S40について説明する。分離工程S40は、篩分離工程S41を備える。篩分離工程S41は、凝集物を、高吸水性ポリマーが通過可能な目を有する、振動する篩にかける工程である。篩分離工程S41は、篩分離装置41(篩装置)により実行される。篩分離装置41としては、凝集物に振動を与えて、構成材料から高吸水性ポリマーを分離し得る篩(複数の篩の組み合わせを含む)であれば特に制限はない。
【0106】
篩分離装置41(篩装置)は、篩を振動させることにより、篩を介して篩上の凝集物に振動を与える。本実施形態では、篩分離装置41としては、佐藤式振動篩機(カセット型:ケイエスリンクス株式会社製)を用いる。振動の方向としては、篩面に平行な面内方向の横振動(篩面の幅方向及び/若しくは奥行方向)、篩面に垂直な方向の縦振動、並びに/又は、それらの組み合わせ(三次元の振動)が挙げられる。篩分離装置41は、振動を発生させる振動体と、一端を振動体の上部に取り付けられた上部ウエイトと、一端を振動体の下部に取り付けられた下部ウエイトとを備えている。上部ウエイトの回転は、篩面の中心に供給された物質を回転方向に移動させる役割を有し、下部ウエイトの回転は、篩面の垂直振動を発生させて外周方向に移動させる役割を有する。篩の振動のさせ方には、上部ウエイトの他端の位置と下部ウエイトの他端の位置との相対的な位置関係(位相差)により行う。
【0107】
振動の振幅としては、篩面に平行な面内方向の横振動(篩面の幅方向及び/若しくは奥行方向)の振幅では、例えば、1~20mmが挙げられ、1.5~15mmが好ましく、3~10mmがより好ましい。篩面に垂直な方向の縦振動の振幅では、例えば、0.5~20mmが挙げられ、1~15mmが好ましく、2~10mmがより好ましい。篩の振動数としては、例えば、5Hz(300v.p.m)~500Hz(60000v.p.m)が挙げられ、好ましくは、10Hz(600v.p.m)~250Hz(15000v.p.m)であり、より好ましくは、15Hz(900v.p.m)~100Hz(6000v.p.m)である。
【0108】
本方法では、高吸水性ポリマーは、他の構成材料とは形状が大きく異なり(小さく)、水素結合をほとんどしていない状態である。そのため、高吸水性ポリマーを篩に掛けると、篩の振動により、高吸水性ポリマーを他の構成材料からより容易に引き離すことができる。すなわち、高吸水性ポリマーと他の構成材料とを実質的にばらけた状態にすることができる。そのような状態を篩の上で作ることで、引き離された高吸水性ポリマーを他の構成材料からより容易に篩い分けることができる。それにより、構成材料の中から高吸水性ポリマーを選択的に取り出すことができ、高吸水性ポリマーの回収率及び純度を向上させることができる。その場合、例えば、パルプ繊維やシート部材(フィルム・不織布など)のような他の構成材料は、篩の上に残って回収され、高吸水性ポリマーは、篩の下に落ちて回収される。なお、パルプ繊維及びシート部材(フィルム・不織布など)は、他の篩により、更にそれぞれに分離されてもよい。
【0109】
本実施形態では、好ましい態様として、分離工程S40の篩分離工程S41において、篩の振動が、縦振動、すなわち、篩面に垂直な方向の振動だけではなく、横振動、すなわち、篩面に平行な面内方向の振動を含んでいる。そのため、凝集物を篩面に垂直な方向だけでなく、平行な方向にも揺することができる。それにより、高吸水性ポリマーを他の構成材料からより容易に引き離すことができ、高吸水性ポリマーと他の構成材料とをより容易に実質的にばらけた状態にすることができる。そのような状態を篩の上で作ることで、引き離された高吸水性ポリマーを他の構成材料からより容易に篩い分けることができる。
【0110】
篩の目の大きさは、高吸水性ポリマーを他の構成材料から分離可能であれば、特に制限はないが、例えば、1~5mmが挙げられ、1.3~4mmが好ましく、1.6~3mmがより好ましい。それにより、高吸水性ポリマーが篩を通過し易く、他の構成材料が篩を通過し難くできる。目の大きさが小さ過ぎると、他の構成部材だけでなく高吸水性ポリマーも篩を通過し難くなり、大き過ぎると、高吸水性ポリマーだけでなく他の構成部材も通過し易くなる。
【0111】
本実施形態では、好ましい態様として、篩が、高吸水性ポリマーが通過可能な目をする第1篩部分と、第1篩部分の下側に位置し、第1篩部分よりも細かく、高吸水性ポリマーが通過可能な目をする第2篩部分と、を備えている。すなわち、篩が二段になっている。そして、篩分離工程S41は、凝集物を、振動する篩にかけて、第1篩部分及び第2篩部分の二段階で高吸水性ポリマーを篩い分ける工程を含んでいる。それにより、回収される高吸水性ポリマーの純度をより高めることができる。なお、篩の段数としては、更に多く、三段以上であってもよい。
【0112】
篩が、第1篩部分及び第2篩部分を備える場合、第1篩部分(上側)の篩の目の大きさは、例えば、2.5~5mmが挙げられ、2.8~4.5mmが好ましく、3~4mmがより好ましい。第2篩部分(下側)の篩の目の大きさは、例えば、1~3mmが挙げられ、1.2~2.8mmが好ましく、1.4~2.6mmがより好ましい。それにより、最終的(第2篩部分の下)に、第1篩部分及び第2篩部分を通過し、他の構成材料の混入が極めて少ない高吸水性ポリマーを得ることができる。
【0113】
本実施形態では、好ましい態様として、構成材料がパルプ繊維を含んでいる場合、篩分離工程S41は、パルプ繊維が篩の表面上の外側へ移動し、高吸水性ポリマーが篩の下側へ移動して、互いに分離される工程を含んでいる。このような分離は、篩の動作(振動のさせ方、例えば、横振動と縦振動との組み合わせ方(上部ウエイトと下部ウエイトの位相差))により実現できる。
【0114】
本方法では、高吸水性ポリマーは、パルプ繊維とは形状が大きく異なり、水素結合をほとんどしていない状態である。そのため、高吸水性ポリマーを篩に掛けると、篩の振動により、高吸水性ポリマーをパルプ繊維からより容易に引き離すことができ、引き離された高吸水性ポリマーを構成材料の中から選択的に取り出すことができる。それにより、高吸水性ポリマーを他の構成材料からより容易に篩い分けることができ、高吸水性ポリマーの回収率及び純度を向上させることができる。その場合、例えば、パルプ繊維やシート部材は、篩の上に残って回収され、高吸水性ポリマーは、篩の下に落ちて回収される。
【0115】
本実施形態では、好ましい態様として、遠心分離工程の遠心分離を行う遠心分離装置(例示:ギナ連続遠心分離装置)の下に、篩分離工程S41の篩を有する篩分離装置41(篩装置)(例示:佐藤式振動篩機)が配置されている。そのため、遠心分離工程後の凝集物を直ちに篩にかけることができ、それにより、遠心分離後の凝集物の状態(高吸水性ポリマーの状態や凝集物の水分率)が変動するのを抑制しつつ、篩分離工程S41を実行できる。それにより、高吸水性ポリマーをより回収し易くすることができる。
【0116】
本実施形態では、好ましい態様として、固液分離工程S32で得られる液体(水溶液)からスクリーンにより高吸水性ポリマーを回収する工程を更に具備する。回収された高吸水性ポリマーは、分離工程S40に供給してもよいし、不活化工程S31に戻してもよい。それにより、高吸水性ポリマーの回収率を向上させることができる。
【0117】
なお、本実施形態に係る高吸水性ポリマーを回収する方法(リサイクル高吸水性ポリマーを製造する方法)において、第1脱水工程S311、すなわち使用済み衛生用品から構成材料を取り出し、酸性水溶液で構成材料中の高吸水性ポリマーを不活化する方法については、特に制限はなく、任意の方法を採用できる。以下では、そのような方法、すなわち、不活化工程S31(不活化装置31)の第1脱水工程S311(第1脱水装置311)の変形例について、
図4及び
図5を参照して説明する。
【0118】
図4は、実施形態に係る第1脱水工程S311の変形例を示すフローチャートである。この変形例は、使用済み衛生用品からフィルム・不織布など、高吸水性ポリマーを含む構成材料A、及び、パルプ繊維を分離する工程を備えている。また、
図5は、実施形態に係る第1脱水工程S311に用いられる第1脱水装置の変形例を示すブロック図である。この変形例は、使用済み衛生用品からフィルム・不織布など、高吸水性ポリマーを含む構成材料A、及び、パルプ繊維を分離する装置を備えている。一方、そして、
図4に示すように、第1脱水工程S311の変形例は開孔部形成工程P11~第2分離工程P17(好ましくは第3分離工程P18~第4分離工程P20)を備え、それらに対応して、
図5に示すように、第1脱水装置311の変形例は破袋装置11~第2分離装置17(好ましくは第3分離装置18~第4分離装置20)を備える。以下、各工程について具体的に説明する。
【0119】
ただし、本実施形態では、使用済みの衛生用品を、再利用(リサイクル)のために外部から回収・取得して用いる。その際、使用済みの衛生用品、特に、使用済み吸収性物品及びそれに関連して使用されるウェットティッシュなどは、複数まとめて、排泄物や菌類や臭気が外部に漏れないように収集袋に封入される。以下では、主に使用済み吸収性物品に関して説明する。
【0120】
開孔部形成工程P11は破袋装置11により実行される。破袋装置11は、不活化剤を含む不活化水溶液を貯留する溶液槽と、溶液槽内で回転する破袋刃と、を備える。破袋装置11は、溶液槽内に投入された収集袋に、不活化水溶液中で破袋刃により開孔部を形成する(あるいは、収集袋を切り裂く)。それにより、不活化水溶液が開孔部から浸入した収集袋と不活化水溶液との混合液91が生成される。不活化水溶液は、収集袋内の使用済み吸収性物品の高吸水性ポリマーを不活化する。以下、不活化水溶液として酸性水溶液(酸含有水溶液)を用いる場合を例に説明する。
【0121】
破砕工程P12は破砕装置12により実行される。破砕装置12は、二軸破砕機(例示:二軸回転式破砕機など)を備える。破砕装置12は、混合液91の使用済み吸収性物品を含む収集袋を、収集袋ごと破砕する。それにより、使用済み吸収性物品を含む収集袋の破砕物と酸性水溶液とを有する混合液92が生成される。それと共に、使用済み吸収性物品の概ねすべての高吸水性ポリマーが酸性水溶液により不活化される。ただし、破砕物は、高吸水性ポリマーを含む構成材料、すなわち、高吸水性ポリマー、パルプ繊維、フィルム・不織布など、及び、収集袋の一部又は全部が小片化されたものである。その小片の大きさ(最大寸法)は、例えば、2~30mmが挙げられ、2~20mmが好ましく、2~10mm以下がより好ましい。なお、開孔部形成工程P11と破砕工程S12とは概ね同時に行われてもよい。例えば、酸性水溶液中で収集袋を破砕しつつ、高吸水性ポリマーを不活化してもよい。
【0122】
第1分離工程P13は第1分離装置13により実行される。第1分離装置13は、洗浄槽兼ふるい槽として機能する撹拌分離槽を有するパルパー分離機を備える。第1分離装置13は、混合液92を撹拌し、破砕物から排泄物などを除去しつつ、混合液92から、構成材料のうちのパルプ繊維及び高吸水性ポリマー、並びに、排泄物及び酸性水溶液を分離する。それにより、構成材料のうちのパルプ繊維及び高吸水性ポリマー、並びに、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液93が生成される。それとは別に、構成材料のうちのフィルム、不織布などや、収集袋の素材が回収される。
【0123】
なお、開孔部形成工程P11及び破砕工程P12(破袋装置11及び破砕装置12)は、酸性水溶液中で使用済み吸収性物品を処理し、その高吸水性ポリマーを不活化している。したがって、この段階での高吸水性ポリマーの不活化・脱水が十分である場合には、開孔部形成工程P11及び破砕工程P12は第1脱水工程S311とみなすことができる。その場合には、混合液92を固液分離して、混合液から高吸水性ポリマーを含む構成材料を取り出して、第2脱水工程S312、希釈工程S313、又は固液分離工程S32へ供給してもよい。
【0124】
また、破砕工程P12(破砕装置12)は、不活化水溶液中で使用済み吸収性物品を破砕せず、気体中(例示:空気中)で収集袋ごと使用済み吸収性物品を破砕してもよい。その場合、開孔部形成工程P11(破袋装置11)は不要である。破砕の後、破砕工程P12(破砕装置12)の破砕物と不活化水溶液とが第1分離装置13(第1分離工程P13)に供給され、高吸水性ポリマーが不活化される。
【0125】
第1分離工程P13までの工程は、酸性水溶液中で行われ、その間に高吸水性ポリマーを不活化している。この段階での高吸水性ポリマーの不活化・脱水が十分である場合には、第1分離装置13(第1分離工程P13)又はそれまでの工程は第1脱水工程S311とみなすことができる。その場合には、混合液93を固液分離して、混合液から高吸水性ポリマーを含む構成材料を取り出して、第2脱水工程S312、希釈工程S313、又は固液分離工程S32へ供給してもよい。
【0126】
第1除塵工程P14は第1除塵装置14により実行される。第1除塵装置14は、スクリーン分離機を備え、混合液93を、スクリーンにより、酸性水溶液中のパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び排泄物と他の資材(異物)とに分離する。それにより、異物の量が低減された、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液94が生成されると共に、他の資材が除去される。次いで、第2除塵工程P15は第2除塵装置15により実行される。第2除塵装置15は、スクリーン分離機を備え、混合液94を、第1除塵装置14より細かいスクリーンで、酸性水溶液中のパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び排泄物と他の資材(小異物)とに分離する。それにより、異物の量が更に低減された、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液95が生成されると共に、他の資材が更に除去される。次いで、第3除塵工程P16は第3除塵装置16により実行される。第3除塵装置16は、サイクロン分離機を備え、混合液95を、遠心分離により、酸性水溶液中のパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び排泄物と他の資材(比重の重い異物)とに分離する。それにより、異物の量がより低減された、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液96が生成されると共に、比重の大きい他の資材が除去される。なお、混合液93などの状態(例示:異物の量や大きさ)により、第1除塵工程P14~第3除塵工程P16(第1除塵装置14~第3除塵装置16)のうちの少なくとも一つを省略してもよい。
【0127】
なお、第1除塵工程P14~第3除塵工程P16(第1除塵装置14~第3除塵装置16)は、各混合液が酸性水溶液を含んでいるので、各混合液中の高吸水性ポリマーを不活化している(又は不活化した状態を維持している)。したがって、これらの工程のうちのいずれかの工程における高吸水性ポリマーの不活化・脱水が十分である場合には、当該工程(又は、それまでの工程)は第1脱水工程S311とみなすことができる。その場合には、当該工程の混合液を固液分離して、混合液から高吸水性ポリマーを含む構成材料を取り出して、第2脱水工程S312、希釈工程S313、又は固液分離工程S32へ供給してもよい。
【0128】
第2分離工程P17は第2分離装置17により実行される。第2分離装置17は、ドラムスクリーン分離機を備え、混合液96を、ドラムスクリーンにより、酸性水溶液中の高吸水性ポリマーと、パルプ繊維とに分離する。それにより、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液97が生成され、パルプ繊維が混合物98として除去される。混合液97中の高吸水性ポリマーは、酸性水溶液による不活化がなされ、脱水された状態である。したがって、混合液97を固液分離して、混合液97から固体99を分離すると、その固体99は高吸水性ポリマーを含む構成材料Aである。ただし、得られた高吸水性ポリマーを含む構成材料Aには、分離し切れないパルプ繊維(パルプ成分)及び/又はフィルム・不織布など(プラスチック成分)等が含まれている。その構成材料Aは、第2脱水工程S312へ供給される。なお、構成材料Aは、希釈工程S313又は固液分離工程S32へ供給してもよい。
【0129】
第3分離工程P18は、第3分離装置18により実行される。第3分離装置18は、傾斜スクリーンを備えており、混合物98に洗浄液を噴射しつつ、スクリーンにより、パルプ繊維を含む固体と、洗浄液を含む液体とに分離する。それにより、汚れなどが低減されたパルプ繊維を含む混合物101が生成されると共に、汚れなどが除去される。
【0130】
酸化剤処理工程P19は酸化剤処理装置19により実行される。酸化剤処理装置19は、酸化剤水溶液を貯留する処理槽と、処理槽内に酸化剤を供給する酸化剤供給装置と、を備える。酸化剤処理装置19は、混合物101を、処理槽の上部又は下部から処理槽内に投入し、処理槽内の酸化剤水溶液と混合する。そして、酸化剤供給装置により処理槽の下部から供給される酸化剤により、酸化剤水溶液中でパルプ繊維に含まれる高吸水性ポリマーを分解して、酸化剤水溶液に可溶化する。それにより、高吸水性ポリマーが除去されたパルプ繊維と高吸水性ポリマーの分解物を含む酸化剤水溶液とを有する混合液102が生成される。酸化剤は、高吸水性ポリマーを分解可能な酸化剤であり、例えばオゾンが挙げられ、オゾンは殺菌力や漂白力も高く好ましい。
【0131】
酸化剤水溶液中のオゾン濃度は、好ましくは1~50質量ppmである。濃度が低すぎると、高吸水性ポリマーを完全に可溶化できず、パルプ繊維に高吸水性ポリマーが残留するおそれがあり、濃度が高すぎると、パルプ繊維に損傷を与えるおそれがある。第オゾンでの処理時間は、酸化剤水溶液中のオゾン濃度が高ければ短く、オゾン濃度が低ければ長くし、典型的には5~120分である。酸化剤水溶液中のオゾン濃度(ppm)と処理時間(分)の積(以下、「CT値」ともいう。)は、好ましくは100~6000ppm・分である。CT値が小さすぎると、パルプ繊維の残存する高吸水性ポリマーを完全に可溶化できず、CT値が大きすぎると、パルプ繊維に損傷を与えるおそれがある。
【0132】
第4分離工程P20は、第4分離装置20により実行される。第4分離装置20は、スクリーン分離機を備え、混合液102を、スクリーンにより、パルプ繊維と酸化剤水溶液とに分離する。それにより、リサイクルパルプ繊維が生成されると共に、高吸水性ポリマーの分解物を含む酸化剤水溶液が除去される。
【0133】
なお、上記
図4及び
図5に示す変形例において、不活化水溶液として、酸性水溶液ではなく、多価金属イオン供給源を含む水溶液を用いてもよい。その場合、
図4の変形例は、実施形態に係る第2脱水工程S312の変形例を示すフローチャートとなり、
図5は、実施形態に係る第2脱水工程S312に用いられる第2脱水装置の変形例を示すブロック図となる。この場合、第1脱水工程S311は省略される。得られた不活化された高吸水性ポリマーを含む構成材料Aは、希釈工程S313又は固液分離工程S32へ供給される。
【0134】
本実施形態では、分離工程S40により高吸水性ポリマーを分離して、回収すると同時に、プラスチック成分(例示:フィルム・不織布など)及び/又はパルプ成分を回収することも可能である。例えば、固液分離工程S32により得られた凝集物には、高吸水性ポリマーの他に、他の物質として、フィルム・不織布など(プラスチック成分)及び/又はパルプ繊維(パルプ成分)を含んでいる。したがって、篩分離工程S41により、高吸水性ポリマーを篩いで他の物質から分離すると同時に又はその後に、篩い又は他の方法により、分離された他の物質から、フィルム・不織布など(プラスチック成分)及び/又はパルプ繊維(パルプ成分)に分離してもよい。したがって、本実施形態は、プラスチック成分の回収方法を含んでおり、パルプ成分の回収方法を含んでもいる。
【実施例0135】
以下、実施例に基づき、本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0136】
(1)試料
まず、使用済み吸収性物品に
図4の第1脱水工程S311を行って構成材料Aを生成した。次に、構成材料A(一部、回収率の測定用に除外(後述))に
図2の第2脱水工程S312及び希釈工程S313を行って不活化物を生成した。次に、不活化物に
図1の固液分離工程S32を行って凝集物を生成した。次に、凝集物に篩分離工程S41を行って高吸水性ポリマーを回収した。ただし、第1脱水工程S311では、不活化水溶液として、0.1質量%の硫酸水溶液を用いた。第2脱水工程S312では、不活化水溶液として、7質量%の水酸化カルシウム水溶液を用いた。希釈工程S313では、水のみを用いた。固液分離工程S32では、ギナ遠心分離装置を用いた。篩分離工程S41では、佐藤式振動篩機(篩:2段)を用いた。ここで、実施例1~4は、ギナ遠心分離装置の回転速度により、凝集物の水分率を10質量%以上、85質量%未満としたものであり、比較例1~2は、ギナ遠心分離装置の回転速度により、凝集物の水分率を10質量%未満、85質量%以上としたものである。
【0137】
(2)結果
実施例1~4では、凝集物の水分率が10質量%,55質量%,65質量%,75質量%であったが、篩分離工程S41で良好な分離ができて、高吸水性ポリマーの回収率として45質量%,60質量%,40質量%,22質量%が得られた。すなわち、凝集物の水分率を10質量%以上、85質量%未満とすることで、高吸水性ポリマーの高い回収率が得られた。一方、比較例1,2では、凝集物の水分率が0質量%、85質量%であったが、篩分離工程S41で良好な分離ができず、高吸水性ポリマーの回収率8質量%,5質量%しか得られなかった。すなわち、凝集物の水分率を10質量%未満又は85質量%以上とすることで、高吸水性ポリマーの回収率が低くなった。
【0138】
その際、高吸水性ポリマーの純度は、実施例1~2では高純度、実施例3~4では中純度であった。すなわち、実施例1~4では比較的純度の高い高吸水性ポリマーが得られた。一方、高吸水性ポリマーの純度は、比較例1,2では低純度であった。すなわち、比較例1、2では純度の低い高吸水性ポリマーしか得られなかった。
【0139】
【0140】
ただし、高吸水性ポリマーの回収率の測定は以下のとおりである。
<高吸水性ポリマーの回収率>
(1)第1脱水工程S311後の構成材料Aから所定量(例示:100g)秤量して元原料とし、元原料を2個準備する。
(2)一つの元原料を、そのまま乾燥(120℃×60分)して、試料1とする。
(3)一方、別の元原料を、オゾン含有水溶液で処理(水溶液中オゾン濃度30ppm×処理時間60分(CT値:1800))して含まれている高吸水性ポリマーを分解除去し、その後に乾燥(120℃×60分)して、試料2とする。
(4)試料1と試料2との質量差(試料1の質量-試料2の質量)を元原料における高吸水性ポリマーの含有量とする。
(5)元原料における高吸水性ポリマーの含有率(質量%)を、次の式で算出する。
高吸水性ポリマーの含有率(質量%)
=(高吸水性ポリマーの含有量)/(試料1の質量)×100
(6)1バッチ(各実施例、各比較例)当たりの構成材料A(ただし、元原料2個分を除く)を乾燥(120℃×60分)して、その質量を測定する。
(7)構成材料Aの質量に、高吸水性ポリマーの含有率(質量%)を掛けて、構成材料Aにおける高吸水性ポリマーの質量を算出して、高吸水性ポリマーの元質量(乾燥質量)とする。
(8)各バッチ(各実施例、各比較例)で回収された高吸水性ポリマーを乾燥(120℃×60分)し、その質量を測定して、高吸水性ポリマーの回収量(乾燥質量)とする。
(9)構成材料Aの高吸水性ポリマーの回収率(質量%)を、次の式で算出する。
高吸水性ポリマーの回収率(質量%)
=高吸水性ポリマーの回収量(乾燥質量)/高吸水性ポリマーの元質量(乾燥質量)×100
【0141】
ただし、高吸水性ポリマーの純度の測定は以下のとおりである。
<高吸水性ポリマーの純度>
(1)各バッチ(各実施例、各比較例)で回収され、乾燥(120℃×60分)した高吸水性ポリマー(高吸水性ポリマーの回収率の測定方法における(8))から所定量(例示:100g)秤量して純度測定試料1とする。
(2)純度測定試料1をオゾン含有水溶液で処理(水溶液中オゾン濃度30ppm×処理時間60分(CT値:1800))して含まれている高吸水性ポリマーを分解除去し、その後に乾燥(120℃×60分)して、純度測定試料2とする。
(3)純度測定試料1と純度測定試料2との質量差(純度測定試料1の質量-純度測定試料2の質量)を純度測定試料1における高吸水性ポリマーの含有量とする。
(4)純度測定試料1における高吸水性ポリマーの含有率(質量%)を、次の式で算出する。
高吸水性ポリマーの含有率(質量%)
=(高吸水性ポリマーの含有量)/(純度測定試料1の質量)×100
この数値を以て、高吸水性ポリマーの純度とする。
【0142】
本発明の吸収性物品は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能である。