(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062056
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16K 49/00 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
F16K49/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169811
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦塚 崇史
【テーマコード(参考)】
3H066
【Fターム(参考)】
3H066AA01
3H066BA36
(57)【要約】
【課題】流体流路に生じた凍結水を効率的に解凍し得るバルブ装置を提供する。
【解決手段】
バルブ装置は、ハウジングと、ハウジング内に設けられており、外部から流体が導入される一次側通路と、一次側通路の下流側端部に設けられている第一導出部と、ハウジング内に設けられており、第一導出部と連通しているとともに一次側通路と異なる方向に伸びており、外部に流体を導出する二次側通路と、第一導出部と二次側通路の間に設けられており、第一導出部及び二次側通路に連通している連通室と、第一導出部に形成されている弁座と、弁座に接触可能であり、第一導出部を開閉する弁体と、ヒータと、ハウジング内に設けられているとともに一次側通路に沿って伸びており、ヒータの熱を流体に伝熱する伝熱板備えている。このバルブ装置では、一次側通路が、第一導出部側に向かうに従って前記二次側通路に近づくように形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流路の開閉を行うバルブ装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に設けられており、外部から流体が導入される一次側通路と、
前記一次側通路の下流側端部に設けられている第一導出部と、
前記ハウジング内に設けられており、前記第一導出部と連通しているとともに前記一次側通路と異なる方向に伸びており、外部に流体を導出する二次側通路と、
前記第一導出部と前記二次側通路の間に設けられており、前記第一導出部及び前記二次側通路に連通している連通室と、
前記第一導出部に形成されている弁座と、
前記弁座に接触可能であり、前記第一導出部を開閉する弁体と、
ヒータと、
前記ハウジング内に設けられているとともに前記一次側通路に沿って伸びており、前記ヒータの熱を流体に伝熱する伝熱板と、
を備えており、
前記一次側通路が、前記第一導出部側に向かうに従って前記二次側通路に近づくように形成されている、バルブ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブ装置であって、
前記一次側通路が、略水平方向に伸びており、
前記伝熱板の少なくとも一部が、前記一次側通路の下方に設けられている、バルブ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバルブ装置であって、
前記伝熱板の端部が、前記一次側通路の端部と前記二次側通路との間に位置している、バルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、バルブ装置に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、流体流路の開閉を行うバルブ装置が開示されている。特許文献1のバルブ装置は、燃料電池システムを搭載した車両で用いられる。特許文献1では、流体流路内に生成した凍結水を解凍するため、バルブ装置(バルブ本体)とヒータ(発熱体)を一体化している。特許文献1では、バルブ装置とヒータを一体化することにより、両者を熱的に一体構造とし、凍結水の解凍を迅速化している。具体的には、特許文献1のバルブ装置では、一次側通路(弁体より上流側の流体導入路)が、鉛直方向(重力方向)の上方に設けられている弁体に向けて伸びている。そして、ヒータは、一次側通路の鉛直方向下方に設けられている。特許文献1では、液水(凍結していない流体)を下方(ヒータ近傍)に滴下させ、ヒータ近傍に液水を溜め、凍結水の解凍時間を短縮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のバルブ装置は、一次側通路に残存した液水に起因する凍結水を解凍することのみ対策している。しかしながら、流体流路の開閉を行うバルブ装置では、二次側通路(弁体より下流側の流体導出路)でも流体が凍結することが起こり得る。例えば、弁体が閉じられた後(直後)も、二次側通路には流体が残存している。そして、弁体が閉じられた状態で流体が二次側通路を移動すると、流体の上流側が負圧となり、二次側通路に液膜が形成されることがある。特許文献1のバルブ装置では、二次側通路に残存した液水(液膜)に起因する凍結水を効率的に解凍することができない。特許文献1のバルブ装置は、流体流路に生じた凍結水を効率的に解凍できるとはいえない。本明細書は、流体流路に生じた凍結水を効率的に解凍し得るバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する第1技術は、流体流路の開閉を行うバルブ装置である。このバルブ装置は、ハウジングと、ハウジング内に設けられており、外部から流体が導入される一次側通路と、一次側通路の下流側端部に設けられている第一導出部と、ハウジング内に設けられており、第一導出部と連通しているとともに一次側通路と異なる方向に伸びており、外部に流体を導出する二次側通路と、第一導出部と二次側通路の間に設けられており、第一導出部及び二次側通路に連通している連通室と、第一導出部に形成されている弁座と、弁座に接触可能であり、第一導出部を開閉する弁体と、ヒータと、ハウジング内に設けられているとともに一次側通路に沿って伸びており、ヒータの熱を流体に伝熱する伝熱板を備えていてよい。また、このバルブ装置では、一次側通路が、第一導出部側に向かうに従って二次側通路に近づくように形成されていてよい。
【0006】
本明細書で開示する第2技術は、上記第1技術のバルブ装置であって、一次側通路が、略水平方向に伸びており、伝熱板の少なくとも一部が、一次側通路の下方に設けられていてよい。なお、本明細書において、「略水平方向」とは、重力方向に直交する方向(厳密な水平方向)に対し、±30度の範囲を意味する。
【0007】
本明細書で開示する第3技術は、上記第1又は第2技術のバルブ装置であって、伝熱板の端部が、一次側通路の端部と二次側通路との間に位置していてよい。
【発明の効果】
【0008】
第1技術によると、流体導入路である一次側通路(弁体より上流側の通路)だけでなく、流体導出路である二次側通路(弁体より下流側の通路)についても、凍結した流体(以下、凍結流体と称する)を解凍することができる。すなわち、バルブ装置内の流体流路全体において、凍結流体を解凍することができる。低温環境下において流体流路内に凍結流体が生じても、凍結流体を効率的に解凍することができ、バルブ装置の機能が損なわることを抑制することができる。
【0009】
また、第1技術では、伝熱板を用いてヒータの熱を流体流路に伝熱している。そのため、ヒータを配置する位置の自由度が増す。具体的には、ヒータは、ハウジング内に埋設することもできるし、ハウジング外に配置することもできる。また、伝熱板を用いることにより、バルブ装置の低コスト化も実現することができる。例えば、流体流路全体に熱を伝えるため、流体流路に沿ってヒータを配置する場合、流体流路の長さが長くなると、ヒータのサイズ(長さ)も長くなる。一方、伝熱板を用いる場合、流体流路の長さに合わせて伝熱板の長さを調整すればよい。典型的に、伝熱板は、金属板であり、ヒータより安価である。そのため、第1技術によると、伝熱板を用いずにヒータで流体流路を直接加熱する形態と比較して、バルブ装置のコストを低減することもできる。
【0010】
第2技術によると、流体流路(一次側通路)の凍結流体を、早期に解凍することができる。一次側通路内に残存した流体は、一次側通路の底(通路内の下方)に貯留する。そのため、伝熱板を一次側通路の下方に配置すると、凍結流体に効率的に熱が加わり、凍結流体を早期に解凍することができる。また、流体が貯留されやすい位置に伝熱板を配置することにより、伝熱板のサイズを小型化したり、伝熱板の数を削減することができ、バルブ装置のコストを低減することもできる。
【0011】
第3技術によると、二次側通路に残存した流体(二次側通路に形成された液膜が凍結した凍結流体)にも、効率的に熱を加えることができる。その結果、流体流路内に形成された凍結流体を、より効率的に解凍することができる。また、第3技術によると、ハウジングが樹脂製の場合では、一次側通路と二次側通路を配置する位置の自由度を増すこともできる。樹脂材料を用いて流路等の空隙を有する構造体を作成する場合、空隙間の距離が大きすぎる(樹脂の肉厚が厚すぎる)ことは好ましくない。換言すると、樹脂成型においては、肉厚部を削減することが好ましい。第3技術では、伝熱板によってハウジングの肉厚部を分割して薄肉化することができるので、一次側通路と二次側通路の距離が長くなっても、ハウジング内に肉厚部が形成されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】バルブ装置を備えた燃料電池システムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(バルブ装置を用いた燃料電池システム)
まず、
図1を参照し、本明細書で開示するバルブ装置を用いた燃料電池システム100について説明する。燃料電池システムは、車両(燃料電池車)に好適に搭載される。燃料電池システム100は、燃料電池スタック90と、燃料電池スタック90に水素ガスを供給する水素系60と、燃料電池スタック90にエアガス(外気)を供給するエア系70と、コントローラ75を備えている。燃料電池システム100では、水素系60から供給された水素ガスと、エア系70から供給された酸素ガス(エアガス)を用いて発電を行う。
【0014】
水素系60は、水素ガスタンク62と、水素供給通路64と、水素排出通路68を備えている。減圧バルブ63が、水素供給通路64上に設けられている。水素ガスタンク62から水素供給通路64に供給された水素ガスは、減圧バルブ63によって調圧される。減圧バルブ63の下流にインジェクタ(図示省略)が設けられており、水素ガスタンク62から供給された水素ガスはインジェクタによって燃料電池スタック90に供給される。水素排出通路68上に、気液分離器66、水素排出バルブ69が設けられている。水素排出バルブ69は、バルブ装置の一例である。水素排出バルブ69は、気液分離器66より下流に設けられている。燃料電池スタック90への水素ガスの供給は、コントローラ75によって制御される。すなわち、コントローラ75は、水素供給通路64のオン・オフ、水素供給通路64を通過する水素ガスの流量を制御する。
【0015】
燃料電池スタック90から排出される水素ガス(水素オフガス)は、気液分離器66に供給される。気液分離器66では、水素オフガスに含まれる水素ガスが抽出される。気液分離器66で抽出された水素ガスは、水素循環ポンプ(図示省略)によって水素供給通路64に戻され、燃料電池スタック90に供給される。一方、気液分離器66で水素ガスが抽出された残分は、水素排出通路68に排出され、排出管84を通じて燃料電池システム100の外部に排出される。なお、排出管84は、後述するエア排出通路80にも接続されている。水素排出通路68の流量は水素排出バルブ69によって調整される。水素排出通路68のオン・オフ、及び、水素排出通路68を通過する水素オフガスの流量もコントローラ75によって制御される。なお、気液分離器66によって水素ガスが抽出された残分には、燃料電池システム100で生じた生成水が含まれている。
【0016】
エア系70は、コンプレッサ72と、エア供給通路74と、エア排出通路80と、バイパス通路78と、エア供給バルブ76と、エア排出バルブ50と、バイパスバルブ79を備えている。コンプレッサ72は、エアガスとして外気をエア供給通路74に圧送する。なお、コンプレッサ72の上流にはエアクリーナ(図示省略)が配置されている。そのため、エア供給通路74には、清浄なエアガスが供給される。エア供給通路74は、燃料電池スタック90とコンプレッサ72を接続している。エア供給通路74上には、エア供給バルブ76が配置されている。具体的には、エア供給通路74は、コンプレッサ72とエア供給バルブ76を接続している上流側エア供給通路74aと、エア供給バルブ76と燃料電池スタック90を接続している下流側エア供給通路74bを備えている。コンプレッサ72を駆動し、エア供給バルブ76が上流側エア供給通路74aと下流側エア供給通路74bを導通させると、エアガスとして外気が燃料電池スタック90に供給される。なお、コンプレッサ72とエア供給バルブ76の間に、インタークーラー(図示省略)が配置されている。燃料電池スタック90には、インタークーラーで温度が調整された(冷却された)エアガスが供給される。
【0017】
エア排出通路80は、燃料電池スタック90に接続されており、燃料電池スタック90からエアオフガスを排出する。排出されたエアオフガスは、排出管84を通じて燃料電池システム100の外部に排出される。エア排出通路80上にはエア排出バルブ50が設けられている。エア排出バルブ50は、バタフライ弁であり、コントローラ75によって制御される。エア排出バルブ50の開度を調整することにより、エアオフガス量が調整される。エアオフガスには、燃料電池システム100で生じた生成水が含まれている。
【0018】
バイパス通路78は、エア供給通路74とエア排出通路80を接続している。具体的には、バイパス通路78の一端は上流側エア供給通路74aに接続されており、他端はエア排出バルブ50の下流でエア排出通路80に接続されている。バイパス通路78上にバイパスバルブ79が配置されており、バイパスバルブ79が開弁すると、エア供給通路74内のエアガスがエア排出通路80に供給される。
【0019】
(水素排出バルブ)
図2を参照し、水素排出バルブ69について説明する。水素排出バルブ69は、気液分離器66によって水素ガスが抽出された残分(生成水)の流量を調整する。水素排出バルブ69は、生成水が流通するハウジング30と、ハウジング30内の流路を開閉するバルブ部40を備えている。ハウジング30は、樹脂製であり、一次側通路38が形成されている流体導入部30aと、二次側通路32が形成されている流体導出部30bを備えている。流体導入部30aは、気液分離器66に固定されている。流体導出部30bには、水素排出通路68を構成する連結ホース(図示省略)が取り付けられる。また、一次側通路38と二次側通路32の間には、連通室20が設けられている。水素排出バルブ69の外部(気液分離器66)から水素排出バルブ69内(ハウジング30内)に導入された生成水は、一次側通路38、連通室20、二次側通路32を通過して水素排出バルブ69の外部(水素排出通路68)に導出される。
【0020】
一次側通路38は、略水平方向に伸びており、下流側の端面38aに向かうに従って二次側通路32に近づいている。一次側通路38の下流側端部(端面38aの近傍)には、第一導出部36が形成されている。そのため、一次側通路38は、第一導出部36に向かうに従って二次側通路32に近づくように形成されていると捉えることができる。第一導出部36は、一次側通路38の側壁に形成されており、連通室20に開口している。第一導出部36は、流路面積が一次側通路38より小さく、オリフィス状である。第一導出部36が伸びる方向と一次側通路38が伸びる方向は異なる。第一導出部36は、略鉛直方向に伸びている。第一導出部36は、連通室20の底面22から、連通室20の上方(鉛直方向上側)に突出している。また、第一導出部36の端面は、後述する弁体18が着座する弁座34を構成している。一次側通路38に導入された生成水は、一次側通路38を水平方向に移動し、第一導出部36を上方に移動した後、連通室20に導出される。
【0021】
二次側通路32の上流側端部24は、連通室20に連通している。二次側通路32が伸びる方向も、一次側通路38が伸びる方向と異なる。二次側通路32は、上流側端部24から第二導出部33に向けて、略鉛直方向に伸びている。二次側通路32は、連通室20、第一導出部36を介して、一次側通路38に連通している。そのため、連通室20から二次側通路32に導入された生成水は、二次側通路32を下方に移動し、二次側通路32の下流側端部に設けられた第二導出部33から、水素排出バルブ69の外部(水素排出通路68)に導出される。
【0022】
一次側通路38の下方に、伝熱板42及びヒータ44が配置されている。伝熱板42及びヒータ44は、ハウジング30に埋設されている。伝熱板42には、ヒータ44の熱が加えられる。伝熱板42は、一次側通路38に沿って略水平方向伸びており、端部42aが屈曲して上方に向けて伸びている。伝熱板42の端部42aは、一次側通路38の端面38aと二次側通路32の側壁の間に介在している。ヒータ44は、伝熱板42の下方に設けられており、伝熱板42と接触している。なお、ヒータ44は、配線(図示省略)を介して、外部電源に接続されている。
【0023】
バルブ部40は、ハウジング30の上方に固定されている。バルブ部40は、筒状の固定ベース4と、固定ベース4の外周に設けられている電磁コイル10と、固定ベース4の内側に設けられている吸引子8と、固定ベース4の内側で吸引子8と同軸に設けられているプランジャ14と、固定ベース4に固定されている取付板16と、プランジャ14及び取付板16に固定されている弁体18と、カバー6を備えている。
【0024】
電磁コイル10は、固定ベース4の外周面に設けられた凹部に配置されている。吸引子8の上側端部のサイズは、固定ベース4の筒内の断面サイズ(内径)より大きい。吸引子8の上側端部は、固定ベース4の上端面に接触し、固定ベース4の筒内と外部を隔離している。吸引子8の上側端部と固定ベース4の上端面の間には、Oリング2が設けられており、固定ベース4の筒内をシールしている。吸引子8は磁性体であり、その一部が、電磁コイル10の一部に対向している。
【0025】
吸引子8とプランジャ14の間に、コイルばね12が設けられている。コイルばね12は、吸引子8とプランジャ14の双方に固定されており、両者が接触することを防止している。プランジャ14は、取付板16の中央に設けられている貫通孔を通過している。プランジャ14の先端(吸引子8と反対側の端部)に、弁体18が固定されている。なお、プランジャ14の先端側(連通室20内に存在する部分)のサイズは、取付板16の貫通孔のサイズより大きい。
【0026】
弁体18は、ゴム製であり、ダイヤフラム状である。弁体18の中央部18aが、プランジャ14の先端に嵌め込まれ、弁体18とプランジャ14が固定されている。弁体18の外周部18cは、取付板16に固定されている。中央部18aと外周部18cの間には、プランジャ14の動作に合わせて変形可能な変形部18bが設けられている。
【0027】
なお、取付板16は、ハウジング30の上面に固定されている。取付板16をハウジング30に固定すると、弁体18が弁座34に対向する。より具体的には、コイルばね12の付勢力(伸張力)によって弁体18の中央部18aが弁座34に押し付けられ(着座し)、第一導出部36が塞がれる。弁体18(中央部18a)が弁座34に着座している間、一次側通路38と二次側通路32は連通しておらず、生成水が水素排出バルブ69から導出されることはない。また、カバー6は、取付板16の上面に固定されており、固定ベース4及び電磁コイル10を覆い、固定ベース4及び電磁コイル10を外部から隔離している。
【0028】
電磁コイル10に通電すると、吸引子8が励磁され、プランジャ14が吸引子8に引き付けられる。すなわち、プランジャ14が、吸引子8の励磁力によって吸引子8に引き付けられ、コイルばね12を圧縮しながら上方に移動する。プランジャ14が上方に移動すると、プランジャ14とともに弁体18の中央部18aが上方に移動し、弁体18が弁座34から離れる。弁体18が弁座34から離れると、一次側通路38と二次側通路32が連通し、生成水が水素排出バルブ69から導出される。
【0029】
上述したように、ハウジング30内に導入された生成水は、一次側通路38、連通室20、二次側通路32を通過する。そのため、閉弁時においても流体流路(一次側通路38、連通室20、二次側通路32)内に生成水が残存していることがある。具体的には、閉弁時に一次側通路38(第一導出部36を含む)に残存している生成水は、一次側通路38の底面(下方部分)に滞留する。閉弁時に連通室20に残存している生成水は、連通室20の底面22に滞留する。閉弁時に二次側通路32に残存していている生成水は、自重によってほぼ第二導出部33から導出されるが、生成水の上流側が負圧になることによって二次側通路32に液膜として残ることがある。
【0030】
閉弁時に流体流路内に残存した生成水は、低温環境下において凍結し、凍結流体となることがある。連通室20内の凍結流体は、第一導出部36が連通室20の底面22から上方に突出しているので、水素排出バルブ69の動作に大きな影響を及ぼさない。具体的には、凍結流体が弁座34の表面を覆うことが抑制されるので、連通室20内の凍結流体によって弁体18と弁座34が固着することは抑制されている。一方、一次側通路38内及び二次側通路32内の凍結流体(液膜が凍結した凍結膜)は、流路を塞いだり、流路面積を減少させるため、水素排出バルブ69の動作に大きな影響(悪影響)を及ぼす。しかしながら、水素排出バルブ69では、伝熱板42によって、一次側通路38内及び二次側通路32内の凍結流体にヒータ44の熱が加えられ、凍結流体を解凍することができる。あるいは、一次側通路38内及び/又は二次側通路32内の生成水が凍結すること(凍結流体が生成されること)を抑制することができる。
【0031】
(水素排出バルブの利点)
水素排出バルブ69では、伝熱板42が、一次側通路38に沿って一次側通路38の下方で伸びている。そのため、ヒータのサイズあるいは配置位置に依らず、一次側通路38全体にヒータの熱を伝達することができ、また、凍結流体(または生成水)に効率的に熱を加えることができる。一次側通路38に沿って一次側通路38の下方に伝熱板42を設けることにより、一次側通路38内の凍結流体の解凍(あるいは、凍結流体の生成の抑制)を効率的に行うことができる。
【0032】
また、水素排出バルブ69では、伝熱板42が、一次側通路38に沿って二次側通路32に近づくように形成されている。さらに、伝熱板42の端部42aが、一次側通路38と二次側通路32の間に介在している。そのため、伝熱板42は、一次側通路38内の凍結流体だけでなく、二次側通路32内の凍結流体にも熱を加えることができる。水素排出バルブ69は、一次側通路38内の凍結流体に熱を加える伝熱板(又はヒータ)と、二次側通路32内の凍結流体に熱を加える伝熱板(又はヒータ)を別個に設ける必要がなく、部品点数の削減及び低コスト化を実現することができる。
【0033】
さらに、
図2から明らかなように、水素排出バルブ69では、伝熱板42の端部42aが、一次側通路38の端面38aと二次側通路32の側壁の間の材料(樹脂)を分割している。そのため、一次側通路38の端面38aと二次側通路32の側壁の間に、肉厚部が形成されていない。すなわち、一次側通路38の端面38aと二次側通路32の側壁の間に、薄肉の2領域が形成されている。一次側通路38と二次側通路32の間に厚肉部を設けないことにより、ハウジング30の成型品質が向上する。換言すると、水素排出バルブ69は、ハウジング30の成型品質を向上させるために一次側通路38及び二次側通路32の位置を制限する必要がなく、一次側通路38及び二次側通路32の形成位置の自由度を増すことができる。
【0034】
(他の実施形態)
上記実施例では、水素排出バルブ69とエア排出バルブ50を備えた燃料電池システム100について説明した。水素排出バルブ69の構造は、エア排出バルブ50に適用することもできる。すなわち、水素排出バルブ69と同様のバルブ装置を、エア排出バルブ50として利用することもできる。
【0035】
本明細書で開示するバルブ装置において重要なことは、一次側通路が下流側(第一導出部側)に向かうに従って二次側通路に近づくように形成されており、伝熱板が一次側通路に沿ってハウジング内に配置されていることである。そのため、この特徴を備えている限り、上記実施例に含まれる他の特徴は、適宜選択・変更することができる。例えば、一次側通路は、略水平方向に伸びていなくてもよく、また、伝熱板は、一次側通路の下方に設けられていなくてもよい。一例として、一次側通路は、略鉛直方向、あるいは、斜め上方(又は下方)に伸びていてもよい。この場合でも、一次側通路に沿って設けられた伝熱板を備えていないバルブ装置と比較して、流体流路全体にヒータの熱を伝熱することができる。
【0036】
また、伝熱板の端部は屈曲していなくてよく、また、伝熱板の端部は一次側通路の端部と二次側通路の間に位置していなくてもよい。一次側通路が下流側に向かうに従って二次側通路に近づくように形成されており、伝熱板が一次側通路に沿って伸びているので、伝熱板の端部が一次側通路の端部と二次側通路の間に位置していなくても、二次通路内の生成水(又は凍結流体)にヒータの熱を加えることができる。
【0037】
また、ハウジングは樹脂製に限定されるものではなく、例えば、金属製、セラミックス製であってもよい。あるいは、ハウジングは、樹脂、金属、セラミックスのうちの2以上の材料で形成されていてもよい。
【0038】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0039】
18:弁体
20:連通室
30:ハウジング
32:二次側通路
33:第二導出部
34:弁座
36:第一導出部
38:一次側通路
42:伝熱板
44:ヒータ
69:バルブ装置