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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062059
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】搬送装置、搬送方法、無線綴機
(51)【国際特許分類】
   B42C 19/08 20060101AFI20240430BHJP
   B42B 5/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B42C19/08
B42B5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169814
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】593048043
【氏名又は名称】芳野YMマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(74)【代理人】
【識別番号】110003362
【氏名又は名称】弁理士法人i.PARTNERS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 僚太郎
(72)【発明者】
【氏名】徳永 和弘
(57)【要約】
【課題】表紙が貼り付けられた状態にある本文を適切に搬送することができる。
【解決手段】少なくとも表紙の一部が貼り付けられた本文を搬送する昇降搬送ユニット40であって、本文を搬送する搬送部の下方に位置し、該搬送部から解放され落下した前記本文を取得すると共に搬送する昇降コンベア410Aと、昇降コンベア410Aと搬送部との離間距離を変動可能に、昇降コンベア410Aを昇降移動させる昇降装置60とを備えた。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表紙の一部が貼り付けられた本文を搬送する搬送装置であって、
前記本文を搬送する搬送部の下方に位置し、該搬送部から解放され落下した前記本文を取得すると共に搬送するコンベアと、
前記コンベアと前記搬送部との離間距離を変動可能に、前記コンベアを昇降移動させる昇降部と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記コンベアの下流側に且つ該コンベアよりも下方に位置する固定コンベアと、
前記コンベアと前記固定コンベアとの間に配置され、その搬送面が傾斜する連動コンベアとを更に備え、
前記連動コンベアは、前記コンベアの下流側端部と前記固定コンベアの上流側端部とに対して、それぞれ揺動可能に構成されており、前記昇降部による前記コンベアの昇降に応じて前記搬送面の傾斜角度が変動する
ことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記コンベア及び前記連動コンベアの少なくともいずれかには、前記本文の傾倒を防止する着脱自在な傾倒防止部が設けられている
ことを特徴とする請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記コンベアと前記昇降部との間に配置され、前記昇降部による前記コンベアの昇降移動に応じて、前記本文の搬送方向に沿って該コンベアを往復移動させるガイド装置
を更に備えることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項5】
前記コンベアの下流側に位置し、前記本文が貼られた表紙の表表紙と裏表紙とに当接し、前記コンベアにより下流に搬送されるに従い、該表表紙と裏表紙とを上方に折り曲げて前記本文に貼り合わせる折曲部
を更に備えることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項6】
前記折曲部は、前記本文の搬送方向に直交する左右方向に離間して対をなす一対のガイドプレートを有し、該一対のガイドプレートのうちの一方は、他方のガイドプレートに対して接離可能に移動する
ことを特徴とする請求項5記載の搬送装置。
【請求項7】
前記コンベアが搬送する前記本文を支持または搬送方向に押圧する搬送片を複数有し、少なくとも一部が前記昇降部による前記コンベアの昇降移動に応じて位置が上下動する搬送チェーンと、
前記昇降部の前記コンベアの昇降移動により生じる前記搬送チェーンの緩みを調整するチェーン調整部と
を更に備えることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の前記搬送装置
を備えることを特徴とする無線綴機。
【請求項9】
少なくとも表紙の一部が貼り付けられた本文を搬送する搬送方法であって、
前記本文を搬送する搬送部の下方に位置するコンベアを昇降移動させることにより、前記コンベアと前記搬送部との離間距離を調節し、
前記搬送部から解放され落下された前記本文を前記コンベアにより取得して搬送する
ことを特徴とする搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、少なくとも表紙の一部が貼り付けられた本文を搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製本工程の一環として、内容が印刷された刷本等の紙葉類の束(紙葉束)を冊子本となるようにページ順に並べた折丁に対し、見返し紙葉を見返し貼り機等を用いて貼り付けて本文とし、本文の見返し紙葉に表紙の小口部を貼り付けることにより、本文と表紙とを一体化させる表紙貼りが行われている。この表紙貼りでは、表紙の本文への貼り合わせに先立って、表紙の小口部に対し、樹脂系等の接着剤である糊をローラ式またはノズル式の塗布具を用いて順次塗布する糊付けが行われる。
【0003】
関連する技術に、印刷紙葉一端部を接着背固めした数置丁合の紙葉中央綴部をミシン綴あるいは針金綴した中綴本文紙葉の見返し紙葉に表紙を貼合せる表紙貼合せ方法において、本文見返し紙葉に貼合せる表紙裏面の緩和当部に、他の部分より厚膜の糊料を塗布して、該表紙裏面全面に糊料を塗布し、該表紙裏面と本文見返し紙葉とを全面貼合して、綴部を糊固めすることを特徴とする中綴冊子類の表紙貼合せ方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59-93392
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本文の見返し紙葉等に表紙の小口部を貼り合わせる工程に先立って、本文の背に表紙を貼り付ける貼り付け工程があるが、その工程から表紙の小口部を貼り合わせる工程等の次工程に移行する際、塗布された小口部の糊が各種装置の様々な箇所、例えば本文を把持する把持部に付着するといった不測の事態が生じる可能性がある。このような不測の事態が生じないように本文を適切に搬送する技術が望まれていた。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、表紙が貼り付けられた状態にある本文を適切に搬送することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一態様は、少なくとも表紙の一部が貼り付けられた本文を搬送する搬送装置であって、前記本文を搬送する搬送部の下方に位置し、該搬送部から解放され落下した前記本文を取得すると共に搬送するコンベアと、前記コンベアと前記搬送部との離間距離を変動可能に、前記コンベアを昇降移動させる昇降部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表紙が貼り付けられた状態にある本文を適切に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る無線綴機の構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る無線綴機が備える各種ユニットの構成を模式的に示す模式図である。
図3】実施形態に係る昇降搬送ユニットによる表紙付本文の受け取り及び搬送過程における表紙の見返し紙葉への貼り合わせを説明するための図である。
図4】実施形態に係る最上昇状態にある昇降搬送ユニットを示す概略側面図である。
図5】実施形態に係る最上昇状態にある搬送コンベアを示す概略平面図である。
図6】実施形態に係るガイドプレートを説明するための図である。
図7】実施形態に係るサイドフレームの連結位置における概略縦断面図である。
図8】実施形態に係る昇降装置による昇降移動時の昇降プレート及びガイド装置を示す概略斜視図である。
図9】実施形態に係る最下降状態にある昇降搬送ユニットを示す概略側面図である。
図10】実施形態に係る最上昇状態にある昇降搬送ユニットによる表紙付本文の受け取りおよび搬送動作を説明するための概略側面図である。
図11】実施形態に係る最下降状態にある昇降搬送ユニットによる表紙付本文の受け取りおよび搬送動作を説明するための概略側面図である。
図12】実施形態に係る最上昇状態にある昇降搬送ユニットによる表紙付本文の受け取り、搬送、および表紙の見返し紙葉への貼り合わせ動作を説明するための概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態においては、本発明が適用された昇降搬送ユニットを備える無線綴機を例にとり説明を行う。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
(無線綴機の構成)
図1は、本実施形態に係る無線綴機の構成を示すブロック図である。無線綴機は、不図示の丁合機によって丁合された折丁または紙葉類(例えばアルバム用紙、印刷または無印刷紙葉等)の束である本文に、各種製本加工を施すことにより無線綴じを行い、表紙を貼り合わせて表紙付本文を製造し、これに断裁等の加工を行うことで冊子を製造するものである。
【0012】
図1に示されるように、無線綴機は、本文を搬送する本文搬送ユニット10と、所定の製本加工を施す本文加工ユニット20と、表紙を供給する表紙加工ユニット30と、表紙を搬送すると共に本文に対し表紙を貼り合わせる表紙貼りユニット31と、表紙が貼り合わされた本文である表紙付本文を後段の断裁ユニット等に搬送する昇降搬送ユニット40と、これら各種ユニットを駆動制御する制御装置50とを備える。
【0013】
以下、上記各種ユニットの説明と共に、無線綴機1による製本工程について簡単に説明する。図2は、本実施形態に係る無線綴機が備える各種ユニットの構成を模式的に示す模式図である。
【0014】
(本文搬送ユニット10)
図2に示されるように、本文搬送ユニット10は、水平方向に循環(図中矢印で示される反時計回り方向で循環)するラウンド経路を形成するように、環状に配された搬送チェーン110を備える。この搬送チェーン110には、アクチュエータ等により本文A1の把持及び把持解除可能に構成された後述するクランパ111(図3図10参照)が所定間隔毎に複数設けられている。本文A1は、不図示の入紙立上り部によりクランプ位置まで搬送されながら立上らされると共に、クランパ111により把持され、搬送チェーン110が一方向に周回移動することによりラウンド経路に沿って搬送される。
【0015】
(本文加工ユニット20)
本文加工ユニット20は、搬送チェーン110が形成するラウンド経路上に配設されており、搬送チェーン110により順次搬送される本文A1に各種製本加工を施す。具体的には、搬送チェーン110の搬送方向上流側から下流側にかけて、本文A1の背面を断裁して背面を揃えるミーリングカッタ、当該背面に筋溝を入れるガリカッタ、背面近傍の両脇に糊を塗布する横糊付け機、背面に糊を塗布する背糊付け機を備える。ラウンド経路に沿って搬送される本文A1は、これらの装置を巡ることにより製本加工がなされた後、下流に位置する表紙貼りユニット31へ搬送される。
【0016】
(表紙加工ユニット30)
表紙加工ユニット30は、一方向に沿って延在して表紙Bを搬送する搬送コンベア301を備える。搬送コンベア301の上流側には表紙フィーダ装置302が配設されており、表紙フィーダ装置302から送り出された表紙Bは、搬送コンベア301により糊付け装置303へ搬送される。表紙Bは、左右両端部の小口部が上方を向いた状態で搬送されており、それら小口部に糊付け装置303によりローラ式またはノズル式の塗布具を用いて樹脂系等の接着剤である糊が上方から塗布される。なお、表紙Bは搬送状態であるため、それぞれの小口部には一直線上に糊が塗布されることとなる。糊付けされた表紙Bは、搬送コンベア301により、表紙貼りユニット31に受け渡される。
【0017】
(表紙貼りユニット31)
表紙貼りユニット31は、表紙を搬送する搬送方向に沿って延在し、上流側において表紙加工ユニット30から糊付けされた表紙Bを受け取り、表紙Bが貼り付けられた本文A1を下流側に搬送する搬送コンベア310を備える。表紙貼りユニット31は、搬送チェーン110のラウンド経路の返路との合流地点に設置されており、本文A1の背が表紙Bの中央部の背部分に重ね合わされるように、本文A1の搬送に表紙Bの搬送タイミングが同調するよう搬送コンベア310が制御される。ここでは、搬送チェーン110により搬送される状態にある本文A1の背に、表紙Bが貼り付けられる。この表紙Bの貼り付けは、例えば表紙Bが本文A1に向かって押し上げられる等によりなされる。以後、背に表紙Bが貼り付けられた状態にある本文A1及び表紙Bを総称する場合、表紙付本文A2と称して説明を行う。
【0018】
(昇降搬送ユニット40)
昇降搬送ユニット40は、表紙貼りユニット31の下流側に配置されており、搬送チェーン110の搬送方向に沿って延在し、上流側においてクランパ111から解放された表紙付本文A2を受け取り、これを下流側に搬送する搬送コンベア410を備える。昇降搬送ユニット40は、受け取った表紙付本文A2を下流側に搬送する過程で、表紙Bの小口部を本文A1の見返し紙葉に貼り合わせる。
【0019】
図3は、本実施形態に係る昇降搬送ユニットによる表紙付本文の受け取り及び搬送過程における表紙の見返し紙葉への貼り合わせを説明するための図である。図3に示される符号Cは、塗布された糊を示している。また、符号440A及び440Cは、表紙Bの表表紙及び裏表紙を本文A1に向けて折り曲げるためのガイドプレートである。本実施形態における本文には、別丁としての見返し紙葉(仮表紙)がその表面側及び裏面側に位置するよう貼り付けられており、ここでの表紙Bの見返し紙葉への貼り合わせでは、この見返し紙葉に表紙Bにおける表表紙及び裏表紙の小口部が貼り付けられる。
【0020】
具体的には、クランパ111により本文A1を把持することで搬送チェーン110により表紙付本文A2が搬送される状態において、表紙付本文A2は、図3(a)に示されるように、昇降搬送ユニット40の搬送コンベア410上方に位置される。その後、図3(b)に示されるようにクランパ111による本文A1の把持が解除されることにより、表紙付本文A2が搬送コンベア410上面に落下する。また、表紙Bの表表紙と裏表紙がそれぞれ個別にガイドプレート440A上に位置することとなる。落下後、図3(c)に示されるように、表紙Bの表表紙及び裏表紙が互いに接近するようにガイドプレート440Cにより上方に折り曲げられ、本文A1の表側と裏側にある見返し紙葉のそれぞれに、表紙Bの表表紙及び裏表紙それぞれの裏面における小口部が接着されることにより、表紙付本文A2は、見返し紙葉に表紙Bの小口部が貼り合わせられた表紙貼本文A3(図2参照)となる。本実施形態においては、表紙Bの表表紙及び裏表紙の折り曲げは、昇降搬送ユニット40が備えるガイドプレート440A~440Cによりなされる。このガイドプレート440A~440Cについての詳細は後述する。
【0021】
搬送コンベア410の下流側には、それぞれ不図示の排出ユニット、断裁ユニットが配設されており、排出ユニットにおいて重量が所定の範囲外にある等の不良品の表紙貼本文A3が除外され、良品の表紙貼本文A3のみが断裁ユニットの三方断裁機等に搬送され、断裁される。
【0022】
昇降搬送ユニット40は、図1に示されるように搬送コンベア410を駆動させる駆動モータ400、後述する昇降コンベア410A(図4参照)を昇降する昇降モータ600、及び搬送チェーン810(図4参照)のテンションを調節するエアシリンダ800を備える。これら装置についての詳細は後述する。
【0023】
(制御装置50)
図1に示すように、制御装置50は、制御装置50の主たる制御を行うCPU(Central Processing Unit)510と、CPU510の作業領域として活用されるRAM(Random access memory)520と、無線綴機1を制御するための各種プログラムを格納するフラッシュメモリ等の記憶装置530とを備え、本文搬送ユニット10、本文加工ユニット20、表紙加工ユニット30、表紙貼りユニット31、及び昇降搬送ユニット40の駆動制御を行う。記憶装置530には、昇降搬送ユニット40の昇降制御時に読み出されるデータであるテンションテーブル531が記憶されている。テンションテーブル531の詳細については後述する。
【0024】
(昇降搬送ユニット40の構成)
以下、本実施形態に係る昇降搬送ユニット40の構成について、詳細に説明する。図4は、本実施形態に係る最上昇状態にある昇降搬送ユニットを示す概略側面図である。図5は、本実施形態に係る最上昇状態にある搬送コンベアを示す概略平面図である。図6は、本実施形態に係るガイドプレートを説明するための図である。図7は、本実施形態に係るサイドフレームの連結位置における概略縦断面図である。なお、図4においては、図中左から右へ進む方向が搬送方向となり、図5においては、後述する駆動機構430や各種支持フレームが説明上、図示されていない。また、図6においては駆動機構430の支持プレート434を縦に切断した切断面から下流側を見た際の、昇降コンベア410A、ガイドプレート440A、駆動機構430、及びベース70が模式的に示されており、(a)及び(b)はそれぞれ一方側のガイドプレート440Aの移動前、移動後の状態が示されている。図7(a)及び(b)は、昇降コンベア410Aと連動コンベア410Bとの連結位置、固定コンベア410Cと支持フレーム423との連結位置における縦断面がそれぞれ示されている。
【0025】
図4に示されるように、昇降搬送ユニット40の搬送コンベア410は、搬送方向に沿って延在する搬送チェーン110の下方に配設されている。搬送コンベア410は、図4及び図5に示されるように、上流側に位置する昇降コンベア410Aと、昇降コンベア410Aよりも下流側に位置する連動コンベア410Bと、連動コンベア410Bよりも下流側に位置する固定コンベア410Cとを備える。
【0026】
(昇降コンベア410A)
図4に示されるように、昇降コンベア410Aは、上下方向と搬送方向とに直交する左右方向に、回転軸が平行な一対のベルトプーリ411A1,411A2を有し、これらプーリに無端状の搬送ベルト412Aが巻き掛けられている。一対のベルトプーリ411A1,411A2は、搬送方向に沿って互いに水平に離間しており、いずれか一方が駆動モータ400(図1参照)の回転軸に対して回転力が伝達可能に連結されることでそれぞれ回転駆動される。一対のベルトプーリ411A1,411A2は、それぞれの回転軸が、互いに左右方向に離間する一対のサイドフレーム421Aにそれぞれ回転可能に支持されている。
【0027】
図4に示されるように、一対のサイドフレーム421Aのそれぞれは、搬送方向に沿って水平に延在する板状部材であり、板状の複数の支持フレーム422を介して昇降装置60の昇降プレート610により支持される。本実施形態においては、1つのサイドフレーム421Aに対して2つ支持フレーム422が連結されている。昇降装置60についての詳細は後述する。
【0028】
図4図6(a)に示されるように、一対のサイドフレーム421Aの上方には、左右方向に離間して対をなす一対のガイドプレート440Aが設けられている。一対のガイドプレート440Aは、互いに左右方向に離間する板状部材であり、左右方向外方から内方に向かうにつれて漸次下方に傾斜するように形成されており、互いに接近する端部がそれぞれ下方に折れ曲がっている。このように形成される一対のガイドプレート440Aのそれぞれは、搬送ベルト412A等により搬送される本文A1の背が接着した状態にある表紙Bの表表紙及び裏表紙のいずれかを個別に支持し、その状態を維持して下流に搬送するガイドとして機能する。
【0029】
一対のガイドプレート440Aの一方(図4中手前側、図5及び図6中左側:以後可動側のガイドプレート440Aと称する)は、複数の駆動機構430を介して一対のサイドフレーム421Aの一方(図4中手前側)に連結される。一対のガイドプレート440Aの他方は、図6(a)に示されるように、上下方向に延在する垂直プレート431を介してベース70に連結されることで移動不能に支持される。
【0030】
図6(a)に示されるように、駆動機構430は、可動側のガイドプレート440Aに上端部が連結された垂直プレート431と、当該垂直プレート431の下端部に左右方向における一端部が連結された水平プレート432と、周面に歯形が形成されたギア433と、一方のサイドフレーム421Aに連結された支持プレート434と、支持プレート434に対して相対回転可能に挿通され且つギア433に対して一体回転可能に挿通される回転軸435とを有する。これにより垂直プレート431、水平プレート432、ギア433、及び回転軸435は、支持プレート434を介して一方のサイドフレーム421Aにより支持される。なお、ギア433含め、以降に説明する各種ギアについては、その周面に形成される歯形を説明上図示していない。また、水平プレート432は、水平状態が維持されるよう、支持プレート434または不図示の部材により左右方向に摺動可能に支持されることが好ましい。
【0031】
水平プレート432の下面には、ギア433の歯と噛み合う歯形が形成されている。したがって回転軸435の回転に応じてギア433が回転されると、水平プレート432を左右方向に往復移動させることができる。これにより駆動機構430に連結された可動側のガイドプレート440Aは、図5の矢印で示されるように、他方のガイドプレート440Aに対して接近または離間することが可能となる。図6(b)には、図6(a)に示されるような一対のガイドプレート440Aが互いに離間した状態から、可動側のガイドプレート440Aが移動することにより、一対のガイドプレート440Aが互いに接近した状態が示されている。
【0032】
回転軸435の回転は、不図示のモータによりなされる。本実施形態においては、図4に示されるように駆動機構430が複数設けられる。これら複数の駆動機構430は、それらのギア433のそれぞれに1つの回転軸435が連通されることで、1つのモータでの駆動制御が可能となっている。当該モータの駆動制御は、制御装置50の制御盤を作業者が操作することによりなされることが好ましい。
【0033】
(連動コンベア410B)
図4に示されるように、連動コンベア410Bは、回転軸が左右方向に平行な一対のベルトプーリ411B1,411B2を有し、これらプーリに搬送ベルト412Bが巻き掛けられている。ベルトプーリ411B1は、ベルトプーリ411A2の搬送方向下流側に且つ僅かに下方に位置しており、ベルトプーリ411B2は、ベルトプーリ411B1に対して搬送方向下流側において離間すると共にさらに下方に位置している。したがって連動コンベア410Bの搬送ベルト412Bは、その搬送面が搬送方向に沿って下方に下るように傾斜する。一対のベルトプーリ411B1,411B2は、それぞれの回転軸が、互いに左右方向に離間する一対のサイドフレーム421Bにそれぞれ回転可能に支持されている。
【0034】
図4及び図7(a)に示されるように、一対のサイドフレーム421Bのそれぞれは、搬送方向に沿って下るように延在する板状部材であり、その搬送方向における上流側端部が、サイドフレーム421Aにおける搬送方向の下流側端部に対して支軸461により回転可能に軸支される。一方、一対のサイドフレーム421Bのそれぞれは、図4及び図7(b)に示されるように、搬送方向における下流側端部が、互いに左右方向に離間する一対の支持フレーム423の上端部に対して支軸462により回転可能に軸支される。
【0035】
サイドフレーム421Bは、支軸461を軸にサイドフレーム421Aに対して揺動可能となると共に、支軸462を軸に支持フレーム423に対しても上下方向に揺動可能となっている。なお、図7(a)に示されるように、サイドフレーム421Aとサイドフレーム421Bとを軸支する支軸461は、ベルトプーリ411A2の回転軸を兼ねるようにすることが好ましいが、当該回転軸を別軸として新たに設けてもよい。
【0036】
本実施形態においては、支軸461と支軸462とを結ぶ直線状に、一対のベルトプーリ411B1,411B2の回転軸が位置しているため、サイドフレーム421Bの揺動に応じて、搬送ベルト412Bが同一角度揺動することとなる。
【0037】
一対の支持フレーム423は、昇降搬送ユニット40の脚部として床面に接地している。図7(b)に示されるように、一対の支持フレーム423の他方は、ベース70に連結されており、これにより当該支持フレーム423は、ベース70の一部を支持する機能を有している。
【0038】
図4及び図5に示されるように、一対のサイドフレーム421Bの上方には、左右方向に離間して対をなす一対のガイドプレート440Bが設けられている。一対のガイドプレート440Bの一方(図4中手前側、図5中左側:以後、可動側のガイドプレート440Bと称する)は、ガイドプレート440Aと同様、複数の駆動機構430を介して一対のサイドフレーム421Bの一方(図4中手前側)に対して左右方向に移動可能に連結される。また、一対のガイドプレート440Bの他方(図4中奥側:図5中右側)は、ガイドプレート440Aと同様、ベース70に対して移動不能に連結される。
【0039】
ガイドプレート440Bは、サイドフレーム421Bと同角度で傾斜する以外、ガイドプレート440Aと同一構成であるため、ここでの詳細な説明は省略する。また、ガイドプレート440Bに連結された駆動機構430は、その支持プレート434がサイドフレーム421Bに連結される以外は、ガイドプレート440Aに連結された駆動機構430と同一構成である。なお、後述する昇降コンベア410Aの昇降に応じた、連動コンベア410Bの傾斜角度変更時に、ガイドプレート440Aとガイドプレート440Bとが接触しないよう、これらガイドプレートを搬送方向において僅かに離間させることが好ましい。
【0040】
図4及び図5に示されるように、一対のガイドプレート440Aの上方には、左右方向に離間して対をなす一対のガイドバー450が設けられている。一対のガイドバー450のそれぞれは、搬送方向に延在して上下に並設された2本の丸棒451が、上下方向に延在する複数の支持棒452に、左右方向に延在する丸棒453を介して連結されている。支持棒452は、その下端部がサイドフレーム421Bに連結され支持される。一対のガイドバー450は、それらの間に本文A1が位置することにより、本文A1の左右方向への傾倒を防止すると共に搬送方向に案内する。
【0041】
(固定コンベア410C)
図4に示されるように、固定コンベア410Cは、回転軸が左右方向に平行な一対のベルトプーリ411C1,411C2を有し、これらプーリに搬送ベルト412Cが巻き掛けられている。ベルトプーリ411C1は、ベルトプーリ411B2の搬送方向下流側に且つ僅かに下方に位置しており、ベルトプーリ411C2は、ベルトプーリ411C1に対して搬送方向下流側に水平に離間している。したがって固定コンベア410Cの搬送ベルト412Cは、搬送方向に沿って水平に延在する。
【0042】
ベルトプーリ411A2とベルトプーリ411B1、及び、ベルトプーリ411B2とベルトプーリ411C1は、それぞれ不図示の歯車を介して回転駆動力が伝達可能に連結されている。したがってベルトプーリ411A1,A2,B1,B2,C1,C2(以後、これらを区別しない場合、ベルトプーリ411と称する)のそれぞれは、駆動モータ400の回転駆動力が直接または間接的に伝達され、略同一速度で搬送ベルト412A~412Cをその搬送面が搬送方向に移動するように周回移動させる。なお、歯車ではなく、プーリ及びベルトにより回転駆動力を伝達するようにしてもよいが、ベルト切れ等の故障を考慮すると歯車を用いることが好ましい。
【0043】
ベルトプーリ411C1は、その回転軸が支軸462となっており、これにより一対の支持フレーム423に対して回転可能に軸支されている。なお、図7(b)に示されるように、サイドフレーム421Bと支持フレーム423とを軸支する支軸462は、ベルトプーリ411C1の回転軸を兼ねるようにすることが好ましいが、当該回転軸を別軸として新たに設けてもよい。一方、ベルトプーリ411C2は、その回転軸の一端側(図4中手前側)が、支持フレーム424に回転可能に軸支され、回転軸の他端側(図4中奥側)が、支持フレーム425に回転可能に軸支されている。
【0044】
図4に示されるように、支持フレーム424は搬送方向に沿って水平に延在する板状部材であり、その搬送方向の下流側端部においてベルトプーリ411C2を軸支し、上流側端部が支持フレーム426に連結されている。支持フレーム425は、上下方向に延在する板状部材であり、その下端部がベース70に連結される。支持フレーム425は、ベルトプーリ411C2の回転軸の他、後述するチェーンギア824,825を回転可能に支持する。支持フレーム426は、上下方向に延在する板状部材であり、その下端部が、左右方向に延在する横梁フレーム427を介してベース70に連結され、上端部が駆動機構430の支持プレート434に連結してこれを支持する。
【0045】
支持プレート434を介して支持フレーム426に支持される駆動機構430は、その垂直プレート431上端部が一対のガイドプレート440Cのうちの可動側のガイドプレート440C(図4中手前側、図5中左側)に連結されている。当該駆動機構430の上流側にも、可動側のガイドプレート440Cに連結された駆動機構430が設けられている。この上流側の駆動機構430は、支持プレート434が支持フレーム428に連結されることで支持される。支持フレーム428は、上下方向に延在する板状部材であり、その下端部が横梁フレーム427を介してベース70に連結されている。
【0046】
図4及び図5に示されるように、可動側のガイドプレート440Cは、上述したとおり、複数の駆動機構430を介してベース70に対して左右方向に移動可能に連結され、他方(図4中奥側、図5中右側)は、一対のガイドプレート440A,440Bと同様、ベース70に対して移動不能に連結される。一対のガイドプレート440Cは、搬送方向に向かうにつれて左右方向外方側が立ち上がり、搬送方向の下流側端部においては略垂直状に形成される点でガイドプレート440A,440Bとは形状が異なっている。この略垂直となった部分において、ガイドプレート440Cは、表紙Bの表表紙と裏表紙とを垂直状態とすることができ、本文A1の見返し紙葉に対してこれらを貼り合わせることができる。
【0047】
ベース70は、搬送方向と上下方向とに延在して下面が床面に接地する矩形の板状部材であり、左右方向における一方の面(図4中手前側の面)には、支持フレーム425、横梁フレーム427、昇降装置60、及びテンション調整装置80が設けられる。テンション調整装置80についての詳細は後述する。
【0048】
(昇降装置60)
昇降装置60の構成及び動作について説明する。図8は、本実施形態に係る昇降装置による昇降移動時の昇降プレート及びガイド装置を示す概略斜視図である。図9は、本実施形態に係る最下降状態にある昇降搬送ユニットを示す概略側面図である。なお、図8(a)は、最上昇状態時の昇降プレート及びガイド装置を示し、(b)は最下降状態時の昇降プレート及びガイド装置を示す。図4に示されるように、昇降装置60は、昇降コンベア410Aの下方に設けられ、昇降コンベア410Aとクランパ111との離間距離を変動可能に当該昇降コンベア410Aを昇降移動させるものであり、主として昇降プレート610と、回転ロッド620と、昇降部材630と、装置本体640とを備える。
【0049】
昇降プレート610は、図4及び図8(a)に示されるように、搬送方向と左右方向とに延在する板状部材であり、その略中央に回転ロッド620が挿通可能な孔部611が穿設され、搬送方向における両端部の角部上面、即ちプレートの四隅上面には、ガイド装置650がそれぞれ設けられている。昇降プレート610は、これらガイド装置650を介して支持フレーム422を支持する。図4に示されるように、昇降プレート610は、搬送方向における両端部に上下方向に延在する可動プレート612が連結されており、可動プレート612はベース70に固定された上下方向に延在する固定プレート613に対して上下方向のみに移動可能に組付けられている。したがって昇降プレート610は、可動プレート612と一体となって昇降することができると共に、上下方向以外の左右方向の移動や回転が可動プレート612及び固定プレート613を介してベース70により規制される。
【0050】
回転ロッド620は、円柱状をなして周面に螺旋状の突起が設けられた所謂雄ネジ状に形成されており、昇降部材630が相対回転可能に螺合されている。回転ロッド620は、その下端部が装置本体640により回転可能に支持されており、不図示のウォームギア機構を介して装置本体640が有する昇降モータ600(図1参照)に回転力が伝達可能に連結される。具体的には、回転ロッド620の下端部にウォームホイールと噛み合うギアが一体回転可能に連結されており、当該ウォームホイールにはウォームが噛み合っている。ウォームは昇降モータ600の回転軸に一体回転可能に連結されており、これにより回転ロッド620は、昇降モータ600の回転及び逆回転に応じて順方向または逆方向に回転することができる。なお、回転ロッド620の下端にウォームホイールが一体回転可能に直接連結されていてもよい。
【0051】
昇降部材630は、中空円筒状に形成されており、その中空部内周面に回転ロッド620の突起が嵌合する溝が螺旋状に設けられた所謂雌ネジ状に形成されており、その中空部に回転ロッド620が相対回転可能に螺合する。また、昇降部材630は、上面が昇降プレート610の下面に回転不能に連結される。
【0052】
装置本体640は、昇降モータ600を有して回転ロッド620を回転可能に支持すると共に、搬送方向に互いに離間してそれぞれ床面に接地する一対の脚部641を有しており、更にベース70に連結されることで脚部641及びベース70により支持される。
【0053】
以上の構成により昇降装置60は、昇降モータ600の回転力が回転ロッド620に伝達されると、上下方向にのみ移動可能な状態にある昇降プレート610と一体となった昇降部材630が、回転ロッド620の回転に応じて昇降移動することとなる。したがって、支持フレーム422を介して昇降プレート610に支持される昇降コンベア410Aを、昇降プレート610と共に任意の位置に昇降移動させることができる。
【0054】
昇降コンベア410Aは、例えば昇降装置60により最上昇位置にまで上昇された場合、図4に示される最上昇状態となる。この際、昇降コンベア410Aに連結されている連動コンベア410Bは、これと連動して上方に揺動し、傾斜角度が最も増大した状態となる。一方、最下降位置にまで下降された場合、昇降コンベア410Aは、図9に示される最下降状態となり、これと連動して連動コンベア410Bも下方に揺動し、傾斜角度が最も減少した状態となる。最上昇位置と最下降位置との差は、90mm前後とすることが、本文A1及び表紙Bのサイズとして広く使用されるA4~A6,B4~B5サイズを処理する上で好ましい。特に、従来の搬送コンベアと比較して70mm程度下方に移動可能とするとよい。また、このような昇降コンベア410Aの昇降移動により、表紙付本文A2、つまり本文A1及び表紙Bは搬送方向に長尺なものも、上下方向に長尺なものも良好に処理することが可能となる(図10及び図11参照)。
【0055】
なお、ウォームギア機構を介して昇降モータ600の回転力が回転ロッド620に伝達されるため、昇降モータ600の回転軸の回転速度に対して、回転ロッド620の回転速度を遅くすることができ、昇降移動量の微調節等も容易となっている。また、図9に示されるように、最下降状態など、昇降コンベア410Aと搬送チェーン110との距離が十分ある場合、本文A1の左右方向への傾倒や撓みを防止するために丸棒451を1つ有するガイドバー450Aを、一対のサイドフレーム421Aに設けることが好ましい。
【0056】
ところで、昇降コンベア410Aの昇降に応じて、一対のサイドフレーム421Aに連結された一対のサイドフレーム421Bは、支持フレーム423との連結位置(支軸462)を軸に揺動することとなる。したがって、この揺動に応じて、昇降コンベア410Aは、上記連結位置を軸に円弧を描くように上下方向に揺動する形で昇降移動する。このことから昇降コンベア410Aは、昇降時に搬送方向に沿って進退移動することとなる。
【0057】
本実施形態においては、この進退移動をガイド装置650により実現している。ガイド装置650は、支持フレーム422と連結された移動体と、移動体を搬送方向に沿って移動可能に支持する支持体とを有しており、昇降コンベア410Aの進退移動に追従するように、移動体が搬送方向に移動することで昇降コンベア410Aの進退移動が可能となる。具体的には、図4及び図8(a)に示されるように、昇降コンベア410Aが最上昇位置にある場合、支持フレーム422は、ガイド装置650により搬送方向下流側に移動される。一方、図8(b)及び図9に示されるように、昇降コンベア410Aが最下降位置にある場合、支持フレーム422は、ガイド装置650により搬送方向上流側に移動される。このようなガイド装置650としては、移動体としてLM(Linear Motion Guide)ブロック、支持体としてLMレールを有するLMガイド(登録商標)等を用いることが好ましい。なお、ガイド装置650は、昇降コンベア410Aの昇降移動時に、移動体が制御装置50により制御されることで自走する形態でもよく、移動体が連動コンベア410Bの揺動により搬送方向に付勢されることで支持体上を移動する形態としてもよい。
【0058】
(テンション調整装置80)
テンション調整装置80の構成及び動作について説明する。テンション調整装置80は、表紙付本文A2を搬送する搬送チェーン810のテンションを変更して適切に調整するための装置である。図4に示されるように、本実施形態において搬送チェーン810は、時計回りに循環する上下方向に平行なラウンド経路を形成するように、環状に配された無端状のチェーンであり、図5に示されるように、一定間隔を空けて搬送片(ツノ)811が取り付けられている。搬送片811は、搬送チェーン810から搬送ベルト412上に達するよう左右方向に突出している。
【0059】
図4及び図9に示されるように、搬送チェーン810は、複数のチェーンギア821,822,824~828に巻き掛けられて略環状に配置されており、不図示の駆動モータによりいずれかのチェーンギアが回転駆動されることにより、搬送チェーン810が搬送片811と共に周回移動する。この周回移動により、搬送片811は、本文A1の搬送方向上流側の端面(天または地側端面)に当接して本文A1を搬送ベルト412と共に搬送する。搬送チェーン810は、搬送ベルト412と同一またはそれ以上の速度で周回移動することが好ましい。
【0060】
本実施形態においては、チェーンギア821,822,824が搬送方向に沿って順番に配置されることで搬送チェーン810の往路が形成され、チェーンギア825~828が搬送方向の逆方向に沿って順番に配置されることで搬送チェーン810の復路が形成されている。
【0061】
具体的には、チェーンギア821は、昇降コンベア410Aの一対のサイドフレーム421Aにおける他方側に回転可能に支持され、チェーンギア822は、サイドフレーム421A,421Bの連結部分における支軸461、またはこれと同軸の支軸に回転可能に支持される。チェーンギア824は、支持フレーム425の上端部に回転可能に支持される。これらチェーンギア821,822,824により、搬送コンベア410による表紙付本文A2の搬送経路に沿って搬送チェーン810が配回される。搬送チェーン810は、搬送コンベア410における搬送ベルト412の搬送面よりも上方に位置するよう配置することが表紙付本文A2の搬送上好ましい。なお、搬送チェーン810は、全体または一部において、不図示の金属等のガイドにより上下が囲われており、上下方向に不要な移動が生じないように規制されている。図4及び図9に示される符号823は、このガイドの一部であり、ガイドプレート440Bやガイドプレート440C、または支持フレーム423等に固定され、連動コンベア410Bから固定コンベア410Cに搬送チェーン810が配回される際に生じる上方への浮きを規制している。このガイド823は搬送チェーン810と接触することが想定されるため、プラスチック部材で構成することが好ましい。
【0062】
チェーンギア825は、チェーンギア824の下方に位置して支持フレーム425により回転可能に支持され、チェーンギア826は、連動コンベア410Bの下方に位置してベース70により回転可能に支持される。チェーンギア827は、チェーンギア826の下方且つ搬送方向下流側に位置してテンション調整装置80に回転可能に支持される。チェーンギア828は、昇降コンベア410Aの下方に位置してベース70により回転可能に支持される。これらチェーンギア825~828により、搬送チェーン810が搬送方向上流側に遡るように配回されて再びチェーンギア821に到達する。
【0063】
このように配回される搬送チェーン810は、所定のテンションが加わることで円滑に周回移動することができる。しかしながら、昇降コンベア410Aの昇降移動が生じると、チェーンギア821,822とチェーンギア828との上下方向に関する離間距離が変動するため、加わるテンションも変動してしまう。テンション調整装置80は、この昇降コンベア410Aの昇降移動により生じる搬送チェーン810のテンションの変動を抑え、略一定に保つよう調整することができる。
【0064】
テンション調整装置80は、ベース70に設けられており、エアシリンダ800と支持部材801とを有する。エアシリンダ800は、不図示のコンプレッサから供給される圧縮空気によりピストンロッド802が搬送方向に沿って往復移動させる駆動装置である。ピストンロッド802先端には、チェーンギア827の支軸830が回転可能に連結されている。支持部材801は、搬送方向に沿って延在しており、支軸830の一端を回転及び摺動可能に支持する。
【0065】
テンション調整装置80は、昇降コンベア410Aの昇降移動に応じてエアシリンダ800が駆動することにより、チェーンギア827を支持部材801に沿って往復移動させることができ、これにより搬送チェーン810のテンションを調整する。例えば、図4に示されるように、昇降コンベア410Aが最上昇位置にまで上昇された状態において、図9に示されるように最下降位置にまで下降された場合、テンションを調整しなければ搬送チェーン810は撓むこととなり、良好な周回移動が困難となる。
【0066】
一方、この状態において、ピストンロッド802が前進するようエアシリンダ800が制御されることにより、チェーンギア827を搬送方向に移動、つまりチェーンギア826とチェーンギア827とを離間させることができるため、これらギア間の搬送チェーン810の長さを長くすることができ、当該撓みを解消することができる。当然、図9に示されるように、昇降コンベア410Aが最下降位置にまで下降された状態において、図4に示されるように最上昇位置にまで上昇された場合、その逆で、ピストンロッド802が後退するようエアシリンダ800が制御され、チェーンギア827が搬送方向の逆側に移動されることにより、搬送チェーン810のテンションが一定となるよう制御され、搬送チェーン810に過度に張力が加わることが防止される。
【0067】
本実施形態においては、搬送チェーン810に対して所定のテンションが加わった状態を維持可能な、チェーンギア827の搬送方向位置(エアシリンダ800の駆動操作量)と昇降コンベア410Aの上下方向位置との関係がテンションテーブル531として制御装置50の記憶装置530に記憶されている。したがって制御装置50は、昇降コンベア410Aの昇降位置に応じて、テンションテーブル531に基づいてテンション調整装置80を駆動(エアシリンダ800を駆動)させることにより、搬送チェーン810のテンションを良好な状態とすることができる。
【0068】
なお、テンションテーブル531を用いる昇降コンベア410Aの昇降に応じたテンション調整装置80の自動制御を採用せず、無線綴機1の作業者が手入力で昇降装置60及びテンション調整装置80を操作して所望の状態にするようにしてもよい。例えば、作業者は、制御装置50の制御盤を操作して昇降コンベア410Aを所望の上下方向位置に位置付けた後、制御盤を操作してテンション調整装置80を駆動させ、搬送チェーン810のテンションを良好な状態にする。
【0069】
(装置動作)
以下、昇降搬送ユニット40の動作について説明する。無線綴機1の作業者は、先ず、ガイドプレート440A~440Cにおける可動側のガイドプレートの位置調節、ガイドバー450の設置、昇降コンベア410Aの昇降位置の調節、テンション調整装置80による搬送チェーン810のテンションの調整などの事前準備を行う。
【0070】
可動側のガイドプレートの位置調節は、本文A1及び表紙Bのサイズ、特に厚さに応じて作業者が各駆動機構430を駆動させ、可動側のガイドプレートと他方のガイドプレートとの離間距離を変動することによりなされる。
【0071】
ガイドバー450,450Aの設置は、本文A1のサイズ、特に厚さと上下方向の長さに応じて作業者によりなされる。つまり、ガイドバー450,450Aは、本文A1のサイズ毎に固有のものが用意されていることが好ましい。
【0072】
昇降コンベア410Aの昇降位置は、本文A1のサイズ、特に上下方向長さに応じて作業者が昇降装置60を駆動させ、昇降プレート610を昇降させることによりなされる。この昇降コンベア410Aの昇降位置に応じて、制御装置50がテンションテーブル531を読み出し、これに基づいてテンション調整装置80を駆動させる。
【0073】
図10は本実施形態に係る最上昇状態にある昇降搬送ユニットによる表紙付本文の受け取りおよび搬送動作を説明するための概略側面図であり、図11は本実施形態に係る最下降状態にある昇降搬送ユニットによる表紙付本文の受け取りおよび搬送動作を説明するための概略側面図である。図12は、本実施形態に係る最上昇状態にある昇降搬送ユニットによる表紙付本文の受け取り、搬送、および表紙の見返し紙葉への貼り合わせ動作を説明するための概略平面図である。なお、図10及び図11においては、説明上、本文A1のみが図示されている。また、図10においては本文A1が搬送方向に長尺な表紙付本文A2を対象とする形態が示されており、図11においては本文A1が上下方向に長尺な表紙付本文A2を対象とする形態が示されている。図12においては、搬送コンベア410の隣に、3か所の概略縦断面図も示されている。
【0074】
事前準備後、作業者は制御装置50の不図示の制御盤を操作することにより、昇降搬送ユニット40を駆動、つまり駆動モータ400を駆動させる。駆動モータ400の駆動に応じて搬送コンベア410の各ベルトプーリ411を回転させ、搬送ベルト412A~412Cを周回移動させる。この状態において、図10及び図12に示されるように、搬送チェーン110のクランパ111により昇降搬送ユニット40における昇降コンベア410Aの所定位置上方に表紙付本文A2が搬送されると、クランパ111の一方のプレート112が他方のプレート113から離間することで本文A1の把持が解除され、表紙付本文A2は昇降コンベア410Aの搬送ベルト412A上に落下される。
【0075】
図10及び図12に示されるように、落下直後の状態では、本文A1はクランパ111に把持されていないものの、クランパ111のプレート112,113が近接状態にあり、本文A1の上方側端部がプレート112,113間に位置しているため、その左右方向への傾倒が防止されている。この状態で表紙付本文A2は、搬送ベルト412A及び搬送チェーン810の搬送片811により、連動コンベア410Bに搬送される。
【0076】
連動コンベア410Bにおいては、表紙付本文A2は、搬送ベルト412B及び搬送チェーン810の搬送片811により、下方に下るように搬送される。そのため、クランパ111に対して下方に相対移動することとなるが、ガイドバー450があるため、本文A1の傾倒防止の効果が維持される。この状態で表紙付本文A2は、固定コンベア410Cに搬送される。
【0077】
固定コンベア410Cにおいては、表紙付本文A2は、搬送ベルト412C及び搬送チェーン810の搬送片811により、水平に搬送される。この時、表紙Bは、漸次左右方向外方側が上方に立ち上がる一対のガイドプレート440Cにより表表紙及び裏表紙が上方に折り曲げられ、本文A1の表裏それぞれの見返し紙葉に徐々に接近する。なお、ここではクランパ111が本文A1から完全に離間するものの、ガイドバー450と左右方向外方側が上方に立ち上がる一対のガイドプレート440Cにより表表紙及び裏表紙が上方に折り曲げられた表紙Bとにより、傾倒防止の効果が維持される。本文A1は、一対のガイドプレート440Cの後端部において、その表裏の見返し紙葉に表紙Bの表表紙及び裏表紙が当接し、それらの小口部が貼り合わされることにより、表紙貼本文A3となる。以上により、昇降搬送ユニット40による表紙付本文A2における本文A1への表紙Bの小口部の貼り合わせが終了となり、表紙Bの表表紙と裏表紙とが見返し紙葉に貼り合わされた表紙貼本文A3は、固定コンベア410Cから下流側に搬送される。
【0078】
以上に説明した本実施形態によれば、本文A1のサイズに応じて、昇降コンベア410Aを昇降させることができるため、適切な表紙付本文A2の受け取りおよび搬送が可能となる。例えば、本文A1の上下方向のサイズが小さい場合、昇降コンベア410Aが、最下降状態などの昇降コンベア410Aとクランパ111との離間距離が長い状態であると、本文A1の落下距離が長くなり、落下時に本文A1の背及び表紙Bの当該背に対応する部分に潰れ(特に角部の潰れ)や落下の衝撃で本文A1と表紙Bとに位置ズレが生じる可能性がある。しかしながら、図10に示されるように昇降コンベア410Aを上昇させ、昇降コンベア410Aとクランパ111との離間距離を短くすれば、本文A1の落下距離を短くすることができ、このような不良を抑制することができる。
【0079】
また、本文A1の上下方向のサイズが大きい場合、最下降状態などの昇降コンベア410Aとクランパ111との離間距離が短い状態であると、昇降コンベア410Aへの本文A1の適切な落下距離を確保することができず、表紙付本文A2が適切な姿勢にならない、本文A1の背と表紙Bとの良好な接着がなされない、等の可能性がある。また、この状態では、表紙Bが折り曲げられる際、本文A1から十分にクランパ111が離間しておらず、表紙Bの表表紙及び裏表紙がクランパ111に接触し、小口部に塗布された糊がクランパ111に付着してしまう可能性もある。しかしながら、図11に示されるように、昇降コンベア410Aを適切な位置に下降させることで、適切な落下距離を確保することができると共に、表紙Bが折り曲げられる際に本文A1から十分にクランパ111を離間させることができ、上記のような不良を抑制することができる。
【0080】
特に、従来の技術では、表紙にコシのある製本の製造時に糊のクランパへの付着が多発しており、糊がクランパに付着すると、乾いた場合にクランパから落下するため、本文や表紙に付着して不良の原因になる。このことから、糊がクランパに付着する場合にはこまめな清掃が必須であるが、本実施形態によれば、そもそも糊がクランパ111に付着することを抑制することができるため、こまめな清掃が必須ではなく、清掃時間、清掃作業回数の低減、延いては低コスト化を実現できる。
【0081】
また、本文A1の厚さが薄い場合は、落下距離がある程度長い必要がある。本実施形態においては、本文A1の厚さが薄い場合は、昇降コンベア410Aを従来よりも下方に位置するよう下降移動させることができ、本文A1の厚さに応じた適切な落下、つまり昇降コンベア410Aにより適切に表紙付本文A2を受け取ることができる。
【0082】
また、昇降コンベア410Aや連動コンベア410Bが搬送チェーン110に近い状態では、作業者は手をユニットの奥側に入れることが困難である。そのため、この状態では図4及び図9において図中奥側に位置する他方側のガイドプレート440やガイドバー450の付け替えや部品の清掃等、装置メンテナンスが容易ではない。一方、昇降コンベア410Aを最下降位置にまで下降させれば搬送チェーン110との離間距離を長くすることができるため、作業者は手をユニットの奥側に入れ易く、装置メンテナンスが極めて容易となる。
【0083】
なお、本実施形態においては、昇降コンベア410Aのみを昇降装置60により昇降移動させると説明したが、連動コンベア410B、固定コンベア410Cを水平に配置し、これらも昇降移動させるようにしてもよく、連動コンベア410Bを水平に配置し、固定コンベア410Cを搬送ベルト412Cが傾斜するよう、つまり本実施形態に係る連動コンベア410Bの如く傾斜して配置し、昇降コンベア410Aと共に連動コンベア410Bを昇降させ、固定コンベア410Cの傾斜角度を可変とするようにしてもよい。
【0084】
また、本実施形態においては、昇降装置60が回転ロッド620と、昇降部材630とを備え、回転ロッド620の回転により生じる昇降部材630の昇降移動で昇降コンベア410Aを昇降移動させると説明したがこれに限定するものではない。油圧やエアシリンダなど、昇降コンベア410Aを昇降移動可能な駆動装置であれば、どのようなものを用いてもよい。
【0085】
また、本実施形態においては、テンション調整装置80を、エアシリンダ800を用いてチェーンギア827を進退移動させると説明したが、これに限定するものではなく、チェーンギア827を進退移動可能な駆動装置であれば、どのようなものを用いても良く、また、バネ材などの付勢部材を用いてチェーンギア827や搬送チェーン810のテンションを調整するようにしてもよい。
【0086】
また、本実施形態においては、駆動モータ400を用いて搬送コンベア410の各機構を駆動させると説明したが、駆動モータ400を用いることなく、他の装置で用いられているモータの回転力をギアや回転軸等を介して搬送コンベア410に入力し、搬送コンベア410の各機構を駆動させるようにしてもよい。ここでの他の装置としては、例えば本文搬送ユニット10や本文加工ユニット20、表紙加工ユニット30、表紙貼りユニット31等が挙げられる。一例としては、本文搬送ユニット10の搬送チェーン110を周回駆動させるモータの回転力を搬送コンベア410に伝達させる手法が挙げられる。
【0087】
また、本実施形態においては、一対のガイドバー450,450Aをサイドフレーム421B,421Aに設けると説明したがこれに限定するものではない。他の要素、例えばベース70に設けるようにしてもよい。また、一対のガイドバー450,450Aを一対のガイドプレート440C,440Aに設けるようにしてもよい。この場合、一対のガイドバーのうちの一方は可動側のガイドプレートと共に左右方向に移動可能となる。例えば、一対のガイドバー450がガイドプレート440Bに設けられている場合、左右方向一方側の丸棒451,453を支持する支持棒452の下端部が可動側のガイドプレート440Bに連結され、左右方向他方側の丸棒451,453を支持する支持棒452の下端部が可動側ではない他方側のガイドプレート440Bに連結される。このようにすることで、左右方向一方側の丸棒451,453及び支持棒452からなる左右方向一方側のガイドバー450は、可動側のガイドプレート440Bと共に左右方向に移動可能となる。
【0088】
本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
1 無線綴機
111 クランパ(搬送部)
40 昇降搬送ユニット(搬送装置)
410 搬送コンベア(コンベア)
410A 昇降コンベア(コンベア)
410B 連動コンベア
410C 固定コンベア
440A~440C ガイドプレート(折曲部)
450 ガイドバー(傾倒防止部)
60 昇降装置(昇降部)
650 ガイド装置
810 搬送チェーン
811 搬送片
80 テンション調整装置(調整部)
A1 本文
B 表紙
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