IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-耐候性試験装置、及び耐候性試験方法 図1
  • 特開-耐候性試験装置、及び耐候性試験方法 図2
  • 特開-耐候性試験装置、及び耐候性試験方法 図3
  • 特開-耐候性試験装置、及び耐候性試験方法 図4
  • 特開-耐候性試験装置、及び耐候性試験方法 図5
  • 特開-耐候性試験装置、及び耐候性試験方法 図6
  • 特開-耐候性試験装置、及び耐候性試験方法 図7
  • 特開-耐候性試験装置、及び耐候性試験方法 図8
  • 特開-耐候性試験装置、及び耐候性試験方法 図9
  • 特開-耐候性試験装置、及び耐候性試験方法 図10
  • 特開-耐候性試験装置、及び耐候性試験方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062077
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】耐候性試験装置、及び耐候性試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169843
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】宮本 慎一
(72)【発明者】
【氏名】栃木 華恵
(72)【発明者】
【氏名】柏女 恵
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050BA09
2G050CA03
2G050EC07
(57)【要約】
【課題】耐候性試験を促進しつつ、効率的に耐候性試験を実施することができる耐候性試験装置を提供する。
【解決手段】耐候性試験装置1は、試料を保持可能な第1保持部9と、第1保持部9を内部に収納する第1試験容器10と、試料を保持可能な第2保持部29と、第2保持部29を内部に収納する第2試験容器30と、第2試験容器30内に配置され、試料に液体を噴霧するように構成された噴霧部46aと、を備える。耐候性試験装置1は、試料を第1試験容器10と第2試験容器30との間で搬送可能なように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持可能な第1保持部と、
前記第1保持部を内部に収納する第1試験容器と、
前記試料を保持可能な第2保持部と、
前記第2保持部を内部に収納する第2試験容器と、
前記第2試験容器内に配置され、前記試料に液体を噴霧するように構成された噴霧部と、
を備え、
前記試料を前記第1試験容器と前記第2試験容器との間で搬送可能なように構成されている、耐候性試験装置。
【請求項2】
光源を有する光照射装置を更に備え、
前記第1試験容器は、光を透過可能な光透過部を有し、
前記光照射装置は、前記第1試験容器の外に配置され、前記光源からの光を前記光透過部を介して前記第1保持部に保持された前記試料に照射する、
請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項3】
前記光源は、15mW/cm以上60mW/cm以下の光量を有する、
請求項2に記載の耐候性試験装置。
【請求項4】
前記光照射装置は、前記光源からの光を平行光にする光学系を有し、
前記光学系は、少なくとも1つのコリメートレンズを含む、
請求項2に記載の耐候性試験装置。
【請求項5】
前記光源は、キセノンランプである、
請求項2に記載の耐候性試験装置。
【請求項6】
前記第1試験容器は、前記試料を取出し可能な第1開口を有し、
前記第2試験容器は、前記試料を取出し可能な第2開口を有し、
前記第1試験容器と前記第2試験容器とは、前記第1開口及び前記第2開口を通して、それぞれの内部空間が連通可能となっており、
前記第1試験容器と前記第2試験容器との間には、前記第1試験容器の内部空間と前記第2試験容器の内部空間との間を閉じる開閉可能なシャッタ部材が設けられている、
請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項7】
前記第1試験容器と前記第2試験容器との間で前記試料を搬送する搬送装置を更に備え、
前記搬送装置は、前記第1開口と前記第2開口とを通して前記試料を前記第1試験容器と前記第2試験容器との間で搬送する、
請求項6に記載の耐候性試験装置。
【請求項8】
前記第1試験容器及び前記第2試験容器の外側に設けられ、前記第1試験容器及び前記第2試験容器のそれぞれと隣接する第3試験容器を備え、
前記第1試験容器は、前記試料を取出し可能な第1開口を有し、
前記第2試験容器は、前記試料を取出し可能な第2開口を有し、
前記第3試験容器は、前記第1開口と連通し、前記試料が移動可能な第3開口と、前記第2開口と連通し、前記試料が移動可能な第4開口とを有する、
請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項9】
前記第1試験容器と前記第2試験容器との間で前記試料を搬送する搬送装置を更に備え、
前記搬送装置は、少なくとも前記第3試験容器に設けられており、前記第1開口及び前記第3開口と前記第2開口及び前記第4開口とを通して前記試料を前記第1試験容器と前記第2試験容器との間で搬送する、
請求項8に記載の耐候性試験装置。
【請求項10】
前記第1試験容器は、前記第2試験容器よりも小さい容積となるように形成されている、
請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項11】
前記試料に付着する前記液体を除去する除去機構を更に備え、
前記除去機構は、前記試料が前記第1試験容器内に搬送される前の領域に設けられている、
請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項12】
前記第1試験容器と前記第2試験容器との間の圧力差を調整する圧力調整機構を更に備える、
請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項13】
前記第2試験容器に連結され、前記第2試験容器内の液体を排出する排水機構を更に備え、
前記排水機構は、排水タンクと、前記排水タンクの上流に設けられる第1バルブと、前記排水タンクの下流に設けられる第2バルブとを有する、
請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項14】
前記第1保持部の高さ位置と前記第2保持部の高さ位置とが同じである、
請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項15】
前記第2保持部は、水平方向に延在する面に対して傾斜する試料保持面を有している、
請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項16】
前記第1試験容器及び前記第2試験容器の少なくとも一方は、複数の試験容器である、
請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項17】
前記第1試験容器内及び前記第2試験容器内の少なくとも一方の圧力を調整する圧力調整部と、
前記第1試験容器内に気体を導入するガス導入部と、
前記気体を加湿する加湿部と、
前記試料の温度を調整する温度調整部と、
前記圧力、前記気体の濃度、前記気体の湿度、及び前記試料の温度の少なくとも1つを計測する計測部と、
前記計測部による計測値に基づいて、前記圧力調整部、前記ガス導入部、前記加湿部、前記温度調整部、及び、前記噴霧部の少なくとも1つを制御する制御部と、
を更に備える、
請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項18】
請求項1~17の何れか一項に記載の耐候性試験装置を用いて前記試料の耐候性を評価する耐侯性試験方法であって、
前記第1試験容器において前記試料に対して第1耐候性試験を行う工程と、
前記第2試験容器において前記試料に対して前記噴霧部から液体を噴霧して第2耐候性試験を行う工程と、
前記第1試験容器と前記第2試験容器との間において前記試料を搬送する工程と、
を備える耐候性試験方法。
【請求項19】
前記第1耐候性試験を行う工程において、光源からの光を前記試料に照射する耐候性試験を行う、
請求項18に記載の耐候性試験方法。
【請求項20】
前記第1耐候性試験を行う工程と前記第2耐候性試験を行う工程とを繰り返す、
請求項18に記載の耐候性試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性試験装置、及び耐候性試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料や無機材料が太陽などの光や熱、雨などの水分、大気中の酸素等によってどのくらいで劣化するかという耐候性試験を行う場合、実環境下で試験を行うことが最良である。しかし、実環境下での試験では、試験結果を得るまでに長期間を要してしまうことがある。そこで、太陽光よりも高光量の光源を有する耐候促進試験装置を用いて耐候性試験を行い、各種材料の耐候性の試験結果を早期に取得することが行われている。このような耐候性試験装置として、サンシャインウェザオメーター(SWOM)、メタルウェザーメーター(MW)、スーパーUV(SUV)、キセノンウェザーメーター(例えば特許文献1,2を参照)などが知られている。
【0003】
サンシャインウェザオメーターは、カーボンアークからなる光源を備え、紫外部から可視光部の波長を含む光をこの光源から試料に照射すると共に、水噴霧装置により一定時間試料に水を噴霧することにより、短期間で耐候性試験を実現する装置である。この装置では、ある程度の試験期間の短縮を行うことができる。また、メタルウェザーメーター及びスーパーUVは、サンシャインウェザオメーターよりも強力な光源であるメタルハライドランプを備え、紫外部から可視光部までの高光量の光をこの光源から試料に照射すると共に、水噴霧装置により一定時間試料に水を噴霧する装置である。これらの装置では、高光量の光源を用いているため、サンシャインウェザオメーターよりも短期間で耐候性試験を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平1-21891号公報
【特許文献2】特公平1-28897号公報
【特許文献3】特公昭49-27072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3に記載の耐候性試験装置では、1つの試験容器において液体噴霧試験、及び、光照射等の他の耐候性試験を実施している。液体噴霧試験を行った後に他の耐候性試験を行う場合、液体噴霧試験後に他の耐侯性試験での湿度条件となるように試験容器内の湿度を調整する必要がある。しかしながら、液体噴霧試験後の試験容器内の湿度は高くなるため、試験容器内の空気を乾燥空気で入れ替える等により試験容器内の湿度を調整する必要がある。よって、液体噴霧試験後の湿度調整に時間がかかり、効率的に耐候性試験を行えないおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためのものであり、耐候性試験を促進しつつ、効率的に耐候性試験を実施することができる耐候性試験装置及び耐候性試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明は、一側面として、耐候性試験装置に関する。この耐候性試験装置は、試料を保持可能な第1保持部と、第1保持部を内部に収納する第1試験容器と、試料を保持可能な第2保持部と、第2保持部を内部に収納する第2試験容器と、第2試験容器内に配置され、試料に液体を噴霧するように構成された噴霧部と、を備え、試料を第1試験容器と第2試験容器との間で搬送可能なように構成されている。
【0008】
この耐候性試験装置は、噴霧部が配置され、液体噴霧試験を行うことができる第2試験容器とは別に、他の耐候性試験を行うことができる第1試験容器を備えている。更に、第1試験容器と第2試験容器との間では、試料が搬送可能である。この場合、第2試験容器内において試料に対して液体噴霧試験を行った後に、試料を、第1試験容器へ搬送することができる。これにより、液体噴霧試験後における第2試験容器内の湿度の調整、例えば大量の乾燥ガスを第2試験容器内へ流し込むこと、を実施しなくても、第1試験容器内において他の耐候性試験を行える。したがって、この耐候性試験装置によれば、耐候性試験を促進しつつ、効率的に耐候性試験を実施することができる。
【0009】
[2]上記[1]の耐候性試験装置は、光源を有する光照射装置を更に備え、第1試験容器は、光を透過可能な光透過部を有し、光照射装置は、第1試験容器の外に配置され、光源からの光を光透過部を介して第1保持部に保持された試料に照射してもよい。この場合、光照射装置が第1試験容器の外にあるため、第1試験容器内を高圧雰囲気等にして試験を行った場合に高圧雰囲気等による光照射装置の破損を防ぐことができる。加えて、第2試験容器において液体噴霧試験を行い、第1試験容器において光照射試験を行うことで、第1試験容器における結露の発生を抑制することができる。これにより、光照射装置からの光量が結露によって変化してしまうことを防ぎ、より正確な光照射試験を行うことができる。
【0010】
[3]上記[2]の耐候性試験装置では、光源は、15mW/cm以上60mW/cm以下の光量を有してもよい。この場合、高光量の光を試料に照射することができるため、耐候性試験を容易に促進することが可能となる。
【0011】
[4]上記[2]又は[3]の耐候性試験装置では、光照射装置は、光源からの光を平行光にする光学系を有し、光学系は、少なくとも1つのコリメートレンズを含んでもよい。この場合、平行光を試料に照射することで、試料の各部における照射強度のずれを抑制することができ、より正確な耐候性試験を行うことができる。
【0012】
[5]上記[2]~[4]のいずれかの耐候性試験装置では、光源は、キセノンランプであってもよい。この場合、キセノンランプから照射される光の波長の波形は太陽光の波形に近いため、実環境下での試験に近い試験結果を容易に得ることが可能となる。即ち、実環境下での耐候性試験を再現した試験結果を早期に得ることが可能となる。
【0013】
[6]上記[1]~[5]のいずれかの耐候性試験装置では、第1試験容器は、試料を取出し可能な第1開口を有し、第2試験容器は、試料を取出し可能な第2開口を有してもよい。また、第1試験容器と第2試験容器とは、第1開口及び第2開口を通して、それぞれの内部空間が連通可能となっており、第1試験容器と第2試験容器との間には、第1試験容器の内部空間と第2試験容器の内部空間との間を閉じる開閉可能なシャッタ部材が設けられてもよい。この場合、シャッタ部材を開くことで容易に試料を搬送することができる。さらに、シャッタ部材を閉じることで、一方の試験容器において耐候性試験を行う際、当該耐候性試験によって他方の試験容器内の圧力等の試験条件が変化してしまうことを防ぐことができる。
【0014】
[7]上記[6]の耐候性試験装置は、第1試験容器と第2試験容器との間で試料を搬送する搬送装置を更に備え、搬送装置は、第1開口と第2開口とを通して試料を第1試験容器と第2試験容器との間で搬送してもよい。この場合、搬送装置を用いることで、より容易に第1試験容器と第2試験容器との間での試料の搬送を行うことができる。
【0015】
[8]上記[1]~[7]のいずれかの耐候性試験装置は、第1試験容器及び第2試験容器の外側に設けられ、第1試験容器及び第2試験容器のそれぞれと隣接する第3試験容器を備えてもよい。また、第1試験容器は、試料を取出し可能な第1開口を有し、第2試験容器は、試料を取出し可能な第2開口を有し、移動容器は、第1開口と連通し、試料が移動可能な第3開口と、第2開口と連通し、試料が移動可能な第4開口とを有してもよい。この場合、第3試験容器において第1試験容器及び第2試験容器における耐候性試験と異なる耐候性試験を行うことができ、より効率的に耐候性試験を行うことができる。
【0016】
[9]上記[8]の耐候性試験装置は、第1試験容器と第2試験容器との間で試料を搬送する搬送装置を更に備え、搬送装置は、少なくとも第3試験容器に設けられており、第1開口及び第3開口と第2開口及び第4開口とを通して試料を第1試験容器と第2試験容器との間で搬送してもよい。この場合、搬送装置を用いることで、より容易に第1試験容器と第3試験容器との間、及び、第2試験容器と第3試験容器との間での試料の搬送を行うことができる。また、搬送装置が少なくとも第3試験容器に設けられることにより、搬送装置が設けられることによる第1試験容器及び第2試験容器の容積の増加を抑制することができる。
【0017】
[10]上記[1]~[9]のいずれかの耐候性試験装置では、第1試験容器は、第2試験容器よりも小さい容積となるように形成されてもよい。この耐候性試験装置では、液体噴霧試験により生じる液体を第2試験容器内において滞留させておく必要があるため、第1試験容器の容積を第2試験容器の容積より小さくすることができる。この場合、第1試験容器内において耐候性試験を行う際、当該耐候性試験の湿度条件となるように第1試験容器内の湿度を調整することが、容易であり、かつ、短時間で済む。例えば、第1試験容器内の湿度を外部からガスを導入して調整する場合、導入するガスの量が少なくて済み、かつ、ガスを導入する時間が短くて済む。したがって、この耐候性試験装置によれば、より効率的に耐候性試験を実施することができる。また、この耐候性試験装置によれば、耐候性試験装置全体を小型化することができる。
【0018】
[11]上記[1]~[10]のいずれかの耐候性試験装置は、試料に付着する液体を除去する除去機構を更に備え、除去機構は、試料が第1試験容器内に搬送される前の領域に設けられていてもよい。この場合、試料に付着した液体を除去した上で、試料を第1試験容器内に搬送することができる。よって、試料に付着した液体が第1試験容器における耐候性試験へ影響すること、例えば付着した液体により試料へ照射される光量が変化すること、を防ぐことができる。
【0019】
[12]上記[1]~[11]のいずれかの耐候性試験装置は、第1試験容器と第2試験容器との間の圧力差を調整する圧力調整機構を更に備えてもよい。この場合、第1試験容器と第2試験容器との間で試料を搬送する前に、第1試験容器と第2試験容器との間の圧力差を圧力調整機構により小さくすることができる。よって、試料を搬送する際、第1試験容器と第2試験容器との間におけるガスの流出入を抑制することができる。
【0020】
[13]上記[1]~[12]のいずれかの耐候性試験装置は、第2試験容器に連結され、第2試験容器内の液体を排出する排水機構を更に備え、排水機構は、排水タンクと、排水タンクの上流に設けられる第1バルブと、排水タンクの下流に設けられる第2バルブとを有してもよい。この場合、第1バルブ及び第2バルブの開閉操作により、第2試験容器内に供給された液体のうち不要となった液体を第2試験容器外へ排出することができる。加えて、第2バルブを閉じた上で第1バルブを開くことで、排出時の第2試験容器の圧力等の試験条件の変化を抑制することができる。
【0021】
[14]上記[1]~[13]のいずれかの耐候性試験装置では、第1保持部の高さ位置と第2保持部の高さ位置とが同じであってもよい。この場合、試料を第1保持部(第2保持部)から第2保持部(第1保持部)へ容易に搬送することができる。また、そのような搬送を行う搬送装置を簡素化することが可能となる。
【0022】
[15]上記[1]~[14]のいずれかの耐候性試験装置では、第2保持部は、水平方向に延在する面に対して傾斜する試料保持面を有していてもよい。この場合、液体噴霧試験等により、第2保持部に保持された試料に液体が付着した際、当該付着した液体を第2試験容器の底へ流すことができる。これにより、第2保持部に保持された試料に供給された液体が試料表面に不均一に残ることがなくなり、液体噴霧による耐候性試験の条件を均一なものとして、より適切な耐候性試験を行うことが可能となる。また、試料に付着する液体を少なくできることから、第2試験容器での試験が終了した後に第1試験容器に試料を搬送した際、第1試験容器における耐候性試験へ影響すること、例えば付着した液体により試料へ照射される光量が変化すること、を防ぐことができる。
【0023】
[16]上記[1]~[15]のいずれかの耐候性試験装置では、第1試験容器及び第2試験容器の少なくとも一方は、複数の試験容器であってもよい。この場合、複数の試料に対して耐候性試験を行う際、複数の試料それぞれを複数の試験容器それぞれに配置することで、複数の試料それぞれに対する耐候性試験を並行して行うことができる。よって、より効率的に耐候性試験を行うことができる。
【0024】
[17]上記[1]~[16]のいずれかの耐候性試験装置は、第1試験容器内及び第2試験容器内の少なくとも一方の圧力を調整する圧力調整部と、第1試験容器内に気体を導入するガス導入部と、気体を加湿する加湿部と、試料の温度を調整する温度調整部と、圧力、気体の濃度、気体の湿度、及び試料の温度の少なくとも1つを計測する計測部と、計測部による計測値に基づいて、圧力調整部、ガス導入部、加湿部、温度調整部、及び、噴霧部の少なくとも1つを制御する制御部と、を更に備えてもよい。この場合、熱、水(雨)、酸素による試料の劣化を評価する耐候性試験をより具体的に行うことができ、また加圧することによりその耐候性試験を促進することが可能となる。すなわち、酸素による試料の劣化が促進され、光照射による劣化と、酸素、水(雨)、温度、湿度等による劣化とをバランスよく進行させることができ、実環境下で長時間かけて行った耐候性試験と同様の試験結果をより短時間で再現することが可能となる。
【0025】
[18]本発明は、別の側面として、耐候性試験方法に関する。この耐候性試験方法は、上記[1]~[17]のいずれかの耐候性試験装置を用いて試料の耐候性を評価する耐侯性試験方法であって、第1試験容器において試料に対して第1耐候性試験を行う工程と、第2試験容器において試料に対して噴霧部から液体を噴霧して第2耐候性試験を行う工程と、第1試験容器と第2試験容器との間において試料を搬送する工程と、を備える。この場合、第2試験容器内において試料に対して液体噴霧試験を行った後に、試料を第1試験容器へ搬送することができる。よって、液体噴霧試験後における第2試験容器内の湿度の調整、例えば大量の乾燥空気を第2試験容器内へ流し込むこと、を実施しなくても、第1試験容器内において他の耐候性試験を行える。したがって、この耐候性試験方法によれば、耐候性試験を促進しつつ、効率的に耐候性試験を実施することができる。
【0026】
[19]上記[18]の耐候性試験方法では、第1耐候性試験を行う工程において、光源からの光を試料に照射する試験を行ってもよい。この場合、第2試験容器において液体噴霧試験が行われると共に、第1試験容器において光照射試験が行われる。よって、第1試験容器における結露の発生を抑制することができる。これにより、光照射装置からの光量が結露によって変化してしまうことを防ぎ、より正確な光照射試験を行うことができる。
【0027】
[20]上記[18]又は[19]の耐候性試験方法では、第1耐候性試験を行う工程と第2耐候性試験を行う工程とを繰り返してもよい。この場合、試験条件を実環境下での試験条件に近づけることができ、実環境下での試験結果を再現しつつ耐候性試験を促進することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、耐候性試験を促進しつつ、効率的に耐候性試験を実施することができる耐候性試験装置及び耐候性試験方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る耐候性試験装置を模式的に示す断面図である。
図2図2は、図1に示す耐候性試験装置においてシャッタ部材を開いた状態を示す断面図である。
図3図3は、図1に示す耐候性試験装置の構成を模式的に示す上面図である。
図4図4は、図1に示す耐候性試験装置の第1変形例を模式的に示す断面図である。
図5図5は、図1に示す耐候性試験装置の第2変形例を模式的に示す断面図である。
図6図6は、図1に示す耐候性試験装置の第3変形例を模式的に示す断面図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係る耐候性試験装置を模式的に示す上面図である。
図8図8は、図7に示す耐候性試験装置の変形例を模式的に示す上面図である。
図9図9は、本発明の第3実施形態に係る耐候性試験装置を模式的に示す上面図である。
図10図10は、本発明の第4実施形態に係る耐候性試験装置を模式的に示す上面図である。
図11図11は、本発明の第5実施形態に係る耐候性試験装置を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る耐候性試験装置及び耐候性試験方法について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いる場合があり、重複する説明は省略する。
【0031】
[第1実施形態]
図1図2及び図3を参照しつつ第1実施形態に係る耐候性試験装置1について説明する。図1は、第1実施形態に係る耐候性試験装置1を模式的に示す断面図である。図2は、図1に示す耐候性試験装置1においてシャッタ部材50を開いた状態を示す断面図である。図3は、図1に示す耐候性試験装置1の構成を模式的に示す上面図である。
【0032】
耐候性試験装置1は、各種の耐侯性試験を実施する試験装置である。耐候性試験装置1は、図1及び図2に示すように、第1保持部9、第1試験容器10、第2保持部29、第2試験容器30、光照射装置45、液体噴霧装置46、シャッタ部材50、搬送装置54,計測部57、及び、制御部58を備える。第1保持部9及び第2保持部29のそれぞれは、第1試験容器10及び第2試験容器30それぞれの内部に収納される。液体噴霧装置46が有する噴霧部46aは、第2試験容器30内に配置される。
【0033】
耐候性試験装置1では、第1試験容器10において、試料Sを第1保持部9に保持させた上で、光照射装置45により試料Sに対して光を継続的に照射して試料Sの劣化を評価する耐候性試験(以下、「光照射試験」とも称す。)を行う。耐候性試験装置1では、第2試験容器30において、試料Sを第2保持部29に保持させた上で、液体噴霧装置46により試料Sに対して液体を継続的に噴霧して試料Sの劣化を評価する耐候性試験(以下、「液体噴霧試験」とも称す。)を行う。耐候性試験装置1では、第1試験容器10及び第2試験容器30において、試料Sに光の照射、及び、液体の噴霧を行わない試験(以下、「暗黒試験」とも称す。)を行う。これら耐候性試験により、試料Sが太陽などの光や熱、雨などの水分、大気中の酸素等によってどのくらいで劣化するかという耐候性試験を行う。なお、本実施形態においては、液体噴霧装置46から水が噴霧される場合について説明するが、液体噴霧装置46からは液体が噴霧されていればよく、液体噴霧装置46から噴霧される液体は水に限定されない。後述する第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態及び第5実施形態においても同様である。
【0034】
図1及び図2に示すように、搬送装置54は、シャッタ部材50を開けた上で、第1試験容器10及び第2試験容器30間において試料Sを搬送する。即ち、搬送装置54は、シャッタ部材50を開けた状態で、試料Sを第1試験容器10から第2試験容器30に、又は、試料Sを第2試験容器30から第1試験容器10に搬送する。このような構成により、第1試験容器10及び第2試験容器30において、条件が異なる耐侯性試験を繰り返し行うことができる。
【0035】
第1試験容器10及び第2試験容器30のそれぞれには、後述するように、計測部57又は制御部58と電気的に接続された各種計測器、各種センサ、及び、各種調整器等(以下、「各種機器」とも称す。)が設けられている。これら各種機器により、第1試験容器10及び第2試験容器30における温度、圧力、水位、湿度、ガス濃度等の試験条件を調整することができる。
【0036】
第1保持部9は、図1に示すように、耐候性試験に用いられる試料Sを保持する部材である。第1保持部9は、平板状の第1板部9aと、第1板部9aを支持する第1支持部9bとから構成される。試料Sは第1板部9aの第1試料保持面9cの上に配置されて、アルミテープなどで貼り付けられることにより保持される。第1実施形態では、第1試料保持面9cは、水平方向に延在する面に対して平行である。
【0037】
第1試験容器10は、試料Sに対する光照射試験等を行う試験容器である。第1試験容器10は、図2に示すように、第1試験容器10の外形を形成する壁である第1周壁10aと、第1周壁10aにより画成され、第1保持部9等を収納する第1収納部10b(内部空間)と、を有する。第1試験容器10の材料は、試験容器内の圧力に対する耐圧性を有するものであれば、各種の材料を用いることができるが、例えば、SUS、アルミニウム合金、鉄、チタン合金、タングステン合金、及び、炭素鋼繊維のうちのいずれか、又は、これらのうち少なくとも2つを組み合わせたもの等から構成することができる。また、第1試験容器10の内面は、被覆材により被覆されていてもよい。当該被覆材を構成する材料は、当該被覆材が光照射装置45から照射される光等により劣化しない、又は、耐候性試験に影響を与えるガス等を発生させなければ、特に限定されない。当該被覆材を構成する材料は、有機物及び無機物のうち少なくとも一方、又は、これらを組み合わせたもの等であってもよい。
【0038】
第1周壁10aの上部の中央であって、第1保持部9(試料S)に対向する領域は開口しており、当該開口には光透過部10cが気密に嵌め込まれている。光透過部10cは、第1保持部9に対向するように位置し、後述する光照射装置45から照射される光Lを著しく減衰させることなく透過させて試料Sに光Lがそのまま照射されるように構成されている。光透過部10cは、光照射装置45から照射される光L(特に紫外線)を透過可能な材料から構成されればよく、例えば石英ガラス板である。なお、光透過部10cは、第1試験容器10の一部を構成することから、第1試験容器10内の雰囲気や圧力を保つ構造となっている。
【0039】
第1試験容器10は、第1周壁10aの一部に形成され、試料Sを取出し可能な第1開口11を有する。第1開口11は、後述するシャッタ部材50によって開閉され、搬送装置54が通過できる。第1試験容器10は、第1開口11が後述する第2開口31と向かい合うように、第2試験容器30と隣接して設置される。これにより、第1試験容器10と第2試験容器30とは、第1開口11及び第2開口31を通して、それぞれの内部空間が連通可能となっている。
【0040】
第1試験容器10には、図2に示すように、第1ガス導入機構13(ガス導入部)、第1圧力調整器14(圧力調整部)、第1温度調整器15(温度調整部)、第1排水機構16、第1圧力計17、第1湿度計18、第1温度計19、第1温度センサ20、第1水位センサ21、及び、第1ガス濃度センサ22が設けられている。第1収納部10bには、第1ガス導入機構13の第1ガス導入管13a、及び、第1排水機構16の第1排水管16aが接続されており、それぞれの先端が第1収納部10bの内部に位置するように構成されている。
【0041】
第1ガス導入機構13は、第1ガス導入管13a、第1酸素流量調整器13b、第1窒素流量調整器13c、第1ガス湿度調整器13d(加湿部)、及び、第1ガス温度調整器13eにより構成される。外部から供給される酸素ガス及び窒素ガス(以下、単に「ガス」とも称す。)は、第1ガス導入管13aを通じて第1試験容器10に供給される。供給されるガスの流量は、第1酸素流量調整器13b及び第1窒素流量調整器13cにより調整される。第1ガス導入機構13により、第1試験容器10内のガス濃度を0%~100%までの間に調整することができる。なお、第1ガス導入機構13は、外部から取り入れた空気を第1試験容器10へ供給してもよい。
【0042】
第1ガス導入機構13により導入されるガスの流量は、第1圧力計17により計測した圧力、又は、第1ガス濃度センサ22により検知したガス濃度に基づいて、制御部58により制御されてもよい。ガスの流量は、一定の流量に調整されてもよい。ガスの流量は、第1圧力計17により計測した圧力、又は、第1ガス濃度センサ22により検知したガス濃度が所定の値に達するまで、所定の流量に調整され、当該所定の値に達した後、もしくは、当該所定の値に近づいたら、当該所定の流量以下に調整されてもよい。この場合、導入するガスの量を減らすことができる。また、ガスの流量は、計測した圧力と当該所定の設定値との差分に基づいて調整されてもよい。
【0043】
第1ガス湿度調整器13dは、第1ガス湿度調整器13d内の水をバブリングし、第1ガス導入管13aにより導入されるガスを加湿する。これにより、第1試験容器10内の湿度が調整される。第1ガス湿度調整器13dによる加湿は、第1湿度計18により計測された湿度情報に基づいて、制御部58により制御されてもよい。第1実施形態では、第1ガス湿度調整器13dは、第1ガス導入管13aに接続されているが、第1試験容器10内の湿度を調整できれば、第1ガス湿度調整器13dの設置場所は限定されず、直接第1試験容器10に接続されてもよい。例えば、第1ガス湿度調整器13dは、第1試験容器10内に直接ミストを噴霧する構成であってもよい。
【0044】
第1ガス温度調整器13eは、第1ガス導入管13aにより導入されるガスを加熱、又は、冷却することにより、第1試験容器10内の温度を調整する。第1ガス温度調整器13eによる加熱、又は、冷却は、第1温度計19により計測された温度情報に基づいて、制御部58により制御されてもよい。
【0045】
第1圧力調整器14は、例えば、バネなどの機械的な機構により圧力を制御することが可能なバルブ、例えば背圧バルブにより、第1試験容器10内の圧力を調整する。第1圧力調整器14による圧力調整は、第1圧力計17により計測された圧力情報に基づいて、制御部58により制御されてもよい。第1ガス導入機構13及び第1圧力調整器14により、第1試験容器10内の絶対圧を例えば0MPa~1.0MPaの間に調整することができる。第1圧力調整器14による圧力調整の一例としては、上述した機械的な機構を有するバルブ(背圧バルブ)において、バルブ本体に取り付けられている調整バルブを目標とする圧力に設定する。その後、第1試験容器10内の圧力が上昇して所定値を超えた場合、バルブに内蔵されたバネが縮むことで当該バルブが開放されて第1試験容器10内のガスが外部へ放出される。これにより、第1試験容器10内の圧力が調整される。また、当該バルブの開閉操作は、バネではなく、電気的に制御してもよい。この場合、第1試験容器10内の圧力を第1圧力計17により計測し、当該圧力の情報を制御部58へ送る。計測された圧力が設定した圧力より高くなったら、制御部58により当該バルブを開放して圧力を調整する。一方、計測された圧力が設定した圧力より低くなったら、制御部58により当該バルブを閉じて圧力を調整する。なお、第1圧力調整器14のバルブは、第1圧力計17により計測された圧力と設定した圧力との差分をバルブ開度の関数として制御部58において設定し、かかる関数に基づいてバルブ開度を可変に制御してもよい。
【0046】
第1温度調整器15は、その一部が第1保持部9に内蔵され、ヒータ及び冷却用流路から構成される。第1温度センサ20を構成する熱電対等の値に基づいて、制御部58により試料Sに対する加熱、又は、冷却が調整される。これにより、第1保持部9に保持される試料Sを所定の温度に加熱したり冷却したりして耐候性試験を行うことが可能となる。
【0047】
第1排水機構16は、第1排水管16a、第1上流バルブ16b、第1下流バルブ16c、及び、第1排水タンク16dにより構成される。第1排水機構16は、第1試験容器10内において第1ガス導入機構13から導入されたガスが凝縮して液体となった場合、当該液体を第1排水管16aから第1試験容器10の外部へ排出する。第1排水機構16は、第1試験容器10の底部に設けられている。
【0048】
第1排水管16aには、第1排水タンク16dが設けられ、第1排水タンク16dの上流側の第1排水管16aには第1上流バルブ16bが、下流側の第1排水管16aには第1下流バルブ16cが設けられている。第1下流バルブ16cを閉じた状態で第1上流バルブ16bを開くことで、第1試験容器10及び第1排水タンク16dの圧力を略等しくすることができる。これにより、水の排出時における第1試験容器10内の圧力変化及びガス濃度変化を抑制することができる。この際、水の排出前に第1排水タンク16d内の圧力及びガス濃度を、第1試験容器10内の圧力及びガス濃度に近づけてもよい。この場合、排出時における第1試験容器10内の圧力変化及びガス濃度変化をより抑制することができる。第1上流バルブ16bを閉じた後、第1下流バルブ16cを開くことで、第1試験容器10の圧力やガス濃度等の変化を抑制しつつ、第1排水タンク16dに溜まった水を外部に排出することができる。
【0049】
第1圧力計17、第1湿度計18、及び、第1温度計19のそれぞれは、第1試験容器10内の圧力、湿度、及び、温度のそれぞれを計測する計器である。第1温度センサ20、第1水位センサ21、及び、第1ガス濃度センサ22のそれぞれは、試料Sの温度、第1試験容器10内の水位、及び、第1試験容器10内のガス濃度のそれぞれを検出するセンサである。第1温度センサ20は、温度を適切に測定できるものであればよく、例えば熱電対、白金測温抵抗体(Pt)、又は、ブラックパネル温度計(BPT)である。
【0050】
第2保持部29は、耐候性試験に用いられる試料Sを保持する部材である。第2保持部29は、図1に示すように、平板状の第2板部29aと、第2板部29aを支持する第2支持部29bとから構成される。試料Sは第2板部29aの第2試料保持面29cの上に配置されて、アルミテープなどで貼り付けられることにより保持される。第1実施形態では、第2試料保持面29cは、水平方向に延在する面に対して平行である。第1保持部9の高さ位置と第2保持部29の高さ位置とが同じであってもよい。
【0051】
第2試験容器30は、試料Sに対する液体噴霧試験等を行う試験容器である。第2試験容器30は、図2に示すように、第2試験容器30の外形を形成する壁である第2周壁30aと、第2周壁30aにより画成され、第2保持部29等を収納する第2収納部30bと、を有する。第2試験容器30の材料は、第1試験容器10と同様である。
【0052】
第2試験容器30は、第2周壁30aの一部に形成され、試料Sを取出し可能な第2開口31を有する。第2開口31は、後述するシャッタ部材50によって開閉され、搬送装置54が通過できる。第2試験容器30は、第2開口31が第1開口11と向かい合うように、第1試験容器10と隣接して設置される。これにより、第1試験容器10と第2試験容器30とは、第1開口11及び第2開口31を通して、それぞれの内部空間が連通可能となっている。
【0053】
第2試験容器30では、液体噴霧試験により生じる液体を容器内に滞留させておく必要があるため、第2試験容器30の容積は、第1試験容器10の容積より大きいことが好ましい。すなわち、第1試験容器10は、第2試験容器30よりも小さい容積であることが好ましい。
【0054】
第2試験容器30には、図2に示すように、第2ガス導入機構33、第2圧力調整器34(圧力調整部)、第2温度調整器35(温度調整部)、第2排水機構36(排水機構)、第2圧力計37、第2湿度計38、第2温度計39、第2温度センサ40、第2水位センサ41、及び、第2ガス濃度センサ42が設けられている。これらの各種機器のそれぞれは、第1試験容器10に設けられる第1ガス導入機構13、第1圧力調整器14、第1温度調整器15、第1排水機構16、第1圧力計17、第1湿度計18、第1温度計19、第1温度センサ20、第1水位センサ21、及び、第1ガス濃度センサ22のそれぞれが有する機能及び構成を有する。第2試験容器30に設けられたこれら各種機器の説明においては、第1試験容器10に設けられた各種機器と相違する点を主に説明する。
【0055】
第2収納部30bには、第2ガス導入機構33の第2ガス導入管33a、第2排水機構36の第2排水管36a、及び、液体噴霧装置46の液体噴霧管46b(図1参照)が接続されており、それぞれの先端が第2収納部30bの内部に位置するように構成されている。液体噴霧管46bの先端には、試料Sに対して液体を噴霧する噴霧部46aが設けられている。これにより、噴霧部46aから試料Sに水を噴霧することができる。
【0056】
第2ガス導入機構33は、第2ガス導入管33a、第2酸素流量調整器33b、第2窒素流量調整器33c、第2ガス湿度調整器33d、及び、第2ガス温度調整器33eにより構成される。外部から供給されるガスは、第2ガス導入管33aを通じて第2試験容器30に供給される。第2ガス導入機構33により、第2試験容器30内のガス濃度を0%~100%までの間に調整することができる。
【0057】
第2排水機構36は、第2排水管36a、第2上流バルブ36b(第1バルブ)、第2下流バルブ36c(第2バルブ)、及び、第2排水タンク36d(排水タンク)により構成される。第2排水機構36は、第2周壁30aの底部に設けられている。第2排水機構36は、第2上流バルブ36bを開くことにより、第2試験容器30内において噴霧部46aから噴霧された水を、第2排水管36aから第2試験容器30の外部へ排出する。
【0058】
第2排水タンク36dの容積は、第2試験容器30の容積以下に設定される。第2排水タンク36dは、複数設けられてもよく、その場合、複数の第2排水タンク36dそれぞれは同じ第2排水管36aに設けられてもよく、それぞれが別々の第2排水管36aに設けられてもよい。第2上流バルブ36b及び第2下流バルブ36cの開閉操作は、第2水位センサ41によって検知された水位に基づいて、制御部58により制御されてもよい。
【0059】
圧力調整機構44は、第1試験容器10及び第2試験容器30内の圧力差を調整するための機構である。圧力調整機構44は、図3に示すように、第1試験容器10及び第2試験容器30に接続された配管44aと、配管44a上に設けられたバルブ44bとを有する。バルブ44bは、制御部58により開閉操作が制御される。バルブ44bを開くことにより、第1試験容器10及び第2試験容器30が連通し、第1試験容器10及び第2試験容器30内の圧力差が小さくなる。
【0060】
光照射装置45は、図1に示すように、光Lを照射する光源45aを有する。光照射装置45は、第1試験容器10及び第2試験容器30の外に配置され、光源45aからの光Lを光透過部10cを介して第1保持部9に保持された試料Sに照射する。光源45aは、15mW/cm以上60mW/cm以下の光量を有する。なお、ここで用いる「光量(mW/cm)」は、光源45aから照射される光の波長365nmでの光量(照度)を意味しており、例えば、紫外線積算光量計(ウシオ電機株式会社製UIT-250 受光器UVD-S365)といった方法で測定した値である。
【0061】
光照射装置45は、平行光を試料Sに照射する構成であってもよい。光照射装置45は、光源45aからの光Lを平行光にするコリメートレンズ45bを含む光学系を更に有してもよい。また、光照射装置45の光源45aは、例えばキセノンランプであってもよい。光源45aからの光Lは、少なくとも紫外線を含んでいてもよい。この場合、太陽光に含まれ、かつ、材料等の劣化に影響を与えやすい紫外線を照射光に含むことになり、実環境下での試験を再現した試験結果を容易に得ることが可能となる。
【0062】
液体噴霧装置46は、第2試験容器30において、第2保持部29により保持された試料Sに対して液体を噴霧する装置である。液体噴霧装置46は、図1に示すように、噴霧部46a、液体噴霧管46b、流量計46c、液体噴霧タンク46d、及び、流量バルブ46eを有する。流量バルブ46eを開くことにより、液体噴霧タンク46d内の水が、液体噴霧管46bを通って、噴霧部46aから噴出される。液体噴霧管46bは、第2収納部30bに接続されており、その先端に噴霧部46aが設けられている。噴霧部46aは、第2試験容器30内、かつ、第2保持部29の上方に位置している。噴霧部46aは、試料Sの全体に水を噴霧できればよく、例えばスプレーノズルである。噴霧する水は、純水、水道水、酸性雨を模したペーハー(pH)を調整した水、金属イオンを含んだ水、またはこれらを混合した水、または過酸化水素水等であってもよい。これにより、実環境下での雨を模擬することができる。
【0063】
流量計46cは、液体噴霧管46bを流れる水の流量を計測する。流量バルブ46eは、その開閉操作により、流量を調整する。流量バルブ46eの開閉操作は、流量計46cにより計測された流量に基づいて、制御部58により制御されてもよい。
【0064】
シャッタ部材50は、図1及び図2に示すように、第1試験容器10と第2試験容器30との間に設けられる。シャッタ部材50は、第1試験容器10の第1収納部10b(内部空間)と第2試験容器30の第2収納部30b(内部空間)との間を閉じる開閉可能な部材である。シャッタ部材50は、第1試験容器10及び第2試験容器30間において試料Sを移動する際に開き、試料Sの移動が終了したら閉じる。シャッタ部材50は、図1及び図2に示すように、搬送装置54を上方及び下方から挟み込むようにして閉じている。これにより、搬送装置54が第1開口11及び第2開口31を通過していても、シャッタ部材50を閉じることができる。シャッタ部材50の開閉操作は、制御部58により制御されてもよい。
【0065】
搬送装置54は、第1試験容器10及び第2試験容器30間で試料Sを搬送する装置である。搬送装置54は、第1試験容器10及び第2試験容器30の少なくとも一方に設けられている。搬送装置54は、図2に示すように、シャッタ部材50が開いている際に、第1保持部9(第2保持部29)に保持された試料Sを、第2保持部29(第1保持部9)へ搬送させる。搬送装置54は、例えばレールと、レール上を移動可能であって試料Sを保持できる機構とから構成され、第1開口11及び第2開口31を通過できる。搬送装置54の操作は、制御部58により制御される。
【0066】
除去機構56は、液体噴霧試験時において試料Sに付着した水を除去する機構である。除去機構56は、第1実施形態では、図1に示すように、第2試験容器30内に設けられている。すなわち、除去機構56は、試料Sが第1試験容器10内に搬送される前の領域に設けられる。これにより、試料Sを搬送装置54によって移動させながら、試料Sに付着した水を除去することができる。除去機構56は、例えばエアシャワーにより試料Sに空気を吹きかけ、水を除去する。除去機構56の操作は、制御部58により制御される。
【0067】
計測部57は、図2に示すように、第1圧力計17、第1湿度計18、第1温度計19、第1温度センサ20、第1水位センサ21、及び、第1ガス濃度センサ22と配線P1等を介して電気的に接続されている。計測部57は、第2圧力計37、第2湿度計38、第2温度計39、第2温度センサ40、第2水位センサ41、及び、第2ガス濃度センサ42と配線P2等を介して電気的に接続されている。計測部57は、各種機器から取得した情報を配線Qを介して制御部58に出力する。
【0068】
制御部58は、耐候性試験装置1の動作全体を制御する装置であり、例えば、CPU等を備えたコンピュータから構成される。制御部58は、第1酸素流量調整器13b、第1窒素流量調整器13c、第1ガス湿度調整器13d、第1ガス温度調整器13e、第1圧力調整器14、第1温度調整器15、第1上流バルブ16b、及び、第1下流バルブ16cと配線R1を介して電気的に接続されている。制御部58は、第2酸素流量調整器33b、第2窒素流量調整器33c、第2ガス湿度調整器33d、第2ガス温度調整器33e、第2圧力調整器34、第2温度調整器35、第2上流バルブ36b、及び、第2下流バルブ36cと配線R2を介して電気的に接続されている。制御部58は、計測部57から取得した情報に基づいて、配線R1,R2を介して接続されている各種機器の操作を制御する。
【0069】
計測部57及び制御部58は、圧力調整機構44、光照射装置45、液体噴霧装置46、シャッタ部材50、搬送装置54、及び、除去機構56と電気的に接続されてもよく、これら機器の操作が制御部58により制御されてもよい。
【0070】
[第1実施形態に係る変形例]
次に、図4図5及び図6を参照しつつ耐候性試験装置1の変形例(耐候性試験装置1A,1B,1C)について説明する。図4は、図1に示す耐候性試験装置1の第1変形例を模式的に示す断面図である。図5は、図1に示す耐候性試験装置1の第2変形例を模式的に示す断面図である。図6は、図1に示す耐候性試験装置1の第3変形例を模式的に示す断面図である。以下では、一実施形態に係る耐候性試験装置1と相違する点を主に説明し、その他の説明は省略することがある。
【0071】
まず、図4を参照しつつ第1変形例に係る耐候性試験装置1Aを説明する。耐候性試験装置1Aでは、第1収納部10b及び第2収納部30bのそれぞれには、第1保持部9A及び第2保持部29Aのそれぞれが収納される。試料Sは、第1板部9aの第1試料保持面9d、又は、第2板部29aの第2試料保持面29d(試料保持面)に保持される。第1試料保持面9d及び第2試料保持面29dのそれぞれは、水平方向に延在する面に対して同じ角度だけ傾斜している。また、光照射装置45Aは、第1試料保持面9dに対して垂直に光Lを照射できるよう、第1試料保持面9d及び第2試料保持面29dと同様に傾斜している。
【0072】
このような構成により、第2試験容器30内において液体噴霧試験を行った際、試料Sに付着した液体が第2試験容器30の底部へ向かって流れ落ちる。よって、試料Sに付着した液体を除去することができる。加えて、第1試料保持面9d及び第2試料保持面29dが同じ角度だけ傾斜しているので、第2保持部29Aから第1保持部9Aへ試料Sを容易に搬送することができる。さらに、光照射装置45Aも同じ角度だけ傾斜しているので、第1試料保持面9dに対して垂直に光Lを照射することができる。なお、光照射装置45Aは、第1試料保持面9dに対して垂直に光Lを照射できるような光学系を有していれば、傾いていなくてもよい。
【0073】
次に、図5を参照しつつ第2変形例に係る耐候性試験装置1Bを説明する。耐候性試験装置1Bでは、第1試験容器10及び第2試験容器30のそれぞれには、第1ガス導入機構13B(ガス導入部)及び第2ガス導入機構33Bが設けられている。第1ガス導入管13aにおける第1ガス湿度調整器13dの上流側の部分には、第1バルブ13fが設けられている。第2ガス導入管33aにおける第2ガス湿度調整器33dの上流側の部分には、第2バルブ33fが設けられている。第1バルブ13f及び第2バルブ33fの開閉操作は、制御部58により制御されてもよい。第1バルブ13f及び第2バルブ33fを閉じることにより、乾燥したガスを湿度調整部を介さずに第1試験容器10及び第2試験容器30へ導入することができる。これにより、第1試験容器10及び第2試験容器30内の湿度を容易に可変することができる。
【0074】
次に、図6を参照しつつ耐候性試験装置1Cを説明する、耐候性試験装置1Cでは、第1試験容器10及び第2試験容器30にはガス導入機構23(ガス導入部)が設けられている。ガス導入機構23は、ガス導入管23a、酸素流量調整器23b、窒素流量調整器23c、ガス湿度調整器23d(加湿部)、及び、ガス温度調整器23eにより構成される。ガス導入管23aは、第1収納部10b及び第2収納部30bの双方に接続されている。ガス導入管23aには、第1バルブ23f及び第2バルブ23gが設けられる。第1バルブ23f及び第2バルブ23gの開閉操作は、制御部58により制御されてもよい。第1バルブ23fを閉じることにより、第1試験容器10内へのガスの流入を止めることができ、第2バルブ23gを閉じることにより、第2試験容器30内へのガスの流入を止めることができる。耐候性試験装置1Cでは、第1試験容器10及び第2試験容器30内のガス濃度等の調整を、1つのガス導入機構23によって行うことができる。よって、容易に第1試験容器10及び第2試験容器30内のガス濃度等の調整を行うことができる。
【0075】
ここで、上述した構成の耐候性試験装置1を用いた耐侯性試験方法の一例について説明する。この耐侯性試験方法では、まず光照射試験、液体噴霧試験、及び、暗黒試験における第1試験容器10及び第2試験容器30の圧力等の設定値を制御部58に入力する。また、光照射試験における光照射装置45の光量、及び、液体噴霧試験における液体噴霧装置46の噴霧時間を制御部58に入力する。また、耐候性試験パターンと、各試験の時間を制御部58に入力する。本一例では、光照射試験、液体噴霧試験、及び、暗黒試験の試験を順に繰り返す。なお、耐候性試験装置1A,1B,1Cを用いても同様の耐候性試験を行うことができる。
【0076】
まず、耐候性試験に用いる試料Sを準備し、試料Sを第1保持部9に保持させる。次に、第1試験容器10内の圧力等、及び、光照射装置45の光量が光照射試験における設定値となるように、制御部58により各種機器を操作する。設定値となったら、光照射装置45により光Lを試料Sに継続的に照射し、光照射試験(第1耐候性試験)を行う。
【0077】
光照射試験が終了したら、シャッタ部材50を開いて、搬送装置54により試料Sを第1保持部9から第2保持部29へ搬送させる。この際、第1試験容器10及び第2試験容器30の間に圧力差がある場合は、圧力調整機構44のバルブ44bを開いて、圧力差を小さくした上で、シャッタ部材50を開く。試料Sの移動が終了したら、シャッタ部材50を閉じる。
【0078】
続いて、第2試験容器30内の圧力等、及び、液体噴霧装置46の噴霧時間が液体噴霧試験における設定値となるように、制御部58により各種機器を操作する。設定値となったら、液体噴霧装置46により液体を試料Sに継続的に噴霧し、液体噴霧試験(第2耐候性試験)を行う。
【0079】
液体噴霧試験が終了したら、シャッタ部材50を開いて、搬送装置54により試料Sを第2保持部29から第1保持部9へ移動させる。この際、第1試験容器10及び第2試験容器30の間に圧力差がある場合は、圧力調整機構44のバルブ44bを開いて、圧力差を小さくした上で、シャッタ部材50を開く。試料Sの移動が終了したら、シャッタ部材50を閉じる。なお、第2試験容器30から第1試験容器10へと試料Sを搬送する際に、除去機構56によって試料Sに付着している水等の液体を除去してもよい。
【0080】
続いて、第1試験容器10内の圧力等が暗黒試験における設定値となるように、制御部58により各種機器を操作する。設定値となったら、試料Sを一定時間放置し、暗黒試験を行う。暗黒試験が終了したら、再び光照射試験から順に耐候性試験を開始する。
【0081】
このような、光照射試験、液体噴霧試験、及び、暗黒試験を続けた状態を継続的に行って試料Sの劣化状態を試験する。このような試験は、例えば、3ヶ月~6ヶ月間連続して行ってもよいし、6ヶ月以上又は1年以上継続してもよい。また、所定の加圧及び温度調整を行った状態で、光の照射、水の噴霧等を所定の周期で繰り返してもよい。このような試験状態は、実環境下での試験と同様となるように適宜、選択され得る。
【0082】
以上、耐候性試験装置1,1A,1B,1Cは、噴霧部46aが配置され、液体噴霧試験を行うことができる第2試験容器30とは別に、第1試験容器10を備えている。更に、第1試験容器10と第2試験容器30との間では、試料が搬送可能である。よって、第2試験容器30内において試料に対して液体噴霧試験を行った後に、試料を、第1試験容器10へ搬送することができる。これにより、液体噴霧試験後における第2試験容器30内の湿度の調整、例えば大量の乾燥ガスを第2試験容器30内へ流し込むこと、を実施しなくても、第1試験容器10内において他の耐候性試験を行える。したがって、この耐候性試験装置によれば、耐候性試験を促進しつつ、効率的に耐候性試験を実施することができる。
【0083】
耐候性試験装置1,1A,1B,1Cは、光源45aを有する光照射装置45,45Aを更に備え、第1試験容器10は、光Lを透過可能な光透過部10cを有し、光照射装置45は、第1試験容器10の外に配置され、光源45aからの光Lを光透過部10cを介して第1保持部9に保持された試料に照射する。光照射装置45が第1試験容器10の外にあるため、第1試験容器10内を高圧雰囲気等にして試験を行った場合に高圧雰囲気等による光照射装置45の破損を防ぐことができる。加えて、第2試験容器30において液体噴霧試験を行い、第1試験容器10において光照射試験を行うことで、第1試験容器10における結露の発生を抑制することができる。これにより、光照射装置45からの光量が結露によって変化してしまうことを防ぎ、より正確な光照射試験を行うことができる。
【0084】
耐候性試験装置1,1A,1B,1Cでは、光源45aは、15mW/cm以上60mW/cm以下の光量を有している。高光量の光を試料に照射することができるため、耐候性試験を容易に促進することが可能となる。
【0085】
耐候性試験装置1,1A,1B,1Cでは、光照射装置45は、光源45aからの光を平行光にする光学系を有し、光学系は、少なくとも1つのコリメートレンズ45bを含んでいる。平行光を試料に照射することで、試料の各部における照射強度のずれを抑制することができ、より正確な耐候性試験を行うことができる。
【0086】
耐候性試験装置1,1A,1B,1Cでは、光源45aは、キセノンランプであることが好ましい。キセノンランプから照射される光の波長の波形は太陽光の波形に近いため、実環境下での試験に近い試験結果を容易に得ることが可能となる。すなわち、実環境下での耐候性試験を再現した試験結果を早期に得ることが可能となる。
【0087】
耐候性試験装置1,1A,1B,1Cでは、第1試験容器10は、試料を取出し可能な第1開口11を有し、第2試験容器30は、試料を取出し可能な第2開口31を有している。また、第1試験容器10と第2試験容器30とは、第1開口11及び第2開口31を通して、それぞれの内部空間が連通可能となっており、第1試験容器10と第2試験容器30との間には、第1試験容器10の内部空間と第2試験容器30の内部空間との間を閉じる開閉可能なシャッタ部材50が設けられている。シャッタ部材50を開くことで容易に試料を搬送することができる。さらに、シャッタ部材50を閉じることで、一方の試験容器において耐候性試験を行う際、当該耐候性試験によって他方の試験容器内の圧力等の試験条件が変化してしまうことを防ぐことができる。
【0088】
耐候性試験装置1,1A,1B,1Cは、第1試験容器10と第2試験容器30との間で試料を搬送する搬送装置54を更に備え、搬送装置54は、第1開口11と第2開口31とを通して試料を第1試験容器10と第2試験容器30との間で搬送する。搬送装置54を用いることで、より容易に第1試験容器10と第2試験容器30との間での試料の搬送を行うことができる。
【0089】
耐候性試験装置1,1A,1B,1Cでは、第1試験容器10は、第2試験容器30よりも小さい容積となるように形成されていることが好ましい。例えば液体噴霧試験後、10%の湿度条件下において光照射試験を実施する際、液体噴霧試験と光照射試験とを同じ試験容器で実施する場合、湿度を略100%から10%まで低下させる必要がある。加えて、液体噴霧試験を実施する試験容器の容積は、液体噴霧時の液体を容器内に滞留させておく必要があるため、大きくなる傾向がある。この場合、湿度を調整(低下)するために大量のガスが必要となり、かつ、湿度が10%となるまでに時間がかかる。これに対し、耐候性試験装置1,1A,1B,1Cでは、光照射試験を実施する第1試験容器10の容積を第2試験容器30の容積より小さくしている。これにより、第2試験容器30にて液体噴霧試験を行った後、第1試験容器10にて光照射試験を行う際、第1試験容器10内の湿度を容易且つ短時間に10%に調整することができる。例えば、第1試験容器10内の湿度を外部からガスを導入して調整する場合、導入するガスの量が少なくて済み、かつ、ガスを導入する時間が短くて済む。したがって、耐候性試験装置1,1A,1B,1Cによれば、より効率的に耐候性試験を実施することができる。また、耐候性試験装置1,1A,1B,1Cによれば、耐候性試験装置全体を小型化することができる。
【0090】
耐候性試験装置1,1A,1B,1Cは、試料に付着する液体を除去する除去機構56を更に備え、除去機構56は、試料が第1試験容器10内に搬送される前の領域に設けられている。これにより、試料に付着した液体を除去した上で、試料を第1試験容器10内に搬送することができる。よって、試料に付着した液体が第1試験容器10における耐候性試験へ影響すること、例えば付着した液体により試料へ照射される光量が変化すること、を防ぐことができる。
【0091】
耐候性試験装置1,1A,1B,1Cは、第1試験容器10と第2試験容器30との間の圧力差を調整する圧力調整機構44を更に備える。これにより、第1試験容器10と第2試験容器30との間で試料を搬送する前に、第1試験容器10と第2試験容器30との間の圧力差を圧力調整機構44により小さくすることができる。よって、試料を搬送する際、第1試験容器10と第2試験容器30との間におけるガスの流出入を抑制することができる。
【0092】
耐候性試験装置1,1A,1B,1Cは、第2試験容器30に連結され、第2試験容器30内の液体を排出する第2排水機構36を更に備え、第2排水機構36は、第2排水タンク36dと、第2排水タンク36dの上流に設けられる第2上流バルブ36bと、第2排水タンク36dの下流に設けられる第2下流バルブ36cとを有する。第2上流バルブ36b及び第2下流バルブ36cの開閉操作により、第2試験容器30内に供給された液体のうち不要となった液体を第2試験容器30外へ排出することができる。加えて、第2下流バルブ36cを閉じた上で第2上流バルブ36bを開くことで、排出時の第2試験容器30の圧力等の試験条件の変化を抑制することができる。
【0093】
耐候性試験装置1,1A,1B,1Cでは、第1保持部9,9Aの高さ位置と第2保持部29,29Aの高さ位置とが同じである。このため、試料を第1保持部9,9A(第2保持部29,29A)から第2保持部29,29A(第1保持部9,9A)へ容易に搬送することができる。
【0094】
耐候性試験装置1Aでは、第2保持部29Aは、水平方向に延在する面に対して傾斜する第2試料保持面29dを有している。液体噴霧試験等により、第2保持部29Aに保持された試料に液体が付着した際、当該付着した液体を第2試験容器30の底へ流すことができる。よって、試料に付着した液体が第1試験容器10における耐候性試験へ影響すること、例えば付着した液体により試料へ照射される光量が変化すること、を防ぐことができる。
【0095】
耐候性試験装置1,1A,1B,1Cは、第1試験容器10内及び第2試験容器30内の圧力を調整する第1圧力調整器14及び第2圧力調整器34と、第1試験容器10内に気体を導入する第1ガス導入機構13,13B、及び、ガス導入機構23と、気体を加湿する第1ガス湿度調整器13dと、試料の温度を調整する第1温度調整器15及び第2温度調整器35と、圧力、気体の濃度、気体の湿度、及び試料の温度の少なくとも1つを計測する計測部57と、計測部57による計測値に基づいて、第1圧力調整器14及び第2圧力調整器34、第1ガス導入機構13,13B、及び、ガス導入機構23、第1ガス湿度調整器13d及びガス湿度調整器23d、第1温度調整器15及び第2温度調整器35、並びに、噴霧部46aの少なくとも1つを制御する制御部58と、を更に備える。これにより、熱、水(雨)、酸素による試料の劣化を評価する耐候性試験をより具体的に行うことができ、また加圧することによりその耐候性試験を促進することが可能となる。すなわち、酸素による試料の劣化が促進され、光照射による劣化と、酸素、水(雨)、温度等による劣化とをバランスよく進行させることができ、実環境下で長時間かけて行った耐候性試験と同様の試験結果をより短時間で再現することが可能となる。
【0096】
[第2実施形態]
次に、図7を参照しつつ第2実施形態に係る耐候性試験装置2を説明する。図7は、第2実施形態に係る耐候性試験装置を模式的に示す上面図である。以下では、一実施形態に係る耐候性試験装置1と相違する点を主に説明し、その他の説明は省略することがある。
【0097】
耐候性試験装置2は、図7に示すように、第1保持部9、第2保持部29、光照射装置45(図7においては不図示)、液体噴霧装置46、計測部57、及び、制御部58に加えて、第1試験容器60、第2試験容器65、第3保持部69、第3試験容器70、第1シャッタ部材85、第2シャッタ部材86、搬送装置87、除去機構88、第1圧力調整機構89、及び、第2圧力調整機構90を備える。
【0098】
第1試験容器60は、第1試験容器10と同様の機能及び構成を有する試験容器である。第1試験容器60には、第1試験容器と同様に各種機器が設けられる。第1試験容器60は、その一部に形成され、試料Sを取出し可能な第1開口61を有する。
【0099】
第1開口61は、試料Sの出し入れが可能である開口である。第1開口61は、後述する第1シャッタ部材85によって開閉され、搬送装置87が通過する。第1試験容器60は、第1開口61が後述する第3開口71と向かい合うように、第3試験容器70と隣接して設置される。これにより、第1試験容器60と第3試験容器70とは、第1開口61及び第3開口71を通して、それぞれの内部空間が連通可能となっている。
【0100】
第2試験容器65は、第2試験容器30と同様の機能及び構成を有する試験容器である。第2試験容器65には、第2試験容器30と同様に各種機器が設けられる。第2試験容器65は、その一部に形成され、試料Sを取出し可能な第2開口66を有する。
【0101】
第2開口66は、試料Sの出し入れが可能である開口である。第2開口66は、後述する第2シャッタ部材86によって開閉され、搬送装置87が通過する。第2試験容器65は、第2開口66が後述する第4開口72と向かい合うように、第3試験容器70と隣接して設置される。これにより、第2試験容器65と第3試験容器70とは、第2開口66及び第4開口72を通して、それぞれの内部空間が連通可能となっている。
【0102】
第3保持部69は、耐候性試験に用いられる試料Sを保持する部材であり、第1保持部9及び第2保持部29と同様の機能及び構成を有する。第3保持部69は、第3試験容器70の内部に収納される。
【0103】
第3試験容器70は、試料Sの搬送を行うと共に、暗黒試験が行われる試験容器である。第3試験容器70は、その一部に形成された第3開口71及び第4開口72を有する。
【0104】
第3開口71は、試料Sが移動可能な開口である。第3開口71は、後述する第1シャッタ部材85によって開閉され、搬送装置87が通過する。第3開口71は、上述のように第1開口61と連通している。第4開口72は、試料Sが移動可能な開口である。第4開口72は、後述する第2シャッタ部材86によって開閉され、搬送装置87が通過する。第4開口72は、上述のように第2開口66と連通している。
【0105】
第1シャッタ部材85は、第1試験容器60と第3試験容器70との間に設けられる。第1シャッタ部材85は、第1試験容器60の内部空間と第3試験容器70の内部空間との間を閉じる開閉可能な部材である。第1シャッタ部材85は、第1試験容器60及び第3試験容器70間において試料Sを移動する際に開き、試料Sの移動が終了したら閉じる。
【0106】
第2シャッタ部材86は、第2試験容器65と第3試験容器70との間に設けられる。第2シャッタ部材86は、第2試験容器65の内部空間と第3試験容器70の内部空間との間を閉じる開閉可能な部材である。第2シャッタ部材86は、第2試験容器65及び第3試験容器70間において試料Sを移動する際に開き、試料Sの移動が終了したら閉じる。
【0107】
搬送装置87は、第1試験容器60及び第3試験容器70間、並びに、第2試験容器65及び第3試験容器70間で試料Sを搬送する装置である。搬送装置87は、少なくとも第3試験容器70に設けられる。搬送装置87は、第1シャッタ部材85が開いている際に、第1保持部9(第3保持部69)に保持された試料Sを、第3保持部69(第1保持部9)へ搬送させる。搬送装置87は、第2シャッタ部材86が開いている際に、第2保持部29(第3保持部69)に保持された試料Sを、第3保持部69(第2保持部29)へ搬送させる。これにより、第3試験容器70を介して、第1試験容器60及び第2試験容器65間の試料Sの搬送が可能となる。なお、第3試験容器70内において試料Sを搬送する際は、第3保持部69に試料Sを保持させなくてもよい。
【0108】
除去機構88は、液体噴霧試験時において試料Sに付着した水を除去する機構である。除去機構88は、第2実施形態では、第3試験容器70内に設けられている。
【0109】
第1圧力調整機構89は、第1試験容器60及び第3試験容器70内の圧力差を調整するための機構である。第1圧力調整機構89は、第1試験容器60及び第3試験容器70に接続された配管(不図示)と、当該配管上に設けられたバルブ89aとを有する。バルブ89aは、制御部58により開閉操作が制御される。バルブ89aを開くことにより、第1試験容器60及び第3試験容器70が連通し、第1試験容器60及び第3試験容器70内の圧力差が小さくなる。
【0110】
第2圧力調整機構90は、第2試験容器65及び第3試験容器70内の圧力差を調整するための機構である。第2圧力調整機構90は、第2試験容器65及び第3試験容器70に接続された配管(不図示)と、当該配管上に設けられたバルブ90aとを有する。バルブ90aは、制御部58により開閉操作が制御される。バルブ90aを開くことにより、第2試験容器65及び第3試験容器70が連通し、第2試験容器65及び第3試験容器70内の圧力差が小さくなる。
【0111】
[第2実施形態に係る変形例]
次に、図8を参照しつつ耐候性試験装置2の変形例(耐候性試験装置2A)について説明する。図8は、耐候性試験装置2の変形例を模式的に示す上面図である。以下では、一実施形態に係る耐候性試験装置2と相違する点を主に説明し、その他の説明は省略することがある。
【0112】
耐候性試験装置2Aは、第3試験容器70Aを備える。第3試験容器70Aには、第3ガス導入機構73、第3圧力調整器74、第3温度調整器75、第3排水機構76、第3圧力計77、第3湿度計78、第3温度計79、第3温度センサ80、第3水位センサ81、及び、第3ガス濃度センサ82が設けられている。これら機器は、第1試験容器10に設けられる第1ガス導入機構13、第1圧力調整器14、第1温度調整器15、第1排水機構16、第1圧力計17、第1湿度計18、第1温度計19、第1温度センサ20、第1水位センサ21、及び、第1ガス濃度センサ22のそれぞれが有する機能及び構成を有する。また、これら機器は、計測部57及び制御部58と配線P3及び配線R3を介して電気的に接続されており、一部の機器は制御部58によって制御される。
【0113】
第3ガス導入機構73は、第3ガス導入管73a、第3酸素流量調整器73b、第3窒素流量調整器73c、第3ガス湿度調整器73d、及び、第3ガス温度調整器73eを有している。第3排水機構76は、第3排水管76a、第3入口バルブ76b、第3出口バルブ76c、及び、第3排水タンク76dを有している。
【0114】
耐候性試験装置2Aでは、第3試験容器70Aにおいて、第1試験容器60及び第2試験容器65と同様に、圧力等を調整することができる。すなわち、耐候性試験装置2Aを用いた耐侯性試験方法においては、第3試験容器70Aの圧力等を所定の値に設定した上で、第3試験容器70Aにおいて暗黒試験を行うことができる。
【0115】
ここで、上述した構成の耐候性試験装置2を用いた耐侯性試験方法の一例について説明する。この耐侯性試験方法では、まず光照射試験、液体噴霧試験、及び、暗黒試験における第1試験容器及び第2試験容器の圧力等の設定値を制御部58に入力する。また、光照射試験における光照射装置の光量、及び、液体噴霧試験における液体噴霧装置の噴霧時間を制御部58に入力する。また、耐侯試験パターンと、各試験の時間を制御部58に入力する。本一例では、光照射試験、液体噴霧試験、及び、暗黒試験の試験を順に繰り返す。なお、耐候性試験装置2Aを用いても同様の耐候性試験を行うことができる。
【0116】
まず、耐候性試験に用いる試料Sを準備し、試料Sを第1保持部9に保持させる。次に、第1試験容器60内の圧力等、及び、光照射装置45の光量が光照射試験における設定値となるように、制御部58により各種機器を操作する。設定値となったら、光照射装置45により光Lを試料Sに継続的に照射し、光照射試験(第1耐候性試験)を行う。
【0117】
光照射試験が終了したら、第1シャッタ部材85を開いて、搬送装置87により試料Sを第1保持部9から第3保持部69へ移動させる。この際、必要に応じて第1試験容器60及び第3試験容器70の圧力差を第1圧力調整機構89により調整しておく。試料Sの移動が終了したら、第1シャッタ部材85を閉じる。
【0118】
続いて、第2シャッタ部材86を開いて、搬送装置87により試料Sを第3保持部69から第2保持部29へ移動させる。この際、必要に応じて、第2試験容器65及び第3試験容器70の圧力差を第2圧力調整機構90により調整しておく。試料Sの移動が終了したら、第2シャッタ部材86を閉じる。
【0119】
続いて、第2試験容器65内の圧力等、及び、液体噴霧装置46の噴霧時間が液体噴霧試験における設定値となるように、制御部58により各種機器を操作する。設定値となったら、液体噴霧装置46により液体を試料Sに継続的に噴霧し、液体噴霧試験(第2耐候性試験)を行う。
【0120】
液体噴霧試験が終了したら、第2シャッタ部材86を開いて、搬送装置87により試料Sを第2保持部29から第3保持部69へ移動させる。試料Sの移動が終了したら、第2シャッタ部材86を閉じる。次に、第1シャッタ部材85を開いて、搬送装置87により試料Sを第3保持部69から第1保持部9へ移動させる。試料Sの移動が終了したら、第1シャッタ部材85を閉じる。なお、必要に応じて、第1圧力調整機構89及び第2圧力調整機構90により、それぞれの試験容器間の圧力差を調整しておく。また、第2試験容器30から第1試験容器10へと試料Sを搬送する際に、第3試験容器70,70Aにおいて除去機構88によって試料Sに付着している水等の液体を除去してもよい。
【0121】
続いて、第1試験容器60内の圧力等が暗黒試験における設定値となるように、制御部58により各種機器を操作する。設定値となったら、試料Sを一定時間放置し、暗黒試験を行う。暗黒試験が終了したら、再び光照射試験から順に耐候性試験を開始する。なお、暗黒試験は、第1試験容器60ではなく、第3試験容器70において行われてもよい。
【0122】
以上、耐候性試験装置2,2Aによれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、耐候性試験装置2,2Aは、第1試験容器60及び第2試験容器65の外側に設けられ、第1試験容器60及び第2試験容器65のそれぞれと隣接する第3試験容器70,70Aを備える。また、第1試験容器60は、試料を取出し可能な第1開口61を有し、第2試験容器65は、試料を取出し可能な第2開口66を有し、第3試験容器70,70Aは、第1開口61と連通し、試料が移動可能な第3開口71と、第2開口66と連通し、試料が移動可能な第4開口72とを有する。これにより、第3試験容器70,70Aにおいて第1試験容器60及び第2試験容器65における耐候性試験と異なる耐候性試験を行うことができ、より効率的に耐候性試験を行うことができる。
【0123】
耐候性試験装置2,2Aは、第1試験容器60と第2試験容器65との間で試料を搬送する搬送装置87を更に備え、搬送装置87は、少なくとも第3試験容器70,70Aに設けられており、第1開口61及び第3開口71と第2開口66及び第4開口72とを通して試料を第1試験容器60と第2試験容器65との間で搬送する。搬送装置87を用いることで、より容易に第1試験容器60と第3試験容器70,70Aとの間、及び、第2試験容器65と第3試験容器70,70Aとの間での試料の搬送を行うことができる。また、搬送装置87が少なくとも第3試験容器70,70Aに設けられることにより、搬送装置87が設けられることによる第1試験容器60及び第2試験容器65の容積の増加を抑制することができる。
【0124】
[第3実施形態]
次に、図9を参照しつつ第3実施形態に係る耐候性試験装置3を説明する。図9は、第3実施形態に係る耐候性試験装置3を模式的に示す上面図である。以下では、一実施形態に係る耐候性試験装置1,2と相違する点を主に説明し、その他の説明は省略することがある。耐候性試験装置3は、第1試験容器110、第2試験容器120、第3試験容器130、第1シャッタ部材131、第2シャッタ部材132、及び、搬送装置133を備える。
【0125】
第1試験容器110は、5つの試験容器(第1試験容器110a,110b,110c,110d,110e)から構成されており、それぞれの試験容器は、第1試験容器10と同様の機能及び構成を有する。第1試験容器110a~110eには、第1試験容器10と同様に各種機器が設けられる。
【0126】
第2試験容器120は、第2試験容器30と同様の機能及び構成を有する。第2試験容器120には、第2試験容器30と同様に各種機器が設けられる。
【0127】
第3試験容器130は、第3試験容器70と同様の機能及び構成を有する。第3試験容器130には、第3試験容器70Aと同様に各種機器が設けられてもよい。
【0128】
第1シャッタ部材131は、第1シャッタ部材131a,131b,131c,131d,131eから構成されている。第1シャッタ部材131a~131eは、第1試験容器110a~110eそれぞれの内部空間と第3試験容器130の内部空間との間を閉じる開閉可能な部材である。第2シャッタ部材132は、第2試験容器120の内部空間と第3試験容器130の内部空間との間を閉じる開閉可能な部材である。
【0129】
ここで、上述した構成の耐候性試験装置3を用いた耐侯性試験方法の一例について説明する。この耐侯性試験方法では、まず光照射試験、液体噴霧試験、及び、暗黒試験における第1試験容器110、第2試験容器120及び第3試験容器130の圧力等の設定値を制御部58に入力する。また、耐侯試験パターンと、各試験の時間を制御部58に入力する。具体的には下記表1のように設定する。第1温度センサ20及び第2温度センサ40は、ブラックパネル温度計(BPT)である。なお、以下の説明においては、第1シャッタ部材131及び第2シャッタ部材132の開閉操作、及び、制御部58による各種機器の操作の説明は省略する。
【0130】
【表1】
【0131】
まず、試料を5つ(試料S1,試料S2,試料S3,試料S4,試料S5)を用意する。次に、試料S1を第1試験容器110a内に保持させる。次に、光照射装置45により光Lを試料S1に照射する。この光照射試験を20時間行う。
【0132】
光照射試験を開始してから4時間経過後、試料S2を第1試験容器110b内に、8時間経過後、試料S3を第1試験容器110c内に、12時間経過後、試料S4を第1試験容器110d内に、16時間経過後、試料S5を第1試験容器110e内に保持させて、それぞれの試験容器内において光照射試験を20時間行う。
【0133】
第1試験容器110a内において20時間の光照射試験が終了したら、試料S1を移動させて第2試験容器120内に保持させる。次に、第2試験容器内において暗黒試験を4時間行う。
【0134】
第2試験容器120内において暗黒試験を開始してから4時間経過(暗黒試験が終了)すると、第1試験容器110b内において光照射試験を開始してから20時間経過(光照射試験が終了)している。すなわち、第1試験容器110b内の試料S2と第2試験容器内の試料S1とを入れ替えることができる。その上で、第1試験容器110b内において試料S1に対する光照射試験を、第2試験容器120内において試料S2に対する暗黒試験を行うことができる。
【0135】
以降、第2試験容器120内において暗黒試験が終了するごとに、第1試験容器110a~110eいずれかにおいて光照射試験が終了する。この際、上述のように、第2試験容器120内の試料と第1試験容器内の試料とを入れ替えることができる。したがって、この耐候性試験装置3の構成によれば、試料が複数あっても、それぞれの試料に対して耐候性試験を効率的にして行うことができる。
【0136】
[第4実施形態]
次に、図10を参照しつつ第4実施形態に係る耐候性試験装置4を説明する。図10は、第4実施形態に係る耐候性試験装置4を模式的に示す上面図である。以下では、一実施形態に係る耐候性試験装置1,2,3と相違する点を主に説明し、その他の説明は省略することがある。耐候性試験装置4は、第1試験容器140、第2試験容器150、第3試験容器160、第1シャッタ部材161、第2シャッタ部材162、及び、搬送装置163を備える。
【0137】
第1試験容器140は、第1試験容器10と同様の機能及び構成を有する。第1試験容器140には、第1試験容器10と同様に各種機器が設けられる。
【0138】
第2試験容器150は、5つの試験容器(第2試験容器150a,150b,150c,150d,150e)から構成されており、それぞれの試験容器は、第2試験容器30と同様の機能及び構成を有する。第2試験容器150a~150eには、第2試験容器30と同様に各種機器が設けられる。
【0139】
第3試験容器160は、第3試験容器70と同様の機能及び構成を有する。第3試験容器160には、第3試験容器70Aと同様に各種機器が設けられてもよい。
【0140】
第1シャッタ部材161は、第1試験容器140の内部空間と第3試験容器160の内部空間との間を閉じる開閉可能な部材である。第2シャッタ部材162は、第2シャッタ部材162a,162b,162c,162d,162eから構成されている。第2シャッタ部材162a~162eは、第2試験容器150a~150eそれぞれの内部空間と第3試験容器160の内部空間との間を閉じる開閉可能な部材である。
【0141】
ここで、上述した構成の耐候性試験装置4を用いた耐侯性試験方法の一例について説明する。まず、制御部58において各耐候性試験の条件を下記表2のように設定する。第1温度センサ20及び第2温度センサ40は、ブラックパネル温度計(BPT)である。
【0142】
【表2】
【0143】
まず、試料を5つ(試料S1,試料S2,試料S3,試料S4,試料S5)を用意する。次に、試料S1~S5のそれぞれを第1試験容器140内、第2試験容器151b内、第2試験容器151c内、第2試験容器151d内、第2試験容器151e内のそれぞれに保持させる。次に、第1試験容器140内において光照射試験を行う。この光照射試験を4時間行う。
【0144】
第1試験容器140内において4時間の光照射試験が終了したら、試料S1を移動させて第2容器151a内に保持させると共に、試料S2を移動させて第1試験容器140内に保持させる。その上で、第2容器151a内において、試料S1に対する暗黒試験を20時間行い、第1試験容器140内において、試料S2に対する光照射試験を4時間行う。
【0145】
以降、第1試験容器140内において光照射試験が終了するごとに、第2試験容器150a~150eいずれかにおいて暗黒試験が終了する(もしくは、耐候性試験を開始していない状態である。)。この際、上述のように、第1試験容器140内の試料と第2試験容器150内の試料とを入れ替えることができる。したがって、この耐候性試験装置4の構成によれば、試料が複数あっても、それぞれの試料に対して耐候性試験を効率的に行うことができる。
【0146】
[第5実施形態]
次に、図11を参照しつつ第5実施形態に係る耐候性試験装置5を説明する。図11は、第5実施形態に係る耐候性試験装置5を模式的に示す上面図である。以下では、一実施形態に係る耐候性試験装置1,2,3,4と相違する点を主に説明し、その他の説明は省略することがある。耐候性試験装置4は、第1試験容器170、第2試験容器180、第3試験容器190、第1シャッタ部材191、第2シャッタ部材192、及び、搬送装置193を備える。
【0147】
第1試験容器170は、3つの試験容器(第1試験容器170a,170b,170c)から構成されており、それぞれの試験容器は、第1試験容器10と同様の機能及び構成を有する。第1試験容器170a~170cには、第1試験容器10と同様に各種機器が設けられる。
【0148】
第2試験容器180は、3つの試験容器(第2試験容器180a,180b,180c)から構成されており、それぞれの試験容器は、第2試験容器30と同様の機能及び構成を有する。第2試験容器180a~180cには、第2試験容器30と同様に各種機器が設けられる。
【0149】
第3試験容器190は、第3試験容器70と同様の機能及び構成を有する。第3試験容器190には、第3試験容器70Aと同様に各種機器が設けられてもよい。
【0150】
第1シャッタ部材191は、第1シャッタ部材191a,191b,191cから構成されている。第1シャッタ部材191a~191cは、第1試験容器170a~170cそれぞれの内部空間と第3試験容器190の内部空間との間を閉じる開閉可能な部材である。第2シャッタ部材192は、第2シャッタ部材192a,192b,192cから構成されている。第2シャッタ部材192a~192cは、第2試験容器180a~180cそれぞれの内部空間と第3試験容器190の内部空間との間を閉じる開閉可能な部材である。
【0151】
この耐候性試験装置5の構成によれば、第1試験容器170a~170cにおける光照射試験の条件を互いに異なるように設定できる。また、第2試験容器180a~180cにおける液体噴霧試験の条件を互いに異なるように設定できる。したがって、複数種類の試験条件での耐候性試験を行うことができる。
【0152】
以上、耐候性試験装置3,4,5では、第1試験容器及び第2試験容器の少なくとも一方は、複数の試験容器である。複数の試料に対して耐候性試験を行う際、複数の試料それぞれを複数の試験容器それぞれに配置することで、複数の試料それぞれに対する耐候性試験を並行して行うことができる。よって、より効率的に耐候性試験を行うことができる。
【0153】
以上、本実施形態に係る耐候性試験装置について説明してきたが、本発明に係る耐候性試験装置は、上記各実施形態に限定されるものではなく、種々の変形を適用することができる。例えば、第1ガス導入機構13,13B、ガス導入機構23、第2ガス導入機構33,33B、及び、第3ガス導入機構73は、酸素及び窒素を試験容器へ供給していたが、これらガス導入機構が供給する気体は酸素及び窒素に限定されない。すなわち、これらガス導入機構は、酸素及び窒素以外の気体を試験容器に供給してもよい。
【符号の説明】
【0154】
1,1A,1B,1C,2,2A,3,4,5…耐候性試験装置、9,9A…第1保持部、10,60,110,140,170…第1試験容器、10b…第1収納部(内部空間)、10c…光透過部、11,61…第1開口、13,13B…第1ガス導入機構(ガス導入部)、13d…第1ガス湿度調整器(加湿部)、14…第1圧力調整器(圧力調整部)、15…第1温度調整器(温度調整部)、23…ガス導入機構(ガス導入部)、23d…ガス湿度調整器(加湿部)、29,29A…第2保持部、29d…第2試料保持面(試料保持面、30,65,120,150,180…第2試験容器、30b…第2収納部(内部空間)、31,66…第2開口、34…第2圧力調整器(圧力調整部)、35…第2温度調整器(温度調整部)、36…第2排水機構(排水機構)、36b…第2上流バルブ(第1バルブ)、36c…第2下流バルブ(第2バルブ)、36d…第2排水タンク(排水タンク)、44…圧力調整機構、45,45A…光照射装置、45a…光源、45b…コリメートレンズ、46a…噴霧部、50…シャッタ部材、54,87,133,163,193…搬送装置、56,88…除去機構、57…計測部、58…制御部、70,70A,130,160,190…第3試験容器、71…第3開口、72…第4開口、L…光、S…試料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11