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  • 特開-潮流発電用の可倒受板式コンベヤ水車 図1
  • 特開-潮流発電用の可倒受板式コンベヤ水車 図2
  • 特開-潮流発電用の可倒受板式コンベヤ水車 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062090
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】潮流発電用の可倒受板式コンベヤ水車
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/26 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
F03B13/26
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169866
(22)【出願日】2022-10-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】520470925
【氏名又は名称】岡田 政寿
(72)【発明者】
【氏名】岡田 政寿
(72)【発明者】
【氏名】岡田 政和
(72)【発明者】
【氏名】岡田 久美
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA06
3H074AA12
3H074BB11
3H074CC10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低流速の潮流から高効率かつ低コストで発電が可能な水車を提供する。
【解決手段】低流速の潮流を大口径の漏斗状取水口から取水し、漏斗状取水口を通過する際に増速された潮流をコンベヤに取り付けた受板に集約して導くことにより、潮流の運動エネルギーを圧力エネルギーとして回収し、ベルトおよびプーリーまたはチェーンおよびスプロケットを介して主軸の回転エネルギーとして発電機へ伝達することにより、簡便且つ安価に発電する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の可倒受板を備えることを特徴とする潮流発電用の二軸型コンベヤ水車
【請求項2】
大量の潮流を取水してコンベヤ水車の受板部に集約して導き、受板部に発生する圧力エネルギーを最大化する形状としたことを特徴とする水車フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小規模潮流発電を行うための高効率なコンベヤ式水車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脱炭素化社会の実現に向けて、自然エネルギーを利用した発電量の増加が望まれているが、日本においては風力発電の適地が少なく、また河川を利用した大規模水力発電設備の新設の余地も乏しい。そこで、島国であることの特徴を生かした海洋エネルギーの活用による発電が期待されるが、残念ながら海水の位置エネルギーを利用した潮汐発電に適した干満差の大きな立地は乏しいのが実情である。そこで、瀬戸内海や九州地方を中心に流速の速い適地がある潮流発電の実用化が期待されている。
潮流の特徴は、干満運動の変化の予測が容易であることと、潮汐の干満により周期的に流れの方向がほぼ180度変わることである。また、水面下の水粒子の運動は水深に応じて減衰し、波長の2分の1の水深では水粒子の動きは水面の4%程度になるので波の影響は無いと考えて良く、海上で普通に見られる風波の波長は数10mなので、水深が比較的浅い沿岸部でも波の影響をほとんど受けずに安定した発電が可能である。
そこで、流速の低い潮流でも効率良く発電できる小規模潮流発電に適した発電装置が開発されれば、長大な海岸線を持つ日本においては地域によって転流時刻が異なるので、同設備を浅海域に多数設置することにより、全国的には間断なく安定的に低コストでの発電が可能である。
そして、主要な電力消費地である都市部や工業地帯の大部分が沿岸部に集積している日本においては、発電設備と電力消費地を短距離で結ぶことができる小規模潮流発電設備ネットワークの構築は、脱炭素化社会の実現だけでなく社会インフラコストの低減や経済安全保障の視点からも有効な社会課題の解決手段であると考えられる。
上記の状況を鑑みて、沿岸部における低流速な潮流向けの安価で高効率な発電用水車の開発が望まれるが、潮流発電向けに一般的に使用される横軸のプロペラ水車は低流速域の発電効率が低く、機構も複雑で総発電コストが高いことが課題である。
【0003】
横軸のプロペラ水車は潮流の流れ方向が周期的に約180度変化することに対応するために、水車本体を180度回転させる機構を付加する必要があり、機構の複雑さにより水車本体の製作コストが高い。
【0004】
プロペラ水車はプロペラが受けた水流の反力を利用して回転軸を回す反動型水車であり、発電量を増すためには、より多くの水流をプロペラで受ける為にプロペラ直径を大きくする必要があり、軸受部にかかる水スラストも非常に大きな値となるので、水車構造体及び水車を固定する支柱は強大な水スラストに耐える強度を持つ必要があり高コストとなる。
【0005】
横軸のプロペラ水車の発電効率を高める試みとして相反転プロペラ式水車が開発されているが、水流を受けるプロペラの総面積が最大2倍であるのに対して、近接するプロペラ間で発生する乱流による損失を考慮する必要があり、また水車部だけでなく発電機部の構造も複雑になるので総発電コスト低減には不十分である。
【0006】
横軸型プロペラ水車以外の水車形態としては、低落差水路向けにコンベヤ水車が考案されている。しかし、低落差水路の流水を利用したコンベヤ式水車は、水面上に設置したコンベヤから突出させた複数の受板によって一定方向の流水の運動エネルギーを受け、受板と連結したコンベヤチェーンまたは無限鎖帯を介してスプロケットまたはプーリーを回転させ、その回転力によって発電することを前提としたものであり、波の影響を低減するためにコンベヤ本体を水中に沈めて使用することや、潮汐による正逆方向の潮流に対応して発電する仕組みにはなっていない。また、落差を利用した水力発電の場合には流速はほぼ一定なので水量の変動による発電量の変動のみに留意すれば良いが、潮流発電の場合は潮汐現象によって流速が絶えず変化するので、流速が低い場合でも如何にして多くの運動エネルギーを取り込んで発電量を確保するかが課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】コンベヤ水車特開2003―129932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低流速の潮流から高効率かつ低コストで発電が可能な水車の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、潮流の特性である大量の流量に着目し、大量の潮流を漏斗状の取水口によって取水してコンベヤ受板部に集約し、縦列に配置された複数のコンベヤ受板が受ける圧力エネルギーの合計値を最大化して発電効率を高めることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコンベヤ式水車のアウターフレームは直線状のチューブ形状であり、潮流の流れ方向に対して水平に設置することにより、満ち潮時と引き潮時で潮流の流れ方向がほぼ180度変化しても、継続して効率良く発電することができるという利点がある。
【0011】
また、コンベヤフレーム両端部には傾斜式シャッターを備えた漏斗状の取水口兼吸出管があり、取水動作時には潮流の圧力エネルギーによって上流側シャッターが閉状態となり、取水した大量の潮流が正転側コンベヤ入側の受板部へと導かれて受板を起立させ、低流速の潮流であっても取水口通過時に増速されるので発電が可能となり、その結果として発電適地が多くなるとともに、発電機の稼働時間が長くなるので総発電量の増加が見込まれる。
【0012】
そして、アウターフレームの内部にあるインナーフレームがコンベヤ躯体を支持するとともに、運び側コンベヤと戻り側コンベヤとの間の潮流の行き来を遮断して独立した通水路としているので、取水した潮流の運動エネルギーが運び側コンベヤの受板へ集約して導かれることにより、圧力エネルギーとして効率的に回収できる。
【0013】
尚、通水時に下流側シャッターは開状態となり、コンベヤから放出される潮流が持っている未活用の運動エネルギーを、逆漏斗状の吸出管を通じて放水することにより、圧力差として回収できるので発電効率が高まるという利点がある。
【0014】
さらに、コンベヤ格納部分のフレーム断面積を、潮流の流れ方向に沿って上流部分から下流部分に向けて徐々に小さくすることにより、複数の受板部の背面に負圧を生じさせて、潮流から回収できる圧力エネルギーを最大化できる。
【0015】
また、受板を転倒式にすることにより、受板が取水口方向へ戻り動作を行う際の投影断面積を小さくして水の抗力を小さくすることができ、結果としてコンベヤ水車が潮流から回収する圧力エネルギーを最大化できる。
【0016】
コンベヤ水車の受板が潮流から回収した圧力エネルギーは、チェーンおよびスプロケットまたはベルトおよびプーリーを介して回転エネルギーとして発電機へ伝達される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る装置の構成図である。
図2】潮流の流れ方向による受板とシャッターの姿勢を表した図である。
図3】取水口兼吸出し管とアウターフレーム連結状態の三面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明に係る装置の構成図であって、コンベヤアウターフレーム天板、コンベヤ部、コンベヤインナーフレーム部、コンベヤアウターフレーム部、取水口兼吸出し管および架台の位置関係と主要な構成部品を表している。
【0019】
図2は、潮流の流れ方向による受板とシャッターの姿勢を表した図であり、潮流の流れ方向が約180度変化してもコンベヤ主軸の回転方向が変化しないことと、集約された潮流の圧力エネルギーによってコンベヤ受板が起立動作を行うことを併せて表している。
【0020】
図3は、本発明装置のアウターフレームの三面図であって、より多くの潮流を取水してコンベヤ受板部へ導くための形状を表している。尚、取水口の断面積や起立時と転倒時の受板の投射断面積およびシャッターの取り付け角度等については、本発明装置が設置される場所による制約や潮流とフレームの摩擦によるエネルギー損失を勘案して任意に決定されるものとする。
【0021】
既存の小規模水力発電設備との比較を通じて、本発明装置を実施するための実用的な形態を示す。
秋田県仙北市で2021年10月に完成した鶴の湯水力発電所の主要諸元は下記の通りである。
流量Q :最大出力時 1.05m3/秒
有効落差H :23.48m
流速V :約21.45m/秒(計算による)
総合発電効率 :0.82(計算による)
出力kw :199KW
出力kwと有効落差Hおよび流量Qには、出力kw=9.8×H×Q×総合発電効率Kの関係式が成り立つので、鶴の湯水力発電所の取水口における利用可能な水の位置エネルギーから得られる理論上の最大出力は約242kwであり、総合発電効率Kは約0.82であることが分かる。
次に、本発明装置の主要諸元を下記と仮定すると、取水した潮流が持っている利用可能な運動エネルギーから得られる理論上の最大出力は約192K Wとなる。
潮流の流速V :2m/秒
見做し有効落差H:0.204m(潮流の流速から逆算した数値)
取水口断面積S :48m2(縦6m×横8m)
受板の断面積s :2m2(縦2m×横1m)
流量Q :96m3/秒(V×S)
総合発電効率K :1(仮定)
理論上の最大出力:約192KW
尚、比較対象とした鶴の湯水力発電所と本発明装置には構造上の大きな差異があるので総合発電効率の値にも大きな差異があると考えられる。しかしながら、潮流の流量は大量なので、本発明装置を大型化して取水できる潮流の量を増加させる、あるいは近傍に本発明装置を複数台設置することにより必要な合計出力を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
低流速の潮流からでも安定した発電が可能であり、潮流の流れ方向が周期的に180度変化することに対する特段の機構追加が不要なので、低コストで高効率な小規模潮流発電を実現できる。また、適地に本装置を複数台ファーム化することにより、地上側の受送電関連設備を集約して大型化できるので、総発電コストの更なる低減が図れる。
【符号の説明】
【0023】
1 アウターフレーム天板
2 連結板
3 軸受
4 軸受用固定ボルト
5 フレーム用固定ボルト
6 受板
7 車輪
8 主軸
9 スプロケットまたはプーリー
10 チェーンまたはベルト
11 従動軸
12 インナーフレーム
13 走行レール
14 アウターフレーム
15 取水口兼吸出し管
16 シャッター
17 シャッター軸
18 架台
19 架台固定アンカーボルト
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-03-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潮流の転流に対応して取水口兼吸出し管を2カ所設け、その間に複数の可倒受板を設置した二軸型コンベヤを有し、取水口兼吸出し管と二軸型コンベヤの間に傾斜式シャッターを用いた潮流発電機。
【請求項2】
取水口兼吸出し管が漏斗状であることを特徴とする請求項1の潮流発電機。
【請求項3】
アウターフレームがチューブ形状であり、インナーフレームが運び側コンベヤと戻り側コンベヤとの間の潮流の行き来を遮断することを特徴とする請求項1の潮流発電機。
【請求項4】
取水口兼吸出し管と二軸型コンベヤの間に設置される傾斜式シャッターが、潮流の向きに対応して開閉することを特徴とする請求項1の潮流発電機。
【請求項5】
架台及び架台固定用アンカーボルトを用いて、固定されることを特徴とする請求項1の潮流発電機。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潮流の転流に対応して取水口兼吸出し管を2カ所設け、その間に複数の可倒受板を設置した二軸型コンベヤを有し、取水口兼吸出し管と二軸型コンベヤの間に、取水した潮流が前記二軸型コンベヤにおける戻り側コンベヤ側へ流入することを防止して、取水した潮流を前記二軸型コンベヤにおける運び側へと導くことを目的として、戻り側コンベヤ側の取水口端面から運び側コンベヤ側まで、潮流の流れ方向に対して傾斜して設置された傾斜式シャッターを用いた潮流発電機。
【請求項2】
取水口兼吸出し管が漏斗状であることを特徴とする請求項1の潮流発電機。
【請求項3】
取水口兼吸出し管と二軸型コンベヤの間に設置される傾斜式シャッターが、潮流の向きに対応して開閉することを特徴とする請求項1の潮流発電機。
【請求項4】
架台及び架台固定用アンカーボルトを用いて、固定されることを特徴とする請求項1の潮流発電機。