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特開2024-62097処理装置、処理方法、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062097
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】処理装置、処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/22 20060101AFI20240430BHJP
   B66C 13/48 20060101ALI20240430BHJP
   B66C 13/46 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B66C13/22 V
B66C13/48 B
B66C13/22 C
B66C13/22 D
B66C13/22 H
B66C13/46 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169875
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】原田 稔
(72)【発明者】
【氏名】牧野 裕介
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA02
3F204BA05
3F204CA01
3F204DA08
3F204DB04
3F204DC06
3F204DC08
3F204DD01
3F204DD02
(57)【要約】
【課題】 荷役装置により物体を荷役する際に荷役作業の時間を短縮する。
【解決手段】 クレーン用コンピュータ150は、荷受対象スラブM1の実在位置と、荷受対象スラブM1の置かれた状態と、のうちの少なくとも一方に基づいて、クレーン100の目標荷受位置A1と、クレーン100(吊具130)の目標姿勢と、のうちの少なくとも一方に対する補正量を、クレーン100が目標荷受位置A1に到達する前に算出し、当該補正量に基づくクレーン100の動作の指示をクレーン100に対して行う。
【選択図】 図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を荷役する荷役装置の動作に関する処理を行う処理装置であって、
前記荷役装置により荷役される対象の荷役対象物体を前記荷役装置が受け取る目標位置として予め決められている目標受取位置を示す情報と、前記荷役装置の荷役時の目標となる姿勢として予め決められている目標姿勢を示す情報と、前記荷役対象物体の実在位置および置かれた状態のうちの少なくとも一方を示す情報と、を取得する取得手段と、
前記荷役対象物体の実在位置および置かれた状態のうちの少なくとも一方を示す情報に基づいて、前記荷役装置の前記目標受取位置および前記目標姿勢のうちの少なくとも一方に対する補正量を、前記荷役装置が前記目標受取位置に到達する前に算出する補正量算出手段と、
前記補正量に基づいて前記目標受取位置および前記目標姿勢のうちの少なくとも一方を補正する指示を、前記荷役装置に対して行う動作指示手段と、
を備える、処理装置。
【請求項2】
前記荷役装置は、荷役時に荷役対象物体を保持する保持具を備え、
前記目標姿勢を示す情報は、前記保持具の目標となる姿勢を特定するための情報である、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記動作指示手段は、前記荷役装置が前記目標受取位置に到達する前に前記指示を行い、
前記補正量に基づいて前記目標受取位置が補正される場合、前記動作指示手段は、前記荷役装置が、当該補正前の前記目標受取位置または当該補正後の前記目標受取位置に到達する前に前記指示を行う、請求項1または2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記動作指示手段は、前記荷役装置が前記目標受取位置に到達する前に前記補正量に基づく前記荷役装置の動作が終了するタイミングで、前記指示を行い、
前記補正量に基づいて前記目標受取位置が補正される場合、前記動作指示手段は、前記荷役装置が、当該補正前の前記目標受取位置または当該補正後の前記目標受取位置に到達する前に前記補正量に基づく前記荷役装置の動作が終了するタイミングで、前記指示を行う、請求項3に記載の処理装置。
【請求項5】
前記補正量算出手段は、前記荷役対象物体の実在位置および置かれた状態のうちの少なくとも一方を特定するための情報である物体特定情報を検知する物体検知用センサの検知信号に基づいて、前記補正量を算出する、請求項1または2に記載の処理装置。
【請求項6】
前記物体検知用センサは、前記荷役装置に取り付けられている、請求項5に記載の処理装置。
【請求項7】
前記荷役装置は、走行方向への走行と、横行方向への横行と、を行うクレーンを備え、
前記物体検知用センサは、前記クレーンの走行方向における端部に取り付けられている、請求項5に記載の処理装置。
【請求項8】
前記荷役対象物体は、移動可能な運搬装置に置かれており、
前記荷役装置の前記目標受取位置を、前記運搬装置の目標停止位置に対する実在位置のずれ量分ずらした位置に変更する受取位置変更手段を備え、
前記補正量算出手段は、前記受取位置変更手段により変更された前記目標受取位置に対する補正量を算出する、請求項1または2に記載の処理装置。
【請求項9】
前記運搬装置の実在位置は、運搬装置検知用センサの検知信号に基づいて特定される、請求項8に記載の処理装置。
【請求項10】
前記荷役装置により一度に荷役される複数の前記荷役対象物体の実在位置と、当該複数の荷役対象物体の置かれた状態と、のうちの少なくとも一方に基づいて、当該複数の前記荷役対象物体を前記荷役装置で一度に荷役することが出来るか否かを判定する荷役可否判定手段と、
前記荷役可否判定手段により、複数の前記荷役対象物体を前記荷役装置で一度に荷役することが出来ないと判定された場合、前記複数の前記荷役対象物体のうち、前記荷役装置で一度に荷役することが出来ない原因となっている前記荷役対象物体を前記複数の前記荷役対象物体から除外する荷役対象物体変更手段と、を備える、請求項1または2に記載の処理装置。
【請求項11】
前記荷役装置は、走行方向への走行と、横行方向への横行と、を行うクレーンを備える、請求項1または2に記載の処理装置。
【請求項12】
物体を荷役する荷役装置の動作に関する処理を行う処理方法であって、
前記荷役装置により荷役される対象の荷役対象物体を前記荷役装置が受け取る目標位置として予め決められている目標受取位置を示す情報と、前記荷役装置の荷役時の目標となる姿勢として予め決められている目標姿勢を示す情報と、前記荷役対象物体の実在位置および置かれた状態のうちの少なくとも一方を示す情報と、を取得する取得工程と、
前記荷役対象物体の実在位置および置かれた状態のうちの少なくとも一方を示す情報に基づいて、前記荷役装置の前記目標受取位置および前記目標姿勢のうちの少なくとも一方に対する補正量を、前記荷役装置が前記目標受取位置に到達する前に算出する補正量算出工程と、
前記補正量に基づいて前記目標受取位置および前記目標姿勢のうちの少なくとも一方を補正する指示を、前記荷役装置に対して行う動作指示工程と、
を備える、処理方法。
【請求項13】
請求項1または2に記載の処理装置の各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置、処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、物体(被搬送物)が置かれている番地にクレーン本体が到達する前に当該物体の高さを検知しておき、当該番地にクレーン本体が到達した時に当該検知した高さに応じて吊具の巻き下げを制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭52-39241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、物体の高さの検知の結果を用いた計算および制御は、物体が置かれている位置にクレーン本体が到達した後に行われる。したがって、物体が置かれている位置にクレーン本体が到達してから、クレーンによる物体の運搬が可能な状態になるまでに、再移動のための時間がかかるという問題点がある。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、荷役装置により物体を荷役する際に荷役作業の時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の処理装置は、物体を荷役する荷役装置の動作に関する処理を行う処理装置であって、前記荷役装置により荷役される対象の荷役対象物体を前記荷役装置が受け取る目標位置として予め決められている目標受取位置を示す情報と、前記荷役装置の荷役時の目標となる姿勢として予め決められている目標姿勢を示す情報と、前記荷役対象物体の実在位置および置かれた状態のうちの少なくとも一方を示す情報と、を取得する取得手段と、前記荷役対象物体の実在位置および置かれた状態のうちの少なくとも一方を示す情報に基づいて、前記荷役装置の前記目標受取位置および前記目標姿勢のうちの少なくとも一方に対する補正量を、前記荷役装置が前記目標受取位置に到達する前に算出する補正量算出手段と、前記補正量に基づいて前記目標受取位置および前記目標姿勢のうちの少なくとも一方を補正する指示を、前記荷役装置に対して行う動作指示手段と、を備える。
【0007】
本発明の処理方法は、物体を荷役する荷役装置の動作に関する処理を行う処理方法であって、前記荷役装置により荷役される対象の荷役対象物体を前記荷役装置が受け取る目標位置として予め決められている目標受取位置を示す情報と、前記荷役装置の荷役時の目標となる姿勢として予め決められている目標姿勢を示す情報と、前記荷役対象物体の実在位置および置かれた状態のうちの少なくとも一方を示す情報と、を取得する取得工程と、前記荷役対象物体の実在位置および置かれた状態のうちの少なくとも一方を示す情報に基づいて、前記荷役装置の前記目標受取位置および前記目標姿勢のうちの少なくとも一方に対する補正量を、前記荷役装置が前記目標受取位置に到達する前に算出する補正量算出工程と、前記補正量に基づいて前記目標受取位置および前記目標姿勢のうちの少なくとも一方を補正する指示を、前記荷役装置に対して行う動作指示工程と、を備える。
【0008】
本発明のプログラムは、前記処理装置の各手段としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、荷役対象物体の実在位置および置かれた状態のうちの少なくとも一方を示す情報に基づいて、荷役装置の目標受取位置および目標姿勢のうちの少なくとも一方に対する補正量を、荷役装置が目標受取位置に到達する前に算出し、当該補正量に基づいて目標受取位置および目標姿勢のうちの少なくとも一方を補正する指示を荷役装置に対して行う。したがって、荷役装置がその目標受取位置に到達する前に、目標受取位置および目標姿勢をどの程度補正すれば良いのかを把握し、補正(変更)することが出来るようになる。その結果、荷役の際に荷役装置の再移動および姿勢の再変更を行う必要がなくなり、全体として荷役作業の時間を短縮することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】クレーン設備の構成の一例を示す平面図である。
図1B】クレーン設備の構成の一例を示す正面図である。
図1C】クレーン設備の構成の一例を示す側面図である。
図2】吊具の動作の一例を示す図である。
図3】スラブに対するレーザ光Lの走査範囲の一例を示す図である。
図4】スラブの表面形状の検知結果の一例を示す図である。
図5】置かれているスラブの各種の状況を示す図である。
図6】表面が変形している荷受対象スラブの一例を示す図である。
図7】貨車に積まれた荷受対象スラブが置かれている様子の一例を示す図である。
図8】クレーン用コンピュータが行う機能の概要の一例を説明する図である。
図9】クレーン用コンピュータの機能的な構成の第1の例を示す図である。
図10】荷受対象スラブが、荷受が出来る形状であるか否かを判定する手法の一例を説明する図である。
図11】長さ方向(x軸方向)において傾いた状態で置かれている場合の荷受対象スラブの表面形状の検知結果の一例を示す図である。
図12】幅方向(y軸方向)において傾いた状態で置かれている場合の荷受対象スラブの表面形状の検知結果の一例を示す図である。
図13】荷受対象スラブの回動角度の算出方法の一例を説明する図である。
図14】クレーンの走行速度パターン(走行速度と時間との関係)の一例を示す図である。
図15】検知開始タイミングおよび検知終了タイミングを定める方法の一例を説明する図である。
図16】処理方法の第1の例を説明するフローチャートである。
図17】複数のスラブを一度に荷受することが出来る場合と出来ない場合の一例を説明する図である。
図18】クレーン用コンピュータの機能的な構成の第2の例を示す図である。
図19-1】処理方法の第2の例を説明するフローチャートである。
図19-2】図19-1に続くフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
なお、長さ、位置、大きさ、間隔等、比較対象が同じであることは、厳密に同じである場合の他、発明の主旨を逸脱しない範囲で異なるもの(例えば、設計時に定められる公差の範囲内で異なるもの)も含むものとする。また、各図において、説明および表記の都合上、構成の一部または全部を省略化または簡略化して示す。また、各図に示すx-y-z座標は、各図における向きの関係を示すためのものである。白丸(○)の中に黒丸(●)を付した記号は、紙面の奥側から手前側に向かう方向(紙面の手前側が正の方向)であることを示す。白丸(○)の中にクロスマーク(×)を付した記号は、紙面の手前側から奥側に向かう方向(紙面の奥側が正の方向)であることを示す。また、x-y-z座標の原点の位置は、各図に示す位置に限定されない。
【0012】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
[クレーン設備]
本実施形態では、荷役装置が、走行方向への走行と、横行方向への横行と、を行うクレーンである場合を例示する。そこで、クレーン設備の一例を概説する。図1A図1Cは、クレーン設備の構成の一例を示す図である。図1Aは、クレーン設備の構成の一例を示す平面図である。図1Bは、クレーン設備の構成の一例を示す正面図である。図1Cは、クレーン設備の構成の一例を示す側面図である。
【0013】
図1A図1Cに示す例では、クレーン設備は、クレーン100と、走行レール200a~200bと、を備える。
クレーン100は、走行方向への走行と横行方向への横行とを行って、スラブMが置いてある位置の上方に移動し、スラブMを吊り上げる。その後クレーン100は、走行方向への走行と横行方向への横行とを行って、吊り上げたスラブMを所定の位置に搬送して当該位置で当該スラブMを下ろす。図1A図1C等、各図では、y軸方向がクレーン100の走行方向であり、x軸方向がクレーン100の横行方向であり、z軸方向が高さ方向である場合を例示する(図1A図1Cに両矢印線で示す走行方向および横行方向を参照)。なお、本実施形態では、説明を簡単にするため、クレーン100が一度に搬送するスラブMの数が1つである場合を例示する。したがって、積み重ねられて置かれているスラブM1~M2のうち上に置かれているスラブM1が下に置かれているスラブM2よりも先に搬送される。
【0014】
図1A図1Cにおいて、クレーン100は、クレーン本体110と、横行クラブ120と、吊具130と、物体検知用センサ140a~140bと、クレーン用コンピュータ150と、を備える。なお、図1A図1Cでは、説明および表記の都合上、クレーン100の内部にある構成要素(横行レール116a、横行クラブ120、およびクレーン用コンピュータ150)を透視した状態で示す。また、図1Cでは、説明および表記の都合上、クレーン用コンピュータ150(および運転室115)の図示を省略する。
【0015】
クレーン本体110は、例えば、不図示の走行装置と通信可能に接続されており、当該走行装置からの指示に基づいて、走行方向(y軸方向)に走行する。不図示の走行装置は、クレーン本体110に設置されていても、クレーン本体110の外部に設置されていても良い。
【0016】
図1A図1Cにおいて、クレーン本体110は、例えば、ガーダ111と、サドル112a~112bと、を備える。ガーダ111には、横行クラブ120が設置される。横行クラブ120は、ガーダ111において横行方向(x軸方向)に横行する(なお、横行クラブ120は、トロリ等とも称される)。本実施形態では、ガーダ111は、横行方向(x軸方向)に延設された横行レール116a~116bを備える。この場合、横行クラブ120は、横行レール116a~116bに沿って横行方向に横行する。なお、図1A図1Cでは、横行クラブ120がクレーン本体110内に設置される場合を例示する。しかしながら、横行クラブ120は、クレーン本体110の上に設置されても下に設置されても良い。
【0017】
サドル112aは、ガーダ111の横行方向の一方側(x軸の負の方向側)の端部に取り付けられ、図1Bに示すように車輪113aを備える。サドル112bは、ガーダ111の横行方向の他方側(x軸の正の方向側)の端部に取り付けられ、図1Bに示すように車輪113bを備える。
【0018】
走行レール200a~200bは、クレーン100の走行方向(y軸方向)に沿って延設される。
クレーン100の車輪113a、113bは、それぞれ走行レール200a、200bの上に置かれる。本実施形態では、車輪113a、113bが走行レール200a、200b上を走行することにより、クレーン100が走行方向に走行する場合を例示する。
【0019】
サドル112aは、クレーン100(クレーン本体110)の走行方向(y軸方向)の実在位置を特定するための情報を検知する走行位置検知用センサ114を備える。走行位置検知用センサ114は、例えば、パルスジェネレータを備える。パルスジェネレータは、車輪113aが1回転するたびに1つのパルス信号を発生する。本実施形態では、パルスジェネレータが、車輪113aがy軸の正の方向に向かって回転する場合とy軸の負の方向に向かって回転する場合とが区別されるようにパルス信号を発生する場合を例示する。
【0020】
そして、本実施形態では、クレーン100(クレーン本体110)の走行方向(y軸方向)の基準位置と、車輪113aの直径と、走行位置検知用センサ114(パルスジェネレータ)で発生するパルス信号と、に基づいて、クレーン100(クレーン本体110)の走行方向(y軸方向)の位置が算出される場合を例示する。
【0021】
クレーン100(クレーン本体110)の走行方向(y軸方向)の基準位置は、例えば、クレーン100(クレーン本体110)のy軸方向の一端(例えばy軸の負の方向側の端)の位置である。走行位置検知用センサ114は、クレーン100(クレーン本体110)が走行方向(y軸方向)の基準位置にあるときから走行位置検知用センサ114が備えるパルスジェネレータで発生するパルス信号を検知し、検知したパルス信号と車輪113aの直径とに基づいて、クレーン100の走行方向(y軸方向)の基準位置からのクレーン100の移動距離を算出する。このようにする場合、走行位置検知用センサ114は、クレーン100の走行方向(y軸方向)の基準位置と、クレーン100の移動距離と、クレーン本体110の寸法と、に基づいて、クレーン100の走行方向の実在位置を検知する。クレーン100の走行方向の実在位置は、クレーン本体110の所定の箇所の位置で表される。クレーン本体110の所定の箇所は、例えばクレーン本体110の重心である。
【0022】
なお、クレーン100の走行方向の実在位置の算出は、クレーン用コンピュータ150で行われても良い。この場合、例えば、クレーン用コンピュータ150は、走行位置検知用センサ114が備えるパルスジェネレータから発生するパルス信号を取得して、前述したようにしてクレーン100の走行方向の実在位置を算出しても良い。また、クレーン100の走行方向の実在位置を検知する方法は、このような方法に限定されない。例えば、クレーン100に取り付けられたGPS(Global Positioning System)センサ等の公知の技術を用いて、クレーン100の走行方向の実在位置を検知してもよい。
【0023】
横行クラブ120は、例えば、不図示の横行装置と通信可能に接続されており、当該横行装置からの指示に基づいて、クレーン本体110上で横行方向(x軸方向)に横行する。不図示の横行装置は、クレーン本体110に設置されていても、クレーン本体110の外部に設置されていても良い。
【0024】
横行クラブ120は、横行クラブ120の横行方向(x軸方向)の実在位置を特定するための情報を検知する横行位置検知用センサ121を備える。横行位置検知用センサ121は、例えば、パルスジェネレータを備える。パルスジェネレータは、横行クラブ120の車輪が1回転するたびに1つのパルス信号を発生する。本実施形態では、パルスジェネレータが、横行クラブ120の車輪がx軸の正の方向に向かって回転する場合とx軸の負の方向に向かって回転する場合とが区別されるようにパルス信号を発生する場合を例示する。
【0025】
そして、本実施形態では、横行クラブ120の横行方向(x軸方向)の基準位置と、横行クラブ120の車輪の直径と、パルスジェネレータで発生するパルス信号と、に基づいて、横行クラブ120の横行方向(x軸方向)の位置が算出される場合を例示する。
【0026】
横行クラブ120の横行方向(x軸方向)の基準位置は、例えば、横行レール116a~116bのx軸方向の一端(例えばx軸の負の方向側の端)の位置である。横行位置検知用センサ121は、横行クラブ120が横行方向(x軸方向)の基準位置にあるときから横行位置検知用センサ121が備えるパルスジェネレータで発生するパルス信号を検知し、横行クラブ120が横行方向(x軸方向)の基準位置にあるときからパルスジェネレータで発生するパルス信号と、横行クラブ120の車輪の直径と、に基づいて、横行クラブ120の横行方向(x軸方向)の基準位置からの横行クラブ120の移動距離を算出する。このようにする場合、横行位置検知用センサ121は、横行クラブ120の横行方向(x軸方向)の基準位置と、横行クラブ120の移動距離と、横行クラブ120の各部の寸法と、に基づいて、横行クラブ120の横行方向の実在位置を検知する。横行クラブ120の横行方向の実在位置は、横行クラブ120の所定の箇所の位置で表される。横行クラブ120の所定の箇所は、例えば横行クラブ120の重心である。
【0027】
なお、クレーン100の横行方向の実在位置の算出は、クレーン用コンピュータ150で行われても良い。この場合、例えば、クレーン用コンピュータ150は、横行位置検知用センサ121が備えるパルスジェネレータから発生するパルス信号を取得して、前述したようにしてクレーン100の横行方向の実在位置を算出しても良い。また、横行クラブ120の横行方向の実在位置を検知する方法は、このような方法に限定されない。例えば、横行クラブ120に取り付けられたGPS(Global Positioning System)センサ等の公知の技術を用いて、横行クラブ120の横行方向の実在位置を検知してもよい。
【0028】
また、図1Bおよび図1Cに示すように、横行クラブ120から下方(z軸の負の方向)に向けて吊具130が設置される。吊具130は、荷受対象物体(本実施形態ではスラブ)を吊り上げるためのものである。吊具130は、例えば、索条131と、保持部132と、を備える。索条131の一端は、不図示の駆動装置に取り付けられる。不図示の駆動装置の動作に従って、索条131の巻き上げおよび巻き下げが行われる。不図示の駆動装置は、クレーン本体110に設置されていても、クレーン本体110の外部に設置されていても良い。
【0029】
前述したように索条131の基端は、不図示の駆動装置に取り付けられる。図1Bおよび図1Cに示すように索条131の先端には保持部132が取り付けられる。保持部132は、回動部133と、揺動部134と、胴部135と、脚部136a~136bと、爪部137a~137bと、を備える。
【0030】
索条131の先端は回動部133の上端に取り付けられる。回動部133の下端には揺動部134が取り付けられる。揺動部134の下端には胴部135が取り付けられる。脚部136a~136bは、互いの間隔が調整可能となるように胴部135の下端に取り付けられる。脚部136a~136bの間隔は、例えば、不図示の駆動装置の動作に伴って変更される。
【0031】
脚部136a~136b、136bの下端には、それぞれ爪部137a、137bが取り付けられる。図1Bでは、脚部136a~136bの下端に取り付けられる爪部137aが、脚部136a~136bの面のうち脚部136bと間隔を有して対向する面に取り付けられ、脚部136a~136bの当該面から脚部136bの方向に向かって延設されている場合を例示する。同様に、脚部136bの下端に取り付けられる爪部137bが、脚部136bの面のうち脚部136a~136bと間隔を有して対向する面に取り付けられ、脚部136bの当該面から脚部136a~136bの方向に向かって延設されている場合を例示する。
【0032】
脚部136a~136bの間隔が変更されることに伴い、爪部137a~137bの間隔も変更される。例えば、スラブMの側面が爪部137a~137bで挟持された状態で索条131が巻き上げられることにより、スラブMは吊り上げられる。
【0033】
図2は、吊具130の動作の一例を示す図である。
図2(a)において、回動部133は、不図示の駆動装置の動作に伴って索条131を回動軸として回動する(図2(a)において索条131を囲むようにして示す両矢印線を参照)。回動部133の回動に伴い、揺動部134、胴部135、脚部136a~136b、および爪部137a~137bも回動する。本実施形態では、図1Bおよび図2(a)に示す状態(爪部137a、137bが対向する方向がy軸方向(走行方向)である状態)であるときの吊具130の回動角度が基準の角度(=0°)であるものとする。図2(d)において、吊具130の回動角度φは、回動軸を通り、且つ、y軸の負の方向を向く仮想線203を始線とし、図2(d)の紙面に向かって時計回りの方向を正の方向とする角度であり、吊具130の回動角度φがφ°(φ>0)である場合を例示する。
【0034】
また、図2(b)および図2(c)において、揺動部134は、不図示の駆動装置の動作に伴って揺動する。図2(b)および図2(c)では、揺動部134の上端(z軸の正の方向の端)の中心位置を通り、爪部137a、137bが対向する方向(図2(a)ではy軸方向)と、索条131が延設されている方向(図2(a)ではz軸方向)と、に垂直な仮想線を揺動軸201として揺動する場合を例示する(図2(b)および図2(c)おいて揺動軸201の下に示す矢印線を参照)。本実施形態では、図1Bおよび図2(a)に示す状態(爪部137a、137bが対向する方向がy軸方向(走行方向)である状態)であるときの吊具130の揺動角度θが基準の角度(=0°)であるものとする。図2(b)、図2(c)において、吊具130の揺動角度θは、揺動軸201を通り、且つ、z軸の負の方向を向く仮想線202を始線とし、図2(b)および図2(c)の紙面に向かって時計回りの方向を正の方向とするθ°、-θ°(θ>0)である場合を例示する。
【0035】
本実施形態では、吊具130が荷役時に物体を保持する保持具の一例であり、吊具130の回動角度φおよび揺動角度θが、保持具の目標となる姿勢を特定するための情報の一例であり、吊具130の回動角度φおよび揺動角度θが0°であるときの吊具130の状態が、荷役装置の荷役時の目標となる姿勢として予め決められている目標姿勢を示す情報の一例である。本実施形態では、図2(a)に示す状態が、吊具130の目標姿勢である場合を例示する。
【0036】
なお、索条131は、物体(本実施形態ではスラブM)の搬送に耐えられる強度を有していればどのようなものであっても良い。例えば、索条131は、ワイヤーロープであってもチェーンであっても良い。また、保持部132は、物体(本実施形態ではスラブM)を保持することができればどのようなものであっても良い。例えば、保持部132は、図1Bおよび図2に例示するように物体を挟んで保持するものであっても、物体に取り付けられたワイヤーロープ等を引っ掛けることにより物体を保持するもの(いわゆるフック)であっても良い。
【0037】
物体検知用センサ140a~140bは、物体(本実施形態ではスラブM)の実在位置および置かれた状態のうちの少なくとも一方を特定するための情報である物体特定情報を検知する。物体検知用センサ140a~140bは、例えば、レーザ変位計を備える。レーザ変位計は、投光部と受光部とを備える。投光部から物体に向けてレーザ光を出力し、当該物体で反射したレーザ光を受光部で受光する。レーザ変位計は、投光部から出力したレーザ光と、受光部で受光したレーザ光とに基づいて、レーザ変位計から物体の各位置(レーザ光の照射位置)までの距離と、レーザ変位計(投光部および受光部)から物体の各位置(レーザ光の照射位置)に向かう方向と、を算出する。本実施形態では、受光部がラインセンサ(一次元センサ)を有する場合を例示する。レーザ変位計(投光部および受光部)から物体の各位置に向かう方向は、例えば、レーザ変位計(投光部および受光部)から物体の各位置を見た場合の俯角である。
【0038】
図1A図1Cに示すように本実施形態では、物体検知用センサ140a~140bがクレーン100(クレーン本体110)に取り付けられている場合を例示する。このように物体検知用センサ140a~140bをクレーン100(クレーン本体110)に取り付けることにより、物体検知用センサの数を少なくすることが出来る。例えば、物体検知用センサを例えば地面に設置すると、スラブMが置かれる位置として予め決められている位置に応じて物体検知用センサを設置しなければならず、物体検知用センサの設置数が多くなる虞がある。一方、クレーン100(クレーン本体110)はスラブMの位置の上方に移動するので、物体検知用センサ140a~140bをクレーン100(クレーン本体110)に取り付ければ、スラブMが置かれる位置として予め決められている位置に応じて物体検知用センサを設置する必要がなくなる。
【0039】
しかしながら、必ずしもクレーン100(クレーン本体110)に物体検知用センサ140a~140bを取り付ける必要はない。例えば、クレーン100(クレーン本体110)に物体検知用センサ140a~140bを取り付ける場所を確保することが容易でない場合には、物体検知用センサを地面に設置しても良い。スラブMが置かれる位置として予め決められている位置は、スラブMの所定の箇所の位置である。スラブMの所定の箇所は、例えばスラブMの重心である。本実施形態では、クレーン100(吊具130)がスラブMを挟持する位置として予め決められている位置が、スラブMが置かれる位置として予め決められている位置で表される場合を例示する。図1A図1C等において、クレーン100がスラブM1を挟持する位置として予め決められている目標荷受位置A1を示す。以下の説明では、クレーン100(吊具130)がスラブMを挟持する位置として予め決められている位置を、必要に応じて、クレーン100の目標荷受位置、または単に目標荷受位置と称する。本実施形態では、目標荷受位置が、荷役装置が荷役対象物体を受け取る目標位置として予め定められている目標受取位置の一例である。
【0040】
また、図1Aおよび図1Cに示すように、本実施形態では、物体検知用センサ140a、140bが、それぞれ、クレーン100(クレーン本体110)のy軸方向(クレーン100の走行方向)の負の方向側の端部、正の方向側の端部に取り付けられている場合を例示する。本実施形態では、物体検知用センサ140aによる検知信号は、クレーン100がy軸の負の方向側に向かって走行しているときに使用される。一方、物体検知用センサ140bによる検知信号は、クレーン100がy軸の正の方向側に向かって走行しているときに使用される。
【0041】
このように物体検知用センサ140a~140bを、クレーン100(クレーン本体110)のy軸の正の方向の端部と負の方向の端部とのそれぞれに取り付ければ、クレーン100の走行方向が、y軸の正の方向であっても負の方向であっても、スラブMを早期に検知することが出来る。また、クレーン100の他の構成要素が物体検知用センサ140a~140bの検知の障害になることを抑制することが出来る。しかしながら、物体検知用センサ140a~140bを、クレーン100(クレーン本体110)のy軸方向(クレーン100の走行方向)の端部に取り付けなくても良い。例えば、物体検知用センサを横行クラブ120に取り付けても良い。
【0042】
前述したように本実施形態では、物体検知用センサ140a~140bがレーザ変位計を備える場合を例示する。本実施形態では、物体検知用センサ140a~140bが、クレーン100が走行方向(y軸方向)に移動(走行)しているときに、クレーン100の横行方向(x軸方向)にレーザ光を走査することを所定の周期で繰り返し行う場合を例示する。図1Aおよび図1Bに示すレーザ光L(二点鎖線)は、クレーン100が走行方向(y軸方向)の或る位置に存在しているときに物体検知用センサ140aにより出力されるレーザ光Lの走査範囲(x軸方向の最も正の方向側、負の方向側を走査しているときのレーザ光L)を示す。物体検知用センサ140a~140bは、スラブMがレーザ光Lの操作範囲のx軸方向(横行方向)の位置を含むように、クレーン100が走行方向(y軸方向)の或る位置に存在しているときに、クレーン100の横行方向(x軸方向)にレーザ光を走査する。なお、例えば、1つの物体検知用センサ140a、140bでは、クレーン100が走行方向(y軸方向)の或る位置に存在しているときに、y軸方向の位置として、当該走行方向(y軸方向)の或る位置を含む位置に置かれている全てのスラブMを、レーザ光Lの走査範囲とすることが出来ない場合、x軸方向(クレーン100の横行方向)に間隔を空けて2つ以上の物体検知用センサを並べて設置しても良い。このようにすれば、スラブMをより高速に検知することが出来る。また、1つの物体検知用センサ140a、140bで、当該全てのスラブMをレーザ光Lの操作範囲とすることが出来る場合であっても、2つ以上の物体検知用センサのそれぞれのレーザ光Lの走査範囲の少なくとも一部を異ならせて、各物体検知用センサで物体の検知を同時に行っても良い。このようにすれば、1つの物体検知用センサによりレーザ光Lを走査する場合に比べてレーザ光Lの走査時間を短縮することが出来るので、スラブMをより高速に検知することが出来る。
【0043】
また、図1Cにおいて本実施形態では、物体検知用センサ140a~140bが、物体検知用センサ140a~140bの真下(鉛直下方(z軸の負の方向))にレーザ光Lを出力する場合を例示する。このようにすれば、レーザ光Lを斜め下方向に出力する場合に必要となる特別な処理を行わなくても、物体検知用センサ140a~140bによるスラブMの検知を高精度に行うことが出来る。したがって、スラブMをより高精度に且つより高速に検知することが出来る。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、図1Cに示すように、物体検知用センサ140a~140bは、物体検知用センサ140a~140bの真下よりもクレーン100(クレーン本体110)の進行方向側にレーザ光L'を出力しても良い。このようにすれば、物体検知用センサ140a~140bによる物体の検知を早期に行うことが出来る。物体検知用センサ140a~140bから出力されるレーザ光L、L'の照射角度(俯角)は、物体の検知の精度とタイミングとに応じて予め定められる。
【0044】
なお、図1Cにおいて、物体検知用センサ140a~140bから出力されるレーザ光としてレーザ光L、L'を示す。しかしながら、レーザ光L'は説明のために示すものであり、前述したように本実施形態では、物体検知用センサ140a~140bが、物体検知用センサ140a~140bの真下にレーザ光Lを出力する場合を例示する。したがって、図1Cにおいて、物体検知用センサ140a~140bから出力されるレーザ光はレーザ光Lであり、レーザ光L'は物体検知用センサ140a~140bから出力されない。
【0045】
物体検知用センサ140a~140bは、例えば、物体検知用センサ140a~140bからスラブMの各位置までの距離と、物体検知用センサ140a~140b(投光部および受光部)からスラブMの各位置に向かう方向と、物体検知用センサ140a~140bの実在位置と、スラブMの寸法と、に基づいて、スラブMの実在位置(実際にスラブMが置かれている位置)が算出される。スラブMの実在位置は、スラブMの所定の箇所の位置で表される。本実施形態では、説明を簡単にするために、クレーン100(吊具130)がスラブMを挟持する位置が、当該スラブMの所定の箇所である場合を例示する。しかしながら、スラブMの所定の箇所はスラブMのその他の箇所(例えばスラブMの重心)であっても良い。このようにする場合、例えば、スラブMの実在位置とスラブMのサイズとに基づいて、クレーン100(吊具130)がスラブMを挟持する位置を算出し、算出した位置と、目標荷受位置A1とが比較されるようにしても良い。また、例えば、目標荷受位置A1と、スラブMのサイズとに基づいて、スラブMの実在位置として定められている所定の箇所の位置を算出し、算出した位置と、スラブの実在位置とが比較されるようにしても良い。また、物体検知用センサ140a~140bの実在位置は、クレーン100の走行方向の位置と、物体検知用センサ140a~140b(投光部および受光部)の設置位置と、に基づいて特定される。
【0046】
例えば、物体検知用センサ140a~140b(投光部および受光部)の設置位置は、クレーン100の所定位置からの相対的な位置(クレーン100の所定位置からのx座標、y座標、z座標のずれ量)として物体検知用センサ140a~140bに予め設定されており、クレーン100の走行方向の位置が、当該クレーン100の所定位置における位置として走行位置検知用センサ114により検知されるものとする。前述した例では走行位置検知用センサ114は、車輪113aが1回転するたびに1つのパルス信号を発生するパルスジェネレータを有する。この場合、クレーン100の所定位置は、例えば、車輪113aの設置位置である。物体検知用センサ140a~140bは、クレーン100の走行方向の位置を、前述したクレーン100の所定位置からのx座標、y座標、z座標のずれ量分だけずらすことにより、物体検知用センサ140a~140bの実在位置を特定する。なお、物体検知用センサ140a~140bは、例えば、クレーン100の中心位置(図1Aに示す荷受位置A1および目標停止位置A2を示す点の位置)からy軸方向に5m~6m程度離れた位置に設置される。この場合、物体検知用センサ140a~140bのy軸方向の間隔は10m~12m程度になる。
【0047】
そして、物体検知用センサ140a~140bは、物体検知用センサ140a~140bからスラブMの各位置までの距離と、物体検知用センサ140a~140bからスラブMの各位置に向かう方向と、に基づいて、物体検知用センサ140a~140bの実在位置からスラブMの実在位置に向かう方向と、物体検知用センサ140a~140bの実在位置からスラブMの実在位置までの距離と、を算出する。そして、物体検知用センサ140a~140bは、物体検知用センサ140a~140bの実在位置からスラブMの実在位置に向かう方向に、物体検知用センサ140a~140bの実在位置からスラブMの実在位置までの距離だけ、物体検知用センサ140a~140bの実在位置から離れた位置を、スラブMの実在位置として検知する。
【0048】
また、物体検知用センサ140a~140bは、スラブMの表面形状を検知する。
図3は、スラブM1~M2に対するレーザ光Lの走査範囲の一例を示す図である。
前述したように、物体検知用センサ140a~140bは、クレーン100が走行方向(y軸方向)に移動(走行)しているときに、クレーン100の横行方向(x軸方向)にレーザ光Lを走査することを所定の周期で繰り返し行う。
【0049】
図3では、二点鎖線で示す矢印線の方向にレーザ光Lが走査される場合を例示する(なお、図3では、表記の都合上、1つの矢印線のみに符号(L)を付している)。具体的に、図3に示す1つの矢印線は、y軸の正の方向から負の方向に向かってクレーン100が走行している或るタイミングにおいて、x軸の負の方向から正の方向に向かってレーザ光Lが走査されることを示す。ここでは、図3の1つの矢印線で示される走査を1回の走査とする。
【0050】
物体検知用センサ140a~140bは、レーザ光Lの1回の走査で得られる情報(物体検知用センサ140a~140bからスラブMの各位置までの距離と、物体検知用センサ140a~140bからスラブMの各位置に向かう方向)に基づいて、当該レーザ光Lを走査した範囲におけるスラブMの表面形状を検知する。
【0051】
図4は、スラブM1~M2の表面形状の検知結果の一例を示す図である。図4において、横軸xはx軸方向の位置であり、縦軸zはz軸方向の位置である。なお、図4において、原点0は、例えば、図3に示す矢印線の左端(x軸の負の方向側の端)の位置と、スラブM2の下端(z軸の負の方向側の端)の位置と、により定められる。
【0052】
図4(a)は、図3に示す走査範囲301a、301bにおいてレーザ光Lが1回走査された場合のスラブM1~M2の表面形状の検知結果401の一例を示す図である。図3に示すように、走査範囲301a、301bにおいてレーザ光LはスラブM1~M2に照射されない。したがって、図4(a)に示すようにスラブM1~M2の表面形状は検知されない。
【0053】
図4(b)は、図3に示す走査範囲302a、302bにおいてレーザ光Lが1回走査された場合のスラブM1~M2の表面形状の検知結果402の一例を示す図である。図3に示すように、走査範囲302a、302bにおいてレーザ光LはスラブM2に照射されスラブM1には照射されない。したがって、図4(b)に示すようにスラブM2の表面形状が検知され、スラブM1の表面形状は検知されない。
【0054】
図4(c)は、図3に示す走査範囲303においてレーザ光Lが1回走査された場合のスラブM1~M2の表面形状の検知結果403の一例を示す図である。図3に示すように、走査範囲303においてレーザ光Lは、スラブM2、スラブM2の上に積み重ねられているスラブM1、スラブM2の順に照射される。したがって、図4(c)に示すようにスラブM1、M2の表面形状が検知される。
【0055】
以上のようにして、y軸方向から見た場合のスラブM1~M2の表面形状がy軸方向の各位置において検知される。したがって、x軸方向から見た場合のスラブM1~M2の表面形状と、z軸方向から見た場合のスラブM1の表面形状が検知される。
【0056】
前述したように本実施形態では、物体検知用センサ140a~140bの受光部がラインセンサ(一次元センサ)を有する。図4に示すように本実施形態では、レーザ光Lの1回の走査におけるレーザ光Lの送受信により、y軸方向の1つの座標におけるx-z平面におけるスラブMの表面形状が検知される場合を例示する。このように物体検知用センサ140a~140bを構成するレーザ変位計をいわゆる一次元センサとすることにより、二次元画像を画像処理するといった複雑な処理を行わなくても、スラブMの表面形状を検知することができる。よって、スラブMの表面形状を検知するための処理を高精度に且つ高速に行うことが出来る。
【0057】
以上のように本実施形態では、荷受対象のスラブMの実在位置および表面形状の検知結果が、物体の実在位置および置かれた状態のうちの少なくとも一方を特定するための情報である物体特定情報に含まれる場合を例示する。
【0058】
なお、物体検知用センサ140a~140bの実在位置および荷受対象のスラブMの実在位置および表面形状は、クレーン用コンピュータ150で算出されても良い。例えば、物体検知用センサ140a~140bは、投光部から出力されたレーザ光Lの情報と、受光部に入力されたレーザ光Lの情報と、をクレーン用コンピュータ150に出力しても良い。この場合、物体検知用センサ140a~140bは、投光部から出力されたレーザ光Lの情報と、受光部に入力されたレーザ光Lの情報と、を物体特定情報として検知する。
【0059】
また、レーザ変位計により物体の実在位置および表面形状を検知する手法は公知の種々の技術で実現することができ、前述した手法に限定されない。
また、物体検知用センサ140a~140bは、レーザ変位計に限定されない。例えば、物体検知用センサ140a~140bは、超音波距離計であってもよい。
【0060】
次に、クレーン設備の地上側の構成の一例について説明する。
図1Bおよび図1Cに示すように本実施形態では、スラブMが、貨車160に積まれた状態でスラブヤード(スラブMの置場)に置かれる場合を例示する。本実施形態では、貨車160が移動可能な運搬装置の一例である。
【0061】
運搬装置検知用センサ170は、運搬装置(本実施形態では貨車160)の実在位置を検知する。運搬装置検知用センサ170は、例えば、貨車160を撮像する撮像装置を備える。運搬装置検知用センサ170は、例えば、撮像装置の設置位置と、撮像装置により撮像された貨車160の撮像画像と、に基づいて、貨車160の実在位置を検知する。貨車160の実在位置は、貨車160の所定の箇所の位置で表される。貨車160の所定の箇所は、例えば貨車160の重心である。
【0062】
例えば、運搬装置検知用センサ170が備える撮像装置は、撮像装置からの距離を示す値を画素値として有する距離画像と、輝度値を画素値として有する輝度画像と、を撮像する。このようにする場合、例えば、運搬装置検知用センサ170は、輝度画像に基づいて貨車160の領域を特定し、距離画像に基づいて撮像装置から貨車160の領域までの距離を特定する。そして、運搬装置検知用センサ170は、撮像装置の設置位置と、撮像装置の撮像方向と、撮像装置から貨車160の領域までの距離と、に基づいて、貨車160の実在位置を検知する。
【0063】
本実施形態では、貨車160が運搬装置の一例である。
なお、貨車160の実在位置は、クレーン用コンピュータ150で算出されても良い。例えば、運搬装置検知用センサ170は、撮像装置により撮像された輝度画像および距離画像をクレーン用コンピュータ150に出力しても良い。この場合、運搬装置検知用センサ170は、撮像装置により撮像された輝度画像および距離画像を検知する。
【0064】
また、貨車160の実在位置を検知する方法は、撮像装置を用いる方法に限定されない。例えば、貨車160がレールの上を移動する場合、クレーン100の走行方向の実在位置および横行クラブ120の横行方向の実在位置を検知する方法の一例として説明したのと同じように、パルスジェネレータから発生するパルス信号に基づいて、貨車160の実在位置を検知しても良い。また、貨車160に取り付けられたGPS(Global Positioning System)センサ等の公知の技術を用いて、貨車160の実在位置を検知しても良い。
【0065】
クレーン用コンピュータ150は、荷役装置の動作に関する処理を行う処理装置の一例である。本実施形態では、クレーン用コンピュータ150が、クレーン100に設置されており、自身が設置されているクレーン100の動作指示および管理等を行う場合を例示する。図1Bでは、クレーン100の運転室115内にクレーン用コンピュータ150が設置されている場合を例示する。しかしながら、クレーン用コンピュータ150が設置されている場所は、クレーン100の運転室115内に限定されない。
【0066】
クレーン用コンピュータ150は、後述する上位コンピュータ900で生成される作業指示情報に基づいて、自身が設置されているクレーン100の各部を動作させ、クレーン100を自動運転させる。作業指示情報は、クレーン用コンピュータ150がクレーン100に対して動作指示を与える際に必要となる情報である。作業指示情報には、少なくとも、クレーン100がスラブMの荷受作業を行うために必要な情報である荷受指示情報が含まれる。
【0067】
本実施形態では、スラブMが置かれている位置への移動と、スラブMの吊り上げと、スラブMの搬送と、スラブMの荷下ろしと、の各動作が自動運転により実行される場合を例示する。また、スラブMが置かれている位置への移動と、スラブMの吊り上げと、がスラブMの荷受作業として行われるものとする。
【0068】
なお、クレーン100の構成のうち、物体検知用センサ140a~140b以外の構成については、公知の技術で実現され、図1A図1Cおよび図2に示す構成のものに限定されない。また、図1Aに示すように本実施形態では説明を簡単にするために、同一の走行レール200a~200b上を走行するクレーン100の数が1つである場合を例示する。しかしながら、同一の走行レール200a~200b上を走行するクレーン100の数は2つ以上であっても良い。
【0069】
[スラブMの状態]
図5は、置かれているスラブM1~M2の各種の状況を示す図である。前述したように本実施形態では、クレーン100が一度に搬送するスラブMの数が1つであり、積み重ねられて置かれているスラブM1~M2のうち上に置かれているスラブM1が下に置かれているスラブM2よりも先に搬送される場合を例示する。以下の説明では、クレーン100による荷受の対象となるスラブを、必要に応じて、荷受対象スラブと称する。本実施形態では、荷受対象スラブがスラブM1であり、本実施形態では、荷受対象スラブの符号を必要に応じてM1と表記する。
【0070】
図5(a)は、実在位置D1が目標荷受位置A1にあり、且つ、置かれた状態が基準状態である荷受対象スラブM1の様子の一例を示す図である。本実施形態では、荷受対象スラブM1の状態が図5(a)に示す状態である場合に、荷受対象スラブM1の実在位置D1が目標荷受位置A1にあり、且つ、荷受対象スラブM1の置かれた状態が基準状態である場合を例示する。本実施形態では、以下の(A)~(B)の条件を満たす場合に、荷受対象スラブM1の置かれた状態が基準状態である場合を例示する。
【0071】
(A) 幅方向がy軸方向(クレーン100の走行方向)に平行であり、長さ方向がx軸方向(横行クラブ120の横行方向)に平行であり、厚み方向がz軸方向(高さ方向)に平行である状態で荷受対象スラブM1が置かれている。
(B) 荷受対象スラブM1が所定の形状(直方体および立方体)から変形していない。なお、以下の説明では、荷受対象スラブM1が所定の形状(直方体および立方体)から変形していることを、必要に応じて単に変形と称する。
【0072】
以下に、荷受対象スラブM1の実在位置M1が目標荷受位置A1ではない場合と、荷受対象スラブM1の置かれた状態が基準状態でない場合の一例を説明する。
図5(b)は、荷受対象スラブM1が目標荷受位置A1に対し長さ方向(x軸方向)にずれた位置に置かれている様子の一例を示す。具体的に図5(b)では、荷受対象スラブM1の実在位置D1は、目標荷受位置A1に対して、x軸方向においてずれ量Δxだけずれていることを示す。したがって、荷受対象スラブM1を荷受するために、クレーン100の目標荷受位置A1をx軸方向においてずれ量-Δxだけずらした位置(荷受対象スラブM1の実在位置D1)に、荷受対象スラブM1の目標荷受位置A1を補正し、補正後の目標荷受位置A1'にする必要がある。このようにすれば、図5(b)に示すように目標荷受位置A1に置かれていない荷受対象スラブM1およびクレーン100(吊具130)と、図5(a)に示すように目標荷受位置A1に置かれている荷受対象スラブM1およびクレーン100(吊具130)と、の荷受時における相対的な位置関係を同じにすることが出来るからである。
【0073】
図5(c)は、荷受対象スラブM1が目標荷受位置A1に対し幅方向(y軸方向)にずれた位置に置かれている様子の一例を示す。具体的に図5(c)では、荷受対象スラブM1の実在位置D2は、目標荷受位置A1に対して、y軸方向においてずれ量Δyだけずれていることを示す。したがって、荷受対象スラブM1を荷受するために、目標荷受位置A1をy軸方向においてずれ量-Δyだけずらした位置(スラブM2の実在位置D2)に、クレーン100の目標荷受位置A1を補正し、補正後の目標荷受位置A1'にする必要がある。このようにすれば、図5(c)に示すように目標荷受位置A1に置かれていない荷受対象スラブM1およびクレーン100(吊具130)と、図5(a)に示すように目標荷受位置A1に置かれている荷受対象スラブM1およびクレーン100(吊具130)と、の荷受時における相対的な位置関係を同じにすることが出来るからである。
【0074】
図5(d)は、荷受対象スラブM1がx-y平面において回動し、荷受対象スラブM1の長さ方向および幅方向が図5(a)に示す基準状態とは異なる方向で置かれている様子の一例を示す。図5(d)において、荷受対象スラブM1のx-y平面における回動角度φ'は、荷受対象スラブM1の実在位置D3を通り、且つ、x軸の正の方向を向く仮想線501を始線とし、図5(d)の紙面に向かって時計回りの方向を正の方向とする角度である。図5(d)では、荷受対象スラブM1のx-y平面における回動角度がφ'°(φ'>0)である場合を例示する。なお、以下の説明では、荷受対象スラブM1のx-y平面における回動角度φ'を、必要に応じて荷受対象スラブM1の回動角度φ'と称する。また、x-y平面はz軸に垂直な平面である。この場合、荷受対象スラブM1を荷受するために、図2(b)および図2(c)を参照しながら説明した吊具130の回動角度φを、図5(d)を参照しながら説明した荷受対象スラブM1の回動角度φ'に補正する必要がある。このようにすることにより、図5(d)に示すように基準状態で置かれていない荷受対象スラブM1およびクレーン100(吊具130)と、図5(a)に示すように基準状態で置かれている荷受対象スラブM1およびクレーン100(吊具130)と、の荷受時における相対的な位置関係を同じにすることが出来るからである。
【0075】
図5(e)は、荷受対象スラブM1がx-z平面において回動し、荷受対象スラブM1の長さ方向および厚み方向が図5(a)に示す基準状態とは異なる方向で置かれている様子の一例を示す。なお、x-z平面は、y軸に垂直な平面である。図5(e)において、荷受対象スラブM1がx-z平面における回動角度θ'は、荷受対象スラブM1の実在位置D4を通り、且つ、z軸の負の方向を向く仮想線502を始線とし、図5(e)の紙面に向かって時計回りの方向を正の方向とする角度である。図5(e)では、荷受対象スラブM1のx-z平面における回動角度がθ'°(θ'>0)である場合を例示する。この場合、荷受対象スラブM1を荷受するために、図2(b)および図2(c)を参照しながら説明した吊具130の揺動角度θを、図5(e)を参照しながら説明した荷受対象スラブM1のx-z平面における回動角度θ'に補正する必要がある。このようにすれば、図5(e)に示すように基準状態で置かれていない荷受対象スラブM1およびクレーン100(吊具130)と、図5(a)に示すように基準状態で置かれている荷受対象スラブM1およびクレーン100(吊具130)と、の荷受時における相対的な位置関係を同じにすることが出来るからである。このように荷受対象スラブM1のx-z平面における回動角度θ'は、吊具130の揺動角度θに対応するものであることと、荷受対象スラブM1の回動角度φ'と表記を区別することと、から、以下の説明では、荷受対象スラブM1のx-z平面における回動角度θ'を、必要に応じて荷受対象スラブM1の揺動角度θ'と称する。また、スラブMがx-z平面において回動することを、必要に応じて、スラブMが揺動すると称する。
【0076】
なお、図5(e)では、荷受対象スラブM1がx-z平面において回動し、長さ方向(x軸方向)において傾いた状態で荷受対象スラブM1が置かれている場合を例示する。この他、荷受対象スラブM1がx-z平面において回動し、幅方向(y軸方向)において傾いた状態で荷受対象スラブM1が置かれている場合もある。この場合の荷受対象スラブM1の状態は、図5(e)に示すx-y-z座標のx軸とy軸とを入れ替えた状態であり、図5(e)を参照しながら説明したのと同様にして荷受対象スラブM1の揺動角度θ'は算出される。したがって、この場合の荷受対象スラブM1の揺動角度θ'の詳細な説明を省略する。なお、荷受対象スラブM1の揺動方向(荷受対象スラブM1が始線(仮想線502)に対し左方向および右方向のうちのいずれの方向に揺動しているか)は、例えば、スラブMの表面形状の検知結果に基づいて、荷受対象スラブM1が傾いている方向を特定することにより特定される。
また、以上の図5を参照しながら説明した状態の少なくとも2つが同時に生じる場合もある。
【0077】
また、荷受対象スラブM1の表面が変形している場合がある。図6は、表面が変形している荷受対象スラブM1の一例を示す図である。ここでは、図6では、荷受対象スラブM1の表面が反っている場合を例示する。また、図6では、説明および表記の都合上、荷受対象スラブM1の表面に生じている反りを誇張して示す。
図6(a)および図6(b)において二点鎖線で示す四角形は、表面が変形していないと仮定した場合の荷受対象スラブM1を示す。
【0078】
図6(a)では、表面が変形していないと仮定した場合に比べ、荷受対象スラブM1の表面が上側(z軸の正の方向側)に反っている場合を例示する。図6(a)に示す例では、目標荷受位置A1(のz座標)で荷受対象スラブM1を吊具130により挟持すると、荷受対象スラブM1の長さ方向(x軸方向)の側面の下側の位置に爪部137a~137bが当接する。したがって、荷受対象スラブM1の保持に支障をきたす虞がある。そこで、z座標が大きくなる(高さ位置が高くなる)ように目標荷受位置A1を補正して補正後の目標荷受位置A1'にする必要がある。例えば、荷受対象スラブM1の長さ方向(x軸方向)の側面の中心の位置に爪部137a~137bが当接するように、目標荷受位置A1のz座標を補正する。このようにすれば、荷受対象スラブM1を安定して保持することが出来る。図6(a)では、目標荷受位置A1のz座標と、補正後の目標荷受位置A1'のz座標とのずれ量をΔz(>0)と表記する。
【0079】
図6(b)では、表面が変形していないと仮定した場合に比べ、荷受対象スラブM1の表面が下側(z軸の負の方向側)に反っている場合を例示する。図6(b)に示す例では、目標荷受位置A1(のz座標)で荷受対象スラブM1を吊具130により挟持すると、荷受対象スラブM1の長さ方向(x軸方向)の側面の上側の位置に爪部137a~137bが当接する。したがって、荷受対象スラブM1の保持に支障をきたす虞がある。そこで、z座標が小さくなる(高さ位置が低くなる)ように目標荷受位置A1を補正して補正後の目標荷受位置A1'にする必要がある。例えば、荷受対象スラブM1の長さ方向(x軸方向)の側面の中心の位置に爪部137a~137bが当接するように、目標荷受位置A1のz座標を補正する。このようにすれば、荷受対象スラブM1を安定して保持することが出来る。図6(b)では、目標荷受位置A1のz座標と、補正後の目標荷受位置A1'のz座標とのずれ量を-Δz(<0)と表記する。
【0080】
また、本実施形態のように、貨車160に積まれた状態でスラブMがスラブヤードに置かれると、貨車160が目標停止位置からずれた位置に停止する場合がある。また、スラブMが貨車160に正しく積まれない場合がある。図7は、貨車160に積まれた荷受対象スラブM1が置かれている様子の一例を示す図である。図7では、荷受対象スラブM1が目標荷受位置A1に対し長さ方向(x軸方向)にずれた位置に置かれる場合を例示する。
【0081】
図7の上図は、荷受対象スラブM1が目標姿勢の状態で置かれている様子の一例を示す。本実施形態では、荷受対象スラブM1が目標姿勢の状態で置かれる場合、荷受対象スラブM1の実在位置D5のx座標およびy座標(x-y平面における位置)が、貨車160の実在位置C1のx座標およびy座標になり、貨車160の実在位置C1が、貨車160の目標停止位置A3になる場合を例示する。貨車160の目標停止位置A3は、目標荷受位置A1に対応する貨車160の停車位置である。具体的に、貨車160の目標停止位置A3は、目標荷受位置A1とx座標およびy座標が同じであり、z座標が貨車160の所定の箇所のz座標である位置である。この状態で荷受対象スラブM1が貨車160に正しく積まれていれば、荷受対象スラブM1の実在位置D5は、目標荷受位置A1になる。
【0082】
一方、図7の下図では、貨車160の実在位置C2が、貨車160の目標停止位置A3に対しx軸方向にずれ量Δx1だけずれた位置にあり、且つ、荷受対象スラブM1の実在位置D6のx座標が貨車160の実在位置C2のx座標に対しずれ量Δx2だけずれた位置にある状態を示す。この場合、荷受対象スラブM1の実在位置D6は、目標荷受位置A1に対して、ずれ量Δx1、Δx2を加算したずれ量Δxだけx軸方向においてずれることになる。
【0083】
したがって、仮に、荷受対象スラブM1の実在位置のx座標が貨車160の実在位置C2のx座標と同じであっても、荷受対象スラブM1の実在位置は、目標荷受位置A1に対して、x軸方向においてずれ量Δx1だけずれた位置になる。また、仮に、貨車160の実在位置のx座標が貨車160の目標停止位置A3のx座標と同じであっても、荷受対象スラブM1の実在位置は、目標荷受位置A1に対して、x軸方向においてずれ量Δx2だけずれた位置になる。
【0084】
以上のように貨車160に積まれた状態でスラブMがスラブヤードに置かれると、スラブMの実在位置および置かれた状態だけでなく、貨車160の実在位置も、荷受対象スラブM1の実在位置D1が目標荷受位置A1からずれる要因、および荷受対象スラブM1の置かれた状態が基準状態からずれる要因になる。したがって、荷受対象スラブM1の実在位置D1が目標荷受位置A1からずれ易くなると共に、荷受対象スラブM1の置かれた状態が基準状態からずれ易くなる。本実施形態では、スラブMが貨車160に積まれた状態で置かれる場合を例示する。しかしながら、スラブMは必ずしも貨車160に積まれた状態で置かれていなくても良い。例えば、スラブMは地面に置かれても良い。
【0085】
[クレーン用コンピュータ150]
<概要>
図5図7を参照しながら説明したように、荷受対象スラブM1の実在位置D1が目標荷受位置A1でない場合と、荷受対象スラブM1の置かれた状態が基準状態になっていない場合と、のうち、少なくとも一方である場合にクレーン100の目標荷受位置A1を補正することと、吊具130の姿勢(回動角度φおよび揺動角度θ)を補正することと、のうち、少なくとも一方を行う。このような補正を行うための補正量をクレーン100が目標停止位置A2に到達してから算出すると、荷受作業の時間が長くなる。そこで、本実施形態では、クレーン用コンピュータ150は、荷受対象スラブM1の実在位置と、荷受対象スラブM1の置かれた状態と、のうちの少なくとも一方に基づいて、クレーン100の目標荷受位置と、クレーン100(吊具130)の目標姿勢の状態と、のうちの少なくとも一方に対する補正量を、クレーン100が目標荷受位置A1(目標停止位置A2)に到達する前に算出する。なお、図5(b)、図5(c)、図5(d)、図5(e)、図6(a)、図6(b)、図7に示す例では、補正量は、それぞれ、-Δx(mm)、-Δy(mm)、-φ'(°)、-θ'(°)、-Δz(mm)、Δz(mm)、-Δx(=-Δx1-Δx2)(mm)になる。
【0086】
まず、図8を参照しながら、クレーン用コンピュータ150が行う機能の概要の一例を説明する。図8では、荷受対象スラブM1の実在位置D7が、クレーン100の目標荷受位置A1に対しx軸方向にずれた位置にある場合を例示する。なお、図8では、説明に必要な構成のみを必要に応じて簡略化して示す。
【0087】
クレーン用コンピュータ150は、目標荷受位置A1(目標停止位置A2)に向かってクレーン100を移動させる。図8(a)は、このときのクレーン100および荷受対象スラブM1の位置関係の一例を示す。図8(a)~図8(c)において下向き(y軸の負の方向)に向かう白抜き矢印線は、クレーン100が走行する方向を示す。また、図8(a)~図8(d)において二点鎖線で示す四角形は、目標荷受位置A1にあると仮定した場合の荷受対象スラブM1を示す。
【0088】
ここで、クレーン100の目標停止位置A2は、目標荷受位置A1に対応するクレーン100の位置である。クレーン100の目標停止位置A2は、x座標およびy座標が目標荷受位置A1と同じになる可変値であり、z座標がクレーン100の所定の箇所のz座標で固定値になる位置である(図1A図1Cに示す目標停止位置A2も参照)。クレーン100の所定の箇所のx座標およびy座標が、目標停止位置A2になるようにクレーン100は移動する。クレーン100の所定の箇所は、例えば吊具130の索条131である。
【0089】
その後、物体検知用センサ140aは、荷受対象スラブM1の物体特定情報(荷受対象スラブM1の実在位置および表面形状)を検知する。図8(b)は、このときのクレーン100および荷受対象スラブM1の位置関係の一例を示す。クレーン用コンピュータ150は、荷受対象スラブM1の物体特定情報(荷受対象スラブM1の実在位置および表面形状)に基づいて、目標荷受位置A1に対する補正量と、クレーン100(吊具130)の目標姿勢の状態に対する補正量と、を算出する。
【0090】
クレーン用コンピュータ150は、目標荷受位置A1に対する補正量が0(零)でない場合、当該補正量だけ目標荷受位置A1を補正する。図8(c)では、補正後の目標荷受位置がA1'であり、補正後の目標荷受位置A1'に対応する補正後の目標停止位置がA2'であることを示す。補正後の目標荷受位置A1'は、荷受対象スラブM1の実在位置D7と同じであり、補正後の目標停止位置A2'は、補正後の目標荷受位置A1'および実在位置D7に対応する位置である(補正後の目標停止位置A2'のx座標、y座標は、補正後の目標荷受位置A1'および実在位置D7のx座標、y座標と同じである)。そして、クレーン用コンピュータ150は、補正後の目標荷受位置A1'(目標停止位置A2')に向けてクレーン100(横行クラブ120)を移動させる。図8(c)において左向き(x軸の負の方向)に向かう白抜き矢印線は、横行クラブ120が横行する方向を示す。
【0091】
また、クレーン用コンピュータ150は、クレーン100(吊具130)の目標姿勢に対する補正量が0(零)でない場合、当該補正量だけクレーン100(吊具130)の姿勢(回動角度φおよび揺動角度θ)を補正する。図8(c)では、クレーン100(吊具130)の目標姿勢に対する補正量は0(零)であるものとする。
図8(c)に示す時点では、クレーン100の所定の箇所(例えば吊具130の索条131の位置)は目標停止位置A2に到達していない。
【0092】
その後、クレーン100の所定の箇所(例えば吊具130の索条131の位置)が補正後の目標停止位置A2'に到達すると、クレーン用コンピュータ150は、荷受対象スラブM1の吊り上げをクレーン100に対して指示する。目標荷受位置A1のz座標が補正されている場合、クレーン用コンピュータ150は、補正後の目標荷受位置A1'まで吊具130(爪部137a~137b)を下ろすことを指示する。また、クレーン用コンピュータ150は、クレーン100(吊具130)の状態(回動角度φおよび揺動角度θ)を補正した場合、荷受対象スラブM1の側面を爪部137a~137bで挟持した後、荷受対象スラブM1の吊り上げを開始する前に、吊具130の状態を図2(a)に示す目標姿勢に戻すことを指示する。荷受対象スラブM1が吊り上げられているときの吊具130は目標姿勢になる。なお、本実施形態では、荷受対象スラブM1の吊り上げを行う際に目標荷受位置A1のz座標が補正される場合を例示する。しかしながら、クレーン100が目標停止位置A2または補正後の目標停止位置A2'に到達する前にずれ量Δzだけ、索条131の巻き上げまたは巻き下げを行って、索条131の先端のz軸方向の位置を変更しておいても良い。
【0093】
<各部の機能>
図9は、本実施形態のクレーン用コンピュータ150の機能的な構成の一例を示す図である。クレーン用コンピュータ150のハードウェアは、例えば、CPU(Central Processing Unit)など一またはそれ以上の数のハードウェアプロセッサ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)など一またはそれ以上の数のメモリを有し、メモリに格納される一またはそれ以上の数のプログラムが一またはそれ以上の数のハードウェアプロセッサにより実行されることで各種の演算を実行する。さらに、クレーン用コンピュータ150のハードウェアは、入力装置、および出力装置を有する。
また、クレーン用コンピュータ150のハードウェアは、PLC(Programmable Logic Controller)により実現されても良いし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用のハードウェアにより実現されても良い。なお、クレーン用コンピュータ150と外部との通信は、有線通信であっても無線通信であっても良い。
【0094】
前述したようにクレーン用コンピュータ150は、クレーン100の自動運転として、スラブMが置かれている位置への移動と、スラブMの吊り上げと、スラブMの搬送と、スラブの荷下ろしと、の各動作を実行する。クレーン用コンピュータ150が行うクレーン100の自動運転のうち、スラブMの吊り上げが終了した後の動作は公知の技術で実現することが出来る。したがって、本実施形態では、クレーン用コンピュータ150が行うクレーン100の自動運転のうち、スラブMが置かれている位置への移動と、スラブMの吊り上げと、を行う際のクレーン用コンピュータ150の機能の一例を説明する。
【0095】
<取得部910>
取得部910は、クレーン用コンピュータ150がクレーン100を自動運転するために必要な情報を取得する。
【0096】
取得部910は、上位コンピュータ900で生成された荷受指示情報を取得する。取得部910は、例えば、上位コンピュータ900から送信された荷受指示情報を受信することにより荷受指示情報を取得する。
荷受指示情報には、例えば、指示時刻と、指示Noと、荷受枚数と、スラブNoと、サイズと、目標荷受位置と、荷下位置が含まれる。
【0097】
指示時刻は、上位コンピュータ900が当該荷受指示時刻を含む荷受指示情報を作成した時刻である。
指示Noは、荷受指示情報を一意に識別するための情報である。
【0098】
荷受枚数は、荷受対象スラブの数である。本実施形態では、荷受対象スラブが、荷役装置により荷役される対象の荷役対象物体の一例である。前述したように本実施形態では、クレーン100が一度に搬送するスラブMの数が1つである場合を例示する。したがって、荷受枚数は「1」である。
【0099】
サイズは、荷受対象スラブのサイズに関する情報であり、例えば、荷受対象スラブの長さ(長手方向の長さ(以下同じ))、幅、厚み、および重量を含む。
【0100】
前述したように目標荷受位置は、クレーン100(吊具130)が荷受対象スラブを挟持する位置として予め決められている位置である。なお、荷受対象スラブが2つ以上である場合、採用される目標荷受位置は、当該2つ以上の荷受対象スラブのいずれか1つの荷受対象スラブをクレーン100が挟持する位置として予め決められている位置である。図2に示す例では、スラブMの側面が爪部137a~137bで挟持された状態でスラブMが吊り上げられる。したがって、2つ以上の荷受対象スラブのうち最も下にある荷受対象スラブをクレーン100が挟持する位置として予め決められている位置が目標荷受位置として採用される。なお、目標荷受位置を含む各位置は、例えば直交三次元座標(x、y、z座標)で表される。
【0101】
なお、目標荷受位置には、荷受対象スラブが置かれている置場の番地の情報が含まれていても良い。スラブヤードにおいて置場は、クレーン100の横行方向(x軸方向)および走行方向(y軸方向)のそれぞれの方向で区画されている。番地の情報には、例えば、置場において、x軸方向を特定する情報であるx番地と、y軸方向の位置を特定する情報であるy番地と、荷受対象スラブの積み位置を特定する情報であるz番地と、が含まれる。z番地は、例えば、荷受対象スラブが上から何番目に積まれているかを示す数値で表される。
【0102】
荷下位置は、荷受対象スラブを荷下ろす位置として予め決められている位置である。荷下位置は、例えば直交三次元座標(x、y、z座標)で表される。目標荷受位置と同様に荷下位置には、荷受対象スラブが荷下ろしされる置場の番地の情報(x番地、y番地、z番地)が含まれていても良い。
【0103】
また、取得部910は、走行位置検知用センサ114、横行位置検知用センサ121、物体検知用センサ140a~140b、および運搬装置検知用センサ170の検知信号を取得する。取得部910は、例えば、走行位置検知用センサ114、横行位置検知用センサ121、物体検知用センサ140a~140b、および運搬装置検知用センサ170から送信された検知信号を受信することにより検知信号を取得する。
【0104】
前述したように本実施形態では、走行位置検知用センサ114の検知信号には、クレーン100の走行方向の実在位置を示す情報が含まれる。横行位置検知用センサ121の検知信号には、横行クラブ120の横行方向の実在位置を示す情報が含まれる。物体検知用センサ140a~140bの検知信号には、荷受対象スラブM1の実在位置および表面形状の検知結果を示す情報が含まれる。運搬装置検知用センサ170の検知信号には、貨車160の実在位置を示す情報が含まれる。なお、[クレーン設備]の欄で前述したように、クレーン100の走行方向の実在位置、クレーン100の横行方向の実在位置、荷受対象スラブM1の実在位置および表面形状、および貨車160の実在位置は、クレーン用コンピュータ150で算出されても良い。本実施形態では、物体検知用センサ140a~140bの検知信号に含まれる荷受対象スラブM1の実在位置が、荷役対象物体の実在位置を示す情報の一例である。また、物体検知用センサ140a~140bの検知信号に含まれる荷受対象スラブM1の表面形状が荷役対象物体の置かれた状態を示す情報の一例である。
【0105】
また、取得部910は、吊具130の目標姿勢の状態を示す情報(目標姿勢情報)を取得する。本実施形態では、吊具130の回動角度φおよび揺動角度θが0°である場合を例示する。本実施形態では、取得部910が、上位コンピュータ900から吊具130の目標姿勢の状態を示す情報(目標姿勢情報)を取得する場合を例示する。しかしながら、吊具130の目標姿勢の状態を示す情報(目標姿勢情報)の取得形態はこのような形態に限定されない。例えば吊具130の目標姿勢の状態を示す情報(目標姿勢情報)は、クレーン用コンピュータ150に対するオペレータの入力操作により入力されても良い。
【0106】
<受取位置変更部920>
図7において、貨車160の実在位置C2が、貨車160の目標停止位置A3からずれている場合、このずれ量だけずらした位置を、目標荷受位置A1''とすれば、目標荷受位置A1に対する補正量を小さくすることが出来るので、補正に要する時間を短縮することが出来る。図7に示す例では、目標荷受位置A1に対するx軸方向のずれ量はΔxである。一方、目標荷受位置A1''に対するx軸方向のずれ量はΔx2である。そこで、受取位置変更部920は、目標荷受位置A1を、貨車160の目標停止位置A3に対する実在位置C2のずれ量だけ、目標荷受位置A1よりも貨車160の実在位置C2側にずらした位置に変更する。図7に示す例では、受取位置変更部920は、目標荷受位置A1のx座標を、ずれ量Δx1だけ、x軸の正の方向にずらした位置が変更後の目標荷受位置A1''になる。図7では、目標荷受位置がA1からA1''に変更されることを、A1とA1''との間に示す矢印線で表す。
【0107】
なお、以下の説明では、目標荷受位置A1ではなく、変更後の目標荷受位置A1''を補正する場合を例示する。しかしながら、変更後の目標荷受位置A1''に代えて目標荷受位置A1を補正しても良い。なお、荷受対象スラブM1が貨車160に置かれていない場合には、変更後の目標荷受位置A1''は算出されず、目標荷受位置A1が補正される。また、取得部910は、変更後の目標荷受位置A1''を取得しても良い。これらの場合、受取位置変更部920は不要になる。また、以下の説明では、変更後の目標荷受位置A1''を、必要に応じて、補正前のクレーン100の目標荷受位置A1''、または、単に補正前の目標荷受位置A1''と称する。また、補正前の目標荷受位置A1''に対応する目標停止位置を補正前の目標停止位置A2''とする。また、図5および図8に示した補正後の目標荷受位置A1'は、取得部910により取得された荷受指示情報に含まれる目標荷受位置A1に対する補正後の目標荷受位置であり、図8に示した補正後の目標停止位置A2'は、目標荷受位置A1に対応する補正後の目標停止位置であるが、以下の説明では、補正前の目標荷受位置A1''に対する補正後の目標荷受位置、補正後の目標停止位置についても必要に応じてA1'、A2'と表記する。
【0108】
<補正量算出部930>
補正量算出部930は、荷受対象スラブM1の実在位置と、荷受対象スラブM1の置かれた状態と、のうちの少なくとも一方に基づいて、補正前の目標荷受位置A1''と、クレーン100(吊具130)の目標姿勢と、のうちの少なくとも一方に対する補正量を、クレーン100が目標荷受位置A1(目標停止位置A2)に到達する前に算出する。本実施形態では、荷受対象スラブM1の実在位置が、荷受対象スラブM1の所定の箇所の位置(例えば重心の直交三次元座標)で表される場合を例示する。また、本実施形態では、荷受対象スラブM1の置かれた状態が、図4に示すような荷受対象スラブM1を含むスラブMの表面形状の検知結果で表される場合を例示する。
【0109】
<<補正前の目標荷受位置A1''に対する補正>>
本実施形態では、補正前の目標荷受位置A1''に対する補正量は、補正前の目標荷受位置A1''に対するx軸方向、y軸方向、およびz軸方向のずれ量Δx、Δy、Δzである(図5(b)、図5(c)、図6(a)、図6(b)、および図7を参照)。
【0110】
補正量算出部930は、例えば、荷受対象スラブM1の実在位置および補正前のクレーン100の目標荷受位置A1''を比較することにより、ずれ量Δx、Δyを算出する。また、補正量算出部930は、スラブMの表面形状の検知結果から、荷受対象スラブM1の実在位置を算出し、算出した荷受対象スラブM1の実在位置および補正前のクレーン100の目標荷受位置A1''を比較することにより、ずれ量Δx、Δyを算出しても良い。このようにする場合、荷受対象スラブM1の実在位置は、物体検知用センサ140a~140bの検知信号に含まれていなくても良い。
【0111】
補正量算出部930は、ずれ量Δzを算出するに際し、スラブMの表面形状の検知結果に基づいて、荷受対象スラブM1が、荷受が出来る形状であるか否かを判定する。図10は、荷受対象スラブM1が、荷受が出来る形状であるか否かを判定する手法の一例を説明する図である。
図10(a)は、図6(a)に示すように荷受対象スラブM1の表面が上側(z軸の正の方向側)に反っている場合のスラブMの表面形状の検知結果1001の一例を示す図である。図10(b)は、図6(b)に示すように荷受対象スラブM1の表面が下側(z軸の負の方向側)に反っている場合のスラブMの表面形状の検知結果1002の一例を示す図である。
【0112】
この場合、図10(a)~図10(b)に示すように、補正量算出部930は、例えば、クレーン100の目標荷受位置A1および荷受対象スラブM1のサイズに基づいて、スラブMの表面形状の検知結果1001~1002から、荷受対象スラブM1の表面形状の検知結果1001a~1002aを抽出する。なお、図10(a)~図10(b)では、スラブMの表面形状の検知結果1001~1002から抽出される荷受対象スラブM1の表面形状の検知結果1001a~1002aをグレーで示す。
【0113】
補正量算出部930は、荷受対象スラブM1の表面形状の検知結果1001a~1002aから、荷受対象スラブM1のz軸方向の変形量Δhを算出する。荷受対象スラブM1のz軸方向の変形量Δhは、例えば、荷受対象スラブM1のx軸方向の端の位置のz座標と、荷受対象スラブM1のx軸方向の端よりも中央寄りの位置のz座標と、の差の絶対値の最大値である。補正量算出部930は、変形量Δhが閾値を上回る場合に、荷受対象スラブM1の表面が変形しているため、荷受対象スラブM1が、荷受が出来る形状でないと判定し、そうでいない場合に、荷受対象スラブM1が、荷受が出来る形状であると判定する。
【0114】
補正量算出部930は、荷受対象スラブM1が、荷受が出来る形状である場合、荷受対象スラブM1のサイズと、荷受対象スラブM1の表面形状の検知結果1001a~1002aとに基づいて、ずれ量Δzを算出する。補正量算出部930は、例えば、荷受対象スラブM1の長さ方向(x軸方向)の側面の中心の位置のz座標を、補正前の目標荷受位置A1''のz座標から減算した値を、ずれ量Δzとして算出する。
【0115】
図10(c)は、荷受対象スラブM1が、荷受が出来る形状でない場合のスラブMの表面形状の検知結果1003の一例を示す図である。
図10(c)において、図10(a)~図10(b)を参照しながら説明したように、補正量算出部930は、スラブMの表面形状の検知結果1003から、荷受対象スラブM1の表面形状の検知結果1003aを抽出する。なお、図10(c)においても、スラブMの表面形状の検知結果1003から抽出される荷受対象スラブM1の表面形状の検知結果1003aをグレーで示す。
【0116】
補正量算出部930は、荷受対象スラブM1の表面形状の検知結果1003aにおいて、荷受対象スラブM1のz軸方向の変形量Δhが定まる位置のx座標xpと、荷受対象スラブM1のx軸方向の中央の位置のx座標xcと、の差の絶対値が閾値以上である場合、荷受対象スラブM1が、荷受が出来る形状でないと判定し、そうでない場合、荷受対象スラブM1が、荷受が出来る形状であると判定する。また、補正量算出部930は、荷受対象スラブM1のz軸方向の変形量Δhが閾値を上回る場合、その上回り量を算出し、当該上回り量が閾値を上回る場合、荷受対象スラブM1が、荷受が出来る形状でないと判定し、そうでない場合、荷受対象スラブM1が、荷受が出来る形状であると判定する。また、補正量算出部930は、荷受対象スラブM1のx軸方向の端の位置のz座標の差の絶対値が閾値を上回る場合、荷受対象スラブM1が、荷受が出来る形状でないと判定し、そうでない場合、荷受対象スラブM1が、荷受が出来る形状であると判定する。
【0117】
補正量算出部930は、荷受対象スラブM1が、荷受が出来る形状でないと判定した場合、ずれ量Δzの算出を行わず、荷受対象スラブM1の荷受が出来ないことを示す荷受不可情報情報を後述する動作指示部940および報知部950に出力する。この場合、動作指示部940の処理は停止する。報知部950は、荷受対象スラブM1の荷受が出来ないことを示す情報を出力してオペレータに報知する。例えば、報知部950は、荷受不可情報情報をコンピュータディスプレイに表示することと、荷受対象スラブM1の荷受が出来ないことを示す警報音を発生することと、荷受対象スラブM1の荷受が出来ないことを示す警報ランプを点灯させることと、のうち、少なくとも1つを行う。
【0118】
<<クレーン100(吊具130)の目標姿勢に対する補正>>
図5(d)および図5(e)を参照しながら説明したように、本実施形態では、吊具130の回動角度φおよび揺動角度θを、荷受対象スラブM1の回動角度φ'および揺動角度θ'に補正する場合を例示する。また、本実施形態では、クレーン100(吊具130)の目標姿勢に対する補正量が、荷受対象スラブM1の回動角度φ'および揺動角度θ'である場合を例示する。よって、補正量算出部930は、荷受対象スラブM1の実在位置と、スラブMの表面形状の検知結果と、に基づいて、荷受対象スラブM1の回動角度φ'および揺動角度θ'を算出する。
【0119】
まず、荷受対象スラブM1の揺動角度θ'の算出方法の一例を説明する。
図11は、荷受対象スラブM1、M2が、長さ方向(x軸方向)において傾いた状態で置かれている場合の荷受対象スラブM1の表面形状の検知結果1101~1103の一例を示す図である。図11では、荷受対象スラブM1、M2のx軸の正の方向側の端部が負の方向側の端部よりも上側(z軸の正の方向側)になるように荷受対象スラブM1、M2が傾いて置かれている場合を例示する。
図11(a)は、図3に示す走査範囲301a、301bにおいてレーザ光Lが1回走査された場合のスラブM1~M2の表面形状の検知結果1101の一例を示す図である。図11(b)は、図3に示す走査範囲302a、302bにおいてレーザ光Lが1回走査された場合のスラブM1~M2の表面形状の検知結果1102の一例を示す図である。図11(c)は、図3に示す走査範囲303においてレーザ光Lが1回走査された場合のスラブM1~M2の表面形状の検知結果1103の一例を示す図である。
【0120】
図12は、荷受対象スラブM1、M2が、幅方向(y軸方向)において傾いた状態で置かれている場合の荷受対象スラブM1の表面形状の検知結果1201~1203の一例を示す図である。図12では、荷受対象スラブM1、M2のy軸の正の方向側(紙面の奥側)の端部が負の方向側の端部よりも上側(z軸の正の方向側)になるように荷受対象スラブM1、M2が傾いて置かれている場合を例示する。
【0121】
図12(a)は、図3に示す走査範囲301a、301bにおいてレーザ光Lが1回走査された場合のスラブM1~M2の表面形状の検知結果1201の一例を示す図である。図12(b)は、図3に示す走査範囲302aにおいてレーザ光Lが1回走査された場合のスラブM1~M2の表面形状の検知結果1202の一例を示す図である(走査範囲302aにおける検知結果は、y軸方向の位置によって変わる)。図12(c)は、図3に示す走査範囲303においてレーザ光Lが1回走査された場合のスラブM1~M2の表面形状の検知結果1203の一例を示す図である(走査範囲303における検知結果は、y軸方向の位置によって変わる)。図12(d)は、図3に示す走査範囲302bにおいてレーザ光Lが1回走査された場合のスラブM1~M2の表面形状の検知結果1204の一例を示す図である(走査範囲302bにおける検知結果は、y軸方向の位置によって変わる)。なお、図12に示す例では、荷受対象スラブM1、M2のy軸の正の方向側(紙面の奥側)の端部が負の方向側の端部よりも上側(z軸の正の方向側)になるように荷受対象スラブM1、M2が傾いて置かれているため、図12(d)の検知結果1204は、図12(b)の検知結果1202よりもz軸方向において低い位置(負の方向側)で表面形状が検出されている。
【0122】
図4を参照しながら説明したように、スラブMの表面形状の検知結果1101~1103、1201~1203から、x軸方向、y軸方向、およびz軸方向のそれぞれの方向から見た場合のスラブMの表面形状が検知される。補正量算出部930は、x軸方向、y軸方向、およびz軸方向のそれぞれの方向から見た場合のスラブMの表面形状に基づいて、荷受対象スラブM1の揺動角度θ'と、荷受対象スラブM1の揺動方向と、を算出する。
【0123】
補正量算出部930は、例えば、荷受対象スラブM1の揺動角度θ'の絶対値が閾値を上回る場合、荷受対象スラブM1は揺動していると判定し、そうでない場合、荷受対象スラブM1は揺動していないと判定する。補正量算出部930は、荷受対象スラブM1が揺動していないと判定した場合、荷受対象スラブM1の揺動角度θ'を0(零)にする。
【0124】
次に、荷受対象スラブM1の回動角度φ'の算出方法の一例を説明する。
図13は、荷受対象スラブM1の回動角度φ'の算出方法の一例を説明する図である。図13は、z軸方向から見た場合の荷受対象スラブM1の表面形状の検知結果の一例を示す。図13では、図13の1つの四角形に対し1つの座標値(x座標、y座標、z座標)が算出され、当該1つの四角形の単位で、z軸方向から見た場合の荷受対象スラブM1が検知される場合を例示する。図13において、荷受対象スラブM1の領域をグレーで示し、荷受対象スラブM1の下にあるスラブM2の領域を白で示す。
【0125】
補正量算出部930は、例えば、荷受対象スラブM1のサイズと、クレーン100の目標荷受位置A1と、スラブMの表面形状の検知結果と、に基づいて、z軸方向から見た場合の荷受対象スラブM1の表面形状を算出する。図13において、荷受対象スラブM1の領域をグレーで示し、荷受対象スラブM1の下にあるスラブM2の領域を白で示す。
【0126】
図13においてグレーで示す領域のように、物体検知用センサ140a~140bの測定精度等によって、スラブMの表面形状の検知結果から算出されるz軸方向から見た場合の荷受対象スラブM1の表面形状が、荷受対象スラブM1の本来の形状である四角形にならない場合がある。そこで、補正量算出部930は、スラブMの表面形状の検知結果から算出されるz軸方向から見た場合の荷受対象スラブM1の表面形状の外接矩形1301を算出する。この場合、例えば、外接矩形1301の重心を通り、且つ、x軸の正の方向を向く仮想線を始線とし、図13の紙面に向かって時計回りの方向を正の方向とした場合の外接矩形1301の回動角度が、荷受対象スラブM1の回動角度φ'になる。図13では、外接矩形1301の回動角度が、-φ'°である場合を例示する(x-y-z座標および外接矩形1301に対して示す-φ'の表記を参照)。
【0127】
例えば、補正量算出部930は、x軸の正の方向を右側としy軸の正の方向を上側として外接矩形1301を見た場合に、外接矩形1301の左下の頂点1302からx軸の正の方向に延びる仮想線1303と、外接矩形1301の左下の頂点1302から右下の頂点1304に向かう仮想線1305と、のなす角度のうち小さい方の角度を、外接矩形1301の回動角度φ'の絶対値とする。補正量算出部930は、仮想線1303が仮想線1305よりも上側にある場合、外接矩形1301の回動角度φ'の符号を負(-)とする。補正量算出部930は、このようにして符号を定めた外接矩形1301の回動角度φ'を荷受対象スラブM1の回動角度φ'とする。
【0128】
補正量算出部930は、例えば、荷受対象スラブM1の回動角度φ'の絶対値が閾値を上回る場合、荷受対象スラブM1はx-y平面において回動していると判定し、そうでない場合、荷受対象スラブM1はx-y平面において回動していないと判定する。補正量算出部930は、荷受対象スラブM1がx-y平面において回動していないと判定していないと判定した場合、荷受対象スラブM1の回動角度φ'を0(零)にする。
【0129】
なお、荷受対象スラブM1がx-y平面において回動しているか否かを判定する手法は、このような方法に限定されない。例えば、補正量算出部930は、外接矩形1301のx軸方向の長さをy軸方向の各位置で算出する。補正量算出部930は、このようにして算出したx軸方向の長さの全てが、所定値または所定の範囲内である場合に、荷受対象スラブM1はx-y平面において回動していると判定し、そうでない場合、荷受対象スラブM1はx-y平面において回動していないと判定する。所定値は、例えば、荷受対象スラブM1のサイズから特定される荷受対象スラブMの長さ(x軸方向の長さ)である。また、所定の範囲は、例えば、荷受対象スラブM1のサイズから特定される荷受対象スラブMの長さを含む範囲である。y軸方向の各位置は、例えば、スラブMの表面形状の検知結果が得られているy軸方向の位置である。図13では、物体検知用センサ140a~140bにおいてレーザ光Lが走査される位置を矢印線1306で示す。矢印線1306で示す位置で、図4図10図13に示すスラブMの表面形状の検知結果401~403、1101~1103、1201~1203、1301~1303が得られる。したがって、矢印線1306のy座標が、前述したy軸方向の各位置になる。前述したように本実施形態では、物体検知用センサ140a~140bは、レーザ変位計を備える場合を例示する。また、本実施形態では、物体検知用センサ140a~140bがレーザ光Lの走査を1回行うと、図13においてx軸方向に一列に並ぶ複数の四角形の各位置で、レーザ変位計から物体の各位置(レーザ光の照射位置)までの距離と、レーザ変位計(投光部および受光部)から物体の各位置(レーザ光の照射位置)に向かう方向と、が算出される場合を例示する。
【0130】
<動作指示部940>
動作指示部940は、クレーン100の動作を指示する。本実施形態では、動作指示部940は、取得部910で取得された荷受指示情報に基づいて、クレーン100の動作内容を示す動作指示情報を生成してクレーン100に出力する。クレーン100(不図示の走行装置、横行装置、および駆動装置)は、動作指示情報に従った動作を行う。動作指示情報には、例えば、クレーン本体110、横行クラブ120、および吊具130の動作内容が含まれる。
【0131】
補正量算出部930により補正量が算出されていない場合、動作指示部940は、受取位置変更部920により算出された補正前の目標荷受位置A1''(補正前の目標停止位置A2'')に向かって、クレーン本体110の走行と、横行クラブ120の横行と、を行うことを含む動作指示情報を生成する。また、補正量算出部930により補正量が算出されていない場合、動作指示部940は、吊具130の姿勢を目標姿勢にすることを含む動作指示情報を生成する。本実施形態では、動作指示部940は、補正量算出部930により補正量が算出される前に、取得部910で取得された荷受指示情報に基づく動作指示情報を生成する。したがって、クレーン100は、補正量算出部930により補正量を算出する処理が開始される前に、補正前の目標荷受位置A1''に対応する目標停止位置A2''に向かって移動を開始する。
【0132】
その後、補正量算出部930により、補正前の目標荷受位置A1''に対する補正量として0(零)でない補正量が算出され、補正後の目標荷受位置A1'が算出された場合、動作指示部940は、補正後の目標荷受位置A1'に対応する補正後の目標停止位置A2'に向かって、クレーン本体110の走行と、横行クラブ120の横行と、を行うことを含む動作指示情報を生成する。
【0133】
また、補正量算出部930により、クレーン100(吊具130)の目標姿勢に対する補正量(荷受対象スラブM1の回動角度φ'および揺動角度θ')として0(零)でない補正量が算出された場合、動作指示部940は、吊具130の回動角度φ、揺動角度θを、それぞれ、荷受対象スラブM1の回動角度φ'、揺動角度θ'にすることを含む動作指示情報を生成する。その後、荷受対象スラブM1の側面が爪部137a~137bで挟持されて荷受対象スラブM1の吊り上げを開始することが出来る状態になった後、荷受対象スラブM1の吊り上げを開始する前に、吊具130の姿勢を目標姿勢にすることを含む動作指示情報を生成する。
【0134】
なお、荷受対象スラブM1の側面が爪部137a~137bで挟持されて荷受対象スラブM1の吊り上げを開始することが出来るか否かの判定は、例えば、クレーン100(吊具130)の作業実績情報を用いることにより行われる。この判定は、例えば、吊具130を駆動する不図示の駆動装置が備えるモータのトルクに基づいて行われる。この判定は、爪部137a~137bに生じる圧力を検知する不図示のセンサの検知信号に基づいて行われても良い。
【0135】
<報知部950>
報知部950は、報知部950は、補正量算出部930により、荷受対象スラブM1の荷受が出来ないと判定された場合、荷受対象スラブM1の荷受が出来ないことをオペレータに報知する。前述したように報知部950は、例えば、荷受対象スラブM1の荷受が出来ないことを示す荷受不可情報情報をコンピュータディスプレイに表示することと、荷受対象スラブM1の荷受が出来ないことを示す警報音を発生することと、荷受対象スラブM1の荷受が出来ないことを示す警報ランプを点灯させることと、のうち、少なくとも1つを行う。
また、報知部950は、クレーン100から、クレーン100の作業実績情報を取得して上位コンピュータ900に出力する。
【0136】
<動作タイミング>
本実施形態では、動作指示部940が、補正量算出部930により算出された補正量に基づくクレーン100の動作の指示を、クレーン100が目標停止位置A2に到達する前に行う場合を例示する。このようにすればクレーン100が目標停止位置A2に到達して停止した後に、補正量算出部930により算出された補正量に基づくクレーン100の動作が開始することを抑制することが出来る。したがって、荷受作業の時間を短縮することが出来る。
【0137】
本実施形態では、補正量算出部930により算出された補正量に基づくクレーン100の動作には、補正前後の目標荷受位置A1''、A1のx座標、y座標の差分だけ、クレーン100を移動(走行および横行)させることと、荷受対象スラブM1の回動角度φ'、揺動角度θ'だけ、吊具130を動作(回動および揺動)させることと、補正前後の目標荷受位置のz座標の差分だけ、索条131の先端の位置をz軸方向に動かすことと、が含まれる。これらの動作のうち、補正前後の目標荷受位置のz座標の差分だけ、吊具130をz軸方向に動かすこと以外の動作は、クレーン100が補正後の目標停止位置A2'または補正前の目標停止位置A2''に到達する前に行う。以下の説明では、補正量算出部930により算出された補正量に基づくクレーン100の動作のうち、クレーン100が補正後の目標停止位置A2'または補正前の目標停止位置A2''に到達する前に行う必要がある動作を、必要に応じてクレーン100の事前補正動作、または単に事前補正動作と称する。なお、<概要>の欄で説明したように、補正前後の目標荷受位置のz座標の差分だけ、索条131の先端の位置をz軸方向に動かすこととも、クレーン100が補正後の目標停止位置A2'または補正前の目標停止位置A2''に到達する前に行っても良い。
【0138】
クレーン100の事前補正動作を、クレーン100が補正前の目標停止位置A2''に到達する前に開始させれば、クレーン100荷受作業の時間を短縮することが出来る。また、クレーン100の事前補正動作を、クレーン100が補正前の目標停止位置A2''に到達する前に終了させれば、クレーン100荷受作業の時間を確実に短縮することが出来る。なお、補正前後の目標荷受位置A1''、A1のy座標の差分だけ、クレーン100を移動(走行(y軸方向に移動))させることは、クレーン100が補正後の目標停止位置A2'に到達した時点で終了するしたがって、クレーン100の事前補正動作のうち、補正前後の目標荷受位置A1''、A1のy座標の差分だけ、クレーン100を移動させることについては、クレーン100が補正前の目標停止位置A2''に到達する前に終了しない。また、補正前の荷受位置A1''のx座標、y座標、およびz座標のうち、z座標のみを補正する場合には、補正前後の荷受位置A1''、A1のx座標、y座標の差分だけ、クレーン100を移動(走行および横行)させることは行われない。
【0139】
ここで、クレーン100の横行方向(x軸方向)の位置を補正する期間と、吊具130の姿勢を規定する物理量(本実施形態では回動角度φおよび揺動角度θ)の少なくとも1つを補正する期間と、の少なくとも一部の期間を重複させることにより、補正に要する時間を短縮しても良い。また、吊具130の姿勢を規定する複数の物理量(本実施形態では回動角度φおよび揺動角度θ)のうちの少なくとも2つの物理量を補正する期間の少なくとも一部を重複させることにより、補正に要する時間を短縮しても良い。
【0140】
本実施形態では、物体検知用センサ140a~140bによる検知が終了してから、クレーン100が補正後の目標停止位置A2'または補正前の目標停止位置A2''に到達するまでの時間として、補正量算出部930による補正量の算出を開始してから当該補正量に基づくクレーン100の動作の指示を行うまでの時間と、クレーン100が事前補正動作を行うのに要する時間と、を加算した時間として予め想定されている時間以上の時間が確保されるように、クレーン100物体検知用センサ140a~140bによる検知の開始のタイミングが定められるようにする。
【0141】
図14は、クレーン100の走行速度パターン1401(走行速度と時間との関係)の一例を示す図である。
図14において、tdsは、クレーン100(クレーン本体110)が最初に減速を開始するタイミングである。tmsは、物体検知用センサ140a~140bによる検知が開始するタイミングである。以下の説明では、このタイミングtmsを必要に応じて検知開始タイミングと称する。tmeは、物体検知用センサ140a~140bによる検知が終了するタイミングである。以下の説明では、このタイミングtmeを必要に応じて検知終了タイミングと称する。tdeは、クレーン100(クレーン本体110)が最初の減速を終了するタイミングである。
【0142】
eは、クレーン100(クレーン本体110)が目標停止位置に到達するタイミングである。クレーン100が目標停止位置に到達するタイミングteは、クレーン100が補正前の目標停止位置A1''に到達するタイミングであっても良い。また、クレーン100の走行速度パターン1401が、補正前の目標荷受位置A1''が算出されたタイミングまたはその後のタイミングでクレーン100の走行速度パターン1401が定められるようにする場合、クレーン100が目標停止位置に到達するタイミングteは、例えば、補正前の目標停止位置A1''のy座標(走行方向の座標)を最大想定補正量だけ補正した場合の目標停止位置にクレーン100が到達するタイミングとしても良い。最大想定補正量は、クレーン100が走行する方向とは反対側の方向に補正する際の補正量として想定される補正量である。このようにすれば、クレーン100が目標停止位置に到達するタイミングteが想定される範囲内で最も早くなる条件(クレーン100に対する動作指示のための時間の余裕がない条件)とすることが出来る。
【0143】
検知開始タイミングtmsおよび検知終了タイミングtmeは、例えば、クレーン100の走行速度と、クレーン100の走行方向における加速度(減速度)と、物体検知用センサ140a~140bの実在位置と、補正前の目標荷受位置A1''と、荷受対象スラブのサイズと、に基づいて定められる。
【0144】
図15は、検知開始タイミングtmsおよび検知終了タイミングtmeを定める方法の一例を説明する図である。
例えば、図15に示すように、物体検知用センサ140aが荷受対象スラブM1を通過する前において物体検知用センサ140aの実在位置Sと、補正前の目標荷受位置A1''と、の走行方向(y軸方向)の距離が所定距離YSsになるタイミングを、検知開始タイミングtmsとする。また、物体検知用センサ140aが荷受対象スラブM1を通過した後において物体検知用センサ140aの実在位置Sと、補正前の目標荷受位置A1''と、の走行方向(y軸方向)の距離が所定距離YSeになるタイミングを、検知終了タイミングtmeとする。取得部910は、検知開始タイミングtmsから検知終了タイミングtmeにおいて、物体検知用センサ140a~140bの検知信号を取得する。
【0145】
T1は、補正量算出部930による補正量の算出を開始してから当該補正量に基づくクレーン100の動作の指示を行うまでの時間である。以下の説明では、この時間を、必要に応じて補正指示想定時間と称する。T2は、クレーン100の事前補正動作を行うのに要する時間として想定される時間である。以下の説明では、この時間を、必要に応じて補正動作想定時間と称する。
【0146】
補正指示想定時間T1と補正動作想定時間T2とを加算した時間Tが、物体検知用センサ140a~140bによる検知が終了してから、クレーン100が補正前の目標停止位置A2''に到達するまでの時間(タイミングtme~teの時間(=te-tme))を上回る(T>te-tmeになる)ように、検知開始タイミングtmsが定められるようにすれば、クレーン100の事前補正動作を、クレーン100が補正前の目標停止位置A2''に到達する前に終了させることが出来る。また、補正指示想定時間T1と補正動作想定時間T2とを加算した時間Tが、物体検知用センサ140a~140bによる検知が終了してから、クレーン100が補正後の目標停止位置A2' に到達するまでの時間(タイミングtme~teの時間(=te-tme))を上回る(T>te-tmeになる)ように、検知開始タイミングtmsが定められるようにすれば、クレーン100の事前補正動作を、クレーン100が補正後の目標停止位置A2'に到達する前に終了させることが出来る。
【0147】
したがって本実施形態では、取得部910は、補正指示想定時間T1と補正動作想定時間T2とを加算した時間Tが、物体検知用センサ140a~140bによる検知が終了してから、クレーン100が補正前の目標停止位置A2''または補正後の目標停止位置A2'に到達するまでの時間を上回るように、検知開始タイミングtmsを算出して、検知開始タイミングtmsから検知終了タイミングtmeにおいて、物体検知用センサ140a~140bの検知信号を取得する。このようにすることにより、クレーン100の事前補正動作を、クレーン100が補正前の目標停止位置A2''または補正後の目標停止位置A2'に到達する前に終了させることが出来る。
【0148】
補正動作想定時間T2は、例えば、以下のようにして定められる。まず、クレーン100の事前補正動作のそれぞれについて、当該事前補正動作において想定される最大の補正量の動作をするのに要する時間として想定される時間を求める。そして、このようにして求めた時間のうち最長の時間と、動作指示情報の生成と出力に要する時間として想定される時間と、を加算した時間を、補正動作想定時間T2とする。
【0149】
例えば、クレーン100の事前補正動作のうち、補正量として想定される最大の補正量の動作をするのに要する時間が、横行クラブ120の横行方向の最大移動距離だけ横行クラブ120を横行させるのに要する時間である場合、横行クラブ120の横行方向の最大移動距離だけ横行クラブ120を横行させるのに要する時間として想定される時間と、動作指示情報の生成と出力に要する時間として想定される時間と、を加算した時間が、クレーン100補正動作想定時間T2になる。
【0150】
物体検知用センサ140a~140bの設置位置と、物体検知用センサ140a~140bから出力されるレーザ光Lの照射角度と、クレーン100(クレーン本体110)の走行速度パターンと、のうち、少なくとも1つを調整することにより、前述した条件(T≧te-tme)を満たすようにしても良い。例えば、クレーン100(クレーン本体110)の走行速度パターンを固定とする場合にこのようにすれば良い。
【0151】
また、クレーン100の事前補正動作が、クレーン100が補正後の目標停止位置A2'または補正前の目標停止位置A2''に到達する前に終了するように、クレーン100(クレーン本体110)の走行速度パターンを調整しても良い。例えば、クレーン100の走行速度を通常の走行速度として予め設定されている走行速度よりも速くすることと、クレーン100の走行方向における減速度(の絶対値)を通常の減速度として予め設定されている減速度(の絶対値)よりも大きくすることと、のうち、少なくとも一方を行っても良い。
【0152】
物体検知用センサ140a~140bは、以上のようにして定められる検知終了タイミングtmeで検知を終了する。例えば、補正前の目標荷受位置A1''が算出されたタイミングで走行速度パターン1401が定められる場合、検知終了タイミングtmeも当該タイミングで定められる。したがって、補正量算出部930は、検知終了タイミングtmeで物体検知用センサ140a~140bの検知信号を受信して補正量の算出することが出来る。
【0153】
また、前述したようにクレーン100の走行速度パターン1401は、クレーン100が目標停止位置に到達するタイミングteが想定される範囲内で最も早くなる条件(クレーン100に対する動作指示のための時間の余裕がない条件)で作成される。すなわち、検知終了タイミングtmeは、想定される範囲内で最も早いタイミングになる。したがって、例えば、動作指示部940は、補正量算出部930で補正量の算出が終了したタイミングで動作指示情報の生成を開始することにより、クレーン100の事前補正動作が、クレーン100が補正後の目標停止位置A2'または補正前の目標停止位置A2''に到達する前に終了するタイミングで、補正量に基づく動作をクレーン100に指示することが出来る。
【0154】
[フローチャート]
次に、図16のフローチャートを参照しながら、本実施形態のクレーン用コンピュータ150を用いることにより行われる処理方法の一例を説明する。
【0155】
まず、図16のステップS1601において、取得部910は、荷受指示情報と、運搬装置検知用センサ170の検知信号と、を取得する。
次に、ステップS1602において、受取位置変更部920は、ステップS1601で取得された運搬装置検知用センサ170の検知信号に基づいて、貨車160の実在位置C2を特定する。そして、受取位置変更部920は、ステップS1601で取得された荷受指示情報に含まれる目標荷受位置A1を、貨車160の目標停止位置A3に対する実在位置C2のずれ量だけ、目標荷受位置A1よりも貨車160の実在位置C2側にずらした位置に変更して、補正前の目標荷受位置A1''を算出する。
【0156】
次に、ステップS1603において、動作指示部940は、ステップS1601で取得された荷受指示情報に基づく動作を行うことを示す動作指示情報を生成してクレーン100に出力する。ただし、目標荷受位置については、ステップS1601で取得された荷受指示情報に含まれる目標荷受位置A1ではなく、ステップS1602で生成された補正前の目標荷受位置A1''とする。これによりクレーン100は、補正前の目標荷受位置A1''(補正前の目標停止位置A2'')に向かって移動を開始する。
【0157】
次に、ステップS1604において、取得部910は、物体検知用センサ140a~140bの検知信号を取得する。<動作タイミング>の欄で説明したように本実施形態では、取得部910は、検知開始タイミングtmsから検知終了タイミングtmeにおいて、物体検知用センサ140a~140bの検知信号を取得する。
【0158】
次に、ステップS1605において、補正量算出部930は、ステップS1604で取得された物体検知用センサ140a~140bの検知信号に基づいて、荷受対象スラブM1の実在位置および表面形状の検知結果を認識する。補正量算出部930は、荷受対象スラブM1の実在位置および表面形状の検知結果に基づいて、荷受対象スラブM1が、荷受が出来る形状であるか否かを判定する。この判定の結果、荷受対象スラブM1が、荷受が出来る形状でない場合(ステップS1605でNOの場合)、ステップS1606の処理が行われる。
【0159】
ステップS1606において、報知部950は、荷受対象スラブM1の荷受が出来ないことをオペレータに報知する。ステップS1606の処理が終了すると、図16のフローチャートによる処理は終了する。
【0160】
一方、ステップS1605において、荷受対象スラブM1が、荷受が出来る形状であると判定された場合(ステップS1605でYESの場合)、ステップS1607の処理が行われる。ステップS1607において、補正量算出部930は、荷受対象スラブM1の実在位置および表面形状の検知結果に基づいて、補正前の目標荷受位置A1''に対する補正量と、クレーン100(吊具130)の目標姿勢に対する補正量と、を算出する。なお、これらの補正量のうちの少なくとも1つが0(零)になることもある。本実施形態では、補正前の目標荷受位置A1''に対する補正量は、ずれ量Δx、Δy、Δzである。クレーン100(吊具130)の目標姿勢に対する補正量は、荷受対象スラブM1の回動角度φ'および揺動角度θ'である。
【0161】
次に、ステップS1608において、補正量算出部930は、補正前の目標荷受位置A1''に対する補正量と、クレーン100(吊具130)の目標姿勢に対する補正量と、のうち、少なくとも1つの補正量が0(零)以外の値であるか否かを判定する。なお、補正量算出部930は、0(零)以外の値であるか否かに代えて、0(零)以外の閾値を上回るか否か、または、所定の範囲内以外であるか否かを判定しても良い。閾値および所定の範囲は、補正量の算出対象ごとに予め定められる。
【0162】
この判定の結果、少なくとも1つの補正量が0(零)以外の値でなく、全ての補正量が0(零)である場合(ステップS1608でNOの場合)、後述するステップS1613の処理が行われる。一方、少なくとも1つの補正量が0(零)以外の値である場合(ステップS1606でYESの場合)、ステップS1609の処理が行われる。
【0163】
ステップS1609において、動作指示部940は、ステップS1607で算出した補正量に基づく動作を行うことを示す動作指示情報を生成してクレーン100に出力する。ステップS1607において、補正前の目標荷受位置A1''に対しz座標を補正するための補正量(ずれ量Δz)として0(零)以外の値が算出された場合、補正量算出部930は、ずれ量Δzだけ索条131の先端をz軸方向に動かすことについては、索条131の巻き下げ時に行うことを、動作指示情報に含める。これによりクレーン100は、ステップS1607で算出された補正量に基づく動作のうち、ずれ量Δzだけ索条131の先端をz軸方向に動かすこと以外の動作を行う。なお、<概要>の欄で説明したように、ずれ量Δzだけ索条131の先端をz軸方向に動かすこともこのタイミングで行われても良い。
【0164】
本ステップS1609において、動作指示部940は、クレーン100の事前補正動作が、クレーン100が補正後の目標停止位置A2'または補正前の目標停止位置A2''に到達する前に終了するタイミングで、ステップS1607で算出した補正量に基づく動作を行うことを示す動作指示情報をクレーン100に出力する。このことは、例えば、図15を参照しながら説明したようにして検知開始タイミングtmsおよび開始終了タイミングtmeを定めることにより可能となる。
【0165】
次に、ステップS1610において、動作指示部940は、ステップS1607においてクレーン100(吊具130)の目標姿勢に対する補正量として0(零)以外の値が算出されたか否かを判定する。この判定の結果、クレーン100(吊具130)の目標姿勢に対する補正量として0(零)以外の値が算出されていない場合(ステップS1610でNOの場合)、吊具130の姿勢は目標姿勢である。この場合、後述するステップS1613の処理が行われる。
【0166】
一方、クレーン100(吊具130)の目標姿勢に対する補正量として0(零)以外の値が算出されている場合(ステップS1610でYESの場合)、吊具130の姿勢は目標姿勢ではない。この場合、ステップS1611において、動作指示部940は、吊具130の作業実績情報に基づいて、荷受対象スラブM1の側面が爪部137a~137bで挟持されて荷受対象スラブM1の吊り上げを開始することが出来る状態になったか否かを判定する。荷受対象スラブM1の側面が爪部137a~137bで挟持されて荷受対象スラブM1の吊り上げを開始することが出来る状態でない場合(ステップS1611でNOの場合)、ステップS1611の判定が再び行われる。
【0167】
一方、荷受対象スラブM1の側面が爪部137a~137bで挟持されて荷受対象スラブM1の吊り上げを開始することが出来る状態になった場合(ステップS1611でYESの場合)、ステップS1612の処理が行われる。ステップS1612において、動作指示部940は、吊具130の姿勢を目標姿勢にすることを示す動作指示情報を生成してクレーン100に出力する。これにより、吊具130の姿勢は目標姿勢に戻る。ステップS1612の処理が終了すると、ステップS1613の処理が行われる。
【0168】
ステップS1613において、報知部950は、荷受対象スラブM1に対するクレーン100の作業実績情報に基づいて、荷受対象スラブM1の吊り上げ(荷受作業)が終了したか否かを判定する。この判定の結果、荷受対象スラブM1の吊り上げが終了していない場合(ステップS1613でNOの場合)、ステップS1613の判定が再び行われる。一方、荷受対象スラブM1の吊り上げ(荷受作業)が終了したと判定された場合(ステップS1613でYESの場合)、ステップS1614の処理が行われる。ステップS1614において、報知部950は、荷受対象スラブM1に対するクレーン100の作業実績情報を上位コンピュータ900に出力する、ステップS1614の処理が終了すると、図16のフローチャートによる処理は終了する。
【0169】
[まとめ]
以上のように本実施形態では、クレーン用コンピュータ150は、荷受対象スラブM1の実在位置と、荷受対象スラブM1の置かれた状態と、のうちの少なくとも一方に基づいて、クレーン100の目標受取位置A1と、クレーン100(吊具130)の目標姿勢と、のうちの少なくとも一方に対する補正量を、クレーン100が目標荷受位置A1に到達する前に算出し、当該補正量に基づくクレーン100の動作の指示をクレーン100に対して行う。したがって、クレーン100がその目標荷受位置A1に到達する前に、クレーン100の目標荷受位置A1およびクレーン100(吊具130)の目標姿勢をどの程度補正すれば良いのかを把握し、補正(変更)出来るようになる。その結果、荷受の際にクレーン100の再移動および姿勢の再変更を行う必要がなくなり、全体として荷受作業の時間を短縮することが出来る。
【0170】
また、本実施形態では、吊具130の置かれた状態を特定するための情報であって、吊具130の動作によって値が変化する吊具130の回動角度φおよび揺動角度θが0°であるときの吊具130の姿勢を吊具130の目標姿勢とする。したがって、吊具130の目標姿勢を特定して吊具130の姿勢を補正することが出来る。
【0171】
また、本実施形態では、クレーン用コンピュータ150は、補正量に基づき目標荷受位置A1およびクレーン100(吊具130)の目標姿勢のうちの少なくとも一方を補正する指示を、クレーン100が目標荷受位置A1(目標停止位置A2(目標荷受位置A1が補正される場合には補正後の目標停止位置A2'または補正前の目標停止位置A2'')に到達する前に行う。したがって、クレーン100がその目標荷受位置A1(目標停止位置A2(目標荷受位置A1が補正される場合には補正後の目標停止位置A2'または補正前の目標停止位置A2'')に到達する前に、補正を開始することが出来る。よって、荷受作業の時間を確実に短縮することが出来る。
【0172】
また、本実施形態では、クレーン用コンピュータ150は、クレーン100が目標荷受位置A1(目標停止位置A2(目標荷受位置A1が補正される場合には補正後の目標停止位置A2'または補正前の目標停止位置A2'')に到達する前にクレーン100の事前補正動作が終了するタイミングで、補正量に基づくクレーン100の動作の指示を行う。したがって、クレーン100がその目標荷受位置A1(目標停止位置A2(目標荷受位置A1が補正される場合には補正後の目標停止位置A2'または補正前の目標停止位置A2'')に到達する前に補正を終了することが出来る。よって、荷受作業の時間をより一層確実に短縮することが出来る。
【0173】
なお、荷受作業の時間を確実に短縮する観点から、このようにクレーン100が目標荷受位置A1に到達する前にクレーン100の事前補正動作が終了するタイミングで、補正量に基づくクレーン100の動作の指示を行うのが好ましい。しかしながら、クレーン100が目標荷受位置A1に到達する前にクレーン100の事前補正動作が終了するタイミングに代えて、クレーン100が目標荷受位置A1に到達する時にクレーン100の事前補正動作が終了するタイミングを採用しても良い。
【0174】
また、本実施形態では、クレーン用コンピュータ150は、物体検知用センサ140a~140bの検知信号に基づいて、補正量を算出する。したがって、荷受対象スラブM1の実在位置および表面形状を正確に認識することが出来る。よって、クレーン100(吊具130)の補正を高精度に行うことが出来る。
【0175】
また、本実施形態では、物体検知用センサ140a~140bをクレーン100に取り付ける。従って、物体検知用センサ140a~140bの設置数を削減することが出来る。
【0176】
また、本実施形態では、物体検知用センサ140a~140bをクレーン100の走行方向(y軸方向)における端部に取り付ける。したがって、荷受対象スラブM1を早期に検知することが出来る。また、クレーン100の他の構成要素が物体検知用センサ140a~140bの検知の障害になることを抑制することが出来る。
【0177】
また、本実施形態では、クレーン用コンピュータ150は、クレーン100の目標荷受位置A1を、貨車160の目標停止位置A3に対する実在位置C2のずれ量だけ、目標荷受位置A1よりも貨車160の実在位置C2側にずらした位置に変更する。そして、クレーン用コンピュータ150は、このようにして変更された目標荷受位置A1''に対する補正量を算出する。したがって、目標荷受位置の補正量を少なくすることが出来る。よって、荷受作業の時間をより短縮することが出来る。
【0178】
また、本実施形態では、クレーン用コンピュータ150は、貨車160の実在位置C2を、運搬装置検知用センサ170の検知信号に基づいて特定する。したがって、貨車160の実在位置C2を高精度に特定することが出来る。よって、クレーン100(吊具130)の補正を高精度に行うことが出来る。
【0179】
本実施形態では、荷役装置が、走行方向への走行と、横行方向への横行と、を行うクレーン100である場合を例示した。しかしながら、荷役装置は、走行方向への走行と、横行方向への横行と、を行うクレーン100に限定されない。例えば、フォークリフトであっても、走行方向への走行と横行方向への横行とのうちいずれか一方のみを行うクレーンでも、走行方向への走行と横行方向への横行とを行わないクレーンであっても良い。なお、自動運転を行うフォークリフトを本実施形態に適用する場合、保持具は、例えば、フォーク(ツメ)であり、目標荷受位置は、例えば、荷受対象物体を荷役するために自動運転によりフォークリフトを停止させる位置になり、フォークリフトの目標姿勢は、例えば、フォーク(ツメ)の昇降位置が最も下にある状態(最下降している状態)になる。荷役装置は、少なくとも一部の作業において自動運転が行われるものであっても、少なくとも一部の作業においてオペレータの操作による手動運転が行われるものであっても良い。
【0180】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を説明する。第1実施形態では、クレーン100が一度に搬送するスラブMの数が1つである場合を例示した。これに対し、クレーン100が一度に搬送するスラブMの数が2以上でも良い場合について説明する。このように本実施形態と第1実施形態とは、クレーン100が一度に搬送するスラブMの数が異なることによる構成および処理が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において第1実施形態と同一の部分については図1図16に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0181】
[荷役の可否の判定]
図17は、複数のスラブをクレーン100で一度に荷受することが出来る場合と出来ない場合の一例を説明する図である。本実施形態では、説明を簡単にするため、クレーン100で一度に荷受する荷受対象スラブの最大数が「2」であり、荷受対象スラブM1~M2がクレーン100で一度に荷受される場合を例示する。また、本実施形態では、クレーン100が一度に搬送する荷受対象スラブMの数が「2」である場合、荷受対象スラブM1~M2のうち最も下にある荷受対象スラブM2が吊具130により挟持される場合を例示する。なお、クレーン100で一度に荷受する荷受対象スラブの最大数が「3」以上であっても良いことについては後述する。
【0182】
図17(a)では、図17(a)の左側に示すように、下に置かれている荷受対象スラブM2の長さ方向(x軸方向)の左端EL2と、上に置かれている荷受対象スラブM1の長さ方向の左端EL1と、の長さ方向の位置(x座標)が同じとなるように荷受対象スラブM1~M2が置かれている状態の一例を示す。
【0183】
図17(b)では、図17(b)の左側に示すように、下に置かれている荷受対象スラブM2の長さ方向(x軸方向)の左端EL2が、上に置かれている荷受対象スラブM1の長さ方向の左端EL1よりも外側(x軸の負の方向側)になり、且つ、下に置かれている荷受対象スラブM2の長さ方向(x軸方向)の右端ER2が、上に置かれている荷受対象スラブM1の長さ方向の右端ER1よりも外側(x軸の正の方向側)になるように荷受対象スラブM1~M2が置かれている状態の一例を示す。
【0184】
図17(c)では、図17(c)の左側に示すように、下に置かれている荷受対象スラブM2の長さ方向(x軸方向)の左端EL2が、上に置かれている荷受対象スラブM1の長さ方向の左端EL1よりも外側(x軸の負の方向側)になり、且つ、下に置かれている荷受対象スラブM2の長さ方向(x軸方向)の右端ER2が、上に置かれている荷受対象スラブM1の長さ方向の右端ER1よりも内側(x軸の負の方向側)になるように荷受対象スラブM1~M2が置かれている状態の一例を示す。
【0185】
図17(d)では、図17(d)の左側に示すように、下に置かれている荷受対象スラブM2の長さ方向(x軸方向)の左端EL2が、上に置かれている荷受対象スラブM1の長さ方向の左端EL1よりも内側(x軸の正の方向側)になり、且つ、下に置かれている荷受対象スラブM2の長さ方向(x軸方向)の右端ER2が、上に置かれている荷受対象スラブM1の長さ方向の右端ER1よりも外側(x軸の正の方向側)になるように荷受対象スラブM1~M2が置かれている状態の一例を示す。
【0186】
図17(e)では、図17(e)の左側に示すように、下に置かれている荷受対象スラブM2の長さ方向(x軸方向)の左端EL2が、上に置かれている荷受対象スラブM1の長さ方向の左端EL1よりも外側(x軸の負の方向側)になり、且つ、下に置かれている荷受対象スラブM2の長さ方向(x軸方向)の右端ER2が、上に置かれている荷受対象スラブM1の長さ方向の右端ER1よりも外側(x軸の正の方向側)になるように荷受対象スラブM1~M2が置かれている状態の一例を示す。
【0187】
図17(a)~図17(b)に示すように、下に置かれている荷受対象スラブM2の長さ方向(x軸方向)の左端EL2および右端ER2が、上に置かれている荷受対象スラブM1の長さ方向(x軸方向)の左端EL1および右端ER1と重なるか、または、上に置かれている荷受対象スラブM1の長さ方向(x軸方向)の左端EL1および右端ER1よりも外側にある場合、荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来る。
【0188】
一方、図17(c)~図17(e)に示すように、下に置かれている荷受対象スラブM2の長さ方向(x軸方向)の左端EL2および右端ER2のうち少なくとも一方が、上に置かれている荷受対象スラブM1よりも内側にあり、荷受対象スラブM2を吊具130で挟持することが出来ない場合、荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来ない。
【0189】
したがって、下に置かれている荷受対象スラブM2の長さ方向(x軸方向)の左端EL2および右端ER2と、上に置かれている荷受対象スラブM1の長さ方向(x軸方向)の左端EL1および右端ER1と、の位置関係を求めれば、荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来るか否かを判定することが出来る。
【0190】
図17(a)、図17(b)、図17(c)、図17(d)、図17(e)の右側に、それぞれ図17(a)、図17(b)、図17(c)、図17(d)、図17(e)の左側に示す状態で置かれている荷受対象スラブM1~M2の表面形状の検知結果1701、1702、1703、1704、1705の一例を示す。第1実施形態で説明したように、荷受対象スラブM1~M2の表面形状の検知結果1701~1705は、物体検知用センサ140a~140bにより得られる。
【0191】
図17において、L1は、上に置かれている荷受対象スラブM1の長さであり、L2は、下に置かれている荷受対象スラブM2の長さである。SLは、荷受対象スラブM1~M2の表面形状の検知結果1701~1705から特定される荷受対象スラブM1~M2の長さ方向の左端の位置である。SRは、荷受対象スラブM1~M2の表面形状の検知結果1701~1705から特定される荷受対象スラブM1~M2の長さ方向の右端の位置である。LSは、荷受対象スラブM1~M2の表面形状の検知結果1701~1705から特定される荷受対象スラブM1~M2の長さ(=SRのx座標-SLのx座標)である。図17の右側には、下に置かれている荷受対象スラブM2を二点鎖線(仮想線)で示す。
【0192】
図17に示すように、荷受対象スラブM1~M2の表面形状の検知結果1701~1705に基づいて、下に置かれている荷受対象スラブM2の長さ方向(x軸方向)の左端EL2および右端ER2と、上に置かれている荷受対象スラブM1の長さ方向(x軸方向)の左端EL1および右端ER1と、の位置関係を求めることができる。よって、荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来るか否かを判定することが出来る。
【0193】
なお、図17(a)に示す荷受対象スラブM1~M2の表面形状の検知結果1701と、図17(e)に示す荷受対象スラブM1~M2の表面形状の検知結果1705とでは、荷受対象スラブM2の長さ方向(x軸方向)の左端EL2および右端ER2と、荷受対象スラブM1の長さ方向(x軸方向)の左端EL1および右端ER1と、の位置関係は同じになり、区別されない。この場合、例えば、荷受指示情報に含まれるクレーン100の目標荷受位置および荷受対象スラブM1~M2のサイズを更に用いて、図17(a)に示す状態と、図17(e)に示す状態と、を区別することが出来る。図17(e)に示す状態により荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来ない場合には、エラーとして荷受作業を中止しても良い。
【0194】
また、下に置かれている荷受対象スラブM2の長さ方向(x軸方向)の左端EL2および右端ER2のうち少なくとも一方が、上に置かれている荷受対象スラブM1よりも内側にある場合でも、内側になっている部分の長さが荷受対象スラブM2を吊具130で挟持することが出来る程度の長さである場合には、荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来る。したがって、内側になっている部分の長さが0(零)である場合だけでなく、内側になっている部分の長さが閾値(>0)以下である場合に、荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来ると判定しても良い。
【0195】
荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来る場合(図17(a)および図17(b)に示す例の場合)には、第1実施形態の説明において、目標荷受位置A1(荷受対象スラブM1をクレーン100が挟持する位置として予め決められている位置)を、荷受対象スラブM2をクレーン100が挟持する位置として予め決められている位置に置き替えれば、荷受対象スラブM1~M2を一度に荷受することが出来る(なお、荷受対象スラブM2をクレーン100が挟持する位置として予め決められている位置もクレーン100の目標荷受位置である)。
【0196】
一方、荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来ない場合(図17(c)~図17(e)に示す例の場合)、本実施形態では、一番下にある荷受対象スラブM2を荷受対象スラブから除外し、荷受対象スラブM2よりも上にある荷受対象スラブM1のみを荷受対象スラブとする。
【0197】
なお、図17では、荷受対象スラブM1~M2の長さ方向(x軸方向)の端の位置関係に基づいて、荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来るか否かを判定することについて説明した。荷受対象スラブM1~M2の幅方向(x軸方向)の端の位置関係についても、本欄で行った説明において、「長さ」を「幅」、「長さ方向(x軸方向)」を「幅方向(y軸方向)」に置き替えることにより、荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来る。
【0198】
[クレーン用コンピュータ150]
図18は、本実施形態のクレーン用コンピュータ150の機能的な構成の一例を示す図である。クレーン用コンピュータ150のハードウェアは、例えば、第1実施形態のクレーン用コンピュータ150と同じハードウェアで実現される。
【0199】
本実施形態のクレーン用コンピュータ150は、第1実施形態のクレーン用コンピュータ150が有する機能構成部に対し、荷役可否判定部1810と、荷役対象物体変更部1820と、を更に備える構成となる。以下に、本実施形態のクレーン用コンピュータ150が有する機能のうち、第1実施形態のクレーン用コンピュータ150が有する機能と異なる部分について説明する。
【0200】
<取得部910>
第1実施形態の取得部910が取得する荷受指示情報に含まれる荷受枚数は「1」である。これに対し、本実施形態の取得部910が取得する荷受指示情報に含まれる荷受枚数は「2」である。また、荷受枚数が「2」である場合、本実施形態の取得部910が取得する荷受指示情報には、2つの荷受対象スラブM1~M2についての、サイズ、目標荷受位置、および荷下位置がそれぞれ含まれる。なお、第1実施形態で説明したように、目標荷受位置として採用されるのは、荷受対象スラブM1~M2のうち最も下にある荷受対象スラブM2をクレーン100が挟持する位置として予め決められている位置である。
【0201】
<荷役可否判定部1810>
荷役可否判定部1810は、複数の荷受対象スラブM1~M2の実在位置と、当該複数の荷受対象スラブM1~M2の置かれた状態と、のうちの少なくとも一方に基づいて、当該複数の荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来るか否かを判定する。第1の実施形態の<補正量算出部930>の欄で説明したように、本実施形態でも、荷受対象スラブM1の置かれた状態が、荷受対象スラブM1、M2を含むスラブMの表面形状の検知結果で表される場合を例示する。また、第1実施形態の[クレーン設備]の欄で説明したように、本実施形態でも、荷受対象スラブM1~M2の実在位置および表面形状の検知結果が、物体検知用センサ140a~140bの検知信号から認識される場合を例示する。
【0202】
荷役可否判定部1810の判定手法の一例は、<荷役の可否の判定>の欄で説明した手法である。本実施形態では、荷役可否判定部1810は、<荷役の可否の判定>の欄で説明した手法で、荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来るか否かを判定する場合を例示する。この場合、荷役可否判定部1810は、物体検知用センサ140a~140bの検知信号(荷受対象スラブM1~M2の置かれた状態)に基づいて、荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来るか否かを判定する。
【0203】
なお、荷役可否判定部1810は、例えば、複数の荷受対象スラブM1~M2の実在位置のx座標およびy座標の差と、荷受指示情報に含まれるサイズと、に基づいて、図17を参照しながら説明した位置関係を特定することで、当該複数の荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来るか否かを判定しても良い。また、荷役可否判定部1810は、例えば、物体検知用センサ140a~140bの検知信号と、複数の荷受対象スラブM1~M2の実在位置のx座標およびy座標の差と、に基づいて、当該複数の荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来るか否かを判定しても良い。例えば、荷役可否判定部1810は、<荷役の可否の判定>の欄で説明した手法で荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来ると判定される場合でも、複数の荷受対象スラブM1~M2の実在位置のx座標およびy座標の差が閾値を上回る場合には、荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来ないと判定しても良い。
【0204】
<荷役対象物体変更部1820>
荷役対象物体変更部1820は、荷役可否判定部1810により、荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来ないと判定された場合、荷受対象スラブM1~M2のうち、クレーン100で一度に荷受することが出来ない原因となっている荷受対象スラブM2を荷受対象スラブから除外し、荷受対象スラブM1のみを荷受対象スラブとする。
【0205】
[フローチャート]
次に、図19-1~図19-2のフローチャートを参照しながら、本実施形態のクレーン用コンピュータ150を用いることにより行われる処理方法の一例を説明する。
【0206】
まず、図19-1のステップS1901、S1902、S1903、S1904は、それぞれ、図16のステップS1601、S1602、S1603、S1604と同じである。
【0207】
すなわち、ステップS1901において、取得部910は、荷受指示情報と、運搬装置検知用センサ170の検知信号と、を取得する。
次に、ステップS1902において、受取位置変更部920は、補正前の目標荷受位置を算出する。なお、目標荷受位置として採用されるのは、荷受対象スラブM1~M2のうち最も下にある荷受対象スラブM2をクレーン100が挟持する位置として予め決められている位置である。したがって、ステップS1902において、受取位置変更部920は、ステップS1901で取得された荷受指示情報に含まれる目標荷受位置のうち、荷受対象スラブM2をクレーン100が挟持する位置として予め決められている位置を変更して補正前の目標荷受位置を算出する。
【0208】
次に、ステップS1903において、動作指示部940は、ステップS1901で取得された荷受指示情報に基づく動作を行うことを示す動作指示情報を生成してクレーン100に出力する。ただし、目標荷受位置については、ステップS1902で生成された補正前の目標荷受位置A1''とする。
次に、ステップS1904において、取得部910は、物体検知用センサ140a~140bの検知信号を取得する。
【0209】
次に、ステップS1905において、荷役可否判定部1810は、物体検知用センサ140a~140bの検知信号に基づいて、荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来るか否かを判定する。この判定の結果、荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来ない場合(ステップS1905でNOの場合)、ステップS1906の処理が行われる。ステップS1906において、荷役対象物体変更部1820は、荷受対象スラブM2を荷受対象スラブから除外し、荷受対象スラブM1のみを荷受対象スラブとする。なお、図17(e)に示す状態により荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来ないと判定した場合、報知部950は、エラー表示を行っても良い。このようにする場合、ステップS1906以降の処理は行われない。
【0210】
次に、ステップS1907において、受取位置変更部920は、ステップS1901で取得された荷受指示情報に含まれる目標荷受位置のうち、ステップS1906でされた荷受対象スラブM2の1つ上にある荷受対象スラブM1をクレーン100が挟持する位置として予め決められている位置を変更して補正前の目標荷受位置を算出する。補正前の目標荷受位置を算出する手法は、ステップS1092における手法と同じである。
【0211】
次に、ステップS1908において、動作指示部940は、ステップS1907で算出された補正前の目標荷受位置(補正前の目標停止位置)に向かってクレーン100を移動させることを示す動作指示情報を生成してクレーン100に出力する。これにより、クレーン100の目標停止位置は、ステップS1902で算出された補正前の目標荷受位置に対応する位置から、ステップS1907で算出された補正前の目標荷受位置に対応する位置に変更され、クレーン100は、当該変更された目標停止位置に向けて移動する。ステップS1908の処理が終了すると、図19-2のステップS1909の処理が行われる。
【0212】
ステップS1905の判定の結果、受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来る場合(ステップS1905でYESの場合)、ステップS1906~S1908の処理は行われずに、ステップS1909の処理が行われる。ステップS1909~S1918の処理は、図16のステップS1605~S1614と同じである。したがって、ステップS1909~S1918の処理の詳細な説明を省略する。なお、荷受対象スラブM2を荷受対象スラブから除外された場合、ステップS1918において、報知部950は、荷受対象スラブが荷受指示情報に含まれる荷受対象スラブから変更したことを含む作業実績情報を上位コンピュータ900に出力する。
【0213】
[まとめ]
以上のように本実施形態では、クレーン用コンピュータ150は、複数の荷受対象スラブM1~M2の実在位置と、当該複数の荷受対象スラブM1~M2の置かれた状態と、のうちの少なくとも一方に基づいて、当該複数の荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来るか否かを判定する。クレーン用コンピュータ150は、荷役可否判定部1810により、荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来ないと判定された場合、荷受対象スラブM2を荷受対象スラブから除外する。したがって、複数の荷受対象スラブM1~M2をクレーン100で一度に荷受することが出来ない場合であっても、荷受対象スラブM1の荷受が可能になる。
【0214】
本実施形態では、説明を簡単にするため、クレーン100で一度に荷受する荷受対象スラブの最大数が「2」であり、荷受対象スラブM1~M2がクレーン100で一度に荷受される場合を例示した。しかしながら、クレーン100で一度に荷受する荷受対象スラブの最大数は「3」以上であっても良い。この場合、荷受対象スラブMをクレーン100で一度に荷受することが出来ると判定するまで、荷受対象スラブMのうち最も下にある荷受対象スラブMを荷受対象スラブから除外する処理を繰り返せば良い(すなわち、ステップS1905~S1906の処理をステップS1905でYESと判定されるまで繰り返せば良い)。この他、本実施形態においても第1実施形態で説明した種々の変形例を採用しても良い。
【0215】
(その他の実施形態)
なお、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0216】
なお、以上の実施形態の開示は、例えば以下のようになる。
(開示1)
物体を荷役する荷役装置の動作に関する処理を行う処理装置であって、
前記荷役装置により荷役される対象の荷役対象物体を前記荷役装置が受け取る目標位置として予め決められている目標受取位置を示す情報と、前記荷役装置の荷役時の目標となる姿勢として予め決められている目標姿勢を示す情報と、前記荷役対象物体の実在位置および置かれた状態のうちの少なくとも一方を示す情報と、を取得する取得手段と、
前記荷役対象物体の実在位置および置かれた状態のうちの少なくとも一方を示す情報に基づいて、前記荷役装置の前記目標受取位置および前記目標姿勢のうちの少なくとも一方に対する補正量を、前記荷役装置が前記目標受取位置に到達する前に算出する補正量算出手段と、
前記補正量に基づいて前記目標受取位置および前記目標姿勢のうちの少なくとも一方を補正する指示を、前記荷役装置に対して行う動作指示手段と、
を備える、処理装置。
(開示2)
前記荷役装置は、荷役時に荷役対象物体を保持する保持具を備え、
前記目標姿勢を示す情報は、前記保持具の目標となる姿勢を特定するための情報である、開示1に記載の処理装置。
(開示3)
前記動作指示手段は、前記荷役装置が前記目標受取位置に到達する前に前記指示を行い、
前記補正量に基づいて前記目標受取位置が補正される場合、前記動作指示手段は、前記荷役装置が、当該補正前の前記目標受取位置または当該補正後の前記目標受取位置に到達する前に前記指示を行う、開示1または2に記載の処理装置。
(開示4)
前記動作指示手段は、前記荷役装置が前記目標受取位置に到達する前に前記補正量に基づく前記荷役装置の動作が終了するタイミングで、前記指示を行い、
前記補正量に基づいて前記目標受取位置が補正される場合、前記動作指示手段は、前記荷役装置が、当該補正前の前記目標受取位置または当該補正後の前記目標受取位置に到達する前に前記補正量に基づく前記荷役装置の動作が終了するタイミングで、前記指示を行う、開示3に記載の処理装置。
(開示5)
前記補正量算出手段は、前記荷役対象物体の実在位置および置かれた状態のうちの少なくとも一方を特定するための情報である物体特定情報を検知する物体検知用センサの検知信号に基づいて、前記補正量を算出する、開示1~4のいずれか1つに記載の処理装置。
(開示6)
前記物体検知用センサは、前記荷役装置に取り付けられている、開示5に記載の処理装置。
(開示7)
前記荷役装置は、走行方向への走行と、横行方向への横行と、を行うクレーンを備え、
前記物体検知用センサは、前記クレーンの走行方向における端部に取り付けられている、開示5に記載の処理装置。
(開示8)
前記荷役対象物体は、移動可能な運搬装置に置かれており、
前記荷役装置の前記目標受取位置を、前記運搬装置の目標停止位置に対する実在位置のずれ量分ずらした位置に変更する受取位置変更手段を備え、
前記補正量算出手段は、前記受取位置変更手段により変更された前記目標受取位置に対する補正量を算出する、開示1~7のいずれか1つに記載の処理装置。
(開示9)
前記運搬装置の実在位置は、運搬装置検知用センサの検知信号に基づいて特定される、開示8に記載の処理装置。
(開示10)
前記荷役装置により一度に荷役される複数の前記荷役対象物体の実在位置と、当該複数の荷役対象物体の置かれた状態と、のうちの少なくとも一方に基づいて、当該複数の前記荷役対象物体を前記荷役装置で一度に荷役することが出来るか否かを判定する荷役可否判定手段と、
前記荷役可否判定手段により、複数の前記荷役対象物体を前記荷役装置で一度に荷役することが出来ないと判定された場合、前記複数の前記荷役対象物体のうち、前記荷役装置で一度に荷役することが出来ない原因となっている前記荷役対象物体を前記複数の前記荷役対象物体から除外する荷役対象物体変更手段と、を備える、開示1~9のいずれか1つに記載の処理装置。
(開示11)
前記荷役装置は、走行方向への走行と、横行方向への横行と、を行うクレーンを備える、開示1~10のいずれか1つに記載の処理装置。
(開示12)
物体を荷役する荷役装置の動作に関する処理を行う処理方法であって、
前記荷役装置により荷役される対象の荷役対象物体を前記荷役装置が受け取る目標位置として予め決められている目標受取位置を示す情報と、前記荷役装置の荷役時の目標となる姿勢として予め決められている目標姿勢を示す情報と、前記荷役対象物体の実在位置および置かれた状態のうちの少なくとも一方を示す情報と、を取得する取得工程と、
前記荷役対象物体の実在位置および置かれた状態のうちの少なくとも一方を示す情報に基づいて、前記荷役装置の前記目標受取位置および前記目標姿勢のうちの少なくとも一方に対する補正量を、前記荷役装置が前記目標受取位置に到達する前に算出する補正量算出工程と、
前記補正量に基づいて前記目標受取位置および前記目標姿勢のうちの少なくとも一方を補正する指示を、前記荷役装置に対して行う動作指示工程と、
を備える、処理方法。
(開示13)
開示1~11のいずれか1つに記載の処理装置の各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0217】
100 クレーン
110 クレーン本体
111 ガーダ
112a~112b サドル
113a~113b 車輪
114 走行位置検知用センサ
115 運転室
116a~116b 横行レール
120 横行クラブ
121 横行位置検知用センサ
130 吊具
131 索条
132 保持部
133 回動部
134 揺動部
135 胴部
136a~136b 脚部
137a~137b 爪部
140a~140b 物体検知用センサ
150 クレーン用コンピュータ
200a~200b 走行レール
201 索条の揺動軸
202 吊具の回動角度を定める始線(仮想線)
203 吊具の揺動角度を定める始線(仮想線)
301a~301b スラブがない領域のレーザ光の操作範囲
302a~302b 下に置かれているスラブのみがある領域のレーザ光の操作範囲
303 上下の2つのスラブがある領域のレーザ光の操作範囲
401~403 スラブの表面形状の検知結果
501 荷受対象スラブの回動角度を定める始線(仮想線)
502 荷受対象スラブの揺動角度を定める始線(仮想線)
900 上位コンピュータ
910 取得部
920 受取位置変更部
930 補正量算出部
940 動作指示部
950 報知部
1001~1003 表面が反っている場合のスラブの表面形状の検知結果
1001a~1003a 表面が反っている場合の荷受対象スラブの表面形状の検知結果
1101~1103 長さ方向において傾いた状態で置かれている場合の荷受対象スラブの表面形状の検知結果
1201~1203 幅方向において傾いた状態で置かれている場合の荷受対象スラブの表面形状の検知結果
1301 x-y平面における荷受対象スラブの表面形状を定める外接矩形
1302 外接矩形の左下の頂点
1303 外接矩形の左下の頂点からx軸の正の方向に延びる仮想線(荷受対象スラブの回動角度を定める始線)
1304 外接矩形の右下の頂点
1305 外接矩形の左下の頂点から右下の頂点に向かう仮想線(荷受対象スラブの回動角度を定める動径)
1306 レーザ光Lが走査される位置を示す矢印線
1401 クレーンの走行速度パターン
1701~1705 荷受対象スラブの表面形状の検知結果
1810 荷役可否判定部
1820 荷役対象物体変更部
A1 荷受指示情報に含まれる目標荷受位置
A1' 補正後の目標荷受位置
A1'' 補正前の目標荷受位置
A2 目標停止位置
A2' 補正後の目標停止位置
A2'' 補正前の目標停止位置
A3 貨車の目標停止位置
C1~C2 貨車の実在位置
D1~D7 荷受対象スラブの実在位置
EL1~EL2 荷受対象スラブの長さ方向の左端の位置
ER1~ER2 荷受対象スラブの長さ方向の右端の位置
L、L' レーザ光
L1~L2 荷受対象スラブの長さ
LS 荷受対象スラブの表面形状の検知結果から特定される荷受対象スラブの長さ
M スラブ
M1 上に置かれているスラブ
M2 下に置かれているスラブ
SL 荷受対象スラブの表面形状の検知結果から特定される荷受対象スラブの長さ方向の左端の位置
SR 荷受対象スラブの表面形状の検知結果から特定される荷受対象スラブの長さ方向の右端の位置
T 補正指示想定時間と補正動作想定時間とを加算した時間
T1 補正量の算出を開始してから当該補正量に基づくクレーンの動作の指示を行うまでの時間として想定される時間(補正指示想定時間)
T2 クレーンの事前補正動作を行うのに要する時間として想定される時間(補正動作想定時間)
Ss、YSe 物体検知用センサの実在位置と、補正前の目標荷受位置と、の走行方向(y軸方向)の距離
S 物体検知用センサの実在位置
ds クレーン(クレーン本体)が最初に減速を開始するタイミング
ms 物体検知用センサによる検知が開始するタイミング(検知開始タイミング)
me 物体検知用センサによる検知が終了するタイミング(検知終了タイミング)
de クレーン(クレーン本体)が最初の減速を終了するタイミング
e クレーンが停止するタイミング
φ 吊具の回動角度
θ 吊具の揺動角度
φ' 荷受対象スラブの回動角度
θ' 荷受対象スラブの揺動角度
Δh 荷受対象スラブのz軸方向の変形量
Δx 荷受対象スラブの実在位置の目標荷受位置に対するx軸方向におけるずれ量
Δx1 貨車の実在位置の目標停止位置に対するx軸方向におけるずれ量
Δx2 荷受対象スラブの実在位置の貨車の実在位置に対するx軸方向におけるずれ量
Δy 荷受対象スラブの実在位置の目標荷受位置に対するy軸方向におけるずれ量
Δz 荷受対象スラブの実在位置の目標荷受位置に対するz軸方向におけるずれ量
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19-1】
図19-2】