(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000621
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20231226BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20231226BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20231226BHJP
H10B 12/00 20230101ALI20231226BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
H01L29/78 626A
H01L29/78 616V
H01L29/78 613B
H01L21/28 301R
H01L21/28 301B
H01L29/50 M
H01L27/108 621C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099395
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(72)【発明者】
【氏名】安田 かすみ
(72)【発明者】
【氏名】河合 宏樹
【テーマコード(参考)】
4M104
5F083
5F110
【Fターム(参考)】
4M104AA03
4M104AA08
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5F110NN74
(57)【要約】
【課題】酸素欠損の量を安定に制御し、かつ、キャリアの移動度を良好にすることが可能な半導体装置及び半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、第1電極50と、第2電極32と、第1電極50及び第2電極32とそれぞれ接する金属酸化物半導体41と、ゲート電極42と、金属酸化物半導体41の少なくとも一部とゲート電極42との間に設けられる絶縁膜43と、を備え、金属酸化物半導体41は、金属元素として、インジウムと、亜鉛と、ニオブと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極及び前記第2電極とそれぞれ接する金属酸化物半導体と、
ゲート電極と、
前記金属酸化物半導体の少なくとも一部と前記ゲート電極との間に設けられる絶縁膜と、を備え、
前記金属酸化物半導体は、金属元素として、インジウムと、亜鉛と、ニオブと、を含む、
半導体装置。
【請求項2】
前記金属酸化物半導体は、第1方向に沿って延在し、前記第1方向の両端において前記第1電極及び前記第2電極とそれぞれ接し、
前記ゲート電極は、前記金属酸化物半導体に対して前記第1方向と交わる第2方向に位置し、前記金属酸化物半導体における前記第1電極と前記第2電極との間の第1部分と前記絶縁膜を介して対向する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記金属酸化物半導体は、前記両端のみにおいて前記第1電極及び前記第2電極とそれぞれ接する、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1電極は、
前記金属酸化物半導体と接し、インジウム、錫及び酸素を含む第1膜と、
前記第1膜に接し、前記第1膜に対する前記金属酸化物半導体の反対側に設けられ、タングステンを含む第2膜と、を含む、
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記金属酸化物半導体における前記第1電極と前記第2電極との間の第1部分よりも前記第1電極に近い第2部分に含まれるニオブの原子パーセントは、前記第1部分よりも前記第2電極に近い第3部分に含まれるニオブの原子パーセントより大きい、
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記金属酸化物半導体は、アモルファス構造を有する、
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記金属酸化物半導体に含まれる前記亜鉛の原子パーセントを、前記金属酸化物半導体に含まれる前記インジウムの原子パーセントで除した値は、0.15以上0.75以下である、
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記金属酸化物半導体は、前記金属元素としてガリウムをさらに含み、
前記金属酸化物半導体に含まれる前記ガリウムの原子パーセントを前記金属元素の原子パーセントで除した値は、0.25以下である、
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記金属酸化物半導体に含まれる前記ニオブの原子パーセントを前記金属元素の原子パーセントで除した値は、0.2以下である、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記金属酸化物半導体に含まれる前記ニオブの原子パーセントを前記金属元素の原子パーセントで除した値は、0.2以下である、
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記半導体装置は、
半導体基板をさらに備え、
前記金属酸化物半導体は、前記第2電極に対して前記半導体基板から離れる方向に位置し、
前記第1電極は、前記金属酸化物半導体に対して前記半導体基板から離れる方向に位置する、
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の前記半導体装置と、
前記第2電極に接続された第1キャパシタ電極と、
前記第1キャパシタ電極と対向する第2キャパシタ電極と、
前記第1キャパシタ電極と前記第2キャパシタ電極との間に設けられた誘電膜と、を備える、
半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体装置及び半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の中には、金属酸化物半導体によって形成されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開US2013/0306965号明細書
【特許文献2】特開2017-85071号公報
【特許文献3】特開2022-20682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属酸化物半導体に接続される部材の種類によらず、当該金属酸化物半導体における酸素欠損の量及びキャリアの移動度を制御しやすい金属酸化物半導体の材料が求められている。
【0005】
本開示は、酸素欠損の量を安定に制御し、かつ、キャリアの移動度を良好にすることが可能な半導体装置及び半導体記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極とそれぞれ接する金属酸化物半導体と、ゲート電極と、前記金属酸化物半導体の少なくとも一部と前記ゲート電極との間に設けられる絶縁膜と、を備え、前記金属酸化物半導体は、金属元素として、インジウムと、亜鉛と、ニオブと、を含む。
【0007】
本開示に係る半導体記憶装置は、前記半導体装置と、前記第2電極に接続された第1キャパシタ電極と、前記第1キャパシタ電極と対向する第2キャパシタ電極と、前記第1キャパシタ電極と前記第2キャパシタ電極との間に設けられた誘電膜と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】メモリセルアレイの回路構成例を説明するための回路図である。
【
図2】半導体記憶装置の構造例を説明するための断面模式図であり、YZ面に平行な断面の一部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
以下、本実施形態に係る半導体記憶装置の構成について説明する。各図面には、X軸、Y軸及びZ軸を示すことがある。X軸、Y軸及びZ軸は、右手系の3次元の直交座標を形成する。以下、X軸の矢印方向をX軸+側、矢印とは逆方向をX軸-側と呼ぶことがあり、その他の軸についても同様である。なお、Z軸+側及びZ軸-側を、それぞれ「上側」及び「下側」と呼ぶこともある。また、X軸、Y軸又はZ軸にそれぞれ直交する面を、YZ面、ZX面又はXY面と呼ぶことがある。
【0011】
本明細書において「接続」とは物理的な接続だけでなく電気的な接続も含み、特に指定する場合を除き、直接接続だけでなく間接接続も含む。
【0012】
実施形態の半導体記憶装置101は、OS-RAM(Oxide Semiconductor-Random Access Memory)であって、メモリセルアレイを備える。
【0013】
図1に示すように、メモリセルアレイは、複数のメモリセルMCと、複数のワード線WLと、複数のビット線BLと、を含む。
【0014】
図1には、複数のワード線WLの一例として、ワード線WLn、ワード線WLn+1及びワード線WLn+2が示される(ここで、nは整数である)。また、
図1には、ビット線BLの一例として、ビット線BLm、ビット線BLm+1及びビット線BLm+2が示される(ここで、mは整数である)。なお、複数のメモリセルMCの個数は、
図1に示す個数に限定されない。
【0015】
複数のメモリセルMCは、例えばマトリクス状に配列されることにより、メモリセルアレイを形成する。メモリセルMCは、電界効果トランジスタ(FET)であるメモリトランジスタMTRと、メモリキャパシタMCPと、を含む。
【0016】
行方向に沿って設けられる一連のメモリセルMCは、自己の属する行(例えば第n行)に対応するワード線WL(例えばワード線WLn)に接続される。列方向に沿って設けられる一連のメモリセルMCは、自己の属する列(例えば第m+2列)に対応するビット線BL(例えばビット線BLm+2)に接続される。
【0017】
詳細には、メモリセルMCに含まれるメモリトランジスタMTRのゲートは、当該メモリセルMCの属する行に対応するワード線WLに接続される。メモリトランジスタMTRのソース又はドレインの一方は、当該メモリセルMCの属する列に対応するビット線BLに接続される。
【0018】
メモリセルMCに含まれるメモリキャパシタMCPの一方の電極は、当該メモリセルMCに含まれるメモリトランジスタMTRのソース又はドレインの他方に接続される。メモリセルMCの他方の電極は、特定の電位を供給する電源線(図示しない)に接続される。
【0019】
メモリセルMCは、対応するワード線WLの電位に基づくメモリトランジスタMTRのスイッチングにより、対応するビット線BLを流れる電流によるメモリキャパシタMCPへの電荷の蓄積によってデータを保持可能に構成される。
【0020】
図2に示すように、半導体記憶装置101は、半導体基板10と、回路11と、キャパシタ20と、半導体装置30と、導電体33と、絶縁層34、35、45及び63と、を備える。
【0021】
キャパシタ20は、電気伝導体21と、絶縁膜22(誘電膜)と、導電体23と、電気伝導体24(第1キャパシタ電極)及び25(第2キャパシタ電極)と、を含む。
【0022】
半導体装置30は、電界効果トランジスタ40(半導体素子)と、導電性酸化物層32(第2電極)と、第1電極50と、を含む。
【0023】
電界効果トランジスタ40は、酸化物半導体層41(金属酸化物半導体)と、導電層42(ゲート電極)と、絶縁層43(絶縁膜)と、を含む。第1電極50は、導電性酸化物層51(第1膜)と、導電層52(第2膜)と、を含む。
【0024】
回路11は、半導体記憶装置101の複数のメモリセルMC(半導体装置30)のうち、所定のメモリセルMCを選択するためのデコーダ、ビット線BLに接続されるセンスアンプ、SRAMから構成されるレジスタなどの周辺回路を構成する。回路11は、CMOSプロセスで形成されたPチャネル型電界効果トランジスタ(Pch-FET)及びNチャネル型電界効果トランジスタ(Nch-FET)の電界効果トランジスタを有するCMOS回路を含んでよい。
【0025】
回路11の電界効果トランジスタは、例えば単結晶シリコン基板などの半導体基板10を用いて形成可能である。Pch-FET及びNch-FETは、半導体基板10にチャネル領域とソース領域とドレイン領域とを有し、半導体基板10の表面に近接した領域において半導体基板10の表面と略平行なX軸方向又はY軸方向にキャリアを流すためのチャネルを有する、いわゆる、横型の電界効果トランジスタである。なお、半導体基板10はP型乃至N型の導電型を有していてもよい。なお、
図2は、便宜のため、回路11の電界効果トランジスタの一例を図示する。
【0026】
キャパシタ20は、メモリセルMCに含まれるメモリキャパシタMCPである(
図1参照)。
図2には、4つのキャパシタ20を図示しているが、キャパシタ20の個数は、4つに限定されない。
【0027】
本実施形態では、キャパシタ20は、半導体基板10の上側(半導体基板10の表面よりも上方の領域)に設けられる。キャパシタ20における第1キャパシタ電極に相当する電気伝導体24は、導電性酸化物層32に接続される。キャパシタ20における第2キャパシタ電極に相当する電気伝導体25は、電気伝導体24と対向する。絶縁膜22は、電気伝導体24と電気伝導体25との間に設けられる。
【0028】
キャパシタ20は、ピラー型キャパシタ及びシリンダー型キャパシタなどの3次元キャパシタである。電気伝導体24は、電気伝導体21と絶縁膜22との間に設けられる。電気伝導体25は、絶縁膜22と絶縁層34との間及び絶縁膜22と導電体23との間に設けられる。
【0029】
電気伝導体21は、アモルファスシリコンなどの材料を含んでよい。絶縁膜22は、酸化ハフニウムなどの材料を含んでよい。導電体23、電気伝導体24及び電気伝導体25は、タングステン(W)及び窒化チタン(TiN)などの材料を含んでよい。
【0030】
導電体33は、回路11と半導体装置30とを電気的に接続する配線を含む。導電体33は、ビア配線を含んでよく、例えば
図2に示されるようにZ軸方向に延伸してワード線WLと半導体基板10上に設けられる回路11とを接続するビア配線を有する。導電体33は、例えば銅を含む。
【0031】
絶縁層34は、複数のキャパシタ20間に設けられる。絶縁層34は、例えばシリコンと酸素とを含有するシリコン酸化膜である。
【0032】
絶縁層35は、絶縁層34の上側に設けられる。絶縁層35は、例えばシリコンと窒素とを含有するシリコン窒化膜である。
【0033】
半導体装置30は、キャパシタ20の上側に設けられる。半導体装置30における導電性酸化物層32は、電気伝導体21の上側に設けられる。導電性酸化物層32は、インジウム-錫-酸化物(ITO)などの金属酸化物を含む。
【0034】
電界効果トランジスタ40は、メモリセルMCのメモリトランジスタMTRに相当する。電界効果トランジスタ40は、導電性酸化物層32の上側に設けられる。
【0035】
電界効果トランジスタ40における酸化物半導体層41は、第1電極50及び導電性酸化物層32とそれぞれ当接する。酸化物半導体層41は、導電性酸化物層32に対して半導体基板10から離れる方向(Z軸+方向に相当し、上方と呼んでもよい)に位置する。第1電極50は、酸化物半導体層41に対して半導体基板10から離れる方向(Z軸+方向に相当し、上方と呼んでもよい)に位置することにより、半導体基板10の表面に略垂直なZ軸方向(第1方向)に延伸するチャネルを有する、いわゆる、縦型のトランジスタである。
【0036】
酸化物半導体層41は、Z軸方向(第1方向)に延在する柱状体である。酸化物半導体層41は、電界効果トランジスタ40のチャネルを形成する。酸化物半導体層41は、アモルファス構造を有する。
【0037】
また、酸化物半導体層41は、酸素欠損がドナーとなる半導体であり、金属元素として、インジウム(In)と、亜鉛(Zn)と、ニオブ(Nb)と、ガリウム(Ga)と、を含む。詳細には、酸化物半導体層41は、インジウム、ガリウム及び亜鉛の酸化物すなわちIGZO(InGaZnO)に5価のニオブの酸化物(Nb2O5)が添加されたものである。
【0038】
酸化物半導体層41に含まれるガリウムの原子パーセントを、金属元素の原子パーセントすなわちインジウム、亜鉛、ニオブ及びガリウムの各々の原子パーセントの合計で除した値は、0.25以下である。酸化物半導体層41に含まれる亜鉛の原子パーセントを、酸化物半導体層41に含まれるインジウムの原子パーセントで除した値は、0.15以上0.75以下である。酸化物半導体層41に含まれるニオブの原子パーセントを、酸化物半導体層41に含まれる金属元素の原子パーセントすなわちインジウム、亜鉛、ニオブ及びガリウムの各々の原子パーセントの合計で除した値は、0.2以下である。
【0039】
酸化物半導体層41は、Z軸方向の両端のみにおいて(例えば、Z軸方向を向いた2つの端面において)第1電極50及び導電性酸化物層32とそれぞれ接する。酸化物半導体層41のZ軸+側の一端は、導電性酸化物層51を介して導電層52に接続され、電界効果トランジスタ40のソースまたはドレインの一方として機能する。酸化物半導体層41のZ軸-側の他端は、導電性酸化物層32に接続され、電界効果トランジスタ40のソースまたはドレインの他方として機能する。なお、酸化物半導体層41は、自己の側面において第1電極50及び導電性酸化物層32の少なくとも一方と接する構成であってもよい。
【0040】
導電性酸化物層32は、キャパシタ20における電気伝導体21と、電界効果トランジスタ40における酸化物半導体層41との間に設けられ、電界効果トランジスタ40のソース電極またはドレイン電極の他方として機能する。導電性酸化物層32は、電界効果トランジスタ40における酸化物半導体層41と同様に金属酸化物を含むため、電界効果トランジスタ40と導電性酸化物層32との接続抵抗を低減できる。
【0041】
導電層42は、酸化物半導体層41と対向して設けられる。酸化物半導体層41と導電層42との間に絶縁層43が設けられる。導電層42は、酸化物半導体層41に対してZ軸方向と交わる第2方向に位置する。酸化物半導体層41における第1電極50と導電性酸化物層32との間の第1部分41aは絶縁層43と接し、絶縁層43は導電層42と接する。
【0042】
本実施形態では、導電層42は、Y軸方向に延在する。導電層42は、XY面において絶縁層43を挟んで酸化物半導体層41に重畳する。導電層42は、電界効果トランジスタ40のゲート電極を構成するとともに、ワード線WLとして機能する。導電層42は、例えば金属、金属化合物、又は、半導体を含む。導電層42は、例えば、タングステン、チタン(Ti)、窒化チタン、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、およびルテニウム(Ru)からなる群より選ばれる少なくとも一つの材料を含む。導電層42は導電体33に接続される。
【0043】
絶縁層43は、XY面において、酸化物半導体層41と導電層42との間に設けられる。絶縁層43は、電界効果トランジスタ40のゲート絶縁膜を形成する。絶縁層43は、例えば、シリコンと、酸素または窒素と、を含む。
【0044】
電界効果トランジスタ40は、ゲート電極がチャネルを囲んで配置される、いわゆるSurrounding Gate Transistor(SGT)である。SGTにより半導体記憶装置の面積を小さくできる。
【0045】
酸化物半導体を含むチャネル層を有する電界効果トランジスタは、半導体基板10に設けられた電界効果トランジスタよりもオフリーク電流が低い。よって、例えばメモリセルMCに保持されたデータを長く保持できるため、リフレッシュ動作の回数を減らすことができる。また、酸化物半導体を含むチャネル層を有する電界効果トランジスタは、低温プロセスで形成可能であるため、キャパシタ20に熱ストレスを与えることを抑制できる。
【0046】
絶縁層45は、例えば複数の電界効果トランジスタ40の間に設けられる。絶縁層45は、例えばシリコンと酸素とを含有するシリコン酸化膜である。
【0047】
第1電極50は、酸化物半導体層41と当接する。第1電極50における導電性酸化物層51は、インジウム、錫及び酸素を含む。具体的には、導電性酸化物層51は、インジウム及び錫の酸化物(ITO)を含む。導電性酸化物層51は、酸化物半導体層41の上側の端面に当接する。
【0048】
導電性酸化物層51は、電界効果トランジスタ40のソース電極またはドレイン電極の一方として機能する。導電性酸化物層51は、酸化物半導体層41と同様に金属酸化物を含むため、電界効果トランジスタ40と導電性酸化物層51との接続抵抗を低減できる。
【0049】
導電層52は、導電性酸化物層51の少なくとも一部の上側に設けられ、導電性酸化物層51に当接する。導電層52は、図示しないビット線BLに電気的に接続される電極を形成する。導電層52はビット線BLを介して回路11中のセンスアンプに電気的に接続される。導電層52は、金属元素を含む。本実施形態では、導電層52は、タングステンを含む。なお、導電層52は、タングステン以外の他の金属元素を含んでもよい。
【0050】
絶縁層63は、例えば導電性酸化物層51と導電層52とを含む積層の間に設けられる。絶縁層63は、例えばシリコンと酸素とを含有するシリコン酸化膜である。
【0051】
半導体装置30を形成するプロセスでは、酸化性雰囲気下で加熱処理が行われることによって、導電性酸化物層51を介して酸化物半導体層41に酸素を導入することができる。酸化性雰囲気は、例えば酸素、オゾン又は水蒸気等を含む。さらに、窒素雰囲気下で加熱処理が行われてもよい。なお、半導体装置30を形成するプロセスでは、還元性雰囲気下で加熱処理が行われてもよい。
【0052】
導電層52には、還元性を有するタングステンが含まれる。酸化物半導体層41、導電性酸化物層51及び導電層52の加熱処理を行う場合、導電層52に含まれるタングステンは、導電性酸化物層51に含まれるITOから酸素を奪い、自らが酸化することがある。
【0053】
そして、導電性酸化物層51に含まれるITOが、酸化物半導体層41に含まれるIGZOから酸素を奪うことによって、酸化物半導体層41に酸素欠損が生成される。
【0054】
酸化物半導体層41における酸素欠損はドナーとして機能するので、酸化物半導体層41に酸素欠損が過剰に生成されると、酸化物半導体層41の電気的性質が金属に近づき半導体性が失われてしまう。ガリウムと酸素との結合が強いので、酸化物半導体層41におけるガリウムの濃度を大きくすると、酸素欠損が抑制される。しかしながら、酸化物半導体層41におけるキャリアの移動度が低下する問題がある。
【0055】
発明者らは、価数の大きい金属陽イオンの電気的引力が強いことに着目し、IGZOに含まれるガリウムの代わりに価数の大きい金属陽イオンを配置させるか、又は価数の大きい金属陽イオンをIGZOにさらに加えることによって酸素欠損の抑制が期待できることを着想した。
【0056】
具体的には、発明者らは、価数の大きい金属陽イオンとして、5価の金属陽イオンとなり得るバナジウム(V)、ニオブ及びタンタル(Ta)並びに6価の金属陽イオンとなり得るモリブデン、タングステン及びレニウム(Re)について検討した。
【0057】
これらのうち、6価の金属陽イオンとなり得るReの酸化物には昇華性があるため、安定性に乏しく、好ましくない。また、他の6価の金属陽イオンとなり得るMo及びWは、酸化物の結晶化温度が低いため、多結晶化しやすい。多結晶化すると、結晶粒界がランダムに生成されるため、チャネルごとの抵抗値にばらつきが生じてしまう。このため、Mo及びWよりも酸化物の結晶化温度の高いV、Nb及びTaが好ましい。
【0058】
V、Nb及びTaのうち、V、Nb及びTaの順に酸化物の結晶化温度が高くなる。また、V、Nb及びTaのうち、V、Nb及びTaの順に酸化物のバンドギャップが大きくなる。
【0059】
Vを添加する場合、酸化物の原子の再配置による結晶化が低い温度で起こるため、Vと酸素との結合が弱いことが推測される。つまり、Vが添加された金属酸化物半導体では、酸素欠損が発生しやすいので、金属酸化物半導体の電気的性質が金属に近づく。また、Vを添加したときの酸化物のバンドギャップが小さいことによっても、金属酸化物半導体の電気的性質が金属に近づく。このため、当該金属酸化物半導体におけるリーク電流が増大してしまう。
【0060】
一方、Taを添加する場合、Taを添加したときの酸化物のバンドギャップが大きいことによって金属酸化物半導体の電気的性質が絶縁体に近づくため、当該金属酸化物半導体におけるキャリアの移動度が低下する。
【0061】
金属元素としてNbを金属酸化物半導体に添加する場合、結晶化温度が高いので、当該金属酸化物半導体をアモルファス構造にしやすくすることができる。このようにアモルファス構造にすることにより、粒界のばらつきが小さくすることができるので、チャネルごとの電気的特性のばらつきを抑制することができる。
【0062】
また、Nbと酸素との結合が強いので、酸素欠損が過剰に生成されることを抑制することができる。さらに、Nbを添加したときには、当該金属酸化物半導体のバンドギャップをその電気的性質が良好な半導体性となるように適切な値にすることができる。したがって、チャネルごとの電気的特性のばらつきを抑制し、酸素欠損の量を安定に制御し、かつ、キャリアの移動度を良好にすることができる。
【0063】
(変形例1)
図2に示すように、酸化物半導体層41において、第1部分41aよりも第1電極50に近い第2部分41bに含まれるニオブの原子パーセントは、第1部分41aよりも導電性酸化物層32に近い第3部分41cに含まれるニオブの原子パーセントより大きい。
【0064】
このように、Wを含む導電層52に近い第2部分41bにおいて、酸素と強く結合するニオブの原子パーセントを大きくする構成により、第2部分41bにおいて顕著な酸素の引き抜きをNbによって効果的に妨げることができるので、酸素欠損を抑制することができる。
【0065】
(a)本実施形態では、IGZOにNbを添加する構成について説明したが、これに限定するものではない。インジウムの酸化物(In2O3)及び亜鉛の酸化物(ZnO)の二元系酸化物すなわちIZO(InZnO)にNbの酸化物(Nb2O5)を添加する構成であってもよい。この場合、酸化物半導体層41に含まれる亜鉛の原子パーセントを、酸化物半導体層41に含まれるインジウムの原子パーセントで除した値が、0.15以上0.75以下である構成が好ましい。また、酸化物半導体層41に含まれるNbの原子パーセントを、酸化物半導体層41に含まれる金属元素の原子パーセントすなわちインジウム、亜鉛及びニオブの各々の原子パーセントの合計で除した値が、0.2以下である構成が好ましい。
【0066】
(b)本実施形態では、電界効果トランジスタ40がSGTである構成について説明したが、これに限定するものではない。電界効果トランジスタ40は、ボトムゲート型構造などの他の構造を有する構成であってもよい。
【0067】
(c)本実施形態では、電界効果トランジスタ40がOS-RAMに用いられる構成について説明したが、これに限定するものではない。電界効果トランジスタ40は、OS-RAM以外の半導体装置に適用することも可能である。
【0068】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0069】
10…半導体基板
11…回路
20…キャパシタ
21…電気伝導体
22…絶縁膜
23…導電体
24、25…電気伝導体
30…半導体装置
32…導電性酸化物層
33…導電体
34、35…絶縁層
40…電界効果トランジスタ
41…酸化物半導体層
41a…第1部分
41b…第2部分
41c…第3部分
42…導電層
43、45…絶縁層
50…第1電極
51…導電性酸化物層
52…導電層
63…絶縁層
101…半導体記憶装置