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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062101
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20240430BHJP
   F16F 9/46 20060101ALI20240430BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
F16F9/32 H
F16F9/32 T
F16F9/46
F16F9/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169881
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】514241869
【氏名又は名称】カヤバモーターサイクルサスペンション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】久保 潔
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA50
3J069AA64
3J069CC09
3J069EE11
3J069EE32
3J069EE36
(57)【要約】
【課題】ニードルバルブを備えていても伸長時或いは収縮時の減衰力のみを変更可能な緩衝器を提供する。
【解決手段】本発明の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向移動可能に挿入されるピストン2と、シリンダ1内に挿入されるとともにピストン2に連結されるピストンロッド3と、液体が充填される複数の作動室R2,4とを有する緩衝器本体DBと、作動室R2,4同士を連通する第1通路P1およびバイパス路PBと、第1通路P1に設けられて一方の作動室R2から他方の作動室4へ向かう液体の流れに抵抗を与える減衰バルブ5と、バイパス路PBに設けられて一方の作動室R2から他方の作動室4へ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブ6と、バイパス路PBにチェックバルブ6と直列に設けられて流路面積を変更可能なニードルバルブ7とを備えている。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、前記シリンダ内に軸方向移動可能に挿入されるピストンと、前記シリンダ内に挿入されるとともに前記ピストンに連結されるピストンロッドと、液体が充填される複数の作動室とを有する緩衝器本体と、
前記作動室同士を連通する第1通路およびバイパス路と、
前記第1通路に設けられて一方の作動室から他方の作動室へ向かう液体の流れに抵抗を与える減衰バルブと、
前記バイパス路に設けられて一方の作動室から他方の作動室へ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブと、
前記バイパス路に前記チェックバルブと直列に設けられて流路面積を変更可能なニードルバルブとを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記緩衝器本体は、
前記シリンダ内に前記ピストンで区画される伸側室および圧側室と、
液体を貯留するタンクとを有し、
前記伸側室と前記圧側室とをそれぞれ並列して連通する第2通路および第3通路と、
前記圧側室と前記タンクとを連通する吸込通路と、
前記第2通路に設けられて前記伸側室から前記圧側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブと、
前記第3通路に設けられて前記圧側室から前記伸側室へ向かう液体の流れのみを許容する圧側チェックバルブと、
前記吸込通路に設けられて前記タンクから前記圧側室へ向かう液体の流れのみを許容する伸側チェックバルブとを備え、
前記第1通路および前記バイパス路は、前記作動室を前記圧側室と前記タンクとして、前記圧側室と前記タンクとを連通し、
前記減衰バルブは、前記圧側室から前記タンクへ向かう液体の流れのみを許容しつつ当該液体の流れに抵抗を与え、
前記チェックバルブは、前記圧側室から前記タンクへ向かう液体の流れのみを許容する
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記チェックバルブおよび前記ニードルバルブを収容するハウジングを備え、
前記ニードルバルブは、
筒状であって前記ハウジング内に挿入されるニードルケースと、
前記ニードルケース内に軸方向へ移動可能に挿入されるニードルとを有し、
前記ニードルケースは、一端に内径が拡径されて形成される環状凹部を有し、
前記チェックバルブは、
前記ニードルケースの一端側と前記ハウジングとで挟み込まれて前記環状凹部に対向して前記ニードルケースと前記ハウジングとに密着するとともに、肉厚を貫く孔を具備する円盤状の弁座部材と、
前記環状凹部内に軸方向へ移動可能に収容されて前記弁座部材に対して離着座する環状弁体と、
前記環状凹部内に収容されるとともに前記環状弁体を前記弁座部材へ向けて付勢する環状の付勢部材とを有し、
前記バイパス路は、前記孔および前記ニードルケース内を介して前記作動室同士を連通する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記ニードルケースは、内周に前記ニードルが離着座する環状弁座を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記環状弁体および前記付勢部材は、前記ニードルケースにおける前記環状凹部の側壁面によって径方向に位置決められる
ことを特徴とする請求項3に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、たとえば、鞍乗型車両の車体と車輪との間に介装されて使用され、伸縮時に発生する減衰力で車体と車輪の振動を抑制する。
【0003】
このような緩衝器は、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動可能に挿入されてシリンダ内を作動油が充填される伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内に移動可能に挿入されるとともにピストンに連結されるピストンロッドと、作動油を貯留するタンクと、ピストンに設けられて伸側室から圧側室へ向かう作動油の流れに抵抗を与える許容する伸側減衰バルブと、ピストンに設けられて圧側室から伸側室へ向かう作動油の流れのみを許容する圧側チェックバルブと、圧側室からタンクへ向かう作動油の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブと、タンクから圧側室へ向かう作動油の流れのみを許容する伸側チェックバルブと、圧側減衰バルブと伸側チェックバルブとに並列されて圧側室からタンクへ向かう作動油の流れに抵抗を与えるニードルバルブとを備えて構成される(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
このように構成された緩衝器では、ニードルバルブを外部から操作するアジャスタを備えており、アジャスタの操作によってニードルバルブの流路面積を調整することで収縮時に発生する減衰力を高低調整し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-149057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の緩衝器では、ニードルバルブの流路面積の調整によって緩衝器の収縮時の減衰力を高低調整し得るが、ニードルバルブは流路を絞っているだけであるので、作動油が圧側室からタンクへ向かう流れだけでなく、タンクから圧側室へ向かう流れについても許容してしまう。
【0007】
よって、従来の緩衝器では、ニードルバルブの流路面積を変更して収縮時の減衰力の調整を行うと、緩衝器の伸長時にニードルバルブがタンクから圧側室へ向かう作動油の流れに与える抵抗も変化するため、緩衝器の伸長時の減衰力の特性も変化してしまう。
【0008】
このことは、ピストンに設けられた減衰バルブを迂回して伸側室と圧側室とを連通する通路をピストンロッド内に備えるとともに、当該通路内にニードルバルブを収容した緩衝器でも同様であって、ニードルバルブは、作動油が伸側室と圧側室とを双方向に通過するのを許容するために、ニードルバルブの流路面積の変更が緩衝器の伸長時および収縮時の減衰力に変化をもたらしてしまう。
【0009】
そこで、本発明は、ニードルバルブを備えていても伸長時或いは収縮時の減衰力のみを変更可能な緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明の緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に軸方向移動可能に挿入されるピストンと、シリンダ内に挿入されるとともにピストンに連結されるピストンロッドと、液体が充填される複数の作動室とを有する緩衝器本体と、圧側室とタンクとを連通する第1通路およびバイパス路と、第1通路に設けられて一方の作動室から他方の作動室へ向かう液体の流れに抵抗を与える減衰バルブと、バイパス路に設けられて一方の作動室から他方の作動室へ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブと、バイパス路にチェックバルブと直列に設けられて流路面積を変更可能なニードルバルブとを備えている。
【0011】
このように構成された緩衝器では、緩衝器の伸長行程或いは収縮行程の一方ではチェックバルブがバイパス路を遮断するので、ニードルバルブは、伸長行程或いは収縮行程の一方の減衰力に何ら影響を与えずに、緩衝器の伸長行程或いは収縮行程の他方の減衰力のみの調整を行える。
【0012】
また、緩衝器は、緩衝器本体が、シリンダ内にピストンで区画される伸側室および圧側室と、液体を貯留するタンクとを有し、伸側室と圧側室とをそれぞれ並列して連通する第2通路および第3通路と、圧側室とタンクとを連通する吸込通路と、第2通路に設けられて伸側室から圧側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブと、第3通路に設けられて圧側室から伸側室へ向かう液体の流れのみを許容する圧側チェックバルブと、吸込通路に設けられてタンクから圧側室へ向かう液体の流れのみを許容する伸側チェックバルブとを備え、第1通路およびバイパス路が、作動室を圧側室とタンクとして、圧側室とタンクとを連通し、減衰バルブが、圧側室からタンクへ向かう液体の流れのみを許容しつつ液体の流れに抵抗を与え、チェックバルブが圧側室からタンクへ向かう液体の流れのみを許容するように構成されてもよい。このように構成された緩衝器では、伸長行程時にバイパス路がチェックバルブによって遮断されるため、伸長速度が極低速である場合にバイパス路を通じて作動油が圧側室へ移動するのを阻止して圧側室内の圧力を速やかに下降させ得るので、減衰力の発生応答性を向上できる。
【0013】
また、緩衝器は、チェックバルブおよびニードルバルブを収容するハウジングを備え、ニードルバルブは、筒状であってハウジング内に挿入されるニードルケースと、ニードルケース内に軸方向へ移動可能に挿入されるニードルとを備え、ニードルケースは、一端に内径が拡径されて形成される環状凹部を有し、チェックバルブは、ニードルケースの一端側とハウジングとで挟み込まれて環状凹部に対向してニードルケースとハウジングとに密着するとともに肉厚を貫く孔を具備する円盤状の弁座部材と、環状凹部内に軸方向へ移動可能に収容されて弁座部材に対して離着座する環状弁体と、環状凹部内に収容されるとともに環状弁体を弁座部材へ向けて付勢する環状の付勢部材とを有し、バイパス路は、孔およびニードルケース内を介して圧側室とタンクとを連通してもよい。このように構成された緩衝器によれば、弁座部材とニードルケースとの間および弁座部材とハウジングとの間にシールを設けずとも、緩衝器の伸長行程時に作動油がバイパス路を通過するのを阻止できるとともに、緩衝器の収縮行程時に作動油がチェックバルブおよびニードルバルブを経由せずに圧側室からタンクへ移動するのを阻止できる。
【0014】
さらに、緩衝器におけるニードルケースが内周にニードルが離着座する環状弁座を備えていてもよい。このように構成された緩衝器によれば、ニードルケースが、環状弁座を備えてニードルを収容するニードルバルブのケースとして機能するだけでなく、環状弁体および付勢部材を収容するケースとしても機能するので、チェックバルブとニードルバルブとを極近くに直列配置して、チェックバルブとニードルバルブの全体を小型化できる。よって、このように構成された緩衝器によれば、チェックバルブおよびニードルバルブを備えていても大型化を回避できる。
【0015】
また、緩衝器における環状弁体および付勢部材は、ニードルケースにおける環状凹部の側壁面によって径方向に位置決められてもよい。このように構成された緩衝器によれば、環状弁体の全体が弁座部材から離間して再度着座する際に環状弁体および付勢部材の径方向への軸ぶれが抑制されるので、環状弁体の動作が安定して環状弁体が環状弁座に着座する際に安定して孔を閉塞できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の筒型リニアモータによれば、質量推力密度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施の形態における緩衝器を正面から見た縦断面図である。
図2図2は、鞍乗型車両に取り付けられたリアクッションユニットを示した図である。
図3図3は、一実施の形態における緩衝器を側面から見た縦断面図である。
図4図4は、一実施の形態における緩衝器の液圧回路図である。
図5図5は、一実施の形態における緩衝器のチェックバルブおよびニードルバルブの断面図である。
図6図6は、一実施の形態における緩衝器の減衰バルブの断面図である。
図7図7は、一実施の形態における緩衝器のチェックバルブおよびニードルバルブの一変形例の断面図である。
図8図8は、一実施の形態の緩衝器の第1変形例の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1および図2に示すように、一実施の形態における緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されてシリンダ1内を液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン2と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるとともにピストン2に連結されるピストンロッド3と、液体を貯留するタンク4とを備えた緩衝器本体DBと、圧側室R2とタンク4とを作動室として作動室同士を連通する第1通路P1およびバイパス路PBと、第1通路P1に設けられて一方の作動室としての圧側室R2から他方の作動室としてのタンク4へ向かう液体の流れに抵抗を与える減衰バルブとしての圧側減衰バルブ5と、バイパス路PBに設けられて圧側室R2からタンク4へ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブ6と、バイパス路PBにチェックバルブ6と直列に設けられて流路面積を変更可能なニードルバルブ7とを備えている。
【0019】
そして、この緩衝器Dは、図2に示すように、自動二輪車等の鞍乗型車両Mにおける車体Fと後輪Wとの間に介装されて使用され、車体Fおよび後輪Wの振動を抑制する。なお、緩衝器Dは、鞍乗型車両M以外の振動の抑制に利用されてもよい。
【0020】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。図1に示すように、本実施の形態の緩衝器本体DBは、シリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されてシリンダ1内を液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン2と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるとともにピストン2に連結されるピストンロッド3と、液体を貯留するタンク4とを備える。また、本実施の形態の緩衝器Dは、図4に示した回路図のように、緩衝器本体DB、第1通路P1、バイパス路PB、圧側減衰バルブ5、チェックバルブ6およびニードルバルブ7の他に、伸側室R1と圧側室R2とをそれぞれ並列して連通する第2通路P2および第3通路P3と、圧側室R2とタンク4とを連通する吸込通路P4と、第2通路P2に設けられて伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブ8と、第3通路P3に設けられて圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する圧側チェックバルブ9と、吸込通路P4に設けられてタンク4から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する伸側チェックバルブ10とを備えている。
【0021】
シリンダ1の図1中上端には、アッパーキャップ11が螺子締結によって装着されており、シリンダ1の上端の開口がアッパーキャップ11によって閉塞されている。
【0022】
また、シリンダ1の図1中下端には、環状であって内周にピストンロッド3が挿通されるロッドガイド15が取り付けられている。ロッドガイド15は、ピストンロッド3の外周に摺接しており、ピストンロッド3のシリンダ1に対する軸方向へ移動を案内する。
【0023】
また、ロッドガイド15の図1中下端には、環状のシール部材16が取り付けられている。シール部材16は、内周に挿通されるピストンロッド3の外周に摺接してピストンロッド3とロッドガイド15との間をシールして、シリンダ1内を密閉している。なお、シール部材16は、ロッドガイド15の代わりにシリンダ1に取り付けられてもよい。また、ロッドガイド15とシール部材16とのシリンダ1への固定手段は、任意に設計変更できる。
【0024】
シリンダ1内は、ピストン2によって、液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画されている。なお、液体は、本実施の形態では、作動油とされるが、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体の使用可能である。
【0025】
シリンダ1内に挿入されてピストン2に連結されるピストンロッド3の図1中下端には、鞍乗型車両Mにおける後輪Wを保持するスイングアームSAに連結可能なブラケットB1が取り付けられる。
【0026】
ピストン2には、伸側室R1と圧側室R2とをそれぞれ並列して連通する第2通路P2および第3通路P3とが設けられている。さらに、ピストン2には、第2通路P2を開閉可能であって伸側室R1から圧側室R2へ向かう作動油の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブ8と、第3通路P3を開閉可能であって圧側室R2から伸側室R1へ向かう作動油の流れのみを許容する圧側チェックバルブ9とが設けられている。
【0027】
伸側減衰バルブ8は、伸側室R1から圧側室R2へ向かう作動油の流れに抵抗を与えて緩衝器Dの伸長行程時に緩衝器Dの伸長を妨げる減衰力を発揮できるバルブであればよい。なお、伸側減衰バルブ8は、具体的には、ピストン2の図1中上端に環状板を複数枚積層して構成されて、内周側が固定されており伸側室R1の圧力によって外周側が撓むと第2通路P2を開放する積層リーフバルブとされている。
【0028】
また、圧側チェックバルブ9は、緩衝器Dの収縮行程時に圧側室R2から伸側室R1へ向かう作動油の流れのみを然程抵抗を与えずに許容できるバルブであればよい。なお、圧側チェックバルブ9は、具体的には、ピストン2の図1中下端に重ねられて内周が固定されたリーフバルブで構成されており圧側室R2の圧力によって外周側が撓むと第2通路P2を開放するバルブとされている。
【0029】
アッパーキャップ11は、本実施の形態では、図1および図3に示すように、シリンダ1の図1中上端に装着されるキャップ部11aと、タンク4を保持するタンク保持部11bと、キャップ部11aの側方から延びてタンク保持部11bに接続される筒状の接続部11cと、接続部11cとタンク保持部11bとの間に設けられてチェックバルブ6およびニードルバルブ7を備えた第1バルブユニットV1を収容するハウジングとしての筒状の第1ハウジング11dと、接続部11cとタンク保持部11bとの間に設けられて圧側減衰バルブ5および伸側チェックバルブ10とを備えた第2バルブユニットV2を収容する筒状の第2ハウジング11eとを備えている。
【0030】
キャップ部11aは、有頂筒状であってシリンダ1の図1中上端に螺子締結されて、シリンダ1の上端を閉塞するともに、頂部である図1中上方に鞍乗型車両Mにおける車体Fに連結可能なブラケットB2を備えている。また、接続部11cは、筒状であってキャップ部11aの側方から突出して図3中下方へ向けて湾曲してソケット状のタンク保持部11bに第1ハウジング11dおよび第2ハウジング11eを介して接続されている。接続部11c内は、キャップ部11a内を介してシリンダ1内の圧側室R2内に連通されている。
【0031】
タンク保持部11bは、有頂筒状であって上端が第1ハウジング11dおよび第2ハウジング11eに一体に接続されており、下端内周に螺子部11b3を備えている。そして、タンク保持部11bの下端内周の螺子部11b3には、筒状のタンク4が螺着されている。
【0032】
タンク4は、本実施の形態では、円筒状であってタンク保持部11bに螺着されている。そして、タンク4内には、フリーピストン12が摺動自在に挿入されており、タンク4内がフリーピストン12によって作動油が充填される液室Lと、気体が充填される気室Gとに区画されている。なお、気室Gには、緩衝器Dの最伸長時において少なくとも気室G内の圧力が大気圧以上となるように気体が封入されている。なお、タンク4内の液室Lと気室Gとの区画は、フリーピストン12を利用する以外にも、ダイヤフラムやブラダ等の利用によってもよい。
【0033】
タンク4における液室Lは、タンク保持部11bに設けられたポート11b1を介して第1ハウジング11d内に連通されるとともに、タンク保持部11bの内部に設けられたポート11b2を介して第2ハウジング11e内に連通されている。
【0034】
第1ハウジング11dは、図3にしめすように、底部となる下端が閉塞された筒状であって、接続部11cの側方に一体に上下方向に沿って設けられており、底部側となる下端が接続部11cとタンク保持部11bとに一体となっている。また、第2ハウジング11eは、図1に示すように、底部が閉塞された筒状であって、接続部11cの下端とタンク保持部11bの上端との間に横向きに設けられている。
【0035】
第1ハウジング11dの底部と第2ハウジング11eの底部には横孔11fが設けられており、第1ハウジング11d内および第2ハウジング11e内は、横孔11fを介して連通されている。また、接続部11c内は、第2ハウジング11e内に連通されている。接続部11c内は前述したように圧側室R2に連通されているので、第1ハウジング11d内は、横孔11f、第2ハウジング11e内および接続部11c内を介して圧側室R2に連通され、第2ハウジング11e内は、横孔11f内を介して圧側室R2に連通されている。よって、液室Lは、ポート11b1、第1ハウジング11d内、横孔11f、第2ハウジング11e内および接続部11c内を介して圧側室R2に連通されるとともに、ポート11b2、第2ハウジング11e内および接続部11c内を介して圧側室R2に連通されている。
【0036】
そして、ポート11b1、第1ハウジング11d内、横孔11f、第2ハウジング11e内および接続部11c内によって圧側室R2とタンク4とを連通するバイパス路PBが形成されており、ポート11b2、第2ハウジング11e内および接続部11c内によって圧側室R2とタンク4とを連通する第1通路P1および吸込通路P4が形成されている。なお、第1ハウジング11dと第2ハウジング11eのキャップ部11aに対する配置および設置方向は、前述した配置および設置方向に限られず、設計変更可能である。
【0037】
第1ハウジング11dの開口端の内周には、図3に示すように、螺子部11d1が形成されており、第1ハウジング11d内に収容される第1バルブユニットV1が螺子部11d1に螺着されている。第1バルブユニットV1は、横孔11fとポート11b1とを連通する通路Pv1と、通路Pv1に直列に設けられたチェックバルブ6およびニードルバルブ7とを備えている。チェックバルブ6は、横孔11fに連通される圧側室R2から通路Pv1をポート11b1に連通されるタンク4へ向けて流れる作動油の流れのみを許容しており、バイパス路PBの一部を成す通路Pv1を一方通行の通路に設定している。ニードルバルブ7は、第1ハウジング11dの開口端に取り付けられたリニアアクチュエータ100を駆動することで流路面積を変化させるバルブとなっており、流路面積を変化させることで通過する作動油の流れに与える抵抗を変化させる。よって、チェックバルブ6は、バイパス路PBを圧側室R2からタンク4へ向かう一方通行の通路に設定しており、ニードルバルブ7は、バイパス路PBを圧側室R2からタンク4へ向けて通過する作動油の流れに抵抗を与える。
【0038】
第2ハウジング11eの開口端の内周には、図1に示すように、螺子部11e1が形成されており、第2ハウジング11e内に収容される第2バルブユニットV2が螺子部11e1に螺着されている。
【0039】
第2バルブユニットV2は、図1に示すように、接続部11c内とポート11b2とを並列して連通する通路Pv2,Pv3と、通路Pv2に設けた圧側減衰バルブ5と、通路Pv3に設けた伸側チェックバルブ10とを備えている。圧側減衰バルブ5は、接続部11c内に連通される圧側室R2から通路Pv2をポート11b2に連通されるタンク4へ向けて流れる作動油の流れのみを許容し、通過する作動油の流れに対して抵抗を与えるとともに通路Pv2を一方通行の通路に設定している。通路Pv2は、接続部11c内とポート11b2とを連通して第1通路P1の一部を形成しており、圧側減衰バルブ5は、圧側室R2からタンク4へ向けて通過する作動油の流れに対して抵抗を与える。伸側チェックバルブ10は、ポート11b2に連通されるタンク4から通路Pv3を接続部11c内に連通される圧側室R2へ向けて流れる作動油の流れのみを許容しており、通路Pv3を一方通行の通路に設定している。通路Pv3は、接続部11c内とポート11b2とを連通して吸込通路P4の一部を形成している。
【0040】
このように構成された緩衝器Dは、以下のように作動する。シリンダ1に対してピストン2が図1中下方へ移動する緩衝器Dの伸長行程において、ピストン2によって圧縮される伸側室R1から第2通路P2を介して圧側室R2へ作動油が移動する。この伸長行程において緩衝器Dは、第2通路P2を通過する作動油の流れに対して伸側減衰バルブ8により抵抗を与えて、伸長を妨げる伸側の減衰力を発生する。
【0041】
また、緩衝器Dの伸長行程では、ピストンロッド3がシリンダ1から退出するので、圧側室R2内でピストンロッド3がシリンダ1から退出した体積分の作動油が不足するが、この不足分の作動油は、フリーピストン12がタンク4内を移動して気室Gを拡大させてタンク4の液室Lから伸側チェックバルブ10が開弁して吸込通路P4を介して圧側室R2に供給される。なお、緩衝器Dの伸長行程では、減衰バルブとしての圧側減衰バルブ5は閉弁して第1通路P1を遮断し、チェックバルブ6も閉弁してバイパス路PBを遮断するので、伸側減衰バルブ8によって緩衝器Dの伸長行程の減衰力の特性が決定され、ニードルバルブ7は伸長行程の減衰力に影響を与えない。
【0042】
他方、シリンダ1に対してピストン2が図1中上方へ移動する緩衝器Dの収縮行程において、ピストン2によって圧縮される圧側室R2内の作動油は、圧側チェックバルブ9を開弁させて第3通路P3を介して伸側室R1へ移動する。また、緩衝器Dの収縮行程では、ピストンロッド3がシリンダ1内へ侵入するので、シリンダ1内でピストンロッド3がシリンダ1内へ侵入した体積分の作動油が過剰となる。この過剰分の作動油は、緩衝器Dの収縮速度が低く圧側室R2の圧力が圧側減衰バルブ5の開弁圧に達しない場合にはチェックバルブ6のみを開弁させてバイパス路PBを介してタンク4内の液室Lへ排出され、緩衝器Dの収縮速度が高くなって圧側室R2の圧力が圧側減衰バルブ5の開弁圧に達するようになるとチェックバルブ6だけでなく圧側減衰バルブ5をも開弁させて第1通路P1およびバイパス路PBを介してタンク4内の液室Lへ排出される。なお、作動油が排出されるタンク4内では、フリーピストン12がタンク4内を移動して気室Gを縮小する。
【0043】
このように緩衝器Dの収縮行程では、緩衝器Dの収縮速度に応じて、作動油が圧側室R2からニードルバルブ7のみ或いは圧側減衰バルブ5とニードルバルブ7とを通過してタンク4へ移動する。以上、緩衝器Dの収縮行程では、緩衝器Dの収縮速度が低い場合、バイパス路PBが開放されてシリンダ1内の伸側室R1と圧側室R2と連通状態におかれ、ニードルバルブ7が圧側室R2からタンク4へ向かう作動油の流れに対して抵抗を与え、緩衝器Dの収縮速度が高い場合、第1通路P1およびバイパス路PBが開放されてシリンダ1内の伸側室R1と圧側室R2と連通状態におかれ、圧側減衰バルブ5およびニードルバルブ7が圧側室R2からタンク4へ向かう作動油の流れに対して抵抗を与える。
【0044】
緩衝器Dの収縮行程では、第3通路P3を通じて伸側室R1と圧側室R2とが連通状態におかれるため、伸側室R1内と圧側室R2内の圧力がともに上昇して略同じ圧力となる。本実施の形態の緩衝器Dでは、伸側室R1に面しているピストン2の面積が圧側室R2に面しているピストン2の面積よりもピストンロッド3の面積分だけ小さいので、収縮する緩衝器Dは、シリンダ1内の圧力にピストンロッド3の面積を乗じた値の減衰力を、前記収縮を妨げる方向に発揮する。つまり、前述したピストン2の片方にのみピストンロッド3が存在する片ロッド型に設定された緩衝器Dの場合、収縮行程時にピストンロッド3の断面積に比例した減衰力を発生する。
【0045】
そして、緩衝器Dではニードルバルブ7を備えており、ニードルバルブ7における流路面積の調整によってニードルバルブ7が作動油の流れに与える抵抗を変化させ得るので、緩衝器Dは、圧側の減衰力の調整が可能である。
【0046】
前述した通り、ニードルバルブ7は、緩衝器Dの伸長行程ではチェックバルブ6がバイパス路PBを遮断するので、伸長行程の減衰力に何ら影響を与えずに、緩衝器Dの収縮行程の減衰力の調整を行える。よって、ニードルバルブ7の流路面積を変更して緩衝器Dの収縮行程の減衰力を調整しても、緩衝器Dの伸長行程の減衰力が変化することが無く、ニードルバルブ7の流路面積の変更が緩衝器Dの伸長行程時および収縮行程時の双方の減衰力に変化をもたらしてしまうことがない。
【0047】
以上では、減衰バルブとしての圧側減衰バルブ5、チェックバルブ6およびニードルバルブ7について原理的に説明したが、以下に圧側減衰バルブ5、チェックバルブ6およびニードルバルブ7の具体的な構成について説明する。部品構成の都合上、先にニードルバルブ7の構成を説明し、後にチェックバルブ6の構成を説明する。
【0048】
ニードルバルブ7は、図5に示すように、筒状のニードルケース71と、ニードルケース71内に軸方向へ移動可能に挿入されたニードル72と、ニードル72を駆動するリニアアクチュエータ100とを備えて構成されて、第1ハウジング11d内に収容されている。
【0049】
ニードルケース71は、筒状であって図5中下端となる一端に設けられて外径が他端側よりも大径な拡径部71aと、拡径部71aの内周であって内径が他端側の内径よりも大径な環状凹部71bと、拡径部71aの端部の外周から下方側へ向けて突出するソケット部71cと、外周であって他端側に設けられた環状溝71dと、拡径部71aと環状溝71dとの間の肉厚を径方向に貫く孔71eと、内周であって軸方向で環状凹部71bと孔71eとの間に設けられてニードル72が離着座する環状弁座71fとを備えている。
【0050】
環状凹部71bの内径は、拡径部71aの端部に設けられたソケット部71cの内径よりも小径となっているとともに、ニードルケース71の他端側の内径よりも大径となっているので、ニードルケース71の一端となる図5中下端は内径が2段階に拡径された形状となっている。
【0051】
また、ニードルケース71の一端から見て、環状凹部71bの内周側の軸方向端面は外周側の軸方向端面よりも浅くなっており、環状凹部71bの内周側に環状の突条71b1が形成されている。
【0052】
環状溝71dは、ニードルケース71の他端側の外径が小径となる部分の外周に周方向に沿って設けられている。環状溝71d内には、Oリング77が収容されている。
【0053】
孔71eは、拡径部71aと環状溝71dとの間、つまり、ニードルケース71の他端側の外径が小径となる部分を径方向に貫いており、ニードルケース71の内外を連通させている。よって、ニードルケース71内は、常時、孔71eおよびポート11b1を介してタンク4内に連通される。
【0054】
環状弁座71fは、環状であってニードルケース71の内周であって環状凹部71bと孔71eとの間に設けられている。環状弁座71fの内径は、ニードルケース71の他端側の内径よりも小径となっており、軸方向の途中からニードルケース71の他端側へ向けて徐々に拡径されている。よって、環状弁座71fの内周が前述のように拡径されているので、環状弁座71fは、内周にテーパ面71f1を備えている。
【0055】
ニードル72は、軸状であって、図5中下端に環状弁座71fの内周側に侵入可能な円錐状の弁頭72aと、弁頭72aの図5中上端となる後端に連なって設けられて環状弁座71fの上端の内周部に離着座可能なフランジ状の着座部72bと、中央に設けられて他部よりも大径の外径を持ちニードルケース71の内周であって孔71eよりも他端側に摺接するガイド部72cと、ガイド部72cの後端から軸方向に突出する他部よりも小径なガイド軸72dとを備えて構成されている。ニードル72は、ニードルケース71内に軸方向へ移動可能に挿入されており、ガイド部72cをニードルケース71の内周に摺接させることにより、ニードルケース71に対して径方向へぶれずに軸方向へ移動できる。また、ガイド軸72dは、ニードルケース71の他端側の開口から外方へ突出している。
【0056】
そして、ニードル72は、環状弁座71fの軸方向で他端側面に着座部72bを着座させるとニードルバルブ7を閉弁させ、環状弁座71fの前記他端側面から着座部72bを離間させると弁頭72aとテーパ面71f1との間に隙間を生じさせてニードルバルブ7を開弁させる。ニードルバルブ7は、開弁すると弁頭72aとテーパ面71f1との間の隙間によってバイパス路PBの流路面積を制限し、ニードルバルブ7を通過する作動油の流れに抵抗を与える。また、ニードルバルブ7が開弁した状態で、ニードル72のニードルケース71に対する軸方向の位置を変化させると弁頭72aとテーパ面71f1との間の隙間の大きさ(流路面積)も変化して、ニードルバルブ7を通過する作動油の流れに与える抵抗も変化する。このように、ニードルケース71に対してニードル72の軸方向の位置を調節することによってニードルバルブ7の流路面積を変化させて、ニードルバルブ7を通過する作動油の流れに与える抵抗を調節できる。
【0057】
さらに、ニードルケース71の上端には、環状であって内周にニードル72のガイド軸72dが挿通されるとともに外周にフランジ73aを備えた断面L字状のシール抑え部材73が積層されている。また。シール抑え部材73の上端には環状であってニードル72のガイド軸72dの外周に摺接するシール部材74が積層されており、シール部材74によってニードル72の外周がシールされている。なお、ニードルケース71から上方へ突出したニードル72のガイド軸72dはアダプタ75内に挿通されており、当該ガイド軸72dの上端は、アダプタ75の図5中上方へ常時突出している。
【0058】
ニードル72を収容したニードルケース71は、第1ハウジング11dの内周に設けられた螺子部11d1に螺着される通常のアダプタ75によって第1ハウジング11d内でシール抑え部材73およびシール部材74とともに固定される。アダプタ75は、筒状であって、図5中上端側の内径が2段階に小さくなっていて内周に形成される小径部75aと大径部75bと、外周に設けられて第1ハウジング11dの螺子部11d1に螺合する螺子部75cと、螺子部75cよりも図5中上方側に設けられた環状溝75dとを備えている。アダプタ75における環状溝75d内には、第1ハウジング11dの螺子部11d1よりも開口端側の内周に密着するシールリング76が装着されており、アダプタ75と第1ハウジング11dとの間にシールされている。また、アダプタ75の第1ハウジング11dへの螺合に便利なように、アダプタ75の上端には、アダプタ75を回転操作する工具の差し込みを許容する溝を備えた突条でなる操作部75eが設けられている。
【0059】
そして、アダプタ75の小径部75a内には、シール部材74が収容されており、アダプタ75の大径部75b内には、シール抑え部材73のフランジ73aが収容されるとともに、ニードルケース71が嵌合されている。シール抑え部材73のフランジ73aはニードルケース71とアダプタ75の小径部75aと大径部75bとの間に段部に挟持されており、シール抑え部材73は、アダプタ75とニードルケース71とに対して不動に固定される。また、シール抑え部材73のフランジ73aよりも小径な部分は、アダプタ75の小径部75a内に侵入してシール部材74と軸方向で対向しており、アダプタ75の小径部75a内からシール部材74が脱落するのを防止している。
【0060】
アダプタ75の上端から上方へ向けて突出するニードル72におけるガイド軸72dは、アダプタ75の最も内径が小径な上端部分の内周面に摺接しており、ガイド軸72dの径方向への軸ぶれが抑制されている。このように、ニードル72は、ガイド軸72dがアダプタ75の上端の内周面に摺接するとともに、ガイド部72cがニードルケース71の内周面に摺接しており、2点で支持されることによって軸方向移動の際に軸ぶれせずに環状弁座71fに離着座でき、安定して流路面積の変更が可能である。
【0061】
リニアアクチュエータ100は、第1ハウジング11dの開口端にボルト110によって固定されている。具体的には、リニアアクチュエータ100は、図示しないロータを備えたステッピングモータ101と、前記ロータの回転運動をプッシュロッド103の直線運動に変換して出力する送り螺子機構を備えた変換部102とを備えている。リニアアクチュエータ100におけるプッシュロッド103は、第1ハウジング11d内に固定されたニードルケース71内に軸方向移動可能に挿入されたニードル72の後端のガイド軸72dに当接しており、ステッピングモータ101を駆動してプッシュロッド103の軸方向に変位させると、ニードル72がニードルケース71に対して軸方向に移動する。よって、リニアアクチュエータ100の駆動によって、ニードル72をニードルケース71に設けた環状弁座71fに対して遠近させてニードルバルブ7の閉弁と開弁時の流路面積の調整を行える。
【0062】
なお、ニードル72のガイド軸72dとプッシュロッド103とは、当接しているだけで連結されてはいない。ニードル72は、ニードルケース71の環状弁座71fの内周を通過しようとする作動油の圧力を受けると、ニードルケース71に対して図5中上方側へ押圧されてプッシュロッド103に当接するので、プッシュロッド103を上方へ変位させると作動油に押圧されてプッシュロッド103の変位に追従して環状弁座71fから離間する方向となる上方へ変位して、ニードルバルブ7の流路面積を大きくする。他方、ニードル72は、プッシュロッド103が図5中下方へ変位するとプッシュロッド103に押されてニードルケース71に対して環状弁座71f側となる下方へ移動してニードルバルブ7の流路面積を小さくする。よって、ニードル72のガイド軸72dとプッシュロッド103とを連結せずに互いに当接させるだけでよいが連結されていてもよい。
【0063】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、第1ハウジング11dは、上下方向に沿ってシリンダ1にアッパーキャップ11に設けられるとともに、開口端を上方に向けているので、リニアアクチュエータ100が緩衝器Dの上方側に取り付けられる。本実施の形態の緩衝器Dでは、アッパーキャップ11が鞍乗型車両Mにおける車体Fに連結されておりリニアアクチュエータ100が車体F側に配置されるので、リニアアクチュエータ100へ電力を供給する配線長も短くて済むとともに、リニアアクチュエータ100を地面から遠ざけて保護できる。
【0064】
つづいて、チェックバルブ6は、ニードルケース71の図5中の下端に嵌合される円盤状の弁座部材61と、ニードルケース71の環状凹部71b内に収容されて弁座部材61に対して軸方向へ移動可能であって弁座部材61に離着座する環状弁体62と、ニードルケース71の内周に収容されて環状弁体62を弁座部材61へ向けて付勢する環状の付勢部材63とを備えており、ニードルケース71を環状弁体62と付勢部材63とを収容するケースとして利用している。
【0065】
弁座部材61は、円盤状であってニードルバルブ側の端部から軸方向へ突出する円柱状の凸部61aと、凸部61aよりも小径の円周上に並べて配置されて凸部61aの肉厚を軸方向へ貫く複数の孔61bとを備えている。弁座部材61における孔61bは、ニードルケース71内とアッパーキャップ11における横孔11fとを連通する。
【0066】
弁座部材61は、凸部61aをニードルケース71の環状凹部71b内に挿入し、外周部をソケット部71c内に挿入させて、ニードルケース71の端部に嵌合されている。よって、弁座部材61の凸部61aよりも外周の外周部の軸方向端面は、拡径部71aの軸方向端面に当接している。このようにチェックバルブ6の弁座部材61は、ニードルケース71の一端の内周に嵌合されており、ニードルケース71とともに第1ハウジング11dに螺着されるアダプタ75と第1ハウジング11dの底部とで軸方向の力(軸力)を受けつつ挟み込まれて第1ハウジング11d内に固定されている。詳細には、シール抑え部材73、ニードルケース71および弁座部材61の外周部は、アダプタ75と第1ハウジング11dの底部との間で挟み込まれる構造となっており、アダプタ75と第1ハウジング11dの底部とから軸力を受けている。よって、弁座部材61のニードルケース側の外周部とニードルケース71の拡径部71aの軸方向端部とが前記軸力を受けて密着するので、シールを設けなくとも弁座部材61とニードルケース71との間を作動油が通過するのを防止できる。また、弁座部材61の反ニードルケース側の外周部と第1ハウジング11dの底部とが前記軸力を受けて密着するので、シールを設けなくとも弁座部材61と第1ハウジング11dとの間を作動油が通過するのを防止できる。
【0067】
環状弁体62は、環状であって、弁座部材61に対して全体が軸方向へ移動可能に重ねられて、ニードルケース71の環状凹部71b内に収容されている。環状弁体62の外径は、凸部61aの外径および環状凹部71bの外径よりも少し小さく、環状弁体62の内径は、弁座部材61に当接すると各孔61bを閉塞することが可能となる径に設定されている。
【0068】
付勢部材63は、弾性を備えた曲げワッシャとされており、ニードルケース71の環状凹部71b内に収容されており、環状弁体62とニードルケース71の突条71b1との間に軸方向で圧縮された状態で介装されており、常時、環状弁体62を弁座部材61へ向けて付勢している。よって、環状弁体62は、孔61bを介して作用する圧側室R2の圧力よる図5中上方へ向けて押圧する力が付勢部材63の付勢力を上回ると、付勢部材63が軸方向へ圧縮されて弁座部材61から全体が軸方向へ後退して孔61bを開放する。環状弁体62が弁座部材61から離間すると、孔61bが開放されて作動油は圧側室R2から環状弁体62および付勢部材63の内周を通過しニードルケース71の内側を通じてタンク4へ移動できるようになる。他方、環状弁体62は、背面側から受けるタンク4の圧力より圧側室R2の圧力の方が上回って両者の差圧がチェックバルブ6の開弁圧に到達するまでは弁座部材61に当接して孔61bを閉塞する。そして、環状弁体62および付勢部材63は、ニードルケース71の環状凹部71bを形成する側壁面によって、径方向へ位置決めされており、弁座部材61に対して遠近する方向へ移動しても径方向へ軸ぶれしないので、動作が安定して弁座部材61に着座する際に安定して孔61bを閉塞できる。
【0069】
なお、付勢部材63は、環状弁体62を付勢でき、環状弁体62が弁座部材61の孔61bを開放した状態で作動油のニードルケース71内の通過を妨げなければよいので、曲げワッシャ以外にもウェーブワッシャや環状の皿ばねや弾性体とされてもよい。
【0070】
チェックバルブ6およびニードルバルブ7は、前述の通り構成されており、リニアアクチュエータ100以外の部品で第1ハウジング11d内に収容される第1バルブユニットV1を構成している。また、弁座部材61における孔61b、ニードルケース71内および孔71eによって、圧側室R2に連通される横孔11fとタンク4に連通されるポート11b1とを連通するとともにバイパス路PBの一部を形成する通路Pv1が形成されており、当該Pv1にチェックバルブ6およびニードルバルブ7が直列に設けられている。なお、アダプタ75内にニードルケース71を嵌合すると、ニードルケース71の環状溝71d内に収容されたOリング77が圧縮されてアダプタ75の大径部75bの内周面に緊迫力を作用させつつ密着して、アダプタ75にニードルケース71を仮固定できる。よって、ニードルケース71の外周にアダプタ75に密着するOリング77を設けると、Oリング77によってアダプタ75内に、チェックバルブ6を保持したニードルケース71、ニードル72、シール抑え部材73およびシール部材74を組み付けた状態に保持できるので、第1バルブユニットV1を第1ハウジング11dに螺着する際の作業が容易となる。
【0071】
そして、ニードルバルブ7が開弁している場合、緩衝器Dが収縮すると、孔61bを通じて作用する圧側室R2の圧力によって環状弁体62が弁座部材61から離間してチェックバルブ6が開弁し、バイパス路PBを開放する。よって、緩衝器Dの収縮行程時には、チェックバルブ6が開弁してバイパス路PBを開放し、作動油は、バイパス路PBに設けられたチェックバルブ6およびニードルバルブ7を通過して圧側室R2からタンク4へ移動する。ニードルバルブ7は、流路面積に応じた抵抗を作動油の流れに与える。
【0072】
他方、着座部72bが環状弁座71fに着座してニードルバルブ7が閉弁している場合、緩衝器Dが収縮しても作動油がバイパス路PBを通過できないので、バイパス路PBを通じての作動油の圧側室R2からタンク4への移動が阻止される。
【0073】
また、ニードルバルブ7の開閉に関わらず、緩衝器Dが伸長する場合、チェックバルブ6が閉弁したままとなって、バイパス路PBを遮断するので、作動油はバイパス路PBを通過することはない。
【0074】
なお、弁座部材61、ニードルケース71および第1ハウジング11dの底部が軸力の作用のもとに密着しているので、弁座部材61とニードルケース71との間を介してチェックバルブ6を経由せずに圧側室R2とタンク4とが短絡するのが防止され、弁座部材61と第1ハウジング11dとの間を介してチェックバルブ6およびニードルバルブ7を経由せずに圧側室R2とタンク4とが短絡するのが防止されている。よって、弁座部材61とニードルケース71との間および弁座部材61と第1ハウジング11dの底部との間にシールを設けずとも、緩衝器Dの伸長行程時に作動油がバイパス路PBを通過するのを阻止できるとともに、緩衝器Dの収縮行程時に作動油がチェックバルブ6およびニードルバルブ7を経由せずに圧側室R2からタンク4へ移動するのを阻止できる。
【0075】
次に、第2ハウジング11eに収容される第2バルブユニットV2を構成する具体的な圧側減衰バルブ5および伸側チェックバルブ10について説明する。第2バルブユニットV2は、図6に示すように、アッパーキャップ11における第2ハウジング11e内に挿入される筒状のバルブ保持軸21と、バルブ保持軸21の外周に装着されたディスク22と、ディスク22の図6中左端に重ねられてバルブ保持軸21の外周に内周が固定される環状のリーフバルブ23と、リーフバルブ23の反ディスク側に配置される環状のバルブ抑え部材24と、バルブ保持軸21の図6中左端に取り付けられた環状のばね受25と、バルブ抑え部材24とばね受25との間に介装されてバルブ抑え部材24を介してリーフバルブ23をディスク22へ向けて付勢するばね26と、ディスク22の図6中右端の内周に配置されてバルブ保持軸21の外周に嵌合する筒状のカラー27と、ディスク22の図6中右端に軸方向へ移動可能に重ねられてカラー27の外周に配置される環状のチェック弁体28と、バルブ保持軸21の図6中右端に螺着されたナット29と、チェック弁体28とカラー27との間に介装されてチェック弁体28をディスク22へ向けて付勢するばね19と、ディスク22を第2ハウジング11eの螺子部11e1に螺合されるキャップ18と、ディスク22の外周とキャップ18との間に介装される筒状のスペーサ17とを備えて構成されている。
【0076】
バルブ保持軸21は、図6に示すように、円柱状であって、途中から先端となる図6中右端までの外径を小径にして形成されてディスク22の内周に挿入される小径部21aと、小径部21aの先端外周に設けられた螺子部21bとを備えており、基端となる図6中の外周には環状のばね受25が取り付けられている。
【0077】
ディスク22は、環状であって、肉厚を軸方向に貫くポート22aと、肉厚を軸方向に貫いくポート22bとを備えている。ポート22aは、圧側室R2に連通される接続部11c内とタンク4に連通されるポート11b2とを連通するとともに第1通路P1の一部を形成する通路Pv2として機能し、ポート22bは、圧側室R2に連通される接続部11c内とタンク4に連通されるポート11b2とを連通するとともに吸込通路P4の一部を形成する通路Pv3として機能している。
【0078】
リーフバルブ23は、内周がバルブ保持軸21の小径部21aの外周に固定されて外周側の撓みが許容されるとともに、ディスク22の図6中左端に重ねられており、ディスク22に当接するとポート22aを遮断し外周を撓ませるとポート22aを開放する。
【0079】
バルブ抑え部材24は、外周にフランジを備えた筒であって、リーフバルブ23の反ディスク側に重ねられるとともにバルブ保持軸21の小径部21aよりも基端側の外周に軸方向移動可能に嵌合して、ディスク22に対して軸方向へ遠近できる。
【0080】
バルブ抑え部材24とばね受25との間には、コイルばねでなるばね26が圧縮状態で介装されており、ばね26は、バルブ抑え部材24を介して、常時、リーフバルブ23をディスク22に着座させるようにディスク22側へ向けて付勢している。
【0081】
筒状のカラー27は、ディスク22の図6中右端の内周に重ねられてバルブ保持軸21の小径部21aの外周に不動に装着されている。カラー27は、図6中の右端外周にフランジ状のばね受27aを備えている。チェック弁体28は、環状であって内径がカラー27の外径よりも大径であって、ディスク22の図6中右端に軸方向へ移動可能に重ねられており、ディスク22に当接するとポート22bを遮断しディスク22から離間するとポート22bを開放する。なお、チェック弁体28は、外周がディスク22の外周に設けた環状のガイド(符示せず)によって軸方向への遠近移動が案内されて、ディスク22に対して軸ぶれせずに遠近できる。
【0082】
ナット29は、バルブ保持軸21の小径部21aの先端の螺子部21bに螺着されている。ナット29がバルブ保持軸21に螺着されると、ディスク22、リーフバルブ23およびカラー27は、ナット29とバルブ保持軸21の小径部21aを設けることで形成される段部21cとで挟持されてバルブ保持軸21に不動に固定される。
【0083】
チェック弁体28とカラー27におけるばね受27aとの間には、円錐状のコイルばねでなるばね19が圧縮状態で介装されており、ばね19は、常時、チェック弁体28をディスク22に着座させるようにディスク22側へ向けて付勢している。
【0084】
このように構成されたディスク22、リーフバルブ23、バルブ抑え部材24と、ばね受25、ばね26、カラー27、チェック弁体28、ナット29およびばね19は、バルブ保持軸21に組み付けられて一体化されバルブアセンブリを形成する。
【0085】
バルブアセンブリは、ディスク22の図6中右端外周が第2ハウジング11e内に形成される段部11e2に当接するまで第2ハウジング11e内に挿入されると、完全に第2ハウジング11e内に収容される。このように第2ハウジング11e内に収容されたバルブアッセンブリにおけるディスク22の図6中左端の外周部には、筒状のスペーサ17が重ねられたのち、第2ハウジング11eの螺子部11e1に第2ハウジング11eを密閉するキャップ18が螺着されると、ディスク22とスペーサ17とがキャップ18と段部11e2とで挟持されてバルブアッセンブリが第2ハウジング11e内で固定される。
【0086】
なお、スペーサ17には、透孔17aが設けられており、ポート11b2と透孔17aを介してタンク4と第2ハウジング11e内との連通が確保されている。そして、緩衝器Dの収縮行程時には、圧側室R2の圧力が接続部11c内およびポート22aを介してリーフバルブ23に作用し、当該圧力によってリーフバルブ23の外周を撓ませようとする力がリーフバルブ23の弾発力およびばね26の付勢力に打ち勝つとリーフバルブ23の外周側撓んでがディスク22から離間してポート22aを開放して、圧側室R2をタンク4に連通させて圧側室R2からタンク4へ向かう作動油の通過を許容するとともに通過する作動油の流れに抵抗を与える。
【0087】
このようにポート22aは、ポート11b2、第2ハウジング11e内および接続部11c内とともに、圧側室R2とタンク4とを連通する第1通路P1を形成しており、ディスク22、リーフバルブ23、バルブ抑え部材24、ばね受25およびばね26によって、緩衝器Dの収縮行程時に減衰力を発生する圧側減衰バルブ5を形成している。なお、圧側減衰バルブ5および伸側チェックバルブ10の構成は一例であって、他の構成とされてもよく、設計変更可能である。
【0088】
他方、緩衝器Dの伸長行程時には、タンク4の圧力がポート11b2およびポート22bを介してチェック弁体28に作用し、当該圧力によってチェック弁体28をディスク22から離間させようとする力がばね19の付勢力に打ち勝つとチェック弁体28がディスク22から離間してポート22bを開放して、タンク4を圧側室R2に連通させてタンク4から圧側室R2へ向かう作動油の通過を許容する。
【0089】
このようにポート22bは、ポート11b2、第2ハウジング11e内および接続部11c内とともに、圧側室R2とタンク4とを連通する吸込通路P4を形成しており、ディスク22、チェック弁体28、カラー27およびばね19によって、緩衝器Dの伸長行程時に吸込通路P4を開放する伸側チェックバルブ10を形成している。
【0090】
以上のように構成された減衰バルブとしての圧側減衰バルブ5、チェックバルブ6、ニードルバルブ7、伸側チェックバルブ10、第1通路P1、バイパス路PBおよび吸込通路P4を備えた緩衝器Dは、伸長する場合、第2通路P2を通過する作動油の流れに対して伸側減衰バルブ8により抵抗を与えて、伸長を妨げる伸側の減衰力を発生する。緩衝器Dの伸長行程時では、ディスク22からチェック弁体28が離間してポート22bを開放するので伸側チェックバルブ10が開弁して、ピストンロッド3がシリンダ1から退出する体積分の作動油がタンク4から吸込通路P4を介して圧側室R2に供給される。
【0091】
なお、緩衝器Dの伸長行程時では、減衰バルブとしての圧側減衰バルブ5は閉弁して第1通路P1を遮断し、ニードルバルブ7におけるニードル72が環状弁座71fから離間してバイパス路PBを開放していても環状弁体62が弁座部材61に当接して孔61bを閉塞してバイパス路PBを遮断するので、伸側減衰バルブ8のみによって緩衝器Dの伸長行程の減衰力の特性が決定され、ニードルバルブ7は伸長行程の減衰力に影響を与えない。
【0092】
他方、緩衝器Dの収縮行程時では、圧側室R2内の作動油が圧側チェックバルブ9を開弁させて第3通路P3を介して伸側室R1へ移動するとともに、シリンダ1内に侵入するピストンロッド3の体積分の作動油がシリンダ1内で過剰となる。ニードルバルブ7におけるニードル72が環状弁座71fから離間してバイパス路PBを開放しており、緩衝器Dの収縮速度が低く圧側室R2の圧力が圧側減衰バルブ5の開弁圧に達しない場合、前述の過剰分の作動油は、環状弁体62を押して環状弁体62から離間させて孔61bを通過した後、ニードル72と環状弁座71fとの間の隙間を通過して圧側室R2からタンク4へ移動する。よって、この場合、緩衝器Dは、ニードルバルブ7によって緩衝器本体DBの収縮を妨げる減衰力を発生する。また、ニードルバルブ7における流路面積を作動油の流れに与える抵抗は、リニアアクチュエータ100によって調整することで、緩衝器Dの収縮行程時の減衰力を高低調整し得る。
【0093】
ニードルバルブ7におけるニードル72が環状弁座71fから離間してバイパス路PBを開放しており、緩衝器Dの収縮速度が速く圧側室R2の圧力が圧側減衰バルブ5の開弁圧に達する場合、前述の過剰分の作動油は、バイパス路PBにおけるチェックバルブ6およびニードルバルブ7を通過するだけでなく、ばね26およびリーフバルブ23を押圧してばね26を押し縮めつつリーフバルブ23の外周を撓ませてディスク22から離間させ、ポート22aを通過して圧側室R2からタンク4へ移動する。よって、この場合、緩衝器Dは、ニードルバルブ7および圧側減衰バルブ5によって緩衝器本体DBの収縮を妨げる減衰力を発生する。この場合もニードルバルブ7が減衰力の発生に寄与するので、リニアアクチュエータ100によってニードルバルブ7の流路面積を調整することで、緩衝器Dの収縮行程時の減衰力を高低調整し得る。なお、ニードルバルブ7におけるニードル72が環状弁座71fに着座してバイパス路PBを閉塞している場合、作動油がバイパス路PBを通過し得ず圧側減衰バルブ5のみを通過するので、緩衝器Dは、圧側減衰バルブ5のみによって緩衝器本体DBの収縮を妨げる減衰力を発生する。
【0094】
前述した通り、ニードルバルブ7は、緩衝器Dの伸長行程ではチェックバルブ6がバイパス路PBを遮断するので、伸長行程の減衰力に何ら影響を与えずに、緩衝器Dの収縮行程の減衰力の調整を行える。よって、ニードルバルブ7の流路面積を変更して緩衝器Dの収縮行程の減衰力を調整しても、緩衝器Dの伸長行程の減衰力が変化することが無く、ニードルバルブ7の流路面積の変更が緩衝器Dの伸長行程時および収縮行程時の双方の減衰力に変化をもたらしてしまうことがない。
【0095】
以上、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向移動可能に挿入されるピストン2と、シリンダ1内に挿入されるとともにピストン2に連結されるピストンロッド3と、作動油(液体)が充填される圧側室R2、タンク4(複数の作動室)とを有する緩衝器本体DBと、圧側室R2とタンク4とを連通する第1通路P1およびバイパス路PBと、第1通路P1に設けられて圧側室(一方の作動室)R2からタンク(他方の作動室)4へ向かう作動油(液体)の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブ(減衰バルブ)5と、バイパス路PBに設けられて圧側室(一方の作動室)R2からタンク(他方の作動室)4へ向かう作動油(液体)の流れのみを許容するチェックバルブ6と、バイパス路PBにチェックバルブ6と直列に設けられて流路面積を変更可能なニードルバルブ7とを備えている。
【0096】
このように構成された緩衝器Dでは、緩衝器Dの伸長行程ではチェックバルブ6がバイパス路PBを遮断するので、ニードルバルブ7は、伸長行程の減衰力に何ら影響を与えずに、緩衝器Dの収縮行程の減衰力のみの調整を行える。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、ニードルバルブ7の流路面積を変更して緩衝器Dの収縮行程の減衰力を調整しても、緩衝器Dの伸長行程の減衰力を変化させることが無いので、ニードルバルブ7を備えていても収縮時の減衰力のみを変更可能である。
【0097】
また、本実施の形態の緩衝器Dは、緩衝器本体DBが、シリンダ1内にピストン2で区画される伸側室R1および圧側室R2と、作動油(液体)を貯留するタンク4とを有し、伸側室R1と圧側室R2とをそれぞれ並列して連通する第2通路P2および第3通路P3と、圧側室R2とタンク4とを連通する吸込通路P4と、第2通路P2に設けられて伸側室R1から圧側室R2へ向かう作動油(液体)の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブ8と、第3通路P3に設けられて圧側室R2から伸側室R1へ向かう作動油(液体)の流れのみを許容する圧側チェックバルブ9と、吸込通路P4に設けられてタンク4から圧側室R2へ向かう作動油(液体)の流れのみを許容する伸側チェックバルブ10とを備え、第1通路P1およびバイパス路PBが、作動室を圧側室R2とタンク4として、圧側室R2とタンク4とを連通し、圧側減衰バルブ(減衰バルブ)5が、圧側室R2からタンク4へ向かう作動油(液体)の流れのみを許容しつつ作動油(液体)の流れに抵抗を与え、チェックバルブ6が圧側室R2からタンク4へ向かう作動油(液体)の流れのみを許容するように構成されている。このように構成された緩衝器Dでは、伸長行程時にバイパス路PBがチェックバルブ6によって遮断されるため、伸長速度が極低速である場合にバイパス路PBを通じて作動油が圧側室R2へ移動するのを阻止して圧側室R2内の圧力を速やかに下降させ得るので、減衰力の発生応答性を向上できる。
【0098】
また、本実施の形態の緩衝器Dは、チェックバルブ6およびニードルバルブ7を収容する第1ハウジング(ハウジング)11dを備え、ニードルバルブ7は、筒状であって第1ハウジング(ハウジング)11d内に挿入されるニードルケース71と、ニードルケース71内に軸方向へ移動可能に挿入されるニードル72とを備え、ニードルケース71は、一端に内径が拡径されて形成される環状凹部71bを有し、チェックバルブ6は、ニードルケース71の一端側と第1ハウジング(ハウジング)11dとで挟み込まれて環状凹部71bに対向してニードルケース71と第1ハウジング(ハウジング)11dとに密着するとともに肉厚を貫く孔61bを具備する円盤状の弁座部材61と、環状凹部71b内に軸方向へ移動可能に収容されて弁座部材61に対して離着座する環状弁体62と、環状凹部71b内に収容されるとともに環状弁体62を弁座部材61へ向けて付勢する環状の付勢部材63とを有し、バイパス路PBは、孔61bおよびニードルケース71内を介して圧側室R2とタンク4とを連通している。
【0099】
このように構成された緩衝器Dによれば、弁座部材61がニードルケース71と第1ハウジング(ハウジング)11dとによって挟み込まれているので、弁座部材61、ニードルケース71および第1ハウジング(ハウジング)11dに軸力を作用させて密着させ得る。よって、このように構成された緩衝器Dによれば、弁座部材61とニードルケース71との間および弁座部材61と第1ハウジング(ハウジング)11dの底部との間にシールを設けずとも、緩衝器Dの伸長行程時に作動油がバイパス路PBを通過するのを阻止できるとともに、緩衝器Dの収縮行程時に作動油がチェックバルブ6およびニードルバルブ7を経由せずに圧側室R2からタンク4へ移動するのを阻止できる。
【0100】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、ニードルケース71が内周にニードル72が離着座する環状弁座71fを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、ニードルケース71が、環状弁座71fを備えてニードル72を収容するニードルバルブ7のケースとして機能するだけでなく、環状弁体62および付勢部材63を収容するケースとしても機能するので、チェックバルブ6とニードルバルブ7とを極近くに直列配置して、チェックバルブ6とニードルバルブ7の全体を小型化できる。よって、このように構成された緩衝器Dによれば、チェックバルブ6およびニードルバルブ7を備えていても大型化を回避できる。
【0101】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、環状弁体62および付勢部材63は、ニードルケース71における環状凹部71bの側壁面によって径方向に位置決められている。このように構成された緩衝器Dによれば、環状弁体62の全体が弁座部材61から離間して再度着座する際に環状弁体62および付勢部材63の径方向への軸ぶれが抑制されるので、環状弁体62の動作が安定して環状弁体62が弁座部材61に着座する際に安定して孔61bを閉塞できる。
【0102】
なお、本実施の形態の緩衝器Dでは、ニードルバルブ7の流路面積の調整をリニアアクチュエータ100によって行っているが、第1ハウジング11dの開口端にニードル72のニードルケース71に対する軸方向の位置を調整可能なアジャスタを設けて、緩衝器Dの使用者が手動でアジャスタを操作してニードルバルブ7の流路面積を変更してもよい。
【0103】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、アッパーキャップ11における第1ハウジング11d内にチェックバルブ6およびニードルバルブ7を収容し、第2ハウジング11e内に圧側減衰バルブ5および伸側チェックバルブ10を収容しているが、アッパーキャップ11から第1ハウジング11dを廃止して、第2ハウジング11eをハウジングとして利用し、第2ハウジング11e内にチェックバルブ6、ニードルバルブ7、圧側減衰バルブ5および伸側チェックバルブ10を収容してもよい。
【0104】
この場合、図7に示すように、ポート30cを備えた環状のディスク30と、ディスク30に連結される筒部材31と、ポート30cを開閉する圧側減衰バルブ5と、ディスク30に設置される伸側チェックバルブ10と、ディスク30に組み付けられるチェックバルブ6と、筒部材31の外周に嵌合される筒状のニードルケース33と、ニードルケース33内に収容されるニードル34と、筒状であって内周にニードルケース33が螺着されるとともに第2ハウジング11e内の螺子部11e1に螺着されるアダプタ35と、アダプタ35とディスク30の外周との間に介装される筒状のスペーサ36とを備えている。
【0105】
ディスク30は、第2ハウジング11e内を接続部11c内に連通される空間とポート11b2に連通される空間とに仕切る環状の本体部30aと、本体部30aの図7中右方に突出する環状のバルブケース30bと、本体部30aの図7中左端から開口する環状溝と本体部30aの図7中右端から軸方向に沿って開口して環状溝に通じる複数の孔とで形成されて前記空間同士を連通するポート30cを備えて構成されている。
【0106】
チェックバルブ6は、バルブケース30b内に収容されている。具体的には、バルブケース30bに不動に固定される孔61bを備えた弁座部材61と、バルブケース30b内に収容されて弁座部材61に対して軸方向へ移動可能な環状弁体62と、バルブケース30bの底部と環状弁体62との間に介装される付勢部材63とで構成されている。このように構成されたチェックバルブ6は、バルブケース30b内に収容されてディスク30に一体化されている。そして、チェックバルブ6は、接続部11c内および孔61bを通じて作用する圧側室R2の圧力によって左方へ押されて弁座部材61から環状弁体62が離間すると孔61bを開放して開弁する。
【0107】
筒部材31は、ディスク30の内周に螺合してディスク30に連結されており、内周をバルブケース30b内に連通させている。筒部材31の外径は途中から図7中左方側が大径となっており、筒部材31の外周には段部31aが形成されている。筒部材31の外周には、複数枚の環状のリーフバルブを積層した積層リーフバルブ32が嵌合されている。そして、筒部材31の段部31aとディスク30の図7中左端とで積層リーフバルブ32の内周が挟持されている。積層リーフバルブ32は、このように内周側が筒部材31に不動に固定されており、外周側の撓みが許容されて、ディスク30のポート30cを形成する環状溝を部分的に覆っている。また、筒部材31の段部31aよりも図7中左方の外周には積層リーフバルブ32の反ディスク側に重ねられたばね受37が軸方向へ移動可能に装着されている。
【0108】
また、ディスク30の環状溝内には、環状であって内径が環状溝の内径より大径で外径が積層リーフバルブ32の外径よりも大径なチェック弁体38と、チェック弁体38を積層リーフバルブ32の外周に当接されるように付勢するウェーブワッシャ39とでなる伸側チェックバルブ10が収容されている。なお、チェック弁体38は、ディスク30の外周に装着された環状のバルブストッパ40によって外周部が支持されることによってディスク30の環状溝内から脱落しないようになっている。
【0109】
ニードルケース33は、全体として筒状であって、ニードル34を収容する筒状の収容部33aと、収容部33aから筒部材31側へ突出して筒部材31の図7中左端外周に嵌合する筒状の嵌合部33bと、内周であって収容部33aと嵌合部33bとの間に設けられた環状弁座33cと、環状弁座33cよりも図7中左端側に設けられて収容部33aの内外を連通する孔33dとを備えている。また、収容部33aの外径が嵌合部33bの外径よりも大径となっており、ニードルケース33は、外周に段部33eを備えている。
【0110】
ニードル34は、ニードルケース33内に収容されており、環状弁座33cに離着座可能な円錐形の弁頭34aと、弁頭34aの図7中左端に連なってニードルケース33の内周に螺着される螺子部34bと、螺子部34bの図7中左端に連なってニードルケース33の内周に摺接するとともに後端に工具の差し込みを可能とする溝34c1を備えた操作部34cとを備えて構成されている。
【0111】
ニードルケース33とニードル34とによってニードルバルブ7が構成されており、ニードル34がニードルケース33に螺着されているので、操作部34cを回転操作するとニードル34がニードルケース33の環状弁座33cに対して軸方向で遠近して、ニードルバルブ7における流路面積を変更できる。また、ニードルケース33とニードル34との間には、詳しくは説明しないが、球と溝との嵌合によってニードル34のニードルケース33に対する周方向の位置決めと回り止めとして機能するディテントNが設けられている。
【0112】
ニードルケース33は、第2ハウジング11e内の螺子部11e1に螺着される筒状のアダプタ35の内周に螺着されており、第2ハウジング11e内に固定されている。アダプタ35とディスク30の外周部との間には、透孔36aを備えた筒状のスペーサ36が介装されており、アダプタ35を第2ハウジング11eに螺着すると、スペーサ36とディスク30とがアダプタ35と第2ハウジング11eの途中に設けた段部11e2とで挟持される。このように、アダプタ35は、ニードルケース33を第2ハウジング11eへ連結するとともに、ディスク30を第2ハウジング11eへ固定している。
【0113】
そして、このように第2ハウジング11e内に固定されたニードルケース33の外周の段部33eと、ディスク30に組み付けられた筒部材31の外周に装着されたばね受37との間には、コイルばね41が圧縮状態で介装されている。コイルばね41は、常時、ばね受37を介して積層リーフバルブ32をディスク30側へ向けて付勢している。
【0114】
積層リーフバルブ32の外周がディスク30に当接すると、積層リーフバルブ32がディスク30のポート30cを形成する環状溝の内周側を覆い、環状溝内に収容されたチェック弁体38の内周側が積層リーフバルブ32のディスク側の外周に当接するとともにチェック弁体38の反ディスク側の外周がバルブストッパ40に当接して、ポート30cが閉塞される。他方、積層リーフバルブ32の外周が撓んでディスク30から離間すると、積層リーフバルブ32がチェック弁体38からも離間してポート30cを開放する。このように、チェック弁体38は、積層リーフバルブ32の弁座としても機能している。
【0115】
ポート30cは、接続部11c内を介して圧側室R2に連通されており、スペーサ36の透孔36aおよびポート11b2を介してタンク4に連通されている。そして、緩衝器Dの収縮行程時では、ポート30cを介して作用する圧側室R2内の圧力により積層リーフバルブ32の外周が撓むと積層リーフバルブ32の外周がチェック弁体38およびディスク30から離間して、ポート30cが開くので圧側室R2からタンク4へ向けて作動油が移動できる。また、積層リーフバルブ32は、ポート30cを通過する作動油の流れに対して抵抗を与える。積層リーフバルブ32の撓み量は、積層リーフバルブ32の撓み剛性とコイルばね41のばね定数の設定によってチューニングできる。このように、ディスク30、積層リーフバルブ32、チェック弁体38、ばね受37およびコイルばね41によって圧側減衰バルブ5が形成されている。なお、圧側減衰バルブ5および伸側チェックバルブ10の構成は一例であって、他の構成とされてもよく、設計変更可能である。
【0116】
なお、圧側室R2からタンク4へ向かう作動油の流れに対しては、チェック弁体38は、バルブストッパ40に規制され環状溝の開口に位置決めされるが、内径が環状溝の内径よりも大径であるので、作動油の流れを許容する。
【0117】
他方、緩衝器Dの伸長行程時では、積層リーフバルブ32の外周がディスク30に当接した状態となるが、チェック弁体38がタンク4からの圧力を受けてウェーブワッシャ39を押し縮めて環状溝内を底部側へ移動して積層リーフバルブ32から離間してポート30cを開放する。このようにポート30cを圧側室R2からタンク4へ向かう作動油の流れに対しては圧側減衰バルブ5によって抵抗が与えられ、ポート30cをタンク4から圧側室R2へ向かう作動油の流れに対しては伸側チェックバルブ10が作動油の流れを許容する。
【0118】
また、圧側室R2とタンク4とは、接続部11c内、チェックバルブ6における孔61b、ディスク30内、筒部材31内、ニードルケース33内、孔33d、スペーサ36の透孔36aおよびポート11b2を介して連通されており、チェックバルブ6における孔61b、ディスク30内、筒部材31内、ニードルケース33内および孔33dによってバイパス路PBが形成されている。
【0119】
緩衝器Dの収縮行程時では、ニードルバルブ7の開弁時には、チェックバルブ6が開弁してニードルバルブ7を通じて、圧側室R2からタンク4へ作動油は移動できる。他方、緩衝器Dの伸長行程時では、チェックバルブ6が閉弁するため、作動油は、バイパス路PBを通過し得ず、伸側チェックバルブ10を通じてタンク4から圧側室R2へ移動する。
【0120】
このように、アッパーキャップ11から第1ハウジング11dを廃止して、第2ハウジング11eをハウジングとして利用し、第2ハウジング11e内にチェックバルブ6、ニードルバルブ7、圧側減衰バルブ5および伸側チェックバルブ10を収容することができる。なお、アッパーキャップ11における第2ハウジング11eを配して第1ハウジング11dをハウジングとして利用し、第1ハウジング11d内にチェックバルブ6、ニードルバルブ7、圧側減衰バルブ5および伸側チェックバルブ10を収容してもよい。
【0121】
なお、前述した緩衝器Dでは、作動室を圧側室R2とタンク4として第1通路P1およびバイパス路PBが圧側室R2とタンク4とを連通しているが、図8に示すように、作動室を伸側室R3と圧側室R4として、バイパス路PBで緩衝器本体DB1における伸側室R3と圧側室R4とを連通して、第1通路P1に減衰バルブを設けるとともに、チェックバルブ6およびニードルバルブ7をバイパス路PBに直列に設けてもよい。図8に示した緩衝器D1は、シリンダ50と、シリンダ50内に軸方向へ移動可能に挿入したピストン51と、シリンダ50内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともにピストン51に連結されるピストンロッド52と、シリンダ50内にピストン51で区画した伸側室R3と圧側室R4とを備えた緩衝器本体DB1と、伸側室R3と圧側室R4とを連通する第1通路P5およびバイパス路PB1と、第1通路P5に設けられて伸側室R3から圧側室R4へ向かう作動油の流れのみを許容するとともに通過する作動油の流れに抵抗を与える減衰バルブ53と、バイパス路PB1に設けられて伸側室R3から圧側室R4へ向かう作動油の流れのみを許容するチェックバルブ6と、バイパス路PB1にチェックバルブ6と直列に設けられて流路面積を変更可能なニードルバルブ7とを備えている。この緩衝器D1の場合、伸側室R3と圧側室R4とが作動室となる。
【0122】
また、緩衝器本体DBにおけるシリンダ50内には、シリンダ50内の圧側室R4の反伸側室側に気体が充填される気室G1を区画するフリーピストン54が軸方向へ移動可能に挿入されており、ピストン51には、第1通路P5と並列して伸側室R3と圧側室R4とを連通する圧側通路P6と、圧側通路P6に圧側室R4から伸側室R3へ向かう作動油の流れに抵抗を与える圧側バルブ55とが設けられている。
【0123】
このように構成された緩衝器D1は、単筒型の緩衝器として構成されている。そして、伸側室R3と圧側室R4とを作動室として、バイパス路PB1で緩衝器D1の伸側室R3と圧側室R4とを連通する場合、図示するように、バイパス路PB1、チェックバルブ6およびニードルバルブ7をピストンロッド52内に設けると、緩衝器D1の外径の大型化を避けつつバイパス路PB1、チェックバルブ6およびニードルバルブ7の設置が可能となる。そして、このようにニードルバルブ7をピストンロッド52内に設ける場合、ピストンロッド52を筒状に形成して、ピストンロッド52内に挿通されるコントロールロッドを用いてニードルバルブ7に流路面積の変更のための動力を与えるようにするとよい。
【0124】
緩衝器D1が伸長すると、作動油は、減衰バルブ53を通過して伸側室R3から圧側室R4へ移動するとともに、チェックバルブ6が開弁するのでチェックバルブ6およびニードルバルブ7を通過して伸側室R3から圧側室R4へ移動する。よって、このように構成された緩衝器D1では、減衰バルブ53およびニードルバルブ7によって作動油の流れに抵抗を与えて緩衝器本体DB1の伸長を妨げる減衰力を発生する。そして、ニードルバルブ7の流路面積の変更によってニードルバルブ7が作動油の流れに与える抵抗を変更できるので、緩衝器Dの伸長行程時の減衰力の調整が可能である。なお、緩衝器D1の伸長行程時にピストンロッド52がシリンダ50内から退出することによるシリンダ50内の容積変化は、フリーピストン54がシリンダ50内で移動して気室G1を拡大させることによって補償される。
【0125】
他方、緩衝器D1が収縮する場合、作動油は、圧側バルブ55を通過して圧側室R4から伸側室R3へ移動する。緩衝器D1の収縮行程時には、チェックバルブ6は開弁しないため、作動油は、ニードルバルブ7が設置されたバイパス路PB1を通過し得ず、圧側バルブ55のみを介して移動する。よって、このように構成された緩衝器D1では、圧側バルブ55のみによって作動油の流れに抵抗を与えて緩衝器本体DB1の収縮を妨げる減衰力を発生するので、ニードルバルブ7が収縮行程時の減衰力に何ら影響を与えない。なお、緩衝器D1の収縮行程時にピストンロッド52がシリンダ50内へ侵入することによるシリンダ50内の容積変化は、フリーピストン54がシリンダ50内で移動して気室G1を縮小させることによって補償される。
【0126】
以上のように構成された緩衝器D1によれば、ニードルバルブ7の流路面積を変更して緩衝器D1の伸長行程の減衰力を調整しても、緩衝器Dの収縮行程の減衰力を変化させることが無いので、ニードルバルブ7を備えていても伸長時の減衰力のみを変更可能である。
【0127】
なお、緩衝器D1においてチェックバルブ6が許容する作動油が向かう方向を逆向きにすれば、つまり、チェックバルブ6が圧側室R4から伸側室R3へ向かう作動油の流れのみを許容するように設定する場合、緩衝器D1が収縮する際に作動油は圧側バルブ55だけでなくニードルバルブ7を通過し、緩衝器D1が伸長する際に作動油は減衰バルブ53のみを通過するようになる。このように設定すれば、ニードルバルブ7の流路面積を変更して緩衝器D1の収縮行程の減衰力の調整が可能となるとともに、緩衝器Dの伸長行程の減衰力を変化させることが無くなる。なお、この場合、圧側バルブ55が減衰バルブとして機能し、圧側バルブ55が設けられる圧側通路P6が第1通路として機能することになる。このように構成された緩衝器D1によれば、ニードルバルブ7の流路面積を変更して緩衝器D1の収縮行程の減衰力を調整しても、緩衝器Dの伸長行程の減衰力を変化させることが無いので、ニードルバルブ7を備えていても収縮時の減衰力のみを変更可能となる。
【0128】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0129】
1,50・・・シリンダ、2,51・・・ピストン、3,52・・・ピストンロッド、4・・・タンク(作動室)、5・・・圧側減衰バルブ(減衰バルブ)、6・・・チェックバルブ、7・・・ニードルバルブ、8・・・伸側減衰バルブ、9・・・圧側チェックバルブ、10・・・伸側チェックバルブ、11d・・・第1ハウジング(ハウジング)、11e・・・第2ハウジング(ハウジング)、33,71・・・ニードルケース、34,72・・・ニードル、53・・・減衰バルブ、61・・・弁座部材、61b・・・孔、62・・・環状弁体、63・・・付勢部材、71b・・・環状凹部、71f・・・環状弁座、D,D1・・・緩衝器、DB,DB1・・・緩衝器本体、P1,P5・・・第1通路、P2・・・第2通路、P3・・・第3通路、P4・・・吸込通路、PB,PB1・・・バイパス路、
R1・・・伸側室、R2・・・圧側室(作動室)、R3・・・伸側室(作動室)、R4・・・圧側室(作動室)
図1
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