(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062110
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】流体の電気加熱装置および流体の電気加熱方法
(51)【国際特許分類】
H05B 3/40 20060101AFI20240430BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20240430BHJP
F24H 1/10 20220101ALI20240430BHJP
【FI】
H05B3/40 A
H05B3/00 340
F24H1/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169891
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 芳明
(72)【発明者】
【氏名】末松 芳章
(72)【発明者】
【氏名】松田 まどか
【テーマコード(参考)】
3K058
3K092
3L034
【Fターム(参考)】
3K058AA86
3K058BA11
3K058FA03
3K058FA06
3K058FA09
3K092PP11
3K092QC02
3K092QC31
3K092VV22
3L034BA14
3L034BA17
3L034BB02
(57)【要約】
【課題】流体の加熱効率の高効率化と加熱装置の小型化とを可能にする、流体の電気加熱装置及び流体の電気加熱方法を提供する。
【解決手段】本発明は、導電性の加熱管が略相似形断面の複数本で大断面加熱管に小断面加熱管が挿通される多重管構造の加熱部をなし、加熱管同士の間の環状の間隙を、最内加熱管の管内とともに被加熱流体の流体流路とする、通電加熱による流体の電気加熱装置及び電気加熱方法であって、加熱部を往復する一つの流体流路を形成する流体流路形成手段として、(1)加熱管を両端部で支持し、電気絶縁性を持たせつつ密閉構造とする管端支持閉塞板と、(2)内外方向の加熱管同士で、一方の端部と他方の端部とで互い違いの端部位置に配設され、管壁の両側の流体流路を互いに導通させる流体導通孔と、(3)最内加熱管では流体導通孔の反対側の端部に配設され、最外加熱管では流体導通孔相当位置に配設される流体入出口と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の加熱管が、互いに略相似形断面の複数本で、大断面の加熱管に小断面の加熱管が非接触で挿通されるようにして多重管構造の加熱部をなし、前記加熱管同士の間の環状の間隙を、最内加熱管の管内とともに被加熱流体の流体流路とする、通電加熱による多重管式の流体の電気加熱装置であって、
(a)前記環状の間隙を形成する前記加熱管の管壁とともに一つの流体流路を形成する流体流路形成手段として、さらに、
(a1)前記加熱管の各々を両端部で支持し、且つ両端部を電気絶縁性を持たせながら密閉構造とする管端支持閉塞板と、
(a2)内外方向の前記加熱管同士で、一方の端部と他方の端部とで互い違いとなる端部位置に配設され、前記管壁の内外方向両側の前記環状の流体流路を互いに導通させる流体導通孔と、
(a3)前記加熱管のうちの最内加熱管では前記流体導通孔の反対側の端部に配設され、前記加熱管のうちの最外加熱管では前記流体導通孔相当位置に配設される流体入出口と、
を有する、流体の電気加熱装置。
【請求項2】
前記多重管構造の加熱部をなす前記加熱管を、内外方向で連続した複数本で加熱管群として複数の加熱管群に分け、前記加熱管群毎に給電回路を配設した、請求項1に記載の流体の電気加熱装置。
【請求項3】
前記多重管構造の加熱部をなす前記加熱管の給電回路、または前記多重管構造の加熱部をなす前記複数の加熱管群毎の給電回路が、
(b1)前記多重管構造の加熱部の一方の端部および他方の端部で、給電電極が相互に電気的に短絡されて、前記加熱管が単一の電源に並列接続される単一の並列給電回路、
(b2)前記多重管構造の加熱部の一方の端部および他方の端部で、給電電極が一つおきに電気的に短絡されて、前記加熱管が単一の電源に直列接続される単一の直列給電回路、
および、
(b3)前記多重管構造の加熱部をなす前記加熱管がそれぞれ一の電源に接続される、一加熱管一電源の給電回路の組からなる一群の給電回路、
のうちのいずれかの給電回路である、請求項1または請求項2に記載の流体の電気加熱装置。
【請求項4】
前記多重管構造の加熱部をなす前記加熱管は、横断面外形寸法の異なる内外方向の前記加熱管同士の間で、または、同一横断面外形寸法で長手方向に相互に接合された部分加熱管同士の間で、少なくとも一部に他と異なる発熱特性を有する、請求項1または請求項2に記載の流体の電気加熱装置。
【請求項5】
前記多重管構造の加熱部をなす前記加熱管は、横断面外形寸法の異なる内外方向の前記加熱管同士、および、同一横断面外形寸法で長手方向に相互に接合された部分加熱管同士、のいずれか一方または双方で、比抵抗および断面積のいずれか一方または双方を変数にしてそれぞれ異なる所定の管壁単位面積当たりの単位発熱量を有する、請求項1または請求項2に記載の流体の電気加熱装置。
【請求項6】
前記加熱管の略相似形断面の形状が、円形または多角形である、請求項1または請求項2に記載の流体の電気加熱装置。
【請求項7】
前記最内加熱管の管内の流体流路を除く前記流体流路内に、電気的な絶縁層を有する振れ止め部材を配設する、請求項1または請求項2に記載の流体の電気加熱装置。
【請求項8】
前記加熱管の内周面および外周面のいずれか一方または双方に電気的な絶縁層を有する、請求項1または請求項2に記載の流体の電気加熱装置。
【請求項9】
前記最外加熱管の外周面に断熱材が配設される、請求項1または請求項2に記載の流体の電気加熱装置。
【請求項10】
前記多重管構造の加熱部の少なくとも片側の全ての給電電極のそれぞれと給電回路側との接続部には、前記加熱管の熱変形に追従する可撓性導体または摺動接点が配設される、請求項1または請求項2に記載の流体の電気加熱装置。
【請求項11】
前記流体流路の一方の流体入出口および他方の流体入出口のそれぞれに接続され、前記被加熱流体を供給し且つ排出させる流体給排手段が、流体供給ヘッダーおよび流体排出ヘッダーを備える、請求項1または請求項2に記載の流体の電気加熱装置。
【請求項12】
前記被加熱流体の少なくとも温度および流量を含む物理量、ならびに前記加熱管の少なくとも管壁単位面積当たりの単位発熱量を含む設備能力に基づいて、前記加熱管への投入電力を制御する制御装置を備える、請求項1または請求項2に記載の流体の電気加熱装置。
【請求項13】
請求項1または請求項2に記載の流体の電気加熱装置を用いて、被加熱流体を加熱する、流体の電気加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の電気加熱装置および流体の電気加熱方法に関し、詳しくは高い加熱効率を有して小型化可能な流体の電気加熱装置および流体の電気加熱方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策のために、エネルギー効率の高効率化や二酸化炭素排出量の少ない燃料への転換が進められている。大規模で大容量の流体の加熱装置の分野では、従来より、種々なものが使用されており、数百度というような高温加熱を行うには、通常、燃焼ガスを利用したボイラ等の加熱装置が使用されている。しかし、燃焼ガスを使用するボイラ等の加熱装置は、設備が大型化するだけでなく、加熱効率が高効率のものでも35%程度と高効率化に限界があるという問題がある。
【0003】
このような加熱設備の小型化および加熱効率の高効率化のいずれの問題に対しても、大電力を限られた空間に投入できる電気加熱手段が有利であるといえる。例えば、特許文献1には、
図7の(a)縦断面図と(b)横断面図とで示すような、誘導加熱による流体の電気加熱装置60が開示されている。具体的には、発熱体62は、例えばSUS304からなる非磁性管62aおよび例えばSUS430からなる磁性体としての磁性管62b(62b1、62b2、62b3)によって構成される。非磁性管62aには、被加熱流体(矢印A)の流路をU字状に湾曲させる湾曲部62c(62c1、62c2)と、湾曲部62cの両側に互いに平行になって反対方向に延びる平行部とが、形成される。非磁性管62aは、湾曲部62cを経由して反対方向に延びることにより、誘導加熱コイル72内(コイル軸に直交する面)を複数回通過する。非磁性管62aの平行部には、非磁性管62aの外径と略同一の内径を有する3本の磁性管(62b1、62b2、62b3)が配置されている。非磁性管62aの両端は、板状の管支え板64、66に形成された孔に挿入された状態で固定支持される。
【0004】
また、発熱体62の外側周囲には、図示しない交流電源に接続された誘導加熱コイル72が配設される。この誘導加熱コイル72は、円筒形状の内側断熱材68と外側断熱材70との間に介在し、内側断熱材68の両端が、管支え板64、66に固定支持されることにより、位置決めされる。管支え板64、66には、それぞれ流体入口ヘッダー74、流体出口ヘッダー76が設けられ、気体または液体の被加熱流体(矢印A)は、流体入口ヘッダー74から非磁性管62aを通って加熱されて流体出口ヘッダー76へと導かれる。
【0005】
特許文献1に記載の発明では、磁性管62bは、被加熱流体(矢印A)が流れる非磁性管62aの外周面に接触しており、誘導加熱により磁性管62bにおいて生じた熱は磁性管62bから非磁性管62aに、非磁性管62aから被加熱流体に熱伝導している。そのため、非磁性管62aに比べ耐食性に劣る磁性管62bに被加熱流体が接触することがなく、耐食性が向上するとする。また、被加熱流体(矢印A)が流れる非磁性管62aは、誘導加熱コイル72内を複数回通過している。これにより、1本の非磁性管62aで複数の管を配置したのと同等の発熱量が得られるため、誘導加熱コイル72を長く或いは高周波にする必要や非磁性管62aを厚くする必要がないとする。また、非磁性管62aの本数を減らすことで、被加熱流体(矢印A)の温度バラつきが抑えられると共に温度制御が容易になるとする。
【0006】
また、特許文献2には、
図8に示すような通電加熱による流体の電気加熱装置80が開示されている。その基本的な構成は、
図8(a)に示すように、加熱管体82と、非加熱管体84と、管体継ぎ手86と、交流電源88とから「一加熱管体一電源」の構成である。加熱管体82は、通電により発熱する金属で形成される。この加熱管体82には、その一方の端部から他方の端部に電流を流す交流電源88が接続される。非加熱管体84は、加熱管体82の両端部に接続され、加熱管体82と同じ径寸法を有して、被加熱流体の流路をなす。管体継ぎ手86は、加熱管体82と非加熱管体84、84とを機械的に接続して流路を形成すると共に加熱管体82と非加熱管体84、84とを電気的に絶縁する。なお、加熱管体82を保持する支持台を必要とする場合には、
図9(a)に示すように、支持台90と加熱管体82との間に電気絶縁体92を介在させる。
【0007】
特許文献2には、
図8(b)、(c)に示すように、複数本の加熱管体82同士を接続する場合の実施形態も開示している。
図8(b)は、電気的絶縁性を有する管体継ぎ手86を使って加熱管体82同士を連結し、ジャンパー94によって加熱管体82同士を電気的に接続する場合の一例である。また、別法として、機械的に連結し且つ電気的にも接続するフランジを使って、加熱管体82同士を接続してもよいとする。あるいは、
図8(c)に示すように、各加熱管体82を管体継ぎ手86で電気的に絶縁して、各加熱管体82毎に交流電源88を設けてもよいとする。
【0008】
このように、特許文献2に記載の流体の電気加熱装置80によれば、加熱管体82で被加熱流体の流路の少なくとも一部を構成するとともに、流体の流路自体を発熱手段として流体を直接電気加熱することにより、高いエネルギー効率で流体を加熱昇温することができるとする。具体的なエネルギー効率についての実験例としては、内径7mm、外形10.5mm、長さ8mのステンレス鋼管製の加熱管体に、60V、180Aの交流を流しながら、汚泥スラリーを流量80リットル/時間で流した例が示されている。この実験では、20℃から200℃まで約180℃昇温させることができ、加熱管体に与えた電気エネルギーの80~90%が汚泥スラリーの加熱に利用できたとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-232606号公報
【特許文献2】特開2000-213807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載のようなソレノイドコイル状の誘導加熱コイル72の内側の発熱体62(磁性管62b)を加熱する場合には、次のような理由により、その加熱効率を向上させるには、限界があった。これは、誘導加熱コイル72により生じる磁束は、誘導加熱コイル72に近接した発熱体62(導体)の表層を貫通して誘導電流を起こすが、
図7(b)に示される様に、有効な磁束が貫通して有効な加熱ができる発熱体62の部位が限られるからである。例えば、発熱体(磁性管)62b1および62b3の誘導加熱コイル72に面する部位は全周の半分程度であり、62b1および62b3の誘導加熱コイル72と反対の面、および中心部の62b2は、誘導加熱コイル72から離れており、有効な磁束の貫通および有効な加熱が生じ難い。また、誘導加熱コイル72の外側の磁束は自由に放射されるため、発熱体62以外の周囲の金属を貫通する磁束も相当程度多いからである。その結果、ソレノイドコイル直下の被加熱材に磁束を集中しにくく、加熱効率が高められないためである。
【0011】
また、特許文献2に記載のような流体の電気加熱装置80では、加熱管体82から被加熱流体への伝熱は、加熱管体82の内面だけとなる。そのため、このような加熱装置で高温加熱を行う場合には、加熱管体を延長して伝熱面積を大きくするとともに加熱時間を確保する必要があり、加熱管体の延長が必要となる。しかし、加熱管体の延長は加熱装置の大型化に結びつきやすいことから、特許文献2に記載の発明による加熱装置の小型化には限界があるという問題がある。
【0012】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、流体の電気加熱による加熱効率の高効率化および大容量の加熱装置の小型化を可能にする、流体の電気加熱装置および流体の電気加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[1]導電性の加熱管が、互いに略相似形断面の複数本で、大断面の加熱管に小断面の加熱管が非接触で挿通されるようにして多重管構造の加熱部をなし、前記加熱管同士の間の環状の間隙を、最内加熱管の管内とともに被加熱流体の流体流路とする、通電加熱による多重管式の流体の電気加熱装置であって、
(a)前記環状の間隙を形成する前記加熱管の管壁とともに一つの流体流路を形成する流体流路形成手段として、さらに、
(a1)前記加熱管の各々を両端部で支持し、且つ両端部を電気絶縁性を持たせながら密閉構造とする管端支持閉塞板と、
(a2)内外方向の前記加熱管同士で、一方の端部と他方の端部とで互い違いとなる端部位置に配設され、前記管壁の内外方向両側の前記環状の流体流路を互いに導通させる流体導通孔と、
(a3)前記加熱管のうちの最内加熱管では前記流体導通孔の反対側の端部に配設され、前記加熱管のうちの最外加熱管では前記流体導通孔相当位置に配設される流体入出口と、
を有する、流体の電気加熱装置。
[2]前記多重管構造の加熱部をなす前記加熱管を、内外方向で連続した複数本で加熱管群として複数の加熱管群に分け、前記加熱管群毎に給電回路を配設した、[1]に記載の流体の電気加熱装置。
[3]前記多重管構造の加熱部をなす前記加熱管の給電回路、または前記多重管構造の加熱部をなす前記複数の加熱管群毎の給電回路が、
(b1)前記多重管構造の加熱部の一方の端部および他方の端部で、給電電極が相互に電気的に短絡されて、前記加熱管が単一の電源に並列接続される単一の並列給電回路、
(b2)前記多重管構造の加熱部の一方の端部および他方の端部で、給電電極が一つおきに電気的に短絡されて、前記加熱管が単一の電源に直列接続される単一の直列給電回路、
および、
(b3)前記多重管構造の加熱部をなす前記加熱管がそれぞれ一の電源に接続される、一加熱管一電源の給電回路の組からなる一群の給電回路、
のうちのいずれかの給電回路である、[1]または[2]に記載の流体の電気加熱装置。
[4]前記多重管構造の加熱部をなす前記加熱管は、横断面外形寸法の異なる内外方向の前記加熱管同士の間で、または、同一横断面外形寸法で長手方向に相互に接合された部分加熱管同士の間で、少なくとも一部に他と異なる発熱特性を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の流体の電気加熱装置。
[5]前記多重管構造の加熱部をなす前記加熱管は、横断面外形寸法の異なる内外方向の前記加熱管同士、および、同一横断面外形寸法で長手方向に相互に接合された部分加熱管同士、のいずれか一方または双方で、比抵抗および断面積のいずれか一方または双方を変数にしてそれぞれ異なる所定の管壁単位面積当たりの単位発熱量を有する、[1]~[4]のいずれかに記載の流体の電気加熱装置。
[6]前記加熱管の略相似形断面の形状が、円形または多角形である、[1]~[5]のいずれかに記載の流体の電気加熱装置。
[7]前記最内加熱管の管内の流体流路を除く前記流体流路内に、電気的な絶縁層を有する振れ止め部材を配設する、[1]~[6]のいずれかに記載の流体の電気加熱装置。
[8]前記加熱管の内周面および外周面のいずれか一方または双方に電気的な絶縁層を有する、[1]~[7]のいずれかに記載の流体の電気加熱装置。
[9]前記最外加熱管の外周面に断熱材が配設される、[1]~[8]のいずれかに記載の流体の電気加熱装置。
[10]前記多重管構造の加熱部の少なくとも片側の全ての給電電極のそれぞれと給電回路側との接続部には、前記加熱管の熱変形に追従する可撓性導体または摺動接点が配設される、[1]~[2]のいずれかに記載の流体の電気加熱装置。
[11]前記流体流路の一方の流体入出口および他方の流体入出口のそれぞれに接続され、前記被加熱流体を供給し且つ排出させる流体給排手段が、流体供給ヘッダーおよび流体排出ヘッダーを備える、[1]~[10]のいずれかに記載の流体の電気加熱装置。
[12]前記被加熱流体の少なくとも温度および流量を含む物理量、ならびに前記加熱管の少なくとも管壁単位面積当たりの単位発熱量を含む設備能力に基づいて、前記加熱管への投入電力を制御する制御装置を備える、[1]~[11]のいずれかに記載の流体の電気加熱装置。
[13][1]~[12]のいずれかに記載の流体の電気加熱装置を用いて、被加熱流体を加熱する、流体の電気加熱方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、流体の電気加熱装置の導電性の加熱管を多重管構造とし、加熱管同士の間の環状の間隙を被加熱流体の流路とすることで、大きな伝熱面積の確保と空間的な小型化とを同時に達成できる。また、通電加熱を採用することで、誘導加熱とは異なり、そもそも磁束漏れによる効率低下がなく、高い加熱効率を確保することができる。本発明は、以上のように、伝熱面積拡大を含む空間的な加熱装置の小型化と電気的な高効率化とが相まって大容量の流体の加熱設備の小型化を有利に達成することができる流体の電気加熱装置とそれによる流体の電気加熱方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1に係る流体の電気加熱装置100を模式的に示す縦断面図である。
【
図2】実施の形態1の変形例に係る流体の電気加熱装置110を模式的に示す縦断面図である。
【
図3】実施の形態1の他の変形例に係る流体の電気加熱装置120を模式的に示す縦断面図である。
【
図4】実施の形態1のさらに他の変形例に係る流体の電気加熱装置130を模式的に示す縦断面図である。
【
図5】実施の形態2に係る流体の電気加熱装置200を模式的に示す縦断面図である。
【
図6】実施の形態3に係る流体の電気加熱装置300を模式的に示す縦断面図である。
【
図7】従来技術に係る誘導加熱による流体の電気加熱装置を、(a)縦断面図と(b)横断面図とで模式的に示す図である。
【
図8】従来技術に係る通電加熱による流体の電気加熱装置を、(a)一加熱管体一電源の基本構成例、(b)加熱管体を複数直列配置した構成例、および(c)基本構成を複数直列に配した構成例で、それぞれ模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る流体の電気加熱装置100を模式的に示す縦断面図である。また、
図2は、実施の形態1の変形例に係る流体の電気加熱装置110を模式的に示す縦断面図である。
図3は、実施の形態1の他の変形例に係る流体の電気加熱装置120を模式的に示す縦断面図である。
図4は、実施の形態1のさらに他の変形例に係る流体の電気加熱装置130を模式的に示す縦断面図である。
図1~
図4を参照して、実施の形態1に係る流体の電気加熱装置について説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態に係る流体の電気加熱装置100は、通電加熱による多重管式の流体の電気加熱装置である。多重管構造の加熱部(以下、単に加熱部ともいう。)10は、導電性の加熱管10aが、互いに略相似形断面の複数本で、大断面の加熱管に小断面の加熱管が非接触で挿通されるようにして多重管構造をなしている。また、加熱管同士の間の環状の間隙を、最内加熱管の管内とともに被加熱流体の流体流路とする。なお、最内加熱管および環状流路の典型的な流路間隔は、例えば化学反応用途での加熱の場合で2~3mm程度、気体加熱用途で10mm程度である。
【0019】
また、本実施の形態に係る流体の電気加熱装置100は、(a)環状の間隙を形成する加熱管10aとともに一つの流体流路を形成する次の流体流路形成手段をさらに有する。具体的には、さらに、(a1)管端支持閉塞板18と、(a2)流体導通孔30と、(a3)流体入出口20とからなる流体流路形成手段を有する。
【0020】
(a1)管端支持閉塞板18は、加熱管10aの各々を両端部で支持、固定して、内外方向の加熱管10a同士の間の環状の間隔を所定の間隔に維持するとともに、多重管構造の加熱部10の端部を区画する壁としても機能する。また、管端支持閉塞板18は、電気絶縁性を持たせることにより、内外方向で隣り合う加熱管10a同士が電気的に短絡しないようにして、加熱管10aと電源40とを結ぶ給電回路の形成の障害とならないようにする。さらに、管端支持閉塞板18と加熱管10aの端部との間を密閉構造とすることで、管端支持閉塞板18を流体流路壁の一部として機能させることができる。
【0021】
(a2)流体導通孔30は、内外方向の加熱管10a同士で、一方の端部と他方の端部とで互い違いとなる端部位置に配設される。これにより、管壁の内外方向両側の環状の流体流路が互いに導通して、流体流路の加熱管10aの端部での折り返しを可能にする。また、(a3)流体入出口20は、加熱管10aのうちの最内加熱管11では流体導通孔30と反対側の端部に配設され、加熱管10aのうちの最外加熱管14では流体導通孔相当位置に配設される。
図1に示す本実施形態の例では、最内加熱管11に流体入口20aが、また、最外加熱管14に流体出口20bが配設された流体流路の例を示しているが、被加熱流体が流れる流路方向はこれに限定されず、逆方向であってもよい。
【0022】
また、本実施形態に係る流体の電気加熱装置100は、流体流路の一方の流体入出口および他方の流体入出口のそれぞれに接続され、被加熱流体を供給し且つ排出させる流体給排手段(図示せず。)を有する。この流体給排手段は、流体流路への被加熱流体の供給と、流体流路からの被加熱流体の排出を安定的に行うために、公知の流体供給ヘッダーおよび流体排出ヘッダーを備えるのが好ましい。また、流体供給ヘッダーおよび流体排出ヘッダーと、通電される加熱管10aとは、電気的な絶縁を確保して被加熱流体を流通させるために、公知の絶縁継手を介して接続するのが好ましい。
【0023】
本実施形態に係る多重管構造の加熱部10をなす加熱管10aは、導電性を有し、被加熱流体の加熱温度に耐える耐熱性および耐食性を有し、管体に成形できるものである等の要件を満たすものであれば特にその材質は限定されない。このような要件を満たす好ましい材質として、例えば、公知のCr合金鋼(炭素鋼に1質量%前後のCrが添加された合金鋼から、さらに高合金のCr系ステンレス鋼も含む。)がある。また他の合金鋼として、Cr-Ni合金鋼(炭素鋼に0.2~1.0質量%程度のCr、および、1.0~3.5質量%程度のNiが添加された合金鋼から、さらに高合金のCr-Ni系ステンレス鋼も含む。)が例示できる。さらに、特に1000℃超での使用に耐える、人造黒鉛、または導電性セラミックスが例示できる。これらの材質は、比較的固有抵抗が大きいので、発熱管として好ましい材質である。導電性セラミックスとしては、公知のSiC、TiC、またはTiN等の導電性セラミックスを採用すればよい。その他、被加熱流体や設置場所等によっては、必要に応じて公知のタングステン、モリブデン等の高融点金属またはこれらの合金を用いてもよい。
【0024】
さらに、本実施形態に係る多重管構造の加熱部10をなす加熱管10aは、横断面外形寸法の異なる内外方向の加熱管10a毎に、上記で例示した種々の材質のものが配設されてもよい。また、加熱部10をなす加熱管10aは、同一横断面外形寸法で長手方向に相互に接合された部分加熱管毎に、上記で例示した種々の材質のものが配設されてもよい。このようにすれば、流体流路での加熱開始から終了までのそれぞれの温度域に応じて、加熱管10aの全長で、または部分ごとに、適切な耐熱性および耐食性を有する材質の加熱管10aとすることができる。例えば、流体流路の入口付近の常温域から600℃程度までの比較的低温域では、Cr合金鋼等を、耐熱性および耐食性の問題なく採用することができる。さらに、1000℃程度までの高温域では、Cr-Ni系ステンレス鋼等を採用することができる。1000℃超のさらなる高温域では、人造黒鉛、または、SiC、TiC、もしくはTiN等の導電性セラミックスを採用することができる。このようにして、環境の過酷化に応じた材料の選択をすることで、加熱管10aの材料費を低く抑えることができる。
【0025】
また、本実施形態に係る加熱管10aは、横断面外形寸法の異なる内外方向の加熱管10a同士の間で、比抵抗および断面積のいずれか一方または双方を変数にして、それぞれ異なる所定の管壁単位面積当たりの単位発熱量を有するものとしてもよい。また、加熱部10をなす加熱管10aは、同一横断面外形寸法で長手方向に相互に接合された部分加熱管同士の間で、比抵抗および断面積のいずれか一方または双方を変数にして、それぞれ異なる所定の管壁単位面積当たりの単位発熱量を有するものとしてもよい。このようにすれば、例えば、加熱初期から中期にかけては単位発熱量を高め、加熱後期には単位発熱量が低くなる加熱パターンを採用する等して、加熱温度の的中率を高めることもできる。
【0026】
本実施形態に係る多重管構造の加熱部10は、例えば
図8に示すような従来技術に係る単管構造の加熱管からなる流体の電気加熱装置80と比較して、同等の加熱部容積の条件では、広い伝熱面(発熱面、加熱面ともいう。)面積の確保の点で有利である。すなわち、本実施形態では、挿通される複数の加熱管10aの管壁の内外周面分だけ広い伝熱面積を確保することができる。また、本実施形態では、多重管とすることにより、被加熱流体は、狭い空間を通らざるを得なくなり、乱流となりやすくなることから、伝熱能力が向上する。乱流による伝熱促進を高めるために、加熱管10aの管壁の表面粗度を粗くしたり、凹凸、ギザギザ等の流体が乱れやすい形状を管壁に付与することで、更に伝熱効率を向上させることができる。そのため、本実施形態に係る流体の電気加熱装置100においては、装置を大型化させることなく加熱能力を大幅に増大させることができる。また逆に、本実施形態に係る流体の電気加熱装置100によれば、単管構造の加熱管からなる流体の電気加熱装置を、加熱能力を損なうことなく小型化した加熱装置に置き換えることもできる。
【0027】
また、本実施形態に係る多重管構造の加熱部10では、本質的に周囲への熱放散による熱損失を低く抑えることができる。これは、多重管構造では、最外加熱管14を除き、他の加熱管10a(最内加熱管11および中間加熱管12、13)は、その外周側を他の加熱管10aで囲まれるからである。すなわち、本実施形態では、加熱管10aからの熱損失は最外加熱管14の外周面からの熱放散による熱損失が主体であり、他の加熱管10aでは、外周面も被加熱流体の加熱面となり熱損失は殆ど生じないからである。
【0028】
多重管構造の加熱部10をなす加熱管10aが互いに略相似形断面を有するようにするのは、内外方向で隣接する加熱管10a同士の間の環状の間隙を、加熱管10aのいずれの周面位置でも略同一間隔にするためである。これにより、被加熱流体が流速のばらつきや偏流を起こすことなく安定して流れる流体流路を形成することができる。併せて、通電加熱される加熱管10a同士が接触して電気的に短絡することで発生するスパークを回避することもできる。なお、被加熱流体が気体で流路方向に沿った加熱量(昇温量)が大きく、流体流路の断面積が流路方向で変わらない場合に、被加熱流体の体積膨張のために流路方向に沿って被加熱流体の流速が漸次増速して問題となる場合がある。このような場合は、その増速効果を相殺するために、加熱管10aの断面形状は略相似形を維持しながら断面積を流路方向に沿って漸次拡大させるようにしてもよい。
【0029】
加熱管10aの略相似形断面の形状は、円形または多角形であることが好ましい。円形の場合は、加熱管10aの製造および環状の流体流路の形成ならびに偏流の回避が他の形状と比較して有利だからである。また、多角形の場合も円形の場合に準じて、加熱管10aの製造および環状の流体流路の形成ならびに偏流の回避が比較的有利となる。さらに多角形のなかでも四角形の場合は、電気加熱装置の設置スペースが限られている場合に、周囲の設備等との干渉を避けながら加熱部10のスペースを最大化することが比較的容易であり、好ましい。
【0030】
最内加熱管11の管内の流体流路を除く流体流路内には、電気的な絶縁層を有する振れ止め部材56を配設して、両側の加熱管10aの横振れを防止するようにするのが好ましい。電磁力および流体流動起因の加熱管の振動、または加熱管の熱変形等で、加熱管同士の接触が懸念される場合、この振れ止め部材56により、内外方向で隣接する加熱管10a同士の間隙を、いずれの位置でもより確実に略同一間隔にできるからである。また、この振れ止め部材56は、被加熱流体の体積膨張による流路方向に沿った被加熱流体の漸次増速の対策として、加熱管10aの断面積を流路方向に沿って漸次拡大させる場合にも、流路方向で漸次拡大される流路幅を維持するために用いることができる。なお、振れ止め部材56の大きさ、配設位置および配設数等の流路内への配設条件については、振れ止めの目的からすれば限定的な配設で十分であるため、振れ止め部材56が被加熱流体の流れの阻害要因となることはない。また、振れ止め部材56には、それぞれ独立して通電される両側の加熱管10aが互いに電気的に短絡しないようにするため、公知の電気的な絶縁層を有する耐火物またはセラミックスを配設する。振れ止め部材56のその他の構成材料についても、被加熱流体の加熱温度に耐える耐熱性、耐食性、および耐化学反応性を有し、部材成形できるものである等の要件を満たすものであれば特にその材料は限定されない。
【0031】
また、加熱管10aの内周面および外周面のいずれか一方または双方に電気的な絶縁層を有するようにするのが好ましい。通電加熱される加熱管10a同士が接触してスパークが発生したり、加熱管の破裂が生じる等のトラブルを、このような電気的な絶縁層により回避できるからである。また、このような電気的な絶縁層を設けることで、電気導電性を有する被加熱流体も、通電加熱による加熱が可能になるからである。なお、この電気的な絶縁層の材料については、電気的な絶縁性の他、被加熱流体の加熱温度に耐える耐熱性および耐食性を有するものである等の要件を満たすものであれば特にその材料は限定されない。例えば、アルミナ等の絶縁性酸化物セラミックスを溶射するなど公知の素材、および被覆方法を用いればよい。
【0032】
また、
図1に示すように、本実施形態に係る流体の電気加熱装置100は、加熱管10aへの給電のために、給電電極50、電源40、およびこれらを結ぶ給電回路を有する。給電電極50は、加熱管10aの一方の端部および他方の端部のそれぞれの管壁に配設される。これにより、加熱管10aの両端部の給電電極50の間の有効加熱範囲を加熱管10aの管壁のほぼ全域とするためである。また、給電電極50は、給電回路を構成するうえで、管端支持閉塞板18を貫通させるように設けるのが好ましい。なお、図示はしていないが、本発明の加熱管または被加熱流体に対しては熱電対等の測温手段が設けられ、電源の投入電力、電流、および電圧等の制御により、加熱管の温度および被加熱流体の温度等が制御される。
【0033】
電源40は、給電電極50を通して、加熱管10aの一本または複数本に給電する。ここでの電源40は、直流電源でも交流電源でもよい。加熱管の電流分布の均一性が必要であれば、表皮効果の影響がない直流電源が望ましい。逆に表皮効果により、加熱管表層を加熱する目的であったり、電源の設備費等を重視するのであれば、交流電源とするのが好ましい。交流電源の場合の加熱周波数帯域は、通常の誘導加熱の場合と同じ加熱周波数帯域1kHz~400kHzでよく、表皮効果を抑える場合には、これより低い周波数帯域である1kHz未満の加熱周波数とするのが好ましい。この1kHz未満の加熱周波数帯域の交流電源であれば、加熱管の電流分布への表皮効果の影響が小さく、電源コストが低い、等のメリットが得られやすいからである。
【0034】
本実施形態では、加熱管10aと電源40とを、給電電極50、導体(バスバー、電線等)51、および電線52等を介して結ぶ給電回路の一つとして、
図1に示すような(b1)加熱管10aが単一の電源40に並列接続される単一の並列給電回路を採用する。また、本実施形態では、加熱管10aと電源40とを、給電電極50、導体51、および電線52等を介して結ぶ他の給電回路として、
図2に示すような(b2)加熱管10aが単一の電源40に直列接続される単一の直列給電回路を採用してもよい。これらの給電回路を構成するには、(b1)では、多重管構造の加熱部10の一方の端部および他方の端部で、給電電極50が相互に電気的に短絡されるようにすればよい。また、(b2)では、多重管構造の加熱部10の一方の端部および他方の端部で、給電電極50が一つおきに電気的に短絡されるようにすればよい。なお、いずれの給電回路においても、電流、電圧、および電力等を制御する公知技術に基づいて、本実施形態に係る流体の電気加熱装置100(110)の加熱制御を行うことができる。並列接続とするか直列接続とするかは、各加熱管の抵抗、発熱量、および被加熱流体の昇温量等を勘案して設計すればよい。
【0035】
本実施形態では、被加熱流体の少なくとも温度および流量を含む物理量、ならびに加熱管10aの少なくとも管壁単位面積当たりの単位発熱量を含む設備能力に基づいて、加熱管10aへの投入電力を制御する制御装置(図示せず。)を備えるのが好ましい。この制御装置により、電源40から加熱管10aへ投入する電力を制御しながら、加熱管10aを通電加熱することができる。多重管構造の加熱部10全体でみると、投入電力を制御しながら、最外加熱管14では、管内側の管壁から被加熱流体を加熱し、最外加熱管14を除く全ての加熱管(最内加熱管11および中間加熱管12、13)では、管壁の両側を流れる被加熱流体を加熱する。なお、ここでの制御装置は、演算装置、記憶装置、入出力装置等を含む公知の制御装置でよく、その詳細な説明は省略する。
【0036】
加熱制御に用いる、被加熱流体の温度および流量を含む、所定の物理量は、多重管構造の加熱部10の被加熱流体の入口および/または出口の近傍で測定するのが好ましい。入口近傍および/または出口近傍での被加熱流体の物理量の測定結果は、投入電力、電流、および電圧等の電源へのフィードフォワード制御および/またはフィードバック制御による被加熱流体温度制御の高精度化に寄与できるからである。なお、電気加熱では制御の応答性が高いため、多重管構造の加熱部10の被加熱流体入口近傍のみで、被加熱流体の物理量を測定し、フィードフォワード制御のみを行うようにしてもよい。加熱管10aの少なくとも管壁単位面積当たりの単位発熱量を含む設備能力は、上記のフィードバック制御およびフィードフォワード制御のいずれにおいても、加熱管10aへの投入電力、電流、および電圧等の電源の制御をするための基礎データとして用いられる。ここでの被加熱流体、加熱管の温度測定手段としては、公知の熱電対による温度測定等が例示できる。また、被加熱流体の流量測定手段としては、公知の電磁流量計、羽根車式流量計、超音波流量計、および差圧式流量計(オリフィス流量計)等が例示できる。
【0037】
図3に示すように、本実施形態に係る流体の電気加熱装置120は、最外加熱管14の外周面に断熱材58が被覆されるようにしてもよい。最外加熱管14を除く他の加熱管(最内加熱管11および中間加熱管12、13)では、その外周面が他の加熱管10aで囲まれ被加熱流体の流路となるため、熱損失の懸念がないのに対し、最外加熱管14の外周面からの熱放散はそのまま熱損失となるからである。また、多重管構造の加熱部10の周囲の設備等の保護のためにも、最外加熱管14の外周面からの熱放散を軽減するのが好ましいためである。なお、断熱材としては、公知の低熱伝導のセラミックスファイバーなどの断熱材を用いることができる。
【0038】
また、本実施形態では、
図4に示す流体の電気加熱装置130のように、多重管構造の加熱部10をなす加熱管10aが加熱条件に応じて熱膨張または熱収縮しても、給電回路での断線トラブル等を回避できる手段が配設されるようにしてもよい。例えば、多重管構造の加熱部10の少なくとも片側の全ての給電電極50のそれぞれと給電回路側との接続部には、少なくとも加熱管10aの熱変形が及ぶ範囲に、該熱変形に追従する可撓性導体54または摺動接点(図示せず)が配設されるようにしてもよい。これにより、多重管構造の加熱部10をなす加熱管10aが、加熱条件に応じて熱膨張または熱収縮しても、電極部の変形および位置の変化に追従することができ好ましい。なお、可撓性導体とは、導体そのものが外力を受けても柔軟に折り曲がる等して熱膨張または熱収縮を吸収できる、いわゆる編組線、または水冷ケーブル、ばね式の導体等である。また、摺動接点とは、給電側の接点と受電側の接点とが、一定以上の圧力、接触面積を確保して通電状態を維持しながら摺動することで、熱膨張または熱収縮に追従できるカーボンブラシ等の公知の接点である。
【0039】
次に、主に
図1に基づいて、本実施形態に係る流体の電気加熱装置100を用いた流体の電気加熱方法について説明する。本実施形態では、
図1に示すように、被加熱流体は、多重管構造の加熱部10の一つの流体流路の入口、すなわち、最内加熱管11の一方の端部に設けられた流体入口20aから供給される。最内加熱管11を他方の端部まで流れた被加熱流体は、最内加熱管11の端部の管壁に設けられた流体導通孔30を通過して隣接する流体流路に移り、折り返して中間加熱管12の他の端部に設けられた流体導通孔30まで流れる。このようにして、被加熱流体は、多重管構造の加熱部10内の複数層の環状の流体流路を往復しながら、最外加熱管14の端部に設けられた流体出口20bまで流れる。なお、最外加熱管14の端部に設けられる流体出口20bの端部位置は、
図1と
図6とで流体入口20aとの位置関係が異なるが、隣接する中間加熱管12(13)に設けられる流体導通孔30側の端部と反対側の端部に設けられる点で共通している。また、被加熱流体を流す方向は、
図1の例に限定されるものではなく、
図1と逆向きに流してもよい。
【0040】
本実施形態では、流体流路を形成する加熱管10a(最内加熱管11、中間加熱管12、および最外加熱管14)が通電加熱されて、その管壁が発熱面となりそのまま加熱面として働くことから、被加熱流体が流体流路を通過中に効率的に加熱される。なお細かく見れば、最外加熱管14では管内側の管壁から被加熱流体を加熱し、最外加熱管14を除く全ての加熱管10aでは、管壁の両側を流れる被加熱流体を加熱することになる。
【0041】
被加熱流体の加熱制御では、不図示の制御装置により、加熱目標温度および加熱流量等の物理量、ならびに加熱管10aの単位発熱量等の設備能力に基づいた加熱部10への投入電力制御がなされる。これに加えて、加熱後の被加熱流体の温度および流量に基づくフィードバック制御等が行われるのが好ましい。
【0042】
具体的な被加熱流体の加熱用途の例としては、燃焼装置へ送られる燃料および燃焼用空気の予熱、または重油アトマイズのための重油およびアトマイズ蒸気の加熱、等を例示できるが、これに限定されない。
【0043】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2に係る流体の電気加熱装置200を模式的に示す縦断面図である。
図5を参照して、実施の形態2に係る流体の電気加熱装置200について説明する。
【0044】
図5に示すように、実施の形態2に係る流体の電気加熱装置200は、実施の形態1に係る流体の電気加熱装置と比較した場合に、加熱管10aと電源40とを結ぶ給電回路において相違する。具体的には、流体の電気加熱装置200は、実施の形態1とは、(b3)多重管構造の加熱部10をなす加熱管10aがそれぞれ一の電源40に接続される、一加熱管一電源の給電回路の組からなる一群の給電回路を備える点において相違する。
図5に示す例は、最内加熱管11と専用の電源41、中間加熱管12と専用の電源42、および最外加熱管14と専用の電源44というような、それぞれの一加熱管一電源の給電回路が3つで組となって一群の給電回路をなす例である。その他の構成については、実施の形態1とほぼ同様である。
【0045】
以上のように構成される場合であっても、実施の形態2に係る流体の電気加熱装置200は、実施の形態1に係る流体の電気加熱装置とほぼ同様の効果が得られる。
【0046】
加えて、加熱管10a毎に専用の電源40(41、42、43)が配設されているため、加熱管10a毎のきめ細かな加熱制御をとおして、多重管構造の加熱部10全体としての加熱制御のさらなる高精度化が可能になる。
【0047】
(実施の形態3)
図6は、実施の形態3に係る流体の電気加熱装置300を模式的に示す縦断面図である。
図6を参照して、実施の形態3に係る流体の電気加熱装置300について説明する。
【0048】
図6に示すように、実施の形態3に係る流体の電気加熱装置300は、実施の形態1、2に係る流体の電気加熱装置と比較した場合に、次のような相違点を有する。すなわち、本実施形態は、多重管構造の加熱部10をなす加熱管10aを、内外方向で連続した複数本で加熱管群として複数の加熱管群に分け、加熱管群毎に並列給電回路を備える点において実施の形態1、2と相違する。その他の構成については、実施の形態1、2とほぼ同様である。
【0049】
図6に示す例では、多重管構造の加熱部10をなす加熱管10aを、最内加熱管11と中間加熱管12とで小断面の加熱管群15とし、その外側に連続して、中間加熱管13と最外加熱管14とで大断面の加熱管群16として、2つの加熱管群に分けている。この2つの加熱管群には、それぞれ並列給電回路により、小断面の加熱管群15には小断面の加熱管群用の電源45が連結され、また、大断面の加熱管群16には大断面の加熱管群用の電源46が連結されている。
【0050】
なお、
図6に示す例は一例であって、本実施形態では、加熱管群毎に、(b1)並列給電回路、(b2)直列給電回路、および(b3)一群の給電回路のうちのいずれかを備えるようする。例えば、加熱管群毎に別々の給電回路が配設され、結果的にこれら3種の給電回路全てが配設されてもよい。また、
図6に示す例では、中間加熱管12、13が2本記載されているが、さらに多くの中間加熱管が配設されてもよい。
【0051】
以上のように構成される場合であっても、実施の形態3に係る流体の電気加熱装置300は、実施の形態1、2に係る流体の電気加熱装置とほぼ同様の効果が得られる。
【0052】
加えて、加熱管群毎に専用の電源40(45、46)が配設されているため、加熱管群毎のきめ細かな加熱制御をとおして、多重管構造の加熱部10全体としての加熱制御もさらに高精度化することができる。
【0053】
以上、本発明に係る種々の実施形態の流体の電気加熱装置100、110、120、130、200、および300について説明してきたが、これらを同一の実施形態同士でまたは異なる実施形態同士で、流路方向に直列にまたは並列に連結して配設してもよい。これにより、限られた加熱装置の配設スペースのなかで、上流側と下流側とで流体の電気加熱装置の加熱能力の最適化を行う等、設備設計の自由度を高めることができる。
【符号の説明】
【0054】
10 多重管構造の加熱部
10a 加熱管
11 最内加熱管
12、13 中間加熱管
14 最外加熱管
15 小断面の加熱管群
16 大断面の加熱管群
18 管端支持閉塞板
20 流体入出口
20a 流体入口
20b 流体出口
30 流体導通孔
40 電源
41 最内加熱管用の電源
42 中間加熱管用の電源
44 最外加熱管用の電源
45 小断面の加熱管群用の電源
46 大断面の加熱管群用の電源
50 給電電極
51 導体(バスバー、電線)
52 電線
54 可撓性導体
56 振れ止め部材(スペーサー)
58 断熱材
60 流体の電気加熱装置
62 発熱体
62a 非磁性管
62b、62b1、62b2、62b3 磁性管
62c、62c1、62c2 湾曲部
64、66 管支え板
68 内側断熱材
70 外側断熱材
72 誘導加熱コイル
74 流体入口ヘッダー
76 流体出口ヘッダー
80 流体の電気加熱装置
82 加熱管体
84 非加熱管体
86 管体継ぎ手
88 交流電源
90 支持台
92 電気絶縁体
94 ジャンパー
100、110、120、130、200、300 流体の電気加熱装置