IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横浜ゴム株式会社の特許一覧

特開2024-62125タイヤのユニフォミティ測定方法および測定装置並びにこの測定装置の管理方法
<>
  • 特開-タイヤのユニフォミティ測定方法および測定装置並びにこの測定装置の管理方法 図1
  • 特開-タイヤのユニフォミティ測定方法および測定装置並びにこの測定装置の管理方法 図2
  • 特開-タイヤのユニフォミティ測定方法および測定装置並びにこの測定装置の管理方法 図3
  • 特開-タイヤのユニフォミティ測定方法および測定装置並びにこの測定装置の管理方法 図4
  • 特開-タイヤのユニフォミティ測定方法および測定装置並びにこの測定装置の管理方法 図5
  • 特開-タイヤのユニフォミティ測定方法および測定装置並びにこの測定装置の管理方法 図6
  • 特開-タイヤのユニフォミティ測定方法および測定装置並びにこの測定装置の管理方法 図7
  • 特開-タイヤのユニフォミティ測定方法および測定装置並びにこの測定装置の管理方法 図8
  • 特開-タイヤのユニフォミティ測定方法および測定装置並びにこの測定装置の管理方法 図9
  • 特開-タイヤのユニフォミティ測定方法および測定装置並びにこの測定装置の管理方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062125
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】タイヤのユニフォミティ測定方法および測定装置並びにこの測定装置の管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 1/16 20060101AFI20240430BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
G01M1/16
G01M17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169915
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】秋山 直輝
【テーマコード(参考)】
2G021
【Fターム(参考)】
2G021AB01
2G021AC03
2G021AC19
2G021AF08
2G021AG05
2G021AH01
(57)【要約】
【課題】タイヤのユニフォミティを簡便により精度よく把握できる測定方法および測定装置並びにこの測定装置の測定精度を維持するための管理方法を提供する。
【解決手段】一対のリム部4a、4bの各ビード嵌合底面5a、5bの全周に渡る半径方向の振れd1、d2のデータを用いて、リム4の半径方向の振れDのデータを演算部10により算出し、リム4に装着されたタイヤTを回転ドラム2の外周面2bに押圧した荷重Frとこの荷重FrによるタイヤTのタイヤ半径方向の変位rとにより、タイヤTのタイヤ半径方向のバネ定数kを算出し、バネ定数kと振れDのデータとに基づいて算出した振れDに起因するタイヤ半径方向のタイヤ全周に渡る反力F2を、ユニフォミティ試験によって取得したタイヤTが1回転する間にタイヤ半径方向に生じる反力Fの測定結果F1から差し引いて補正した反力Fxの変動の大きさを算出する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心にして回転するリムに装着されて規定の空気圧に設定された測定対象のタイヤが、ドラム軸を中心にして回転する回転ドラムの外周面に対して規定の荷重で押圧された状態で、前記中心軸と前記ドラム軸とが一定の間隔に維持されて、前記タイヤが1回転する間のタイヤ半径方向に生じる反力Fの変動の大きさを算出するタイヤのユニフォミティ測定方法において、
前記タイヤの一対のビードが嵌合する前記リムの一対のリム部のそれぞれのビード嵌合底面の前記中心軸を中心にした半径方向の振れのデータを周方向全周に渡って測定し、それぞれの前記振れのデータを用いて所定の演算処理をすることにより前記リムの半径方向の振れのデータを周方向全周に渡って算出して記憶しておき、
前記リムに装着されて前記規定の空気圧に設定された前記タイヤが前記外周面に押圧された際の荷重Frとこの荷重Frによる前記タイヤのタイヤ半径方向の変位rとに基づいて、前記タイヤのタイヤ半径方向のバネ定数を算出し、
算出した前記バネ定数と前記リムの前記振れのデータとに基づいて、前記リムの前記振れに起因するタイヤ半径方向の反力F2をタイヤ周方向全周に渡って算出し、
前記タイヤを前記リムに装着して測定した前記反力Fの測定結果F1から前記反力F2を差し引く演算処理をタイヤ周方向全周に渡って行うことにより、前記タイヤが1回転する間の前記反力Fの変動の大きさを補正して算出するタイヤのユニフォミティ測定方法。
【請求項2】
前記中心軸に対して前記リムを付け替える度に、または、それぞれの前記タイヤを前記リムに装着して前記反力Fを測定する度に、それぞれの前記ビード嵌合底面の半径方向の前記振れのデータを周方向全周に渡って測定して前記リムの半径方向の前記振れのデータを周方向全周に渡って算出する請求項1に記載のタイヤのユニフォミティ測定方法。
【請求項3】
前記所定の演算処理により、それぞれの前記ビード嵌合底面の前記振れのデータを単純平均することで前記リムの前記振れのデータを算出する請求項1または2に記載のタイヤのユニフォミティ測定方法。
【請求項4】
前記所定の演算処理により、それぞれの前記ビード嵌合底面の前記振れのデータの間の値の範囲内で、前記リムの前記振れのデータを算出する請求項1または2に記載のタイヤのユニフォミティ測定方法。
【請求項5】
中心軸を中心にして回転するリムと、ドラム軸を中心にして回転する回転ドラムと、前記中心軸と前記ドラム軸のいずれか一方を回転駆動する駆動部と、前記中心軸と前記ドラム軸とを一定の間隔に維持する荷重付与部と、力を測定する測定部と、前記測定部による測定データが入力される演算部とを有し、
前記荷重付与部により前記中心軸と前記ドラム軸とが一定の間隔に維持されて、前記リムに装着されて規定の空気圧に設定された測定対象のタイヤが前記ドラム軸を中心にして回転する回転ドラムの外周面に対して規定の荷重で押圧された状態で、タイヤ半径方向に生じる反力Fが前記測定部により測定されて、前記タイヤが1回転する間の前記反力Fの変動の大きさが前記演算部により算出されるタイヤのユニフォミティ測定装置において、
前記タイヤの一対のビードが嵌合する前記リムの一対のリム部のそれぞれのビード嵌合底面の前記中心軸を中心にした半径方向の振れのデータを周方向全周に渡って測定するリム振れ測定部を有し、
前記リム振れ測定部により測定されたそれぞれの前記振れのデータを用いて前記演算部により所定の演算処理をすることにより前記リムの半径方向の振れのデータが周方向全周に渡って算出されて記憶される構成にして、
前記リムに装着されて前記規定の空気圧に設定された前記タイヤが前記外周面に押圧された際の荷重Frとこの荷重Frによる前記タイヤのタイヤ半径方向の変位rとに基づいて、前記演算部により前記タイヤのタイヤ半径方向のバネ定数が算出され、前記バネ定数と前記リムの前記振れのデータとに基づいて前記リムの前記振れに起因するタイヤ半径方向の反力F2がタイヤ周方向全周に渡って算出され、
前記タイヤを前記リムに装着して測定された前記反力Fの測定結果F1から前記反力F2を差し引く演算処理がタイヤ周方向全周に渡って行われることにより、前記タイヤが1回転する間の前記反力Fの変動の大きさが補正して算出される構成にしたタイヤのユニフォミティ測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載のタイヤのユニフォミティ測定装置の管理方法であって、
前記リム振れ測定部により測定されたそれぞれの前記ビード嵌合底面の前記振れのデータと、予め設定されているそれぞれの前記ビード嵌合底面の前記振れの許容範囲とを前記演算部により比較して、それぞれの前記ビード嵌合底面のうち少なくとも一方の前記振れのデータが前記許容範囲を超えている場合は警告を発するタイヤのユニフォミティ測定装置の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのユニフォミティ測定方法および測定装置並びにこの測定装置の管理方法に関し、さらに詳しくは、タイヤのユニフォミティを簡便でありながら精度よく把握できるタイヤのユニフォミティ測定方法および測定装置並びにこの測定装置の測定精度を維持するための管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用タイヤのユニフォミティ試験方法がJIS D4233に規定されている。この試験方法では回転ドラムの外周面にタイヤのトレッドを押圧した状態にして、荷重を受けているタイヤが1回転する間に発生するタイヤ半径方向の反力の変動の最大値(RFV)を把握することができる。このRFVはタイヤ品質を示す指標の1つになっている。
【0003】
この試験方法では、タイヤが装着されるリムなどの回転部の偏心やゆがみに起因して、ユニフォミティの測定精度が低下するので、これらの影響を除去する方法が種々提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1で提案されている方法では、回転部の偏心やゆがみの影響を除去するために用いる補正データを取得する。この補正データを取得するためには、タイヤの回転部に対する回転方向の取付角度を変えながら複数回の測定をする必要がある。高精度の補正データを取得するには、上記の取付角度をより細分化して多数回の測定が必要になるので作業工程が一段と煩雑になる。それ故、タイヤのユニフォミティを簡便でありながら精度よく把握するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-234980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、タイヤのユニフォミティを簡便でありながら精度よく把握できるタイヤのユニフォミティ測定方法および測定装置並びにこの測定装置の測定精度を維持するための管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため本発明のタイヤのユニフォミティ測定方法は、中心軸を中心にして回転するリムに装着されて規定の空気圧に設定された測定対象のタイヤが、ドラム軸を中心にして回転する回転ドラムの外周面に対して規定の荷重で押圧された状態で、前記中心軸と前記ドラム軸とが一定の間隔に維持されて、前記タイヤが1回転する間のタイヤ半径方向に生じる反力Fの変動の大きさを算出するタイヤのユニフォミティ測定方法において、前記タイヤの一対のビードが嵌合する前記リムの一対のリム部のそれぞれのビード嵌合底面の前記中心軸を中心にした半径方向の振れのデータを周方向全周に渡って測定し、それぞれの前記振れのデータを用いて所定の演算処理をすることにより前記リムの半径方向の振れのデータを周方向全周に渡って算出して記憶しておき、前記リムに装着されて前記規定の空気圧に設定された前記タイヤが前記外周面に押圧された際の荷重Frとこの荷重Frによる前記タイヤのタイヤ半径方向の変位rとに基づいて、前記タイヤのタイヤ半径方向のバネ定数を算出し、算出した前記バネ定数と前記リムの前記振れのデータとに基づいて、前記リムの前記振れに起因するタイヤ半径方向の反力F2をタイヤ周方向全周に渡って算出し、前記タイヤを前記リムに装着して測定した前記反力Fの測定結果F1から前記反力F2を差し引く演算処理をタイヤ周方向全周に渡って行うことにより、前記タイヤが1回転する間の前記反力Fの変動の大きさを補正して算出することを特徴とする。
【0007】
本発明のタイヤのユニフォミティ測定装置は、中心軸を中心にして回転するリムと、ドラム軸を中心にして回転する回転ドラムと、前記中心軸と前記ドラム軸のいずれか一方を回転駆動する駆動部と、前記中心軸と前記ドラム軸とを一定の間隔に維持する荷重付与部と、力を測定する測定部と、前記測定部による測定データが入力される演算部とを有し、前記荷重付与部により前記中心軸と前記ドラム軸とが一定の間隔に維持されて、前記リムに装着されて規定の空気圧に設定された測定対象のタイヤが前記ドラム軸を中心にして回転する回転ドラムの外周面に対して規定の荷重で押圧された状態で、タイヤ半径方向に生じる反力Fが前記測定部により測定されて、前記タイヤが1回転する間の前記反力Fの変動の大きさが前記演算部により算出されるタイヤのユニフォミティ測定装置において、前記タイヤの一対のビードが嵌合する前記リムの一対のリム部のそれぞれのビード嵌合底面の前記中心軸を中心にした半径方向の振れのデータを周方向全周に渡って測定するリム振れ測定部を有し、前記リム振れ測定部により測定されたそれぞれの前記振れのデータを用いて前記演算部により所定の演算処理をすることにより前記リムの半径方向の振れのデータが周方向全周に渡って算出されて記憶される構成にして、前記リムに装着されて前記規定の空気圧に設定された前記タイヤが前記外周面に押圧された際の荷重Frとこの荷重Frによる前記タイヤのタイヤ半径方向の変位rとに基づいて、前記演算部により前記タイヤのタイヤ半径方向のバネ定数が算出され、前記バネ定数と前記リムの前記振れのデータとに基づいて前記リムの前記振れに起因するタイヤ半径方向の反力F2がタイヤ周方向全周に渡って算出され、前記タイヤを前記リムに装着して測定された前記反力Fの測定結果F1から前記反力F2を差し引く演算処理がタイヤ周方向全周に渡って行われることにより、前記タイヤが1回転する間の前記反力Fの変動の大きさが補正して算出される構成にしたことを特徴とする。
【0008】
本発明のタイヤのユニフォミティ測定装置の管理方法は、上記のタイヤのユニフォミティ測定装置の管理方法であって、前記リム振れ測定部により測定されたそれぞれの前記ビード嵌合底面の前記振れのデータと、予め設定されているそれぞれの前記ビード嵌合底面の前記振れの許容範囲とを前記演算部により比較して、それぞれの前記ビード嵌合底面のうち少なくとも一方の前記振れのデータが前記許容範囲を超えている場合は警告を発することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタイヤのユニフォミティ測定方法および測定装置によれば、前記タイヤを前記リムに装着して測定された前記反力Fの測定結果F1から前記反力F2を差し引く演算処理をすることで、測定結果F1から前記リムの前記振れに起因する影響を排除できる。そして、前記反力F2は、前記リムの一対のリム部のそれぞれのビード嵌合底面の周方向全周に渡る前記中心軸を中心にした半径方向の振れのデータを用いて所定の演算処理をして算出した前記リムの半径方向の振れのデータと、前記反力を測定する装置を用いて取得できる前記バネ定数とを用いることで算出できる。そのため、簡便でありながら精度よくタイヤのユニフォミティを把握することが可能になる。
【0010】
本発明のタイヤのユニフォミティ測定装置の管理方法によれば、前記警告が発せられることで、それぞれの前記ビード嵌合底面のうち少なくとも一方の半径方向の振れが許容範囲を超えていることが判明する。この警告を契機にしてリムを点検し、異常がある場合は迅速に適切な対処を行うことができるので、上記の測定装置の測定精度を維持するには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】タイヤのユニフォミティ測定装置の実施形態を、タイヤを横断面にして側面視で例示する説明図である。
図2図1の測定装置を平面視で例示する説明図である。
図3図1の一対のリム部の動きを例示する説明図である。
図4図1の一対のリム部のそれぞれのビード嵌合底面の振れのデータを測定する工程を例示する説明図である。
図5図4の工程を平面視で例示する説明図である。
図6図4の工程により測定されたそれぞれのビード嵌合底面の振れのデータおよび算出されたリムの振れのデータを模式的に例示するグラフ図である。
図7】リムにタイヤを装着する工程を、タイヤを横断面にして例示する説明図である。
図8】リムに装着されたタイヤのタイヤ半径方向に生じる反力Fを測定する工程を、タイヤを横断面にして側面視で例示する説明図である。
図9図8の工程を平面視で例示する説明図である。
図10図8の工程により測定された反力Fの測定結果F1、測定結果F1から反力F2を差し引いて補正された反力Fxおよびその変動の大きさを例示するグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のタイヤのユニフォミティ測定方法および測定装置並びにこの測定装置の管理方法を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1図2に例示するタイヤのユニフォミティ測定装置1(以下、測定装置1という)の実施形態は、加硫されたタイヤTのユニフォミティとして、RFV(Radial Force Variation)を把握するために使用される。この測定装置1は、回転ドラム2と、リム4と、駆動部3と、荷重付与部8と、力を測定する測定部9と、測定部9による測定データが入力される演算部10と、リム振れ測定部11と、警告手段12とを有している。警告手段12は任意で備えることができる。
【0014】
回転ドラム2は、ドラム軸2aを中心にして回転する円筒体(円柱体)である。回転ドラム2の外周面2bにタイヤTのトレッドTrが押圧される。ドラム軸2aが駆動部3により回転駆動される。駆動部3にはモータ等が使用される。
【0015】
リム4にはタイヤTが装着され、中心軸7を中心にして回転する。図3に例示するように、このリム4は対向配置された一対のリム部4a、4bが連結して構成されていて、互いのリム部4a、4bは連結部4cによって連結および連結解除可能になっている。この実施形態では、中心軸7を回転駆動するリム駆動部6が備わっている。リム駆動部6としてはモータ等が使用される。
【0016】
詳述すると、それぞれのリム部4a、4bに接続された中心軸7は同心上に配置されていて、一方のリム部4aが他方のリム部4bに対して近接および離反移動する。他方のリム部4bに接続されている中心軸7は、リム駆動部6により回転駆動される。また、他方のリム部4bには連結部4cが固定されている。近接したリム部4a、4bどうしが連結部4cによって連結されて一体化することで1つのリム4になる。即ち、連結部4cが一方のリム部4aに形成されている連結嵌合部に嵌合することでリム部4a、4bが一体化する。少なくともいずれか一方のリム部4a、4bが中心軸7の軸方向に移動して互いが近接および離可能になっていて、互いが一体化したリム4が形成できる構造であればよい。
【0017】
それぞれのリム部4a、4bはタイヤTの一対のビードTb、Tbに対応している。それぞれのリム部4a、4bは、円環状のビード嵌合底面5a、5bを有している。一方のビード嵌合底面5aにはタイヤTの一方のビードTbの底面(最内周面)が当接して嵌合し、他方のビード嵌合底面5bにはタイヤTの他方のビードTbの底面(最内周面)が当接して嵌合する。
【0018】
この実施形態では、駆動部3がドラム軸2aを回転駆動する仕様であるが、駆動部3が中心軸7を回転駆動する仕様にすることもできる。即ち、ドラム軸2aと中心軸7のいずれか一方が駆動部3により回転駆動される仕様であればよい。
【0019】
荷重付与部8は、中心軸7とドラム軸2aとを一定の間隔に維持すること可能にする。荷重付与部8は、ドラム軸2aを回転可能に支持するフレーム8aと、フレーム8aを移動させる移動機構8bとを有している。移動機構8bとしては、例えば油圧シリンダなどの公知の種々の機構を用いることができる。移動機構8bによって、フレーム8aに支持されているドラム軸2a(回転ドラム2)が中心軸7(リム4)に対して近接および離反移動して所定の位置で固定される。
【0020】
詳述すると、中心軸7とドラム軸2aとは平行に対置されていて、ドラム軸2aが互いの軸方向に直交する方向に移動して両者が近接および離反可能になっている。この実施形態では、フレーム8aがベースに載置されていて、そのベースには図1では破線で示すようにガイド溝が形成されている。このガイド溝は中心軸7およびドラム軸2aに直交する向きに延在していて、このガイド溝に沿ってフレーム8aが移動して中心軸7とドラム軸2aとが近接および離反する。これにより、中心軸7とドラム軸2aとの間隔が変動可能になっている。そして、後述する反力Fを測定する際には、中心軸7とドラム軸2aとを一定の間隔に維持する。
【0021】
荷重付与部8は、反力Fを測定する際に中心軸7とドラム軸2aとの互いの軸方向に直交する方向の間隔を一定に維持できる構造であればよい。したがって、平行に対置されている中心軸7とドラム軸2aとは、少なくとも一方が互いの軸方向に直交する方向に移動して両者が近接および離反可能であればよい。
【0022】
測定部9は力(後述する反力Fおよび荷重Fr)を検知して測定する。測定部9としてはロードセルなどを用いた公知の種々の測定機器を用いることができる。
【0023】
演算部10には、測定部9およびリム振れ測定部11による測定データが入力される。演算部10は入力されているデータ、記憶されているデータを用いて様々な演算処理を行う。演算部10としては公知のコンピュータなどが使用される。演算部10の演算処理により算出された結果は、モニタやプリンタなどの公知の表示手段によって出力表示される。
【0024】
リム振れ測定部11は、リム4の外周側の離れた位置に配置されている。リム振れ測定部11は、リム4が中心軸7を中心にして回転した際のそれぞれのビード嵌合底面5a、5bの中心軸7を中心にした半径方向の振れを測定する。リム振れ測定部11としては、レーザ光を利用したプロファイルセンサなど、非接触タイプの公知の変位センサを用いることができる。
【0025】
警告手段12は、演算部10による指示信号によって警告を発する。警告としては、警報や警告表示、警告振動などが例示される。したがって、警告手段12としては、警報器(スピーカ)、警告表示器(ディスプレイ)、警告振動器(バイブレータ)など公知の種々の機器を1種類または複数種類組合わせて用いることができる。
【0026】
次に、本発明によるユニフォミティの測定方法の手順の一例を説明する。
【0027】
図4図5に例示するように、リム振れ測定部11を用いてリム4の一対のリム部4a、4bのそれぞれのビード嵌合底面5a、5bの周方向全周に渡る中心軸7を中心にした半径方向の振れd1、d2のデータを測定する。そこで、まず、互いのリム部4a、4bを連結部4cにより連結して一体化させたリム4を形成する。
【0028】
次いで、リム駆動部6により中心軸7を回転駆動することにより、中心軸7を中心にしてリム4を回転させる。リム振れ測定部11は、リム振れ測定部11とそれぞれのビード嵌合底面5a、5bとの距離を検知する。リム4が1回転することで、それぞれのビード嵌合底面5a、5bの周方向全周に渡るリム振れ測定部11との距離が検知される。
【0029】
中心軸7とリム振れ測定部11との配置は既知であり、それぞれのリム部4a、4bの半径(規定値d)はこの測定装置1を用いて取得できる。この規定値dは、後述する反力Fを測定する際に、タイヤTのトレッドTrを回転ドラム2の外周面2bに接触させて荷重をゼロから規定の荷重まで押圧した時の周方向位置でのそれぞれのリム部4a、4b(ビード嵌合底面5a、5b)と中心軸7の軸心との距離である。したがって、規定値dを取得した後に、このリム振れ測定部11による検知データを用いることで、図6に例示するように、それぞれのビード嵌合底面5a、5bの周方向全周に渡る中心軸7を中心にした半径方向の振れd1、d2のデータが測定される。図6では、一方のビード嵌合底面5aの振れd1のデータは実線太線で示されていて、他方のビード嵌合底面5bの振れd2のデータは破線太線で示されている。
【0030】
図6の縦軸は、中心軸7からそれぞれのビード嵌合底面5a、5bまでの半径方向の距離と規定値dとの差異を示している。横軸は、それぞれのビード嵌合底面5a、5bの設定された起点を0°の位置にした周方向位置を示している。振れd1、d2のデータ値が縦軸に示す規定値dよりも小さい領域にある場合はリム部4a、4bの半径が規定値dよりも小さくなるように振れていて、規定値dよりも大きい領域にある場合はリム部4a、4bの半径が規定値dよりも大きくなるように振れていることになる。リム部4a、4bや中心軸7の歪みなどに起因して、図6に例示するように振れd1、d2のデータは規定値dに対してバラつきが生じ、それぞれの振れd1、d2のデータどうしは周方向位置でバラつき具合も異なる。即ち、実際のリム4では一対のリム部4a、4bのビード嵌合底面5a、5bの振れd1、d2が一致することは稀であり、少なからず差異がある。この振れd1、d2のデータは、上述した起点(それぞれのビード嵌合底面5a、5bの基準となる周方向位置)の情報とともに演算部10に記憶される。
【0031】
本発明では、それぞれのリム部4a、4bが一体化したリム4の振れDのデータを算出する。そこで、それぞれの振れd1、d2のデータを用いて演算部10によって所定の演算処理をすることにより、リム4の周方向全周に渡る半径方向の振れDのデータを算出する。所定の演算処理としては例えば、それぞれの振れd1、d2のデータを単純平均することで振れDのデータを算出する。図6には、それぞれの振れd1、d2のデータを単純平均することで算出された振れDのデータが実線細線で示されている。算出された振れDのデータは演算部10に記憶される。
【0032】
次いで、試験装置1を用いて、測定対象のタイヤTのタイヤ半径方向に生じる反力Fを測定する。この測定はJIS D4233に規定されている自動車用タイヤのユニフォミティ試験方法に準拠して行う。したがって、JIS D4233に規定されている試験条件に従ってタイヤTの空気圧、タイヤTに付与する荷重、タイヤTの回転速度を設定する。尚、反力Fを測定する際に、タイヤTのタイヤ半径方向のバネ定数kおよび規定値dも取得する。
【0033】
図7に例示するように、振れDのデータが把握される(把握されている)リム4に測定対象のタイヤTを装着する。そこで、連結解除されているリム部4a、4bの間にタイヤTを配置した後、離間移動させて待機位置にある一方のリム部4aを他方のリム部4bに近接させて、連結部4cによりリム部4a、4bどうしを連結して一体化したリム4を形成する。タイヤTが装着されたリム4は、振れd1、d2のデータを測定した時のリム4と同じ状態である。即ち、それぞれのリム部4a、4bは、振れd1、d2のデータを測定した時と同じ周方向位置で連結されていて、それぞれの振れd1、d2のデータは、図6に例示したとおりとなる。
【0034】
次いで、タイヤTをインフレートさせて規定の空気圧に設定し、荷重付与部8を用いて、タイヤTのトレッドTrを回転ドラム2の外周面2bに規定の荷重で押圧して、中心軸7とドラム軸2aとを一定の間隔に維持した状態にする。この時、タイヤTが外周面2bに押圧された際の荷重Frとこの荷重FrによるタイヤTのタイヤ半径方向の変位rを試験装置1によって取得する。例えば、規定の荷重を荷重Frとし、この荷重FrでタイヤTを押圧した時の変位rをドラム軸2aのタイヤ半径方向の移動量として取得する。その結果、バネ定数k=荷重Fr/変位rとして演算部10により算出される。このように、タイヤTを回転させていない状態で取得した荷重Frと変位rを用いてバネ定数kを算出すると、リム4の振れDの影響が排除されたバネ定数kが得られる。次いで、算出されたバネ定数kとリム4の振れDのデータとに基づいて演算部10は、リム4の振れDに起因するタイヤ半径方向の反力F2(=バネ定数k×振れD)をタイヤ周方向全周に渡って算出、記憶する。また、この時に規定値dを取得するため、このタイヤTのトレッドTrを回転ドラム2の外周面2bに接触させて荷重をゼロから規定の荷重まで押圧した時の周方向位置でのそれぞれのリム部4a、4b(ビード嵌合底面5a、5b)と中心軸7の軸心との距離を公知の距離センサなどにより取得する。
【0035】
次いで、トレッドTrを回転ドラム2の外周面2bに接触させて荷重をゼロから規定の荷重まで押圧した状態のタイヤTに対して、図8図9に例示するように、駆動部3によりドラム軸2aを回転駆動することでドラム軸2aを中心にして回転ドラム2を回転させる。これに伴い、タイヤTは外周面2b上を転動する。測定部9は、タイヤTが中心軸7を中心にして1回転する間、逐次、タイヤ半径方向に生じる反力Fを検知して1回転分の反力Fを測定し、その測定結果F1は演算部10に入力される。この測定結果F1も、振れd1、d2のデータと同様に、上述した起点(それぞれのビード嵌合底面5a、5bの基準となる周方向位置)の情報とともに演算部10に記憶される。
【0036】
バネ定数kは、リム4に装着されて規定の空気圧に設定されたタイヤTが外周面2bに押圧された際の荷重Frとこの荷重FrによるタイヤTの変位rとに基づいて算出することができるので、上述した方法とは異なる方法で算出することもできる。例えば、図8図9に例示するようにタイヤTを回転させて取得した反力F(測定結果F1)のデータを利用することもできる。この反力Fを測定する際には、中心軸7とドラム軸2aとを一定の間隔にしているので、この測定の際のタイヤTの変位rは既知となる。そして、この変位rを生じさせている荷重Frは測定結果F1と等しい荷重である。そこで例えば、タイヤTが1回転する間での測定結果F1の単純平均値、タイヤTが1回転する間での測定結果F1の最大値または最小値を荷重Frとして採用して、バネ定数k(=荷重Fr/変位r)を算出することもできる。
【0037】
ここで、リム4に装着されて規定の空気圧に設定されたタイヤTを回転ドラム2の外周面2bに規定の荷重で押圧して中心軸7とドラム軸2aとを一定の間隔に維持した状態でタイヤTが1回転する間のタイヤ半径方向に生じる実際の反力F(即ち測定結果F1)は、下記(1)式により算出される。
測定結果F1=(k+△k)(δt+△Rt+D)=kδt+k△Rt+kD+△kδt+△k(△Rt+D)・・・(1)
kはタイヤTの半径方向のバネ定数である。△kはバネ定数の変化量であり、タイヤTの不均一さや内圧変動に起因する。δtはタイヤTの半径方向のたわみである。△RtはタイヤTの半径方向の振れ(芯振れ)であり、タイヤTの不均一さに起因する。Dは既述したリム4の振れである。
【0038】
(1)式のkδtは定常項であり、△k(△Rt+D)は十分に小さいので無視することができる。それ故、RFVは下記(2)式により把握することができる。
RFV=k△Rt+kD+△kδt・・・(2)
(2)式のうち、k△Rt+△kδtはタイヤTに起因し、kDはリム4に起因する。即ち、測定結果F1により算出されるRFVには、リム4に起因するkDが含まれている。
【0039】
そこで、演算部10は、測定結果F1から反力F2(=kD)を差し引く演算処理をタイヤ周方向全周に渡って行って補正された反力Fx(=F1-F2)を算出する。そして、タイヤTが中心軸7を1回転する間の反力Fxの変動の大きさが算出される。
【0040】
図10には、測定結果F1(破線太線)、算出された反力F2(実線細線)、補正された反力Fx(実線太線)および反力Fxの変動の大きさが例示されている。図10の縦軸は、反力(F1、F2、Fx)の大きさを示している。横軸は、それぞれのビード嵌合底面5a、5bの上述した起点を0°の位置にした周方向位置を示している。反力Fxの変動の大きさは、反力Fxの最大値と最小値との差異でありRFVとなる。
【0041】
この実施形態によれば、測定結果F1から反力F2を差し引く演算処理をすることで、測定結果F1からリム4の振れDに起因する影響を排除できる。したがって、補正された反力Fxの変動の大きさは、タイヤT自体に起因する純粋なRFVに近似した値になる。反力F2は、リムの一対のリム部4a、4bのそれぞれのビード嵌合底面5a、5bの振れd1、d2のデータを用いて算出されたリム4の振れDのデータと、反力Fを測定する装置を用いて取得できるバネ定数kとを用いることで算出できる。測定工程としては、反力Fを測定する従来の工程の他に、振れd1、d2のデータを測定する簡便な工程が増えるだけであり、この増える工程に要する時間は僅かである。そのため、この実施形態によれば、簡便でありながら精度よくタイヤTのユニフォミティ(RFV)を把握することが可能になる。
【0042】
中心軸7に対してリム4を付け替える度に、または、それぞれのタイヤTの反力Fを測定する度に、それぞれのビード嵌合底面5a、5bの振れd1、d2のデータを測定してリム4の振れDのデータを算出する。より高精度でRFVを把握する必要がある場合は、それぞれのタイヤTの反力Fの変動の大きさを測定する度に、振れd1、d2のデータを測定してリム4の振れDのデータを算出するとよい。
【0043】
リム4の振れDのデータは、所定の演算処理により、上述したようにそれぞれの振れd1、d2のデータを単純平均して算出することに限定されない。振れDのデータは、それぞれの振れd1、d2のデータの間の値の範囲内になるように算出するのが妥当であるが、必ずしもそれぞれの振れd1、d2の単純平均になるとは限らない。振れDのデータは例えば、各周方向位置において、振れd1、d2のデータの内で規定値dとの差異がより大きい方のデータの影響をより強く受けることも、この差異がより小さい方のデータの影響をより強く受けることもある。そこで、例えば、各周方向位置において、振れd1、d2のデータのそれぞれに重み付けとなる係数a1、a2を乗じた数値の平均値を振れDのデータとして算出することもできる。
【0044】
例えば、各周方向位置において、振れD=(振れd1×a1+振れd2×a2)/2として算出する。ここで、係数a1、a2はそれぞれ0以上2以下にして、係数a1+係数a2=2とする。振れd1、d2のデータを単純平均する場合は、周方向全周に渡って係数a1、a2はそれぞれ1となる。振れDのデータに対するそれぞれの振れd1、d2のデータの影響程度を実験データ或いはシミュレーションデータに基づいて把握して、この把握結果に基づいて係数a1、a2を設定する。それぞれの振れd1、d2のデータの振れDのデータに対する影響程度は、タイヤTの仕様(特に扁平率やリム径)によって若干傾向が異なるので、タイヤTの扁平率とリム径の少なくとも一方の仕様毎に、振れDのデータに対するそれぞれの振れd1、d2のデータの影響程度を把握して、係数a1、a2を設定するとよい。
【0045】
振れDのデータは、振れd1、d2のデータの内で規定値dとの差異がより大きい方のデータの影響をより強く受けることが多いと経験的に考えられる。そこで、各周方向位置では、振れd1、d2のデータの内で規定値dとの差異がより大きい方のデータに対する上記の係数を1.2~1.5に設定して、振れDのデータを簡易的に算出することもできる。即ち、図6に例示した振れd1、d2のデータでは、各周方向位置において規定値dとそれぞれの振れd1、d2のデータとの差異を算出して、その差異が大きい方のデータに対して係数1.2~1.5の間の数値aを乗じ、その差異が小さい方のデータに対して係数として数値(2-a)を乗じる。その差異が同じ場合は、それぞれの振れd1、d2のデータに対して係数として数値1を乗じる。この演算処理を周方向全周に渡って行って振れDのデータを算出する。
【0046】
次に、本発明による測定装置1の管理方法の手順の一例を説明する。
【0047】
演算部10には、それぞれの振れd1、d2の許容範囲ARを記憶しておく。例えば、この許容範囲ARを規定値dと振れd1、d2との差異が0.05mm以下、より好ましくは0.03mm以下として設定する。
【0048】
そして、リム振れ測定部11によってそれぞれの振れd1、d2を測定した際に、測定した振れd1、d2のデータと、予め設定されている許容範囲ARとを演算部10により比較する。この比較の結果、振れd1、d2のうち少なくとも一方のデータが許容範囲ARを超えている場合は、演算部10は警告手段12に警告を発する指示信号を出して警告を発する。
【0049】
この警告が発せられることで、それぞれのビード嵌合底面5a、5bのうち少なくとも一方の振れd1、d2が許容範囲ARを超えていることが判明する。この警告を契機にして作業者はリム4を点検し、異常がある場合は迅速に適切な対処を行うことができるので、測定装置1によるRFVの測定精度を維持するには有利になる。
【符号の説明】
【0050】
1 測定装置
2 回転ドラム
2a ドラム軸
2b 外周面
3 駆動部
4 リム
4a、4b リム部
4c 連結部
5a、5b ビード嵌合底面
6 リム駆動部
7 中心軸
8 荷重付与部
8a フレーム
8b 移動機構
9 測定部
10 演算部
11 リム振れ測定部
12 警告手段
T タイヤ
Tr トレッド
Tb ビード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10