(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062131
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】医療デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20240430BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20240430BHJP
A61L 31/06 20060101ALI20240430BHJP
A61L 31/12 20060101ALI20240430BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20240430BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20240430BHJP
C09J 167/00 20060101ALI20240430BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
A61M25/09 516
A61L31/04 110
A61L31/06
A61L31/12
A61L31/14
C09J175/04
C09J167/00
C09J183/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169929
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花井 愛珠
(72)【発明者】
【氏名】牛田 圭亮
【テーマコード(参考)】
4C081
4C267
4J040
【Fターム(参考)】
4C081AC06
4C081AC16
4C081BB07
4C081CE11
4C081DA03
4C267AA28
4C267BB02
4C267BB20
4C267BB40
4C267CC08
4C267GG02
4C267GG03
4C267GG05
4C267GG08
4C267GG14
4C267HH03
4J040ED001
4J040EF001
4J040EK031
4J040NA02
(57)【要約】
【課題】基端固着部に、蝋付けでは得難い機能を付与することが可能な医療デバイスの提供を目的とする。
【解決手段】医療デバイスは、コアシャフト11と、コアシャフト11を覆うように巻回されたコイル体21と、コアシャフト11とコイル体21の基端部とが固着された基端固着部41と、を備えている医療デバイスであって、基端固着部41は、コアシャフト11とコイル体21とを接着する第1の接着剤411と、第1の接着剤411の外周の少なくとも一部を覆うように配置され、第1の接着剤411に対して少なくとも1つの物性値が異なる第2の接着剤412と、を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシャフトと、
前記コアシャフトを覆うように巻回されたコイル体と、
前記コアシャフトと前記コイル体の基端部とが固着された基端固着部と、を備えている医療デバイスであって、
前記基端固着部は、
前記コアシャフトと前記コイル体とを接着する第1の接着剤と、
前記第1の接着剤の外周の少なくとも一部を覆うように配置され、前記第1の接着剤に対して少なくとも1つの物性値が異なる第2の接着剤と、を有していることを特徴とする医療デバイス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの物性値は、機械的性質を示す物性値である請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つの物性値は、弾性率を含み、
前記第2の接着剤の弾性率の値は、前記第1の接着剤の弾性率の値よりも小さい請求項2に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記少なくとも1つの物性値は、破断歪みを含み、
前記第2の接着剤の破断歪みの値は、前記第1の接着剤の破断歪みの値よりも大きい請求項2または請求項3に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記少なくとも1つの物性値は、破断応力を含み、
前記第2の接着剤の破断応力の値は、前記第1の接着剤の破断応力の値よりも小さい請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記第2の接着剤は、前記第1の接着剤の先端部を覆う請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記第2の接着剤は、前記第1の接着剤の後端部を覆う請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記第1の接着剤は、エポキシ系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、アクリル系接着剤からなる群より選択される少なくとも一種を含む請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記第2の接着剤は、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤からなる群より選択される少なくとも一種を含む請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記第2の接着剤は、前記コイル体の外周の少なくとも一部を覆う請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記第2の接着剤は、前記コアシャフトの長軸方向において、前記コイル体の10%以上の長さを覆う請求項10に記載の医療デバイス。
【請求項12】
前記第2の接着剤は、前記医療デバイスの先端を覆う請求項11に記載の医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、血管内の病変部を治療するバルーンカテーテル等の医療器具を用いる際、医療器具を案内するためのガイドワイヤ等の医療デバイスが予め血管等に挿入される。
【0003】
上述の医療デバイスには、例えば、湾曲した血管内を円滑に進行できるような優れた柔軟性や、手元の回転操作を先端部に確実に伝達できるような高いトルク伝達性が求められる。このような柔軟性およびトルク伝達性を高めた医療デバイスとしては、例えば、コアシャフト先端部の周囲にコイル体を配置した医療デバイスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来の医療デバイスにおいては、通常、コアシャフトとコイル体の基端部とが蝋付けにより接合(固着)されている。本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、基端固着部に、蝋付けでは得難い機能を付与することが可能な医療デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のいくつかの態様は、
(1)コアシャフトと、
前記コアシャフトを覆うように巻回されたコイル体と、
前記コアシャフトと前記コイル体の基端部とが固着された基端固着部と、を備えている医療デバイスであって、
前記基端固着部は、
前記コアシャフトと前記コイル体とを接着する第1の接着剤と、
前記第1の接着剤の外周の少なくとも一部を覆うように配置され、前記第1の接着剤に対して少なくとも1つの物性値が異なる第2の接着剤と、を有していることを特徴とする医療デバイス、
(2)前記少なくとも1つの物性値は、機械的性質を示す物性値である前記(1)に記載の医療デバイス、
(3)前記少なくとも1つの物性値は、弾性率を含み、
前記第2の接着剤の弾性率の値は、前記第1の接着剤の弾性率の値よりも小さい前記(2)に記載の医療デバイス、
(4)前記少なくとも1つの物性値は、破断歪みを含み、
前記第2の接着剤の破断歪みの値は、前記第1の接着剤の破断歪みの値よりも大きい前記(2)または(3)に記載の医療デバイス、
(5)前記少なくとも1つの物性値は、破断応力を含み、
前記第2の接着剤の破断応力の値は、前記第1の接着剤の破断応力の値よりも小さい前記(2)から(4)のいずれか一項に記載の医療デバイス、
(6)前記第2の接着剤は、前記第1の接着剤の先端部を覆う前記(1)から(5)のいずれか一項に記載の医療デバイス、
(7)前記第2の接着剤は、前記第1の接着剤の後端部を覆う前記(1)から(6)のいずれか一項に記載の医療デバイス、
(8)前記第1の接着剤は、エポキシ系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、アクリル系接着剤からなる群より選択される少なくとも一種を含む前記(1)から(7)のいずれか一項に記載の医療デバイス、
(9)前記第2の接着剤は、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤からなる群より選択される少なくとも一種を含む前記(1)から(8)のいずれか一項に記載の医療デバイス、
(10)前記第2の接着剤は、前記コイル体の外周の少なくとも一部を覆う前記(1)から(9)のいずれか一項に記載の医療デバイス、
(11)前記第2の接着剤は、前記コアシャフトの長軸方向において、前記コイル体の10%以上の長さを覆う前記(10)に記載の医療デバイス、および
(12)前記第2の接着剤は、前記医療デバイスの先端を覆う前記(11)に記載の医療デバイス、である。
【0007】
なお、本明細書において、「引張強度」とはJIS K6849-1994「接着剤の引張り接着強さ試験方法」に規定の「引張り接着強さ」を意味する。「弾性率」は、例えば、押込試験で測定した弾性率を意味する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、例えば、基端固着部に、蝋付けでは得難い機能を付与することが可能な医療デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態の全体を示す概略的断面図である。
【
図2】
図1の一部を拡大して示す概略的断面図である。
【
図3A】基端固着部を拡大して示す概略的断面図であって、第1および第2の接着剤の配置一例である。
【
図3B】基端固着部を拡大して示す概略的断面図であって、第1および第2の接着剤の配置一例である。
【
図3C】基端固着部を拡大して示す概略的断面図であって、第1および第2の接着剤の配置一例である。
【
図3D】基端固着部を拡大して示す概略的断面図であって、第1および第2の接着剤の配置一例である。
【
図3E】全体を示す概略的断面図であって、第1および第2の接着剤の配置一例である。
【
図3F】全体を示す概略的断面図であって、第1および第2の接着剤の配置一例である。
【
図3G】基端固着部を拡大して示す概略的断面図であって、第1および第2の接着剤の配置一例である。
【
図4】一実施形態の歪みと応力との関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の医療デバイスは、コアシャフトと、上記コアシャフトを覆うように巻回されたコイル体と、上記コアシャフトと上記コイル体の基端部とが固着された基端固着部と、を備えている医療デバイスであって、上記基端固着部は、上記コアシャフトと上記コイル体とを接着する第1の接着剤と、上記第1の接着剤の外周の少なくとも一部を覆うように配置され、上記第1の接着剤に対して少なくとも1つの物性値が異なる第2の接着剤と、を有している。
【0011】
なお、本明細書において、「先端側」とは、医療デバイスの長軸方向に沿う方向であって、基端固着部に対して先端固着部が位置する方向を意味する。また、「基端側」とは、医療デバイスの長軸方向に沿う方向であって、先端側と反対の方向を意味する。また、「先端」とは、任意の部材または部位における先端側の端部、「基端」とは、任意の部材または部位における基端側の端部をそれぞれ示す。
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。なお、以下の実施形態では、医療デバイスとして、ガイドワイヤを例示して説明する。また、図面に示した各部の寸法は、実施内容の理解を容易にするために示した寸法であり、必ずしも実際の寸法に対応するものではない。各図において、図示左側がガイドワイヤの先端側(遠位)、右側がガイドワイヤの基端側(近位、手元側)をそれぞれ示している。
【0013】
図1,
図2は、一実施形態を示す概略図である。ガイドワイヤ1は、
図1に示すように、概略的に、コアシャフト11と、コイル体21と、先端固着部31と、基端固着部41とにより構成されている。
【0014】
コアシャフト11は、ガイドワイヤ1の中心軸を構成する長手形状の部材である。コアシャフト11は、具体的には、例えば、その先端部が先端方向に向かって段階的に縮径するように形成することができる。
【0015】
本実施形態のコアシャフト11は、先端から小径部11a、テーパ部11b、大径部11c、接続部11d、本体部11eの順で構成されている。小径部11aは、外径が一定の円柱形状の部位である。テーパ部11bは、小径部11aの基端から基端側に向かって延設され、先端から基端に向かって外径が漸次増加するテーパ状(円錐台形状)の部位である。大径部11cは、テーパ部11bの基端から基端側に向かって延設され、外径が一定の円柱形状の部位である。接続部11dは、大径部11cの基端から基端側に向かって延設され、先端から基端に向かって外径が漸次増加するテーパ状(円錐台形状)の部位である。本体部11eは、接続部11dの基端から基端側に向かって延設され、外径が一定の円柱形状の部位である。なお、上述した各部11a~11eの境界においては、互いに接する部どうしの外形が同一でありかつ連続するように構成されている。
【0016】
コアシャフト11を構成する材料としては、ガイドワイヤ1の柔軟性を高めると共に、抗血栓性および生体適合性を付与する観点から、例えば、SUS304などのステンレス鋼、Ni-Ti合金などの超弾性合金等を採用することができる。
【0017】
コイル体21は、コアシャフト11を覆うように巻回された部材である。コイル体21は、具体的には、例えば、コアシャフト11の外周の少なくとも一部を覆うように、長軸方向に沿って螺旋状に形成することができる。コイル体21としては、例えば、巻線を巻回してコイル状に形成したもの、円筒状の部材にスリット加工等を施してコイル状に形成したもの等と採用することができる。コイル体21に巻線を用いる場合、巻線としては、1本若しくは複数本の単線、または1本若しくは複数本の撚線を用いることができる。但し、単線とは1本の単一線を意味し、撚線とは複数本の単一線を予め互いに撚り合って形成した一束の線群を意味する。
【0018】
コイル体21を構成する材料としては、例えば、SUS316などのステンレス鋼;Ni-Ti合金などの超弾性合金;白金、タングステンなどの放射線不透過性の金属等を採用することができる。
【0019】
先端固着部31は、コアシャフト11の先端とコイル体21の先端とが接合するように、これらを固着する部位である。先端固着部31の形状としては、ガイドワイヤ1が血管内を進行する際に血管の内壁に損傷を与えないように、先端側が滑らかに湾曲した半球形状となるように成形してもよい。
【0020】
先端固着部31は、具体的には、例えば、ロウ材を用い、コアシャフト11の先端とコイル体21の先端とをロウ材を介して一体的に蝋付けすることで形成したり、元々コアシャフト11の先端部であった部位と、元々コイル体21の先端部であった部位とを溶融成形することで形成することができる。蝋付けする場合のロウ材としては、例えば、Sn-Pb合金、Pb-Ag合金、Sn-Ag合金、Au-Sn合金などの金属ロウ等が挙げられる。
【0021】
基端固着部41は、コアシャフト11とコイル体21の基端部とが固着している部位である。基端固着部41は、例えば、コアシャフト11のテーパ部11b、大径部11c、接続部11d、本体部11e等の外周面11s上に設けることができる。基端固着部41の形状は、例えば、先端から基端に向かって厚みが漸次減少するような形状(例えば、テーパ形状など)としてもよい。基端固着部41がテーパ形状である場合、例えば、後述する第1の接着剤411を用いることで、ロウ材に比べてより迅速にコイル体21をコアシャフト11に固着することができ、位置決め精度がより高い基端固着部41を得ることができる。本実施形態では、基端側に向かって厚みが小さくなるようにテーパ状に形成された基端固着部41が、本体部11eの外周面11s上に設けられている。
【0022】
基端固着部41は、
図2に示すように、第1の接着剤411と、第2の接着剤412とを有している。
【0023】
第1の接着剤411は、コアシャフト11とコイル体21とを接着する接着剤である。第1の接着剤411は、コイル体21の基端部およびコアシャフト11の外周面11sの両者に直接接触するように形成されている。
【0024】
第2の接着剤412は、第1の接着剤411の外周の少なくとも一部を覆うように配置された接着剤である。これらの具体例としては、
図3A,
図3Cに示すような、第2の接着剤412B1,412B3が、第1の接着剤411A1,411A3の先端部を覆っている構成、
図3A,
図3Bに示すような、第2の接着剤412B1,412B2が、第1の接着剤411A1,411A2の後端部を覆っている構成等が挙げられる。本実施形態では、第2の接着剤412B1が第1の接着剤411A1表面の全体を覆うように設けられている(
図3A参照)。
【0025】
また、第2の接着剤412は、コイル体21の外周の少なくとも一部を覆っていてもよい。かかる場合、第2の接着剤412は、コアシャフト11の長軸方向において、コイル体21の10%以上の長さを覆っていてもよい。さらに、第2の接着剤412は、ガイドワイヤ1の先端を覆っていてもよい。これらの具体例としては、例えば、
図3Eに示すような、第2の接着剤412B5が、コイル体21の外周全体を覆っている構成、
図3Fに示すような、第2の接着剤412B6が、コイル体21および先端固着部31の外周全体を覆っている構成等が挙げられる。
【0026】
なお、第2の接着剤412を設ける部位は、コアシャフト11および/またはコイル体21に直接接触する部位を含んでいてもよい。すなわち、第2の接着剤412B2が第1の接着剤411A2の表面とコアシャフト11の表面11sとに亘って設けられていてもよく(
図3B参照)、第2の接着剤412B3が第1の接着剤411A3の表面とコイル体21の表面とに亘って設けられていてもよく(
図3C参照)、第2の接着剤412B4が第1の接着剤411A4の表面とコアシャフト11の表面11sとコイル体21の表面とに亘って設けられていてもよい(
図3D参照)。なお、
図2,
図3A~
図3D中、「A」は長軸方向における第1の接着剤411の形成領域を、「B」は長軸方向における第2の接着剤412の形成領域を、それぞれ示している。
【0027】
第2の接着剤412は、第1の接着剤411に対して少なくとも1つの物性値が異なっている。なお、第1の接着剤411は、第2の接着剤412に比べ、例えば、コアシャフト11とコイル体21との固着の作業性(作業時間(硬化時間など)や手間(接着剤の調製など)等の作業し易さ)が良好な接着剤を採用することができる。
【0028】
上述した第1の接着剤411と第2の接着剤412とで異なる少なくとも1つの物性値は、機械的性質を示す物性値であってもよい。
【0029】
上記機械的性質を示す物性値としては、例えば、接着剤が硬化した後の部材どうしの引張強度、硬化した接着剤の弾性率、硬化した接着剤の破断歪み、硬化した接着剤の破断応力等が挙げられる。
【0030】
本実施形態では、第1の接着剤411と第2の接着剤412とで異なる物性値として、硬化した接着剤の引張強度、弾性率、破断歪み、および破断応力を含んでいる。
【0031】
具体的には、本実施形態では、第1の接着剤411の引張強度は、第2の接着剤412の引張強度よりも大きく、第2の接着剤412の弾性率の値は、第1の接着剤411の弾性率の値よりも小さい。また、本実施形態では、
図4に示すように、第2の接着剤412の破断歪みの値は、第1の接着剤411の破断歪みの値よりも大きく、第2の接着剤412の破断応力の値は、第1の接着剤411の破断応力の値よりも小さい。
【0032】
第1の接着剤411としては、例えば、エポキシ系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、アクリル系接着剤等が挙げられる。第1の接着剤411は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、第1の接着剤411には、第2の接着剤412に比べて硬化時間がより短い(硬化速度がより速い)接着剤を用いることが好ましい。
【0033】
第2の接着剤412としては、例えば、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤などの熱可塑性エラストマー等が挙げられる。第2の接着剤412は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
本実施形態では、第1の接着剤411がエポキシ系接着剤、第2の接着剤412がウレタン系接着剤であり、例えば、
図3Dに示すように、第2の接着剤412B4が、第1の接着剤411A4とコイル体21の基端部とコアシャフト11の本体部11eにおける表面11sの一部とを覆うように設けられている。
【0035】
次に、基端固着部41の形成方法について説明する。まず、所定の形状に形成されたコアシャフト11およびコイル体21を準備する。次いで、コイル体21をコアシャフト11の先端部に被冠した後、コアシャフト11の先端と、コイル体21の先端とが接合するように先端固着部31を形成する。先端固着部31は、その先端部が所定の形状(先端部が先端方向に向かって凸状に湾曲した略半球形状など)になるように、例えば、Sn-Pb合金、Pb-Ag合金、Sn-Ag合金、Au-Sn合金などのロウ材を用いて蝋付けすることにより形成することができる。
【0036】
次に、コアシャフト11と、コイル体21の基端とが接合するように基端固着部41を形成する。基端固着部41は、例えば、治具を用いてコイル体21の基端をコアシャフト外周面11s上の所定部位に位置決めした後、第1の接着剤411を用いてコイル体21の基端部をコアシャフト11の外周11sに接着する。次いで、第1の接着剤411が硬化した後、第1の接着剤411の表面を覆うように第2の接着剤412を塗布して硬化することにより基端固着部41を形成する。
【0037】
本実施形態のガイドワイヤ1の基端固着部41は、上述したように、第1の接着剤411の引張強度が第2の接着剤412の引張強度よりも大きい。このため、第1の接着剤411の大きな引張強度(接合性)によりコアシャフト11とコイル体21との固着強度を高めることができる。
【0038】
次に、ガイドワイヤ1の使用態様について説明する。まず、ガイドワイヤ1をその先端から血管内に挿入し、体外に露出しているガイドワイヤ1の基端部を操作して先端部を血管内の処置する部位まで押し進める。
【0039】
次に、ガイドワイヤ1の先端部が処置する部位まで到達した後、ガイドワイヤ1の基端をカテーテルなどの医療器具(不図示)の先端からその内腔に挿入し、上記医療器具をガイドワイヤ1に沿って血管内に押し進める。次いで、医療器具が血管内の処置する部位に到達した後、上記医療器具を用いて各種の処置を行う。次いで、処置が完了した後、医療器具およびガイドワイヤ1を血管から引き抜くことで一連の手技が完了する。
【0040】
以上のように、ガイドワイヤ1は、上記構成であることで、例えば、基端固着部に、蝋付けでは得難い機能を付与することができる。具体的には、例えば、コアシャフト11とコイル体21との固着の作業性と共に固着の信頼性を高めるなど、基端固着部41に複合的な機能を付与することができる。また、基端固着部41を第1の接着剤411と第2の接着剤412とにより形成することで、固着の際に主に接着剤の粘度調整にのみ注意すればよく、加熱温度、フラックスの塗布量、ロウ材の染み込み長さなどの多数の注意が必要な蝋付けによる固着に比べて、作業者の技術力により生じ易いガイドワイヤの作製バラツキを抑制することができる。
【0041】
また、上述したガイドワイヤ1の操作中は、基端固着部41に種々の力が加わる。このような力としては、例えば、ガイドワイヤ1が意図的若しくは不作為に屈曲したときに生じる、基端固着部41の歪みに伴う内部応力、外部から加えられる基端固着部41への押圧力等が挙げられる。このような力が基端固着部41に生じた場合、ガイドワイヤ1では、たとえ第1の接着剤411が破損したとしても、第1の接着剤412の破断歪みよりも大きな破断歪みを有する第2の接着剤412が第1の接着剤411を被覆していることにより、破損した第1の接着剤411の破片が外部に飛散(脱離)するのを防ぐことができる。
【0042】
なお、本開示は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。上述した実施形態の構成のうちの一部を削除したり、他の構成に置換してもよく、上述した実施形態の構成に他の構成を追加等してもよい。
【0043】
例えば、上述した実施形態では、医療デバイスとして、ガイドワイヤを例示して説明した。しかしながら、医療デバイスは、ガイドワイヤ以外の医療デバイスであってもよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、小径部11a、テーパ部11b、大径部11c、接続部11d、および本体部11eを有するコアシャフト11を例示して説明した。しかしながら、例えば、先端から基端に亘って一定外径を有するコアシャフトや、接続部11dを有さずに大径部と本体部とが一体となったコアシャフトなど、種々の形態のコアシャフトを採用することができる。
【0045】
また、上述した実施形態では、径方向内外において1重に巻回されたコイル体21を例示して説明した。しかしながら、例えば、径方向内外において2重以上の多重に巻回されたコイル体であってもよい。また、コイル体は、一条であってもよく、多条であってもよい。また、コイル体を構成する巻線は、単線であってもよく、撚線であってもよい。
【0046】
また、上述した実施形態では、第1の接着剤411と第2の接着剤412とが接している基端固着部41を例示して説明した。しかしながら、第1の接着剤と第2の接着剤との間に他の部材が介装されていたり、第1の接着剤と第2の接着剤との間に空間を有していてもよい。
【0047】
また、上述した実施形態では、第1の接着剤411および第2の接着剤412それぞれが、単一の領域で構成された基端固着部41を例示して説明した。しかしながら、例えば、第1の接着剤および第2の接着剤それぞれが、別個の複数の領域で構成されていてもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では、第2の接着剤412B1が第1の接着剤411A1表面の全体を覆うように設けられているガイドワイヤ1を例示して説明した。しかしながら、
図3Gに示すように、第2の接着剤412B7は、第1の接着剤411A7の表面の一部を覆うように設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 ガイドワイヤ
11 コアシャフト
21 コイル体
31 先端固着部
41 基端固着部
411,411A1~411A7 第1の接着剤
412,412B1~412B7 第2の接着剤