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  • 特開-パルプモールド成型品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062134
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】パルプモールド成型品
(51)【国際特許分類】
   D21J 3/00 20060101AFI20240430BHJP
   D21H 11/18 20060101ALI20240430BHJP
   D21H 15/02 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
D21J3/00
D21H11/18
D21H15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169935
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三木 祐二
(72)【発明者】
【氏名】滝田 亮一
(72)【発明者】
【氏名】浦川 直也
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AF09
4L055AF46
4L055BF06
4L055EA04
4L055EA08
4L055EA16
4L055FA13
4L055FA21
4L055FA22
(57)【要約】
【課題】本発明の解決しようとする課題は、必要十分な強度を持ち、しかも生産性の改善されたパルプモールド成型品を提案するものである。
【解決手段】繊維径が2nm以上1000nm以下の微細セルロース繊維を30質量%以下含有し、密度が0.2g/cm以上であることを特徴とするパルプモールド成型品である。また、厚さが0.3mm以上2.0mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のパルプモールド成型品である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維径が2nm以上1000nm以下の微細セルロース繊維を30質量%以下含有し、密度が0.2g/cm以上であることを特徴とするパルプモールド成型品。
【請求項2】
厚さが0.3mm以上2.0mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のパルプモールド成型品。
【請求項3】
繊維径が10μm以上60μm以下のセルロース繊維を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のパルプモールド成型品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプスラリーを成型、乾燥してなるパルプモールド成型品に関し、特に微細繊維を添加することにより、強度と生産性を高めたパルプモールド成型品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まりの中、循環型資源を活用した包装資材が注目されている。その中で、プラスチック製の包装資材を紙製の包装資材へと置き換える動きが活発である。しかしながら、板紙を折り曲げたり貼り合わせたりして成形する包装資材では、形状の自由度に限界がある。
【0003】
そこで、同じ紙材料を用いた包装資材であっても形状の自由度が高いものとして、パルプモールド成型品が注目されている。しかし従来のパルプモールド成型品は、成型後に長時間の乾燥工程が必要であるため生産性が低く、コストが高いという問題があった。
【0004】
特許文献1に記載されたパルプモールドは、1質量%以下のセルロースナノファイバーを配合することにより、パルプモールド成型品の強度向上(引張強さ、破裂強さ)を図ったものであるが、厚さが厚く、また密度も小さいため、生産性の向上は図れないものである。
【0005】
また特許文献2に記載されたパルプモールドは、50質量%以下のセルロースナノファイバーを配合することにより、パルプモールド成型品の強度向上(引張強さ、破裂強さ)を図ったものであるが、同様に厚さが厚く、また密度も小さいため、同様に生産性の向上は図れないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6404411号公報
【特許文献2】特開2018-59254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は、必要十分な強度を持ち、しかも生産性の改善されたパルプモールド成型品を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、繊維径が2nm以上1000nm以下の微細セルロース繊維を30質量%以下含有し、密度が0.2g/cm以上であることを特徴とするパルプモールド成型品である。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、厚さが0.3mm以上2.0mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のパルプモールド成型品である。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、繊維径が10μm以上60μm以下のセルロース繊維を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のパルプモールド成型品である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るパルプモールド成型品は、パルプモールドに繊維径が2nm以上1000
nm以下の微細セルロース繊維を30質量%以下添加し、密度が0.2g/cm以上となるように高密度に成型したので、成型品の強度が向上した。
【0012】
厚さが0.3mm以上2.0mm以下となるようにした場合には、必要十分な強度と高い生産性が両立して得られる。
【0013】
また、繊維径が10μm以上60μm以下のセルロース繊維を含む場合には、成型品のより一層の強度向上の効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、パルプモールド成型品の断面模式図である。
図2図2は、パルプモールド成型品の製造工程における吸着成型工程を示した断面説明図である。
図3図3は、パルプモールド成型品の製造工程における熱圧乾燥工程を示した断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面を参照しながら本発明に係るパルプモールド成型品について説明する。図1は、パルプモールド成型品1の断面模式図である。パルプモールド成型品1は、このように、立体的な形状が自由に設計できることが最大の特徴となっている。
【0016】
図2は、パルプモールド成型品1の製造工程における吸着成型工程2を示した断面説明図である。パルプスラリー6中に吸着孔を設けた吸着金型3を浸漬させ、吸引5によってパルプスラリー6を金型表面に吸着させて成型する。この時、金網4を使用する場合もある。
【0017】
図3は、パルプモールド成型品の製造工程における熱圧乾燥工程を示した断面説明図である。加熱した上型8と下型9の間に未乾燥の成型品を載置し、熱と圧力によって乾燥させる方法である。乾燥工程としては、金型で圧締せず、フリーな状態でコンベアー上で乾燥させる方法もあるが、熱圧乾燥方法によれば、比較的寸法精度の高い製品が得られる。
【0018】
本発明に係るパルプモールド成型品1は、パルプおよび微細セルロース繊維を含有する原料スラリーを用いて成型したパルプモールド成型品である。微細セルロース繊維は、セルロース原料を解繊処理することによって得られる繊維である。セルロース原料は、解繊処理の前に必要に応じて化学変性処理が施されてもよい。
【0019】
化学変性処理としては、酸化処理(カルボキシル化処理)、エーテル化処理、エステル化処理、カチオン化処理等の、化学変性処理から選択される。
【0020】
解繊処理に用いる装置としては、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの処理装置が挙げられるが、高圧または超高圧ホモジナイザーが好ましく、湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーが最も好ましい。
【0021】
微細セルロース繊維の平均繊維径は、2nm以上1000nm以下であり、好ましくは10nm以上500nm以下である。微細セルロース繊維の平均繊維径が小さい場合、強度向上の効果は得られるが、スラリーの保水力が上昇し生産性が低下する。また微細セルロース繊維の平均繊維径が大きい場合、強度向上の効果が得られない。平均繊維径は、電
界放出形走査電子顕微鏡を用いて、各繊維を観察した結果から得られる。
【0022】
パルプモールド成型品1に含有されるパルプの繊維径は、例えば、10μm以上60μm以下である。すなわち、パルプモールド成型品1は、繊維径が10μm以上60μm以下のセルロース繊維を含んでもよい。パルプモールド成型品1が繊維径が10μm以上60μm以下のパルプを含むことにより、繊維径の大きなパルプの隙間に微細セルロース繊維が配置され、隙間が減少することによってパルプモールド成型品1の強度の向上を図ることができる。
【0023】
パルプモールド成型品は、高含水率状態の抄造体を高温高圧の金型内で乾燥することで得られる。密度としては、0.2g/cm以上であることが必要である。密度が低いパルプモールド成型品は、強度向上の効果が得られない。密度の測定は、JIS P8118紙及び板紙-厚さ、密度及び比容積試験方法による。
【0024】
パルプモールド成型品の厚さとしては、0.3mm以上2.0mm以下であることが望ましい。厚さが0.3mm未満であると構造体としての強度が不足する場合がある。また厚さが2.0mmを超える場合には、金型内で乾燥する際に時間を要し、生産性が低下する場合がある。厚さの測定は、JIS P8118紙及び板紙-厚さ、密度及び比容積試験方法による。
【0025】
以下実施例を示す。
竹パルプ及びサトウキビパルプを所定量計量し、パルパーにより離解して原料スラリーを得た。得られた原料スラリーの濃度調整を行った後、微細セルロース繊維を添加して、微細繊維添加スラリーを得た。微細セルロース繊維としては、ダイセイミライズ社製 KY100G(平均繊維径100nm)及び、KY100S(平均繊維径200nm)を使用した。
【0026】
得られた微細繊維添加スラリーを成型機金型にて抄造して抄造体を得た後、抄造体を熱圧金型に移し、165℃、100秒乾燥し、パルプモールド成型品を得た。
【0027】
得られたパルプモールド成型品から幅15mm長さ150mmの試験体を切り出し、引張強度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1の結果から、本発明に係るパルプモールド成型品は、強度的にも、生産性の点でも優位であることが分かる。
【符号の説明】
【0030】
1・・・パルプモールド成型品
2・・・吸着成型工程
3・・・金型
4・・・金網
5・・・吸引
6・・・パルプスラリー
7・・・熱圧乾燥工程
8・・・上型
9・・・下型
図1
図2
図3