(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062139
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】鉄道車両用主幹制御器
(51)【国際特許分類】
B60L 15/00 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
B60L15/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169940
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】星 吉輝
(72)【発明者】
【氏名】飯田 哲史
(72)【発明者】
【氏名】松村 泰輔
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125CC04
5H125EE42
5H125FF28
(57)【要約】
【課題】器体2から外部に突出する、揺動操作自在なハンドル3と、ハンドル3の揺動に連動して回動する、器体2の内部に収納されたカム軸4とを備えた鉄道車両用主幹制御器1において、出庫専用の運転手を要せずに、リモート操作によって鉄道車両を車庫から出庫させることができると共に、鉄道車両用主幹制御器1に大幅な改良を加えることなく、鉄道車両のリモート操作を実現する。
【解決手段】カム軸4を回動させるモータ11と、モータ11とカム軸4の間に介設されるクラッチ12とが、器体2の内部に収納され、モータ11及びクラッチ12はリモート操作される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
器体から外部に突出する、揺動操作自在なハンドルと、ハンドルの揺動に連動して回動する、器体内部に収納されたカム軸とを備えた鉄道車両用主幹制御器において、
カム軸を回動させるモータと、モータとカム軸の間に介設されるクラッチとが、器体内部に収納され、モータ及びクラッチはリモート操作されることを特徴とする鉄道車両用主幹制御器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用主幹制御器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両用主幹制御器は、器体から外部に突出する、揺動操作自在なハンドルと、ハンドルの揺動に連動して回動する、器体内部に収納されたカム軸とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、従来、車庫に入庫された鉄道車両を出庫させる際には、出庫専用の運転手が乗務員室に乗り込み、鉄道車両用主幹制御器を操作していた。出庫専用の運転手を要せずに鉄道車両を車庫から出庫させるためには、ハンドルの操作をリモートコントロールで行うことが考えられるが、ハンドルをリモート操作するための具体的な方策は、これまでに明らかにされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、出庫専用の運転手を要せずに、リモート操作によって鉄道車両を車庫から出庫させることができると共に、鉄道車両用主幹制御器に大幅な改良を加えることなく、鉄道車両のリモート操作を実現することができる鉄道車両用主幹制御器を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、器体から外部に突出する、揺動操作自在なハンドルと、ハンドルの揺動に連動して回動する、器体内部に収納されたカム軸とを備えた鉄道車両用主幹制御器において、カム軸を回動させるモータと、モータとカム軸の間に介設されるクラッチとが、器体内部に収納され、モータ及びクラッチはリモート操作されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、モータ及びクラッチは、鉄道車両の車外からの無線信号によってリモート操作されるため、出庫専用の運転手を要せずに、リモート操作によって鉄道車両を車庫から出庫させることができる。また、モータ及びクラッチは、器体内部に収納されるため、鉄道車両用主幹制御器に大幅な改良を加えることなく、鉄道車両のリモート操作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の鉄道車両用主幹制御器の第1実施形態を概略的に示す構成図。
【
図2】本発明の鉄道車両用主幹制御器の第2実施形態を概略的に示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照して、本発明の鉄道車両用主幹制御器の第1実施形態について説明する。鉄道車両用主幹制御器1は、器体2から外部に突出するハンドル3として、器体2の左側部に配置された力行ハンドル31と、器体2の右側部に配置されたブレーキハンドル32と、器体2の中央部に配置された逆転ハンドル33とを備えている。力行ハンドル31は、運転手が手で握って揺動操作する握り部311と、握り部311の左端部から器体2の内部に延びるアーム部312とを有している。アーム部312の、器体2の内部における先端部には、アーム部312に直交するハンドル軸313が設けられている。そして、力行ハンドル31は、ハンドル軸313を中心として器体2の前後方向に揺動操作可能になっている。ブレーキハンドル32も、力行ハンドル31と同様に、握り部321及びアーム部322を有し、アーム部322にはハンドル軸323が設けられている。そして、ブレーキハンドル32も、ハンドル軸323を中心として器体2の前後方向に揺動操作可能になっている。なお、アーム部322は、握り部321の右端部から器体2の内部に延びている。
【0010】
器体2の内部には、ハンドル3の揺動に連動して回動するカム軸4として、器体2の左側部から中央部にかけて、ハンドル軸313と平行に延びる力行カム軸41と、器体2の右側部から中央部にかけて、ハンドル軸323と平行に延びるブレーキカム軸42とが収納されている。力行カム軸41とブレーキカム軸42は、同軸上に位置している。また、力行カム軸41及びブレーキカム軸42の各カム軸4には、軸方向の間隔を存して複数のカム5が並設されている。さらに、ハンドル軸313の右端部にハンドルギヤ6が取り付けられ、ハンドルギヤ6に噛合するカムギヤ7が、力行カム軸41の左端部に設けられている。ハンドルギヤ6及びカムギヤ7の噛合によって、力行ハンドル31の揺動に連動して力行カム軸41が回動する。同様に、ハンドル軸323の右端部にハンドルギヤ6が取り付けられ、ハンドルギヤ6に噛合するカムギヤ7が、ブレーキカム軸42の右端部に設けられている。ハンドルギヤ6及びカムギヤ7の噛合によって、ブレーキハンドル32の揺動に連動してブレーキカム軸42が回動する。
【0011】
また、器体2の内部には、力行カム軸41及びブレーキカム軸42の各カム軸4に並設されたカム5に押されてオンになる、カム5の個数と同数のカムスイッチ8が、各カム軸4の軸方向に間隔を存して並設されている。カム5及びカムスイッチ8は、各1つずつで1組になっている。各カムスイッチ8では、力行ハンドル31及びブレーキハンドル32の揺動に連動して力行カム軸41及びブレーキカム軸42が回動する際に、カム5に押されて動く可動接点が固定接点に接触するときにONになり、可動接点が固定接点から離れるときにOFFになる。力行ハンドル31及びブレーキハンドル32が「切」のポジションにあるとき、全てのカムスイッチ8がOFFになり、各ハンドル3の揺動ポジションに応じて、所定のカムスイッチ8がONになる。
【0012】
ハンドル3としての逆転ハンドル33は、運転手が手で握って揺動操作する握り部331と、握り部331の中央部から器体2の内部に延びるアーム部332とを有している。アーム部332の、器体2の内部における先端部には、アーム部332に直交する、カム軸4としての逆転カム軸43が設けられている。逆転カム軸43は、力行カム軸41の右端部からブレーキカム軸42の左端部にかけて、力行カム軸41及びブレーキカム軸42と平行に延びている。逆転ハンドル33は、逆転カム軸43を中心として器体2の前後方向に揺動操作可能になっている。
【0013】
逆転カム軸43には、アーム部332を挟んで左右の各側に、力行用インターロックカム91とブレーキ用インターロックカム92とが取り付けられている。力行用インターロックカム91は、力行カム軸41の右端部に設けられた力行インターロックカム101とのインターロック及びその解除が可能になっている。ブレーキ用インターロックカム92は、ブレーキカム軸42の左端部に設けられたブレーキインターロックカム102とのインターロック及びその解除が可能になっている。
【0014】
逆転ハンドル33には、「前進」、「後進」及び「切」の3つのポジションが設定されている。逆転ハンドル33を「前進」及び「後進」の各ポジションに揺動させると、力行用インターロックカム91と力行インターロックカム101、及びブレーキ用インターロックカム92とブレーキインターロックカム102の夫々が、「前進」又は「後進」を実現させる状態にインターロックされる。この時、力行ハンドル31の揺動操作によって、鉄道車両は前進又は後進し、ブレーキハンドル32の揺動操作によって、鉄道車両の前進又は後進を減速又は停止させることができる。逆転ハンドル33を「切」のポジションに揺動させると、力行用インターロックカム91と力行インターロックカム101、及びブレーキ用インターロックカム92とブレーキインターロックカム102の夫々が、「切」に対応する状態にインターロックされる。この時、力行ハンドル31は、「切」のポジションに拘束されると共に、ブレーキハンドル32は、「非常ブレーキ」のポジションに拘束される。
【0015】
そして、鉄道車両用主幹制御器1では、カム軸4としての力行カム軸41、ブレーキカム軸42及び逆転カム軸43の夫々を直接回動させる3個のモータ11が、器体2の内部に収納されている。また、各モータ11と、力行カム軸41、ブレーキカム軸42及び逆転カム軸43の各カム軸4との間にクラッチ12が介設され、3個のクラッチ12も器体2の内部に収納されている。各モータ11及び各クラッチ12は、例えば、指令室等に設置される据置式のものや、タブレット等の携帯することができるもの等の制御装置によってリモート操作することができるようにしている。具体的には、上記制御装置から送信される無線信号を、鉄道車両に備えた、上記制御装置とは異なる制御装置を通じて各モータ11及び各クラッチ12が受信したり、各モータ11及び各クラッチ12自体が受信したりするなどし、受信した無線信号のコマンドに基づいて、力行カム軸41、ブレーキカム軸42及び逆転カム軸43が回動し、この時の回動に伴い、力行ハンドル31、ブレーキハンドル32及び逆転ハンドル33の揺動がリモート操作されることが例示される。したがって、入庫されていた鉄道車両を車庫からリモート操作で出庫させることができる。このため、出庫専用の運転手を要せずに、リモート操作によって鉄道車両を車庫から出庫させることができる。また、各モータ11及び各クラッチ12は、器体2の内部に収納されるため、鉄道車両用主幹制御器1に大幅な改良を加えることなく、鉄道車両のリモート操作を実現することができる。
【0016】
なお、鉄道車両には、先頭車両及び後尾車両の両方にカメラを設置し、カメラが撮像した画像に基づく各種コマンドを予め上記制御装置にプログラミングしておき、指令員が上記画像を見ながら鉄道車両をリモート操作することも可能である。
【0017】
図2を参照して、本発明の鉄道車両用主幹制御器の第2実施形態について説明する。
図2図中に付した符号で
図1図中に付した符号と同一のものは、同一の部品、部材等であり、第2実施形態については、第1実施形態との相違点のみを以下に説明する。
【0018】
第2実施形態では、力行カム軸41及びブレーキカム軸42の夫々を各モータ11が直接回動させるのではなく、ハンドル軸313,323の夫々を直接回動させ、力行カム軸41及びブレーキカム軸42の夫々を間接的に回動させるようにしている。このため、クラッチ12は、ハンドル軸313,323とモータ11との間の夫々に介設されている。上記の点が、第1実施形態との相違点である。すなわち、第2実施形態でも、ハンドル軸313,323の夫々を直接回動させる各モータ11及びハンドル軸313,323とモータ11との間の夫々に介設されたクラッチ12は、いずれも、器体2の内部に収納され、全てのモータ11及びクラッチ12は、リモート操作される。したがって、第2実施形態も第1実施形態と同様に、入庫されていた鉄道車両を車庫からリモート操作で出庫させることができる。このため、出庫専用の運転手を要せずに、リモート操作によって鉄道車両を車庫から出庫させることができる。また、鉄道車両用主幹制御器1に大幅な改良を加えることなく、鉄道車両のリモート操作を実現することができる。
【0019】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。カム5及びカムスイッチ8の構成及び構造をはじめ、力行用インターロックカム91、ブレーキ用インターロックカム92、力行インターロックカム101及びブレーキインターロックカム102の構成及び構造、また、モータ11及びクラッチ12の構成及び構造等の細部については、様々な態様が可能である。また、ハンドル3には、力行ハンドル31とブレーキハンドル32とを別体として設けたものばかりでなく、力行とブレーキを1つのハンドルで揺動操作するシングルハンドルも採用可能であり、この場合にも、シングルハンドルの揺動操作をリモート操作して鉄道用車両の車庫からの出庫を行うことができる。
【符号の説明】
【0020】
1…鉄道車両用主幹制御器、2…器体、3…ハンドル、4…カム軸、11…モータ、12…クラッチ。