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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062143
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】芳香族ビスエーテル化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/31 20060101AFI20240430BHJP
   C07C 69/734 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
C07C67/31
C07C69/734 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169948
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000243272
【氏名又は名称】本州化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】岩城 芳憲
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 利恵
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC43
4H006AC48
4H006BA02
4H006BA32
4H006BA37
4H006BB16
4H006BB61
4H006BC10
4H006BJ50
4H006BP30
4H006KA31
(57)【要約】
【課題】反応時間を短縮することができる、芳香族ビスエーテル化合物の新たな製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物(1)、式(2)で表されるハロゲン化物(2)及び、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩を、不活性ガスを導入し、かつ、反応系内のガスを排出しながら反応させることを特徴とする、式(3)で表される芳香族ビスエーテル化合物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物(1)、下記式(2)で表されるハロゲン化物(2)及び、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩を、不活性ガスを導入し、かつ、反応系内のガスを排出しながら反応させることを特徴とする、下記式(3)で表される芳香族ビスエーテル化合物の製造方法。
【化1】

(式(1)中、Ar及びArは各々独立してベンゼン環又はナフタレン環を示し、Rは各々独立して直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~6のアルキル基又は炭素原子数5~6の環状アルキル基又は炭素原子数6~12のアリール基を示し、nは各々独立して0~4の整数を示し、Xは単結合又は、下記式(1a)、(1b)の何れかで表される2価の基を示す。
【化2】

(式(1a)、(1b)中、Rは各々独立して水素、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のハロゲン化アルキル基又は炭素数6~12のアリール基を示し、Rはそれぞれ互いに結合して、全体として炭素原子数5~20のシクロアルキリデン基を形成してもよく、Ar及びArは各々独立してベンゼン環又はナフタレン環を示し、*はそれぞれAr又はArとの結合位置を示す。))
【化3】

(式(2)中、Yはハロゲン原子を示し、Aは直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10の環状アルキル基、グリシジル基、炭素原子数6~12のアリール基、下記式(2a)、若しくは下記式(2b)で表される基より選ばれる1つの基を示す。
【化4】

(式(2a)中、Rは直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~4のアルキレン基を示し、Rは直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数2~10のアルケニル基を示し、*はYとの結合位置を示す。)
【化5】

(式(2b)中、Rは直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~4のアルキル基又は水素原子を示し、*はYとの結合位置を示す。))
【化6】

(式(3)中、Ar、Ar、R、n、Xは式(1)のそれと同じであり、Aは式(2)のそれと同じである。)
【請求項2】
前記不活性ガスを、前記芳香族ジヒドロキシ化合物(1)1モルに対して、1時間あたり20~120Lの流量で導入する、請求項1に記載の芳香族ビスエーテル化合物の製造方法。
【請求項3】
前記式(1)及び前記式(3)のXが単結合である、請求項1に記載の芳香族ビスエーテル化合物の製造方法。
【請求項4】
前記式(1)及び前記式(3)中のAr及びArが、共にナフタレン環である請求項1又は2に記載の芳香族ビスエーテル化合物の製造方法。
【請求項5】
前記式(2a)中のRが、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~10のアルキル基である請求項3に記載の芳香族ビスエーテル化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ビスエーテル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ビスエーテル骨格を有するジカルボン酸化合物は、ポリアミドの原料や、アリルエステル化合物の原料、可塑剤、硬化剤などの添加剤として用いられており、ビスフェノール化合物を原料として使用した芳香族ビスエーテル骨格を有するジカルボン酸化合物も知られている(特許文献1、2等)。
芳香族ビスエーテル骨格を有するジカルボン酸成分の合成方法として、芳香族ジヒドロキシ化合物とハロゲン化物とを反応させる方法は多く知られている。例えば、2,2’-ビス(2-エトキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチルは、1,1’-ビナフタレン-2,2’-ジオールとクロロ酢酸エチル等のハロゲン化酢酸エステルとを反応させて、得られた化合物を加水分解することで得られることが報告されている(特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-292819号公報
【特許文献2】特開平05-170702号公報
【特許文献3】特開2018-059074号公報
【特許文献4】特開2008-024650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、2を含む先行技術は、本発明にかかる芳香族ビスエーテル化合物の工業的な製造を想定した検討はなされていなかった。
一方、本発明者らは、本発明にかかる芳香族ビスエーテル化合物を工業的に製造する際に、反応時間が長いため、生産効率に問題があることを見出した。
本発明は、上述した事情を背景としてなされたものであって、反応時間を短縮することができる、芳香族ビスエーテル化合物の新たな製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、反応時間の短縮を目的に種々検討を行った結果、不活性ガスを導入し、かつ、反応系内のガスを排出しながら反応を行うことにより、反応時間を短縮することが出来ることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
本発明について、以下説明する。
1.下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物(1)、下記式(2)で表されるハロゲン化物(2)及び、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩を、不活性ガスを導入し、かつ、反応系内のガスを排出しながら反応させることを特徴とする、下記式(3)で表される芳香族ビスエーテル化合物の製造方法。
【化1】

(式(1)中、Ar及びArは各々独立してベンゼン環又はナフタレン環を示し、Rは各々独立して直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~6のアルキル基又は炭素原子数5~6の環状アルキル基又は炭素原子数6~12のアリール基を示し、nは各々独立して0~4の整数を示し、Xは単結合又は、下記式(1a)、(1b)の何れかで表される2価の基を示す。
【化2】

(式(1a)、(1b)中、Rは各々独立して水素、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のハロゲン化アルキル基又は炭素数6~12のアリール基を示し、Rはそれぞれ互いに結合して、全体として炭素原子数5~20のシクロアルキリデン基を形成してもよく、Ar及びArは各々独立してベンゼン環又はナフタレン環を示し、*はそれぞれAr又はArとの結合位置を示す。))
【化3】

(式(2)中、Yはハロゲン原子を示し、Aは直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10の環状アルキル基、グリシジル基、炭素原子数6~12のアリール基、下記式(2a)、若しくは下記式(2b)で表される基より選ばれる1つの基を示す。
【化4】

(式(2a)中、Rは直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~4のアルキレン基を示し、Rは直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数2~10のアルケニル基を示し、*はYとの結合位置を示す。)
【化5】

(式(2b)中、Rは直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~4のアルキル基又は水素原子を示し、*はYとの結合位置を示す。))
【化6】

(式(3)中、Ar、Ar、R、n、Xは式(1)のそれと同じであり、Aは式(2)のそれと同じである。)
2.前記不活性ガスを、前記芳香族ジヒドロキシ化合物(1)1モルに対して、1時間あたり20~120Lの流量で導入する、1.に記載の芳香族ビスエーテル化合物の製造方法。
3.前記式(1)及び前記式(3)のXが単結合である、1.に記載の芳香族ビスエーテル化合物の製造方法。
4.前記式(1)及び前記式(3)中のAr及びArが、共にナフタレン環である1.又は2.に記載の芳香族ビスエーテル化合物の製造方法。
5.前記式(2a)中のRが、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~10のアルキル基である3.に記載の芳香族ビスエーテル化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、芳香族ビスエーテル化合物を、反応時間が短いことから、高い生産効率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
<芳香族ジヒドロキシ化合物(1)>
本発明の製造方法において使用する出発原料の1つは、下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物(以下、「芳香族ジヒドロキシ化合物(1)」という。)である。
【化7】

(式(1)中、Ar及びArは各々独立してベンゼン環又はナフタレン環を示し、Rは各々独立して直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~6のアルキル基又は炭素原子数5~6の環状アルキル基又は炭素原子数6~12のアリール基を示し、nは各々独立して0~4の整数を示し、Xは単結合又は、下記式(1a)、(1b)の何れかで表される2価の基を示す。
【化8】

(式(1a)、(1b)中、Rは各々独立して水素、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のハロゲン化アルキル基又は炭素数6~12のアリール基を示し、Rはそれぞれ互いに結合して、全体として炭素原子数5~20のシクロアルキリデン基を形成してもよく、Ar及びArは各々独立してベンゼン環又はナフタレン環を示し、*はそれぞれAr又はArとの結合位置を示す。))
【0009】
式(1)におけるAr及びArは、ベンゼン環又はナフタレン環を示し、中でも、ナフタレン環が好ましく、Ar及びArが共にナフタレン環であることが特に好ましい。
式(1)におけるRは、各々独立して直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~6のアルキル基又は炭素原子数5~6の環状アルキル基又は炭素原子数6~12のアリール基を示す。中でも、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~6のアルキル基又は炭素原子数6~12のアリール基が好ましい。直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~6のアルキル基としては、炭素原子数1~4のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~2のアルキル基がより好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチルペンチル基等が挙げられる。炭素原子数6~12のアリール基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が置換していてもよく、炭素原子数は置換したアルキル基の炭素原子数も含まれ、具体的には、4-メチルフェニル基、4-イソプロピルフェニル、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
式(1)におけるnは、各々独立して0~4の整数を示し、中でも、0~3の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましく、0又は1がさらに好ましく、0が特に好ましい。
式(1)におけるXは、単結合又は、下記式(1a)、(1b)の何れかで表される2価の基を示す。中でも、単結合又は、式(1a)で表される2価の基であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
【0010】
式(1)におけるXが単結合である場合、芳香族ジヒドロキシ化合物(1)は下記式(1-1)で表される。
【化9】

(式中、Ar、Ar、R、nは式(1)のそれと同じである。)
さらにAr及びAr共にフェニレン基である場合は下記式(1-2)で表される。
【化10】

(式中、R、nは式(1)のそれと同じである。)
上記式(1-2)におけるOH基の結合位置は、ベンゼン環同士の結合位置に対して、オルソ位又はパラ位が好ましく、パラ位が特に好ましい。
上記式(1-2)におけるRで表される基の結合位置は、ベンゼン環同士の結合位置に対してメタ位が好ましい。
上記式(1-1)について、Ar及びAr共にナフタレン環である場合の1つの態様は下記式(1-3)で表される。
【化11】

(式中、R、nは式(1)のそれと同じである。)
上記式(1-3)におけるOH基の結合位置は、ナフタレン環の2位又は4位が好ましく、2位が特に好ましい。
上記式(1-3)におけるRで表される基の結合位置は、ナフタレン環の3位又は6位が好ましく、6位がより好ましい。
【0011】
本発明における芳香族ジヒドロキシ化合物(1)としては、具体的には、例えば、ビフェニル-4,4’-ジオール、3,3’-ジメチル-ビフェニル-4,4’-ジオール、3,3’-ジエチル-ビフェニル-4,4’-ジオール、3,3’,5,5’-テトラメチル-ビフェニル-4,4’-ジオール、3,3’,6,6’-テトラメチル-ビフェニル-4,4’-ジオール、3,3’-ジメチル-5,5’-ジ-t-ブチル-ビフェニル-4,4’-ジオール、3,3’,5,5’-テトラ-t-ブチル-ビフェニル-4,4’-ジオール、3,3’-ジフェニル-ビフェニル-4,4’-ジオール、1,1’-ビナフタレン-2,2’-ジオール、2,2’-ビナフタレン-1,1’-ジオール、1,1’-ビナフタレン-6,6’-ジフェニル-2,2’-ジオール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,3-ベンゾフルオレンが挙げられる。この中でも好ましくは、ビフェニル-4,4’-ジオール、3,3’-ジメチル-ビフェニル-4,4’-ジオール、3,3’,5,5’-テトラメチル-ビフェニル-4,4’-ジオール、1,1’-ビナフタレン-2,2’-ジオールであり、特に好ましくは下記式(A)で表される1,1’-ビナフタレン-2,2’-ジオールである。
【化12】
【0012】
式(1)におけるXが式(1a)である場合のRは、各々独立して水素、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のハロゲン化アルキル基又は炭素数6~12のアリール基を示す。中でも、水素、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素数6~8のアリール基が好ましく、水素、炭素原子数1~4のアルキル基又はフェニル基がさらに好ましい。また、Rはそれぞれ互いに結合して、全体として炭素原子数5~20のシクロアルキリデン基を形成してもよい。炭素原子数5~20のシクロアルキリデン基は、分岐鎖としてのアルキル基を含んでいてもよい。シクロアルキリデン基は炭素原子数5~15であることが好ましく、炭素原子数6~12であることがより好ましく、炭素原子数6~9であることが特に好ましい。シクロアルキリデン基としては、具体的には、例えば、シクロペンチリデン基(炭素原子数5)、シクロヘキシリデン基(炭素原子数6)、3-メチルシクロヘキシリデン基(炭素原子数7)、4-メチルシクロヘキシリデン基(炭素原子数7)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン基(炭素原子数9)、シクロヘプチリデン基(炭素原子数7)、シクロドデカニリデン基(炭素原子数12)等が挙げられる。好ましくはシクロヘキシリデン基(炭素原子数6)、3-メチルシクロヘキシリデン基(炭素原子数7)、4-メチルシクロヘキシリデン基(炭素原子数7)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン基(炭素原子数9)、シクロドデカニリデン基(炭素原子数12)であり、より好ましくはシクロヘキシリデン基(炭素原子数6)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン基(炭素原子数9)、シクロドデカニリデン基(炭素原子数12)である。
式(1b)中、Ar及びArが共にベンゼン環であることがより好ましい。例えば、Ar及びArが共にベンゼン環である場合、式(1b)で表される基はフルオレニリデン基である。
【0013】
<ハロゲン化物(2)>
本発明の製造方法において使用する出発原料の1つは、下記式(2)で表されるハロゲン化物(以下、「ハロゲン化物(2)」という。)である。
【化13】

(式(2)中、Yはハロゲン原子を示し、Aは炭素原子数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数1~10の環状アルキル基、グリシジル基、炭素原子数6~12のアリール基、下記式(2a)、若しくは下記式(2b)で表される基より選ばれる1つの基を示す。
【化14】

(式(2a)中、Rは直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~4のアルキレン基を示し、Rは直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数2~10のアルケニル基を示し、*はYとの結合位置を示す。)
【化15】

(式(2b)中、Rは直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~4のアルキル基又は水素原
子を示し、*はYとの結合位置を示す。))
【0014】
式(2)中、Yはハロゲン原子を表し、具体的には、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、この中でも塩素原子、臭素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。
式(2)中、Aは、式(2a)であることが好ましく、式(2a)におけるRとしては、炭素原子数1~2のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1のアルキレン基、すなわちメチレン基がより好ましい。
式(2a)におけるRとしては、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~10のアルキル基が好ましく、中でも直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~4のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~2のアルキル基がさらに好ましく、炭素数2のアルキル基であるエチル基が特に好ましい。また、炭素原子数2~10のアルケニル基としては、炭素原子数2~4のアルケニル基が好ましく、エチニル基、2-プロピニル基、1-プロピニル基等が挙げられる。
式(2)中のAが直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~10のアルキル基である場合は、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~4のアルキル基が好ましく、直鎖状の炭素原子数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。Aの炭素原子数1~10の環状アルキル基として、具体的には、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基などが挙げられる。また、炭素原子数6~12のアリール基としては、アリール基にアルキル基やニトロ基等の置換基があってもよく、フェニル基(炭素原子数6)、4-メチルフェニル基(炭素原子数7)、4-ニトロフェニル基(炭素原子数6)が挙げられる。
式(2b)におけるRとしては、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基等が挙げられる。
式(2)で表されるハロゲン化物(2)の具体例としては、例えば、クロロ酢酸メチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸プロピル、ブロモ酢酸メチル、ブロモ酢酸エチル、ブロモ酢酸プロピル、ヨード酢酸メチル、ヨード酢酸エチル、ヨード酢酸プロピルなどが挙げられる。
【0015】
<芳香族ビスエーテル化合物(3)>
本発明の製造方法における目的化合物は、下記式(3)で表される芳香族ビスエーテル化合物(以下、「芳香族ビスエーテル化合物(3)」という。)である。
【化16】

(式(3)中、Ar、Ar、R、n、X、Aは式(1)及び(2)のそれと同じである。)
上記式(3)中のAr、Ar、R、n、Xの具体例や好適例は式(1)のそれと同じであり、上記式(3)中のAの具体例や好適例は式(2)のそれと同じである。
【0016】
上記式(3)で表される芳香族ビスエーテル化合物について、Xが特に好ましい態様である単結合である場合の化合物は、下記式(3-1)で表される。
【化17】

(式中、Ar、Ar、R、n、Aは式(1)及び(2)のそれと同じである。)
上記式(3-1)で表される化合物について、Ar及びArが共にフェニレン基である場合の化合物は、下記式(3-2)で表される。
【化18】

(式中、R、n、Aは式(1)及び(2)のそれと同じである。)
上記式(3-1)で表される化合物について、Ar及びArが共にナフタレン環である場合の1つの態様である化合物は、下記式(3-3)で表される。
【化19】

(式中、R、n、Aは式(1)及び(2)のそれと同じである。)
【0017】
上記式(3-1)で表される化合物について、具体的には、例えば、4,4’-ビス(メトキシカルボニルメトキシ)-ビフェニル、4,4’-ビス(エトキシカルボニルメトキシ)-ビフェニル、4,4’-ビス(メトキシカルボニルメトキシ)-3,3’-ジメチル-ビフェニル、4,4’-ビス(エトキシカルボニルメトキシ)-3,3’-ジメチル-ビフェニル、4,4’-ビス(メトキシカルボニルメトキシ)-3,3’-ジエチル-ビフェニル、4,4’-ビス(エトキシカルボニルメトキシ)-3,3’-ジエチル-ビフェニル、4,4’-ビス(メトキシカルボニルメトキシ)-3,3’,5,5’-テトラメチル-ビフェニル、4,4’-ビス(エトキシカルボニルメトキシ)-3,3’,5,5’-テトラメチル-ビフェニル、4,4’-ビス(メトキシカルボニルメトキシ)-3,3’,6,6’-テトラメチル-ビフェニル、4,4’-ビス(エトキシカルボニルメトキシ)-3,3’,6,6’-テトラメチル-ビフェニル、4,4’-ビス(メトキシカルボニルメトキシ)-3,3’-ジメチル-5,5’-ジ-t-ブチル-ビフェニル、4,4’-ビス(エトキシカルボニルメトキシ)-3,3’-ジメチル-5,5’-ジ-t-ブチル-ビフェニル、4,4’-ビス(メトキシカルボニルメトキシ)-3,3’,5,5’-テトラ-t-ブチルビフェニル、4,4’-ビス(エトキシカルボニルメトキシ)-3,3’,5,5’-テトラ-t-ブチルビフェニル、4,4’-ビス(エトキシカルボニルメトキシ)-3,3’-ジフェニル-ビフェニル、2,2’-ビス(メトキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(エトキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(プロポキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチル、1,1’-ビス(エトキシカルボニルメトキシ)-2,2’-ビナフチル、2,2’-ビス(エトキシカルボニルメトキシ)-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフタレン、9,9-ビス[4-(エトキシカルボニルメトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(エトキシカルボニルメトキシ)フェニル]-2,3-ベンゾフルオレンが挙げられる。
この中でも、4,4’-ビス(メトキシカルボニルメトキシ)-ビフェニル、4,4’-ビス(エトキシカルボニルメトキシ)-ビフェニル、4,4’-ビス(メトキシカルボニルメトキシ)-3,3’-ジメチル-ビフェニル、4,4’-ビス(メトキシカルボニルメトキシ)-3,3’,5,5’-テトラメチル-ビフェニル、2,2’-ビス(メトキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(エトキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(エトキシカルボニルメトキシ)-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフタレンが好ましく、2,2’-ビス(メトキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(エトキシカルボニルメトキシ)-1,1’-ビナフチルが特に好ましい。
【0018】
<アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩>
アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられ、アルカリ金属炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。中でも、アルカリ金属炭酸塩が好ましく、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムがより好ましく、炭酸カリウムがさらに好ましい。
【0019】
<不活性ガス>
本発明の製造方法は、不活性ガスを導入し、かつ、反応系外にガスが排出される。本発明の製造方法は、不活性ガスを導入することにより、反応により生成する炭酸ガスを反応系外に排出させ得るため、反応が促進されて反応時間が短縮される。本発明の製造方法は、反応系中を窒素置換した後に、ハロゲン化物(2)を反応系中に滴下し、その滴下終了後に不活性ガスを導入しながら反応させることが好ましい。
本発明の製造方法における芳香族ジヒドロキシ化合物(1)1モルに対する1時間あたりの不活性ガスの導入量は、20~120Lの範囲(1分間あたり約333~2000mLの範囲に相当)が好ましく、34~89Lの範囲(1分間あたり約567~約1483mLの範囲に相当)がより好ましく、48~76Lの範囲(1分間あたり800~約1267mLの範囲に相当)がさらに好ましく、55~69Lの範囲(1分間あたり約917~1150mLの範囲に相当)が特に好ましい。
本発明の製造方法において、この不活性ガスの流速は一定であることが好ましいが、一定である必要はなく、上記流量の範囲内で振れがあってもよく、または、一時的に範囲外となっても、時間あたりの導入量が上記範囲内であればよい。
本発明の製造方法において、反応開始から反応終了時までに導入する不活性ガスの合計量は、反応に使用する芳香族ジヒドロキシ化合物(1)1モルに対して、200~1200Lの範囲が好ましく、340~890Lの範囲がより好ましく、480~760Lの範囲がさらに好ましく、550~690Lの範囲が特に好ましい。
本発明の製造方法に使用する不活性ガスの種類は、反応を阻害しないガスであれば特に制限はないが、炭酸ガスは含まない。具体的には、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスと空気との混合ガス等が挙げられるが、窒素ガスと空気との混合ガスは、酸素含有量が6容量%以下であることが好ましく、4容量%以下であることがより好ましい。本発明の製造方法に使用する不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムが好ましく、窒素ガスが最も好ましい。
本発明の製造方法において、この不活性ガスの導入箇所は、反応容器中の気相部でも液相中でもよいが、気相部に導入することが好ましく、中でも、反応液面付近に導入することがより好ましい。
【0020】
<排出ガス>
本発明の製造方法において、反応系内(反応容器内)のガスを排出しながら反応させることが好ましく、芳香族ジヒドロキシ化合物(1)1モルに対する1時間あたりの排出量は、20~120Lの範囲(1分間あたり約333~2000mL)が好ましく、34~89Lの範囲(1分間あたり約567~約1483mLの範囲に相当)が好ましく、48~76Lの範囲(1分間あたり800~約1267mLの範囲に相当)がより好ましく、55~69Lの範囲(1分間あたり約917~1150mLの範囲に相当)が特に好ましい。この排出ガスの流速は、一定であることが好ましいが、一定である必要はなく、上記流量の範囲内で振れがあってもよく、または、一時的に範囲外となっても、1時間あたりの排出量が上記範囲内であればよい。また、排出箇所は、反応液面から遠い方がより好ましい。さらに、反応開始から反応終了時までの排出するガスの合計量についても、反応に使用する芳香族ジヒドロキシ化合物(1)1モルに対して、200~1200Lの範囲が好ましく、340~890Lの範囲がより好ましく、480~760Lの範囲がさらに好ましく、550~690Lの範囲が特に好ましい。ガス排出口の箇所は、不活性ガスの導入箇所から遠い箇所や液面から離れた箇所が好ましい。
【0021】
<原料使用量>
本発明の製造方法においては、ハロゲン化物(2)の使用量は、原料である芳香族ジヒドロキシ化合物(1)1モルに対して、理論値2.0モル以上であれば、特に限定されるものではないが、通常2モル以上であり、好ましくは2.0~2.5モルの範囲であり、より好ましくは2.05~2.15モルの範囲である。
【0022】
<触媒>
本発明の製造方法においては、さらに生産効率を向上させるために、アルカリ金属ヨウ化物やアンモニウムヨウ化物などのヨウ化物塩の存在下で反応を行うことが好ましい。
具体的には、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化テトラアルキルアンモニウム、ヨウ化テトラアリールアンモニウム、ヨウ化テトラアリールアルキルアンモニウムなどが挙げられる。これらは、単独でも、2種類以上混合して用いてもよい。
ヨウ化物塩の使用量は、原料である芳香族ジヒドロキシ化合物(1)100重量部に対して、2~20重量部の範囲が好ましく、2~10重量部の範囲がより好ましく、2~5重量部の範囲がさらに好ましい。
【0023】
<反応溶媒>
本発明の製造方法において使用できる溶媒として、非プロトン性極性溶媒を用いることが好ましい。具体的には、例えば、ジエチルケトン(炭素原子数5)、メチルイソブチルケトン(炭素原子数6)、メチルアミルケトン(炭素原子数7)、メチルヘキシルケトン(炭素原子数8)等の炭素原子数5~8の鎖状脂肪族ケトン、アセトニトリル、プロパンニトリル等の炭素数が2~6の鎖状ニトリル系溶媒、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。この中でも、反応速度の観点から、炭素原子数5~8の鎖状脂肪族ケトン、炭素数が2~6の鎖状ニトリル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドがより好ましく、水への溶解度が低く、反応の際に使用する塩基等を除去する水洗処理が容易となることから炭素原子数5~8の鎖状脂肪族ケトンがさらに好ましく、炭素原子数6~7の鎖状脂肪族ケトンが特に好ましい。これらの溶媒は単独でも、2種類以上混合して用いてもよい。
反応に使用する溶媒量としては、芳香族ジヒドロキシ化合物(1)100重量部に対して、120~1000重量部の範囲が好ましく、150~800重量部の範囲がより好ましく、150~600重量部の範囲がさらに好ましい。
本発明において、溶媒を留出させながら反応を行ってもよく、その場合の反応に使用する溶媒量としては、芳香族ジヒドロキシ化合物(1)100重量部に対して、200~2000重量部の範囲が好ましく、300~1000重量部の範囲がより好ましく、350~800重量部の範囲がさらに好ましく、400~600重量部の範囲が特に好ましい。また、留出させる溶媒量としては、芳香族ジヒドロキシ化合物(1)100重量部に対して、50~600重量部の範囲が好ましく、100~500重量部の範囲がより好ましく、200~400重量部の範囲がさらに好ましい。
【0024】
<アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩の使用形態及び使用量>
本発明の製造方法では、芳香族ジヒドロキシ化合物(1)をアルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩により造塩して、求核性を高めてハロゲン化物(2)と反応を行うことが好ましい。
このアルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩の使用量は芳香族ジヒドロキシ化合物(1)1モルに対して、2.0~2.5モルの範囲が好ましく、2.05~2.15モルの範囲がより好ましい。
【0025】
<反応条件>
本発明における反応温度としては、通常60~100℃の範囲が好ましく、80~90℃の範囲がより好ましく、80℃が特に好ましい。反応温度が高いと、目的物である芳香族ビスエーテル化合物(3)の収率が低下、特に、加水分解等による収率低下のため好ましくない。反応温度が低いと反応速度が遅くなり好ましくない。
【0026】
本発明の方法によると、原料から反応中間体である下記式(3’)で表される芳香族モノエーテル化合物の生成及び、この反応中間体である芳香族モノエーテル化合物から目的物である芳香族ビスエーテル化合物への変換を促進することができ、反応時間を短縮することが出来る。
【化20】

(式(3’)中、Ar、Ar、R、n、X、Aは式(1)及び(2)のそれと同じである。)
【0027】
<反応終了>
反応の終点は、液体クロマトグラフィーまたはガスクロマトグラフィー分析により確認することができる。目的物である芳香族ビスエーテル化合物(3)の増加が認められなくなった時点又は、芳香族モノエーテル化合物の残存量(高速液体クロマトグラフィーによる組成値)が微量(好適には0.2面積%以下)になった時点を反応の終点とするのが好ましい。反応時間は、反応温度等の反応条件により異なるが、1~30時間程度で終了する。中でも、4~10時間程度で終了する態様が好ましい。
反応終了後、反応液に水を加えて撹拌後、静置して水層を分離する水洗操作を、2回以上複数回実施することにより、反応液中の無機塩を除去又は著しく低減することができる。水洗操作1回の水の使用量は、使用した芳香族ジヒドロキシ化合物(1)100重量部に対して、50~600重量部の範囲で使用することが好ましく、50~400重量部の範囲で使用することがより好ましい。温度としては、60~100℃の範囲が好ましく、70~90℃の範囲がより好ましい。撹拌については、油層が水層と十分に接触すればよく、必要な時間は装置によって異なるが、通常30分程度すれば十分である。水洗操作後の油層から目的物である芳香族ビスエーテル化合物(3)を精製、単離するのが好ましく、例えば、常法に従い、水洗操作後、晶析、ろ過、蒸留、カラムクロマトグラフィー等による分離などの後処理操作を行い、目的物である芳香族ビスエーテル化合物(3)を得ることができる。さらに純度を高めるため、常法に従い蒸留や再結晶、カラムクロマトグラフィーによる精製を行ってもよい。反応終了後の操作においても、不活性ガス雰囲気もしくは低酸素濃度で行うことが好ましく、不活性ガス雰囲気がより好ましい。
【実施例0028】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
分析方法は以下の通りである。
<分析方法>
1.反応液中の芳香族モノエーテル化合物と目的物である芳香族ビスエーテル化合物の組成及び反応終点の確認
測定装置:高速液体クロマトグラフィー分析装置((株)島津製作所製)
ポンプ:LC-20AD
カラムオーブン:CTO-20A
検出器:SPD-20A
カラム:HALO-C18
オーブン温度:50℃
流量:0.7mL/min
検出波長:280nm
・グラジエント条件
移動相:(A)0.2vol%酢酸水溶液、(B)メタノール
(B)体積%(分析開始からの時間)
50%(0分)→100%(10分)→100%(13分)
反応液を上記条件で測定し、検出される全ての成分の全量に対して芳香族モノエーテル化合物の量が0.2面積%以下となった時点で、反応終了とした。
【0029】
<実施例1>
下記反応式に示す反応を行った。詳細な手順は以下のとおりである。
芳香族ジヒドロキシ化合物である1,1’-ビナフタレン-2,2’-ジオール(A)50.0g(0.17モル)、メチルイソブチルケトン125.2g、炭酸カリウム50.9g、ヨウ化カリウム2.6gを4つ口フラスコに仕込み、窒素置換を行った。その後、90℃まで昇温し、減圧下でメチルイソブチルケトンを51.6g留出させた。その後、窒素で常圧に戻して、窒素ガスの導入を停止し、N-メチルピロリドン0.5gを添加したハロゲン化物であるクロロ酢酸エチル53.4g(0.44モル)を、反応液の温度を80℃に保ちながら2時間かけて滴下した。滴下終了後、フラスコ内の温度を80℃に保持しながら、180mL/分(1,1’-ビナフタレン-2,2’-ジオール(A)1モルあたり1031mL/分)の速度で窒素ガスを反応系内に導入し、窒素ガスと共に反応進行に伴い生成する二酸化炭素ガスを反応系内から排出させながら撹拌を続け、滴下終了後10時間で反応を終了した。
滴下終了4、6、8、10時間後における、目的物である芳香族ビスエーテル化合物(B)と、モノエーテル(C)のHPLC分析結果を表1に示す。
【化21】
【0030】
<比較例1>
芳香族ジヒドロキシ化合物である1,1’-ビナフタレン-2,2’-ジオール(A)50.0g(0.17モル)、メチルイソブチルケトン125.0g、炭酸カリウム50.7g、ヨウ化カリウム1.0gを4つ口フラスコに仕込み、窒素置換を行った。その後、90℃まで昇温し、減圧下でメチルイソブチルケトンを50.6g留出させた。その後、窒素雰囲気下で常圧に戻し、N-メチルピロリドン0.5gを添加したハロゲン化物であるクロロ酢酸エチル53.5g(0.44モル)を反応液の温度を80℃に保ちながら2時間かけて滴下した。その後、フラスコ内に窒素ガスを導入せず、フラスコ内の温度を80℃に保持しながら、常圧下で撹拌を続け、滴下終了後22時間で反応を終了した。
滴下終了4、6、12、16、20、22時間後における、目的物である芳香族ビスエーテル化合物(B)と、モノエーテル(C)のHPLC分析結果を表1に示す。
【0031】
<実施例2>
反応温度を90℃とした以外は、実施例1と同様の条件で反応を行った。滴下終了後8時間で反応を終了した。
滴下終了4、6、8時間後における、目的物である芳香族ビスエーテル化合物(B)と、モノエーテル(C)のHPLC分析結果を表1に示す。
【0032】
<比較例2>
フラスコ内に窒素ガスを導入しなかった以外は実施例2と同様の条件で、反応を行った。滴下終了後12時間で反応を終了した。
滴下終了4、8、12時間後における、目的物である芳香族ビスエーテル化合物(B)と、モノエーテル(C)のHPLC分析結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示すとおり、不活性ガス導入下において反応を行う本発明の具体例である実施例1、2は、不活性ガスを導入しない比較例1、2に比べて、目的物である芳香族ビスエーテル化合物を得るための反応時間が大きく短縮され、かつ、芳香族モノエーテル化合物から目的物への変換が促進されることが確認された。
詳しくは、不活性ガスの導入有無の点でのみ反応条件が相違する実施例2と比較例2を比較すると、芳香族モノエーテル化合物の残存量より判断すると反応時間を概略40%程度短縮できることが明らかとなった。