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特開2024-62153形状認識機能を備えたハンド及びハンドリング装置並びにその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062153
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】形状認識機能を備えたハンド及びハンドリング装置並びにその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20240430BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20240430BHJP
   B25J 15/10 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B25J13/08 A
B25J15/08 T
B25J15/10
B25J15/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169979
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】516168920
【氏名又は名称】共栄精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】中村 和歳
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS04
3C707BS07
3C707CU03
3C707DS10
3C707ES04
3C707ET03
3C707EU07
3C707EW14
3C707KS03
3C707KS04
3C707KS07
3C707KS09
3C707KT05
3C707KT12
3C707KX07
3C707LV04
3C707LV05
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で対象物のハンドリングを実施可能にする形状認識機能を備えたハンド及びハンドリング装置並びにその制御方法を提供する。
【解決手段】形状認識機能を備えたハンド14は、対象物40を把持するハンド手段19と、対象物40にライン光41、42を照射する2次元光センサ37、38、及び、ライン光41、42の検出センサ39を備えた形状認識手段20を有し、2次元光センサ37、38は照射するライン光41、42が交差するようにハンド手段19に取付けられ、ハンド手段19及び形状認識手段20の制御手段は、ハンド手段19を予め設定した距離移動させながら、対象物40に対し異なる位置から照射され検出されたライン光41、42から対象物40の3次元形状を特定する処理を行い、これに基づいてハンド手段19に対象物40の把持動作を行わせる。ハンドリング装置10には形状認識機能を備えたハンド14が設けられている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物をハンドリングするハンドリング装置に着脱可能に設けられる形状認識機能を備えたハンドであって、
前記対象物を把持するハンド手段と、
前記ハンド手段に取付けられ、前記対象物にライン光を照射する2つの2次元光センサ、及び、前記対象物に照射されたライン光を検出する検出センサを備えた形状認識手段と、
前記ハンド手段及び前記形状認識手段を制御する制御手段とを有し、
前記形状認識手段の前記2つの2次元光センサは、それぞれが照射するライン光が交差するように前記ハンド手段に取付けられ、
前記制御手段は、前記ハンド手段を予め設定した距離移動させながら、前記対象物に対して異なる位置から照射され検出されたライン光から、該対象物の3次元形状を特定する処理を行い、該特定した3次元形状に基づいて前記ハンド手段に前記対象物の把持動作を行わせることを特徴とする形状認識機能を備えたハンド。
【請求項2】
請求項1記載の形状認識機能を備えたハンドにおいて、前記2つの2次元光センサは、前記対象物へ照射される2つのライン光が直交するように、前記ハンド手段に取付けられていることを特徴とする形状認識機能を備えたハンド。
【請求項3】
請求項2記載の形状認識機能を備えたハンドにおいて、前記ハンド手段は、掌部と、該掌部の外周部に間隔を有して突出状態で取付けられた複数の指部とを有し、前記掌部に前記形状認識手段が取付けられていることを特徴とする形状認識機能を備えたハンド。
【請求項4】
請求項3記載の形状認識機能を備えたハンドにおいて、前記指部の本数は3本であり、少なくとも2本の前記指部の基部が前記掌部に対して回動可能に取付けられ、回動可能に取付けられた2本の前記指部は同じ向きに揃えた状態に配置され、該2本の指部と他の1本の前記指部との間隔が調整可能であることを特徴とする形状認識機能を備えたハンド。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の形状認識機能を備えたハンドが設けられたことを特徴とするハンドリング装置。
【請求項6】
請求項5記載のハンドリング装置において、テレスコピック状に伸縮可能なブーム手段を有し、前記形状認識機能を備えたハンドが前記ブーム手段の先端部に取付けられたことを特徴とするハンドリング装置。
【請求項7】
請求項5記載のハンドリング装置において、複数の関節で構成されるアーム手段を有し、前記形状認識機能を備えたハンドが前記アーム手段の先端部に取付けられたことを特徴とするハンドリング装置。
【請求項8】
請求項5記載のハンドリング装置の制御方法であって、前記2つの2次元光センサにより前記対象物に向けてライン光をそれぞれ照射すると共に、前記検出センサにより前記対象物に照射されたライン光を検出しながら、前記ハンド手段を予め設定した距離移動させることを特徴とするハンドリング装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の3次元形状(3D形状)を認識してハンドリング動作を行う形状認識機能を備えたハンド及びハンドリング装置並びにその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボット(ハンドリング装置)を用いたランダムピッキング技術の開発が大きく進展している。このランダムピッキング技術とは、例えば、箱内にランダムに積上げられたワーク(部品)の中から1つのワークを取出す技術である。
ランダムピッキング技術としては、例えば、以下の技術が開示されている。
特許文献1には、4基のカメラを用いて対象物の3D形状を認識し、ロボットハンドで対象物を取出す技術が開示されている。
特許文献2には、3Dスキャナとカメラを用いて対象物の3D形状を認識し、ロボットハンドで対象物を取出す技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-17739号公報
【特許文献2】特開2020-179355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の技術には未だ解決すべき以下のような問題があった。
特許文献1記載の技術は、4基のカメラとロボットハンドとが別々の構成となっており、4基のカメラを対象物の上方に設置するための設備が必要となるため、設備構成が大掛かりとなる。また、対象物の3D形状を認識するために高度なソフトが必要となり、複雑な初期設定を行う必要もある。なお、初期設定を正確にできなければ、対象物をロボットハンドで掴むための補正ができなくなるおそれがある。
特許文献2記載の技術も、3Dスキャナとカメラを対象物の上方に設置するための設備が必要であり、また、対象物の3D形状を認識するための高度なソフトも必要である。
なお、構成を簡単(コンパクト)にするため、ロボットハンドに3Dスキャナとカメラを取付けることも考えられる。しかし、対象物の3D形状を認識するために距離精度が必要な場合、3Dスキャナとカメラとをある程度間隔を開けて設置しなければならないが、これらをロボットハンドに取付ける場合、その間隔を確保できないという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、簡単な構成で対象物のハンドリングを実施可能にする形状認識機能を備えたハンド及びハンドリング装置並びにその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る形状認識機能を備えたハンドは、対象物をハンドリングするハンドリング装置に着脱可能に設けられる形状認識機能を備えたハンドであって、
前記対象物を把持するハンド手段と、
前記ハンド手段に取付けられ、前記対象物にライン光を照射する2つの2次元光センサ、及び、前記対象物に照射されたライン光を検出する検出センサを備えた形状認識手段と、
前記ハンド手段及び前記形状認識手段を制御する制御手段とを有し、
前記形状認識手段の前記2つの2次元光センサは、それぞれが照射するライン光が交差するように前記ハンド手段に取付けられ、
前記制御手段は、前記ハンド手段を予め設定した距離移動させながら、前記対象物に対して異なる位置から照射され検出されたライン光から、該対象物の3次元形状を特定する処理を行い、該特定した3次元形状に基づいて前記ハンド手段に前記対象物の把持動作を行わせる。
ここで、前記2つの2次元光センサは、前記対象物へ照射される2つのライン光が直交するように、前記ハンド手段に取付けられていることが好ましい。
【0007】
第1の発明に係る形状認識機能を備えたハンドにおいて、前記ハンド手段は、掌部と、該掌部の外周部に間隔を有して突出状態で取付けられた複数の指部とを有し、前記掌部に前記形状認識手段が取付けられていることことが好ましい。
ここで、前記指部の本数は3本であり、少なくとも2本の前記指部の基部が前記掌部に対して回動可能に取付けられ、回動可能に取付けられた2本の前記指部を同じ向きに揃えた状態に配置し、該2本の指部と他の1本の前記指部との間隔を調整可能にすることができる。
【0008】
前記目的に沿う第2の発明に係るハンドリング装置は、第1の発明に係る形状認識機能を備えたハンドが設けられたものである。
ここで、第2の発明に係るハンドリング装置において、テレスコピック状に伸縮可能なブーム手段を有し、前記形状認識機能を備えたハンドを前記ブーム手段の先端部に取付けることができる。
また、第2の発明に係るハンドリング装置において、複数の関節で構成されるアーム手段を有し、前記形状認識機能を備えたハンドを前記アーム手段の先端部に取付けることもできる。
【0009】
前記目的に沿う第3の発明に係るハンドリング装置の制御方法は、前記2つの2次元光センサにより前記対象物に向けてライン光をそれぞれ照射すると共に、前記検出センサにより前記対象物に照射されたライン光を検出しながら、前記ハンド手段を予め設定した距離移動させる。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明に係る形状認識機能を備えたハンドは、対象物を把持するハンド手段と、これに取付けられた形状認識手段と、ハンド手段及び形状認識手段を制御する制御手段とを有するので、従来のような大掛かりな設備が不要となり、装置構成をコンパクトにできる。
特に、形状認識手段は、対象物にライン光を交差した状態で照射する2つの2次元光センサと、対象物に照射されたライン光を検出する検出センサを備えているので、従来使用されていた4基のカメラや3Dスキャナ等が不要となり、安価にできる。
更に、制御手段は、形状認識手段が取付けられたハンド手段を予め設定した距離移動させて対象物の3次元形状を特定する処理を行い、この特定した3次元形状に基づいてハンド手段に対象物の把持動作を行わせるので、従来のように、高度なソフトや初期設定が不要となり、使い勝手が非常に良好である。
また、第2の発明に係るハンドリング装置は、第1の発明に係る形状認識機能を備えたハンドを有し、その制御方法は、2つの2次元光センサにより対象物に向けてライン光をそれぞれ照射すると共に、検出センサにより対象物に照射されたライン光を検出しながら、ハンド手段を予め設定した距離移動させるので、簡単な構成で対象物のハンドリングが実施可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係るハンドリング装置の説明図である。
図2】同ハンドリング装置に設けられた形状認識機能を備えたハンドを上方から視た斜視図である。
図3】同形状認識機能を備えたハンドを斜め下方から視た斜視図である。
図4】同形状認識機能を備えたハンドの底面図である。
図5】同形状認識機能を備えたハンドの回動機構の説明図である。
図6】同形状認識機能を備えたハンドの使用形態の変更方法を示す説明図である。
図7】使用形態を変更した同形状認識機能を備えたハンドを上方から視た斜視図である。
図8】同形状認識機能を備えたハンドを底面から回動機構が視えた状態で示した説明図である。
図9】本発明の一実施の形態に係るハンドリング装置に設けられた形状認識機能を備えたハンドの使用状況を示す説明図である。
図10】同ハンドリング装置の使用方法を示す説明図である。
図11】同ハンドリング装置の他の使用方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るハンドリング装置10は、床面11上を走行可能な台車12と、この台車12上に取付け固定された伸縮可能なブーム手段13と、ブーム手段13の先端部に着脱可能に取付けられた、本発明の一実施の形態に係る形状認識機能を備えたハンド(以下、形状認識ハンドとも記載)14とを有する装置であり、簡単な構成で対象物(図示しない)のハンドリングを実施可能にするものである。なお、形状認識ハンド14で把持する対象物は、特に限定されるものではなく、例えば、各種機器、部品、食品等があり、その形状(例えば、棒状や板状、球状)、質量、大きさは様々である。
以下、詳しく説明する。
【0013】
ブーム手段13は、台車12上に取付け固定された支持台15に、水平面内で回動可能(旋回可能)、かつ、上下方向に傾動可能に設けられている。なお、ブーム手段13の床面11からの高さ(ブーム手段13の傾動支点)は、ブーム手段13が、例えば、水平方向に対して上下方向に±45度(好ましくは30度)の範囲内で傾動可能となるように設定されている。
上記したように、支持台15は台車12上に取付け固定され、ブーム手段13が移動可能な構成となっているが、特に限定されるものではなく、台車以外の他の移動手段に取付け固定して移動可能な構成にすることもでき、また、支持台15を床面11上に取付け固定し、ブーム手段13が移動できない構成とすることもできる。
【0014】
ブーム手段13は、主ブーム部材16と2つ(複数)の進退用ブーム部材17、18を備えている。
主ブーム部材16と進退用ブーム部材17、18は、それぞれ角筒状となって、その内幅が順次小さくなっており、主ブーム部材16内に、2個の進退用ブーム部材17、18が、主ブーム部材16の長手方向(ブーム手段13の伸縮方向)に摺動自在に順次嵌挿され、各進退用ブーム部材17、18が主ブーム部材16に対して進退することで伸縮するテレスコピック状(テレスコープ状)に構成されている。
なお、ブーム手段13は、駆動手段(図示しない)により、主ブーム部材16に対して各進退用ブーム部材17、18が、順次進退するものであるが、並行して(略同時に)進退することもできる。
【0015】
ブーム手段13の先端部(即ち、進退用ブーム部材18の先端部)には、形状認識ハンド14が、ブーム手段13の軸心回りに回転可能、及び/又は、ブーム手段13の軸心に対して傾動可能に取付けられている。
形状認識ハンド14は、図1図5に示すように、ハンド手段19と、このハンド手段19に取付けられた形状認識手段20と、ハンド手段19及び形状認識手段20を制御する制御手段(図示しない)とを有している。
ハンド手段19は、ブーム手段13(進退用ブーム部材18)の先端部に着脱可能な装着部21と、この装着部21に取付け固定された掌部22と、この掌部22の外周部に等ピッチで間隔を有して(正三角形の頂点位置に)掌部22から外方(図2では斜め下方)へ向けて突出状態で取付けられた3本(複数)の指部23~25とを有し、掌部22に形状認識手段20が取付けられている。
【0016】
掌部22は、図2図3に示すように、間隔を有して平行に配置された摺動板26と固定板27を有し、この固定板27に、指部24、25の基部がその軸心を中心として回動可能にそれぞれ取付けられ、他の指部23の基部が回動不能に取付け固定されている。
固定板27は、装着部21に複数のガイドロッド28で連結され、摺動板26は、図1図3に示す、装着部21に取付け固定されたモータ(駆動手段)29により、ガイドロッド28に沿って往復移動可能に取付けられている。
各指部23~25には、対向する指部23~25同士がその先側の間隔を調整できるように、2以上の複数(1つでもよい)の関節30とリンク機構31(シリンダー等で構成)が設けられ、リンク機構31の基端部が摺動板26に回動可能に取付けられている。
これにより、モータ29を用いて摺動板26を往復移動させ、3本の指部23~25同士の間隔を調整することで、ハンド手段19が対象物を把持することができる。
【0017】
また、固定板27には、図4図5に示すように、3本の指部23~25のうち2本の指部24、25を、固定板27(掌部22)に対して同時に回動させるための回動機構32(複数のギア等で構成)が取付けられている。なお、図5は、説明の便宜上、図4に示す後述する取付け板33等を省略している(後述する図6図7図8も同様)。
この回動機構32を動作させ、例えば、図6に示すように、2本の指部24、25の基部を固定板27(掌部22)に対して回動させることで、図7図8に示すように、2本の指部24、25を同じ向きに揃えた状態(間隔を有して平行)に配置することができる。なお、図7図2に示すモータ29を省略している。ここで、回動機構32の動作は、手動又は自動(モータ等)により行うことができる。また、2本の指部24、25は、個別に回動可能な構成にすることもできる。
これにより、2本の指部24、25と他の1本の指部23との間隔を調整可能にでき、対象物を把持することができる。
【0018】
固定板27(掌部22)には、図2図4に示すように、取付け板33を介して形状認識手段20が取付け固定されている。
取付け板33はT字状となって、その3つの突出部34~36が隣り合う指部23、24間、指部23、25間、指部24、25間にそれぞれ位置し、この3つの突出部34~36に、形状認識手段20を構成する、2つの2次元光センサ37、38と検出センサ39がそれぞれ取付け固定されている。
ここで、2次元光センサ37、38とは、対象物にライン光(2次元レーザ等)を照射するラインセンサであり、具体的には、オプテックス・エフエー(株)製のFASTUS(登録商標) 形状測定センサ LSシリーズ等を使用できるが、特に限定されるものではない。
また、検出センサ39とは、2次元光センサから対象物に照射されたライン光を検出するものであり、例えば、公知のイメージセンサ等を使用できるが、特に限定されるものではない。
【0019】
上記した2つの2次元光センサ37、38は、例えば、図9に示すように、対象物の一例であるボルト40に向けてそれぞれが照射するライン光41、42がボルト40から視て交差するように、特に本発明では、2つのライン光41、42が、ボルト40から視て直交するように(ライン光41、42が十字状となるように)、取付け板33(なす角が90度となる位置の突出部34、35)に取付け固定されている。なお、2つのライン光が交差、更には直交する領域は、対象物に照射可能で、後述する対象物の三次元形状を認識可能な領域であれば、特に限定されるものではない。
物体認識において距離精度が必要な場合、従来使用されているカメラ(イメージセンサ)と3Dレーザであれば、両者をある程度間隔を開けて設置することが必要であるが、この両者を1つのハンド手段に取付け固定しようとする場合、間隔を確保できない。
そこで、本発明では、2つの2次元光センサ37、38を各ライン光41、42が交差(更には直交)するようにハンド手段19に取付け固定し、検出センサ39を複合的に利用することで、ボックス43内のボルト40の三次元形状が認識可能となる。
【0020】
制御手段は、ブーム手段13を制御するものであり、ハンド手段19と形状認識手段20を制御するものでもある。
制御手段には、1又は複数のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信インターフェイス(I/F)、入出力I/F、操作部(キーボードやマウス等)、表示部(ディスプレイ)、及び、記憶手段(HDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ))を備える従来公知のコンピュータを使用できる。
ここで、CPUは、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出し、RAMを作業エリアとして制御プログラムを実行する。CPUによる制御プログラムが実行されると、後述する各種処理(ハンドリング装置10の制御方法)が実現される。
【0021】
ブーム手段13の制御には、例えば、支持台15に対してブーム手段13を、水平面内で回動(旋回)させる制御や上下方向に傾動させる制御、また、各進退用ブーム部材17、18を主ブーム部材16に対して進退することでブーム手段13を伸縮させる制御等がある。
ハンド手段19の制御には、例えば、ブーム手段13に対してハンド手段19を、ブーム手段13の軸心回りに回転させる制御や、ブーム手段13の軸心に対して傾動させる制御、また、ハンド手段19の各指部23~25を動かして対象物の把持動作を行わせる制御(摺動板26を介してリンク機構31を動かすモータ29の制御)等がある。
形状認識手段20の制御には、例えば、各2次元光センサ37、38からライン光41、42を照射する制御や、対象物に照射されたライン光41、42を検出センサ39で検出して制御手段に送信する制御等がある。
なお、上記した制御の際の信号の送受信は、無線又は有線により行うことができる。
【0022】
制御手段は更に、対象物の3次元形状を特定する処理を行う。以下、図9を参照しながら説明する。
制御手段はまず、各2次元光センサ37、38からボルト40に対してライン光41、42が照射されるように、かつ、ボルト40に照射されたライン光41、42を検出センサ39で検出できるように、ブーム手段13やハンド手段19を動かす。
次に、制御手段は、各2次元光センサ37、38からボルト40に対してライン光41、42を照射させ、かつ、検出センサ39によりボルト40に照射されたライン光41、42を検出させながら、ブーム手段13及び/又はハンド手段19を動かす。具体的には、ボルト40の全様(ハンド手段19と対向する側の表面)が分かる程度に、ハンド手段19を予め設定した距離(ボルト40のサイズ程度:ここでは多数のボルト40が収容されたボックス43内を)移動させる(即ち、ボックス43内をスキャンする)。
【0023】
これにより、ボルト40に対して異なる位置からライン光41、42が照射され、この照射されたライン光41、42を検出センサ39によって検出することにより、ボルト40の3次元形状を特定する処理を行うことができ、例えば、形状や寸法、置かれた姿勢等を認識することができる。なお、制御手段には、ボルト40の形状や寸法を入力しておくこともでき、この場合は、置かれた姿勢等を認識することができる。
即ち、2つの2次元光センサ37、38をハンド手段19に、それぞれが照射するライン光41、42が交差するように取付けたのは、ハンド手段19を任意の方向に、例えばボルト40のサイズ程度1回動かすことにより、ボルト40を立体測定可能にするためである。従って、検出可能な範囲を広げるためには、ライン光41、42を直交させることが好ましいが、例えば、2つのライン光41、42のなす角が±30度程度以下の範囲内で交差するようにしてもよい。
このようにして特定した3次元形状に基づいて、制御手段はハンド手段19にボルト40の把持動作を行わせる。
【0024】
続いて、本発明の一実施の形態に係るハンドリング装置の制御方法について説明する。
まず作業者は、図1に示すハンドリング装置10を、目的とする場所まで移動させる。
次に、作業者又は制御手段により、図9に示すように、各2次元光センサ37、38からボルト40に対してライン光41、42が照射されるように、かつ、ボルト40に照射されたライン光41、42を検出センサ39で検出できるように、ブーム手段13やハンド手段19を動かす。
そして、制御手段により、各2次元光センサ37、38からボルト40に対してライン光41、42を照射しながら、かつ、検出センサ39でボルト40に照射されたライン光41、42を検出させながら、ブーム手段13及び/又はハンド手段19を予め設定した距離(ここでは、多数のボルト40が収容されたボックス43内をスキャンできる距離)動かす。なお、ハンド手段19の移動(軌跡)は、ライン光41又はライン光42の延長線とは異なる方向に行うことが好ましく、ボックス43内のボルト40の3次元形状を特定できれば、直線的や曲線的、又は、ランダムに行うことができる。
【0025】
このように、ボルト40に対して異なる位置からライン光41、42を照射し、この照射されたライン光41、42を検出センサ39によって検出することにより、ボックス43内のボルト40の3次元形状を特定する処理を行うことができ、例えば、形状や寸法、置かれた姿勢等を認識することができる。
制御手段は、特定した3次元形状に基づいて、ブーム手段13やハンド手段19を、ボルト40を掴むために最も適した状態に動かし、ハンド手段19にボルト40の把持動作を行わせる。
なお、ボックス43内には、多数のボルト40が積み重ねられた状態であるため、3次元形状が特定されたボルト40の把持動作が終了した後は、上記した制御を繰返し行い、新たに特定した3次元形状に基づいて、引き続きボルト40の把持動作を行わせることが好ましい。しかし、例えば、ボルト40が積み重ねられていない場合(一度のスキャンで全体像を認識できる場合)は、上記した制御を再度行う必要はない。
【0026】
以上に示したハンドリング装置10(形状認識機能を備えたハンド14)の適用例としては、図10に示すNC複合旋盤50がある。なお、図10に示すハンドリング装置は、特定位置に固定された状態(移動できない構成)であるため、符号10aとする。
ハンドリング装置10aは、素材用ボックス51内にランダムに置かれた素材(対象物の一例)52を、ハンドリング装置10aのハンド手段14で取出して加工機53に取付けた後、加工が終了した完成品(対象物の一例)54をハンド手段14で取出して、完成品用ボックス55内に置く。なお、符号56は作業者が通る通路である。
この場合、例えば、作業者(パートタイム労働者等)が運んできた大凡の位置に置かれた素材用ボックス51に対して、ハンドリング装置10aのハンド手段14の位置を補正し、概略修正した後に再接近した状態で、形状認識手段20により素材52をスキャンすることによって、その後ハンド手段14によりハンドリング(把持動作)を行うことができる。
【0027】
また、ハンドリング装置10(形状認識機能を備えたハンド14)の他の適用例としては、図11に示す農業収穫現場60がある。なお、図11に示すハンドリング装置は、レール61上を走行する台車62により移動可能な構成であるため、符号10bとする。
農業収穫現場60では、ハンドリング装置10bをレール61に沿って移動させ、特定位置に配置した後、形状認識手段20により畑をスキャンすることにより、収穫対象である、例えば、メロン(対象物の一例)63の位置を認識して、ハンド手段14によりハンドリング(把持動作)を行うことができる。
これにより、メロン63の収穫作業を自動で実施できる。
【0028】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の形状認識機能を備えたハンド及びハンドリング装置並びにその制御方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
前記実施の形態においては、ハンドリング装置がブーム手段を有し、その先端部に形状認識ハンドを取付けた場合について説明したが、ハンドリング装置が複数の関節で構成されるアーム手段を有し、その先端部に形状認識ハンドを取付けることもできる。ここで、アーム手段には、産業用ロボットや協働ロボットのようなロボットアームがあり、例えば、2軸以上の垂直多関節型ロボット(例えば6軸)、極座標型ロボット、円筒座標型ロボット、直角座標型ロボット、水平多関節型ロボット(スカラロボット)、パラレルリンク型ロボット(デルタロボット)等がある。この場合、形状認識ハンドは、ロボットアームのエンドエフェクタ(即ち、グリッパ)として使用され、各種作業に適した把持動作が実施可能になる。
【0029】
また、前記実施の形態においては、ハンド手段が3本の指部を有する場合について説明したが、2本でもよく、また、4本以上(例えば5本程度)でもよい。なお、指部の動きは、全ての指部がそれぞれ独立して動いてもよく、また、同期して動いてもよい(同じ動きをしてもよい)。また、指部の1又は2以上(全部)の基部が、掌部に対して回動可能な構成にすることもできる。
このハンド手段を構成する複数の指部のいずれか1又は2以上(具体的には全部)に、例えば、ハンド手段で把持した対象物の損傷を防止するための緩衝材や、ハンド手段から対象物が滑り落ちることを防止するための滑り止め材等を取付け固定することもできる。なお、指部自体を、その用途に応じて、金属製やプラスチック製(樹脂製)にすることもできる。
【0030】
そして、前記実施の形態においては、ハンド手段が対象物を把持するため、掌部の摺動板をガイドロッドに沿って往復移動させることで、各指部を動かした場合について説明した。しかし、ハンド手段が対象物を把持することができれば(各指部を同時又は個別に動かすことができれば)、特に限定されるものではなく、例えば、各指部にモータ等の駆動部を設けてもよい。
更に、前記実施の形態においては、2つの2次元光センサと検出センサ(形状認識手段)が、取付け板を介してハンド手段(掌部、即ち、固定板)に取付け固定され、ハンド手段に対し動かない構成となった場合について説明した。しかし、2つの2次元光センサ及び検出センサのいずれか1又は2以上を、固定板に対して回動可能及び/又は傾動可能とし、ハンド手段に対し個別に又は全部が動く構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0031】
10、10a、10b:ハンドリング装置、11:床面、12:台車、13:ブーム手段、14:形状認識機能を備えたハンド、15:支持台、16:主ブーム部材、17、18:進退用ブーム部材、19:ハンド手段、20:形状認識手段、21:装着部、22:掌部、23~25:指部、26:摺動板、27:固定板、28:ガイドロッド、29:モータ、30:関節、31:リンク機構、32:回動機構、33:取付け板、34~36:突出部、37、38:2次元光センサ、39:検出センサ、40:ボルト(対象物)、41、42:ライン光、43:ボックス、50:NC複合旋盤、51:素材用ボックス、52:素材(対象物)、53:加工機、54:完成品(対象物)、55:完成品用ボックス、56:通路、60:農業収穫現場、61:レール、62:台車、63:メロン(対象物)
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