(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062160
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】溶接方法および溶接装置
(51)【国際特許分類】
B23K 9/12 20060101AFI20240430BHJP
B23K 9/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B23K9/12 350D
B23K9/12 331S
B23K9/00 330Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169989
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下新原 春菜
(57)【要約】
【課題】溶接の初期位置において溶着量が不足しないようにすることができる溶接方法および溶接装置を提供する。
【解決手段】溶接トーチをウィービングさせながら溶接をする溶接方法であって、溶接トーチをウィービングさせながら初期位置から溶接方向に移動させる第1動作をさせるステップS3と、溶接トーチが第1動作により初期位置から溶接方向において予め定められた位置まで移動した後に、溶接動作中の前記溶接トーチを一旦初期位置まで戻す第2動作をさせるステップS4と、第2動作により一旦初期位置まで戻った溶接トーチを、ウィービングさせながら溶接方向に移動させることにより溶接を継続させる第3動作をさせるステップS5とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接トーチをウィービングさせながら溶接をする溶接方法であって、
前記溶接トーチをウィービングさせながら初期位置から溶接方向に移動させる第1動作をさせるステップと、
前記溶接トーチが前記第1動作により前記初期位置から前記溶接方向において予め定められた位置まで移動した後に、溶接動作中の前記溶接トーチを一旦前記初期位置まで戻す第2動作をさせるステップと、
前記第2動作により一旦前記初期位置まで戻った前記溶接トーチを、ウィービングさせながら前記溶接方向に移動させることにより溶接を継続させる第3動作をさせるステップとを備える、溶接方法。
【請求項2】
前記溶接トーチのウィービングは、ウィービングの軌跡が円形状となる動作である、請求項1に記載の溶接方法。
【請求項3】
前記第1動作による溶接、前記第2動作による溶接、および、前記第3動作による溶接は、一定の溶接電流により実行される、請求項1または請求項2に記載の溶接方法。
【請求項4】
溶接トーチをウィービングさせながら溶接をする溶接装置であって、
前記溶接トーチをウィービングさせる駆動装置と、
前記駆動装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記溶接トーチをウィービングさせながら初期位置から溶接方向に移動させる第1動作をさせる第1制御と、
前記溶接トーチが前記第1動作により前記初期位置から前記溶接方向において予め定められた位置まで移動した後に、溶接動作中の前記溶接トーチを一旦前記初期位置まで戻す第2動作をさせる第2制御と、
前記第2動作により一旦前記初期位置まで戻った前記溶接トーチを、ウィービングさせながら前記溶接方向に移動させることにより溶接を継続させる第3動作をさせる第3制御とを行なう、溶接装置。
【請求項5】
前記溶接トーチのウィービングは、ウィービングの軌跡が円形状となる動作である、請求項4に記載の溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接方法および溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、溶接トーチをウィービングさせて溶接をする溶接方法および溶接装置としては、溶接の開始位置から終了位置まで間の途中において、ウィービングの動作を変化させるものがあった(特許文献1)。このような従来の溶接方法および溶接装置では、溶接をするロボットが開始位置から終了位置に到達するまでは第1の振幅でウィービングの動作をさせ、そのロボットが指定点から終了位置に到達するまでは第2の振幅でウィービングの動作をさせる制御が行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された従来の溶接方法および溶接装置では、アークの発生開始のような溶接動作の開始と同時にウィービングの動作が開始されるので、溶接の開始位置である初期位置において溶着量が不足するという問題があった。
【0005】
本開示は、溶接の初期位置において溶着量が不足しないようにすることができる溶接方法および溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に係る溶接方法は、溶接トーチをウィービングさせながら溶接をする溶接方法であって、溶接トーチをウィービングさせながら初期位置から溶接方向に移動させる第1動作をさせるステップと、溶接トーチが第1動作により初期位置から溶接方向において予め定められた位置まで移動した後に、溶接動作中の前記溶接トーチを一旦初期位置まで戻す第2動作をさせるステップと、第2動作により一旦初期位置まで戻った溶接トーチを、ウィービングさせながら溶接方向に移動させることにより溶接を継続させる第3動作をさせるステップとを備える。
【0007】
本開示の他の局面に係る溶接装置は、溶接トーチをウィービングさせながら溶接をする溶接装置であって、溶接トーチをウィービングさせる駆動装置と、駆動装置を制御する制御装置とを備える。制御装置は、溶接トーチをウィービングさせながら初期位置から溶接方向に移動させる第1動作をさせる第1制御と、溶接トーチが第1動作により初期位置から溶接方向において予め定められた位置まで移動した後に、溶接動作中の溶接トーチを一旦初期位置まで戻す第2動作をさせる第2制御と、第2動作により一旦初期位置まで戻った溶接トーチを、ウィービングさせながら溶接方向に移動させることにより溶接を継続させる第3動作をさせる第3制御とを行なう。
【発明の効果】
【0008】
本開示の溶接方法および溶接装置によれば、溶接の初期位置において溶着量が不足しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1の溶接方法および溶接装置を実施するための溶接装置の構成図である。
【
図2】実施の形態1の溶接方法および溶接装置で行なわれるウィービングの制御を説明する図である。
【
図3】実施の形態1の制御装置により実行される溶接トーチのウィービングの動作制御に関する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、複数の実施の形態について説明するが、各実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1の溶接方法および溶接装置を実施するための溶接装置1の構成図である。
【0012】
溶接装置1は、ロボット2、溶接トーチ3、溶接電源装置4、制御装置5、および、コントローラ6を含む。
【0013】
ロボット2は、多関節ロボットであり、溶接作業のために溶接トーチ3を自動的に移動させるものである。ロボット2は、フロア等にベース部材が固定され、ベース部材に複数のアームが、順に軸を介して連結されている。ロボット2において、最先端のアームには、溶接トーチ3が取り付けられている。溶接トーチ3の先端からは、ワイヤ送給装置(図示省略)によって送り出された溶接ワイヤの先端が消耗電極として突出する。
【0014】
溶接ワイヤと溶接電源装置4とが電気的に接続されている。溶接対象材となる母材7と溶接電源装置4とが電気的に接続されている。溶接電源装置4は、溶接ワイヤと母材7との間に、アーク溶接電圧を印加することにより、アーク溶接電流を通電する。
【0015】
ロボット2は、ベース部材および各アームに設けられた各サーボモータ(図示省略)が、制御装置5からの駆動信号に応じて、複数のアームを回転駆動することにより、溶接トーチ3を動作させる。各サーボモータは、サーボモータの駆動装置21により駆動される。駆動装置21は、制御装置5からの駆動信号を受けて、各サーボモータを駆動する。
【0016】
制御装置5は、ロボット2および溶接電源装置4を制御する。制御装置5は、予め教示されて記憶した位置情報に基づいて、ロボット2に制御信号を出力し、駆動装置21によって、ロボット2の各サーボモータを回転駆動させることにより、溶接トーチ3を溶接方向に移動させる制御を行なう。そして、制御装置5は、予め定められたウィービング動作の設定に応じて、溶接の進行方向(溶接方向)に対して交差する方向に溶接トーチ3を揺動させるウィービング動作をさせる。
【0017】
制御装置5は、さらに、アークを通電する溶接電流の制御、溶接ワイヤと母材7との間に印加される溶接電圧の制御、および、溶接トーチ3における溶接ワイヤの送り速度の制御等も行なう。
【0018】
制御装置5は、CPU(Central Processing Unit)51、メモリ52(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ等を含む各種記憶装置)、および、各種信号を入出力するための入出力バッファ(図示省略)等を含むコンピュータにより構成される。
【0019】
CPU41は、ROMに格納されているソフトウェアプログラムをRAM等に展開して実行する。ROMには、ロボット2を制御するための各種プログラム、および、溶接電源装置4を制御するための各種プログラムに加え、溶接電源装置4の制御およびロボット2の制御に用いられる各種のデータが記憶されている。CPU41は、メインルーチンプログラムを実行するとともに、メインルーチンプログラムにおいて各種の制御をするためのサブルーチンプログラムを呼び出して実行することにより、前述のような各種の制御を行なう。
【0020】
ロボット2を制御するための各種プログラムには、後述するような、溶接トーチ3をウィービングさせながら溶接方向へ移動させる制御をするプログラムが含まれる。また、溶接電源装置4を制御するための各種プログラムには、溶接電流および溶接電圧を制御するプログラム、および、溶接ワイヤの送り速度を制御するプログラムが含まれる。
【0021】
コントローラ6は、各種の入力操作が可能な操作部を備えた装置であり、制御装置5と接続されている。コントローラ6では、例えば、溶接トーチ3の溶接方向への移動動作の設定、および、溶接トーチ3のウィービング動作の設定等の各種の制御をするための設定データを入力することが可能である。
【0022】
図2は、実施の形態1の溶接方法および溶接装置で行なわれるウィービングの制御を説明する図である。
図2においては、母材7として第1母材71と第2母材72とを溶接する場合における溶接トーチ3のウィービングの動作が示されている。
【0023】
図2を参照して、溶接トーチ3のウィービングは、図中の曲線矢印で示されるように、溶接動作の初期位置81から開始され、円形を描くような回転動作をする動作パターンで溶接トーチ3が動作することにより行なわれる。つまり、溶接トーチ3のウィービングは、ウィービングの軌跡73が円形状となるような動作である。このようなウィービングは、溶接トーチ3が溶接方向Aに進行しながら行なわれる。
【0024】
溶接トーチ3がウィービングの動作をしながら溶接方向Aに進行することにより、第1母材71と第2母材72との接合部の近傍に略一定幅の溶接ビード74が形成され、第1母材71と第2母材72とが溶接される。
【0025】
図2に示すように、溶接トーチ3のウィービングは、図中の曲線矢印で示されるように、溶接トーチ3の先端が、第1母材71上および第2母材72上にわたり、円形を描くような動作をする動作パターンを繰返すことにより行なわれる。このようなウィービングは、溶接トーチ3が溶接の初期位置(開始位置)81から溶接方向Aに進行しながら行なわれる。具体的に、溶接トーチ3の溶接位置は、溶接方向Aへの進行方向で考えると、溶接方向への前進と、溶接方向の逆方向への後退とを繰り返しながら、溶接方向Aへ進行していくパターンとなる。
図2では、溶接トーチ3におけるウィービングの進行速度と溶接方向Aへの進行速度との関係で、各ウィービングの軌跡73の円形が、前回のウィービングの円形と重なるように、溶接トーチ3が溶接方向Aに進行しながらウィービングする例が示されている。
図2に示すように、溶接トーチ3におけるウィービングは、ウィービングによる描く円形の大きさ(例えば径方向の大きさ)が、同じ大きさとなるように行なわれる。
【0026】
このように、円形を描くような回転動作をする動作パターンで溶接トーチ3が動作するウィービングにおいて、特徴的の一つは、1回転目のウィービングにおいて、溶接トーチ3を、予め定められた前進位置82から一旦初期位置81まで戻す制御が行なわれることである。
【0027】
溶接トーチ3のウィービングの動作は、次のような3つの動作をする制御に分けて考えることができる。制御装置5では、次のような制御が行なわれる。まず、溶接トーチ3をウィービングさせながら初期位置81から溶接方向Aに移動させる第1動作をさせる第1制御が実行される。その後、溶接トーチ3が第1動作により初期位置81から溶接方向Aにおいて予め定められた前進位置82まで移動した後に、溶接動作中の溶接トーチ3を一旦初期位置81まで戻す第2動作をさせる第2制御が実行される。そして、第2動作により一旦初期位置81まで戻った溶接トーチ3を、ウィービングさせながら溶接方向に移動させることにより溶接の終了位置まで溶接を継続させる第3動作をさせる第3制御が実行される。このような第1制御~第3制御が実行されている場合における溶接電流は、一定の電流値にされている。
【0028】
制御装置5では、このような第1制御~第3制御を一連の制御として実行するためにロボット2を駆動するプログラムを実行することにより、ロボット2に制御信号を送る。ロボット2では、制御装置5から送られてきた制御信号に応じて、駆動装置21が複数のアームを動作させ、
図2に示すようなウィービングをしながら溶接が進行するように、溶接トーチ3を動作させる制御をする。また、制御装置5では、このような第1制御~第3制御を実行する場合の電流値を一定にするための溶接ワイヤの送り速度の制御信号を溶接電源装置4に送る。
【0029】
次に、制御装置5のCPU51により実行される溶接トーチ3のウィービングの動作制御に関する制御処理の一例を説明する。
図3は、実施の形態1の制御装置5により実行される溶接トーチ3のウィービングの動作制御に関する制御処理の一例を示すフローチャートである。
図3の制御処理は、サブルーチンプログラムであり、周期的にメインルーチンプログラムから呼び出されて実行される。
【0030】
ステップS1では、現在の状態が1回転目のウィービングであるか否かが判断される。ステップS1で1回転目のウィービングであると判断された場合は、ステップS2により、溶接トーチ3が溶接方向において予め定められた前進位置82に到達済であるかかが判断される。溶接トーチ3が前進位置82に到達済であるか否かは、ロボット2を駆動する制御プログラムの進行状態に基づいて確認することが可能である。
【0031】
ステップS2で予め定められた前進位置82に到達済ではないと判断された場合は、ステップS3により、溶接トーチ3が円形を描くウィービングをしながら溶接方向Aに進行することにより溶接をする第1動作を実行させ、メインルーチンプログラムにリターンする。
【0032】
一方、ステップS2で予め定められた前進位置82に到達済であると判断された場合は、ステップS4により、溶接トーチ3がウィービングをしながら初期位置81に戻ることにより初期位置81の溶接をする第2動作を実行させ、メインルーチンプログラムにリターンする。
【0033】
前述のステップS1で1回転目のウィービングではないと判断された場合は、ステップS5により、溶接トーチ3が円形を描くウィービングをしながら溶接方向に進行することにより終了位置まで溶接を継続する第3動作を実行させ、メインルーチンプログラムにリターンする。
【0034】
以上に説明した制御処理が繰り返し実行されることにより、
図2に示したようなウィービングが溶接の初期位置81から終了位置まで行なわれる。このようなウィービングが行なわれる場合には、1回転目のウィービングにおいて、第1動作により溶接方向に進行した溶接トーチ3が、予め定められた前進位置82から初期位置81に第2動作により戻ってきた後、第3動作により、終了位置まで溶接が継続される。初期位置81から溶接方向に進行した溶接トーチ3が一旦初期位置81に戻ることにより、溶接動作の開始時に溶接の初期位置において溶着量が不足した場合であっても、戻ってきた溶接トーチ3により溶着量が補われるので、溶接の初期位置81において溶着量が不足しないようにすることができる。
【0035】
また、溶接の初期位置81において溶着量が不足しないようにするためには、溶接トーチ3を初期位置81から溶接方向へ移動を開始させるタイミングに遅延時間を設定したり、溶接トーチ3を初期位置から溶接方向へ移動を開始させるが当初の期間における溶接電流値(初期溶接電流値)を、その後のウィービング動作時の溶接電流値よりも大きくすることが考えらえる。しかし、実施の形態1のようなウィービングをさせれば、溶接トーチ3の移動開始時における複雑な初期条件の調整をすることなく、溶接の初期位置において溶着量が不足しないようにすることができる。
【0036】
また、
図2および
図3に示されるウィービングは、ウィービングの軌跡73が円形状となる動作であるので、溶接トーチ3を一旦初期位置81に戻す動作を容易化することができる。
【0037】
また、
図2および
図3に示されるウィービングは、一定の溶接電流で実行されるので、溶接電流を変化させる必要がないため、溶接電流の制御を容易化することができる。
【0038】
実施の形態1によるウィービングでは、下記のような条件で溶接をした結果、溶接の初期位置81において溶着量が不足しないようにすることできた。
【0039】
〈第1例〉溶接ワイヤの正送と逆送とをさせることで短絡とアークとを発生させる溶接方法を使用し、厚さ2mmの硬質アルミニウムにおいてT隅肉溶接を行なった。その場合の溶接条件としては、ねらい角度が45度、前進角度が10度、溶接電流の設定値が150A、溶接電圧の設定値が11.0V、溶接速度が80cm/min、円形のウィービング動作の半径が2.5mm、ウィービング動作の周波数が4.0Hzであった。
【0040】
〈第2例〉溶接ワイヤの正送と逆送とをさせることで短絡とアークとを発生させる溶接方法を使用し、厚さ2mmの硬質アルミニウムにおいて重ね隅肉溶接例を行なった。その場合の溶接条件としては、ねらい角度が30度、前進角度が10度、溶接電流の設定値が150A、溶接電圧の設定値が11.0V、溶接速度が80cm/min、円形のウィービング動作の半径が2.0mmm、ウィービング動作の周波数が3.5Hzであった。
【0041】
[実施の形態2]
次に、実施の形態2の溶接方法および溶接装置について説明する。実施の形態2としては、ウィービングの軌跡が円形状以外の形状である場合において、予め定められた前進位置まで移動した溶接トーチ3を一旦初期位置に戻す例を説明する。
【0042】
実施の形態2の溶接方法および溶接装置としては、例えば、ウィービングの軌跡が波形状である場合に、予め定められた前進位置まで移動した溶接トーチ3を一旦初期位置に戻す制御を実行してもよい。例えば、溶接の初期位置から溶接方向に向かって、波形の1周期または1/2周期の位置を予め定められた前進位置とすればよい。制御装置5は、1回目のウィービングでその前進位置まで溶接トーチ3を動作させる第1動作の制御を実行し、溶接トーチ3が当該前進位置に到達すると、溶接トーチ3を、波形の軌跡を描いて初期位置まで戻す第2動作の制御を実行し、その後、溶接トーチ3により波形の軌跡を描きながら溶接の終了位置まで溶接を継続させる第3動作の制御を実行すればよい。
【0043】
このような実施の形態2の場合にも、実施の形態1で得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0044】
[変形例]
次に実施の形態についての各種の変形例を説明する。
【0045】
(1) 実施の形態1では、ウィービングの軌跡73が円形状である場合を説明したが、その円形状には、真円形状、楕円形状、および、略円形状が含まれる。このように、実施の形態1のウィービングの軌跡73の形状は、少なくとも略円形状であってもよい。その場合の略円形状には、円弧を複数組合せて形成されるような形状が含まれてもよい。
【0046】
(2) 実施の形態1では、ウィービングの軌跡73が1回転目以降のウィービングで同一の大きさ(径方向の大きさ)の円形状である場合を説明した。しかし、これに限らず、初期位置に戻る1回転のウィービングの大きさ(径方向の大きさ)が、2回転目以降のウィービングの大きさ(径方向の大きさ)よりも小さくなるように、別途設定できるようにしてもよい。そのようにすれば、より早期に初期位置の溶着量を補うことができる。
【0047】
(3) 実施の形態1および実施の形態2では、予め定められた前進位置から初期位置に戻る場合に、それまでに実行していた基本的なウィービング動作と同様の動作で戻る例を説明した。しかし、これに限らず、例えば、予め定められた前進位置から初期位置に戻る場合のウィービング動作は、それまでに実行していた基本的なウィービング動作と異なる動作で実行してもよい。例えば、実施の形態1の場合には、初期位置に戻る場合のウィービングの円形の大きさを、それまでに実行していた基本的なウィービングの円形の大きさと異なるようにしてもよい。また、実施の形態2の場合には、初期位置に戻る場合のウィービングの波形の周波数を、それまでに実行していた基本的なウィービングの波形の周波数と異なるようにしてもよい。
【0048】
(4) 実施の形態1では、ウィービングの軌跡73の円形が、前回のウィービングの円形と重なるようにする場合を示した。しかし、これに限らず、ウィービングの軌跡の円形は、前回のウィービングの円形と重なるようにしてもよい。
【0049】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
3 溶接トーチ、81 初期位置、82 前進位置、5 制御装置、21 駆動装置、1 溶接装置。