(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062161
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240430BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240430BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169992
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 健
(72)【発明者】
【氏名】富本 尚也
(72)【発明者】
【氏名】立川 克之
(72)【発明者】
【氏名】垣見 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】明本 斉
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AC03
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA39
5H127BA57
5H127BA58
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB10
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB40
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE24
5H127EE29
5H127FF10
(57)【要約】
【課題】燃料電池スタックの内圧を適正な値に保ちつつ、燃料電池スタックでの生成水の溜まりを抑制する。
【解決手段】燃料電池システム20は、アノードガス及びカソードガスが供給されることによって発電する燃料電池スタック22と、カソードガスと燃料電池スタック22での発電によって生成された生成水とが燃料電池スタック22から排出される排出流路37と、排出流路37に設けられ、開度の調整によって燃料電池スタック22の内圧を調整可能な調圧弁41と、を備える。燃料電池システム20は、排出流路37の一部の流路断面積を小さくして燃料電池スタック22の内圧を昇圧させる絞り部55を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードガス及びカソードガスが供給されることによって発電する燃料電池スタックと、
前記カソードガスと前記燃料電池スタックでの発電によって生成された生成水とが前記燃料電池スタックから排出される排出流路と、
前記排出流路に設けられ、開度の調整によって前記燃料電池スタックの内圧を調整可能な調圧弁と、を備える燃料電池システムであって、
前記排出流路の一部の流路断面積を小さくして前記燃料電池スタックの内圧を昇圧させる絞り部を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記絞り部は、前記排出流路のうちで前記調圧弁よりも下流側に設けられる請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記排出流路は、重力方向に直交する直交方向に延びる延出流路を含み、
前記絞り部は、前記延出流路のうちで重力方向の下部を除いた部分に設けられ、
前記生成水は、前記下部を通じて前記延出流路を通過可能である請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の燃料電池システムは、燃料電池スタックと、排出流路と、排出流路に設けられる調圧弁と、を備える。燃料電池スタックは、アノードガス及びカソードガスが供給されることによって発電する。排出流路には、カソードガスと燃料電池スタックでの発電によって生成された生成水とが燃料電池スタックから排出される。調圧弁は、開度の調整によって燃料電池スタックの内圧を調整可能である。燃料電池スタックの内圧を高めるために、調圧弁の開度が小さくされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調圧弁の開度が小さくされるとき、調圧弁の開度によっては、排出流路のうち調圧弁よりも上流側から下流側に生成水が流れにくくなることにより、生成水が燃料電池スタックに溜まるおそれがある。燃料電池スタックに多量の生成水が溜まると、燃料電池スタックの発電量に影響が及ぶおそれがある。排出流路のうち調圧弁よりも上流側から下流側に生成水が流れるように調圧弁の開度を比較的大きく調整すれば、燃料電池スタックに生成水が溜まることは抑制できる。しかしながら、調圧弁の開度が大きくされることにより、燃料電池スタックの内圧が適正の値よりも低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する燃料電池システムは、アノードガス及びカソードガスが供給されることによって発電する燃料電池スタックと、前記カソードガスと前記燃料電池スタックでの発電によって生成された生成水とが前記燃料電池スタックから排出される排出流路と、前記排出流路に設けられ、開度の調整によって前記燃料電池スタックの内圧を調整可能な調圧弁と、を備える燃料電池システムであって、前記排出流路の一部の流路断面積を小さくして前記燃料電池スタックの内圧を昇圧させる絞り部を備えることを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、排出流路のうちで絞り部が設けられた部分をカソードガスが流れる際に圧損が生じる。これにより、絞り部を排出流路に設けない場合と比較して、燃料電池スタックの内圧が上昇する。そのため、燃料電池スタックに生成水が溜まることを抑制すべく、調圧弁の開度を比較的大きく調整しても、燃料電池スタックの内圧を適正な値で得られる。したがって、燃料電池スタックの内圧を適正な値に保ちつつ、燃料電池スタックでの生成水の溜まりを抑制できる。
【0007】
燃料電池システムにおいて、前記絞り部は、前記排出流路のうちで前記調圧弁よりも下流側に設けられてもよい。
上記構成によれば、絞り部が排出流路のうちで調圧弁よりも上流側に設けられる場合よりも、燃料電池スタックと調圧弁との間の排出流路の部分を生成水が流れやすくなる。したがって、燃料電池スタックからの生成水の排水性を向上できるため、燃料電池スタックでの生成水の溜まりをさらに抑制できる。
【0008】
燃料電池システムにおいて、前記排出流路は、重力方向に直交する直交方向に延びる延出流路を含み、前記絞り部は、前記延出流路のうちで重力方向の下部を除いた部分に設けられ、前記生成水は、前記下部を通じて前記延出流路を通過可能であってもよい。
【0009】
上記構成によれば、絞り部が延出流路のうちで重力方向の下部を含んだ部分に設けられる場合と比較して、排出流路のうちで絞り部よりも上流側から下流側へと生成水が流れやすくなる。したがって、燃料電池スタックでの生成水の溜まりをさらに抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、燃料電池スタックの内圧を適正な値に保ちつつ、燃料電池スタックでの生成水の溜まりを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】燃料電池システムの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、燃料電池システムを具体化した実施形態について図面にしたがって説明する。
図1に示すように、産業車両10は、負荷11と、電力変換部12と、キースイッチ13と、燃料電池システム20と、を備える。産業車両10は、例えば、フォークリフト又はトーイングトラクタである。
【0013】
負荷11は、電力によって駆動する装置である。負荷11は、例えば、電力によって駆動する電動機である。この電動機の駆動によって産業車両10は走行する。
電力変換部12は、燃料電池システム20から電力変換部12に入力された電力を変換して出力する。電力変換部12は、DC/DCコンバータ、及びインバータを含む。電力変換部12から出力された電力は負荷11に供給される。これにより負荷11は駆動する。
【0014】
キースイッチ13は、産業車両10のユーザによって操作される。ユーザによる操作によって、キースイッチ13はオンとオフとで切り替えられる。以下の説明において、キースイッチ13がオフされることをキーオフと称し、キースイッチ13がオンされることをキーオンと称する場合がある。
【0015】
<燃料電池システム>
燃料電池システム20は、例えば、カソード系30と、アノード系60と、希釈器69と、制御部80と、を有する。燃料電池システム20は、燃料電池スタック22を備える。
【0016】
燃料電池スタック22は、複数の燃料電池セル22aをスタック化したものである。燃料電池セル22aは、例えば、固体分子型燃料電池である。複数の燃料電池セル22aは、筐体21に収容される。燃料電池スタック22は、アノードガス及びカソードガスが供給されることによって発電する。燃料電池セル22aは、アノードガスが供給されるアノード極と、カソードガスが供給されるカソード極と、アノード極とカソード極との間に配置されている電解質膜と、を備える。燃料電池セル22aは、セパレータによって挟まれている。燃料電池セル22aにおいては、発電に伴って生成水Wが生成される。生成水Wとは、燃料電池スタック22での発電によって生成される水である。
【0017】
カソード系30は、カソード流路30aを備える。カソード流路30aは、筐体21の内部に位置するカソード内部流路23を備える。カソード内部流路23にはカソードガスが流れる。カソード内部流路23の一部は、例えば、各燃料電池セル22aにおけるカソード極に向かい合うセパレータに設けられている。
【0018】
筐体21には、カソード供給口24が形成されている。カソードガスは、カソード供給口24からカソード内部流路23に供給される。筐体21には、カソード排出口25が形成されている。カソードガスは、カソード排出口25からカソード内部流路23外に排出される。
【0019】
アノード系60は、アノード流路60aを備える。アノード流路60aは、筐体21の内部に位置するアノード内部流路26を備える。アノード内部流路26にはアノードガスが流れる。アノード内部流路26は、例えば、各燃料電池セル22aにおけるアノード極に向かい合うセパレータに設けられている。
【0020】
筐体21には、アノード供給口27が形成されている。アノードガスは、アノード供給口27からアノード内部流路26に供給される。筐体21には、アノード排出口28が形成されている。アノードガスは、アノード排出口28からアノード内部流路26外に排出される。
【0021】
アノード内部流路26を流れるアノードガスと、カソード内部流路23を流れるカソードガスと、が反応することにより、燃料電池スタック22は発電を行う。言い換えると、燃料電池スタック22は、アノード流路60aに供給されたアノードガスとカソード流路30aに供給されたカソードガスとの反応によって発電を行う。なお、カソードガスは、酸化剤ガスである。酸化剤ガスとしては、例えば、空気中の酸素を挙げることができる。アノードガスは、燃料ガスである。燃料ガスとしては、例えば、水素ガスを挙げることができる。
【0022】
アノード系60は、タンク61と、アノードガス供給部62と、気液分離器65と、循環ポンプ66と、アノード排水弁67と、を備える。アノード流路60aは、供給路63と、循環路64と、を備える。
【0023】
タンク61は、アノードガスを貯留している。アノードガス供給部62には、タンク61からアノードガスが供給される。アノードガス供給部62は、燃料電池スタック22に供給されるアノードガスの量を調整するための部材である。燃料電池スタック22に供給されるアノードガスの量は、アノードガス供給部62を制御することで調整可能である。アノードガス供給部62としては、例えば、インジェクタなどの電磁弁を用いることができる。
【0024】
供給路63は、アノードガス供給部62とアノード供給口27とを接続している。アノードガス供給部62から噴射されたアノードガスは、供給路63を通じて燃料電池スタック22に供給される。
【0025】
循環路64は、アノード排出口28と供給路63とを接続している。循環路64には、アノード排ガスが流れる。アノード排ガスは、未反応のアノードガスと、燃料電池スタック22での発電によって生成された生成水Wと、を含む。循環路64は、アノード排ガスに含まれる未反応のアノードガスを供給路63に戻すための通路である。
【0026】
気液分離器65は、循環路64に設けられている。気液分離器65は、アノード排ガスをアノードガスと生成水Wとに分離する。アノード排ガスから分離された生成水Wは、気液分離器65に貯留される。
【0027】
循環ポンプ66は、循環路64に設けられている。循環ポンプ66は、気液分離器65によってアノード排ガスから分離されたアノードガスを供給路63に供給する。これにより、アノードガスが循環する。
【0028】
アノード排水弁67は、気液分離器65に接続されている。アノード排水弁67は、開状態と閉状態に切り替えられる。アノード排水弁67が開状態になると、気液分離器65から生成水Wが排出される。アノード排水弁67は、気液分離器65に貯留される生成水Wの量が閾値を上回った場合に閉状態から開状態に切り替えられてもよい。アノード排水弁67は、所定の時間間隔毎に閉状態から開状態に切り替えられてもよい。
【0029】
気液分離器65は、希釈器69に接続されている。アノード排水弁67が開状態になると、気液分離器65に貯留された生成水W及びアノード排ガスが希釈器69に供給される。
【0030】
希釈器69には、気液分離器65から排出されたアノード排ガス、及び燃料電池スタック22から排出されたカソード排ガスが流入する。希釈器69は、流入したアノード排ガスをカソード排ガスで希釈する。希釈器69は、アノード排ガスにおける水素ガスの濃度を低下させる。希釈器69は、水素ガスの濃度を低下させた排出ガスをガス排出路70に排出する。ガス排出路70からは、排出ガスが排出される。
【0031】
カソード系30は、カソードガス吸入口31と、電動圧縮機32と、インタークーラ33と、封止弁40と、調圧弁41と、を備える。言い換えると、燃料電池システム20は、調圧弁41を備える。カソード流路30aは、供給流路34と、排出流路37と、を備える。言い換えると、燃料電池システム20は、排出流路37を備える。
【0032】
カソードガス吸入口31は、燃料電池システム20にカソードガスを吸入するための吸入口である。カソードガスとして空気中の酸素を用いる場合、カソードガス吸入口31は大気に開放されていてもよい。カソードガス吸入口31は、カソードガスを貯蔵するガスボンベに接続されていてもよい。
【0033】
電動圧縮機32は、不図示の電動モータによって駆動する。電動圧縮機32は、燃料電池スタック22へのカソードガスの供給量を調整する。詳細には、電動圧縮機32は、カソードガス吸入口31から供給されるカソードガスを圧縮して燃料電池スタック22に供給する。燃料電池スタック22に供給されるカソードガスの量は、電動圧縮機32を制御することで調整可能である。カソードガスは、カソードガス吸入口31から不図示のエアクリーナを通って電動圧縮機32に供給されてもよい。電動圧縮機32から燃料電池スタック22に供給されたカソードガスは、カソード内部流路23を流れる。
【0034】
インタークーラ33には、電動圧縮機32から吐出されたカソードガスが供給される。インタークーラ33は、電動圧縮機32から供給されたカソードガスを冷却する。燃料電池スタック22に供給されるカソードガスは、インタークーラ33によって冷却された後のカソードガスである。
【0035】
供給流路34は、カソード流路30aのうち、カソード内部流路23よりも上流側に位置する部分である。供給流路34は、電動圧縮機32と筐体21のカソード供給口24とを接続している。供給流路34は、第1供給流路35と、第2供給流路36と、を含む。第1供給流路35は、電動圧縮機32とインタークーラ33とを接続している。第2供給流路36は、インタークーラ33と筐体21のカソード供給口24とを接続している。
【0036】
封止弁40は、供給流路34に設けられている。本実施形態の封止弁40は、第2供給流路36に設けられている。封止弁40は、第1供給流路35に設けられていてもよい。封止弁40は、例えばバタフライ弁である。封止弁40は、開状態と閉状態とに切り替えられる。封止弁40が開状態になると、供給流路34を介してカソード内部流路23にカソードガスが供給される。封止弁40が閉状態になると、カソード内部流路23が封止される。
【0037】
制御部80は、プロセッサ81と、記憶部82と、を備える。記憶部82は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部82は、処理をプロセッサ81に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部82、すなわち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御部80は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御部80は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ81、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0038】
制御部80は、例えば、燃料電池スタック22の出力電力[kW]を制御する。燃料電池スタック22の出力電力は、燃料電池スタック22に供給されるカソードガスの量と、燃料電池スタック22に供給されるアノードガスの量と、によって変化する。燃料電池スタック22の出力電力は、燃料電池スタック22の発電電力である。制御部80は、アノードガス供給部62を制御することで、燃料電池スタック22へのアノードガスの供給量を制御する。制御部80は、電動圧縮機32を制御することで、燃料電池スタック22へのカソードガスの供給量を制御する。
【0039】
制御部80は、燃料電池スタック22の発電についての制御を行う。制御部80は、燃料電池スタック22の発電状態と発電停止状態とを切り替える。発電状態は、低負荷発電状態、中負荷発電状態、及び高負荷発電状態を含む。制御部80は、燃料電池スタック22の発電状態を遷移させることで、燃料電池スタック22の発電電力を段階的に変化させることができる。
【0040】
制御部80は、燃料電池スタック22の発電電力の目標値である目標電力Etを変更することにより、燃料電池スタック22の発電状態を切り替えている。燃料電池スタック22は、第1目標電力E1と、第2目標電力E2と、を含む複数の目標電力Etに切り替えられながら発電している。詳細には、燃料電池スタック22を高負荷発電状態に制御するとき、制御部80は目標電力Etを第1目標電力E1として制御を行う。燃料電池スタック22を中負荷発電状態に制御するとき、制御部80は目標電力Etを第2目標電力E2として制御を行う。燃料電池スタック22を低負荷発電状態に制御するとき、制御部80は目標電力Etを第3目標電力E3として制御を行う。第3目標電力E3は、第2目標電力E2よりも小さい。第3目標電力E3は、例えば、3[kW]である。第2目標電力E2は、例えば、5[kW]である。第2目標電力E2は第1目標電力E1よりも小さい。第1目標電力E1は、例えば、8[kW]である。制御部80は、目標電力Etに応じて、燃料電池スタック22に供給されるカソードガスの量と、燃料電池スタック22に供給されるアノードガスの量と、を変更する。
【0041】
制御部80は、キースイッチ13のオンとオフとを判定可能である。制御部80は、産業車両10がキーオフされると、アノードガスの供給、及びカソードガスの供給を停止することによって燃料電池スタック22の発電を停止する。制御部80は、アノード内部流路26を封止することによって、アノードガスの供給を停止する。アノード内部流路26の封止は、アノード排水弁67を閉状態に維持することで行われる。
【0042】
制御部80は、例えば、封止弁40及び調圧弁41の開度を制御する。制御部80は、カソード内部流路23を封止することによって、カソードガスの供給を停止する。カソード内部流路23の封止は、封止弁40及び調圧弁41を閉状態に維持することで行われる。
【0043】
制御部80は、産業車両10がキーオンされると、アノードガスの供給、及びカソードガスの供給を行うことによって燃料電池スタック22の発電を行う。カソードガスの供給が行われる際、制御部80は、封止弁40を開状態に維持するとともに、調圧弁41の開度を調整する。
【0044】
<排出流路>
排出流路37は、カソード流路30aのうち、カソード内部流路23よりも下流側に位置する部分である。排出流路37は、筐体21のカソード排出口25を介して筐体21の内部と連通している。排出流路37は、カソード排出口25と希釈器69とを接続している。
【0045】
排出流路37は、カソード排ガスが流れる流路である。カソード排ガスは、燃料電池スタック22から排出されるカソードガスであって、生成水Wを含んだカソードガスである。言い換えると、排出流路37は、カソードガスと燃料電池スタック22での発電によって生成された生成水Wとが燃料電池スタック22から排出される。排出流路37には、燃料電池スタック22に供給されたカソードガスが燃料電池スタック22から排出される。カソード排ガスは、排出流路37から希釈器69に排出される。希釈器69は、気液分離器65から供給されたアノード排ガスをカソード排ガスによって希釈して大気中に排出する。
【0046】
調圧弁41は、排出流路37に設けられている。排出流路37のうち、調圧弁41よりも上流側の部分を上流流路38とする。排出流路37のうち、調圧弁41よりも下流側の部分を下流流路39とする。上流流路38は、燃料電池スタック22に接続されている。上流流路38は、筐体21のカソード排出口25と調圧弁41とを接続している。下流流路39は、調圧弁41と希釈器69とを接続している。
【0047】
図2では、重力方向をZ軸で示している。以下では重力方向を重力方向Zともいう。また、
図2では、重力方向Zに直交する方向のうち、一方向をX軸で示している。以下では、重力方向Zに直交する直交方向を、直交方向Xともいう。
【0048】
図2に示すように、排出流路37のうち、上流流路38は、上流流路38の全体が重力方向Zの同位置に位置するように、カソード排出口25から直交方向Xに延びている。排出流路37のうち、下流流路39は、下流流路39の下流の部分ほど重力方向Zの下方に位置するように、直交方向Xに延びている。本実施形態では、上流流路38及び下流流路39が延出流路に相当する。すなわち、排出流路37は、燃料電池スタック22から重力方向Zに直交する直交方向Xに延びる延出流路を含んでいる。
【0049】
上流流路38の重力方向Zの下部を上流流路38の下部38aともいう。下流流路39の重力方向Zの下部を下流流路39の下部39aともいう。上流流路38の下部38a及び下流流路39の下部39aは、延出流路の重力方向Zの下部に相当する。
【0050】
上流流路38の下部38aは、上流流路38のガス流れ方向に沿って上流流路38の全体に位置する。上流流路38のガス流れ方向に直交する断面形状をみて、上流流路38の下部38aは、上流流路38を構成する壁部の内面のうちで重力方向Zの最下部を含んだ一部である。
【0051】
下流流路39の下部39aは、下流流路39のガス流れ方向に沿って下流流路39の全体に位置する。下流流路39のガス流れ方向に直交する断面形状をみて、下流流路39の下部39aは、下流流路39を構成する壁部の内面のうちで重力方向Zの最下部を含んだ一部である。
【0052】
<調圧弁>
調圧弁41は、例えばバタフライ弁である。調圧弁41は、開度の調整によって燃料電池スタック22の内圧を調整可能である。調圧弁41の開度が小さいほど、燃料電池スタック22の内圧が高まる。調圧弁41が全閉にされると、カソード内部流路23が封止される。調圧弁41は、例えば、シール部材44と、弁体48と、回転軸51と、を有する。
【0053】
シール部材44は、排出流路37に設けられている。シール部材44は、例えば、ゴム製である。シール部材44は、例えば円環状である。シール部材44は、座面44aを有する。座面44aは、シール部材44の内周面である。弁体48は、排出流路37に設けられている。弁体48は、本体49と、連結部50と、を備える。本体49は、例えば板状である。
【0054】
回転軸51は、連結部50に設けられている。回転軸51の回転に伴い弁体48が回転することによって、調圧弁41の開度が調整される。調圧弁41が全閉の場合、弁体48がシール部材44と密着する。これによってカソード内部流路23が封止される。シール部材44は、弁体48をシールする。不図示の駆動装置によって回転軸51が回転することにより、弁体48が回転する。制御部80が駆動装置を制御することによって、調圧弁41の開度は調整可能である。
【0055】
図2に実線で示す弁体48のように、弁体48が座面44aから離れることにより、調圧弁41の開度は大きくなる。調圧弁41において、座面44aに対して弁体48が近づくことで開度が小さくなる。調圧弁41は、弁体48が回転することで座面44aに対して弁体48が近づく。
【0056】
排出流路37の流路断面積のうち、弁体48と座面44aの間でガスが流れる部分の断面積のことを、以下では調圧弁41の有効断面積とも称する。有効断面積は、座面44aに対して弁体48が近づくほど小さくなる。すなわち、調圧弁41の開度が小さくなるほど、調圧弁41の有効断面積は小さくなる。
【0057】
調圧弁41には、調圧弁41の開度が座面44aに弁体48が接する開度であって調圧弁41が全閉ではない領域が存在する。この領域を、以下では低開度領域とも称する。弁体48が座面44aから離れた位置から座面44aに対して近づくように移動した後、弁体48が座面44aに接することで、調圧弁41の開度は低開度領域の開度となる。
【0058】
弁体48が座面44aから離れた位置から座面44aに接したタイミングにおいては、
図2に二点鎖線で示す弁体48のように、弁体48の周縁部のうちで、弁体48の周方向の一部が座面44aに接する。そのため、低開度領域においては、弁体48の周縁部のうちで座面44aに接していない部分と座面44aとの間にてガスの通過が可能であるため、調圧弁41の有効断面積は0(ゼロ)ではない。
【0059】
低開度領域において、調圧弁41の開度が小さく変更されると、弁体48は座面44aを押圧しながら移動する。このとき、シール部材44は、弁体48からの押圧を受けて変形する。これにより、低開度領域において調圧弁41の開度が小さくなるほど、弁体48の周縁部のうちで座面44aに接する部分の割合が増えるため、調圧弁41の有効断面積が小さくなる。調圧弁41の開度が全閉となると、弁体48の周縁部の全体が座面44aに接することにより、調圧弁41の有効断面積は0(ゼロ)となる。
【0060】
低開度領域に含まれる調圧弁41の開度の中で、最も大きい開度を第1開度A1とする。第1開度A1は、座面44aに弁体48が接する開度であって弁体48と座面44aの間でカソードガスが流れる開度である。
【0061】
調圧弁41の開度が第1開度A1以下であるとき、調圧弁41による有効断面積が小さいために、燃料電池スタック22にて生成された生成水Wが上流流路38から下流流路39に通過しにくくなる。そのため、仮に、調圧弁41の開度が第1開度A1以下である状況下で、燃料電池スタック22の発電が行われると、燃料電池スタック22及び上流流路38に生成水Wが溜まる。なお、燃料電池スタック22に溜まる生成水Wとは、筐体21の内部に溜まる生成水Wのことである。
【0062】
本実施形態では、上記のように生成水Wが溜まることを抑制するため、燃料電池スタック22の発電が行われる状況下では、第1開度A1より大きい開度である第2開度A2以上となるように調圧弁41の開度が調整されている。具体的には、例えば制御部80は、燃料電池スタック22を高負荷発電状態に制御するとき、調圧弁41の開度を第2開度A2に制御する。調圧弁41の開度が第2開度A2以上であるときは、調圧弁41の開度が第1開度A1以下であるときよりも、調圧弁41を介して上流流路38から下流流路39に生成水Wが流れやすい。そのため、調圧弁41の開度を第2開度A2にすることで、燃料電池スタック22及び上流流路38に生成水Wが溜まることを抑制できる。
【0063】
また、例えば、制御部80は、燃料電池スタック22を低負荷発電状態や中負荷発電状態に制御するとき、調圧弁41の開度を第2開度A2より大きい開度に制御する。なお、制御部80によって調整される調圧弁41の開度は、燃料電池スタック22を低負荷発電状態に制御するときと中負荷発電状態に制御するときと、で互いに同じ開度であってもよいし、異なる開度であってもよい。後者の場合、例えば、制御部80は、燃料電池スタック22を中負荷発電状態に制御するとき、制御部80によって調整される調圧弁41の開度を、燃料電池スタック22を低負荷発電状態に制御するときよりも小さい開度に調整してもよい。
【0064】
調圧弁41の開度が第2開度A2であるときは、調圧弁41の開度が第2開度A2より大きいときよりも、燃料電池スタック22の内圧が高まる。そのため、制御部80によって燃料電池スタック22が高負荷発電状態に制御されるときは、燃料電池スタック22が中負荷発電状態や低負荷発電状態に制御されるときよりも、燃料電池スタック22の内圧が高められることになる。
【0065】
<絞り部>
燃料電池システム20は、絞り部55を備える。絞り部55は、排出流路37の一部の流路断面積を小さくするものである。具体的には、本実施形態の絞り部55は、排出流路37の一部の流路断面積を小さくしたオリフィスである。絞り部55は、固定絞りである。本実施形態の絞り部55は、延出流路としての下流流路39に設けられている。すなわち、絞り部55は、排出流路37のうちで調圧弁41よりも下流側に設けられる。絞り部55は、下流流路39の一か所に設けられている。
【0066】
絞り部55は、燃料電池スタック22の内圧を昇圧させるものである。なお、絞り部55の排出流路37への設置位置及び絞り部55の形状は、上記の内圧の上昇が得られる態様に設定されている。例えば、排出流路37のガス流れ方向において、絞り部55と調圧弁41との距離は、燃料電池スタック22と調圧弁41との距離よりも小さい。ここで、燃料電池スタック22と調圧弁41との距離とは、例えば、カソード排出口25の開口位置と調圧弁41との距離のことである。なお、排出流路37のガス流れ方向において、絞り部55と調圧弁41との距離は、燃料電池スタック22と調圧弁41との距離以上であってもよい。
【0067】
燃料電池スタック22が高負荷発電状態に制御されるとき、調圧弁41の開度が第2開度A2に制御されるとともに、絞り部55によって燃料電池スタック22の内圧が昇圧する。これにより、仮に絞り部55を排出流路37に設けない態様にて高負荷発電状態に制御されるとともに調圧弁41の開度が第1開度A1以下に制御された場合に得られる燃料電池スタック22の内圧と、同等の内圧まで燃料電池スタック22の内圧を昇圧できる。
【0068】
絞り部55は、例えば、下流流路39を構成する壁部の内面の一部から下流流路39内に突出する形状を有する。絞り部55は、延出流路としての下流流路39のうちで重力方向Zの下部39aを除いた部分に設けられている。生成水Wは、下流流路39の下部39aを通じて延出流路としての下流流路39を通過可能である。
【0069】
[実施形態の作用]
本実施形態の作用について説明する。
排出流路37のうちで絞り部55が設けられた部分をカソードガスが流れる際に圧損が生じる。これにより、絞り部55を排出流路37に設けない場合と比較して、絞り部55を排出流路37に設ける実施形態では、排出流路37のうちで絞り部55よりも上流側の部分と燃料電池スタック22との内圧が上昇する。そのため、燃料電池スタック22に生成水Wが溜まることを抑制すべく、調圧弁41の開度を比較的大きく調整しても、燃料電池スタック22の内圧を適正な値で得られる。
【0070】
[実施形態の効果]
本実施形態の効果について説明する。
(1)燃料電池スタック22は、排出流路37の一部の流路断面積を小さくして燃料電池スタック22の内圧を昇圧させる絞り部55を備える。そのため、燃料電池スタック22に生成水Wが溜まることを抑制すべく、調圧弁41の開度を比較的大きく調整しても、燃料電池スタック22の内圧を適正な値で得られる。したがって、燃料電池スタック22の内圧を適正な値に保ちつつ、燃料電池スタック22での生成水Wの溜まりを抑制できる。
【0071】
(2)絞り部55は、排出流路37のうちで調圧弁41よりも下流側に設けられる。そのため、絞り部55が排出流路37のうちで調圧弁41よりも上流側に設けられる場合よりも、燃料電池スタック22と調圧弁41との間の排出流路37の部分である上流流路38を生成水Wが流れやすくなる。したがって、燃料電池スタック22からの生成水Wの排水性を向上できるため、燃料電池スタック22での生成水Wの溜まりをさらに抑制できる。
【0072】
(3)排出流路37は、重力方向Zに直交する直交方向Xに延びる延出流路としての上流流路38及び下流流路39を含んでいる。絞り部55は、延出流路としての下流流路39のうちで重力方向Zの下部39aを除いた部分に設けられている。生成水Wは、下流流路39の下部39aを通じて下流流路39を通過可能である。そのため、絞り部55が延出流路としての下流流路39のうちで重力方向Zの下部39aを含んだ部分に設けられる場合と比較して、排出流路37のうちで絞り部55よりも上流側から下流側へと生成水Wが流れやすくなる。したがって、燃料電池スタック22での生成水Wの溜まりをさらに抑制できる。
【0073】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0074】
○ 燃料電池スタック22の目標電力Etには、第1目標電力E1、第2目標電力E2、及び第3目標電力E3に加えて、1以上の目標電力Etが含まれてもよい。燃料電池スタック22の目標電力Etに第3目標電力E3が含まれていなくてもよい。要するに、燃料電池スタック22は、第1目標電力E1と、第1目標電力E1よりも小さい第2目標電力E2と、を含む複数の目標電力Etに切り替えられながら発電するものであればよい。
【0075】
○ 燃料電池スタック22の目標電力Etは、第1目標電力E1及び第2目標電力E2といった異なる値に切り替えられず、一定の電力であってもよい。
○ 調圧弁41としては、グローブ弁やボール弁といったバタフライ弁以外の弁を採用可能である。
【0076】
○ 絞り部55は、排出流路37の流路断面積を変更可能な可変のオリフィスであってもよい。
○ 絞り部55は、オリフィス等の排出流路37の壁部とは別体のものではなく、排出流路37の壁部から構成されたものであってもよい。この場合の絞り部55は、例えば、排出流路37の一部で流路断面積が小さくなるように排出流路37の壁部の形状が設定されることによって構成される。
【0077】
○ 排出流路37のうちで調圧弁41よりも上流側に、絞り部55を設けてもよい。この場合の絞り部55は、例えば延出流路としての上流流路38に設けられる。さらに、この場合の絞り部55は、上流流路38の重力方向Zの下部38aを除いた部分に設けられてもよい。これにより、生成水Wは、上流流路38の下部38aを通じて上流流路38を通過可能となる。また、上流流路38と下流流路39との両方に、絞り部55を設けてもよい。上流流路38及び下流流路39の少なくとも一方に、複数の絞り部55を設けてもよい。
【0078】
○ 絞り部55は、延出流路のうちで重力方向Zの下部を含んで設けられてもよい。例えば、上流流路38に絞り部55を設ける場合、上流流路38の下部38aを含んで絞り部55が設けられてもよい。下流流路39に絞り部55を設ける場合、下流流路39の下部39aを含んで絞り部55が設けられてもよい。
【0079】
○ 下流流路39は、下流流路39の下流の部分ほど重力方向Zの下方に位置するように延びるものに限らない。例えば、下流流路39は、下流流路39の全体が重力方向Zの同位置に位置するように、直交方向Xに延びていてもよい。この場合の下流流路39も、実施形態と同様に延出流路に相当する。
【0080】
○ 上流流路38は、上流流路38の全体が重力方向Zの同位置に位置するように、カソード排出口25から直交方向Xに延びるものに限らない。例えば、上流流路38は、上流流路38の下流の部分ほど重力方向Zの下方に位置するように、カソード排出口25から直交方向Xに延びていてもよい。この場合の上流流路38も、実施形態と同様に延出流路に相当する。
【0081】
○ 上流流路38及び下流流路39のいずれか一方が、流路の全体が直交方向Xの同位置に位置するように、重力方向Zに延びるものであってもよい。この場合、上流流路38及び下流流路39のうちで、上記の重力方向Zに延びるものでない流路が延出流路に相当する。また、上流流路38の一部が、上記のように重力方向Zに延びるものであり、その他の部分が、直交方向Xに延びる延出流路に相当するものであってもよい。下流流路39の一部が、上記のように重力方向Zに延びるものであり、その他の部分が、直交方向Xに延びる延出流路に相当するものであってもよい。
【0082】
○ 上流流路38及び下流流路39の両方が、流路の全体が直交方向Xの同位置に位置するように、重力方向Zに延びるものであってもよい。この場合の排出流路37は、延出流路を含まなくてもよい。また、この場合の絞り部55は、排出流路37の一部に設けられる。
【0083】
○ 燃料電池システム20は、乗用車、船舶、鉄道などに搭載されていてもよい。
○ 燃料電池システム20は、定置式の発電装置として用いられてもよい。
【符号の説明】
【0084】
W…生成水、X…直交方向、Z…重力方向、20…燃料電池システム、22…燃料電池スタック、37…排出流路、38…(延出流路としての)上流流路、39…(延出流路としての)下流流路、38a,39a…下部、41…調圧弁、55…絞り部。