(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006217
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】同軸コネクタの接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 24/50 20110101AFI20240110BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01R24/50
H01R13/52 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106911
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】301072650
【氏名又は名称】NECスペーステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】楜沢 祐司
【テーマコード(参考)】
5E087
5E223
【Fターム(参考)】
5E087EE08
5E087LL03
5E087LL04
5E087LL17
5E087MM02
5E087MM08
5E087RR13
5E223AB65
5E223AC02
5E223AC17
5E223BA17
5E223BB01
5E223CA13
5E223CD01
5E223GA08
5E223GA11
5E223GA12
(57)【要約】
【課題】温度変化を受ける環境において、はんだ付け部分周辺の接続信頼性をより高めることができる、同軸コネクタの接続構造を提供する。
【解決手段】同軸コネクタの接続構造は、一主表面に導電性パターンが形成されている基板を収容し、同軸コネクタが接続される開口部を有する筐体と、上記基板の上記導電性パターンにはんだ付けされる軸状のピン部であって、上記はんだ付けされる軸状の主要部、及び上記軸状の主要部と上記開口部との間に位置し上記軸状の主要部の径よりも大きい径のフランジ部を含む軸状のピン部と、内面及び外面を有し、上記内面が上記軸状のピン部の上記はんだ付けされる箇所の周辺部分を覆うように上記筐体に固定されるカバー部であって、上記軸状のピン部の長手方向の移動を規制するストッパと、上記内面と上記外面との間を連絡する開孔部、上記開孔部に取り付けられ、塵埃の通過を規制するフィルタ部を含むカバー部とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一主表面に導電性パターンが形成されている基板を収容し、同軸コネクタが接続される開口部を有する筐体と、
前記基板の前記導電性パターンにはんだ付けされる軸状のピン部であって、前記はんだ付けされる軸状の主要部、及び前記軸状の主要部と前記開口部との間に位置し前記軸状の主要部の径よりも大きい径のフランジ部を含む軸状のピン部と、
内面及び外面を有し、前記内面が前記軸状のピン部の前記はんだ付けされる箇所の周辺部分を覆うように前記筐体に固定されるカバー部であって、前記軸状のピン部の長手方向の移動を規制するストッパと、前記内面と前記外面との間を連絡する開孔部、前記開孔部に取り付けられ、塵埃の通過を規制するフィルタ部を含むカバー部と、
を含む同軸コネクタの接続構造。
【請求項2】
前記カバー部の前記ストッパは、前記カバー部が前記筐体に固定されたときに、前記軸状のピン部と嵌合する溝部を含む、
請求項1に記載の同軸コネクタの接続構造。
【請求項3】
前記溝部の表面は、前記軸状のピン部の前記フランジ部の形状と対応する深さや形状で形成されている、
請求項2に記載の同軸コネクタの接続構造。
【請求項4】
前記カバー部は、前記開孔部を複数含み、前記フィルタ部を複数含み、
前記フィルタ部は前記開孔部にそれぞれ取り付けられている、
請求項2又は請求項3に記載の同軸コネクタの接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸コネクタの接続構造に関し、特に高周波信号(RF(Radio Frequency)信号)に適した接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波信号を取り扱う高周波モジュールでは、例えば、筐体の内部に設けられた回路基板に、コネクタのピンははんだ付けされ、筐体のソケットに外部から同軸コネクタが装着される。これにより、同軸コネクタは同軸コネクタのピンを介して電気的に接続される。
【0003】
特許文献1は、車載電波レーダ装置に関するものであり、筐体の外部に設けられた外部装置に電気的に接続可能なコネクタや、筐体の内部に設けられた回路基板を有すること、コネクタは筐体の側面に固定されることが記載されている。特許文献1では、コネクタのピンはロウ材であるはんだを介して回路基板に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、高周波モジュール(人工衛星搭載機器などに搭載)は、長期間にわたって温度変化を受ける環境では、温度サイクル数1万回を超える温度変化を受けることも多くある。このように、高温度サイクル数の温度変化を高周波モジュールが受けると、RF信号の同軸コネクタ及びその周辺の各部の間の熱膨張係数差により、コネクタのピンとソケットの相対位置変化が温度変化の回数だけ発生する。
【0006】
一般的に、ピンとソケットによるRF信号接続構造において、温度変化の繰り返し数が大きい場合、回路基板にはんだ付けしたピンが移動し、はんだが変形してはんだ接続信頼性が低下する、といった課題がある。また、温度変化の繰り返し数が大きい場合、ピンとソケットとの間の摺動に起因して、摺動粉が発生するといった可能性が生じる。さらに、摺動粉が飛散した場合には、上記回路基板の回路パターンのショート原因となってしまう、といった可能性がある。
【0007】
特許文献1には、コネクタのピンはロウ材であるはんだを介して回路基板に接続されることが記載されているが、はんだ付けしたピンの移動や、ピンの移動などに起因した摺動粉発生について、関知しておらず、課題を解決するための手段についても記載は見当たらない。
【0008】
本発明の目的は、温度変化を受ける環境において、はんだ付け部分周辺の接続信頼性をより高めることができる、同軸コネクタの接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る同軸コネクタの接続構造は、
一主表面に導電性パターンが形成されている基板を収容し、同軸コネクタが接続される開口部を有する筐体と、
上記基板の上記導電性パターンにはんだ付けされる軸状のピン部であって、上記はんだ付けされる軸状の主要部、及び上記軸状の主要部と上記開口部との間に位置し上記軸状の主要部の径よりも大きい径のフランジ部を含む軸状のピン部と、
内面及び外面を有し、上記内面が上記軸状のピン部の上記はんだ付けされる箇所の周辺部分を覆うように上記筐体に固定されるカバー部であって、上記軸状のピン部の長手方向の移動を規制するストッパと、上記内面と上記外面との間を連絡する開孔部、上記開孔部に取り付けられ、塵埃の通過を規制するフィルタ部を含むカバー部と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、温度変化を受ける環境において、軸状のピン部のはんだ付け部分周辺の接続信頼性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態の同軸コネクタの接続構造を説明するための高周波モジュールの斜視図である。
【
図3】
図1において、カバー20を装着する前の状態を説明するための高周波モジュールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
〔一実施形態〕
本発明の一実施形態による同軸コネクタの接続構造について、説明する。
図1は、本発明の一実施形態の同軸コネクタの接続構造を説明するための高周波モジュールの斜視図である。
図2は、
図1のA-A線に沿った断面図である。
図3は、
図1において、カバー20を装着する前の状態を説明するための高周波モジュールの斜視図である。
図4及び
図5は、カバー20を説明するための斜視図である。
【0014】
(構成)
図1の高周波モジュールは、筐体と、軸状のピン部とを含む。
図1の高周波モジュールでは、筐体の一例としての筐体ケース10は一主表面に導電性パターンが形成されている回路基板11を収容すると共に、同軸コネクタが接続される開口部10aを側面に有する。
図1の高周波モジュールでは、軸状のピン部の一例としてのピン1は、
図2や
図3に示すように、軸状の主要部と筐体のソケット2との間にフランジ部の一例としてのフランジ7とを含む。ピン1のフランジ7は、軸状の主要部の径よりも大きい径の形状である。フランジ7は、例えば、円盤状或いは半円状の形状とすることができる。ピン1は、その一部が
図2や
図3に示すように、はんだ12で回路基板11の上記導電性パターンにはんだ付けされる。
【0015】
図1の高周波モジュールは、筐体ケース10の外部からコネクタ3が装着され、コネクタ3のソケット2とピン1の一端部とが電気的に接続される。ソケット2にはバネ部2aが設けられており、バネ部2aによりピン1とソケット2の接触は維持され、安定したRF信号接続を達成している。
【0016】
ここで回路基板11にはんだ付けしたピン1は、温度変化による相対位置変化の際に、ピン1とソケット2間のバネ接触による保持力分の荷重を受ける。この保持力分の荷重をピン1が受けたことではんだ12が変形し、ピン1が僅かに移動する。はんだ12の変形量は高温側が大きく、低温側は小さいため、温度サイクルの繰り返しによってピン1が移動する。
【0017】
ピン1とソケット2によるRF信号接続構造において、温度変化の繰り返し数が大きい場合、回路基板11にはんだ付けしたピン1が移動し、はんだ12が変形してはんだ接続信頼性が低下する、といった可能性も考えられる。また温度変化の繰り返し数が大きい場合、ピン1とソケット2との間の摺動に起因して、摺動粉が発生するといった可能性なども考えられる。
【0018】
図1の高周波モジュールはさらに、カバー部を含む。
図1の高周波モジュールでは、カバー部の一例としてのカバー20は、内面及び外面を有し、筐体ケース10に固定される。カバー20は、筐体ケース10に固定されたときに、上記内面が上記ピン1のはんだ付けされる箇所の周辺部分を覆う。カバー20は、例えば樹脂製である。さらにカバー20は、その内面側にピン1の長手方向の移動を規制するストッパ23を有する。さらにカバー20は、上記内面と上記外面との間を連絡する開孔部の一例としての空気穴21を有する。
図1の高周波モジュールでは、複数の空気穴21が形成された構造を示している。さらにカバー20は、空気穴21に取り付けられ、塵埃の通過を規制するフィルタ部の一例としてのフィルタ22を有する。
図5では、カバー20の複数の空気穴21に対してそれぞれフィルタ22が取り付けされた状態を示している。
【0019】
本実施形態の高周波モジュールでは、カバー20の内面がピン1のはんだ付けされる箇所の周辺部分を覆うように、筐体ケース10にカバー20を固定する。カバー20は内面にストッパ23を有しており、ストッパ23はピン1の長手方向の移動を規制する。
図2や
図5に示される、カバー20のストッパ23は、カバー20の内面に形成された溝部を含み、溝部の幅はピン1の主要部の径より広く、ピン1のフランジ7の径よりも狭い。カバー20のストッパ23の溝部は、カバー20が筐体ケース10に固定されたときに、ピン1と嵌合する。
【0020】
筐体ケース10にカバー20を固定した状態では、ピン1の長手方向の移動(
図2では左方向)はカバー20のストッパ23にフランジ7が接触する位置で規制される。こうしてピン1の長手方向の移動が抑制され、はんだ接続信頼性の低下を抑制することができる。ピン1の長手方向の移動が抑制されることによって、ピン1とソケット2間の摺動による摺動粉の発生を抑制することができる。なお、ピン1の長手方向の移動のうち
図2の右方向の移動は、ピン1がソケット2の奥に当たることで抑制される構造になっている。
【0021】
カバー20のストッパ23の形状は、ピン1に設けられるフランジ7の外形と対応した形状とすることができる。ストッパ23の溝部の表面は、ピン1のフランジ7の形状と対応する深さや形状に設計され、形成される。カバー20のストッパ23は、例えば、ピン1に設けられるフランジ7の外形が円盤状或いは半円状の形状である場合には、この形状と対応する半円状の凹部や窪みを含む表面形状とすることができる。カバー20のストッパ23は、ピン1の長手に対して平行な方向へのピン1の移動を防止する。なお、ピン1の長手に対して垂直な方向への移動は、ピン1がソケット2と嵌合することで抑制される。
【0022】
さらに本実施形態の高周波モジュールでは、カバー20に空気穴21を有している。カバー20の内面と外面との間を連絡する空気穴21を有していることにより、本実施形態の高周波モジュールを宇宙機器に適用した場合に、カバー20内部の空気を宇宙環境で放出することができる。
【0023】
さらに本実施形態の高周波モジュールでは、塵埃の通過を規制するフィルタ22が空気穴21に取り付けられている。フィルタ22は、摺動粉を通さない仕様のフィルタであり、ピン1とソケット2との間の摺動に起因して発生する摺動粉を想定して適宜選択する。フィルタ22がカバー20の空気穴21に取り付けられていることにより、カバー20内部の空気を宇宙環境で放出する際に、摺動粉の飛散を防止することができる。これにより、摺動粉の飛散に起因する、回路基板の回路パターンのショートを防止することができる。
【0024】
(効果)
本実施形態による同軸コネクタの接続構造によれば、温度変化を受ける環境において、ピン1のはんだ付け部分周辺の接続信頼性をより高めることができる。筐体ケース10にカバー20を固定した状態では、ピン1の長手方向の移動はカバー20のストッパ23にフランジ7が接触する位置で規制される。こうしてピン1の長手方向の移動が抑制され、はんだ接続信頼性の低下を抑制することができる。ピン1の長手方向の移動が抑制されることによって、ピン1とソケット2間の摺動による摺動粉の発生を抑制することができる。
【0025】
本実施形態による同軸コネクタの接続構造によれば、カバー20が空気穴21を有していることにより、本実施形態による同軸コネクタの接続構造を宇宙機器に適用した場合に、カバー20内部の空気を宇宙環境で放出することができる。
【0026】
さらに本実施形態による同軸コネクタの接続構造によれば、フィルタ22がカバー20の空気穴21に取り付けられていることにより、カバー20内部の空気を宇宙環境で放出する際に、摺動粉の飛散を防止することができる。これにより、摺動粉の飛散に起因する、回路基板11の回路パターンのショートを防止することができる。カバー20を樹脂製とした場合、RF信号接続への影響をなくしつつ、摺動粉の飛散を防止することができる。
【0027】
〔その他の実施形態〕
以上、本発明の好ましい実施形態の接続構造を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態のようなソケット2側がコネクタ構造である以外に、ピン1同様の基板との接続構造にも本発明は適用することができる。また、ソケット2側がカプラやアイソレータなどの導体構造である場合にも、本発明は適用することができる。また、ピン1とソケット2において、ピン側がソケット構造で、ソケット側がピン構造でも、同様の効果を有する。
【0028】
上述したフランジ7は、ピン1と一体化している形状である。フランジ7は、棒状や線状をなすピン1に対して外形が円盤状、半円状などの断面が円形の形状に限られず、ピン1から突起した形状物がストッパ23に当たることでピン1の移動を抑制できる形状であればよい。なおフランジ7の形状としては、ピン1を回路基板11にはんだ付けしたときに、回路基板11表面や筐体ケース10表面など周囲と干渉せず、かつストッパ23に当たる部分のピン1に設けた形状であり、回路基板11側にはフランジ7のような突起が無い形状が望ましい。またフランジ7の形状として、筐体ケース10など周囲とも十分な距離を有している形状が望ましい。特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の活用例として、温度サイクルなど過酷な宇宙環境で、かつ10年を超える長期間運用環境にて故障がないように、高信頼性を要求される機器への利用が考えられる。
【符号の説明】
【0030】
1 ピン
2 ソケット
3 コネクタ
7 フランジ
10 筐体ケース
10a 開口部
11 回路基板
12 はんだ
20 カバー
21 空気穴
22 フィルタ
23 ストッパ