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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062171
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】手指消毒剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 33/12 20060101AFI20240430BHJP
   A01N 47/44 20060101ALI20240430BHJP
   A01N 31/04 20060101ALI20240430BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240430BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20240430BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 8/43 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 31/02 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 31/14 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
A01N33/12 101
A01N47/44
A01N31/04
A01P3/00
A01N25/10
A61Q19/00
A61K8/34
A61K8/41
A61K8/43
A61K8/81
A61P17/00 101
A61K31/045
A61P31/04
A61P31/12
A61P31/02
A61K31/14
A61K31/155
A61K47/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170004
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭
(72)【発明者】
【氏名】服部 莉奈
(72)【発明者】
【氏名】笹木 友美子
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 梓
(72)【発明者】
【氏名】原 真佐夫
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C206
4H011
【Fターム(参考)】
4C076BB31
4C076CC18
4C076CC31
4C076CC35
4C076EE13
4C076EE48
4C076FF70
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC691
4C083AC692
4C083AC741
4C083AC742
4C083AD131
4C083AD132
4C083CC02
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE12
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA03
4C206FA41
4C206FA42
4C206HA31
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA83
4C206NA01
4C206NA20
4C206ZA90
4C206ZB33
4C206ZB35
4H011AA01
4H011BA04
4H011BB03
4H011BB04
4H011BB11
4H011BC19
4H011DH02
(57)【要約】
【課題】消毒力、ラビング時のタック感・伸展性、及びラビング後の流水洗浄時のべたつきの少なさに優れ、かつ、沈殿物・浮遊物がない手指消毒剤を提供する。
【解決手段】 (a):(a1)炭素数1~3の1価のアルコール、(a2)特定の四級アンモニウム化合物、及び(a3)クロルヘキシジン又はその塩からなる群から選択される少なくとも1種以上の消毒成分を特定量で含有し、(b):3つの異なる特定の構成単位を有し、各構成単位のモル比率n:n:nが100:10~400:2~50であり、重量平均分子量が5,000~2,000,000である共重合体を特定量で含有する手指消毒剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記(a1)、(a2)、及び(a3)からなる群から選択される少なくとも1種の消毒成分と、
(a1)炭素数1~3の1価のアルコールを30~95w/v%、(a2)式(1)の構造を有する四級アンモニウム化合物を0.001~2.0w/v%、(a3)クロルヘキシジン又はその塩を0.001~2.0w/v%
(b)式(2)~式(4)で表される構成単位を有し、各構成単位のモル比率n:n:nが100:10~400:2~50であり、重量平均分子量が5,000~2,000,000である共重合体を0.00005~1.0w/v%、
含む手指消毒剤。
【化1】

(式(1)において、Rは、炭素数8~18の置換基を示す)
【化2】

【化3】

【化4】

(式(2)~(4)において、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示し、R及びRは、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基を示す。Rは炭素数12~24の炭化水素基を示す。)
【請求項2】
成分(b)が、2-(メタクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、N,N-ジメチルアクリルアミド、及びステアリル(メタ)アクリレートを構成単位に有し、各構成単位のモル比率が順に100:30~250:5~25の共重合体である、請求項1に記載の手指消毒剤。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手指消毒剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大を背景に、感染症蔓延防止の観点から外皮の消毒、特に細菌やウイルスを媒介し得る手指の消毒を行う機会が増加している。手指の消毒には、細菌やウイルスを殺滅できる消毒成分(例えばエタノール)を含有する消毒剤が多く使用されている。
エタノールは、広範な殺菌スペクトルを有するため、消毒剤の成分として大変有用である。また、手指が汚染されている場合を想定し、汚染条件、すなわち夾雑有機物が存在する条件においても、その消毒力が発揮されることが、医療従事者等からは強く期待されている。
【0003】
消毒剤の実使用にあたっては、手指への擦り込み(ラビング)時、或いは、擦り込み(ラビング)後において、その使用感が重要となる。この消毒剤の使用感が好ましくない場合、消毒剤の使用を敬遠して手指消毒を怠り、結果として感染症が蔓延するおそれがある。
好ましい使用感を実現した消毒剤の例として、例えば、特許文献1及び2に記載の消毒剤が知られている。具体的には、特許文献1には、ラビング時にヨレ等の問題が発生しない消毒剤が開示され、特許文献2には、ラビング時のすべり、及びノビを良好にできる消毒剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-84479号公報
【特許文献2】特開2022-99965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、消毒剤の使用感においては、特許文献1及び2に記載される特徴のほか、ラビング時のタック感と伸展性がより重要となる。ラビング時のタック感が少なく、かつ伸展性が優れる場合は、力を入れることなく、手指全体にスムーズに製剤を塗布することができるからである。また、該消毒剤の使用後、流水洗浄時におけるべたつきの有無も重要である。流水洗浄時のべたつきが発生する場合は、水や石鹸が手指全体に行き渡りにくく、更に手指がべたついて不快感を覚える場合があり、消毒剤の使用を控える原因となり得る。
さらに、その他消毒剤に必要な性能として、沈殿物、浮遊物が存在しないことが挙げられる。これらが製剤内に存在する場合、使用形態によっては液詰まりの原因となるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、消毒力、ラビング時のタック感・伸展性、及びラビング後の流水洗浄時のべたつきの少なさに優れ、かつ、沈殿物・浮遊物が存在しない手指消毒剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定の消毒成分を含み、かつ、特定の構造を有する共重合体を含む手指消毒剤により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は次の通りである。
[1](a)下記(a1)、(a2)、及び(a3)からなる群から選択される少なくとも1種の消毒成分と、
(a1)炭素数1~3の1価のアルコールを30~95w/v%、(a2)式(1)の構造を有する四級アンモニウム化合物を0.001~2.0w/v%、(a3)クロルヘキシジン又はその塩を0.001~2.0w/v%
(b)式(2)~式(4)で表される構成単位を有し、各構成単位のモル比率n:n:nが100:10~400:2~50であり、重量平均分子量が5,000~2,000,000である共重合体を0.00005~1.0w/v%、
含む手指消毒剤。
【化1】

(式(1)において、Rは、炭素数8~18の置換基を示す)
【化2】

【化3】

【化4】

(式(2)~(4)において、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示し、R及びRは、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基を示す。Rは炭素数12~24の炭化水素基を示す。)
[2]成分(b)が、2-(メタクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、N,N-ジメチルアクリルアミド、及びステアリル(メタ)アクリレートを構成単位に有し、各構成単位のモル比率が順に100:30~250:5~25の共重合体である、上記[1]に記載の手指消毒剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の手指消毒剤は、消毒力、ラビング時のタック感・伸展性、ラビング後の流水洗浄時のべたつきの少なさに優れ、沈殿物・浮遊物がない特徴を有する。すなわち、細菌とウイルスを殺滅可能であるほか、手指消毒剤の使用者に対して、劣悪な使用感による手指消毒の敬遠が起こる可能性を低減し、かつ液詰まりを発生させない点から有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
なお、本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等)を段階的に記載した場合、各下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~100、より好ましくは20~90」という記載において、「好ましい下限値:10」と「より好ましい上限値:90」とを組み合わせて、「10~90」とすることができる。
また、本明細書において(メタ)アクリルとはアクリルまたはメタクリルのいずれかであることを意味し、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルまたはメタクリロイルのいずれかであることを意味する。
【0011】
本発明の手指消毒剤は、(a)下記(a1)、(a2)、及び(a3)からなる群から選択される少なくとも1種以上の消毒成分と、
(a1)炭素数1~3の1価のアルコールを30~95w/v%、(a2)式(1)の構造を有する四級アンモニウム化合物を0.001~2.0w/v%、(a3)クロルヘキシジン又はその塩を0.001~2.0w/v%、
(b)式(2)~式(4)で表される構成単位を有し、各構成単位のモル比率n:n:nが100:10~400:2~50であり、重量平均分子量が5,000~2,000,000である共重合体を0.00005~1.0w/v%、を含有する。
【0012】
<(a)消毒成分>
本発明の手指消毒剤は、(a)下記群に示す消毒成分を1種類以上含有する。
(a1)炭素数1~3の1価のアルコールを30~95w/v%、(a2)式(1)の構造を有する四級アンモニウム化合物を0.001~2.0w/v%、(a3)クロルヘキシジン又はその塩を0.001~2.0w/v%。
すなわち、本発明の手指消毒剤は、(a1)炭素数1~3の1価のアルコール、(a2)式(1)の構造を有する四級アンモニウム化合物、及び(a3)クロルヘキシジン又はその塩からなる群から選択される少なくとも1種の消毒成分を含有する。そして、手指消毒剤が炭素数1~3の1価のアルコールを含有する場合は、その含有量は30~95w/v%であり、式(1)の構造を有する四級アンモニウム化合物を含有する場合は、その含有量は0.001~2.0w/v%であり、クロルヘキシジン又はその塩を含有する場合は、その含有量は0.001~2.0w/v%である。
【0013】
本発明の(a1)成分として含有される炭素数1~3の1価のアルコールは、特に制限されないが、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール(1-プロパノール)、イソプロパノール(2-プロパノール)等が挙げられ、環境に対する影響および身体に対する安全性の観点から、エタノール及びイソプロパノールが好ましい。
本発明の(a1)成分である上記炭素数1~3の1価のアルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の(a1)成分の含有量は、(a1)成分を2種以上併用する場合は、その合計量を意味することとする。
また、(a1)成分である上記1価のアルコールとしては、医薬品、化粧品用として市販されている製品を用いることができる。
本発明の手指消毒剤が(a1)成分を含む場合において、(a1)成分の含有量は、30~95w/v%であり、消毒力、速乾性、ラビング時の伸展性等の観点から、好ましくは45~70w/v%であり、更に好ましくは、55~65w/v%である。(a1)成分の含有量が30w/v%未満の場合は、消毒力、速乾性、ラビング時の伸展性が発揮できない可能性があり、また、95w/v%より多い場合は、前記効果の向上はほとんど見られず、費用対効果の観点から好ましくない。
【0014】
本発明の(a2)成分として含有される四級アンモニウム化合物は、式(1)で表される構造を有する。
【化5】

(式(1)において、Rは、炭素数8~18の置換基を示す)
【0015】
式(1)においてRは、炭素数8~18の置換基の中でも、炭素数8~18の炭化水素基、酸素原子を有する炭素数8~18の基などが好ましい。
上記炭素数8~18の炭化水素基は、特に限定されないが、炭素数8~18のアルキル基が好ましい。該炭素数8~18のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、例えば、オクチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
上記酸素原子を有する炭素数8~18の基としては、酸素原子を有する炭化水素基などが挙げられ、中でもアルキレンエーテル部位[-(R-O)n-:Rは炭素数1~3のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基である。nは1~3の整数であり、好ましくは2である]を有する芳香族炭化水素基が好ましい。
【0016】
式(1)の構造を有する第四級アンモニウム化合物の具体的な種類としては、好ましくは、ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物等を挙げることができる。中でも、身体への適用範囲が広範であることから、ベンザルコニウム塩化物がより好ましい。本発明の手指消毒剤に含まれる(a2)成分は、1種でもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。本発明の(a2)成分の含有量は、(a2)成分を2種以上併用する場合は、その合計量を意味することとする。
本発明の手指消毒剤が(a2)成分を含む場合において、(a2)成分の含有量は、0.001~2.0w/v%であり、好ましくは、0.01w/v%~0.5w/v%であり、更に好ましくは、0.025w/v%~0.25w/v%であり、より更に好ましくは、0.05w/v%~0.2w/v%である。(a2)成分の含有量が0.001w/v%未満の場合は、期待される消毒力を発揮できない可能性がある。また、含有量が、2.0w/v%より多い場合は、消毒力の大きな改善が見込めず、費用対効果の関係から好ましくない。
【0017】
本発明の(a3)成分は、クロルヘキシジン、またはその塩であり、例えば、グルコン酸クロルヘキシジン、パルミチン酸クロルヘキシジン、ホスファニル酸クロルヘキシジン、酢酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、塩化クロルヘキシジン、ヨウ化水素酸クロルヘキシジン、過塩素酸クロルヘキシジン、硝酸クロルヘキシジン、硫酸クロルヘキシジン、亜硫酸クロルヘキシジン、チオ硫酸クロルヘキシジン、リン酸水素クロルヘキシジン、フルオロリン酸クロルヘキシジン、ギ酸クロルヘキシジン、プロピオン酸クロルヘキシジン、ヨード酪酸クロルヘキシジン、n-バレリアン酸クロルヘキシジン、カプロン酸クロルヘキシジン、マロン酸クロルヘキシジン、コハク酸クロルヘキシジン、リンゴ酸クロルヘキシジン、酒石酸クロルヘキシジン、モノグリコール酸クロルヘキシジン、ジグリコール酸クロルヘキシジン、乳酸クロルヘキシジン、α-ヒドロキシイソ酪酸クロルヘキシジン、グルコヘプトン酸クロルヘキシジン、イソチオン酸クロルヘキシジン、安息香酸クロルヘキシジン、ケイ皮酸クロルヘキシジン、マンデル酸クロルヘキシジン、イソフタル酸クロルヘキシジン、2-ヒドロキシナフトエ酸クロルヘキシジン等が挙げられる。これらの中でも、殺菌効果が期待されるグルコン酸クロルヘキシジン、酢酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジンが好ましく、グルコン酸クロルヘキシジンがより好ましい。本発明の手指消毒剤に含まれる(a3)成分は、1種でもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。本発明の(a3)成分の含有量は、(a3)成分を2種以上併用する場合は、その合計量を意味することとする。
【0018】
本発明の手指消毒剤が(a3)成分を含む場合において、(a3)成分の含有量は、0.001~2.0w/v%であり、好ましくは、0.01w/v%~0.5w/v%であり、更に好ましくは、0.025w/v%~0.25w/v%であり、より更に好ましくは、0.05w/v%~0.2w/v%である。(a3)成分の含有量が0.001w/v%未満の場合は、期待される消毒力を発揮できない可能性がある。また、含有量が、2.0w/v%より多い場合は、消毒力の大きな改善が見込めず、費用対効果の関係から好ましくない。
【0019】
<(b)ポリマー>
本発明の手指消毒剤は、(b)式(2)~式(4)で表される構成単位を有し、各構成単位のモル比率n:n:nが100:10~400:2~50であり、重量平均分子量が5,000~2,000,000である共重合体を0.00005~1.0w/v%を含有する。
【0020】
本発明の成分(b)に該当するポリマー(以下、「共重合体(P)」ともいう)は、式(2)で表される構成単位(以下「PC構成単位」ともいう)を有する。
【化6】
【0021】
上記式(2)において、Rは水素原子又はメチル基を示す。nは、共重合体(P)の全構成単位に対する式(2)で表される構成単位のモル比率である。
共重合体(P)中のPC構成単位は、共重合体(P)の重合時に使用される下記式(2-1)で表されるホスホリルコリン類似基含有単量体(以下、PC単量体ともいう)から得られる。
【0022】
【化7】

式(2-1)中、Rは式(2)のものと同義である。
PC単量体としては、入手性の観点から例えば、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートが好ましく、さらに下記式(2-2)で表される2-(メタクリロイルオキシ)エチル-2'-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(以下、MPCとする)が好ましい。
【0023】
【化8】
【0024】
PC単量体は、公知の方法で製造できる。例えば、特開昭54-63025号公報に示される水酸基含有重合性単量体と2-ブロムエチルホスホリルジクロリドとを3級塩基存在下で反応させて得られる化合物と3級アミンとを反応させる方法や、特開昭58-154591号公報等に示される水酸基含有重合性単量体と環状リン化合物との反応で環状化合物を得た後に3級アミンで開環反応させる方法等によって製造することができる。
【0025】
共重合体(P)は、式(3)で表される構成単位(以下「アミド構成単位」と略記)を有する。
【化9】
【0026】
は水素原子又はメチル基を示し、R及びRはそれぞれ独立にメチル基又はエチル基を示す。nは、共重合体(P)の全構成単位に対する式(3)で表される構成単位のモル比率である。
共重合体(P)において、式(2)で表される構成単位のモル比率nと式(3)で表される構成単位のモル比率nとの比(n/n)は10/100以上、400/100以下であり、好ましくは30/100以上、250/100以下である。
が大きすぎる場合には、流水洗浄時のべたつきが生じ易い等、使用感を損なう可能性があり、小さすぎる場合には、手指消毒剤の処方や使用方法によっては、沈殿物・浮遊物が発生するおそれがある。
【0027】
共重合体(P)中のアミド構成単位は、共重合体(P)の重合時に使用される下記式(3-1)で表される単量体、すなわち(メタ)アクリルアミドまたは(メタ)アクリルアミド誘導体から得られる。
【化10】

式(3-1)におけるR、RおよびRはそれぞれ、式(3)におけるR、RおよびRと同じである。
【0028】
上記式(3-1)で表される(メタ)アクリルアミドまたは(メタ)アクリルアミド誘導体として例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミドが挙げられ、ラビング時のタック感・伸展性を考慮し、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドが好ましく、N,N-ジメチルアクリルアミドがより好ましい。
【0029】
共重合体(P)は、下記式(4)で表される構成単位(以下「アルキルエステル構成単位」と略記)を有する。
【化11】


上記式(4)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数12~24の炭化水素基、例えば、ラウリル基、ステアリル基、ベヘニル基を示す。nは、共重合体(P)の全構成単位に対する式(4)で表される構成単位のモル比率である。
共重合体(P)において、式(2)で表される構成単位のモル比率n2と式(4)で表される構成単位のモル比率nとの比(n/n)は2/100以上、50/100以下であり、好ましくは5/100以上、25/100以下である。nが大きすぎる場合には、ラビング中のタック感が生じ易い等、使用感を損なう可能性があり、小さすぎる場合には、手指消毒剤の処方や使用方法によっては、沈殿物・浮遊物が発生するおそれがある。
【0030】
以上のことから、共重合体(P)を構成する各構成単位のモル比率n:n:nは100:10~400:2~50であり、好ましくは100:30~250:5~25であり、より好ましくは100:50~150:5~20である。
【0031】
共重合体(P)中のアルキルエステル構成単位は、共重合体(P)の重合時に使用される下記式(4-1)で表されるアルキルエステル単量体から得られる。
【化12】

式(4-1)におけるRおよびRはそれぞれ、式(4)におけるRおよびRと同じである。
【0032】
式(4-1)で表されるアルキルエステル単量体としては、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の直鎖アルキル(メタ)アクリレートが好適な例として挙げられる。このうち、ラビング時のタック感・伸展性を考慮し、ステアリル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0033】
本発明における共重合体(P)は、上記した式(4-1)で表されるアルキルエステル単量体以外の他のアルキルエステル単量体をさらに使用して重合したものであってもよい。
他のアルキルエステル単量体としては例えば、直鎖又は分岐鎖のアルキル(メタ)アクリレート、環状アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有(メタ)アクリレート、スチレン系単量体、ビニルエーテル単量体、ビニルエステル単量体、水酸基含有(メタ)アクリレート、酸基含有単量体、アミノ基含有単量体、カチオン性基含有単量体等を挙げることができる。
直鎖又は分岐鎖のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
環状アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等が挙げられる。
ビニルエーテル単量体としては、例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等が挙げられる。
ビニルエステル単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。

水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
酸基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリロイルオキシホスホン酸等が挙げられる。
アミノ基含有単量体としては、例えば、アミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
カチオン性基含有単量体としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0034】
共重合体(P)は、本発明の効果を損なわない範囲において、式(2)~式(4)で表される構成単位以外の構成単位を導入することもできる。共重合体(P)の製造に用いる単量体組成物に、上記他の重合性単量体を配合する場合、その配合割合は、本発明の効果に影響を与えない範囲で適宜選択できるが、共重合体(P)を構成する上記式(2)で表される構成単位のモル比率n2を100とした場合、式(2)~式(4)で表される構成単位以外の構成単位のモル比率は50以下が好ましい。中でも、共重合体(P)は、式(2)~式(4)で表される構成単位のみからなることが好ましい。
【0035】
なお、共重合体(P)の重合形態は特に限定されず、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体が好ましい。
また、本発明に用いる共重合体(P)は、重量平均分子量5,000~2,000,000であり、好ましくは100,000~1,500,000の重合体である。重量平均分子量が5,000未満の場合は、ラビング時のタック感・伸展性において使用感が悪化するおそれがあり、2,000,000を超える場合は、流水洗浄時のべたつきが生じ易くなる可能性がある。
なお、本明細書において重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された、PEG換算の値を意味し、詳細な測定条件は以下の通りである。
<測定条件>
GPCシステム:高速液体クロマトグラフィーシステムCCP&8020シリーズ(東ソー株式会社製)
カラム:PLgel-mixed-C(アジレント・テクノロジー社製)、
展開溶媒:メタノール/クロロホルム混液(80:20)
検出器:示差屈折率検出器
流速:1mL/分 注入量:100μL
カラム温度:40℃
サンプル:得られた共重合体を終濃度0.5重量%となるよう展開溶媒で希釈する。
【0036】
本発明の手指消毒剤は、(b)成分である共重合体(P)以外の重量平均分子量5000以上のポリマーを含まないことが好ましい。これにより、沈殿物・浮遊物が生じ難くなる。
【0037】
本発明の手指消毒剤は、本発明の効果を阻害しない限り、上記説明した成分以外に、必要に応じて一般外用剤等に使用できる保湿剤、エモリエント剤、pH調整剤、及び/又は香料等を含有してもよい。
【0038】
保湿剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ソルビトール、乳酸ナトリウム、ヒアルロン酸及びその塩、ソルビトール、ピロリドンカルボン酸及びその塩、N-ココイル-L-アルギニンエチルエステルDL-ピロリドンカルボン酸塩、ならびに尿素等を挙げることができ、これらの1種以上を含むことができる。
【0039】
エモリエント剤としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソブチル、およびマレイン酸イソブチル等の脂肪酸エステル等を挙げることができ、これらの1種以上を含むことができる。
【0040】
pH調製剤としては、例えば、塩酸、グルコン酸、第一級アミン、第二級アミン、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウム等を挙げることができ、これらの1種以上を含むことができる。
【0041】
香料としては、例えば、メントール、ハッカ油、サリチル酸メチル、バニリン、ベンジルサクシネート、メチルオイゲノール、アネトール、リモネン、オシメン、シトロネニルアセテート、シネオール、エチルリナロール、スペアミント油、ペパーミント油、及びユーカリ油等を挙げることができ、これらの1種以上を含むことができる。
【0042】
本発明の手指消毒剤は、常法に従って製造することができる。例えば、上記成分に、必要に応じて水などの溶剤や一般的な他の添加剤を加えて適宜混合し、均一とすることで製造することができる。中でも、手指消毒剤は、上記した(a)消毒成分、(b)共重合体、及び水を含有することが好ましい。手指消毒剤における水の含有量は、使用する(a)消毒成分の種類などに応じて、適宜調節すればよく、一般には、4~99.99w/v%の範囲で調整するとよい。
また、本発明の手指消毒剤は、例えば、医薬品や医薬部外品又はそれらの成分として用いることができる。
本発明の手指消毒剤は、液状、ペースト状等の半固形状等の形態で提供され得る。
使用時の簡便さや安全性等の観点からは、本発明の手指消毒剤は、液状の形態とすることが好ましい。
【0043】
本発明の手指消毒剤は、ポンプ容器もしくはスプレー容器に収容することができる。詳しくは、ディスペンサーポンプ付き容器に充填した液吐出型、スプレーポンプ付き容器に充填した噴霧型、フォーマーポンプ付き容器またはエアゾール容器に充填した泡吐出型、清拭ワイプに含浸させた含浸型等の製品とすることが好ましい。使用時の簡便さを考慮し、液吐出型の形態が特に好ましい。
本発明の手指消毒剤の使用例として、手指の皮膚に用いる場合には、適量(1mL~3mL程度)取り、手に擦り込みながら塗布して使用することができる。
本発明の手指消毒剤を清拭ワイプに含浸させる場合には、清拭ワイプ100質量部に対して本発明の手指消毒剤を10質量部~400質量部程度含浸させ、該ワイプにて、皮膚を清拭して使用することができる。
【実施例0044】
以下、本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例及び比較例で使用した各成分は以下のとおりである。
【0045】
[手指消毒剤の各成分]
<消毒成分(成分(a))>
・アルコール(成分(a1))
エタノール
イソプロパノール
ノルマルプロパノール
・四級アンモニウム化合物(成分(a2))
ベンザルコニウム塩化物
ベンゼトニウム塩化物
・クロルヘキシジン又はその塩(成分(a3))
クロルヘキシジングルコン酸塩
【0046】
<ポリマー(b)>
ポリマーA
ポリマーB
ポリマーC
ポリマーD
(各ポリマーの合成方法を後に詳述する)
【0047】
<ポリマー(b)’>
メチルセルロース
ヒドロキシエチルセルロース
疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース
ポリビニルアルコール
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体
【0048】
以下、成分(b)に該当するポリマーの合成方法を示す。
[ポリマーA合成例]
MPC(日油(株)製)31.8g、ステアリルメタクリレート(SMA、日油(株)製)3.6g及びN,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA、興人フィルム&ケミカルズ(株)製)9.6gを、4つ口フラスコへ入れ、ノルマルプロパノール55.0gで溶解させ、30分間窒素ガスの吹き込みを行った。この後、重合開始剤(パーブチルND(PB-ND)、日油(株)製)0.10gを加えて8時間重合反応を行った。重合反応後、重合液を3リットルのジエチルエーテル中にかき混ぜながら滴下し、析出した沈殿をろ過し、48時間室温で真空乾燥を行い、粉末を得た。収量は40.2gであった。GPCにより重合物の分子量分析を行い、その重量平均分子量は1,000,000であった。これをポリマーAとした。以下に、IR、NMR、元素分析の分析結果を示す。
IR分析結果:2964cm-1(-CH)、1733cm-1(O-C=O)、1651cm-1(N-C=O)、1458cm-1(-CH)、1253cm-1(P=O)、1168cm-1(C-O-C)、997cm-1(P-O-C)。 NMR分析結果:0.8-1.2ppm(CH-C-)、1.4ppm(-CH-)、3.3ppm(-N(CH)、2.8-3.2ppm(-N-(CH)、3.7-4.4ppm(-CHCH-)。
元素分析結果:
理論値:C;53.55%、H;8.44%、N;8.74%
実測値:C;53.40%、H;8.52%、N;8.80%
以上の結果から、得られたポリマーAの化学構造は、MPC 50モル%、DMAA 45モル%、SMA 5モル%の割合で共重合された重合体であった。各構成単位のモル比率n:n:n=100:90:10であった。
【0049】
[ポリマーB合成例]
下記表1に示す種類及び量の成分を使用した以外は、ポリマーAと同様の手順に従ってポリマーBを製造した。その重量平均分子量は1,200,000、収量は42.4gであった。以下に、IR、NMR、元素分析の分析結果を示す。
IR分析結果:2964cm-1(-CH)、1733cm-1(O-C=O)、1651cm-1(N-C=O)、1458cm-1(-CH)、1253cm-1(P=O)、1168cm-1(C-O-C)、997cm-1(P-O-C)。
NMR分析結果:0.8-1.2ppm(CH-C-)、1.4ppm(-CH-)、3.3ppm(-N(CH)、2.8-3.2ppm(-N-(CH)、3.7-4.4ppm(-CHCH-)。
元素分析結果:
理論値:C;56.37%、H;8.70%、N;10.90%
実測値:C;56.41%、H;8.69%、N;10.87%
以上の結果から、得られたポリマーBの化学構造は、MPC 30モル%、DMAA 67モル%、SMA 3モル%の割合で共重合された重合体であった。各構成単位のモル比率n:n:n=100:223:10であった。
【0050】
[ポリマーC合成例]
下記表1に示す種類及び量の成分を使用した以外は、ポリマーAと同様の手順に従ってポリマーCを製造した。その重量平均分子量は700,000、収量は36.1gであった。以下に、IR、NMR、元素分析の分析結果を示す。
IR分析結果:2964cm-1(-CH)、1733cm-1(O-C=O)、1651cm-1(N-C=O)、1458cm-1(-CH)、1253cm-1(P=O)、1168cm-1(C-O-C)、997cm-1(P-O-C)。
NMR分析結果:0.8-1.2ppm(CH-C-)、1.4ppm(-CH-)、3.3ppm(-N(CH)、2.8-3.2ppm(-N-(CH)、3.7-4.4ppm(-CHCH-)。
元素分析結果:
理論値:C;50.55%、H;8.15%、N;6.72%
実測値:C;50.46%、H;8.14%、N;6.72%
以上の結果から、得られたポリマーCの化学構造は、MPC 70モル%、DMAA 24モル%、SMA 6モル%の割合で共重合された重合体であった。各構成単位のモル比率n:n:n=100:34:9であった。
【0051】
[ポリマーD合成例]
下記表1に示す種類及び量の成分を使用した以外は、ポリマーAと同様の手順に従ってポリマーDを製造した。表1中のLMAは、ラウリルメタクリレート(共栄社化学(株)製)を示す。その重量平均分子量は1,000,000、収量は39.9gであった。以下に、IR、NMR、元素分析の分析結果を示す。
IR分析結果:2964cm-1(-CH)、1733cm-1(O-C=O)、1651cm-1(N-C=O)、1458cm-1(-CH)、1253cm-1(P=O)、1168cm-1(C-O-C)、997cm-1(P-O-C)。
NMR分析結果:0.8-1.2ppm(CH-C-)、1.4ppm(-CH-)、3.3ppm(-N(CH)、2.8-3.2ppm(-N-(CH)、3.7-4.4ppm(-CHCH-)。
元素分析結果:
理論値:C;54.17%、H;8.55%、N;8.03%
実測値:C;54.12%、H;8.54%、N;8.04%
以上の結果から、得られたポリマーDの化学構造は、MPC 50モル%、DMAA 40モル%、LMA 10モル%の割合で共重合された重合体であった。各構成単位のモル比率n:n:n=100:80:20であった。
【0052】
【表1】
【0053】
(実施例1)
エタノール(成分(a))を63.5gはかりとり、攪拌しながらポリマーA(成分(b))を0.0005g添加した後、全量が100mLとなるよう、適量の精製水を加え、本発明の手指消毒剤を得た。なお各成分の配合量は、後述の表にまとめた。
【0054】
(実施例2~15、比較例1~5)
配合を表2~3のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして手指消毒剤を得た。なお各成分の配合量は、後述の表にまとめた。
なお、表2~3に記載の単位「g/100mL」は、「w/v%」と同義である。
【0055】
各実施例、及び比較例に示す手指消毒剤について、以下に示す評価を行った。
[1.沈殿物・浮遊物の確認]
50mLのスクリュー管瓶に手指消毒剤を充填し、目視確認を行った。沈殿物・浮遊物が存在する場合を不可「×」、沈殿物・浮遊物は存在しないが、液が無色澄明ではない場合を可「○」、沈殿物・浮遊物が存在せず、かつ液が無色澄明である場合を良好「◎」とした。
【0056】
[2.消毒力の確認]
(1)菌発育抑制効果
<試験菌種>
大腸菌(Escherichia coli NBRC3972)
<試験菌液の調製>
上記菌種に対し、滅菌した生理食塩液を用いて、一定濃度(1×10-8CFU/mL)となるよう試験菌液を調製した。なお前記CFUとは、Colony Forming Unitのことであり、コロニーを形成する能力がある単位数のことである。
<MIC(最小発育阻止濃度)試験>
上記のとおり得られた手指消毒剤を原液(100%)としてSCD培地で2倍ずつ段階希釈し、最終濃度が0.05%となるように希釈系列を作製した。各希釈系列200μLに、試験菌液50μLを添加した後、24時間、37℃で培養した。培養終了後、培地の濁りを肉眼で判定し、菌の発育を認めない最小濃度(%)をもって、MICとした。本試験において、MICが1.56以下であるとき「A」、1.56より大きく、3.13以下であるとき「B」、3.13より大きいとき「C」とした。なお、本試験においては、MICが3.13以下であるとき、菌に対する殺菌力を有すると判断した。
【0057】
(2)バクテリオファージφ6不活化効果
本試験は、ウイルスの代替微生物であるバクテリオファージφ6(以下、ファージ)を用いて、ウイルス不活化効果を確認することを目的とした。また、本試験では、手指が汚染されている状況を模倣するため、夾雑有機物としてBSAポリマーを手指消毒剤に混合することとした。
(*)BSA:アルブミン、ウシ血清由来、フラクションV、pH7.0
<使用ファージ>
バクテリオファージφ6(Pseudomonas syringae phageφ6(NBRC 105899))
<使用宿主菌>
Pseudomonas syringae(NBRC 14084)
<手指消毒剤のファージ不活化効果確認試験>
(a)手指消毒剤各種、及びSCDLP液体培地(対照)を50mLコニカルチューブに4mL採取した。
(b)0.3g/LのBSA水溶液と約1.0×10(PFU/mL)に調整したファージ液を、15mLコニカルチューブ中で混合した。
(c)前手順(b)で調製した混合液を、同コニカルチューブに1mL添加、混合し、(ファージ液添加時点から)15秒間接触させた。
(d)薬剤不活化工程;15秒後、(b)の液を0.5mL採取し、あらかじめSCDLP液体培地4.5mLを添加しておいた50mLコニカルチューブに添加後、混合した。
<ファージの感染価確認試験>
(a) 検体のファージ不活化効果確認試験の(d)工程で得た液を「10希釈液」とし、1.5mLエッペンドルフチューブに1mL分取した。
(b) (a)の10希釈液0.1mL、SCDLP液体培地0.9mLを混合し、10倍希釈液とした。
(c) (b)と同様の操作を繰り返し、10倍希釈液まで作製した。
(d) 15mLのコニカルチューブに入った702軟寒天培地3mLに対し、約3.2×10(CFU/mL)に調整した宿主菌溶液0.1mL、希釈系列0.1mLをそれぞれ添加、混合した。
(e)あらかじめ30℃に加温した802寒天培地プレートに(d)の各混合液全量を添加後、プレートを傾けながら回し、液を全面に浸漬させた。
(f)固化するまで室温で放置した。
(g)固化を確認後、25℃で一晩放置した。
<感染価算出>
(a)ファージの感染価確認試験工程(g)のプレートを取り出し、溶菌斑をカウントした。
(b)以下の式より溶菌斑数からファージ感染価、及び感染価減少値を算出した。
・ファージ感染価(PFU/mL):溶菌斑数(PFU)×希釈倍率 / 0.1(mL)
・ファージ感染価(LOG[PFU/mL]):LOG[溶菌斑数(PFU)×希釈倍率 / 0.1(mL)]
・感染価減少値(LOG[PFU/mL]):各手指消毒剤におけるファージ感染価(LOG[PFU/mL])-対照におけるファージ感染価(LOG[PFU/mL])
(c)本試験において、感染価減少値(LOG[PFU/mL])が3.0以上であるとき「A」、3.0より小さく2.0以上であるとき「B」、2.0未満であるとき「C」とした。なお、感染価減少値(LOG[PFU/mL])が2.0以上であるとき、ウイルス不活化効果を有すると判断した。
【0058】
[3.ラビング時評価]
男女10人を評価者として、得られた手指消毒剤0.5mLを手指に滴下してラビングさせたとき、以下の項目を評価した。
<ラビング時のタック感>
ラビング中、両手の指を交差させたときにおける、指同士の引っ掛かり度合いを評価した。以下を基準とし、各評価者において0点~3点の範囲でスコアを決定した。
引っ掛かる感覚が非常に強い:0点
引っ掛かる感覚が強い:1点
引っ掛かる感覚が殆どない:2点
引っ掛かる感覚がない:3点
<ラビング時の伸展性>
手指全体、及び手首まで短時間で均一にラビングを行うにあたり、その容易さを評価した。以下を基準とし、各評価者において0点~3点の範囲でスコアを決定した。
短時間で均一にラビングすることが非常に困難:0点
短時間で均一にラビングすることが困難:1点
短時間で均一にラビングすることが容易:2点
短時間で均一にラビングすることが非常に容易:3点
<ラビング時のタック感・伸展性に関する判定>
項目ごとに全評価者のスコアを合計し、「合計スコア」とした。合計スコアが、25以上であるとき「A」、25未満で20以上であるとき「B」、20未満で10以上であるとき「C」、10未満であるとき「D」とした。各項目の合計スコアが全て20以上であるとき、ラビング時のタック感・伸展性が優れると判断した。
【0059】
[4.ラビング後評価]
<流水洗浄時のべたつき>
男女10人を評価者として、得られた手指消毒剤0.5mLを手指に滴下してラビングさせ、ラビング開始から5分後、手指のべたつき度合いを評価した。以下を基準とし、各評価者において0点~3点の範囲でスコアを決定した。
べたつきが非常に強い:0点
べたつきが強い:1点
べたつきが殆どない:2点
べたつきがない:3点
<流水洗浄時におけるべたつきの少なさに関する判定>
全評価者のスコアを合計し、「合計スコア」とした。合計スコアが、25以上であるとき「A」、25未満で20以上であるとき「B」、20未満で10以上であるとき「C」、10未満であるとき「D」とした。合計スコアが20以上であるとき、流水洗浄時におけるべたつきの少なさに優れると判断した。
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の手指消毒剤を用いることで、細菌とウイルスを殺滅し、手指消毒剤の使用者に対して、劣悪な使用感による手指消毒の敬遠が起こる可能性を低減し、かつ液詰まりを発生させない製剤を製造することができる。