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特開2024-62180ガラス繊維の製造装置、及びガラス繊維の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062180
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】ガラス繊維の製造装置、及びガラス繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/085 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
C03B37/085
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170013
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松浦 禅
(72)【発明者】
【氏名】松林 達也
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 博司
(57)【要約】
【課題】スクリーンの温度低下を抑制可能としたガラス繊維の製造装置、及びガラス繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】ブッシング13は、複数のノズル24を有するベースプレート21を含むブッシング本体20と、ブッシング本体20の内部に配置され、開口部34を有するスクリーン30と、を備える。また、ブッシング本体20は、冷却機構14によって冷却される被冷却部20aを有する。ブッシング13の高さ方向において、ブッシング本体20の被冷却部20aとスクリーン30との間の第1の距離D1が、ベースプレート21とスクリーン30との間の第2の距離D2よりも長い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスを流通させるフィーダーと、
前記フィーダーの下方に配置され、前記溶融ガラスを流出する複数のノズルを有するブッシングと、を備えるガラス繊維の製造装置であって、
前記ブッシングは、前記複数のノズルを有するベースプレートを含むブッシング本体と、前記ブッシング本体の内部に配置され、開口部を有するスクリーンと、を備え、
前記ブッシング本体は、冷却機構によって冷却される被冷却部を有し、
前記ブッシングの高さ方向において、前記被冷却部と前記スクリーンとの間の第1の距離が、前記ベースプレートと前記スクリーンとの間の第2の距離よりも長い、
ガラス繊維の製造装置。
【請求項2】
前記ブッシング本体は、前記スクリーンの下方への変形を規制する変形規制部を前記ブッシング本体内に有している、
請求項1に記載のガラス繊維の製造装置。
【請求項3】
前記スクリーンは、底部と、前記底部から延び、前記ブッシング本体に連結される連結部と、を有し、
前記第1の距離は、前記被冷却部と前記底部との間の距離であり、
前記第2の距離は、前記ベースプレートと前記底部との間の距離である、
請求項1に記載のガラス繊維の製造装置。
【請求項4】
前記ブッシング本体は、前記ベースプレートの周縁から上側に延びる周壁と、前記周壁から外方に延びるフランジ部と、を有し、
前記フランジ部は、前記被冷却部を含んでいる、
請求項1に記載のガラス繊維の製造装置。
【請求項5】
溶融ガラスを流通させるフィーダーと、
前記フィーダーの下方に配置され、前記溶融ガラスを流出する複数のノズルを有するブッシングと、を備えるガラス繊維の製造装置であって、
前記ブッシングは、前記複数のノズルを有するベースプレートを含むブッシング本体と、前記ブッシング本体の内部に配置され、開口部を有するスクリーンと、を備え、
前記ブッシングの高さ方向において、前記ベースプレートと前記スクリーンとの間の距離が5mm以上、かつ100mm以下に設定されている、
ガラス繊維の製造装置。
【請求項6】
ガラス繊維の製造装置を用いて複数のガラスフィラメントを成形する成形工程を備えるガラス繊維の製造方法であって、
前記ガラス繊維の製造装置は、溶融ガラスを流通させるフィーダーと、前記フィーダーの下方に配置され、前記溶融ガラスを流出する複数のノズルを有するブッシングと、を備え、
前記ブッシングは、前記複数のノズルを有するベースプレートを含むブッシング本体と、前記ブッシング本体の内部に配置され、開口部を有するスクリーンと、を備え、
前記ブッシング本体は、冷却機構によって冷却される被冷却部を有し、
前記ブッシングの高さ方向において、前記被冷却部と前記スクリーンとの間の第1の距離が、前記ベースプレートと前記スクリーンとの間の第2の距離よりも長い、
ガラス繊維の製造方法。
【請求項7】
ガラス繊維の製造装置を用いて複数のガラスフィラメントを成形する成形工程を備えるガラス繊維の製造方法であって、
前記ガラス繊維の製造装置は、溶融ガラスを流通させるフィーダーと、前記フィーダーの下方に配置され、前記溶融ガラスを流出する複数のノズルを有するブッシングと、を備え、
前記ブッシングは、前記複数のノズルを有するベースプレートを含むブッシング本体と、前記ブッシング本体の内部に配置され、開口部を有するスクリーンと、を備え、
前記ブッシングの高さ方向において、前記ベースプレートと前記スクリーンとの間の距離が5mm以上、かつ100mm以下に設定されている、
ガラス繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維の製造装置、及びガラス繊維の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、ガラス繊維の製造には、溶融ガラスを流通させるフィーダーと、ブッシングとを備える製造装置が用いられる。ブッシングは、フィーダーから供給された溶融ガラスを流出する複数のノズルを有する。このようなガラス繊維の製造装置では、ブッシングの各ノズルから溶融ガラスを流出させることで、複数のガラスフィラメントを成形することができる。また、ブッシングは、ブッシングの内部において溶融ガラス内の異物がノズル上に堆積することを防止するためのスクリーンを備える。スクリーンは、溶融ガラスが流通する開口部を有している。スクリーンは、溶融ガラスの異物がノズルに到達する前段において当該異物を捕捉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-91954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなガラス繊維の製造装置では、スクリーンの温度が低下すると、溶融ガラスの温度に影響を及ぼす。その結果、ガラス繊維の成形に悪影響を及ぼすおそれがある。
本発明の目的は、スクリーンの温度低下を抑制可能としたガラス繊維の製造装置、及びガラス繊維の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]上記課題を解決するガラス繊維の製造装置は、溶融ガラスを流通させるフィーダーと、前記フィーダーの下方に配置され、前記溶融ガラスを流出する複数のノズルを有するブッシングと、を備えるガラス繊維の製造装置であって、前記ブッシングは、前記複数のノズルを有するベースプレートを含むブッシング本体と、前記ブッシング本体の内部に配置され、開口部を有するスクリーンと、を備え、前記ブッシング本体は、冷却機構によって冷却される被冷却部を有し、前記ブッシングの高さ方向において、前記被冷却部と前記スクリーンとの間の第1の距離が、前記ベースプレートと前記スクリーンとの間の第2の距離よりも長い。
【0006】
この構成によれば、スクリーンを被冷却部から離して構成することが可能となる。このため、被冷却部の温度低下をスクリーンに伝わりづらく構成することが可能となり、その結果、スクリーンの温度低下を抑制することが可能となる。なお、被冷却部を冷却する冷却機構は、例えば、溶融ガラスがブッシング本体から外部に漏れ出ることを抑制するために設けられる。
【0007】
[2]上記[1]において、前記ブッシング本体は、前記スクリーンの下方への変形を規制する変形規制部を前記ブッシング本体内に有していてもよい。
この構成によれば、ブッシング本体の変形規制部によって、スクリーンの下方への変形を抑制可能となる。
【0008】
[3]上記[1]または[2]において、前記スクリーンは、底部と、前記底部から延び、前記ブッシング本体に連結される連結部と、を有し、前記第1の距離は、前記被冷却部と前記底部との間の距離であり、前記第2の距離は、前記ベースプレートと前記底部との間の距離であってもよい。
【0009】
この構成によれば、被冷却部の温度低下をスクリーンの底部に伝わりづらく構成することが可能となる。
[4]上記[1]から[3]のいずれか一つにおいて、前記ブッシング本体は、前記ベースプレートの周縁から上側に延びる周壁と、前記周壁から外方に延びるフランジ部と、を有し、前記フランジ部は、前記被冷却部を含んでいてもよい。
【0010】
この構成によれば、フランジ部において溶融ガラスが冷やされて凝固することで、溶融ガラスがブッシング本体の外部に漏れ出ることを抑制可能となる。
[5]上記課題を解決するガラス繊維の製造装置は、溶融ガラスを流通させるフィーダーと、前記フィーダーの下方に配置され、前記溶融ガラスを流出する複数のノズルを有するブッシングと、を備えるガラス繊維の製造装置であって、前記ブッシングは、前記複数のノズルを有するベースプレートを含むブッシング本体と、前記ブッシング本体の内部に配置され、開口部を有するスクリーンと、を備え、前記ブッシングの高さ方向において、前記ベースプレートと前記スクリーンとの間の距離が5mm以上、かつ100mm以下に設定されている。
【0011】
この構成によれば、ベースプレートとスクリーンとの間の距離が5mm以上、かつ100mm以下に設定されることで、比較的高温とされるベースプレートのより近くにスクリーンを配置することが可能となる。このため、スクリーンの温度低下を抑制することが可能となる。また、ベースプレートとスクリーンとの間の距離が5mm以上であることで、ベースプレートとスクリーンとの間の間隔を十分に確保することが可能となる。したがって、スクリーンがノズルへの溶融ガラスの流入に対して悪影響を及ぼすことを抑制可能となる。また、スクリーンとベースプレートの間で乱流が発生して、ノズルからの溶融ガラスの吐出が不安定になることを抑制可能となる。
【0012】
[6]上記課題を解決するガラス繊維の製造方法は、ガラス繊維の製造装置を用いて複数のガラスフィラメントを成形する成形工程を備えるガラス繊維の製造方法であって、前記ガラス繊維の製造装置は、溶融ガラスを流通させるフィーダーと、前記フィーダーの下方に配置され、前記溶融ガラスを流出する複数のノズルを有するブッシングと、を備え、前記ブッシングは、前記複数のノズルを有するベースプレートを含むブッシング本体と、前記ブッシング本体の内部に配置され、開口部を有するスクリーンと、を備え、前記ブッシング本体は、冷却機構によって冷却される被冷却部を有し、前記ブッシングの高さ方向において、前記被冷却部と前記スクリーンとの間の第1の距離が、前記ベースプレートと前記スクリーンとの間の第2の距離よりも長い。
【0013】
この構成によれば、スクリーンを被冷却部から離して構成することが可能となる。このため、被冷却部の温度低下をスクリーンに伝わりづらく構成することが可能となり、その結果、スクリーンの温度低下を抑制することが可能となる。なお、被冷却部を冷却する冷却機構は、例えば、溶融ガラスがブッシング本体から外部に漏れ出ることを抑制するために設けられる。
【0014】
[7]上記課題を解決するガラス繊維の製造方法は、ガラス繊維の製造装置を用いて複数のガラスフィラメントを成形する成形工程を備えるガラス繊維の製造方法であって、前記ガラス繊維の製造装置は、溶融ガラスを流通させるフィーダーと、前記フィーダーの下方に配置され、前記溶融ガラスを流出する複数のノズルを有するブッシングと、を備え、前記ブッシングは、前記複数のノズルを有するベースプレートを含むブッシング本体と、前記ブッシング本体の内部に配置され、開口部を有するスクリーンと、を備え、前記ブッシングの高さ方向において、前記ベースプレートと前記スクリーンとの間の距離が5mm以上、かつ100mm以下に設定されている。
【0015】
この構成によれば、ベースプレートとスクリーンとの間の距離が5mm以上、かつ100mm以下に設定されることで、比較的高温とされるベースプレートのより近くにスクリーンを配置することが可能となる。このため、スクリーンの温度低下を抑制することが可能となる。また、ベースプレートとスクリーンとの間の距離が5mm以上であることで、ベースプレートとスクリーンとの間の間隔を十分に確保することが可能となる。したがって、スクリーンがノズルへの溶融ガラスの流入に対して悪影響を及ぼすことを抑制可能となる。また、スクリーンとベースプレートの間で乱流が発生して、ノズルからの溶融ガラスの吐出が不安定になることを抑制可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のガラス繊維の製造装置、及びガラス繊維の製造方法によれば、スクリーンの温度低下を抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態におけるガラス繊維の製造装置を示す模式断面図である。
図2】同形態におけるブッシングの断面図である。
図3】同形態におけるブッシングの断面図である。
図4】同形態におけるブッシング本体の断面図である。
図5】変更例におけるブッシングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、ガラス繊維の製造装置、及びガラス繊維の製造方法の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0019】
図1に示すように、ガラス繊維の製造装置11は、溶融ガラスMGを流通させるフィーダー12と、フィーダー12の下方に配置されるブッシング13とを備えている。また、ガラス繊維の製造装置11は、ブッシング13の一部を冷却する冷却機構14を備える。冷却機構14は、例えば、水等の冷媒が内部を流通する冷却管14aを含む。冷却機構14は、溶融ガラスMGがブッシング13から外部に漏れ出ることを抑制する役割をなす。
【0020】
なお、図面には、互いに直交する3軸(X軸、Y軸及びZ軸)を示している。X軸は、ブッシング13の幅方向に沿って延びている。Y軸は、ブッシング13の奥行方向に沿って延びている。Z軸は、ブッシング13の高さ方向に沿って延びている。
【0021】
(フィーダー12)
ガラス繊維の製造装置11のフィーダー12には、図示を省略したガラス溶融炉で得られた溶融ガラスMGが供給される。フィーダー12は、耐火壁から構成されている。耐火壁を構成する耐火物としては、例えば、電鋳煉瓦、デンス焼成煉瓦等が挙げられる。電鋳煉瓦としては、例えば、ジルコニア系電鋳煉瓦、アルミナ系電鋳煉瓦、アルミナ・ジルコニア系電鋳煉瓦、アルミナ・ジルコニア・シリカ系電鋳煉瓦等が挙げられる。デンス焼成煉瓦としては、デンスジルコン煉瓦、デンスクロム煉瓦等が挙げられる。
【0022】
フィーダー12は、溶融ガラスMGを流下させる流路を形成するフローブロック12aを備えている。フローブロック12aについても耐火物から構成される。また、フィーダー12は、フローブロック12aの下側にブッシングブロック12bを有している。ブッシングブロック12bは、フィーダー12とブッシング13との間における溶融ガラスMGの流路を形成している。ブッシングブロック12bにより形成された流路を流下した溶融ガラスMGは、ブッシング13に供給される。ブッシングブロック12bは、例えば、上述した非導電性の耐火物から構成される。
【0023】
溶融ガラスMGのガラスとしては、例えば、Eガラス(アルカリ含有量2%以下のガラス)、Dガラス(低誘電率ガラス)、ARガラス(耐アルカリ性ガラス)、Cガラス(耐酸性のガラス)、Mガラス(高弾性率のガラス)、Sガラス(高強度、高弾性率のガラス)、Tガラス(高強度、高弾性率のガラス)、Hガラス(高誘電率のガラス)、NEガラス(低誘電率のガラス)が挙げられる。ガラスの密度は、例えば、2.0~3.0g/cmである。
【0024】
(ブッシング13)
図1図2及び図3に示すように、ブッシング13は、溶融ガラスMGが供給されるブッシング本体20と、ブッシング本体20の内部に配置されるスクリーン30と、を備える。
【0025】
ブッシング本体20は、ベースプレート21と、周壁22と、フランジ部23とを含む。
ブッシング本体20のベースプレート21は、ブッシング本体20の底部を形成している。ベースプレート21は、例えば、ブッシング13の高さ方向に対して垂直な平板状をなす。ベースプレート21は、複数のノズル24を有している。各ノズル24は、ベースプレート21の下面から下方に延びている。ブッシング13の内部に流通する溶融ガラスMGは、各ノズル24におけるノズル孔を通じてベースプレート21の下方に流出される。すなわち、ブッシング13の各ノズル24によってガラスフィラメントGFを成形される。なお、ブッシング13におけるノズル24の数は、100個以上、10000個以下の範囲内であることが好ましい。また、各ノズル24におけるノズル孔の形状は、例えば、円形状、長径と短径とを有する扁平形状等が挙げられる。
【0026】
ブッシング本体20の周壁22は、ベースプレート21の周縁から上側に延びている。周壁22は、Z軸方向から見て環状をなしている。周壁22の上端部には、フィーダー12から溶融ガラスMGが供給される。また、周壁22の内側には、溶融ガラスMGが流通される。なお、ベースプレート21または周壁22には、抵抗加熱用の図示しないターミナルが設けられている。
【0027】
ブッシング本体20のフランジ部23は、周壁22の上端部から外方に延びている。フランジ部23は、例えば、XY平面に沿って延びる平板状をなす。フランジ部23は、周壁22の全周にわたって設けられている。すなわち、フランジ部23は、Z軸方向から見て連続的な環状をなしている。
【0028】
図1に示すように、ガラス繊維の製造装置11は、ブッシング13を支持する支持部材Sを有している。支持部材Sは、例えばフィーダー12から延びている。支持部材Sは、例えば、ブッシング本体20のフランジ部23がブッシングブロック12bの下面に接するように、ブッシング13を下方から支持している。
【0029】
(被冷却部20a)
ブッシング本体20は、冷却機構14の冷却管14aによって冷却される被冷却部20aを有している。被冷却部20aは、例えば、フランジ部23に含まれる。すなわち、被冷却部20aは、フランジ部23の一部である。冷却管14aは、例えば、フランジ部23の外周縁の近傍において、フランジ部23の下面に接している。冷却管14aは、フランジ部23の外周縁に沿った略環状をなしている。この場合、被冷却部20aは、フランジ部23の外周縁に沿って形成される。被冷却部20aが冷却管14aによって冷やされることで、フランジ部23とブッシングブロック12bとの間の隙間において溶融ガラスMGが冷やされて凝固する。これにより、フランジ部23とブッシングブロック12bとの間の隙間から、溶融ガラスMGがブッシング13の外部に漏れ出ることが抑制される。
【0030】
(スクリーン30)
スクリーン30は、ブッシング本体20の周壁22の内側に配置されている。スクリーン30は、例えば板材から形成されている。スクリーン30は、ブッシング本体20の内部における溶融ガラスMGの流路を仕切るように設けられている。スクリーン30は、溶融ガラスMG内に含まれる異物を捕捉することで、当該異物がベースプレート21上に堆積するのを抑制する。
【0031】
図2及び図3に示すように、スクリーン30は、底部31と、ブッシング本体20に連結される連結部32とを有している。底部31は、ブッシング13の高さ方向に対して略垂直をなす平板状をなす。底部31は、例えば、スクリーン30において最も下方に位置する部位である。底部31は、Z軸方向から見て、スクリーン30の中央部に設けられている。
【0032】
スクリーン30の連結部32は、例えば、底部31の周縁から、ブッシング本体20の周壁22に向かって上方に傾斜しつつ延びている。すなわち、本実施形態のスクリーン30では、連結部32は、ブッシング本体20の周壁22に向かって上方に傾斜する傾斜部33を有している。連結部32は、Z軸方向から見て、底部31の周囲を囲むような環状をなしている。連結部32の外周縁は、ブッシング本体20の周壁22に対して例えば溶接によって連結されている。また、連結部32の外周縁は、例えば、周壁22の上端部に連結されている。
【0033】
スクリーン30は、溶融ガラスMGが流通可能な複数の開口部34を有する。各開口部34の形状は、例えば、円形状、楕円形状、多角形状、スリット状等が挙げられる。開口部34は、例えば、スクリーン30における底部31及び傾斜部33の各々に設けられている。
【0034】
ベースプレート21を含めたブッシング本体20及びスクリーン30の材料としては、例えば、貴金属又は貴金属合金が挙げられる。貴金属は、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、又はオスミウムである。ブッシング本体20及びスクリーン30の材料は、耐久性を高めるという観点から、白金、又は白金合金であることが好ましい。白金合金としては、例えば、白金ロジウム合金が挙げられる。
【0035】
(変形規制部41)
図2図3及び図4に示すように、ブッシング本体20は、スクリーン30の下方への変形を規制する変形規制部41をブッシング本体20内に有している。変形規制部41は、例えば、ブッシング本体20を補強する補強リブである。補強リブとしての変形規制部41は、ベースプレート21に立設されている。変形規制部41は、例えば、X軸方向に沿って延びている。変形規制部41におけるX軸方向の両端部は、周壁22の内側面に接続されている。変形規制部41の上端部は、スクリーン30の底部31の下面に接している。これにより、変形規制部41は、その上端部にてスクリーン30を支持している。
【0036】
(スクリーン30の高さ設定について)
ブッシング本体20の高さ方向、すなわちZ軸方向における、ブッシング本体20の被冷却部20aとスクリーン30の底部31との間の距離を第1の距離D1とする。また、ブッシング本体20の高さ方向における、ベースプレート21とスクリーン30の底部31との間の距離を第2の距離D2とする。本実施形態のブッシング13では、第1の距離D1は、第2の距離D2よりも長く設定されている。また、ブッシング本体20の高さ、すなわち、Z軸方向におけるベースプレート21からフランジ部23までの長さは、例えば、25mm以上、かつ100mm以下に設定されている。そして、第2の距離D2は、例えば、5mm以上、かつ100mm以下、より好ましくは10mm以上、かつ50mm以下に設定されている。
【0037】
(上記以外の構成)
ガラス繊維の製造装置11は、図示を省略したアプリケーター、及びギャザリングシューを備えている。アプリケーターは、ブッシング13から引き出された多数のガラスフィラメントGFに液体状の集束剤を塗布する。ギャザリングシューは、集束剤が塗布された多数のガラスフィラメントGFを集束させる。多数のガラスフィラメントGFがギャザリングシューにより集束されることで、ガラスストランドが得られる。ガラスストランドは、巻取り装置により巻き取られることで、ガラスストランドが巻回されたケーキが得られる。
【0038】
(ガラス繊維の製造方法)
次に、ガラス繊維の製造方法を説明する。
ガラス繊維の製造方法は、ガラス繊維の製造装置11を用いてガラスフィラメントGFを成形する成形工程を備えている。成形工程では、溶融ガラスMGがフィーダー12からブッシング13に供給される。フィーダー12からブッシング13までの溶融ガラスMGの流路及びブッシング13のブッシング本体20の内部は、溶融ガラスMGにより満たされている。溶融ガラスMG内に含まれる異物は、ブッシング本体20の内部に配置されたスクリーン30にて捕捉される。成形工程では、ブッシング13に供給された溶融ガラスMGがブッシング13の各ノズル24から流出されることにより、複数のガラスフィラメントGFが成形される。
【0039】
また、成形工程において、フィーダー12から流下する溶融ガラスMGの温度が低い場合、ブッシング本体20は、抵抗加熱用の前記ターミナルを通じた電圧印加によって、ベースプレート21を主として加熱される。このようなブッシング本体20の加熱により、ブッシング本体20の内部の溶融ガラスMGを加熱して所定の温度まで昇温させることが可能となっている。これにより、各ノズル24からの溶融ガラスMGの流出を安定させることが可能となる。
【0040】
上記の成形工程で得られたガラスフィラメントGFが集束されることで、ガラスストランドが得られる。ガラスストランドは、例えば、所定の長さに切断されたチョップドストランドとして利用することができる。また、ガラスストランドは、ミルドファイバ、ロービング、ヤーン、マット、クロス、テープ、又は組布等として利用することができる。ガラスストランドの用途としては、例えば、車両用途、電子材料用途、建材用途、土木用途、航空機関連用途、造船用途、物流用途、産業機械用途、及び日用品用途が挙げられる。
【0041】
本実施形態の効果について説明する。
(1)ブッシング13の高さ方向において、ブッシング本体20の被冷却部20aとスクリーン30との間の第1の距離D1が、ベースプレート21とスクリーン30との間の第2の距離D2よりも長い。この構成によれば、スクリーン30をブッシング本体20の被冷却部20aから離して構成することが可能となる。このため、被冷却部20aの温度低下をスクリーン30に伝わりづらく構成することが可能となり、その結果、スクリーン30の温度低下を抑制することが可能となる。
【0042】
(2)ブッシング本体20は、スクリーン30の下方への変形を規制する変形規制部41をブッシング本体20内に有している。この構成によれば、ブッシング本体20の変形規制部41によって、スクリーン30の下方への変形を抑制可能となる。
【0043】
(3)スクリーン30は、底部31と、底部31から延び、ブッシング本体20に連結される連結部32と、を有している。第1の距離D1は、被冷却部20aと底部31との間の距離であり、第2の距離D2は、ベースプレート21と底部31との間の距離である。この構成によれば、被冷却部20aの温度低下をスクリーン30の底部31に伝わりづらく構成することが可能となる。
【0044】
(4)ブッシング本体20は、ベースプレート21の周縁から上側に延びる周壁22と、周壁22から外方に延びるフランジ部23と、を有している。フランジ部23は、被冷却部20aを含んでいる。この構成によれば、フランジ部23において溶融ガラスMGが冷やされて凝固することで、溶融ガラスMGがブッシング本体20の外部に漏れ出ることを抑制可能となる。
【0045】
(5)ブッシング13の高さ方向において、ベースプレート21とスクリーン30との間の第2の距離D2が5mm以上、かつ100mm以下に設定されている。この構成によれば、第2の距離D2が5mm以上、かつ100mm以下に設定されることで、電圧印加により比較的高温とされるベースプレート21のより近くにスクリーン30を配置することが可能となる。このため、スクリーン30の温度低下を抑制することが可能となる。また、第2の距離D2が5mm以上であることで、ベースプレート21とスクリーン30との間の間隔を十分に確保することが可能となる。したがって、スクリーン30がノズル24への溶融ガラスMGの流入に対して悪影響を及ぼすことを抑制可能となる。また、スクリーン30とベースプレート21の間で乱流が発生して、ノズル24からの溶融ガラスMGの吐出が不安定になることを抑制可能となる。
【0046】
(6)変形規制部41は、ブッシング本体20を補強する補強リブである。この構成によれば、ブッシング本体20を補強する補強リブである変形規制部41によって、スクリーン30の下方への変形を抑制可能となる。また、変形規制部41が補強リブを兼ねており、他の補強リブを別に設ける必要がないため、構成の簡素化に寄与できる。
【0047】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0048】
図5に示すように、スクリーン30がブッシング13の高さ方向と垂直な平板状であってもよい。すなわち、上記実施形態のスクリーン30から傾斜部33を省略した構成であってもよい。また、図5に示すように、ブッシング13の高さ方向において、スクリーン30がフランジ部23と同じ位置に設けられていてもよい。この場合、ブッシング13の高さ方向におけるベースプレート21とスクリーン30との間の第2の距離D2が、5mm以上、かつ100mm以下に設定されることが好ましい。
【0049】
・ブッシング本体20の変形規制部41がスクリーン30に接していない構成、すなわち、スクリーン30が変形規制部41にて支持されていない構成としてもよい。また、上記実施形態のブッシング本体20から変形規制部41を省略することもできる。
【0050】
・冷却機構14によって冷却される被冷却部20aを、ブッシング本体20におけるフランジ部23以外の例えば周壁22に設定してもよい。
・フィーダー12の構成は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、ガラス繊維の製造装置11は、複数のブッシングブロック12bを積み重ねて配置された構造を有していてもよい。また、例えば、ガラス繊維の製造装置11からブッシングブロック12bを省略することもできる。この場合、ブッシング本体20のフランジ部23が、フローブロック12aの下面に接する構成であってもよい。
【0051】
・今回開示された実施形態及び変更例はすべての点で例示であって、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
11…ガラス繊維の製造装置
12…フィーダー
13…ブッシング
14…冷却機構
20…ブッシング本体
20a…被冷却部
21…ベースプレート
22…周壁
23…フランジ部
24…ノズル
30…スクリーン
31…底部
32…連結部
34…開口部
41…変形規制部
D1…第1の距離
D2…第2の距離
GF…ガラスフィラメント
MG…溶融ガラス
図1
図2
図3
図4
図5