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特開2024-6220冷却水放出装置、及び、冷却水放出装置の操作方法
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  • 特開-冷却水放出装置、及び、冷却水放出装置の操作方法 図1
  • 特開-冷却水放出装置、及び、冷却水放出装置の操作方法 図2
  • 特開-冷却水放出装置、及び、冷却水放出装置の操作方法 図3
  • 特開-冷却水放出装置、及び、冷却水放出装置の操作方法 図4
  • 特開-冷却水放出装置、及び、冷却水放出装置の操作方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006220
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】冷却水放出装置、及び、冷却水放出装置の操作方法
(51)【国際特許分類】
   G21D 1/00 20060101AFI20240110BHJP
   G21C 15/18 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G21D1/00 A
G21C15/18 S
G21C15/18 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106916
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川田 直輝
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄大
(72)【発明者】
【氏名】桑山 信之
(72)【発明者】
【氏名】岩田 知和
(72)【発明者】
【氏名】高市 直朗
(57)【要約】
【課題】冷却水の意図しない流出を回避しつつ、放水管に閉塞が生じた際に、分岐管から冷却水を的確に放出する。
【解決手段】冷却水放出装置は、原子力プラントの構成機器を冷却した冷却水を放出するための放出管と、放出管から分岐する分岐管とを備える。分岐管にはラプチャディスクが設けられる。放出管のうち分岐管との分岐点より下流側には、第1オリフィスが設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力プラントの構成機器を冷却した冷却水を放出するための放出管と、
前記放出管から分岐し、外部に連通する分岐管と、
前記分岐管に設けられたラプチャディスクと、
前記放出管のうち前記分岐管との分岐点より下流側に設けられた第1オリフィスと、
を備える、冷却水放出装置。
【請求項2】
前記第1オリフィスは、前記放出管が放水ピットに連通している場合に前記放出管を流れる前記冷却水の第1流量と、前記放出管のうち前記分岐点より下流側に閉塞が生じた場合に前記放出管を流れる前記冷却水の第2流量とが略等しくなるように構成される、請求項1に記載の冷却水放出装置。
【請求項3】
前記放出管のうち前記分岐点より上流側に設けられた第2オリフィスを更に備える、請求項1又は2に記載の冷却水放出装置。
【請求項4】
前記分岐管のうち前記分岐点と前記ラプチャディスクとの間に設けられ、開度を調整可能な流量調整弁を更に備える、請求項1又は2に記載の冷却水放出装置。
【請求項5】
前記分岐管は、前記放出管から上方に向けて分岐する、請求項1又は2に記載の冷却水放出装置。
【請求項6】
前記分岐管のうち前記ラプチャディスクより上流側に、前記分岐管と外部との間の連通状態を切替可能なベント弁が設けられる、請求項1又は2に記載の冷却水放出装置。
【請求項7】
原子力プラントの構成機器を冷却した冷却水を放出するための放出管と、
前記放出管に前記冷却水を供給するためのポンプと、
前記放出管から分岐し、外部に連通する分岐管と、
前記分岐管に設けられたラプチャディスクと、
前記放出管のうち前記分岐管との分岐点より下流側に設けられた第1オリフィスと、
前記分岐管のうち前記ラプチャディスクより上流側に設けられ、前記分岐管と外部との間の連通状態を切替可能なベント弁と、
を備える、冷却水放出装置の操作方法であって、
前記ポンプの起動後、前記分岐管における前記冷却水の液面が上昇している間、前記ベント弁を開操作する工程と、
前記分岐管における前記液面の上昇が停止した場合、前記ベント弁を閉操作する工程と、
を備える、冷却水放出装置の操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却水放出装置、及び、冷却水放出装置の操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントでは、大量の熱量を放出する原子炉等の構成機器を冷却するために、海水等の冷却水が使用されている。構成機器の冷却に用いられた冷却水は、構成機器から熱量を受け取り温度が上昇しており、所定の放水管を介して放水ピットに放出される。このように、放水管は構成機器からの熱量を含む冷却水を放出する機能を有するため、冷却性能の維持のために重要である。
【0003】
ところで原子力プラントでは、例えば地震等の自然災害の発生時のような非常時においても、冷却性能の維持が要求される。特許文献1では、正常時に冷却水の放出を行うための放水管に対して分岐管を設けることによって、非常時に放水管に閉塞が生じた場合においても、分岐管を介して冷却水が放出されることで、冷却系統の機能維持が可能な技術が開示されている。この文献では、非常時に機能する分岐管が放水管に対して高く立ち上がるように設けられることで、正常時に分岐管からの冷却水の流出が防止される一方で、非常時に放水管で閉塞が生じた場合には、水圧上昇によって冷却水が分岐管から外部に放出可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58-193492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷却水を放水ピットに放出するための放水管に対して、上記特許文献1のように分岐管を追設する場合、追設される分岐管の位置や形状によって、放水管を流れる冷却水の一部が分岐管に取り込まれて、正常時においても分岐管から冷却水が流出したり、逆に、外部から分岐管に取り込まれた空気が放水管において冷却水とともに二相流として放出されるおそれがある。
【0006】
また正常時に分岐管から冷却水が流出することを防止するとともに、非常時に分岐管から冷却水を放出することを確実に行うために、分岐管に対して、所定の圧力が印加された場合に破裂可能なラプチャディスクを設けることが考えられる。この場合、正常時にはラプチャディスクに作用する圧力を破裂圧力未満に抑えて意図しないラプチャディスクの破裂を防止するとともに、非常時にはラプチャディスクを破裂させて閉塞した放水管の代わりに冷却水を放出するための機能が確実に発揮されるように調整が必要である。また分岐管に設けられたラプチャディスクをメンテナンスするためにラプチャディスクを取り外した際に、分岐管から意図しない冷却水の流出を防止する必要もある。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、冷却水の意図しない流出を回避しつつ、放水管に閉塞が生じた際に、分岐管から冷却水を的確に放出可能な冷却水放出装置、及び、冷却水放出装置の操作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係る冷却水放出装置は、上記課題を解決するために、
原子力プラントの構成機器を冷却した冷却水を放出するための放出管と、
前記放出管から分岐し、外部に連通する分岐管と、
前記分岐管に設けられたラプチャディスクと、
前記放出管のうち前記分岐管との分岐点より下流側に設けられた第1オリフィスと、
を備える。
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態に係る冷却水放出装置の操作方法は、上記課題を解決するために、
原子力プラントの構成機器を冷却した冷却水を放出するための放出管と、
前記放出管に前記冷却水を供給するためのポンプと、
前記放出管から分岐し、外部に連通する分岐管と、
前記分岐管に設けられたラプチャディスクと、
前記放出管のうち前記分岐管との分岐点より下流側に設けられた第1オリフィスと、
前記分岐管のうち前記ラプチャディスクより上流側に設けられ、前記分岐管と外部との間の連通状態を切替可能なベント弁と、
を備える、冷却水放出装置の操作方法であって、
前記ポンプの起動後、前記分岐管における前記冷却水の液面が上昇している間、前記ベント弁を開操作する工程と、
前記分岐管における前記液面の上昇が停止した場合、前記ベント弁を閉操作する工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、冷却水の意図しない流出を回避しつつ、放水管に閉塞が生じた際に、分岐管から冷却水を的確に放出可能な冷却水放出装置、及び、冷却水放出装置の操作方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る原子力プラントの冷却系統の概略構成図である。
図2図1の冷却水放出装置の概略構成を示す模式図である。
図3図2に示す冷却水放出装置の比較例である。
図4図2でラプチャディスクが破裂した場合の様子を示す模式図である。
図5】一実施形態に係る冷却水放出装置の操作方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0013】
図1は一実施形態に係る原子力プラントの冷却系統1の概略構成図であり、図2図1の冷却水放出装置4の概略構成を示す模式図である。
【0014】
図1に示すように、原子力プラントの冷却系統1は、熱交換器3において、原子力プラントの構成機器(不図示)と冷却水とを熱交換させることで、構成機器の冷却を行うための構成である。冷却系統1は、熱交換器3に対して冷却水を供給するための冷却水供給装置2と、熱交換器3で熱交換を終えた冷却水を放出するための冷却水放出装置4とを備える。
尚、冷却水は例えば海水であるが、淡水であってもよいし、純水であってもよい。
【0015】
冷却水供給装置2は、冷却水の取水源に設けられたポンプ6によって、熱交換器3に供給するための冷却水を取り入れる。ポンプ6によって取り入れられた冷却水は、給水管7を介して熱交換器3に供給される。給水管7には、冷却水に含まれる異物等を除去するためのストレーナ10が設けられている。
【0016】
冷却水放出装置4は、熱交換器3で熱交換を終えた冷却水を外部に放出するための装置であり、放水管12を介して、放水口14に連通する放水ピット16に冷却水を放出する。放水管12は、所定の形状を有する管部材であり、本実施形態では、放水管12は主に略水平方向に沿って延在し、下流側において放水ピット16に接続されている。
【0017】
ここで図3図2に示す冷却水放出装置4の比較例である(以下、比較例に係る冷却水放出装置を符号「4´」で示す)。比較例に係る冷却水放出装置4´は、熱交換器3が放水管12を介して放水ピット16に接続されることで、熱交換器3からの冷却水の全てが放水ピット16に放出されるシンプルな構成を有する。
【0018】
放水管12には、放水管12における冷却水の流量を調整するためのオリフィス18が設けられる。本実施形態では、オリフィス18は放水管12の長さ方向に沿って4段にわたって設けられているが、オリフィス18の段数や形状は、放水管12における冷却水の設定流量に対応するように適宜設定可能である。また放水管12の形状によって冷却水の設定流量が実現されるように設計されている場合には、オリフィス18は省略されていてもよい。
【0019】
このような冷却水放出装置4´では、例えば地震等の自然災害によって放水管12に閉塞Cが生じた場合、放水管12から放水ピット16への冷却水の供給が阻害されてしまい、冷却水の外部への放出が不能になる。このような事態は、冷却系統1の冷却性能の低下・損失を招くおそれがあるが、以下に説明する冷却水放出装置4において好適に解消可能である。
【0020】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る冷却水放出装置4は、放水管12に対して、分岐管20が追設される。分岐管20は放水管12から分岐することで、放水管12に閉塞Cが生じた場合においても、放水管12からの冷却水の代替放水経路として機能するように構成される。
【0021】
分岐管20の分岐点13は、放水管12に設けられた前述のオリフィス18(以下、後述の第1オリフィス24と区別するため「第2オリフィス18」と称する)より下流側に設けられる。ここで分岐管20が追設された放水管12では、放水管12に閉塞Cが生じた場合に分岐管20に通常時に放水管12に流れる流量が流れるように、分岐管20が追設されていない放水管12(図3を参照)に比べて第2オリフィス18の抵抗を減少させることにより、分岐点13より下流側における流路抵抗が減少する。そのため、仮に図3に示す比較例に対して単に分岐管20を追設すると、正常時(放水管12に閉塞Cが生じていない場合)における放水ピット16への流量が増加してしまう。そこで本実施形態では、放水管12のうち分岐点13より下流側に第1オリフィス24が設けられる。これにより、放水管12のうち分岐点13より下流側における流路抵抗が増加するように調整でき、分岐管20が追設された影響を併殺することで、正常時における放水ピット16への流量の変化を抑えることができる。
【0022】
尚、このような分岐管20の追設に伴う放水管12の流量変化を抑えるためには、放水管12のうち分岐点13より下流側の管径を小さくすることでも実現可能であるが、放水管12の一部を交換する等の比較的規模が大きな工事が必要となる。それに対して本実施形態では、放水管12のうち分岐点13より下流側に第1オリフィス24を設置することで対応するため、より小さな工事規模で実現可能である。
【0023】
分岐管20は所定の径及び長さを有する管部材から構成されており、下流側の開口部25の近傍にラプチャディスク26が設けられる。ラプチャディスク26は、閾値以上の圧力が印加された場合に、図4に示すように破裂することで、ラプチャディスク26の前後を連通可能である。放水管12に閉塞Cが生じていない正常時には、ラプチャディスク26に作用する圧力は閾値未満であるため、ラプチャディスク26によって分岐管20の下流側は閉塞されている。一方で、放水管12に閉塞Cが生じた非常時には、放水管12からの冷却水が分岐管20に入り込むことで、ラプチャディスク26に作用する圧力が上昇する。そしてラプチャディスク26に作用する圧力が閾値以上に達すると、ラプチャディスク26が破裂し、放水管12からの冷却水は分岐管20を介して開口部25から外部に放出される。このようにして、放水管12に閉塞Cが生じた場合においても、冷却水の放出経路が確保されることで、冷却系統1の冷却性能が好適に維持される。
【0024】
尚、分岐管20のうち分岐点13とラプチャディスク26との間には、流量調整弁28が設けられる。流量調整弁28は、その開度が適宜調整されることで、放水管12から分岐管20に対する冷却水の入り込みやすさを調整可能である。
【0025】
分岐管20は、略水平方向に沿って延在する放水管12に対して上方に向けて分岐する。本実施形態では、分岐管20は、略鉛直方向に延在する第1部分20aと、第1部分20aより下流側において略水平方向に延在する第2部分20bとを含む。前述の流量調整弁28は第1部分20aに設けられ、ラプチャディスク26は第2部分20bに設けられる。
尚、放水管20、又は、分岐管20の第2部分20bの少なくとも一方は、傾斜していてもよい。
【0026】
分岐管20における冷却水の水位Hは、第1部分20aに入り込んだ冷却水の水頭と、冷却水の水面とラプチャディスク26との間にある空間Vにおける圧力とのバランスによって決定される。本実施形態では、分岐管20における冷却水の水位Hが分岐管20のうち第1部分20aにあるように調整される。仮に分岐管20における冷却水の水位Hが第2部分20bに達してしまうと、例えばメンテナンスのためにラプチャディスク26を取り外した際に、開口部25から意図しない冷却水が流出するおそれがある。また仮に冷却水が分岐管20に入り込んでいないと(つまり、分岐管20における冷却水の水位が第1部分20aに達していないと)、正常時に、放水管12を流れる冷却水に分岐管20にある空気が混入してしまう。そのため、分岐管20における冷却水の水位Hが分岐管20のうち第1部分20aにあるように調整されることで、冷却水放出装置4の好適な運用が可能となる。
【0027】
第1部分20aに入り込んだ冷却水の水頭は、分岐管20の形状(長さ・径)、放水管12における冷却水の流量、空間Vにおける圧力に基づいて決定される。本実施形態では、前述のように放水管12には第1オリフィス24及び第2オリフィス18が設けられることから、これらのオリフィスの径を調整することで放水管12における冷却水の流量を調整できる。
【0028】
また分岐管20のうちラプチャディスク26より上流側には、ベント弁30が設けられる。本実施形態では、ベント弁30は分岐管20のうち第2部分20bに設けられる。ベント弁30は開閉することにより、分岐管20と外部との間の連通状態を切り替えることにより、空間Vの圧力を調整可能である。ベント弁30が閉じられている場合、分岐管20は外部に対して隔離されており、分岐管20における冷却水の水面とラプチャディスク26との間の空間Vが密閉される。この場合、空間Vの圧力Pは、正常時にはラプチャディスク26が破裂する閾値未満になっているが、放水管12に閉塞Cが生じた際には、分岐管20における冷却水の水位が上昇することにより閾値以上に達することで、ラプチャディスク26を破裂させる(この際、空間Vに少なからず存在する空気は、冷却水の水位からラプチャディスク26に圧力を伝達するバッファとして機能する)。
尚、ベント弁30が開かれる場合には、空間Vはベント弁30を介して外部と連通することで、空間Vは大気圧に維持される。
【0029】
上記構成の冷却水放出装置4では、放水管12のうち分岐管20との分岐点13より下流側に第1オリフィス24が設けられることにより、分岐点13より下流側の放水管12における流路抵抗の調整が可能となる。その結果、正常時の分岐管20における水位Hを適度に調整することで、分岐管20からの無駄な冷却水の流出や、分岐管20から取り込まれた空気の放水管12への混入を防止しつつ(図2を参照)、閉塞Cが生じた非常時には分岐管20における圧力上昇によってラプチャディスク26が破裂されることで、放水経路の確実な確保が可能となる(図4を参照)。
【0030】
また放水管12に設けられた第1オリフィス24は、放水管12が放水ピット16に連通している正常時に放水管12を流れる冷却水の第1流量R1(図2を参照)と、放水管12のうち分岐点13より下流側に閉塞Cが生じた場合に分岐点13より上流側の放水管12及び分岐管20を流れる冷却水の第2流量R2(図4を参照)とが略等しくなるように構成される。これにより、放水管12に閉塞Cが生じた場合に、放水管12に閉塞Cが生じない場合と略等しい流量で、分岐管20から冷却水を放出でき、非常時においても正常時と同等の冷却性能の維持が可能となる。
【0031】
また放水管12のうち分岐点13より上流側に第2オリフィス18が設けられた場合には、第1オリフィス24と第2オリフィス18とのバランスによって、分岐管20における冷却水の水位Hを調整することで、冷却水の意図しない流出を回避しつつ、放水管12に閉塞Cが生じた際に、分岐管20から冷却水を的確に放出可能である。
【0032】
続いて上記構成を有する冷却水放出装置4の操作方法について説明する。図5は一実施形態に係る冷却水放出装置4の操作方法を示すフローチャートである。以下の説明では、初期状態として、冷却水放出装置4が全体として停止していることにより、放水管12に冷却水が存在していない状態を前提とする。
【0033】
まずユーザは、放水管12に冷却水を供給するためにポンプ6(図1を参照)を起動する(ステップS1)。ポンプ6が起動されると、放水管12に供給された冷却水は、放水管12を次第に満たしていき、更に冷却水の一部が分岐管20に入り込んでいく。
【0034】
分岐管20における冷却水の水位Hが上昇している間、ユーザは、分岐管20に設けられたベント弁30を開操作する(ステップS2)。これにより、分岐管20のうち冷却水の水面とラプチャディスク26との間に存在する空間Vは、ベント弁30を介して外部(大気)と連通されることで大気圧に維持される。このように放水管12に冷却水を導入するためにポンプ6を起動した際に、分岐管20に設けられたベント弁30を開操作することで、分岐管20の空間Vを大気圧にし、分岐管20に設けられたラプチャディスク26の意図しない破裂を的確に防止できる。
【0035】
続いてユーザは、分岐管20における水位上昇が停止したか否かを判断する(ステップS3)。分岐管20における冷却水の水位上昇は、冷却水の水圧と大気圧とが均衡するまで継続する。本実施形態では、図2を参照して前述したように、冷却水の水位Hが、分岐管20のうち第1部分20aにある位置まで上昇するように構成される。
【0036】
このように分岐管20における水位上昇が停止すると(ステップS3:YES)、ユーザは、ベント弁30の閉操作する(ステップS4)。これにより、分岐管20ではラプチャディスク26の意図しない破裂を招くことなく、冷却水が所定の水位Hで保持される。その結果、放水管12が閉塞した際には、分岐管20の水位Hが上昇してラプチャディスク26が破裂することで、放水経路の確保が可能となる。
【0037】
尚、分岐管20に設けられた流量調整弁28の開度は、前述の操作方法(図5を参照)の任意のタイミングで調整することができる。流量調整弁28の開度調整は、例えば、仮に放水管12のうち分岐点13より下流側に閉塞Cが生じることで、放水管12を流れる冷却水が分岐管20に流れ込んだ場合に、分岐管20における冷却水の流量が所定範囲になるように、流量調整弁28の仕様として規定されるCV特性を用いた演算結果に基づいて行われる。このような流量調整弁28の開度調整は、冷却水放出装置4に対して基本的に一度行えば足りるが、例えば、冷却水放出装置4の構成に変更がなされた場合等には必要に応じて複数回行われてもよい。
【0038】
以上説明したように上記各実施形態によれば、冷却水の意図しない流出を回避しつつ、放水管12に閉塞Cが生じた際に、分岐管20から冷却水を的確に放出可能な冷却水放出装置4、及び、冷却水放出装置4の操作方法を提供できる。
【0039】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0040】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0041】
(1)一態様に係る冷却水放出装置(1)は、
原子力プラントの構成機器を冷却した冷却水を放出するための放出管(12)と、
前記放出管から分岐し、外部に連通する分岐管(20)と、
前記分岐管に設けられたラプチャディスク(26)と、
前記放出管のうち前記分岐管との分岐点(13)より下流側に設けられた第1オリフィス(24)と、
を備える。
【0042】
上記(1)の態様によれば、放出管のうち分岐管との分岐点より下流側に第1オリフィスが設けられる。これにより、第1オリフィスによって、分岐点より下流側の放出管における流路抵抗の調整が可能となる。その結果、正常時の分岐管における水位を適度に調整することで、分岐管からの無駄な冷却水の流出や、分岐管から取り込まれた空気の放水管への混入を防止しつつ、非常時には分岐管における圧力上昇によってラプチャディスクが破裂されることで、放水経路の確実な確保が可能となる。
【0043】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記第1オリフィスは、前記放出管が放水ピットに連通している場合に前記放出管を流れる前記冷却水の第1流量(R1)と、前記放出管のうち前記分岐点より下流側に閉塞が生じた場合に前記放出管を流れる前記冷却水の第2流量(R2)とが略等しくなるように構成される。
【0044】
上記(2)の態様によれば、放出管のうち分岐点より下流側に設けられた第1オリフィスによって、放水管に閉塞が生じていない場合の放水管における冷却水の流量を調整できる。これにより、放水管に閉塞が生じていない場合に、放水管における冷却水の流量を適切に調整できる。
【0045】
(3)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記放出管のうち前記分岐点より上流側に設けられた第2オリフィス(18)を更に備える。
【0046】
上記(3)の態様によれば、放出管のうち分岐点より上流側に第2オリフィスが設けられる。第2オリフィスは、分岐管のうち分岐点より下流側に設けられた第1オリフィスとのバランスを考慮して設置されることで、冷却水の意図しない流出を回避しつつ、放水管に閉塞が生じた際に、分岐管から冷却水を的確に放出可能である。
【0047】
(4)他の態様では、上記(1)から(3)のいずれか一態様において、
前記分岐管のうち前記分岐点と前記ラプチャディスクとの間に設けられ、開度を調整可能な流量調整弁(28)を更に備える。
【0048】
上記(4)の態様によれば、分岐管のうち分岐点とラプチャディスクとの間に流量調整弁が設けられる。この態様では、流量調整弁の開度を調整することにより分岐管における流路抵抗を可変とし、放出管に閉塞が生じた際の分岐管における流体の流量を適切に調整できる。
【0049】
(5)他の態様では、上記(1)から(4)のいずれか一態様において、
前記分岐管は、前記放出管から上方に向けて分岐する。
【0050】
上記(5)の態様によれば、分岐管は、放出管に対して上方に向けて分岐する。これにより、放水管から分岐管に入り込んだ冷却水の水位は、放水管におけるオリフィスによる流路抵抗とともに水頭によって、適切に調整される。
【0051】
(6)他の態様では、上記(1)から(5)のいずれか一態様において、
前記分岐管のうち前記ラプチャディスクより上流側に、前記分岐管と外部との間の連通状態を切替可能なベント弁(30)が設けられる。
【0052】
上記(6)の態様によれば、分岐管にベント弁が設けられることで、ベント弁の開閉に伴い、分岐管における冷却水の水面とラプチャディスクとの間における圧力を調整可能である。このようなベント弁の開閉を所定のタイミングで行うことで、冷却水の意図しない流出を回避しつつ、放水管に閉塞が生じた際に、分岐管から冷却水を的確に放出可能である。
【0053】
(7)一態様に係る冷却水放出装置の操作方法は、
原子力プラントの構成機器を冷却した冷却水を放出するための放出管(12)と、
前記放出管に前記冷却水を供給するためのポンプ(6)と、
前記放出管から分岐し、外部に連通する分岐管(20)と、
前記分岐管に設けられたラプチャディスク(26)と、
前記放出管のうち前記分岐管との分岐点(13)より下流側に設けられた第1オリフィス(24)と、
前記分岐管のうち前記ラプチャディスクより上流側に設けられ、前記分岐管と外部との間の連通状態を切替可能なベント弁(30)と、
を備える、冷却水放出装置の操作方法であって、
前記ポンプの起動後、前記分岐管における前記冷却水の液面が上昇している間、前記ベント弁を開操作する工程と、
前記分岐管における前記液面の上昇が停止した場合、前記ベント弁を閉操作する工程と、
を備える。
【0054】
上記(7)の態様によれば、放水管に冷却水を導入するためにポンプを起動した際に、分岐管に設けられたベント弁が開操作される。これにより、放水管に冷却水が導入される際に、分岐管を大気圧にし、分岐管に設けられたラプチャディスクの意図しない破裂を的確に防止できる。このとき分岐管には放水管に導入された冷却水の一部が導かれることで、分岐管における水位が上昇する。続いて、分岐管における水位上昇が停止すると、ベント弁が閉操作される。これにより、分岐管ではラプチャディスクが破裂せず、放水管からの冷却水が所定の水位で保持される。これにより、放水管が閉塞した際には、分岐管の水位が上昇してラプチャディスクが破裂することで、放水経路の確保が可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1 冷却系統
2 冷却水供給装置
3 熱交換器
4 冷却水放出装置
6 ポンプ
7 給水管
10 ストレーナ
12 放水管
13 分岐点
14 放水口
16 放水ピット
18 第2オリフィス
20 分岐管
20a 第1部分
20b 第2部分
24 第1オリフィス
25 開口部
26 ラプチャディスク
28 流量調整弁
30 ベント弁
C 閉塞
V 空間
図1
図2
図3
図4
図5