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特開2024-62202格子センサーネットワークシステム、及び信号到来方向推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062202
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】格子センサーネットワークシステム、及び信号到来方向推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 3/46 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
G01S3/46
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170054
(22)【出願日】2022-10-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り [ポスター講演]格子センサネットワークにおける信号源位置推定研究会-格子センサネットワークにおける信号源位置推定研究会 開催プログラム-2022-10-MIKA
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り [ポスター講演]格子センサネットワークにおける信号源位置推定研究会-格子センサネットワークにおける信号源位置推定研究会 開催プログラム-2022-10-MIKA
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前川 直志
(57)【要約】
【課題】ビームフォーミング単体の場合より角度分解能が高く、受信レベルを反映させるための煩雑なデータ処理を必要とせずに信号到来方向の推定精度を向上させることが可能な格子センサーネットワークシステム、及び信号到来方向推定方法を提供する。
【解決手段】格子センサーネットワークシステム1において、格子状に配置されるセンサー装置10は、信号源ごとに分離された到来信号の到来方向をMUSIC法により信号源ごとに解析するMUSIC解析処理部16aと、上記到来方向をビームフォーミング法により信号源ごとに解析するビームフォーミング解析処理部16bと、ビームフォーミング角度スペクトラムにおける最大レベルに最も近いMUSIC角度スペクトラムにおけるピークに対応する角度を、信号源ごとに到来信号の到来方向が単一化された単一化到来方向推定結果として導出する単一化処理部17a、17b、・・・、17nと、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号の到来方向を推定する複数のセンサー装置(10)を監視エリア(8)内に格子状に配置し、それぞれの前記センサー装置の前記信号の到来方向推定結果に基づき前記監視エリア内の信号源(110)の位置を推定し、その位置における電波状況を監視する格子センサーネットワークシステムであって、
前記センサー装置は、
複数の前記信号源から到来する到来信号を前記信号源ごとに分離する信号分離手段(14)と、
前記分離された前記到来信号の到来方向をMUSIC法により前記信号源ごとに解析するMUSIC解析処理手段(16a)と、
前記分離された前記到来信号の到来方向をビームフォーミング法により前記信号源ごとに解析するビームフォーミング解析処理手段(16b)と、
前記MUSIC解析処理手段による前記到来信号の到来方向の解析結果、及び前記ビームフォーミング解析処理手段による前記到来信号の到来方向推定結果に基づき、前記信号源ごとに前記到来信号の到来方向が単一化された単一化到来方向推定結果を導出する到来方向単一化処理手段(17a、17b、...、17n)と、
を備えることを特徴とする格子センサーネットワークシステム。
【請求項2】
前記MUSIC解析処理手段は、前記到来信号のMUSIC角度スペクトラムを前記信号源ごとに生成するとともに、
前記ビームフォーミング解析処理手段は、前記到来信号のビームフォーミング角度スペクトラムを前記信号源ごとに生成し、
前記到来方向単一化処理手段は、前記ビームフォーミング角度スペクトラムにおける最大レベルに最も近い前記MUSIC角度スペクトラムにおけるピークに対応する角度を前記単一化到来方向推定結果として導出することを特徴とする請求項1に記載の格子センサーネットワークシステム。
【請求項3】
位置推定対象の前記信号源(TG)を設定する設定手段(36、40)と、
前記到来方向単一化処理手段により導出された前記信号源ごとの前記単一化到来方向推定結果に基づき、前記監視エリア内における前記位置推定対象の信号源の位置を推定する位置推定処理手段(51)と、
をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の格子センサーネットワークシステム。
【請求項4】
信号の到来方向を推定する複数のセンサー装置(10)を監視エリア(8)内に格子状に配置し、それぞれの前記センサー装置の前記信号の到来方向推定結果に基づき前記監視エリア内の信号源(110)の位置を推定し、その位置における電波状況を監視する格子センサーネットワークシステムの信号到来方向推定方法であって、
複数の前記信号源から到来する到来信号を前記信号源ごとに分離する信号分離ステップ(S41)と、
前記分離された前記到来信号の到来方向をMUSIC法により前記信号源ごとに解析するMUSIC解析処理ステップ(S43)と、
前記分離された前記到来信号の到来方向をビームフォーミング法により前記信号源ごとに解析するビームフォーミング解析処理ステップ(S44)と、
前記MUSIC解析処理ステップによる前記到来信号の到来方向の解析結果、及び前記ビームフォーミング解析処理ステップによる前記到来信号の到来方向推定結果に基づき、前記信号源ごとに前記到来信号の到来方向が単一化された単一化到来方向推定結果を導出する到来方向単一化処理ステップ(S45)と、
を含むことを特徴とする信号到来方向推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、格子状に配置された複数の電波状況モニタリング装置での信号の到来方向推定結果に基づいて所望の信号源の電波状況を監視する格子センサーネットワークシステム、及び信号到来方向推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代通信規格5Gの実用化が始まっており、5Gの多岐に渡るニーズに応えるため、自治体や地域の企業などの様々な主体が柔軟に構築、利用可能なローカル5Gの検討が進められている。
【0003】
この中で、さらなるモバイルトラヒックの急増に対応するため、高効率な周波数利用技術である帯域内全二重通信(InBand Full-Duplex:以下、IBFDという)の適用が検討されている。
【0004】
IBFDは、既存の複信方式に対して理想的には周波数利用効率を2倍にすることができるが、新たに多くの干渉が発生する課題があり、様々な干渉量を取得し、その結果からIBFDの適用可否を判定する制御技術が必要となる。その実現のためには、時空間における例えば5G無線端末あるいは他の種々規格の端末の無線状況を把握し、複数の端末から空間に発射される電波の干渉状況を高速、高精度に測定する干渉モニタリング技術が必要であり、その一環として任意の地点における電磁波の到来方向を推定するシステムが必要となる。
【0005】
到来方向推定を行う従来のシステムとしては、例えば、直交する3つの偏波信号をそれぞれ受信する複数のアンテナの同位置での受信信号に基づいて電磁波の到来方向を推定するもの(例えば、特許文献1等)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-96191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された電波到来方向推定システムでは、例えば、3つのアンテナを、順次、同一の測定位置まで移動させて、各受信信号を、順次、取得した段階で電界強度を求め、さらにその電界強度に基づき、例えば、ビームフォーミング(Beamforming)法、MUSIC(Multiple Signal Classification)法等の探査方法を適用して電波の到来方向を推定している。
【0008】
この従来の電波到来方向推定システムは、同一の位置で受信した全ての偏波成分を用いて当該位置での電磁波の到来方向を精度よく推定するものであって、監視エリアの各所で信号の到来方向を検出し、その検出結果に基づいて監視エリア内の電波状況をモニタリングする技術については何等開示がない。
【0009】
一方近年では、次代の無線局、無線通信システム、無線通信技術の開発促進のために、監視対象のエリア内の各所で複数の信号源(無線局)から放射される信号の到来方向を検出(推定)するとともに、その推定結果を利用して、各信号源の電波状況を把握可能なモニタリング技術への要請が高まっている。
【0010】
こうしたモニタリング技術の実現例として、受信信号からそこに混在している信号を分離して当該信号の到来方向を推定する機能を有する複数の電波状況モニタリング装置(以下、センサー装置という)を監視エリア内に格子状に配置し、格子平面上を移動する信号源に追従してセンサー装置を移動させることなく、その信号源の電波状況を監視できる格子センサーネットワークシステムが提案されている。
【0011】
格子センサーネットワークシステムにおいて、各センサー装置が信号の到来方向を推定するための代表的な信号解析方法として、前述したMUSIC法、ビームフォーミング法が知られている。いずれの方法も、分離後の受信信号から当該信号の角度スペクトラムを求める手法であり、前者は角度スペクトラムにおけるピークの角度分解能が高く、後者は角度スペクトラムに受信信号のレベルが反映されるという特徴を持つ。
【0012】
従来の格子センサーネットワークシステムにおいては、信号の到来方向を推定するための信号解析方法として、MUSIC法、またはビームフォーミング法のいずれか一方を適用する構成が一般的であった。
【0013】
従来の格子センサーネットワークシステムによれば、MUSIC法を適用した場合にはビームフォーミング法に比べて角度分解能が高いものの、角度スペクトラムに信号の受信レベル情報が反映されることはない。MUSIC法に基づいて信号の受信レベルを検出するには到来波数の推定が必要であるが、一般的にその推定精度は悪く、条件を絞らないと高精度推定の実現は困難であり、さらには信号の受信レベルを検出するために要する演算量が多いことも知られている。このため、MUSIC法を適用して信号の受信レベルが反映された高精度の信号到来方向推定結果を得ることは困難であった。
【0014】
他方、ビームフォーミング法を適用した場合は、角度スペクトラムに信号の受信レベル情報が反映されるものの、ピークの角度分解能がMUSIC法に比べて低く、結果的には高精度の信号到来方向推定結果を得ることは困難であった。
【0015】
このように、従来の格子センサーネットワークシステムでは、信号の到来方向をMUSIC単体で解析する方法では信号の受信レベルを求めるための処理負荷増大なくして推定精度の向上が見込めず、他方、ビームフォーミング単体で解析する方法では、ピークの角度分解能が低いことに起因する推定精度低下を免れないという問題点があった。
【0016】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、ビームフォーミング単体の場合より角度分解能が高く、受信レベルを反映させるための煩雑なデータ処理を必要とせずに信号到来方向の推定精度を向上させることが可能な格子センサーネットワークシステム、及び信号到来方向推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る格子センサーネットワークシステムは、信号の到来方向を推定する複数のセンサー装置(10)を監視エリア(8)内に格子状に配置し、それぞれの前記センサー装置の前記信号の到来方向推定結果に基づき前記監視エリア内の信号源(110)の位置を推定し、その位置における電波状況を監視する格子センサーネットワークシステムであって、前記センサー装置は、複数の前記信号源から到来する到来信号を前記信号源ごとに分離する信号分離手段(14)と、前記分離された前記到来信号の到来方向をMUSIC法により前記信号源ごとに解析するMUSIC解析処理手段(16a)と、前記分離された前記到来信号の到来方向をビームフォーミング法により前記信号源ごとに解析するビームフォーミング解析処理手段(16b)と、前記MUSIC解析処理手段による前記到来信号の到来方向の解析結果、及び前記ビームフォーミング解析処理手段による前記到来信号の到来方向推定結果に基づき、前記信号源ごとに前記到来信号の到来方向が単一化された単一化到来方向推定結果を導出する到来方向単一化処理手段(17a、17b、...、17n)と、を備えることを特徴とする。
【0018】
この構成により、本発明の請求項1に係る格子センサーネットワークシステムは、到来方向単一化処理手段によって、受信レベルが反映されるビームフォーミング法のメリットと、角度分解能が高いMUSIC法のメリットを生かした単一化到来方向推定結果を信号源ごとに取得することができる。これにより、ビームフォーミング単体の場合より角度分解能が高く、受信レベルを反映させるための煩雑なデータ処理を必要とせずに信号源からの信号到来方向の推定精度を向上させることが可能となる。
【0019】
また、本発明の請求項2に係る格子センサーネットワークシステムにおいて、前記MUSIC解析処理手段は、前記到来信号のMUSIC角度スペクトラムを前記信号源ごとに生成するとともに、前記ビームフォーミング解析処理手段は、前記到来信号のビームフォーミング角度スペクトラムを前記信号源ごとに生成し、前記到来方向単一化処理手段は、前記ビームフォーミング角度スペクトラムにおける最大レベルに最も近い前記MUSIC角度スペクトラムにおけるピークに対応する角度を前記単一化到来方向推定結果として導出する構成であってもよい。
【0020】
この構成により、本発明の請求項2に係る格子センサーネットワークシステムは、ビームフォーミング角度スペクトラムにおける最大レベルに最も近いMUSIC角度スペクトラムにおけるピークに対応する角度を単一化の条件として規定しておくことで、信号源ごとの単一化到来方向推定結果を容易に導出することができ、構成の簡略化、処理負荷の低減を図ることができる。
【0021】
また、本発明の請求項3に係る格子センサーネットワークシステムは、位置推定対象の前記信号源を設定する設定手段(36、40)と、前記到来方向単一化処理手段により導出された前記信号源ごとの前記単一化到来方向推定結果に基づき、前記監視エリア内における前記位置推定対象の信号源の位置を推定する位置推定処理手段(51)と、をさらに有する構成であってもよい。
【0022】
この構成により、本発明の請求項3に係る格子センサーネットワークシステムは、位置推定対象の信号源を設定手段により設定することで、監視エリア内に存在する所望の信号源について、それぞれのセンサー装置の到来方向単一化処理手段により高精度に導出された信号源ごとの単一化到来方向推定結果に基づき、当該所望の信号源の監視エリア内における所在位置を容易かつ高精度に推定することが可能となる。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の請求項4に係る信号到来方向推定方法は、信号の到来方向を推定する複数のセンサー装置(10)を監視エリア(8)内に格子状に配置し、それぞれの前記センサー装置の前記信号の到来方向推定結果に基づき前記監視エリア内の信号源(110)の位置を推定し、その位置における電波状況を監視する格子センサーネットワークシステムの信号到来方向推定方法であって、複数の前記信号源から到来する到来信号を前記信号源ごとに分離する信号分離ステップ(S41)と、前記分離された前記到来信号の到来方向をMUSIC法により前記信号源ごとに解析するMUSIC解析処理ステップ(S43)と、前記分離された前記到来信号の到来方向をビームフォーミング法により前記信号源ごとに解析するビームフォーミング解析処理ステップ(S44)と、前記MUSIC解析処理ステップによる前記到来信号の到来方向の解析結果、及び前記ビームフォーミング解析処理ステップによる前記到来信号の到来方向推定結果に基づき、前記信号源ごとに前記到来信号の到来方向が単一化された単一化到来方向推定結果を導出する到来方向単一化処理ステップ(S45)と、を含むことを特徴とする。
【0024】
この構成により、本発明の請求項4に係る信号到来方向推定方法は、上述したいずれかの構成を有する格子センサーネットワークシステムに適用することにより、到来方向単一化処理ステップによって、受信レベルが反映されるビームフォーミング法のメリットと、角度分解能が高いMUSIC法のメリットを生かした単一化到来方向推定結果を信号源ごとに取得することができる。これにより、本発明の請求項4に係る信号到来方向推定方法では、ビームフォーミング単体の場合より角度分解能が高く、受信レベルを反映させるための煩雑なデータ処理を必要とせずに信号到来方向の推定精度を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、ビームフォーミング単体の場合より角度分解能が高く、受信レベルを反映させるための煩雑なデータ処理を必要とせずに信号到来方向の推定精度を向上させることが可能な格子センサーネットワークシステム、及び信号到来方向推定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る格子センサーネットワークシステムの全体の構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る格子センサーネットワークシステムにおけるセンサー装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る格子センサーネットワークシステム全体の機能構成を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る格子センサーネットワークシステムにおける信号源位置推定処理動作を示すフローチャートである。
図5図4のステップS4におけるそれぞれのセンサー装置での信号到来方向推定処理動作を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る格子センサーネットワークシステムのセンサー装置により生成されるMUSIC角度スペクトラムの一例を示すグラフである。
図7】本発明の一実施形態に係る格子センサーネットワークシステムのセンサー装置により生成されるビームフォーミング角度スペクトラムの一例を示すグラフである。
図8】本発明の一実施形態に係る格子センサーネットワークシステムのセンサー装置から収集された到来方向推定結果データの一例を示す表図である。
図9】本発明の一実施形態に係る格子センサーネットワークシステムにおけるセンサー装置の配置形態と所望の信号源の位置推定後の電波監視状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る格子センサーネットワークシステム、及び信号到来方向推定方法の実施形態について図面を用いて説明する。
【0028】
(概要)
本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1は、図1、及び図9に示すように、予め設定した監視エリア8内に複数のセンサー装置10-11、10-12、10-13、...、10-18、10-21、10-22、10-23、...、10-28、10-31、10-32、10-33、...、10-38、......、10-81、10-82、10-83、...、10-88を格子状に配置して構成される。センサー装置10-11、10-12、10-13、...、10-18、10-21、10-22、10-23、...、10-28、10-31、10-32、10-33、...、10-38、......、10-81、10-82、10-83、...、10-88は、以下の説明においてはまとめてセンサー装置10と称することもある。
【0029】
図1図9の例においては、8行8列(8×8)の64個のセンサー装置10を配置した構成例を挙げているが、本発明はこれに限らず、例えば、n×n(n=2、3、4、5、6、...)個、或いはn×m(m≠n)個のセンサー装置10を格子状に配置した構成を構築し得るものである。
【0030】
上述したそれぞれのセンサー装置(以下、各センサー装置)10は、その配置場所において周辺の無線環境から到来する到来信号、例えば、図9に示すように、監視エリア8内に存在する複数の信号源110-1、110-2、110-3(これらをまとめて信号源110と称することもある。)から送出される混在した無線信号をアンテナ装置11の複数のアンテナ素子で受信し、各アンテナ素子の受信信号を信号処理することにより、各信号源110から送出される信号(到来信号)を分離し、該分離された到来信号を解析してその到来信号の到来方向を信号源110ごとに推定するようになっている。
【0031】
信号源110ごとに分離された到来信号の到来方向を推定する処理について、各センサー装置10は、MUSIC法とビームフォーミング法の2つの解析方法を用いて角度スペクトラムをそれぞれ生成したうえで、これら2つの角度スペクトラムから信号源110ごとに1つ(単一)の到来方向推定結果を導き出す処理、すなわち、上記2つの解析方法に基づいて推定される角度(到来方向)を単一化する単一化処理を実行するようになっている。
【0032】
上記単一化処理に関しては、例えば、MUSIC法の特徴の一つである「ピークの角度分解能が高い」点と、ビームフォーミング法の特徴の一つである「ピークには受信信号レベルが反映されている」点に着目し、「ビームフォーミング法による角度スペクトラムの最大レベル(ピーク角度)に最も近いMUSIC法による角度スペクトラムのピーク角度」を単一化処理条件と定め、該単一化処理条件に基づいて、MUSIC法とビームフォーミング法に基づく到来方向推定結果を単一化する処理を実施する。
【0033】
各センサー装置10で導出された信号源110ごとに単一化された到来方向推定結果(単一化到来方向推定結果)等は制御部30(図1図3参照)に送られる。制御部30は、監視エリア8内の全てのセンサー装置10から送られてくる、それぞれの配置位置における各信号源110からの到来信号の単一化到来方向推定結果等を受信する。さらに制御部30は、受信した、各センサー装置10のそれぞれの配置位置における信号源110ごとの単一化到来方向推定結果等をまとめてデータベース(図3に符号35で示す)に格納し、その格納された信号源110ごとの単一化到来方向推定結果等に基づいて、監視エリア8内の所望の信号源110の電波状況の監視に係る信号処理を実施する。
【0034】
所望の信号源110の位置における電波状況を監視するには、その信号源110の位置を推定する必要があり、信号源110の位置を推定するには、信号源110からの直接波の到来方向を推定する必要がある。一般的に直接波は最大受信レベルを有するので、上述した単一化到来方向推定結果が、当該信号(直接波)の到来方向推定結果として各センサー装置10から収集されてデータベース35に格納される。制御部30は、各センサー装置10から収集した単一化到来方向推定結果等に基づき、例えば、図9に示す、監視エリア8内における所望の信号源110-1の位置を推定する処理を実施する。さらに制御部30は、当該信号源110-1の位置(場所)における他の信号源110-2、110-3が送出した信号の状況をモニタリング(監視)するための信号処理等も実施するようになっている。
【0035】
このように、複数のセンサー装置10を格子状に配置した本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1によれば、各センサー装置10が格子平面(監視エリア8)上を移動する所望の信号源110-1(図9参照。以下、ターゲット信号源TGということもある。)の移動に追従して移動することなく、ターゲット信号源TGの場所における電波状況、すなわち、他の信号源110-2(以下、NTG1)、110-3(以下、NTG2)が送出した信号の状況をモニタリング(監視)することができる。
【0036】
また、本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1の特徴として、格子状に配置された各センサー装置10は、信号源110ごとに分離された到来信号を対象にMUSIC法とビームフォーミング法を用いてそれぞれ生成した2つの角度スペクトラムから信号源110ごとに単一の到来方向推定結果を導出し、制御部30に渡すようになっている。これにより、本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1では、「MUSIC法の角度スペクトラムには受信レベル情報が反映されず、ビームフォーミング法の角度スペクトラムは角度分解能が低い」点を補い、ビームフォーミング法単独の場合の解析結果に基づく到来方向推定結果に比べて角度分解能を向上させることを可能としている。
【0037】
本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1は、例えばローカル5G環境での使用が可能なものであり、捕捉する到来信号の周波数帯としては、例えば、4.6GHz~4.8GHz及び28.2GHz~29.1GHz等の帯域が想定されている。格子センサーネットワークシステム1は、ローカル5G環境での使用に限定されるものではなく、例えば、WiFiなどの他の無線システムでの使用にも適用できるものである。
【0038】
次に、本発明の一実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1の構成について図1図3を参照して説明する。
【0039】
図1に示すように、本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1は、格子状に配置される例えば64個のセンサー装置10と、これらセンサー装置10とネットワーク9を介して通信可能に接続される制御部30と、を有して構成されている。この格子センサーネットワークシステム1において、それぞれのセンサー装置10は、例えば、図2に示すような機能構成を有し、これら各センサー装置10が、例えば、図3に示すような機能構成を有する制御部30により制御されるようになっている。
【0040】
まず、センサー装置10の構成について説明する。センサー装置10は、図2に示すように、アンテナ装置11、周波数変換部12、AD変換部13、信号分離部14、信号解析部15、到来方向推定部17、外部インターフェース(I/F)部18を具備して構成される。
【0041】
アンテナ装置11は、監視エリア8(図1参照)を構成する所定の空間内の各所で、複数の信号源110(図9参照)から送出される混在した無線信号を受信するものである。アンテナ装置11の具体的な構成としては、例えば、特許文献1に記載されているような直交する3偏波をそれぞれ受信可能な3つのアンテナを複数のアンテナ素子として回転体にて回転させる構成、あるいは、複数のアンテナ素子で構成するアレーアンテナなどがある。
【0042】
なお、アンテナ装置11は、上述した構成に限られるものではない。上述した周波数帯の到来信号の到来方向を推定しその結果を後段回路に渡すことができるものであれば、アンテナの種別、数、配列、駆動方式等について種々の方式が適用可能である。
【0043】
周波数変換部12は、アンテナ装置11により受信された受信信号(無線信号)を入力し、該受信信号を中間周波数帯の信号(IF信号)に変換する処理を行う。
【0044】
AD変換部13は、周波数変換部12で周波数変換された受信信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換して信号分離部14に出力する。AD変換部13は、上述したアンテナ装置11、周波数変換部12とともに受信部20aを構成している。
【0045】
信号分離部14は、AD変換部13から入力するデジタル信号、すなわち、上述した監視エリア8の所定の空間内の各測定地点での混在した無線信号を、複数の信号源110のいずれかから送出された信号に分離する信号分離処理を行う。信号分離部14は、本発明の信号分離手段を構成している。
【0046】
信号解析部15は、信号分離部14で分離された信号(各信号源110からの当該測定地点への到来信号)を入力し、当該到来信号の到来方向を推定するために必要な信号解析処理を行う。具体的に、信号解析部15は、信号分離部14から入力する複数の信号源110からの到来信号を個別に処理する複数の解析処理部15a、15b、...、15nを有している。各解析処理部15a、15b、...、15nは、信号源110ごとに到来方向推定のための解析処理を行うものであり、それぞれが同様の構成、すなわち、MUSIC解析処理部16a、及びビームフォーミング解析処理部16bを有して構成されている。
【0047】
ここでMUSIC解析処理部16aは、信号分離部14で分離されたそれぞれの信号(入力信号)のMUSIC角度スペクトラム(図6参照)を生成する処理回路であり、ビームフォーミング解析処理部16bは、上述したそれぞれの信号(入力信号)のビームフォーミング角度スペクトラム(図7参照)を生成する処理回路である。MUSIC解析処理部16a、ビームフォーミング解析処理部16bは、それぞれ、本発明のMUSIC解析処理手段、ビームフォーミング解析処理手段を構成している。
【0048】
到来方向推定部17は、解析処理部15a、15b、...、15nにそれぞれ対応して設けられる単一化処理部17a、17b、...、17nを有して構成されている。単一化処理部17a、17b、...、17nは、それぞれ、解析処理部15a、15b、...、15nのMUSIC解析処理部16aによって求められたMUSIC角度スペクトラムと、同じく解析処理部15a、15b、...、15nのビームフォーミング解析処理部16bによって求められたビームフォーミング角度スペクトラムとに基づいて個々の信号源110ごとにその到来方向推定結果を一つにまとめて単一化到来方向推定結果として出力する単一化処理を実施するものである。
【0049】
具体的に、例えば、単一化処理部17aは、信号分離部14で分離された一つ目の信号源110に対応する入力信号から解析処理部15aのMUSIC解析処理部16aにより求められたMUSIC角度スペクトラムのピークのうち、解析処理部15aのビームフォーミング解析処理部16bにより求められたビームフォーミング角度スペクトラムにおける最大レベルに最も近いピークを単一化到来方向推定結果として出力する。同様に、単一化処理部17b、...、17nは、信号分離部14で分離されたそれぞれの信号源110に対応する入力信号から解析処理部15b、...、15nのMUSIC解析処理部16aによりそれぞれ求められたMUSIC角度スペクトラムのピークのうち、解析処理部15b、...、15nのビームフォーミング解析処理部16bによりそれぞれ求められたビームフォーミング角度スペクトラムにおける最大レベルに最も近いピークをそれぞれ単一化到来方向推定結果として出力するようになっている。単一化処理部17a、17b、...、17nは、本発明の単一化処理手段を構成している。
【0050】
外部I/F部18は、単一化処理部17a、17b、...、17nによって導き出されたそれぞれの信号源110の単一化到来方向推定結果を、ネットワーク9を介して、順次、制御部30に伝送するためのインターフェース機能部である。ここで制御部30に伝送するそれぞれの信号源110の単一化到来方向推定結果には、例えば、各測定地点(センサー装置10の配置位置)の位置情報(図8参照)等が付加されている。センサー装置10において、信号分離部14、信号解析部15、到来方向推定部17、外部I/F部18は、到来方向解析部20bを構成している。
【0051】
次に、制御部30の構成について説明する。制御部30は、例えば、PC(パーソナル・コンピュータ)等のコンピュータ装置によって構成される。このコンピュータ装置は、例えば、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)31と、ROM(Read Only Memory)32と、RAM(Random Access Memory)33と、外部I/F部34と、データベース35と、図示しないハードディスク装置等の不揮発性の記憶媒体と、各種入出力ポートとを有する。
【0052】
CPU31は、格子センサーネットワークシステム1における所望の信号源110の位置推定処理に係る統括的な制御を行うようになっている。ROM32は、CPU31を立ち上げるためのOS(Operating System)やその他のプログラム及び制御用のパラメータ等を記憶するようになっている。RAM33は、CPU31が動作に用いるOSやアプリケーションの実行コードやデータ等を記憶するようになっている。
【0053】
外部I/F部34は、所定の信号が入力される入力インターフェース機能と所定の信号を出力する出力インターフェース機能を有している。外部I/F部34は、ネットワーク9を介して上述した複数のセンサー装置10に対して通信可能に接続されている。ネットワーク9は、センサー装置10と有線により接続される(図1図3参照)ものに限らず、無線により接続されるものであってもよい。
【0054】
コンピュータ装置の入出力ポートには、入力部36及び表示部37が接続されている。
【0055】
入力部36は、コマンドなど各種情報を入力するための機能部であり、キーボード、マウス等の入力装置により構成されている。本実施形態において、入力部36は、位置推定対象の信号源110、すなわち、ターゲット信号源TGの設定(機種、周波数範囲等)、位置推定処理の開始、あるいは終了のコマンドの入力を行う機能等を備えていてもよい。入力部36は、表示部37、装置制御部40等とともに、本発明の設定手段を構成している。
【0056】
表示部37は、格子センサーネットワークシステム1の運用に係る各種の情報(コマンド等)の入力画面や測定結果など、各種情報を表示するための機能部である。表示部37は、上記入力画面等の表示中の画面から種々の情報を入力可能なタッチパネル等で構成されていてもよい。
【0057】
上述したコンピュータ装置は、CPU31がRAM33を作業領域としてROM32に格納されたプログラムを実行することにより制御部30として機能する。制御部30は、図3に示すように、装置制御部40、データ制御部50を有している。装置制御部40、及びデータ制御部50も、CPU31がRAM33の作業領域でROM32に格納された所定のプログラムを実行することにより実現されるものである。
【0058】
装置制御部40は、予め設定した監視条件に基づく信号源位置推定処理に係る装置全体の制御を行うとともに、各センサー装置10の遠隔制御を行うものである。これを実現すべく、装置制御部40は、監視条件設定機能、通信制御機能、アンテナ制御機能を有している。
【0059】
監視条件設定機能は、ユーザ操作に基づいて監視エリア8を対象とする信号源位置推定処理に係る監視条件(各種の設定項目)の設定を行う機能部である。上記設定項目としては、例えば、センサー装置10により到来方向を推定する信号の周波数範囲(到来方向推定対象周波数帯)、到来方向が推定された信号を送出している信号源110のうちのターゲットTGとする信号源110などが挙げられる。監視条件設定機能は、例えば、5Gの運用を考慮し、到来方向推定対象周波数帯として、3.7GHz帯、4.7GHz帯、28GHz帯のいずれかを設定する構成であってもよい。
【0060】
通信制御機能は、制御部30と各センサー装置10との間の通信制御を行う機能部である。通信制御機能は、例えば、センサー装置10に信号到来方向推定動作の開始指示を送出し、センサー装置10での受信動作を開始させる。
【0061】
また、通信制御機能は、受信動作を開始したセンサー装置10により、アンテナ装置11で受信された混在した無線信号から分離した信号ごとの到来方向の推定が実施されると、その到来方向の推定結果をセンサー装置10から受信する通信制御を行う。到来方向推定結果の受信が終了すると、通信制御機能は、例えば、センサー装置10に信号到来方向推定動作の終了指示を送出し、受信動作を停止させる。この他、通信制御機能は、必要に応じて、センサー装置10の各部(受信部20a、到来方向解析部20b等)を制御するための制御データを送受信する制御を実行する。
【0062】
アンテナ制御機能は、通信制御機能での通信制御により、センサー装置10のアンテナ装置11におけるアンテナ方向などの機械的な制御を行う。
【0063】
データ制御部50は、データ管理機能、信号源位置推定機能、表示制御機能を有している。データ管理機能は、各センサー装置10から送られてくる単一化到来方向推定結果を受信してデータベース35に格納する処理、格納した単一化到来方向推定結果をデータベース35から読み出して信号源位置推定機能に渡す処理を実行する。
【0064】
ここでデータ管理機能は、各センサー装置10から送られてくる単一化到来方向推定結果等を、例えば、図8に示すように、前述した位置情報(各センサー装置10の配置位置)が付加された状態で到来方向推定結果データ56としてまとめ、データベース35への格納、或いは読み出し処理を実施する制御機能を有していてもよい。図8に示す到来方向推定結果データ56は、上述した64個のセンサー装置10にそれぞれ対応して、配置位置、信号の到来方向、到来信号源数、到来信号情報等の情報を格納した構成を有している。図8に示す到来方向推定結果データ56においては、到来信号源数は、各センサー装置10の配置位置ごとに異なっている。また、同じ信号でも、配置場所が違えば、到来方向が異なっている。信号の到来方向は、例えば、図9において、センサー装置10-11を例に挙げて到来角度を示す円形の図を付記しているように(他のセンサー装置10についても同じ)、0°(度)から360度の範囲を推定する際の推定結果を示している。到来信号情報としては、受信レベル等の種々の情報が格納されている。
【0065】
図8に示す到来方向推定結果データ56の例によれば、例えば、センサー装置10-11、10-12では到来信号源であるそれぞれの信号源A、B、Cから到来する3つの信号が受信され、センサー装置10-53、10-54、10-63、10-64では到来信号源であるそれぞれの信号源F、G、Hから到来する3つの信号が受信され、センサー装置10-88では到来信号源であるそれぞれの信号源J、Kから到来する2つの信号が受信され、それぞれの信号の到来方向が推定されている。
【0066】
また、データ管理機能は、各センサー装置10による到来方向推定処理の開始に先立ってユーザが複数の信号源110のうちからターゲット信号源TG、或いは他信号源NTGを任意に設定できるように、各信号源110を識別する情報を管理する機能を有している。各信号源110を識別する情報を管理する手法としては、例えば、各信号源110の機種や周波数帯等の属性情報を記憶した属性情報管理テーブルをROM32に予め格納しておき、データ管理機能が、ユーザによって入力される属性情報に合致する信号源110を特定し、当該信号源110をターゲット信号源TGとして設定する機能構成を有していてもよい。
【0067】
信号源位置推定機能は、データ管理機能から取得した到来方向推定結果データ56に基づき、監視エリア8内におけるユーザが設定したターゲット信号源TGの所在位置を推定する機能部であり、図3における信号源位置推定部51に相当する。具体的に、信号源位置推定部51は、データベース35に格納されている到来方向推定結果データ56からユーザが設定したターゲット信号源TG(例えば、図8における信号源Fに相当)が送出する信号を到来信号として受信している全ての参照対象のセンサー装置10(例えば、図8におけるセンサー装置10-53、10-54、10-63、10-64等)を特定し、該参照対象の各センサー装置10での上記到来信号の到来方向、及び該各センサー装置10の位置情報に基づいて監視エリア8内における当該ターゲット信号源TGの位置を推定するようになっている。データ制御部50における信号源位置推定部51は、本発明の位置推定処理手段を構成している。
【0068】
表示制御機能は、表示部37に対して各種情報を表示する表示制御を実施する機能部である。表示制御の一例として、表示制御機能は、信号源位置推定部51によって推定したターゲット信号源TGの位置をユーザに対して明示すべく、例えば、監視エリア8を模した監視マップ上のターゲット信号源TGの位置に対応する個所にターゲット信号源TGであることを示すマークを表示する等の表示制御機能を備えた構成であってもよい。
【0069】
次に、本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1の信号源位置推定処理動作について図4に示すフローチャートを参照して説明する。ここでは、8行8列で64個のセンサー装置10を配置するシステム構成(図9参照)を例に挙げて説明する。
【0070】
本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1では、信号源位置推定処理の開始に先立って、当該信号源位置推定処理に必要な設定項目を設定する開始前設定処理を行う(ステップS1)。開始前設定処理は、例えば、表示部37に設定画面を表示し、その設定画面に表示される各設定項目の設定欄に対する入力部36からの設定値の入力を受け付けることにより行うことができる。ここで制御部30では、装置制御部40の監視条件設定機能が、ユーザによるターゲット信号源TG、到来方向推定対象周波数帯等の設定項目の入力(設定操作)を受け付けてその入力された各項目を設定する処理を行う。
【0071】
次いで、制御部30では、ユーザによる、例えば、入力部36での信号源位置推定処理の開始操作を受け付ける(ステップS2)。この開始操作は、例えば、上述した設定画面に表示されている「開始」ボタンを押下することにより行うことができる。
【0072】
ステップS2において信号源位置推定処理の開始操作が受け付けられると、制御部30では、装置制御部40が、各センサー装置10に対して信号到来方向推定動作の開始指示を送出する(ステップS3)。
【0073】
各センサー装置10は、制御部30から信号到来方向推定動作の開始指示を受信すると、それぞれの配置箇所で受信されている信号の到来方向を推定する処理を実施する(ステップS4)。ステップS4における各センサー装置10での信号到来方向推定処理は、制御部30の装置制御部40による遠隔制御により実施される。この遠隔制御により、各センサー装置10では、それぞれの配置地点で受信される信号、すなわち、当該配置地点の周辺に存在している信号源110から到来する信号の到来方向を信号源110ごとに推定する処理を実行する。
【0074】
ステップS4での到来方向推定処理について、図5を参照して詳しく説明する。図5に示すように、到来方向推定処理において、制御部30では、アンテナ制御機能によってそれぞれのセンサー装置10の受信部20aにおけるアンテナ装置11を遠隔制御し、監視条件設定機能により予め設定した周波数帯の無線信号を当該それぞれのセンサー装置10の配置地点における到来信号としてアンテナ装置11で受信させる(ステップS40)。
【0075】
次いで、各センサー装置10の受信部20aでは、アンテナ装置11により受信された当該配置地点への到来信号(受信信号)を周波数変換部12により周波数変換し、さらに該周波数変換後の無線信号をAD変換部13でアナログ信号からデジタル信号に変換して到来方向解析部20bの信号分離部14に入力する。信号分離部14は、入力する無線信号から当該配置地点でその周囲から到来する複数の信号源成分(各信号源110からそれぞれ送出される信号)をそれぞれ分離する信号分離処理を実施し(ステップS41)、該分離した信号源成分を信号解析部15へ入力する。
【0076】
信号解析部15において、信号分離部14で分離された各信号源成分は、当該信号源110ごとに、それぞれ、解析処理部15a、15b、...、15nへ入力される。ここで解析処理部15a、15b、...、15nは、信号分離部14から入力するそれぞれの信号源成分を取り込み、当該信号成分ごとに当該信号の到来方向を推定するための解析処理を実施する(ステップS42)。
【0077】
ステップS42での到来方向を推定するための解析処理について、センサー装置10では、MUSIC法による解析処理(ステップS43)と、ビームフォーミング法による解析処理(ステップS44)を実施する。
【0078】
具体的に、上記ステップS43において、解析処理部15a、15b、...、15nは、MUSIC解析処理部16aが上記入力信号のMUSIC角度スペクトラム(図6参照)を生成する。
【0079】
他方、上記ステップS44において、解析処理部15a、15b、...、15nは、ビームフォーミング解析処理部16bが上記入力信号のビームフォーミング角度スペクトラム(図7参照)を生成する。MUSIC解析処理部16a、ビームフォーミング解析処理部16bは、それぞれが生成した信号源110ごとのMUSIC角度スペクトラム、ビームフォーミング角度スペクトラムを、到来方向推定部17の単一化処理部17a、17b、...、17nへそれぞれ入力する。
【0080】
引き続き、単一化処理部17a、17b、...、17nは、MUSIC法による解析結果とビームフォーミング法による解析結果とから一つの到来方向推定結果(角度)を導出する単一化処理を実施する(ステップS45)。この単一化処理については、上述した単一化処理条件、すなわち、「ビームフォーミング法による角度スペクトラムの最大レベル(ピーク角度)に最も近いMUSIC法による角度スペクトラムのピーク角度」が事前に設定されている。ステップS45において、単一化処理部17a、17b、...、17nは、解析処理部15a、15b、...、15nからそれぞれ入力する信号源110ごとのMUSIC角度スペクトラムと、ビームフォーミング角度スペクトラムから、上記単一化処理条件を満足する単一化到来方向推定結果を導出するようになっている。
【0081】
ステップS45での単一化処理について、図6、及び図7を参照してさらに詳しく説明する。図6は、MUSIC法により解析された到来信号のMUSIC角度スペクトラムの一例を示し、図7は、ビームフォーミング法により解析された到来信号のビームフォーミング角度スペクトラムの一例を示している。
【0082】
図6図7に示すように、MUSIC角度スペクトラム、ビームフォーミング角度スペクトラムのいずれも、横軸を角度、縦軸を信号レベルとし、到来信号の到来方向(角度)をその信号レベルに関連付けて表わすものになっている。MUSIC角度スペクトラム、ビームフォーミング角度スペクトラムからは、縦軸における信号レベルのピークを読み取り、上記ピークに対応する横軸上の角度を、当該角度スペクトラムを有する到来信号の到来方向(角度)として推定することができる。
【0083】
MUSIC角度スペクトラム(図6参照)とビームフォーミング角度スペクトラム(図7参照)を比較すると、前者は後者に比べてピークの分解能が高いという特徴があり、後者は受信レベルが反映されるが前者は反映されないという特徴がある。この点を勘案し、本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1では、信号解析部15での信号解析結果に基づいて信号到来方向を単一化する単一化処理方法として、ビームフォーミング角度スペクトラム上に現れる最大レベルに最も近いMUSIC角度スペクトラム上のピークを求め、そのピークに対応する角度を到来方向として推定する推定処理方法を適用している。
【0084】
到来方向推定部17での信号到来方向の単一化処理の具体例を挙げると、図6及び図7に示される信号源#0、#1のうち、例えば、信号源#0について、単一化処理部17a、17b、...、17nは、図7におけるビームフォーミング角度スペクトラムから最大レベルに対応する角度(-10°)を読み取り、次いで図6のMUSIC角度スペクトラムにおける上述した角度(-10°)に最も近いピーク(=-9°)を信号源#0からの信号の到来方向として推定する処理を実施するようになっている。
【0085】
同様にして、信号源#1について、単一化処理部17a、17b、...、17nは、図7におけるビームフォーミング角度スペクトラムから最大レベルに対応する角度(5°)を読み取り、次いで図6のMUSIC角度スペクトラムにおける上述した角度(5°)に最も近いピーク(=5°)を信号源#1からの信号の到来方向と推定する処理を実施する。
【0086】
このように、各センサー装置10の到来方向推定部17では、信号源#0、または#1について、それぞれ、ビームフォーミング角度スペクトラムとMUSIC角度スペクトラムとの2つの到来方向推定結果から単一到来方向推定結果を導出する単一化処理機能を有している。この単一化処理は、単一化処理部17a、17b、...、17nにより、そこに入力されてくる信号源110ごとに実施される。これにより、各センサー装置10では、図5のステップS45において、例えば、上述した信号源#0、#1についての単一化到来方向推定結果を得ることが可能となる。
【0087】
到来方向推定部17は、上記ステップS45において単一化処理部17a、17b、...、17nにより導出された信号源110ごとの単一化到来方向推定結果を、外部I/F部18を介して制御部30へと送出する(ステップS46)。
【0088】
ここで再び図4に戻って、所望の信号源110の位置推定処理動作について説明する。制御部30では、ステップS3で各センサー装置10に対して信号到来方向推定処理の開始を指示した後、当該指示に応じて信号到来方向推定処理を行う各センサー装置10の単一化処理部17a、17b、...、17nから送られてくる単一化到来方向推定結果を外部I/F部34を介して受信し、到来方向推定結果データ56(図8参照)としてまとめたうえでデータベース35に格納する(ステップS5)。
【0089】
引き続き、制御部30のデータ制御部50において、信号源位置推定部51は、ステップS5でデータベース35に格納した到来方向推定結果データ56に基づく監視エリア8内における所望の信号源110(すなわち、上記ステップS1で予め設定されたターゲット信号源TG)の位置を推定する処理を実行する(ステップS6)。
【0090】
ステップS6でのターゲット信号源TGの位置推定結果は、データ制御部50のデータ管理機能によって、例えば、データベース35の所定の格納領域に格納される(ステップS7)。ターゲット信号源TGの位置推定結果を格納した後、当該ターゲット信号源TGの位置推定に係る一連の処理を終了する。
【0091】
次に、図4のステップS6での信号源位置推定部51による位置推定処理について具体例を挙げてさらに詳しく説明する。ここで格子センサーネットワークシステム1は、例えば、図9に示すように64個のセンサー装置10を配置して構成され、図4のステップS1において、例えば、ターゲット信号源TGとして信号源110-1(図9参照)が指定(設定)されたものとする。また、図4のステップS5において、制御部30のデータベース35には、例えば、図8に示す構成を有する到来方向推定結果データ56が格納されており、ターゲット信号源TGとして設定された信号源110-1は当該到来方向推定結果データ56中の信号源Fに相当するものとする。
【0092】
この場合、ステップS6において、信号源位置推定部51では、ステップS1で設定されたターゲット信号源TGの属性情報をキーにして到来方向推定結果データ56から信号源Fを検索し、さらに信号源Fが送出している信号を到来信号として受信しているセンサー装置10-53、10-54、10-63、10-64、及びセンサー装置10-53、10-54、10-63、10-64による信号源Fからの到来信号の到来方向をそれぞれ特定する。さらに信号源位置推定部51は、センサー装置10-53、10-54、10-63、10-64による信号源Fからの到来信号の到来方向を総合的に検証して当該到来信号を送信している信号源Fの位置を特定する。
【0093】
上述した信号源Fの位置特定の処理に際し、信号源位置推定部51は、到来方向推定結果データ56を検索することで、ターゲット信号源TGである信号源Fからの信号の到来方向が、センサー装置10-53では右下の方角(第1の方角:307度の方角)であり、センサー装置10-54では左下の方角(第2の方角:210度の方角)であり、センサー装置10-63では右上の方角(第3の方角:63度の方角)であり、センサー装置10-64では左上の方角(第4の方角:139度の方角)であることを認識する。
【0094】
次いで、信号源位置推定部51は、到来方向推定結果データ56からセンサー装置10-53、10-54、10-63、10-64の配置位置(位置情報)を認識する。図8図9に示すように、これらセンサー装置10-53、10-54、10-63、10-64の監視エリア8内における配置位置は事前に分かっている。これにより、信号源位置推定部51は、センサー装置10-53、10-54、10-63、10-64の配置位置から上述した4つの方角(第1の方角から第4の方角)が指し示す位置を求め、その位置をターゲット信号源TGである信号源Fの位置として検出する。
【0095】
このように、本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1では、図4のステップS6における所望の信号源110(ターゲット信号源TG)の位置推定処理によって、例えば、図9に示すように、監視エリア8内におけるターゲット信号源TG(信号源110-1)の位置(網掛けの丸によって示される)を特定することができる。
【0096】
図9に示すように、監視エリア8内には、一例として挙げたターゲット信号源TG(信号源110-1)以外にも他の信号源110-2(NTG1)、110-3(NTG2)等が存在し得る。本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1では、上述した到来方向推定結果データ56中、ターゲット信号源TGの位置推定に際して特定したセンサー装置10-53、10-54、10-63、10-64及びその周辺のセンサー装置10での他の信号源NTG1、NTG2からの到来信号情報を参照することで、ターゲット信号源TGの場所における他の信号源NTG1、NTG2からの干渉状況を認識することもできるようになっている。なお、他の信号源110-2(NTG1)、110-3(NTG2)もターゲット信号源TGとして設定する(図4のステップS1参照)ことにより位置推定対象とし得るものである。
【0097】
また、本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1において、各センサー装置10では、それぞれの配置位置での単数あるいは複数の信号源信号ごとに、MUSIC法とビームフォーミング法による2種類の角度スペクトラムから単一化到来方向推定結果を導出する到来方向単一化処理機能を備えている。到来方向単一化処理機能においては、例えば、ビームフォーミング角度スペクトラムにおける最大レベルに最も近いMUSIC角度スペクトラムにおけるピークに対応する角度を単一化到来方向推定結果として導出するため、ビームフォーミング法単体の場合より角度分解能が向上する。また、MUSIC法単体で受信レベルを検出するのに必要な到来波数推定を実施しなくてもよく、受信レベル検出に要する演算量も抑えることができる。これにより、本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1は、上述した2種類のうちのいずれかの角度スペクトラムを単独で用いる場合に比べて、煩雑な処理を必要とせずに精度よく信号到来方向を推定することが可能となる。
【0098】
さらに本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1の信号源位置推定方法によれば、上述した単一化到来方向推定結果として高精度に導き出された信号到来方向推定結果に基づいて監視エリア8内における所望のターゲット信号源TGの位置推定精度を向上させることも可能となる。
【0099】
以上説明したように、本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1は、信号の到来方向を推定する複数のセンサー装置10を監視エリア8内に格子状に配置し、それぞれのセンサー装置10の信号の到来方向推定結果に基づき監視エリア8内の信号源110の位置を推定し、その位置における電波状況を監視するものである。
【0100】
本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1において、センサー装置10は、複数の信号源110から到来する到来信号を信号源110ごとに分離する信号分離部14と、分離された到来信号の到来方向をMUSIC法により信号源110ごとに解析するMUSIC解析処理部16aと、分離された到来信号の到来方向をビームフォーミング法により信号源110ごとに解析するビームフォーミング解析処理部16bと、MUSIC解析処理部16aによる到来信号の到来方向の解析結果、及びビームフォーミング解析処理部16bによる到来信号の到来方向推定結果に基づき、信号源110ごとに到来信号の到来方向が単一化された単一化到来方向推定結果を導出する単一化処理部17a、17b、...、17nと、を備えて構成されている。
【0101】
この構成により、本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1は、単一化処理部17a、17b、...、17nによって、受信レベルが反映されるビームフォーミング法のメリットと、角度分解能が高いMUSIC法のメリットを生かした単一化到来方向推定結果を信号源110ごとに取得することができる。これにより、ビームフォーミング単体の場合より角度分解能が高く、受信レベルを反映させるための煩雑なデータ処理を必要とせずに信号源110からの信号到来方向の推定精度を向上させることが可能となる。
【0102】
また、本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1において、MUSIC解析処理部16aは、到来信号のMUSIC角度スペクトラムを信号源110ごとに生成するとともに、ビームフォーミング解析処理部16bは、到来信号のビームフォーミング角度スペクトラムを信号源110ごとに生成し、単一化処理部17a、17b、...、17nは、ビームフォーミング角度スペクトラムにおける最大レベルに最も近いMUSIC角度スペクトラムにおけるピークに対応する角度を単一化到来方向推定結果として導出する構成を有する。
【0103】
この構成により、本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1は、ビームフォーミング角度スペクトラムにおける最大レベルに最も近いMUSIC角度スペクトラムにおけるピークに対応する角度を単一化の条件として規定しておくことで、信号源110ごとの単一化到来方向推定結果を容易に導出することができ、構成の簡略化、処理負荷の低減を図ることができる。
【0104】
また、本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1は、位置推定対象の信号源110(ターゲット信号源TG)を設定する設定機能部(入力部36及び装置制御部40)と、単一化処理部17a、17b、...、17nにより導出された信号源110ごとの単一化到来方向推定結果に基づき、監視エリア8内における位置推定対象の信号源110の位置を推定する信号源位置推定部51と、をさらに有する構成である。
【0105】
この構成により、本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1は、位置推定対象の信号源を設定機能部により設定することで、監視エリア8内に存在する所望の信号源110(ターゲット信号源TG)について、それぞれのセンサー装置10の単一化処理部17a、17b、...、17nにより高精度に導出された信号源110ごとの単一化到来方向推定結果に基づき、当該所望の信号源110(ターゲット信号源TG)の監視エリア8内における所在位置を容易かつ高精度に推定することが可能となる。
【0106】
また、本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1の信号到来方向推定方法は、信号の到来方向を推定する複数のセンサー装置10を監視エリア8内に格子状に配置し、それぞれのセンサー装置10の信号の到来方向推定結果に基づき監視エリア8内の信号源110の位置を推定し、その位置における電波状況を監視するために、複数の信号源110から到来する到来信号を信号源110ごとに分離する信号分離ステップ(S41)と、分離された到来信号の到来方向をMUSIC法により信号源110ごとに解析するMUSIC解析処理ステップ(S43)と、分離された到来信号の到来方向をビームフォーミング法により信号源110ごとに解析するビームフォーミング解析処理ステップ(S44)と、MUSIC解析処理ステップによる到来信号の到来方向の解析結果、及びビームフォーミング解析処理ステップによる到来信号の到来方向推定結果に基づき、信号源110ごとに到来信号の到来方向が単一化された単一化到来方向推定結果を導出する到来方向単一化処理ステップ(S45)と、を含む構成を有している。
【0107】
この構成により、本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1の信号到来方向推定方法は、上述したいずれかの構成を有する格子センサーネットワークシステム1に適用することにより、到来方向単一化処理ステップによって、受信レベルが反映されるビームフォーミング法のメリットと、角度分解能が高いMUSIC法のメリットを生かした単一化到来方向推定結果を信号源110ごとに取得することができる。これにより、本実施形態に係る格子センサーネットワークシステム1の信号到来方向推定方法では、ビームフォーミング単体の場合より角度分解能が高く、受信レベルを反映させるための煩雑なデータ処理を必要とせずに信号到来方向の推定精度を向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上のように、本発明は、ビームフォーミング単体の場合より角度分解能が高く、受信レベルを反映させるための煩雑なデータ処理を必要とせずに信号到来方向の推定精度を向上させることが可能であるという効果を奏し、センサー装置を格子状に配置した格子センサーネットワークシステム、及び信号到来方向推定方法全般に有用である。
【符号の説明】
【0109】
1 格子センサーネットワークシステム
8 監視エリア
9 ネットワーク
10、10-11、10-12、10-13、...、10-18、10-21、10-22、10-23、...、10-28、10-31、10-32、10-33、...、10-38、......、10-81、10-82、10-83、...、10-88 電波状況モニタリング装置(センサー装置)
11 アンテナ装置
12 周波数変換部
13 AD変換部
14 信号分離部(信号分離手段)
15 信号解析部
15a、15b、...、15n 解析処理部
16a MUSIC解析処理部(MUSIC解析処理手段)
16b ビームフォーミング解析処理部(ビームフォーミング解析処理手段)
17 到来方向推定部
17a、17b、...、17n 単一化処理部(到来方向単一化処理手段)
30 制御部
36 入力部(設定手段)
37 表示部
40 装置制御部(設定手段)
50 データ制御部
51 信号源位置推定部(位置推定処理手段)
110、110-1、110-2、110-3 信号源
TG 位置推定対象の信号源
NTG1、2 他の信号源
図1
図2
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図9