(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006221
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】パン粉ミックス
(51)【国際特許分類】
A23L 7/157 20160101AFI20240110BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20240110BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20240110BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 E
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106917
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000188227
【氏名又は名称】松谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 健太郎
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
4B036
【Fターム(参考)】
4B025LB06
4B025LD01
4B025LD03
4B025LG02
4B025LG04
4B025LG07
4B025LG42
4B025LG43
4B025LG60
4B035LC03
4B035LE17
4B035LG21
4B035LG32
4B035LG33
4B035LG34
4B035LG35
4B035LP07
4B035LP26
4B036LF13
4B036LH12
4B036LH22
4B036LH25
4B036LH29
4B036LH30
4B036LH38
4B036LH39
4B036LH50
4B036LK01
4B036LP03
4B036LP12
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、フライ食品の製造時、特にフライ食品の油ちょう工程時のパン粉の剥がれ落ちを抑制し、サクサクとした軽い食感と外観のよい高品質なパン粉付きフライ食品を提供することにある。
【解決手段】 β澱粉をパン粉に混合したパン粉組成物を用いることにより上記の課題は解決される。詳細には、(1)沈降積1.2ml以上のβ澱粉、(2)糊化開始温度50~77℃のβ澱粉、(3)馬鈴薯澱粉、ワキシー馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、米澱粉、糯米澱粉、エンドウ豆、コーンスターチ及びワキシーコーンスターチから選ばれる一以上のβ澱粉、(4)ヒドロキシプロピル化処理、アセチル化処理及び架橋処理から選ばれる一以上の処理がされたβ澱粉、のいずれか又は複数をパン粉に混合したパン粉組成物を用いることにより、上記課題は解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
β澱粉を含んでなる、フライ食品用パン粉改質剤。
【請求項2】
沈降積1.2ml以上のβ澱粉を含んでなる、フライ食品用パン粉改質剤。
【請求項3】
馬鈴薯澱粉、ワキシー馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、米澱粉、糯米澱粉、エンドウ豆、コーンスターチ及びワキシーコーンスターチから選ばれる一以上のβ澱粉を含んでなる、フライ食品用パン粉改質剤。
【請求項4】
ヒドロキシプロピル化処理、アセチル化処理及び架橋処理から選ばれる一以上の処理がされたβ澱粉を含んでなる、フライ食品用パン粉改質剤。
【請求項5】
糊化開始温度50~77℃のβ澱粉を含んでなる、フライ食品用パン粉改質剤。
【請求項6】
パン粉100質量部に対して1~60質量部の割合で用いる、請求項1~5のいずれか一項に記載のフライ食品用パン粉改質剤。
【請求項7】
水分10~40%のパン粉100質量部に対して1~60質量部の割合で用いる、請求項1~5のいずれか一項に記載のフライ食品用パン粉改質剤。
【請求項8】
目開き5~30mmメッシュパスのパン粉100質量部に対して1~60質量部の割合で用いる、請求項1~5のいずれか一項に記載のフライ食品用パン粉改質剤。
【請求項9】
パン粉及びβ澱粉を含んでなる、フライ食品用パン粉ミックス。
【請求項10】
パン粉及び沈降積1.2ml以上のβ澱粉を含んでなる、フライ食品用パン粉ミックス。
【請求項11】
パン粉と、馬鈴薯澱粉、ワキシー馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、米澱粉、糯米澱粉、エンドウ豆、コーンスターチ及びワキシーコーンスターチから選ばれる一以上のβ澱粉を含んでなる、フライ食品用パン粉ミックス。
【請求項12】
パン粉と、ヒドロキシプロピル化処理、アセチル化処理及び架橋処理から選ばれる一以上の処理がされたβ澱粉を含んでなる、フライ食品用パン粉ミックス。
【請求項13】
パン粉及び糊化開始温度50~77℃のβ澱粉を含んでなる、フライ食品用パン粉ミックス。
【請求項14】
パン粉100質量部に対してβ澱粉を1~60質量部含む、請求項9~13のいずれか一項に記載のフライ食品用パン粉ミックス。
【請求項15】
パン粉の水分が10~40%である、請求項9~13のいずれか一項に記載のフライ食品用パン粉ミックス。
【請求項16】
パン粉が目開き5~30mmメッシュパスである、請求項9~13のいずれか一項に記載のフライ食品用パン粉ミックス。
【請求項17】
200~3000mPa・sのバッター液を塗布した食品素材に付着させて使用するための、請求項9~13のいずれか一項に記載のフライ食品用パン粉ミックス。
【請求項18】
食品素材が、請求項9~13記載のフライ食品用パン粉ミックスが付着されてなる、パン粉付きフライ用食品。
【請求項19】
食品素材が、200~3000mPa・sのバッター液が塗布され、さらに請求項9~13記載のフライ食品用パン粉ミックスが付着されてなる、パン粉付きフライ用食品。
【請求項20】
食品素材が、コロッケ種及び/又は餡種である、請求項18記載のパン粉付きフライ用食品。
【請求項21】
食品素材に請求項9~13のいずれか一項に記載のフライ食品用パン粉ミックスを付着させる工程と、これを油ちょうする工程を含む、パン粉付きフライ食品の製造方法。
【請求項22】
食品素材に200~3000mPa・sのバッター液を塗布し、次いで、請求項9~13のいずれか一項に記載のフライ食品用パン粉ミックスを付着させる工程を含む、パン粉付きフライ食品の製造方法。
【請求項23】
食品素材にβ澱粉を含むパン粉ミックスを付着させて油ちょうする、油ちょう時のパン粉の剥離を抑制する方法。
【請求項24】
食品素材に沈降積1.2ml以上のβ澱粉を含むパン粉ミックスを付着させて油ちょうする、油ちょう時のパン粉の剥離を抑制する方法。
【請求項25】
食品素材に馬鈴薯澱粉、ワキシー馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、米澱粉、糯米澱粉、エンドウ豆、コーンスターチ及びワキシーコーンスターチから選ばれる一以上のβ澱粉を含むパン粉ミックスを付着させて油ちょうする、油ちょう時のパン粉の剥離を抑制する方法。
【請求項26】
食品素材にヒドロキシプロピル化処理、アセチル化処理及び架橋処理から選ばれる一以上の処理がされたβ澱粉を含むパン粉ミックスを付着させて油ちょうする、油ちょう時のパン粉の剥離を抑制する方法。
【請求項27】
食品素材に糊化開始温度50~77℃のβ澱粉を含むパン粉ミックスを付着させて油ちょうする、油ちょう時のパン粉の剥離を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン粉改質剤及びそれを利用したパン粉ミックス、並びにそのパン粉ミックスを利用したフライ食品に関する。
【背景技術】
【0002】
パン粉付きフライ食品は、生の畜肉、魚介、野菜などの素材に小麦粉(打ち粉)をまぶし、液卵やバッター液に浸漬した後、パン粉を付着させて油ちょうして製造するのが一般的である。ここで、パン粉の付着性そのものが不良である場合のほか、素材に含まれる水分が油ちょう時に蒸発してバッター衣が破裂等してもパン粉は剥がれ落ちやすくなるため、打ち粉、バッター液、パン粉のそれぞれを改質してパン粉の剥がれ落ちを低減する試みがされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、蛋白質及びトランスグルタミナーゼを含む油ちょう食品用打ち粉が、衣の剥離を防止できるものとして開示され、特許文献2には、蛋白含有物質(粉末状大豆タンパク含有物質、卵白粉および乳蛋白含有物質を特定割合で含む)、油脂ならびに穀粉類および/または澱粉類を特定の割合で含むパン粉付けフライ食品用バッターミックスを用いると、フライ時にパン粉の脱落がないことを開示している。特許文献3には、乾燥パン粉にα化澱粉及び/又は粉状蛋白と増粘多糖類とを混合したパン粉組成物とすれば、素材に直接まぶしても容易かつ確実に付着して、少量の油でも調理できることが開示されている。また、特許文献4は、α化ヒドロキシプロピル化澱粉及び/又はα化アセチル化澱粉を含有するパン粉改質剤をパン粉に混合したパン粉ミックスとすれば、素材に直接まぶしたときの付着性がよく、外観と食感のよいパン粉付調理食品を簡便に製造できることを開示している。
【0004】
しかし、これまでに提案された打ち粉、バッター、パン粉組成物、とりわけ、特許文献3、4に例示される簡便性を重視したフライ食品用パン粉ミックスでは、パン粉の剥がれ落ちが大幅に改善されるとまではいえなかった。通常、フライ食品のサクサクとした軽い食感は、素材表面全体を覆う薄い衣が形成されたときに発現するため、素材に付着するバッター液量を低減しようと試みるところ、そうすると今度はパン粉の付着性が悪化するため、薄衣のフライ食品におけるパン粉の剥がれ落ちを抑制できる手段が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-250475号公報
【特許文献2】特開2012-165710号公報
【特許文献3】特開2012-39913号公報
【特許文献4】国際公開WO2020/027306
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、フライ食品の製造時、特にフライ食品の油ちょう工程時のパン粉の剥がれ落ちを抑制し、サクサクとした軽い食感と外観のよい高品質なパン粉付きフライ食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく種々検討したところ、β澱粉をパン粉に混合したパン粉組成物を用いることにより、油ちょう時のパン粉の剥がれ落ちが大幅に軽減されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、主にはパン粉改質剤及びパン粉組成物、並びにそれらを利用したフライ食品であって、以下の[1]~[27]から構成される。
[1]β澱粉を含んでなる、フライ食品用パン粉改質剤。
[2]β澱粉が沈降積1.2ml以上である、前記[1]記載のフライ食品用パン粉改質剤。
[3]β澱粉が馬鈴薯澱粉、ワキシー馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、米澱粉、糯米澱粉、エンドウ豆、コーンスターチ及びワキシーコーンスターチから選ばれる一以上である、前記[1]又は[2]に記載のフライ食品用パン粉改質剤。
[4]β澱粉が糊化開始温度50~77℃である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のフライ食品用パン粉改質剤。
[5]β澱粉がヒドロキシプロピル化処理、アセチル化処理及び架橋処理から選ばれる一以上の処理がされたことを特徴とする、前記[1]~[4]のいずれかに記載のフライ食品用パン粉改質剤。
[6]パン粉100質量部に対して1~60質量部の割合で用いる、前記[1]~[5]のいずれかに記載のフライ食品用パン粉改質剤。
[7]水分10~40%のパン粉100質量部に対して1~60質量部の割合で用いる、前記[1]~[6]のいずれかに記載のフライ食品用パン粉改質剤。
[8]目開き5~30mmメッシュパスのパン粉100質量部に対して1~60質量部の割合で用いる、前記[1]~[7]のいずれかに記載のフライ食品用パン粉改質剤。
[9]パン粉及びβ澱粉を含んでなる、フライ食品用パン粉ミックス。
[10]β澱粉が沈降積1.2ml以上である、前記[9]記載のフライ食品用パン粉ミックス。
[11]β澱粉が馬鈴薯澱粉、ワキシー馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、米澱粉、糯米澱粉、エンドウ豆、コーンスターチ及びワキシーコーンスターチから選ばれる一以上である、前記[9]又は[10]に記載のフライ食品用パン粉ミックス。
[12]β澱粉がヒドロキシプロピル化処理、アセチル化処理及び架橋処理から選ばれる一以上の処理がされたことを特徴とする、前記[9]~[11]のいずれかに記載のフライ食品用パン粉ミックス。
[13]β澱粉が糊化開始温度50~77℃である、前記[9]~[12]のいずれかに記載のフライ食品用パン粉ミックス。
[14]パン粉100質量部に対してβ澱粉を1~60質量部含む、前記[9]~[13]のいずれかに記載のフライ食品用パン粉ミックス。
[15]パン粉の水分が10~40%である、前記[9]~[14]のいずれかに記載のフライ食品用パン粉ミックス。
[16]パン粉が目開き5~30mmメッシュパスである、前記[9]~[15]のいずれかに記載のフライ食品用パン粉ミックス。
[17]200~3000mPa・sのバッター液を塗布した食品素材に付着させて使用するための、前記[9]~[16]のいずれかに記載のフライ食品用パン粉ミックス。
[18]食品素材が、前記[9]~[17]のいずれかに記載のフライ食品用パン粉ミックスが付着されてなる、パン粉付きフライ用食品。
[19]食品素材が、200~3000mPa・sのバッター液が塗布され、さらに前記[9]~[18]記載のフライ食品用パン粉ミックスが付着されてなる、パン粉付きフライ用食品。
[20]食品素材が、コロッケ種及び/又は餡種である、前記[18]記載のパン粉付きフライ用食品。
[21]食品素材に前記[9]~[17]のいずれかに記載のフライ食品用パン粉ミックスを付着させる工程と、これを油ちょうする工程を含む、パン粉付きフライ食品の製造方法。
[22]食品素材に200~3000mPa・sのバッター液を塗布し、次いで、前記[9]~[17]のいずれかに記載のフライ食品用パン粉ミックスを付着させる工程を含む、パン粉付きフライ食品の製造方法。
[23]食品素材にβ澱粉を含むパン粉ミックスを付着させて油ちょうする、油ちょう時のパン粉の剥離を抑制する方法。
[24]β澱粉が、沈降積1.2ml以上である、前記[23]記載の油ちょう時のパン粉の剥離を抑制する方法。
[25]β澱粉が、馬鈴薯澱粉、ワキシー馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、米澱粉、糯米澱粉、エンドウ豆、コーンスターチ及びワキシーコーンスターチから選ばれる一以上である、前記[23]又は[24]記載の油ちょう時のパン粉の剥離を抑制する方法。
[26]β澱粉が、ヒドロキシプロピル化処理、アセチル化処理及び架橋処理から選ばれる一以上の処理がされたことを特徴とする、前記[23]~[25]のいずれかに記載の油ちょう時のパン粉の剥離を抑制する方法。
[27]β澱粉が、糊化開始温度50~77℃である、前記[23]~[26]のいずれかに記載の油ちょう時のパン粉の剥離を抑制する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、素材表面のバッター液に対するパン粉の付着性が良好となるだけでなく、油ちょう時の剥がれ落ちが大幅に軽減されるため、見た目がよく商品価値の高いパン粉付きフライ食品を提供することができる。また、パン粉の剥がれ落ちが軽減されるため、製品歩留まりの改善や油ちょう油の汚れ防止のメリットもある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のパン粉付きフライ食品とは、食品素材に少なくともパン粉をまぶして油ちょうしたものをいう。本明細書において使用される「油ちょう」の用語は、主に油で揚げる工程を指すものであり、少量の油で揚げ焼きをするとか油を塗布して熱風乾燥させるなど、油を利用して調理する工程はこの「油ちょう」に含まれる。パン粉付きフライ食品に用いられる食品素材は、食せるものであれば何ら限定はなく、肉、魚、野菜などを喫食しやすいよう適当な大きさに分割した食品素材はもちろんのこと、コロッケ種(馬鈴薯、甘藷、里芋などの野菜を茹でたり蒸したりして潰し、調味・成形したもの)や餡種(野菜・肉・魚介のミンチ又はペースト、ホワイトソース、ブラウンソース、カレー、中華餡、ケチャップ、マヨネーズ、タルタルソース、とんかつソース、カスタード、クリーム、チーズ、アイス、餡子、ジャム、ゼリーなど、保形性のある食品素材を利用して調味・成形した食品)などでもよく、また、これらを組み合わせて成形したものでもよい。コロッケ種や餡種は、パン粉が付着できるだけの可塑性と水分を備えることから、バッター液を介さずに、以降説明する本発明のパン粉改質剤又はパン粉組成物を直接付着させてパン粉付きフライ食品とすることもできる。
【0011】
本発明におけるパン粉の「改質」とは、食品素材に付着したバッター液に対するパン粉の付着性向上及び/又はその食品の油ちょう後のパン粉の剥がれの抑制をいう。具体的には、例えば、同一重量・大きさの食品素材(種・餡)に各改質剤及びパン粉(パン粉ミックス)をまぶして付着したパン粉の重量(A)が大きいほど付着性が向上したといえ、また、油ちょうにより剥がれたパン粉の重量(B)を(A)で除した値が小さいほど、油ちょう時の剥がれが抑制されたといえる。また、改質剤無添加パン粉における当該(B/A)の値を100としたときの、改質剤添加パン粉における(B/A)の値を算出(以降、「剥離率」ともいう。)して比較することにより、改質剤間の効果を容易に比較することもできる。剥離率が100を下回るときにパン粉剥がれが抑制されたといえ、90以下、80以下、70以下又は60以下のときにより抑制されたといえ、50以下、40以下、30以下又は20以下のときにさらに抑制されたといえる。
【0012】
本発明のパン粉の改質剤としての有効成分は、β澱粉である。発明者らは、パン粉の食品素材への付着性及び油ちょう時の剥がれを防止しようと、素材への付着性が高いと目されるデキストリンや増粘剤(α化澱粉含む)を利用する手法を種々検討してきた。しかし、デキストリンや増粘剤は、食品素材やバッター液への付着性は確かに良好であるものの、パン粉の流動性が悪くなり、その後に続くパン粉付けから油ちょうに至るまでの工程において、作業適性・機械適性に問題が生じる。特に、軽いサクサク食感が得られる薄衣を目的として使用する粘度の低いバッター液は水分値が高く、改質剤としてデキストリンや増粘剤の種類を検討してもパン粉の剥がれ抑制効果はほとんど認められなかった。
【0013】
本発明のパン粉改質剤の有効成分は、先述のとおりβ澱粉であり、その種類は特に問わない。β澱粉としては、例えば、馬鈴薯、甘藷、タピオカ、小麦、米、コーン、サゴ、緑豆、エンドウ豆、藻に含まれる澱粉、又はこれらのワキシー種に含まれる澱粉を利用することができ、植物そのままを粉砕・乾燥したものを利用してもよいし、抽出澱粉として用いてもよいし、それらを原料とする加工澱粉としたものを用いてもよい。油ちょう時のパン粉剥がれの抑制効果をより求める場合は、馬鈴薯澱粉、ワキシー馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、米澱粉、糯米澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチから選ばれる一以上を選択すればよく、加工澱粉でない場合は、地下茎澱粉を選択するのがよい。また、糊化開始温度50℃~77℃又は50~66℃のβ澱粉を適宜選択してもよい。この糊化開始温度は、アミログラフなど昇温時粘度変化計測機器(例えば、Brabender社のViscograph-Eなど)における糊化ピーク粘度が、150~3,000BUとなるように無水4~25%(w/w)の範囲で調製した澱粉懸濁液を用いて計測したアミログラムで確認できる。本発明にいうβ澱粉には、先述のとおり加工澱粉も含まれるが、その加工澱粉の具体的物質名は以下である;ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、酢酸デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、リン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン。ここで、ヒドロキシプロピル化又はアセチル化の処理を施す場合は、置換度(DS)を0.18以下、好ましくは0.17以下とすればよく、より好ましくは、0.01~0.16とするのがよい。また、ヒドロキシプロピル化又はアセチル化の処理に加えてさらに架橋処理を施す場合は、後述する沈降積の範囲を逸脱しない程度(低架橋)が好ましい。なお、DSの値は、公定法(「第9版 食品添加物公定書」のヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの項(p.843-845)、又はアセチル化アジピン酸架橋デンプンの項(p.380)に記載の方法)により分析したときの値、すなわち、当該デンプン中におけるヒドロキシプロピル基又はアセチル基の重量%(それぞれHP(%)、Ac(%)とする。)を用いて、以下の計算式で算出される:エーテル化のDS=(162×HP)÷(6000-59×HP)、アセチル化のDS=(162×Ac)÷(4300-42×Ac)。なお、以上の加工は必ず施す必要があるのでなく、例えば、地下茎澱粉を原料として選択する場合は、加工しないで又は漂白しただけで、本発明の効果を十分発揮することができる。
【0014】
本発明のパン粉改質剤は、上述したβ澱粉がその過半を占める。すなわち、β澱粉が少なくとも50質量%以上、好ましくは60質量%以上、70質量%以上であることを要する。また、本発明の効果をさらに効率よく得たい場合は、沈降積が1.2ml以上又は1.5ml以上がよく、好ましくは2ml以上又は2.4ml以上のβ澱粉を選択するのがよい。ここで、「沈降積」とは、以下の方法による測定値をいう:まず、澱粉試料0.15g(固形物換算)を試験管に計量し、あらかじめ調製しておいた試薬(塩化アンモニウム26質量%、塩化亜鉛10質量%、水64%により調製)15mlを注ぎ込む。次に、卓上バイブレーターを用いて、試験管中の澱粉試料を均一に分散させ、直ちに沸騰浴中に固定して10分間加熱後、25~35℃まで冷却する。そして、この試験管中の澱粉試料を、卓上バイブレーターを用いて再度分散させ、10ml容量メスシリンダーに10ml流し込み、25℃で20時間静置後、その沈殿物の目盛値を読み取る(この目盛値が「沈降積」であり、最大値は10mlである。)。
【0015】
本発明のパン粉改質剤は、上記の有効成分以外の成分(副材料)を含んでよく、例えば、タンパク質素材(例えば、卵白粉、脱脂粉乳、大豆たんぱく、グルテン、ゼラチンなど)、増粘多糖類(キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カードラン、プルランなど)、調味素材(塩、糖、香辛料、アミノ酸、有機酸など)、増量剤(本発明の有効成分となる加工澱粉以外の澱粉、デキストリンなど)などを含むことができる。これら副材料は、本発明のパン粉改質剤中、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下、又は30質量%以下であることがより好ましい。
【0016】
本発明のパン粉改質剤は、パン粉に予め混合した「パン粉ミックス」として用いる。すなわち、本発明のパン粉ミックスは、本発明のパン粉改質剤及びパン粉を含んでなる。本発明のパン粉ミックスにおける当該パン粉改質剤は、有効成分であるβ澱粉が、パン粉100質量部に対して1~80質量部で含まれるようにすればよいが、60質量部を超えると、量依存的に本発明の効果が得られることはなくなるため、費用対効果の観点から1~60質量部にとどめるのが好ましく、1~30質量部、1~15質量部又は3~15質量部とするのがより好ましい。
【0017】
本発明のパン粉ミックスは、上述のとおり、本発明のパン粉改質剤及びパン粉を含有するものであるが、それらの混合方法には制限がなく、一般的な攪拌器混合や気流混合することで調製することができる。もっとも、パン粉改質剤とパン粉の平均粒径が著しく異なる場合、特に、パン粉改質剤に含まれる各素材の平均粒径がパン粉より極端に小さい場合は均一に混合しにくくなるため、パン粉改質剤を予め造粒・顆粒化してからパン粉と混合して調製することもできる。なお、パン粉改質剤の好ましい平均粒径の目安は、3~50μm又は15~40μm程度である。ここでいう平均粒径は、レーザー回折・散乱法による体積平均粒径(MV)であり、例えば、Malvern社のMASTERSIZER 3000で測定することができる。
【0018】
本発明のパン粉ミックスは、通常、バッター液が塗布された食品素材、又は、打ち粉及びバッター液が塗布された食品素材にまぶして使用される。打ち粉又はバッター液を塗布せず、食品素材(例えば、コロッケ種や餡)に直接まぶして使用してもよいが、本発明の効果がより明確に発揮されるためには、少なくともバッター液が塗布された素材にまぶして使用するのがよい。
【0019】
本発明のパン粉付きフライ食品に用いられるバッター液(食品素材に塗布されるバッター液)の成分に制限はなく、例えば、小麦粉、米粉、澱粉、増粘剤(α化澱粉、キサンタンガム、アラビアガム、グアガム、アカシアガム、タマリンド、カラギーナン、ローカストビーンガムなど)などを用いて調製されたものが用いられる。水分が少なく粘度の高いバッター液として衣を厚くするほうが油ちょう時の破裂を抑制できるため、一般には2000~5000mPa・s程度の高粘度バッター液とする。しかし、高粘度のバッター液を用いると、油ちょう後のフライ食品の食感がガリガリと固くなりすぎるため、サクサクした軽い食感とするためには低粘度のバッター液、例えば、200~3000mPa・s程度のバッター液を用いて食品素材に薄く付着させて油ちょうする方法が考えられる。しかし、低粘度のバッター液とすると、今度はパン粉の付着性がさらに低下する問題が生じる。そのようなところ、本発明のパン粉ミックスを用いれば、軽い食感と付着性の両方を満足できるパン粉付きフライ食品を得ることができることとなる。すなわち、本発明のパン粉ミックスを用いる利点は、バッター粘度が低いときにもパン粉の付着性が良好、かつ、油ちょう時のパン粉剥がれが抑制されることにあり、具体的には、バッター液の粘度が200~3000mPa・s又は300~2500mPa・sと低いときにも、パン粉の剥がれ落ち抑制効果が有利に発揮される。なお、ここでいう粘度は、例えば、B型粘度計(ローター No.H6、30rpm、4℃)で測定したときの値を参照することができる。
【0020】
本発明のパン粉付きフライ食品に用いられるパン粉は、焙焼法、電極法等の一般的な製法により製造されたパン粉をはじめとし、生パン粉、乾燥パン粉など、いずれの製法によるパン粉でも使用することができる。本発明で用いるパン粉は、水分が0を超えて40%程度までのものが好ましく、水分が低下するほど、具体的には、20%以下、15%以下又は10%以下と低下すればするほど本発明のパン粉ミックスの剥がれ落ち抑制効果は顕著にみられる。しかし、10%以下にまでなると、β澱粉が沈殿してパン粉と均等に混ざりにくくなるため、生産効率との兼ね合いから、10~40%、10~35%又は15~35%とするのが好ましい。パン粉の粒度分布は特に限定されないが、薄い衣にする目的から上記粘度範囲のバッター液を用いる場合は、目開き5~30mmメッシュパス、好ましくは目開き5~15mmメッシュパスのものを用いるのがよい。また、以上の数値に合致するものであれば、いわゆる一般的なパン粉でなくとも、クラッカー粉、澱粉パフ、天かす、乾麺粉砕物、コーンフレーク、ポテトフレーク、あられといった、そこに含まれる澱粉が予めα化された状態の、パン粉に類似する形態のものであっても利用することができるため、これらは本発明にいう「パン粉」の概念に含まれるものとする。
【0021】
本発明のパン粉改質剤やパン粉ミックスを用いれば、パン粉のバッターへの付着性が高まり、かつ、油ちょう時の剥がれ落ちが大幅に軽減されるため、見た目がよく商品価値の高いパン粉付きフライ食品を提供することができる。また、パン粉の剥がれ落ちが軽減されるため、製品歩留まりの改善や油ちょう油の汚れ防止のメリットがある。さらに、本発明のフライ食品は、フライ直後だけでなく常温(例:店頭販売)、加温(例:ホットストッカー)、冷凍解凍(例:冷凍食品)といった食品にとっては劣悪な環境下に置かれた後にあっても、パン粉剥がれが少なく、食品素表面の大部分が被覆されているために、サクサクとした軽い食感が持続する効果も得られる。
【0022】
以下、本発明の実施形態を記載するが、実施例に特に限定されるものではない。
【実施例0023】
まず、表1の配合・手順でコロッケ種を準備した。そのコロッケ種30gに対してバッター液(薄力粉99.8重量部、キサンタンガム0.2重量部及び水220重量部で調製。粘度1,500mPa・s)を7~7.5g塗布し、表2記載の各改質剤をパン粉(水分33%、目開き8mmメッシュパス)に混合したパン粉ミックスをまぶし、試験区ごとにコロッケ(各3個)に付着したパン粉の重量(A)を計測した。計測後、-35℃で急速冷凍し、-25℃で20時間冷凍保存した。冷凍保存したコロッケ(各3個)をフライ用カゴに入れてカゴごと170℃の油で4分間油ちょうし、そのコロッケを取り出したときにカゴに残存したパン粉の重量(B)を測定した。各改質剤による効果は、以下の式で算出された数値(以降、「剥離率」といい、この剥離率の数値が小さいほど剥がれにくいと評価できる。)を比較することにより行った:
[{改質剤添加時の(B)/(A)}÷{改質剤無添加時の(B)/(A)}]×100。
【0024】
【0025】
【0026】
試験区4、6及び7の改質剤入りパン粉ミックスを用いると、油ちょう後のパン粉の剥がれが通常のパン粉に比べて劇的に改善した。一方、試験区2の改質剤(澱粉分解物)は添加するほどにパン粉剥がれがひどくなり、試験区3の改質剤(α化澱粉)は1、3、10%と添加量を多くするとパン粉剥がれがやや抑制される傾向にはあったものの、パン粉ミックス混合時にパン粉がベタ付き流動性が悪くなるため非常に使いづらかった。また、試験区5の改質剤(エンドウ豆の高架橋澱粉)は、パン粉剥がれの改善効果は小さかった。
【0027】
(馬鈴薯澱粉の検討)
次に、コロッケ種30gに対してバッター液(薄力粉30重量部、パインベークCC70重量部、水200重量部で調製。粘度460mPa・s。なお、パインベークCCは松谷化学工業(株)のタピオカ架橋澱粉。)を4~5g塗布し、表3記載の各改質剤をパン粉(水分33%、目開き8mmメッシュパス)に混合したパン粉ミックスをまぶし、試験区ごとにコロッケ(各3個)に付着したパン粉の重量(A)を計測した。計測後、-35℃で急速冷凍し、-25℃で20時間冷凍保存した。冷凍保存したコロッケ(各3個)をフライ用カゴに入れてカゴごと170℃の油で4分間油ちょうし、そのコロッケを取り出したときにカゴに残存したパン粉の重量(B)を測定した。パン粉の剥がれ落ちの程度は、前述の剥離率を算出することにより確認した。結果は表3に示す。
【0028】
【0029】
試験区14はパン粉の剥がれ落ち自体は抑制される傾向にあったものの、バッター層(衣)ごと剥がれてしまうコロッケがあり、全体の剥離率としては悪い結果となった。それ以外の試験区9~13では、改質剤無添加時よりもパン粉の剥がれ落ちが劇的に改善した。また、改質剤を用いた試験区9~14のコロッケは、無添加の試験区8のコロッケに比べて、カリカリとした食感が非常に好ましかった。
【0030】
(馬鈴薯澱粉以外の改質剤の検討)
コロッケ種30gに対してバッター液(薄力粉30重量部、パインベークCC70重量部、水200重量部で調製。粘度460mPa・s。なお、パインベークCCは松谷化学工業(株)のタピオカ架橋澱粉。)を4~5g塗布し、表4記載の各改質剤をパン粉(水分33%、目開き8mmメッシュパス)に混合したパン粉ミックスをまぶし、試験区ごとのコロッケ(各3個)に付着したパン粉の重量(A)を計測した。計測後、-35℃で急速冷凍し、-25℃で20時間冷凍保存した。冷凍保存したコロッケ(各3個)をフライ用カゴに入れてカゴごと170℃の油で4分間油ちょうし、そのコロッケを取り出したときにカゴに残存したパン粉の重量(B)を測定した。パン粉の剥がれ落ちの程度は、前述の剥離率を算出することにより確認した。結果は表4に示す。
【0031】
【0032】
試験区16~31では、改質剤無添加時よりもパン粉の剥がれ落ちが劇的に改善した。一方、試験区32~35の改質剤(高架橋澱粉)は、パン粉の剥がれ落ち抑制の効果は小さく、試験区36の改質剤(緑豆澱粉)も同効果は小さかった。
【0033】
(改質剤の添加量の検討)
コロッケ種30gに対してバッター液(薄力粉50重量部、松谷スイートピー50重量部、水100重量部で調製。粘度2,270mPa・s。なお、松谷スイートピーは松谷化学工業(株)のエンドウ豆架橋澱粉。)を7~8g塗布し、表5記載の各改質剤をパン粉(水分33%、目開き8mmメッシュパス)に混合したパン粉ミックスをまぶし、試験区ごとにコロッケ(各3個)に付着したパン粉の重量(A)を計測した。計測後、-35℃で急速冷凍し、-25℃で20時間冷凍保存した。冷凍保存したコロッケ(各3個)をフライ用カゴに入れてカゴごと170℃の油で4分間油ちょうし、そのコロッケを取り出したときにカゴに残存したパン粉の重量(B)を測定した。パン粉の剥がれ落ちの程度は、前述の剥離率を算出することにより確認した。結果は表5に示す。
【0034】
【0035】
改質剤を1、3、5、10%と増量するにつれてパン粉の剥がれが改善し、喫食時に口中でもパン粉が食品素材にしっかり付着していて剥がれにくかった。また、クリスピー感のある好ましい食感であった。しかし、30、40、60%と増量しても量依存的に当該効果が大きくなる傾向はみられなかった。よって、費用対効果から1~30%、1~15%、又は3~15%程度が好ましい混合率であると考えられた。
【0036】
(バッター粘度の検討)
次に、バッター粘度の影響を確認することとした。コロッケ種30gに対してバッター液(薄力粉50重量部及び松谷スイートピー50重量部に対し、85~140重量部の水を加えて粘度の異なる各バッター液を調製。なお、松谷スイートピーは松谷化学工業(株)のエンドウ豆架橋澱粉。)を、試験区49及び50は11~12g、試験区51及び52は9.5~10.5g、試験区53及び54は9.5~10g、試験区55及び56は7.5~8.5g、試験区57及び58は4~5gで塗布した。これに、表6記載の各改質剤をパン粉(水分33%、目開き8mmメッシュパス)に混合したパン粉ミックスをまぶし、試験区ごとにコロッケ(各3個)に付着したパン粉の重量(A)を計測した。計測後、-35℃で急速冷凍し、-25℃で20時間冷凍保存した。冷凍保存したコロッケ(各3個)をフライ用カゴに入れてカゴごと170℃の油で4分間油ちょうし、そのコロッケを取り出したときにカゴに残存したパン粉の重量(B)を測定した。パン粉の剥がれ落ちの程度は、前述の剥離率を算出することにより確認した。結果は表6に示す。
【0037】
【0038】
バッター粘度を300~5,000mPa・sの範囲で変えても、本発明の改質剤を用いれば、パン粉の剥がれ落ちが劇的に改善することがわかった。とくに、バッター粘度が比較的低い3,000mPa・s以下のときには、パン粉の剥がれ落ちが顕著に改善した。
【0039】
(パン粉水分の検討)
次に、パン粉水分による影響を確認した。まず、水分33%のパン粉を60℃の恒温器内で乾燥させ、表7記載の範囲の水分値を有するパン粉を準備した。コロッケ種30gに対してバッター液(薄力粉50重量部、松谷スイートピー50重量部、水100重量部で調製。粘度2,270mPa・s。なお、松谷スイートピーは松谷化学工業(株)のエンドウ豆架橋澱粉。)を7~8g塗布し、表7記載の各改質剤をパン粉(目開き8mmメッシュパス)に混合したパン粉ミックスをまぶして、試験区ごとにコロッケ(各3個)に付着したパン粉の重量(A)を計測した。計測後、-35℃で急速冷凍し、-25℃で20時間冷凍保存した。冷凍保存したコロッケ(各3個)をフライ用カゴに入れてカゴごと170℃の油で4分間油ちょうし、そのコロッケを取り出したときにカゴに残存したパン粉の重量(B)を測定した。パン粉の剥がれ落ちの程度は、前述の剥離率を算出することにより確認した。結果は表7に示す。
【0040】
【0041】
水分0~35%の範囲にある各パン粉100重量部に対して「松谷オクラ」10重量部をそれぞれ混合したパン粉ミックスを用いてコロッケにおけるパン粉の剥がれ落ちの程度を確認したところ、10~35%の範囲では剥がれ落ち抑制の効果は水分量にかかわらず同等であることが確認できた。また、10%を下回ると、パン粉の剥がれ落ち抑制の効果が顕著にみられた。
【0042】
(パン粉の粒径の検討)
目開き6、8、10、13mmメッシュパスの各パン粉100重量部に対して「松谷オクラ」10重量部をそれぞれ混合したパン粉ミックスを用いて、コロッケにおけるパン粉の剥がれ落ちについて確認した。コロッケ種30gに対してバッター液(薄力粉50重量部、松谷スイートピー50重量部、水100重量部で調製。粘度2,270mPa・s。なお、松谷スイートピーは松谷化学工業(株)のエンドウ豆架橋澱粉。)を7~8g塗布し、表8記載の各改質剤をパン粉(水分33%)に混合したパン粉ミックスをまぶし、試験区ごとにコロッケ(各3個)に付着したパン粉の重量(A)を計測した。計測後、-35℃で急速冷凍し、-25℃で20時間冷凍保存した。冷凍保存したコロッケ(各3個)をフライ用カゴに入れてカゴごと170℃の油で4分間油ちょうし、そのコロッケを取り出したときにカゴに残存したパン粉の重量(B)を測定した。パン粉の剥がれ落ちの程度は、前述の剥離率を算出することにより確認した。結果は表8に示す。
【0043】
【0044】
その結果、目開き6、8、10、13mmメッシュパスのいずれのパン粉であっても、パン粉の剥がれ落ち抑制効果の程度に大差はなく(いずれも剥離率は50%前後)、目開き6~13mmメッシュパスのパン粉を用いれば、剥がれ落ち抑制効果は十分にみられることがわかった。