(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062213
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】耐油紙及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 21/14 20060101AFI20240430BHJP
D21H 19/82 20060101ALI20240430BHJP
D21H 19/36 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
D21H21/14
D21H19/82
D21H19/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170067
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】桑野 浩
(72)【発明者】
【氏名】西浦 雅志
(72)【発明者】
【氏名】野澤 幸正
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】横山 健一
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA03
4L055AA11
4L055AC06
4L055AC09
4L055AG04
4L055AG11
4L055AG47
4L055AG58
4L055AG63
4L055AG64
4L055AG76
4L055AG89
4L055AG97
4L055AH02
4L055BD18
4L055BE08
4L055BE09
4L055EA05
4L055EA08
4L055EA14
4L055EA32
4L055GA48
(57)【要約】
【課題】本開示は、フッ素樹脂を使用せず、耐油塗工層の塗工量が少なくとも高い耐油性を有する耐油紙及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示に係る耐油紙は、基紙の少なくとも一方の面に、ポリビニルアルコールとポリオレフィンを含む耐油塗工層を有することを特徴とする。耐油塗工層と基紙との間にバインダーを含むアンダー塗工層を有していてもよい。本開示に係る耐油紙の製造方法は、基紙の少なくとも一方の面に、ポリビニルアルコールとポリオレフィンを含む耐油塗工液を塗工して耐油塗工層を形成する工程を有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙の少なくとも一方の面に、ポリビニルアルコールとポリオレフィンを含む耐油塗工層を有することを特徴とする耐油紙。
【請求項2】
前記耐油塗工層と前記基紙との間にバインダーを含むアンダー塗工層を有することを特徴とする請求項1に記載の耐油紙。
【請求項3】
前記アンダー塗工層がさらに無機顔料を含むことを特徴とする請求項2に記載の耐油紙。
【請求項4】
前記アンダー塗工層に含まれる前記バインダーの質量比率が前記無機顔料100部に対して8~100部であることを特徴とする請求項3に記載の耐油紙。
【請求項5】
前記耐油塗工層の塗工量が片面当たり固形分換算で0.1~5g/m2であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の耐油紙。
【請求項6】
前記耐油塗工層に含まれる前記ポリオレフィンの質量比率が前記ポリビニルアルコール100部に対して5~200部であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の耐油紙。
【請求項7】
前記ポリビニルアルコールが変性ポリビニルアルコールでないことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の耐油紙。
【請求項8】
前記耐油塗工層が前記ポリビニルアルコールを前記基紙の質量を基準として0.03~1.5質量%含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の耐油紙。
【請求項9】
基紙の少なくとも一方の面に、ポリビニルアルコールとポリオレフィンを含む耐油塗工液を塗工して耐油塗工層を形成する工程を有することを特徴とする耐油紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、食品容器等に使用される耐油紙及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品容器用の紙では食品が接触した際に油が染み出さないよう、耐油性が求められている。耐油紙は、例えば、パーチメント紙、アルミ箔、フィルム等を基紙の片面に貼り合わせたもの、耐油剤を基紙に塗工又は含浸したものが挙げられる。このうち、貼り合わせ加工を行ったものは分離して廃棄ができないため、リサイクルが困難であり、環境の観点で問題が生じる。
【0003】
耐油剤を使用した耐油紙として、フッ素系耐油剤が用いられているものがある。(例えば、特許文献1を参照。)しかし、フッ素系耐油剤を構成するパーフルオロアルキル化合物(PFAS)は難分解性且つ生物蓄積性が高いため、世界的にその使用を規制する動きがある。
【0004】
フッ素系耐油剤を使用しない耐油紙として、エチレン変性ポリビニルアルコールを塗工した耐油紙(例えば、特許文献2を参照。)、カルボキシ基変性ポリビニルアルコール及び顔料を含むことを特徴とする耐油紙が挙げられる(例えば、特許文献3を参照。)。
【0005】
カルボキシ変性でないポリビニルアルコールを使用した耐油紙として、ポリビニルアルコールを対パルプ固形分含有量2重量%以上含浸するオンマシンでサイズプレスしてなる坪量35~110g/m2の耐油紙が挙げられる(例えば、特許文献4を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-154369号公報
【特許文献2】特開2010-275647号公報
【特許文献3】特開2014-218755号公報
【特許文献4】特開2004-332132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3の耐油紙では耐油性を得るためにはポリビニルアルコールを変性のものに限定する必要があった。変性のものに限定することで、原料の供給が限られる。さらに、特許文献4に示す耐油紙はポリビニルアルコールの含浸量が対パルプ2wt%以上と多いため、坪量が高くなるほどコストが高くなる。
【0008】
そこで、本開示は、フッ素樹脂を使用せず、耐油塗工層の塗工量が少なくとも高い耐油性を有する耐油紙及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、耐油塗工層にポリビニルアルコールとポリオレフィンとを含ませることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係る耐油紙は、基紙の少なくとも一方の面に、ポリビニルアルコールとポリオレフィンを含む耐油塗工層を有することを特徴とする。この構成とすることで、フッ素樹脂を使用せずとも高い耐油性を得ることができる。
【0010】
本発明に係る耐油紙では、前記耐油塗工層と前記基紙との間に、バインダーを含むアンダー塗工層を有することが好ましい。このような構成とすることで、より高い耐油性を得ることができる。
【0011】
本発明に係る耐油紙では、前記アンダー塗工層がさらに無機顔料を含むことが好ましい。このような構成とすることで、塗工紙の外観が良くなる。
【0012】
本発明に係る耐油紙では、前記アンダー塗工層に含まれる前記バインダーの質量比率が前記無機顔料100部に対して8~100部であることが好ましい。アンダー塗工層のバインダー比率を高くすることで、高温の油に対する長時間の耐油性が向上する。
【0013】
本発明に係る耐油紙では、前記耐油塗工層の塗工量が片面当たり固形分換算で0.1~5g/m2であることが好ましい。この塗工量にすることで、折り曲げ加工を行ったときに塗工層が割れにくく油が染みこみにくくなる。
【0014】
本発明に係る耐油紙では、前記耐油塗工層に含まれる前記ポリオレフィンの質量比率が前記ポリビニルアルコール100部に対して5~200部であることが好ましい。この比率であることで、ポリビニルアルコールの被膜を表面全体に形成することができ、十分な耐油性を得ることができる。
【0015】
本発明に係る耐油紙では、前記ポリビニルアルコールが変性ポリビニルアルコールでない形態を包含する。
【0016】
本発明に係る耐油紙では、前記耐油塗工層が前記ポリビニルアルコールを前記基紙の質量を基準として0.03~1.5質量%含むことが好ましい。ポリビニルアルコールの含有量を少なくすることができる。
【0017】
本発明に係る耐油紙の製造方法は、基紙の少なくとも一方の面に、ポリビニルアルコールとポリオレフィンを含む耐油塗工液を塗工して耐油塗工層を形成する工程を有することを特徴とする。このような構成とすることで、ポリビニルアルコールとポリオレフィンの被膜が形成され、フッ素系樹脂を使用せずとも高い耐油性を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の耐油紙は、基紙にポリビニルアルコールとポリオレフィンとを含む耐油液を塗工することにより、基紙に高い耐油性を付与することができる。また、この耐油塗工液を用いると、仮に耐油塗工層の塗工量が少ない場合であっても、耐油性を発現できる。耐油塗工層の塗工量を少なくした場合には、食品用容器に加工するときに、製函時に耐油層が割れにくく、油が染みこみにくくなる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0020】
(基紙)
本実施形態に係る基紙は、パルプを主成分とする。パルプはNBKP、LBKP、再生パルプ等から選択される。本実施形態の基紙に用いるパルプのフリーネスは300~600mlであることが好ましく、380~550mlであることがより好ましい。本実施形態に係る基紙は単層抄きでも多層抄きでもよい。米坪は特に限定されないが、30~700g/m2であることが好ましく、50~500g/m2であることがより好ましい。
【0021】
(塗工層)
本実施形態に係る耐油紙は、基紙の少なくとも一方の面にポリビニルアルコールとポリオレフィンを含む耐油塗工層を設けたものである。耐油塗工層は、ポリビニルアルコールとポリオレフィンを主成分とする塗工液を基紙又はアンダー塗工層に塗工後、乾燥することで形成される。
【0022】
耐油塗工層に使用するポリビニルアルコールは、基紙又はアンダー塗工層に被膜を形成し、耐油性を付与するために用いられる。ポリビニルアルコールとしては、完全鹸化型、部分鹸化型が挙げられるが、本実施形態では鹸化度、重合度等は限定されない。本実施形態では、ポリビニルアルコールは、エチレン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールであってもよいが、変性ポリビニルアルコールでないことが好ましい。変性品でなくても十分な耐油性が得られる。
【0023】
耐油塗工層に使用するポリオレフィンは、ポリビニルアルコールとともに被膜を形成し、耐油性を付与する。本実施形態では、ポリオレフィンはエマルジョンが好ましく、カルボキシ基変性などの変性ポリオレフィンであってもよい。
【0024】
耐油塗工層の塗工量は片面当たり固形分換算で0.1~5g/m2であることが好ましく、0.2~4g/m2であることがより好ましい。この塗工量にすることで、折り曲げ加工を行ったときに塗工層が割れにくく油が染みこみにくくなる。0.1g/m2未満である場合、十分な耐油性が得られないおそれがある。5g/m2を超えると、折り曲げ加工を行ったときに塗工層が割れやすくなるおそれがある。基紙の両面に耐油塗工層を設ける場合には、塗工量はそれぞれの片面当たり固形分換算で0.1~5g/m2であることが好ましく、0.2~4g/m2であることがより好ましい。
【0025】
耐油塗工液におけるポリオレフィンの質量比率はポリビニルアルコール100部に対して5~200部であることが好ましく、10~150部であることがより好ましく、20~100部であることがさらに好ましい。ポリオレフィンの質量比率が5部未満であると、十分な耐油性が得られないおそれがある。ポリオレフィンの質量比率が200部を超えると、ポリビニルアルコールの被膜が十分に形成されず、耐油性が低下するおそれがある。
【0026】
本実施形態では、ポリビニルアルコールとポリオレフィンを含む耐油塗工層の下にバインダーを含むアンダー塗工層を設けることが好ましい。これにより、耐油性を向上でき、且つ基紙に含まれる夾雑物を覆うことで耐油紙の外観を良くすることができる。アンダー塗工層は単層でも2層以上であってもよい。
【0027】
アンダー塗工層には無機顔料を填料として含めてもよい。無機顔料は軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、酸化チタン等から選択される。顔料を含めることにより、基紙の凹凸や夾雑物を覆うことができ、白色度が高くなり、基紙の外観が良好になる。
【0028】
アンダー塗工層に用いるバインダーはスチレン-ブタジエン樹脂、スチレン-アクリル樹脂、酢酸ビニル-アクリル樹脂、ブタジエン-メチルメタクリル樹脂等の樹脂、澱粉等の多糖類から選択される。アンダー塗工層は無機顔料100質量部に対してバインダーが8~100質量部含まれることが好ましく、更に好ましくは14質量部~90質量部である。このような構成とすることで、キット耐油度で評価される一般的な耐油性能だけではなく、高温で長時間の油の染み込みを抑制できる耐油紙とすることができる。バインダーの含有量が8部未満の場合、耐油性が十分に得られず、高温且つ長時間の油の染み込みの抑制が難しくなるおそれがある。バインダーの含有量が100部を超える場合、無機顔料が相対的に少なくなることにより基紙の凹凸や夾雑物が目立ち、さらに塗工時にコーターを汚す等の弊害があり、またコストも高くなる。
【0029】
本実施形態においては、耐油塗工層がポリビニルアルコールを、基紙の質量を基準として0.03~1.5質量%含むことが好ましい。耐油塗工層がポリビニルアルコールとポリオレフィンとを含むことにより、ポリビニルアルコールの含有率が少なくても十分な耐油性が得られる。ポリビニルアルコールの含有率が0.03質量%未満であるとポリビニルアルコールの被膜が十分に形成されず、耐油性が低下するおそれがある。ポリビニルアルコールの含有率が1.5質量%を超えると、経済性に劣ると共に折り曲げ加工を行ったときに塗工層が割れやすくなるおそれがある。
【0030】
本実施形態に係る耐油紙の製造方法は、基紙の少なくとも一方の面に、ポリビニルアルコールとポリオレフィンを含む耐油塗工液を塗工して耐油塗工層を形成する工程を有する。塗工はエアナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、カーテンコーター、スプレーコーターなどの塗工装置で行うことができる。耐油塗工液を塗工する前に、アンダー塗工液を塗工してもよい。アンダー塗工層は上記に示した塗工装置で塗工を行う他、サイズプレス等で含浸を行うことにより設けてもよい。
【0031】
コーターで塗布された湿潤状態の塗工層は、熱風ドライヤー、赤外線ドライヤー、シリンダドライヤーなどによって乾燥されるが、本発明においては塗工層の乾燥方法は限定されない。乾燥後は、必要に応じて、カレンダー装置を用いて平滑化を行い、塗工紙を得ることができる。原紙抄造、塗工、乾燥、カレンダー処理は連続して行われることが好ましい。
【0032】
その他、耐油塗工液、アンダー塗工液には着色染料、着色顔料、分散剤、消泡剤、pH調整剤等の薬品を添加することができる。
【実施例0033】
以下に本発明について具体的な実施例を示して説明するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。また、例中の「部」は質量部を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0034】
(実施例1)
(基紙の作製)
表層にLBKPからなるCSF420mLに調製されたパルプ、中層に古紙からなるCSF450mLに調整されたパルプ、裏層にLBKPからなるCSF420mLに調整されたパルプを使用し、短網抄紙機にて表層/中層/裏層の順で合計坪量230g/m2の基紙を得た。
(アンダー塗工液)
無機顔料として重質炭酸カルシウム(セタカーブ97、備北粉化工業(株)製)100部、バインダーとしてスチレン-ブタジエン樹脂(スマーテックスPB-6774、日本エイアンドエル(株)製)7部、バインダーとして澱粉(王子エースA)3部及び水を混合して調製したアンダー塗工液を基紙の表層面にロッド塗工してアンダー塗工層を設け、熱風ドライヤーで乾燥し、塗工紙を得た。アンダー塗工液の固形分濃度は68%、アンダー塗工層の塗工量は固形分換算で6.8g/m2であった。
(耐油塗工液)
完全鹸化型ポリビニルアルコール(クラレポバール28-98、(株)クラレ製)100部、ポリオレフィンエマルジョン(ザイクセンN、住友精化(株)製)20部と水とを混合して調製した耐油塗工液をアンダー塗工層の上にロッド塗工し耐油層を設け、熱風ドライヤーで乾燥し、目的とする耐油紙を得た。耐油塗工液の固形分濃度は3.6%、耐油層の塗工量は固形分換算で0.36g/m2であった。
【0035】
(実施例2)
耐油塗工液のポリオレフィンエマルジョン(ザイクセンN、住友精化(株)製)の配合部数を40部、耐油塗工液の固形分濃度を4.2%、耐油層の塗工量を固形分換算で0.42g/m2に変更した以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
【0036】
(実施例3)
アンダー塗工液のスチレン-ブタジエン樹脂の配合部数を11部、耐油塗工液のポリオレフィンエマルジョン(ザイクセンN、住友精化(株)製)の配合部数を40部、耐油塗工液の固形分濃度を4.2%、耐油層の塗工量を固形分換算で0.42g/m2に変更した以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
【0037】
(実施例4)
アンダー塗工液におけるスチレン-ブタジエン樹脂の配合部数を15部に変更した以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
【0038】
(実施例5)
アンダー塗工液のスチレン-ブタジエン樹脂の配合部数を15部、耐油塗工液のポリオレフィンエマルジョン(ザイクセンN、住友精化(株)製)の配合部数を40部、耐油塗工液の固形分濃度を4.2%、耐油層の塗工量を固形分換算で0.42g/m2に変更した以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
【0039】
(実施例6)
アンダー塗工液のスチレン-ブタジエン樹脂の配合部数を20部、耐油塗工液のポリオレフィンエマルジョン(ザイクセンN、住友精化(株)製)の配合部数を40部、耐油塗工液の固形分濃度を4.2%、耐油層の塗工量を固形分換算で0.42g/m2に変更した以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
【0040】
(実施例7)
アンダー塗工液としてスチレン-ブタジエン樹脂(スマーテックスPB-6774、日本エイアンドエル(株)製)100部と水のみで調整した塗工液を用い、サイズプレスにて実施例1で得られた基紙に含浸を行った。基紙中に含浸されたバインダーであるスチレン-ブタジエン樹脂の量は対パルプ固形分質量比で5質量%であった。次いで、含浸を行った基紙の表面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール(クラレポバール28-98、(株)クラレ製)100部、ポリオレフィンエマルジョン(ザイクセンN、住友精化(株)製)40部と水とを混合して調製した耐油塗工液をロッド塗工して耐油紙を得た。耐油塗工液の固形分濃度は4.2%、塗工量は固形分換算で0.42g/m2であった。
【0041】
(実施例8)
基紙をLBKPからなるCSF420mLに調整されたパルプを使用した70g/m2の単層の基紙に変更し、アンダー塗工層を設けなかった以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
【0042】
(実施例9)
基紙をLBKPからなるCSF420mLに調整されたパルプを使用した70g/m2の単層の基紙に変更し、アンダー塗工層を設けず、耐油塗工液のポリオレフィンエマルジョン(ザイクセンN、住友精化(株)製)の部数を40部、耐油塗工液の固形分濃度を4.2%に変更した以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
【0043】
(実施例10)
アンダー塗工液におけるスチレン-ブタジエン樹脂の配合部数を97部に変更した以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
【0044】
(実施例11)
アンダー塗工液におけるスチレン-ブタジエン樹脂の配合部数を15部、耐油塗工液のポリオレフィンエマルジョン(ザイクセンN、住友精化(株)製)の配合部数を10部に変更した以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
【0045】
(実施例12)
アンダー塗工液におけるスチレン-ブタジエン樹脂の配合部数を15部、耐油塗工液のポリオレフィンエマルジョン(ザイクセンN、住友精化(株)製)の配合部数を200部、耐油層の塗工量を固形分換算で0.90g/m2に変更した以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
【0046】
(実施例13)
基紙の合計坪量を300g/m2、アンダー塗工液におけるスチレン-ブタジエン樹脂の配合部数を15部、耐油層の塗工量を固形分換算で5g/m2に変更した以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
【0047】
(比較例1)
ポリビニルアルコールとポリオレフィンエマルジョンを含む耐油塗工液の塗工を行わなかった以外は実施例1と同様にして塗工紙を得た。
【0048】
(比較例2)
耐油塗工液を完全鹸化型ポリビニルアルコール(クラレポバール28-98、(株)クラレ製)100部と水のみからなる塗工液とし、耐油塗工液の固形分濃度を3.0%にした以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
【0049】
(比較例3)
耐油塗工液をポリオレフィン(ザイクセンN、住友精化(株)製)100部と水のみからなる塗工液とし、耐油塗工液の固形分濃度を1.2%にした以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
【0050】
各実施例及び比較例で得られた耐油紙について、以下に示す方法により評価を行った。得られた結果を表1及び表2に示す。
【0051】
(1)キット耐油度
耐油紙の耐油層面側(比較例1においてはアンダー塗工層面側)の耐油度をTAPPI UM 557「Repellency of Paper and Board to Grease, Oil, and Waxes(Kit Test)」に準拠して測定した。測定温度は23℃である。
【0052】
(2)高温・長時間での耐油性
耐油紙の耐油層面側(比較例1においてはアンダー塗工層面側)にキャノーラ油を約2ml垂らし、60℃に設定した乾燥機に5時間入れ、その後に油を拭き取り、拭き取り後の耐油紙の状態を目視で確認して評価した。評価は以下に示す4段階で行い、△以上を合格とした。
◎ 拭いた後に滲みがない
○ 拭いた後に薄く滲みができる
△ 拭いた後に濃く滲みができる
× 裏抜けがある
【0053】
【0054】
【0055】
実施例1~13及び比較例1~3で得られた耐油紙を比較すると、ポリビニルアルコールとポリオレフィンの混合液を塗工した耐油紙は、ポリビニルアルコール又はポリオレフィンを単独で塗工した耐油紙や、耐油塗工液を塗工しない耐油紙よりも高い耐油性を示した。従って、ポリビニルアルコールとポリオレフィンを混合することで耐油性能を発揮することがわかる。
【0056】
また、実施例1~7と実施例8~9の比較により、アンダー塗工層を設けることで、より高い耐油性が得られることがわかる。
【0057】
実施例1~6と実施例7の比較により、アンダー塗工液に更に無機顔料を含ませることでさらに高い耐油性を得られることがわかる。
【0058】
実施例1~6と実施例10の比較により、アンダー塗工層のバインダーの部数を増やすことで、高温かつ長時間での耐油性が向上することがわかる。
【0059】
実施例4、5、11、12の比較により、耐油塗工層のポリオレフィンの部数を増やすことで、キット耐油度、高温・長時間での耐油性が向上することがわかる。
【0060】
実施例4、5、13の比較により、耐油塗工層の塗工量を高くすることでわずかに耐油度が上がるが、上り幅はポリオレフィンの部数を増やした場合と同程度であった。