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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062217
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】重荷重用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20240430BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B60C11/03 300B
B60C11/03 300E
B60C11/13 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170075
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】篠原 宏樹
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BC12
3D131BC19
3D131BC34
3D131EB28V
3D131EB28X
3D131EB31V
3D131EB42V
3D131EB43V
3D131EB44V
3D131EB47V
3D131EB48V
3D131EC12V
(57)【要約】
【課題】 優れた耐偏摩耗性能を維持しながらウェットトラクション性能を向上することができる。
【解決手段】 クラウン周方向溝3とショルダー周方向溝4とクラウン横溝5とクラウンブロック8とを含む重荷重用空気入りタイヤ1である。クラウン周方向溝3は、クラウン外側頂部3aとクラウン内側頂部3bとを含んでジグザグ状に延びる。ショルダー周方向溝4は、ショルダー内側頂部4aとショルダー外側頂部4bとを含んでいる。クラウン横溝5は、クラウン周方向溝3のジグザグの2ピッチの間隔で配され、かつ、クラウン外側頂部3aとショルダー内側頂部4aとを繋いでいる。クラウンブロック8には、クラウン横溝5の溝幅よりも小さい溝幅を有するクラウン副溝10が設けられる。クラウン副溝10は、クラウンブロック8を横断する少なくとも2本の横断溝11を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有する重荷重用空気入りタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ赤道側でタイヤ周方向に連続して延びるクラウン周方向溝と、前記クラウン周方向溝よりもタイヤ軸方向の外側をタイヤ周方向に連続して延びるショルダー周方向溝と、前記クラウン周方向溝と前記ショルダー周方向溝とを繋ぐ複数のクラウン横溝と、前記クラウン周方向溝と前記ショルダー周方向溝と前記複数のクラウン横溝とで形成される複数のクラウンブロックとを含み、
前記クラウン周方向溝は、前記ショルダー周方向溝側に向かって凸のクラウン外側頂部と、前記クラウン外側頂部とは逆向きに凸のクラウン内側頂部とをタイヤ周方向で交互に含んでジグザグ状に延び、
前記ショルダー周方向溝は、前記クラウン周方向溝側に向かって凸のショルダー内側頂部と、前記ショルダー内側頂部とは逆向きに凸のショルダー外側頂部とをタイヤ周方向で交互に含んでジグザグ状に延び、
タイヤ周方向で直接隣接する前記複数のクラウン横溝は、前記クラウン周方向溝のジグザグの2ピッチの間隔で配され、かつ、前記クラウン外側頂部と前記ショルダー内側頂部とを繋いでおり、
前記複数のクラウンブロックのそれぞれには、前記複数のクラウン横溝の溝幅よりも小さい溝幅を有する複数のクラウン副溝が設けられ、
前記複数のクラウン副溝は、前記クラウンブロックを横断する少なくとも2本の横断溝を含む、
重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記少なくとも2本の横断溝のそれぞれは、ジグザグの頂部を複数含んでジグザグ状に延びる、請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記少なくとも2本の横断溝のそれぞれは、第1要素と、第2要素と、これらの間の第3要素とを含み、
前記第1要素は、前記クラウン周方向溝又は前記ショルダー周方向溝の一方に繋がり、かつ、タイヤ軸方向に対する角度が20度未満で延びており、
前記第2要素は、前記第1要素よりもタイヤ軸方向に対して大きな角度で傾斜している、請求項2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1要素は、タイヤ軸方向と平行に延びており、
前記第2要素のタイヤ軸方向に対する角度は、20~40度である、請求項3に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1要素と前記第3要素との間の角度、及び、前記第2要素と前記第3要素との間の角度は、80~120度である、請求項3又は4に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第1要素は、前記クラウン内側頂部又は前記ショルダー外側頂部に連通している、請求項3又は4に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記各横断溝は、前記第1要素が前記クラウン周方向溝に繋がる第1横断溝と、前記第1要素が前記ショルダー周方向溝に繋がる第2横断溝とを含む、請求項3又は4に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記第1横断溝の前記第2要素は、前記第2横断溝の前記第2要素とタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している、請求項7に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記複数のクラウン副溝は、前記複数の横断溝を繋ぐ継ぎ溝を含む、請求項1又は2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記複数のクラウン副溝の最大の溝幅は、前記複数のクラウン横溝の最大の溝幅の0.25~0.50倍である、請求項1又は2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記複数のクラウン副溝の最大の溝深さは、前記複数のクラウン横溝の最大の溝深さの0.1~0.4倍である、請求項1又は2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記複数のクラウンブロックのそれぞれは、タイヤ周方向の最大長さLcとタイヤ軸方向の最大長さWcとの比(Lc/Wc)が、1.8~2.2である、請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ショルダー主溝とセンター主溝とセンター横溝とで区分される複数個のセンターブロックが設けられた重荷重用空気入りタイヤが記載されている。前記センター横溝は、前記ショルダー主溝の内側ジグザグ頂点を一つおきに設けられている。このようなセンター横溝で形成された前記センターブロックは、大きなタイヤ周方向の剛性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-144526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の重荷重用空気入りタイヤは、前記センターブロックのタイヤ周方向の剛性が大きいことから、これらのブロックの耐偏摩耗性能に優れる。一方、センター横溝のタイヤ周方向の配設ピッチが大きいことから、ウェット路面でのトラクション性能(以下、「ウェットトラクション性能」という。)については、さらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、優れた耐偏摩耗性能を維持しながらウェットトラクション性能を向上することができる重荷重用空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有する重荷重用空気入りタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ赤道側でタイヤ周方向に連続して延びるクラウン周方向溝と、前記クラウン周方向溝よりもタイヤ軸方向の外側をタイヤ周方向に連続して延びるショルダー周方向溝と、前記クラウン周方向溝と前記ショルダー周方向溝とを繋ぐ複数のクラウン横溝と、前記クラウン周方向溝と前記ショルダー周方向溝と前記複数のクラウン横溝とで形成される複数のクラウンブロックとを含み、前記クラウン周方向溝は、前記ショルダー周方向溝側に向かって凸のクラウン外側頂部と、前記クラウン外側頂部とは逆向きに凸のクラウン内側頂部とをタイヤ周方向で交互に含んでジグザグ状に延び、前記ショルダー周方向溝は、前記クラウン周方向溝側に向かって凸のショルダー内側頂部と、前記ショルダー内側頂部とは逆向きに凸のショルダー外側頂部とをタイヤ周方向で交互に含んでジグザグ状に延び、タイヤ周方向で直接隣接する前記複数のクラウン横溝は、前記クラウン周方向溝のジグザグの2ピッチの間隔で配され、かつ、前記クラウン外側頂部と前記ショルダー内側頂部とを繋いでおり、前記複数のクラウンブロックのそれぞれには、前記複数のクラウン横溝の溝幅よりも小さい溝幅を有する複数のクラウン副溝が設けられ、前記複数のクラウン副溝は、前記クラウンブロックを横断する少なくとも2本の横断溝を含む、重荷重用空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の重荷重用タイヤは、上記の構成を採用することで、優れた耐偏摩耗性能を維持しながらウェットトラクション性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の重荷重用タイヤの一実施形態を示すトレッド部の拡大平面図である。
図2】本実施形態のトレッド部の平面図である。
図3図1のA-A線断面図である。
図4】本実施形態のトレッド部の拡大平面図である。
図5】本実施形態のトレッド部の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の重荷重用空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という場合がある)1のトレッド部2の拡大平面図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、トラックやバス等のタイヤとして好適に用いられる。
【0010】
トレッド部2は、クラウン周方向溝3と、ショルダー周方向溝4と、複数のクラウン横溝5と、複数のクラウンブロック8とを含んでいる。クラウン周方向溝3は、タイヤ赤道C側でタイヤ周方向に連続して延びている。ショルダー周方向溝4は、クラウン周方向溝3よりもタイヤ軸方向の外側をタイヤ周方向に連続して延びている。各クラウン横溝5は、クラウン周方向溝3とショルダー周方向溝4とを繋いでいる。各クラウンブロック8は、クラウン周方向溝3とショルダー周方向溝4と複数のクラウン横溝5とで形成される。
【0011】
クラウン周方向溝3は、ショルダー周方向溝4側に向かって凸のクラウン外側頂部3aと、クラウン外側頂部3aとは逆向きに凸のクラウン内側頂部3bとをタイヤ周方向で交互に含んでジグザグ状に延びている。
【0012】
ショルダー周方向溝4は、クラウン周方向溝3側に向かって凸のショルダー内側頂部4aと、ショルダー内側頂部4aとは逆向きに凸のショルダー外側頂部4bとをタイヤ周方向で交互に含んでジグザグ状に延びている。
【0013】
タイヤ周方向で直接隣接する複数のクラウン横溝5は、クラウン周方向溝3のジグザグの2ピッチ(2×P)の間隔で配されている。このようなクラウン横溝5で形成されるクラウンブロック8は、タイヤ周方向の長さが相対的に大きくなり、タイヤ周方向のブロック剛性が高くなる。また、各クラウン横溝5は、クラウン外側頂部3aとショルダー内側頂部4aとを繋いでいる。このように、クラウン横溝5は、クラウンブロック8のタイヤ軸方向の長さが小さくなる部分に配されるので、クラウンブロック8のタイヤ周方向の両端部分のブロック剛性も高く維持される。このため、クラウンブロック8は、優れた耐偏摩耗性能を発揮する。各クラウン横溝5は、本実施形態では、タイヤ周方向に並ぶクラウン外側頂部3aを一つおき、かつ、タイヤ周方向に並ぶショルダー内側頂部4aを一つおきに繋がるように配されている。
【0014】
複数のクラウンブロック8のそれぞれには、複数のクラウン横溝5の溝幅W2よりも小さい溝幅W3を有する複数のクラウン副溝10が設けられている。このようなクラウンブロック8は、高いエッジ効果を発揮する。複数のクラウン副溝10は、クラウンブロック8を横断する少なくとも2本の横断溝11を含んでいる。このような横断溝11は、クラウンブロック8と路面との間の水膜をエッジ11eによって除去することで、ウェットトラクション性能を向上させる。本明細書では、前記「エッジ」は、クラウンブロック8の踏面8aと各溝との境界である。前記「踏面」は、本明細書では、正規状態のタイヤ1に正規荷重を負荷しかつキャンバー角0°で平面に接地したときの前記平面に接地するクラウンブロック8の接地面である。
【0015】
前記「正規状態」とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0016】
前記「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば"標準リム"、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"Measuring Rim"である。
【0017】
前記「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば"最高空気圧"、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば"INFLATION PRESSURE"である。
【0018】
前記「正規荷重」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば"最大負荷能力"、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば"LOAD CAPACITY"である。
【0019】
図2は、トレッド部2のトレッド端Te、Te間の平面図である。図2に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、タイヤ赤道C上の任意の点を中心とする点対称パターンとして形成される。なお、トレッド部2の形状は、このような点対称パターンに限定されるものではない。
【0020】
前記「トレッド端Te」は、本明細書では、正規状態のタイヤ1に正規荷重を負荷しかつキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。両側のトレッド端Te間のタイヤ軸方向の距離がトレッド幅TWである。
【0021】
本実施形態のクラウン周方向溝3は、タイヤ赤道C上に位置している。本実施形態のショルダー周方向溝4は、クラウン周方向溝3のタイヤ軸方向の両側に位置している。これにより、クラウンブロック8は、タイヤ赤道Cの両側に配される。なお、図2の左側のショルダー周方向溝4Aに向かって凸のクラウン外側頂部3aは、図2の右側のショルダー周方向溝4Bに向かって逆向きに凸のクラウン内側頂部3bとなる。本明細書では、以降、クラウン周方向溝3から左側のトレッドパターンについて説明がなされ、クラウン周方向溝3から右側のトレッドパターンについての説明が省略される。
【0022】
クラウン周方向溝3及びショルダー周方向溝4は、ジグザグの1ピッチPが同じとされている。これにより、クラウンブロック8のタイヤ軸方向の両側において、ブロック剛性の差が小さく維持されるので、耐偏摩耗性能が高く維持される。
【0023】
クラウン周方向溝3は、本実施形態では、タイヤ周方向に対して同じ向きに傾斜する第1クラウン溝部15と、第1クラウン溝部15とは逆向きに傾斜する第2クラウン溝部16とを含んでいる。図2では、第1クラウン溝部15は、右上がりに傾斜している。第2クラウン溝部16は、左上がりに傾斜している。第1クラウン溝部15及び第2クラウン溝部16は、本実施形態では、直線状に延びている。第1クラウン溝部15及び第2クラウン溝部16は、例えば、円弧状に延びていても良い。第1クラウン溝部15及び第2クラウン溝部16は、例えば、タイヤ周方向に交互に配されている。
【0024】
また、ショルダー周方向溝4は、本実施形態では、タイヤ周方向に対して同じ向きに傾斜する第1ショルダー溝部17と、第1ショルダー溝部17とは逆向きに傾斜する第2ショルダー溝部18とを含んでいる。図2では、第1ショルダー溝部17は、右上がりに傾斜している。第2ショルダー溝部18は、左上がりに傾斜している。本実施形態の第1ショルダー溝部17及び第2ショルダー溝部18は、直線状に延びている。本実施形態の第1ショルダー溝部17及び第2ショルダー溝部18は、円弧状に延びていても良い。第1ショルダー溝部17及び第2ショルダー溝部18は、例えば、タイヤ周方向に交互に配されている。
【0025】
第1クラウン溝部15のタイヤ軸方向に対する角度α1、第2クラウン溝部16のタイヤ軸方向に対する角度α2、第1ショルダー溝部17のタイヤ軸方向に対する角度α3及び第2ショルダー溝部18のタイヤ軸方向に対する角度α4は、10~30度であるのが望ましい。本実施形態では、第1クラウン溝部15の角度α1、第2クラウン溝部16の角度α2、第1ショルダー溝部17の角度α3及び第2ショルダー溝部18の角度α4が同じとされている。
【0026】
特に限定されるものではないが、クラウン周方向溝3の溝幅W1aは、ショルダー周方向溝4の溝幅W1bよりも大きく形成されている。これにより、タイヤ赤道C付近の水膜がスムーズに除去される。クラウン周方向溝3の溝幅W1aは、ショルダー周方向溝4の溝幅W1bの1.1倍以上が望ましく、1.2倍以上がさらに望ましく、1.5倍以下が望ましく、1.4倍以下がさらに望ましい。クラウン周方向溝3の溝幅W1aは、トレッド幅TWの8%以上が望ましく、10%以上がさらに望ましく、16%以下が望ましく、14%以下がさらに望ましい。
【0027】
図3は、図2のA-A線断面図である。図3に示されるように、クラウン周方向溝3の溝深さD1aは、15~23mmであるのが望ましい。ショルダー周方向溝4の溝深さD1bは、本実施形態では、クラウン周方向溝3の溝深さD1aと同じとされている。
【0028】
図4は、トレッド部2の拡大平面図である。図4に示されるように、クラウン横溝5は、本実施形態では、クラウン外側頂部3aに繋がる第1部分21と、ショルダー内側頂部4aに繋がる第2部分22と、第1部分21と第2部分22とに繋がる第3部分23とを含んでいる。第1部分21、第2部分22、第3部分23は、本実施形態では、直線状に延びている。なお、第1部分21、第2部分22、第3部分23は、円弧状に延びていても良い。
【0029】
第1部分21は、例えば、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。第2部分22は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1部分21と同じ向きに傾斜している。第3部分23は、本実施形態では、タイヤ軸方向に対して第1部分21と逆向きに傾斜している。これにより、本実施形態のクラウン横溝5は、タイヤ周方向の長さLaが相対的に小さく維持されるので、クラウンブロック8のタイヤ周方向の両端部分のブロック剛性をより高く維持する。
【0030】
第1部分21は、例えば、長手方向に同じ溝幅で延びる第1等幅部21aと、第1等幅部21aに繋がってクラウン外側頂部3aまで溝幅が連続して大きくなる第1拡幅部21bとを含んでいる。本実施形態では、第1拡幅部21bのタイヤ周方向の一端が、クラウン外側頂部3aと繋がっている。より詳しくは、第1拡幅部21bの一方のエッジ21eと、第1クラウン溝部15のエッジ15eとが、1本の直線を形成するのように延びている。これにより、クラウンブロック8の偏摩耗の発生を効果的に抑制することができる。本明細書では、溝幅は、タイヤ半径方向で最大となる位置での溝の幅であり、本実施形態では、各溝において、踏面8aでの幅である。
【0031】
第2部分22は、例えば、長手方向に同じ溝幅で延びる第2等幅部22aと、第2等幅部22aに繋がってショルダー内側頂部4aまで溝幅が連続して大きくなる第2拡幅部22bとを含んでいる。本実施形態では、第2拡幅部22bのタイヤ周方向の一端が、ショルダー内側頂部4aと繋がっている。より詳しくは、第2拡幅部22bの一方のエッジ22eと、第1ショルダー溝部17のエッジ17eとが、1本の直線を形成するのように延びている。
【0032】
特に限定されるものではないが、第1部分21のタイヤ軸方向に対する角度α5、及び、第2部分22のタイヤ軸方向に対する角度α6は、10~30度が望ましい。また、第1部分21と第3部分23との間の角度α7、及び、第2部分22と第3部分23との間の角度α8は、90~140度が望ましい。
【0033】
クラウン横溝5の溝幅W2は、ショルダー周方向溝4の溝幅W1bよりも小さく形成されている。クラウン横溝5の溝幅W2は、ショルダー周方向溝4の溝幅W1bの60%~90%とされるのが望ましい。クラウン横溝5の溝深さD2(図3に示す)は、ショルダー周方向溝4の溝深さD1bよりも小さく形成されている。クラウン横溝5の溝深さD2は、ショルダー周方向溝4の溝深さD1bの45%~75%とされるのが望ましい。クラウン横溝5の溝幅W2は、本明細書では、第1等幅部21a又は第2等幅部22aでの溝幅である。
【0034】
図2に示されるように、複数のクラウンブロック8のそれぞれは、タイヤ周方向の最大長さLcとタイヤ軸方向の最大長さWcとの比(Lc/Wc)が、1.8以上が望ましく、1.9以上がさらに望ましく、2.2以下が望ましく、2.1以下がさらに望ましい。比(Lc/Wc)が1.8以上であるので、クラウンブロック8のタイヤ周方向のブロック剛性を大きくすることができ、高い耐偏摩耗性能が発揮される。比(Lc/Wc)が2.2以下であるので、クラウン横溝5の本数が維持され、ウェットトラクション性能が向上する。
【0035】
上述の作用を効果的に発揮するために、クラウンブロック8の最大長さWcは、トレッド幅TWの18%以上が望ましく、20%以上がさらに望ましく、32%以下が望ましく、30%以下がさらに望ましい。また、クラウンブロック8は、タイヤ周方向に23~33個並べられるのが望ましい。
【0036】
図5は、トレッド部2の拡大平面図である。図5に示されるように、少なくとも2本の横断溝11のそれぞれは、ジグザグの頂部11tを複数含んでジグザグ状に延びている。このような横断溝11は、大きなエッジ成分を有し、水膜を引っ掻いて除去する作用を高く発揮する。
【0037】
少なくとも2本の横断溝11のそれぞれは、第1要素25と、第2要素26と、これらの間の第3要素27とを含んでいる。 第1要素25は、例えば、クラウン周方向溝3又はショルダー周方向溝4の一方に繋がり、かつ、タイヤ軸方向に対する角度α11が20度未満で延びている。第2要素26は、例えば、第1要素25よりもタイヤ軸方向に対して大きな角度α12で傾斜している。第3要素27は、例えば、第2要素26よりもタイヤ軸方向に対して大きな角度α13で延びている。このように、第1要素25、第2要素26及び第3要素27は、異なる角度で傾斜しているので、横断溝11は、大きなエッジ成分を有するとともに、多方向にエッジ効果を発揮させる。
【0038】
上述の作用を効果的に発揮するために、第1要素25は、本実施形態では、タイヤ軸方向と平行(角度α11=0度)に延びている。第2要素26の角度α12は、20度以上が望ましく、25度以上がさらに望ましく、40度以下が望ましく、35度以下がさらに望ましい。
【0039】
第1要素25と第3要素27との間の角度α16、及び、第2要素26と第3要素27との間の角度α17は、80度以上が望ましく、85度以上がさらに望ましく、120度以下が望ましく、115度以下がさらに望ましい。角度α16及び角度α17が80度以上であるので、第1要素25と第3要素27との間のクラウンブロック8の部分、及び、第2要素26と第3要素27との間のクラウンブロック8の部分の剛性が高く維持される。角度α16及び角度α17が120度以下であるので、異なる方向への走行に対して、エッジ効果を発揮させることができる。
【0040】
第1要素25、第2要素26及び第3要素27は、本実施形態では、直線状に延びている。第1要素25、第2要素26及び第3要素27は、例えば、円弧状に延びていても良い。
【0041】
本実施形態の第1要素25は、クラウン内側頂部3b又はショルダー外側頂部4bに連通している。このような第1要素25は、第1要素25を挟んで、クラウン内側頂部3b又はショルダー外側頂部4bのタイヤ周方向の両側のクラウンブロック8のブロック剛性の差を小さくするので、偏摩耗の発生を抑制する。各第2要素26は、本実施形態では、いずれの頂部にも繋がっておらず、第1クラウン溝部15、又は、第1ショルダー溝部17に繋がっている。このような第2要素26は、応力集中の生じるクラウン外側頂部3aに隣接するクラウンブロック8の部分、及び、ショルダー内側頂部4aに隣接するクラウンブロック8の部分のブロック剛性の低下を抑える。
【0042】
各横断溝11は、本実施形態では、第1要素25がクラウン周方向溝3に繋がる第1横断溝11Aと、第1要素25がショルダー周方向溝4に繋がる第2横断溝11Bとを含んでいる。第1横断溝11Aの第1要素25は、本実施形態では、クラウン内側頂部3bに繋がっている。第2横断溝11Bの第1要素25は、本実施形態では、ショルダー外側頂部4bに繋がっている。
【0043】
第1横断溝11Aの第2要素26は、本実施形態では、第2横断溝11Bの第2要素26とタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。これにより、クラウンブロック8のブロック剛性の低下が抑えられて、耐偏摩耗性能が高く維持される。第1横断溝11Aの第2要素26は、例えば、第2横断溝11Bの第2要素26と平行に延びている。前記「平行」とは、第1横断溝11Aの第2要素26のタイヤ軸方向に対する角度α12aと第2横断溝11Bの第2要素26のタイヤ軸方向に対する角度α12bとの差の絶対値|α12a-α12b|が0度であるのは勿論、絶対値|α12a-α12b|が10度以下の態様を含む。
【0044】
上述の作用を効果的に発揮させるために、第1横断溝11Aの第3要素27は、本実施形態では、第2横断溝11Bの第3要素27とタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜しているのが望ましい。また、第1横断溝11Aの第3要素27は、例えば、第2横断溝11Bの第3要素27と平行であるのが望ましい。
【0045】
複数のクラウン副溝10は、複数の横断溝11を繋ぐ継ぎ溝12を含んでいる。このような継ぎ溝12は、エッジ成分を大きくして、ウェットトラクション性能をさらに高める。継ぎ溝12は、本実施形態では、直線状に延びている。
【0046】
継ぎ溝12は、例えば、各横断溝11のジグザグの頂部11t、11t同士を繋いでいる。継ぎ溝12は、本実施形態では、第1横断溝11Aの第1要素25に繋がる頂部11tと、第2横断溝11Bの第1要素25に繋がる頂部11tとを繋いでいる。
【0047】
継ぎ溝12は、例えば、第2クラウン溝部16及び第2ショルダー溝部18と平行に延びている。このような継ぎ溝12は、クラウンブロック8のブロック剛性の大きな低下を抑えて耐偏摩耗性能を高く維持する。
【0048】
各クラウン副溝10の最大の溝幅W3(図1に示す)は、各クラウン横溝5の最大の溝幅W2の0.25倍以上が望ましく、0.30倍以上がさらに望ましく、0.50倍以下が望ましく、0.45倍以下がさらに望ましい。クラウン副溝10の溝幅W3がクラウン横溝5の溝幅W2の0.25倍以上であるので、ウェットトラクション性能を高めることができる。クラウン副溝10の溝幅W3がクラウン横溝5の溝幅W2の0.50倍以下であるので、クラウンブロック8のブロック剛性を高く維持することができる。
【0049】
横断溝11の溝幅W3aは、例えば、継ぎ溝12の溝幅W3bと同じとされている。横断溝11の溝深さD3aは、本実施形態では、継ぎ溝12の溝深さD3b(図3に示す)と同じとされている。
【0050】
図3に示されるように、複数のクラウン副溝10の最大の溝深さD3は、複数のクラウン横溝5の最大の溝深さD2より小さいのが望ましい。このようなクラウン副溝10は、とりわけ、タイヤ新品時のウェットトラクション性能を向上する。各クラウン副溝10の最大の溝深さD3は、各クラウン横溝5の最大の溝深さD2の0.1倍以上が望ましく、0.2倍以上がさらに望ましく、0.4倍以下が望ましく、0.3倍以下がさらに望ましい。クラウン副溝10の溝深さD3がクラウン横溝5の溝深さD2の0.1倍以上であるので、ウェットトラクション性能を高めることができる。クラウン副溝10の溝深さD3がクラウン横溝5の溝深さD2の0.5倍以下であるの、クラウンブロック8のブロック剛性を高く維持することができる。
【0051】
図2に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、ショルダー周方向溝4とトレッド端Teとの間に配された一対のショルダー陸部9を含んでいる。本実施形態の各ショルダー陸部9には、トレッド端Teからタイヤ軸方向の内側に延びてショルダー陸部9内で終端する複数のショルダー横溝30が設けられている。
【0052】
各ショルダー横溝30は、例えば、ショルダー周方向溝4のジグザグの1ピッチPの間隔で配されている。ショルダー横溝30のタイヤ軸方向の長さLbは、本実施形態では、ショルダー陸部9のタイヤ軸方向の最大幅Wsの30%~50%とされている。
【0053】
以上、本発明の一実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【0054】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0055】
[本発明1]
トレッド部を有する重荷重用空気入りタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ赤道側でタイヤ周方向に連続して延びるクラウン周方向溝と、前記クラウン周方向溝よりもタイヤ軸方向の外側をタイヤ周方向に連続して延びるショルダー周方向溝と、前記クラウン周方向溝と前記ショルダー周方向溝とを繋ぐ複数のクラウン横溝と、前記クラウン周方向溝と前記ショルダー周方向溝と前記複数のクラウン横溝とで形成される複数のクラウンブロックとを含み、
前記クラウン周方向溝は、前記ショルダー周方向溝側に向かって凸のクラウン外側頂部と、前記クラウン外側頂部とは逆向きに凸のクラウン内側頂部とをタイヤ周方向で交互に含んでジグザグ状に延び、
前記ショルダー周方向溝は、前記クラウン周方向溝側に向かって凸のショルダー内側頂部と、前記ショルダー内側頂部とは逆向きに凸のショルダー外側頂部とをタイヤ周方向で交互に含んでジグザグ状に延び、
タイヤ周方向で直接隣接する前記複数のクラウン横溝は、前記クラウン周方向溝のジグザグの2ピッチの間隔で配され、かつ、前記クラウン外側頂部と前記ショルダー内側頂部とを繋いでおり、
前記複数のクラウンブロックのそれぞれには、前記複数のクラウン横溝の溝幅よりも小さい溝幅を有する複数のクラウン副溝が設けられ、
前記複数のクラウン副溝は、前記クラウンブロックを横断する少なくとも2本の横断溝を含む、
重荷重用空気入りタイヤ。
[本発明2]
前記少なくとも2本の横断溝のそれぞれは、ジグザグの頂部を複数含んでジグザグ状に延びる、本発明1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
[本発明3]
前記少なくとも2本の横断溝のそれぞれは、第1要素と、第2要素と、これらの間の第3要素とを含み、
前記第1要素は、前記クラウン周方向溝又は前記ショルダー周方向溝の一方に繋がり、かつ、タイヤ軸方向に対する角度が20度未満で延びており、
前記第2要素は、前記第1要素よりもタイヤ軸方向に対して大きな角度で傾斜している、本発明1又は2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
[本発明4]
前記第1要素は、タイヤ軸方向と平行に延びており、
前記第2要素のタイヤ軸方向に対する角度は、20~40度である、本発明3に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
[本発明5]
前記第1要素と前記第3要素との間の角度、及び、前記第2要素と前記第3要素との間の角度は、80~120度である、本発明3又は4に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
[本発明6]
前記第1要素は、前記クラウン内側頂部又は前記ショルダー外側頂部に連通している、本発明3ないし5のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
[本発明7]
前記各横断溝は、前記第1要素が前記クラウン周方向溝に繋がる第1横断溝と、前記第1要素が前記ショルダー周方向溝に繋がる第2横断溝とを含む、本発明3ないし6のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
[本発明8]
前記第1横断溝の前記第2要素は、前記第2横断溝の前記第2要素とタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している、本発明7に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
[本発明9]
前記複数のクラウン副溝は、前記複数の横断溝を繋ぐ継ぎ溝を含む、本発明1ないし8のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
[本発明10]
前記複数のクラウン副溝の最大の溝幅は、前記複数のクラウン横溝の最大の溝幅の0.25~0.50倍である、本発明1ないし9のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
[本発明11]
前記複数のクラウン副溝の最大の溝深さは、前記複数のクラウン横溝の最大の溝深さの0.1~0.4倍である、本発明1ないし10のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
[本発明12]
前記複数のクラウンブロックのそれぞれは、タイヤ周方向の最大長さLcとタイヤ軸方向の最大長さWcとの比(Lc/Wc)が、1.8~2.2である、本発明1ないし11のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【符号の説明】
【0056】
1 重荷重用空気入りタイヤ
3 クラウン周方向溝
3a クラウン外側頂部
3b クラウン内側頂部
4 ショルダー周方向溝
4a ショルダー内側頂部
4b ショルダー外側頂部
5 クラウン横溝
8 クラウンブロック
10 クラウン副溝
11 横断溝
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-08-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
本実施形態のクラウン周方向溝3は、タイヤ赤道C上に位置している。本実施形態のショルダー周方向溝4は、クラウン周方向溝3のタイヤ軸方向の両側に位置している。これにより、クラウンブロック8は、タイヤ赤道Cの両側に配される。なお、図2において、クラウン外側頂部3aは、クラウン周方向溝3と左側のショルダー周方向溝4Aとを対象とした場合には、クラウン周方向溝3の左側に凸となる部分が該当する。他方、クラウン周方向溝3と右側のショルダー周方向溝4Bとを対象とした場合、前記左側に凸となる部分は、クラウン内側頂部(図示省略)となる。本明細書では、以降、クラウン周方向溝3から左側のトレッドパターンについて説明がなされ、クラウン周方向溝3から右側のトレッドパターンについての説明が省略される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2