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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062225
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】筆記具用中綿及び筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 8/03 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
B43K8/03 100
B43K8/03 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170088
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】神谷 俊史
(72)【発明者】
【氏名】中島 淳
(72)【発明者】
【氏名】長岡 健吾
(72)【発明者】
【氏名】住吉 聡
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA04
2C350HA15
2C350KC11
2C350NA14
2C350NC04
2C350NC19
2C350NC28
(57)【要約】
【課題】 循環型社会に寄与することができる筆記具用中綿、この筆記具用中綿(インクリザーバー)を簡単に交換することができ、中綿を再使用可能となる筆記具を提供する。
【解決手段】
本発明の筆記具用中綿は、パルプを原料とした多孔質体を中綿としたことを特徴とする。
筆記具は、ペン先60を有する先軸20と、上記構成の中綿10が収容された後軸30とを備えた筆記具Aであって、後軸30の後方への直進操作により中綿10とペン先60が分離することを特徴とする。この筆記具Aは、後軸30に設けられたスライド部材50を解除することにより中綿10が取り外せる構造となっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプを原料とした多孔質体を中綿としたことを特徴とする筆記具用中綿。
【請求項2】
ペン先を有する先軸と、請求項1記載の中綿が収容された後軸とを備えた筆記具であって、後軸の後方への直進操作により中綿とペン先が分離することを特徴とする筆記具。
【請求項3】
前記筆記具は、後軸に設けられたスライド部材を解除することにより中綿が取り外せる構造を有する請求項2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記筆記具は、後軸の後方への移動により中綿が先軸の軸筒外径から突出する構造を有する請求項2に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環型社会に寄与することができる筆記具用中綿、この筆記具用中綿(インクリザーバー)を簡単に交換することができ、中綿を再使用可能となる筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ごみを減らすリデュース(Reduce)、使える物を繰り返し使用するリユース(Reuse)、及びごみを資源として再び利用するリサイクル(Recycle)の3つのR(アール)を総称した3Rが提唱されている。
筆記具においても、従来、樹脂及び金属などによって形成されていたが、リサイクルが容易な素材への置き換えも求められている。
また、国連サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)における17の目標の中には、持続可能な生産消費形態を確保することが挙げられており、廃棄物の発生を大幅に削減することなどが求められている。このSDGsの観点などから、使い終わった筆記具を再使用するニーズが更に高まっており、これらは循環型社会に寄与するものとなる。
【0003】
筆記具において、中綿式の筆記具などでは、インクが充填された中綿を交換することで、再使用可能とする製品が知られている。
例えば、1)軸筒内部にインクが充填された中綿を収容する収容部を形成し、前記軸筒の一部が分割可能に螺合されるとともに、その分割部が前記収容部の開口部を形成し、前記軸筒を分割して収容部内の中綿へのインクの補充や中綿の交換を可能とした筆記具において、前記軸筒の少なくとも一方端の外周部を弾性体で被覆することを特徴とする筆記具であり、前記弾性体は、分割された軸筒のうちの短い軸筒側に取付けられ、また、前記弾性体は、軸筒の成形時に該軸筒の樹脂成形品と一体成形されることなどの筆記具(例えば、特許文献1参照)が開示されている。
【0004】
また、2)筆記具または塗布具などのインキまたは塗布液を保蔵する中綿を収納するカートリッジであって、中綿収納容器として一方が開放された容器状のカートリッジ軸と、該カートリッジ軸開放端部に嵌着して密閉するキャップとを有し、カートリッジ軸とキャップの互いの嵌着部に気密を保持するシール部を形成し、キャップの内側に中綿を挟んで保持するための複数条のリブを形成すると共に、カートリッジ軸の内側に中綿を挟んで保持するための複数条のリブを形成し、キャップのリブの中綿保持力はカートリッジ軸のリブの中綿保持力よりも大きいことを特徴とする中綿収納用カートリッジ(例えば、特許文献2参照)が開示されている。
【0005】
また、3)筆記具に交換可能に用いられ、インキが含浸された繊維加工体からなる中綿と、該中綿が収納される容器本体と、該容器本体に着脱自在に嵌合可能なキャップと、を備えた中綿収納容器であって、内部に複数の中綿が収納され、前記容器本体の底面に、各々の中綿の後端が前後方向に当接する当接部が設けられ、前記各々の当接部の前後方向の位置が異なることを特徴とする中綿収納容器(例えば、特許文献3参照)が開示され、
4)使用樹脂部材が全て同一な材質、グレードで構成されてなる筆記具(例えば、特許文献4参照)が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1~4に用いられている中綿交換式の筆記具において、中綿自体は樹脂繊維などのプラスチック製であり、脱プラスチックの観点、SDGsの観点から、環境に配慮した材料にて作製することが望まれていた。
また、上記特許文献1~4の中綿交換構造などは、交換に手間を要するなどの課題があり、更に簡単に交換できる構造などが切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-39878号公報(特許請求の範囲、図1図3等)
【特許文献2】特開2003-80887号公報(特許請求の範囲、図1図4等)
【特許文献3】特開2020-100417号公報(特許請求の範囲、図1等)
【特許文献4】特開2000-25381号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の現状などに鑑み、これを解消しようとするものであり、循環型社会に寄与する点などから、古紙などを有効利用した筆記具用中綿、この中綿を簡単に交換することで、再度中綿などが再使用可能となる筆記具などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記従来の課題等を解決するために鋭意検討した結果、パルプを原料とした特定構造の中綿を作製することにより、また、この中綿を簡単に交換できる筆記具により、上記目的の筆記具用中綿及び筆記具が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0010】
すなわち、本発明の筆記具用中綿は、パルプを原料とした多孔質体を中綿としたことを特徴とする。
本発明の筆記具は、ペン先を有する先軸と、上記構成の中綿が収容された後軸とを備えた筆記具であって、後軸の後方への直進操作により中綿とペン先が分離することを特徴とする。
前記筆記具は、後軸に設けられたスライド部材を解除することにより中綿が取り外せる構造を有することが好ましい。
前記筆記具は、後軸の後方への移動により中綿が先軸の軸筒外径から突出する構造を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、脱プラスチック、古紙などの利用率向上という、環境対応を進め、循環型社会に寄与することができる筆記具用中綿の提供でき、また、この筆記具用中綿(インクリザーバー)を簡単に交換することができ、中綿を再使用可能となる筆記具が提供される。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は本発明の筆記具用中綿を搭載した筆記具の一例を示す正面図、(b)はその縦断面図である。
図2】(a)は図1の筆記具から筆記具用中綿ユニットを外した状態の斜視図、(b)は(a)の正面図、(c)は(b)の縦断面図である。
図3】(a)は図2の筆記具から筆記具用中綿を外した状態の斜視図、(b)は(a)の正面図、(c)は(b)の縦断面図である。
図4】ペン先を取り付ける先軸の部品図であり、(a)は正面側から見た斜視図、(b)は先軸を後方側からみた斜視図、(c)は右側面図、(d)は正面図、(e)は左側面図、(f)は縦断面図、(g)は後方側から見た斜視図である。
図5】筆記具用中綿ユニット(後軸)の部品図であり、(a)は前方側から見た斜視図、(b)は平面図、(c)は前方側から見た斜視図、(d)横断面図、(e)は左側面図、(f)は正面図、(g)は右側面図、(h)は縦断面図である。
図6】取付部材の部品図であり、(a)は前方上面側から見た斜視図、(b)は平面図、(c)は後方上面側から見た斜視図、(d)は横断面図、(e)は左側面図、(f)は正面図、(g)は縦断面図である。
図7】スライド部材の部品図であり、(a)は前方側から見た斜視図、(b)は平面図、(c)は後方側から見た斜視図、(d)は左側面図、(e)は縦断面図,(f)は右側面図、(g)は横断面図である。
図8】本発明の筆記具用中綿を搭載した筆記具の他例を示す図面であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は縦断面図、(e)は横断面図である。
図9図8の筆記具の後軸を後方にスライドさせた状態を示す図面であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は縦断面図である。
図10図9の筆記具の中綿ケースをスライドさせた状態を示す図面であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は縦断面図である。
図11図10の筆記具の状態から持ち上げ部材(枕部材)で中綿を持ち上げ中綿を容易に交換可能とした状態を示す図面であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は縦断面図である。
図12図8の筆記具のペン先を取り付ける先軸の部品図であり、(a)は正面側から見た斜視図、(b)は先軸を後方側からみた斜視図、(c)は平面図、(d)は左側面図、(e)は正面図、(f)は右側面図、(g)は縦断面図である。
図13図8の筆記具の後軸の部品図であり、(a)は正面側から見た斜視図、(b)は平面図、(c)は左側面図、(d)は正面図、(e)は(d)のx-x線断面図、(f)は右側面図、(g)は縦断面図である。
図14図8の筆記具の中綿を取り付ける中綿ケースの部品図であり、(a)は前方側から見た斜視図、(b)は後方側からみた斜視図、(c)は平面図、(d)は左側面図、(e)は正面図、(f)は右側面図、(g)は縦断面図である。
図15】持ち上げ部材(枕部材)の部品図であり、(a)は正面方側から見た斜視図、(b)は正面側上面から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述する実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
なお、本発明の筆記具用中綿を搭載した筆記具等の各図において、筆記具及びその構成部品についての「前方」とは、筆記具の先端の方向を示し、「後方」とはその反対側の方向を示し、「軸方向」とは、筆記具本体(軸筒)の前方から後方までを貫く軸の方向を示し、「横断方向」とは、軸方向に直交する方向を示すものとする。また、各図面間で共通して付されている符号は、特に各図面の説明において言及がなくとも、同じ構成又は部材を表している。
【0014】
(筆記具用中綿)
本発明の筆記具用中綿は、パルプを原料とした多孔質体を中綿としたことを特徴とするものである。
用いることができるパルプは、再生パルプなどを用いることができ、再生パルプは、再生紙、古紙を原料とすることができる。
また、本発明に用いることができる再生パルプには、古紙を離解した古紙パルプや古紙を離解後にインキを除去した脱墨パルプが含まれる。再生パルプの原料となる古紙としては、例えば、新聞紙、チラシ、雑誌、書籍、事務用紙、封書、感熱紙、ノーカーボン紙、その他複写機、OA機器から生ずる印刷紙などが含まれる。特に、粘着剤、接着剤、粘着テープ、雑誌の背糊等の粘着物を含む雑誌古紙等も本発明の再生パルプの原料として用いることができる。
【0015】
パルプの密度は、10~30質量%であり、気孔率は70~90%が好ましい。この中綿の「気孔率」は、下記のようにして算出される。まず、既知の質量及び見掛け体積を有する中綿を水中に浸し、十分に水を浸み込ませた後、水中から取り出した状態で質量を測定する。測定した質量から、中綿に浸み込ませた水の体積が導出される。この水の体積を中綿の気孔体積と同一として、下記式から、気孔率が算出される。
気孔率(単位:%)=(水の体積)/(中綿の見掛け体積)×100
また、中綿の細孔は、水銀圧入法で、30~300μmであるものが好ましい。
また、中綿の形状は、特に限定されないが、例えば、円柱形状もしくは棒状などが挙げられる。また、中綿は、一方の端面に、ペン先の後端側を挿入する挿入孔を有することが好ましい。
中綿の成形は、例えば、パルプや再生パルプ材料を円柱状に成形することで、中綿として使用でき、その成形方法としては、例えば、型にパルプ粉体を圧入し、水を含侵させたのち、乾燥することで、成形することができる。
【0016】
本発明の中綿は、これまで、主に合成樹脂繊維を収束させて多孔質体を形成させていたが、古紙などを原料として作製することで、脱プラスチックおよび古紙の利用率向上という、環境対応を進め、循環型社会に寄与することができる筆記具用中綿が得られることとなる。中綿の材料となる再生パルプなどは、水で膨潤しやすいため、後述するように、インク組成を見直し、特に油性インクとすることで安定した品質を確保できることを確認した。
【0017】
(筆記具)
図1図7は、本発明の筆記具用中綿を搭載した筆記具Aと、その筆記具に用いる構成部品となる本発明の筆記具用中綿10、各部品(先軸20、中綿ユニットとなる後軸30、中綿を取り付ける取り付け部材40、スライド部材50、ペン先60、キャップ70)の一例を示す各部品図、筆記具用中綿10の交換機構などを説明する各図面である。
本実施形態の筆記具Aは、図1図3に示すように、ペン先60を有する先軸20と、上記構成の中綿10が収容された中綿ユニットとなる後軸30とを備えた筆記具であって、後軸30の後方への直進操作により中綿10とペン先60が分離することを特徴とするものであり、この筆記具は、後軸30に設けられたスライド部材50を後軸30から外すことにより中綿10が取り外せる構造となるものである。
【0018】
筆記具用中綿10は、上述の如く、再生紙及び/又は古紙などのパルプを原料とした多孔質体を円柱状の中綿としたものであり、ペン先60の後端側61を挿入する挿入孔11を有している。この中綿10の外周面(外皮)には、紙、セロハン、天然成分の外皮を有している。
中綿10に吸蔵させる筆記具用インクは、特に限定されず、筆記具の用途等に応じて、水性インク、油性インク、熱変色性インクなどの好適な配合処方とすることができる。本発明では、中綿10が再生パルプなどで構成されるので、水で膨潤しやすいため、インク組成は、油性インクとすることで安定した品質を確保できるので、油性インクを吸蔵させることが好ましい。
【0019】
先軸20は、図4(a)~(g)に示すように、前方側が先細状の先細部21となった円筒形をしており、ペン先60を保持する保持孔22を有し、該保持孔22の後方側内周面には、ペン先60を保持するため複数の保持片23,23…を有している。また、先軸20の後方側の内周面には後軸30の尾栓部31を嵌合するための嵌合部24を有している。
【0020】
後軸30は、筆記具用中綿10の交換を簡単にするためのユニット構成を備えるものであり、図6(a)~(g)に示すように、筆記具用中綿10を収容保持する外筒部31と後方側に尾栓部35とを有している。
後軸30の外筒部31は、筆記具用中綿10を収容保持するものであり、内外に弾性作用を備えるように、周面に分割空間部32a,32aを有する分割片部32,32を有し、この断面略円形状の分割片部32,32間には筆記具用中綿10を収容するものであり、その外周面にはスライド部材50が取り付けられるものである、分割片部32,32の前方側内周面は筆記具用中綿10の外周面に密接する保持片部33a,33a…を有する保持面33、33となっており、その外周面にはスライド部材50を保持するための保持突部34、34を有している。
また、後軸30の後方側の尾栓部35の外周面には、先軸20の後方側と嵌合するための嵌合部35aを有すると共に、その内周中央部には筆記具用中綿10の後方側端面12を支持する円柱状の支持部36を一体に有している。
【0021】
スライド部材50は、図7(a)~(g)に示すように、円筒形状となっており、後方側内周面には、後軸30の分割片部32,32からなる外筒部31の外周面にスライドするための4つのスライド片51,51…が所定間隔ごとに設けられており、また、前方側内周面に2つの凹面状のスライド片52,52が設けられている。スライド部材50の前方側内周面には、外筒部31の上記保持突部34に沿う嵌合突部53を有している。
【0022】
ペン先60は、棒状となっており、前方側が砲弾状の筆記部61で構成され、後方部62が中綿10の挿入孔11に挿入されるものである。
ペン先60の材質等としては、例えば、気孔を有する多孔質で形成されたものが挙げられ、具体的には、スポンジ体、焼結体、繊維束体、発泡体、海綿体、フェルト体、ポーラス体などを挙げることができる。これらの多孔質体等を形成する材料としては、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などを用いることができる。
キャップ65は、先軸20の先細部21外周面に着脱自在となるものであり、外キャップ66と、ペン先60を包囲する内キャップ67とを有している。
【0023】
このように構成される筆記具Aでは、筆記具用中綿10を交換するためには、以下の操作などにより簡単に交換することができる。
図1は、筆記具用中綿を搭載した状態の筆記具Aであり、キャップ70を外せば筆記に供することができる。筆記により、油性インク等が消費され、中綿10を交換する場合は、図2に示すように、図1の筆記具Aから後軸30を先軸20から嵌合を解いて外せば、筆記具用中綿ユニットを出した状態とすることができる。この状態でスライド部材50の前方側が嵌合により中綿10は弾性保持されているので、図3に示すように、スライド部材50を後方側にスライドすることにより、中綿10の分割片部32,32による保持を外せば、中綿10を簡単に後軸30から取り外すことができる。
新しい中綿10を補充する場合は、図3の中綿10が無い状態から中綿10を後軸30内に挿入してスライド部材50を前方側にスライドさせて嵌合させれば中綿10を取り付けることができ、この状態で先軸20内に取り付けることにより交換作業は終了し、筆記などに供することができる。
この実施形態の筆記具Aでは、循環型社会に寄与することができる筆記具用中綿(インクリザーバー)を簡単に交換することができ、中綿などを再使用可能となる筆記具が提供できることとなる。
【0024】
図8図15は、図1図7の筆記具Aの他の実施形態となる筆記具Bと、その筆記具に用いる構成部品となる本発明の筆記具用中綿10、各部品(先軸、後軸、スライド部材、ペン先)の一例を示す各部品図、筆記具用中綿10の交換機構などを説明する各図面である。なお、上記筆記具Aと同様の部品となる筆記具用中綿10、中綿10に吸蔵させる筆記具用インク、ペン先60の各説明は省略する。
本実施形態の筆記具Bは、図8図15に示すように、ペン先60を有する先軸70と、上記構成の中綿10をスライド部材80と共に収容する後軸90とを備えた筆記具であって、後軸90の後方への直進操作により中綿10とペン先60が分離することを特徴とするものであり、この筆記具は、後軸90の後方への移動により中綿10が先軸70の軸筒外径から突出する構造とすることにより中綿10が取り外せる構造となるものである。
【0025】
先軸70は、図12(a)~(g)に示すように、前方側が先細状の先細部71となった円筒形をしており、ペン先60を保持する保持孔72を有し、該保持孔72の後方側内周面には、ペン先60を保持するため複数の保持片73,73…を有している。先細部71の後方側には前板面部74を有し、その前板面部74の後方側は箱型状となっておりその前半部が筒状部75となって、後半部が開放形状の箱型部76となっている。筒状部75の前方側外周面には、嵌合突部75aを有している。また、箱型部76の両側の壁部77、77には、図15に示す、中綿10を持ち上げることとなる持ち上げ部材(枕部材)95の取り付け片部96,96を取り付け、スライドするための入り口となる傾斜孔78aと該傾斜孔78aに続く直線上の直線孔78bとが形成されている
【0026】
後軸90は、有底筒状をしており、筆記具用中綿10を収容するスライド部材80を収容するものとなり、図8(a)~(e)等に示すように、筆記具用中綿10を収容保持するスライド部材80と先軸70の筒状部75と箱型部76とを収容し、後軸90の前方開口部91が筒状部75の嵌合突部75aに嵌合することにより取り付けられることとなる。
この後軸90の後端部の内面中央部には、筆記具用中綿10の後方側端面12を支持する円柱状の支持部92を一体に有している。また、前方開口部91の内周面の上下側には、スライド部材80を収容し、スライドするための直線上スライド凹部93,93が設けられると共に、スライドを停止することとなる停止壁部94が設けられている。
【0027】
スライド部材80は、図14(a)~(g)に示すように、外形形状が箱型形状となっており、底面部81が円柱状の中綿10と密接するようの曲面状となっている。また、スライド部材80のスライド部材80は、前端側には、ペン先60の挿入孔81を有する前板部82が設けられ、後端側には、後軸90の支持部92を挿通する挿通孔83を後板部84を有し、前板部82と後板部84との間は側壁部85,85となっており、側壁部85,85の中央部には前記先軸70の傾斜孔78a、78aと傾斜形状が逆側となる逆傾斜孔85a、85aが設けられている。また、後板部84の上下面には後軸90のスライド凹部93,93とスライドすると共に、停止壁部94でスライドが停止する嵌合突部84a、84aが設けられている。また、後板部84の下端側には、先軸20の開口部の下端部と密着するように密着段部84bとなっている
スライド部材80の中央部の側面及び底面には、スライドすることとなる持ち上げ部材95の厚み分の操作凹面部86が一面に設けられている。
【0028】
このように構成される筆記具Bでは、筆記具用中綿10を交換するためには、以下の操作などにより簡単に交換することができる。
図8は、筆記具用中綿10を搭載した状態の筆記具Bであり、この状態で筆記に供することができる。筆記により、油性インク等が消費され、中綿10を交換する場合は、後軸80を後方にスライドさせると、図9に示すように、スライド部材80に収容された中綿10が半分でてくる。この状態で後軸90を持って更にスライドさせると、図10に示すように、後軸90の停止壁94に後軸90はスライドすることなくスライド部材80がスライドすることとなりスライド部材80に収容された中綿10の大部分がでてくる。この状態では、中綿10の底面部に配置される半円状の持ち上げ部材(枕部材)95の取り付け片部96,96は先軸70の傾斜孔78a、78aの下端部、スライド部材80の逆傾斜孔85a、85aの下端部までスライドしており、更にスライド部材80をスライドさせると、図11に示すように、スライド部材80の逆傾斜孔85a、85aの下端部で停止した状態で、持ち上げ部材(枕部材)95の取り付け片部96,96は先軸70の傾斜孔78a、78aの上端部まで持ち上げられるので(持ち上げ部材95のリクライニング機構により)、中綿10が先軸20の軸筒外径から突出して中綿10が半分上がり、中綿10を簡単にスライド部材80から取り外すことができる。
新しい中綿10を補充する場合は、図11の中綿10が無い状態から中綿10をスライド部材80内に挿入して後軸90を前方側にスライドさせていけば、スライド部材80が前方側に、その後後軸90が前方側へスライドしてき、交換作業は終了し、筆記などに供することができる。
この実施形態の筆記具Bでは、循環型社会に寄与することができる筆記具用中綿(インクリザーバー)を簡単に交換することができ、中綿などを再使用可能となる筆記具が提供できることとなる。
【0029】
本形態の筆記具用中綿、これを搭載した筆記具は、上記各形態などに限定されることなく、更に種々変更することができる。
上記形態の筆記具は、マーキングペンとして説明したが、例えば、カラーマーカー、ネームペン、ペイントマーカー、アルコール除菌液などとしてもよいものである。
【実施例0030】
次に、実施例により、本発明を更に詳述するが、下記実施例等に限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
再生パルプ1gを、φ10mm、L50mmの円筒形状に充填し、水を含侵後、50℃恒温槽にて、24時間加熱乾燥した。上記操作によって得られた円筒形状の再生パルプ製の中綿を用いて、図1図7に準拠したサインペンを作製した。
再生パルプ材料は、中部電磁器工業製紙漉き用再生パルプを用いた。
インクはエタノールを主溶剤とする下記組成の油性インクを用いた。
パルプ密度は、20wt%で、気孔率は、80%であった。
平均細孔径は、約80μmであった。
(筆記具用インク組成:インク色:黒色)
筆記具用インクとして、下記組成のインク(合計100質量%)を使用した。
エチルアルコール 70質量%
ノルマルプロピルアルコール 5質量%
ベンジルアルコール 3質量%
タマノル 531〔荒川化学工業社製〕 7質量%
カーボンブラック MA-8 〔三菱化成工業社製〕 13質量%
ポリエーテル変性シリコーンオイル〔KP-369信越化学工業社製〕 2質量%
(ペン先60の構成)
ペン先60:ポリエチレン製焼結芯、気孔率:60%、砲弾状、最大径4mm、長さ35mm
以上の構成のサインペンを用いて、筆記したところ、良好な筆記ができ、また、上述の筆記具Aの機構にて、中綿の交換を行ったところ、簡単に中綿を取り出しが可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
筆記具用中綿は、サインペン、アンダーラインペン、油性マーカーなどの筆記具用の中綿として好適に適用することができ、この筆記具用中綿を用いた筆記具では、後軸の後方への直進操作により中綿とペン芯が分離することができ、筆記具用中綿の交換作業を簡単に行うことができる筆記具が得られる。
【符号の説明】
【0033】
10 中綿
20 先軸
30 後軸
50 スライド部材
60 ペン先
70 キャップ
図1
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