(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062242
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】加工異常診断のための情報更新装置及び情報更新方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4155 20060101AFI20240430BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
G05B19/4155 V
G05B19/18 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170108
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 英介
【テーマコード(参考)】
3C269
【Fターム(参考)】
3C269AB01
3C269BB12
3C269EF02
3C269MN23
3C269MN29
3C269MN44
(57)【要約】
【課題】未学習データに対する診断可否判断の効率化を実現できる工作機械の加工異常診断のための情報更新装置を提供することを目的とする。
【解決手段】情報更新装置2は、学習により更新可能な診断モデルと、診断モデルが対応可能な加工条件情報と、を保持する情報保持手段9と、診断を実施する加工の加工条件を入力可能な情報入力手段8と、加工データを取得するデータ取得手段3と、加工データにラベルを付与するラベル付与手段4と、加工の異常度を計算する計算手段5と、異常度と、ラベルとを用い、診断を実施する加工における加工異常診断の診断対応の可否を判断する可否判断手段6と、可否判断手段6により判断された診断対応の可否判断結果と、情報入力手段8で入力した加工条件をもとに、情報保持手段9が保持する加工条件情報を更新する情報更新手段7と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具を用いてワークを加工する工作機械を用いた加工における加工異常診断のための情報更新装置であって、
学習により更新可能な診断モデルと、前記診断モデルが対応可能な加工条件情報と、を保持する情報保持手段と、
診断を実施する加工の加工条件を入力可能な情報入力手段と、
加工データを取得するデータ取得手段と、
前記加工データに、正常または異常のラベルを付与するラベル付与手段と、
前記加工データをもとに、診断を実施する加工の異常度を計算する計算手段と、
前記異常度と、前記ラベルとを用い、診断を実施する加工における前記加工異常診断の診断対応の可否を判断する可否判断手段と、
前記可否判断手段により判断された診断対応の可否判断結果と、前記情報入力手段で入力した前記加工条件をもとに、前記情報保持手段が保持する前記診断モデル及び/又は前記加工条件情報を更新する情報更新手段と、を備えることを特徴とする加工異常診断のための情報更新装置。
【請求項2】
前記可否判断手段は、診断を実施する加工における前記異常度の変化速度の最大値と予め設定された変化速度閾値との比較結果と、前記ラベルとを用い、診断対応の可否を判断することを特徴とする請求項1に記載の加工異常診断のための情報更新装置。
【請求項3】
前記可否判断手段は、前記加工異常診断の診断対応の可否判断において、診断する加工における前記異常度の変化速度の最大値と予め設定された前記変化速度閾値を比較した結果と、前記ラベルとを用い、前記ラベルが異常の場合は、前記異常度の変化速度の最大値が、前記変化速度閾値を超える場合に診断可、前記変化速度閾値を超えない場合に診断不可とし、前記ラベルが正常の場合は、前記異常度の変化速度の最大値が前記変化速度閾値を超えない場合に診断可、前記変化速度閾値を超える場合に診断不可とすることを特徴とする請求項2に記載の加工異常診断のための情報更新装置。
【請求項4】
前記情報更新手段は、診断する加工に対する診断対応の可否判断結果が否の場合は、前記加工データと前記ラベルとを用いて追加学習を行って前記診断モデルを更新した後、前記情報保持手段が保持する前記加工条件情報に、前記情報入力手段で入力した前記加工条件を追加し、可否判断結果が可の場合は、前記情報入力手段で入力した前記加工条件と前記情報保持手段が保持する前記加工条件情報とを比較し、前記情報保持手段が保持する前記加工条件情報に、前記情報入力手段で入力した前記加工条件が含まれない場合のみ、前記情報保持手段が保持する前記加工条件情報に、前記情報入力手段で入力した前記加工条件を追加することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の加工異常診断のための情報更新装置。
【請求項5】
切削工具を用いてワークを加工する工作機械を用いた加工における加工異常診断のための情報更新方法であって、
学習により更新可能な診断モデルと、前記診断モデルが対応可能な加工条件情報と、を読み込み、
診断を実施する加工の加工条件を入力し、
加工データを取得し、
前記加工データに、正常または異常のラベルを付与し、
前記加工データをもとに、診断を実施する加工の異常度を計算し、
前記異常度と、前記ラベルとを用い、診断を実施する加工における前記加工異常診断の診断対応の可否を判断し、
判断された診断対応の可否判断結果と、入力した前記加工条件をもとに、前記診断モデル及び/又は加工条件情報を更新することを特徴とする加工異常診断のための情報更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マシニングセンタ等の工作機械における加工異常診断のための情報更新装置及び情報更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械における加工では、使用する工具に折損や欠損のような損傷が生じた場合、加工するワークが損傷する場合がある。損傷したワークは、精度や表面品位の悪化を理由に不良ワークとなるため、生産性の低下につながる。また、ワークの材料費が高価な場合は、コストの面で大きな損失となる。そのような中、加工状態を示す信号を測定して、加工状態が正常か異常かを分類することで、加工の異常を診断する技術が開示されている。
例えば、特許文献1では、機械の運転情報を入力として、機械学習を用いて作成した診断モデルが出力した特徴量を閾値と比較し、工具の状態が正常か異常かを診断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示された技術を用いて、加工条件が変化した場合等の未学習のデータに対して診断を実施し、正常と異常とを分離できたことで、診断可能な加工条件範囲が拡大できたとする。しかし、当該技術では、結果として診断可能な加工条件範囲が拡大できた事実はあっても、機械学習を経ておらず、拡大された分の診断可能な加工条件情報が残らない。つまり、診断モデルは、診断可能であるが未学習のデータを学習できていない。そのため、加工異常診断の実施が、作業履歴上可能であることが明らかであっても、未学習のデータに対しては、診断を行う前に、機械学習を含めた実加工を伴う診断可否判断が発生する。従って、加工異常診断適用のために、多くの工数が生じることになるため、未学習データに対する加工異常診断の診断可否判断の効率化が求められている。
【0005】
そこで、本開示では、未学習データに対する診断可否判断の効率化を実現できる工作機械の加工異常診断のための情報更新装置及び情報更新方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1の構成は、切削工具を用いてワークを加工する工作機械を用いた加工における加工異常診断のための情報更新装置であって、学習により更新可能な診断モデルと、診断モデルが対応可能な加工条件情報と、を保持する情報保持手段と、診断を実施する加工の加工条件を入力可能な情報入力手段と、加工データを取得するデータ取得手段と、加工データに、正常または異常のラベルを付与するラベル付与手段と、加工データをもとに、診断を実施する加工の異常度を計算する計算手段と、異常度と、ラベルとを用い、診断を実施する加工における加工異常診断の診断対応の可否を判断する可否判断手段と、可否判断手段により判断された診断対応の可否判断結果と、情報入力手段で入力した加工条件をもとに、情報保持手段が保持する加工条件情報を更新する情報更新手段と、を備えることを特徴とする。
本開示の第1の構成の別の態様は、上記構成において、可否判断手段は、診断を実施する加工における異常度の変化速度の最大値と予め設定された変化速度閾値との比較結果と、ラベルとを用い、診断対応の可否を判断することを特徴とする。
本開示の第1の構成の別の態様は、上記構成において、可否判断手段は、加工異常診断の診断対応の可否判断において、診断を実施する加工における異常度の変化速度の最大値と予め設定された変化速度閾値を比較した結果と、ラベルとを用い、ラベルが異常の場合は、異常度の変化速度の最大値が、変化速度閾値を超える場合に診断可、変化速度閾値を超えない場合に診断不可とし、ラベルが正常の場合は、異常度の変化速度の最大値が変化速度閾値を超えない場合に診断可、変化速度閾値を超える場合に診断不可とすることを特徴とする。
本開示の第1の構成の別の態様は、上記構成において、情報更新手段は、診断を実施する加工に対する診断対応の可否判断結果が否の場合は、加工データとラベルとを用いて追加学習を行って診断モデルを更新した後、情報保持手段が保持する加工条件情報に、情報入力手段で入力した加工条件を追加し、可否判断結果が可の場合は、情報入力手段で入力した加工条件と情報保持手段が保持する加工条件情報とを比較し、情報保持手段が保持する加工条件情報に、情報入力手段で入力した加工条件が含まれない場合のみ、情報保持手段が保持する加工条件情報に、情報入力手段で入力した加工条件を追加することを特徴とする。
上記目的を達成するために、本開示の第2の構成は、切削工具を用いてワークを加工する工作機械を用いた加工における加工異常診断のための情報更新方法であって、学習により更新可能な診断モデルと、診断モデルが対応可能な加工条件情報と、を読み込み、診断を実施する加工の加工条件を入力し、加工データを取得し、加工データに、正常または異常のラベルを付与し、加工データをもとに、診断を実施する加工の異常度を計算し、異常度と、ラベルとを用い、診断を実施する加工における加工異常診断の診断対応の可否を判断し、判断された診断対応の可否判断結果と、入力した加工条件をもとに、診断モデル及び/又は加工条件情報を更新することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、加工異常診断のための情報更新装置及び情報更新方法は、未学習のデータに対して加工異常診断を実施した場合に算出される異常度の変化速度を用いて、診断可否を判定する。また、診断可能と判定した場合は、未学習データの加工条件をもとに、診断モデルの診断可能な加工条件の情報を更新する。よって、未学習データに対する加工異常診断の診断可否判断に要する時間を短縮し、効率化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態の工作機械の要部を示す説明図である。
【
図2】取得された加工トルクの一例を示すグラフである。
【
図3】算出された時間領域異常度変化速度の一例を示すグラフである。
【
図4】加工データのラベルが異常だった場合に、加工異常診断のための情報を更新する手順を示すフローチャートである。
【
図5】加工データのラベルが正常だった場合に、加工異常診断のための情報を更新する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施の形態の工作機械の要部を示す説明図である。なお、
図1に示す工作機械では、カバー及びその他の設備を省略しているが、実際には、図示を省略したカバー及びその他の設備を備えるものである。
切削工具を用いてワークを加工するマシニングセンタ等の工作機械1は、加工異常診断のための情報更新装置2を備えている。情報更新装置2は、独立して設けられても良いし、工作機械1の制御装置(図示せず)に内包される形で設けられても良い。情報更新装置2は、データ取得手段3、ラベル付与手段4、計算手段5、可否判断手段6、情報更新手段7、情報入力手段8、情報保持手段9を有する。
なお、制御装置と、制御装置に内包されるか否かに関わらず情報更新装置2とは、種々の処理を可能とするために、CPU及びCPUに接続されたメモリ、並びに所定の情報を入力、出力可能な所定の装置等により構成される。
【0010】
データ取得手段3は、制御装置、工作機械1の所定箇所に設けられたトルクセンサ等の各種センサ(図示せず)等から、加工データを取得する。また、取得した加工データをラベル付与手段4、計算手段5、及び情報更新手段7に送付できる。本開示において、加工データとは、ワークを加工する際に得られる情報であり、制御装置から取得される工作機械1の制御情報や、各種センサから取得される測定値を含む。
情報保持手段9は、診断モデルと、診断モデルが対応可能、すなわち当該診断モデルにより診断可能な加工条件情報とを保持する。また、保持している診断モデルと、加工条件情報とを、計算手段5、情報更新手段7に送信できる。
本開示において、加工条件情報とは、主軸の回転数、送り速度等の、ワークの加工に関連する情報全般を指す。また、診断モデルは、加工異常診断のため、例えばニューラルネットワークなどの機械学習技術を用いて生成された数理モデルである。診断モデルは、加工条件等の機械学習を経ることにより、更新可能である。
【0011】
情報入力手段8は、加工異常診断を実施する加工の加工条件を作業者が入力可能なように設けられる。また、入力された加工条件を情報更新手段7に送信できる。
ラベル付与手段4は、データ取得手段3で取得される加工データに対し、正常または異常のラベルを付与する。ラベルの付与は、実加工による加工結果をもとに作業者が行うことを想定しているが、工具長測定装置による工具長の測定結果、カメラによる撮像で得た画像の処理結果をもとに判断した成否信号等、加工の成否に繋がるものであれば良い。また、ラベル付与手段4は、付与したラベルを情報更新手段7、可否判断手段6に送信できる。
【0012】
計算手段5は、データ取得手段3から取得した加工データと、情報保持手段9から取得した診断モデルとをもとに、診断を実施する加工の異常度を計算する。また、計算結果を可否判断手段6に送信できる。本開示において、異常度は、診断した加工における異常の度合を示す数値を指す。加工データと診断モデルとをもとに、診断を実施する加工の異常度を計算する場合に、例えば、2クラス分類の計算を用いる場合は、異常の所属確率を異常度とする。また、多クラス分類の計算を用いる場合は、正常以外のクラスの所属確率の合計値を異常度とする。また、1クラス分類の計算を用いる場合は、正常からの乖離度合を異常度とする。
なお、ここで説明した3つの方法は、異常度を計算するため計算方法の例に過ぎず、異常の度合を示す数値を計算可能であれば、異常度の計算に他の方法が用いられても良い。
【0013】
可否判断手段6は、計算手段5から取得した異常度と、ラベル付与手段4から取得したラベルとをもとに、診断を実施する加工について、情報保持手段9が保持する診断モデルが診断に対応できるか否かを判断する。
情報更新手段7は、加工データ、ラベル、診断モデル、診断可能な加工条件情報、診断を行う加工条件、及び診断に対応できるかの判断結果の少なくともいずれかをもとに、情報保持手段9で保持している診断モデルと診断できる加工条件情報とを更新する。
本開示において、診断を行う加工の異常の事例として、工具折損、及び工具摩耗を想定しているが、その他の事例を異常とする診断が行われても良い。
【0014】
上述のように構成される情報更新装置2は、切削工具を用いてワークを加工する工作機械1を用いた加工における加工異常診断のためのものであって、学習により更新可能な診断モデルと、診断モデルが対応可能な加工条件情報と、を保持する情報保持手段9と、診断する加工の加工条件を入力可能な情報入力手段8と、加工データを取得するデータ取得手段3と、加工データに、正常または異常のラベルを付与するラベル付与手段4と、加工データをもとに、診断を実施する加工の異常度を計算する計算手段5と、異常度と、ラベルとを用い、診断を実施する加工における加工異常診断の診断対応の可否を判断する可否判断手段6と、可否判断手段6により判断された診断対応の可否判断結果と、情報入力手段8で入力した加工条件をもとに、情報保持手段9が保持する加工条件情報を更新する情報更新手段7と、を備える。
情報更新装置2は、未学習のデータに対して加工異常診断を実施した場合に算出される異常度の変化速度を用いて、診断可否を判定する。また、診断可能と判定した場合は、未学習データの加工条件をもとに、診断モデルの診断可能な加工条件の情報を更新する。よって、未学習データに対する加工異常診断の診断可否判断に要する時間を短縮し、効率化を実現できる。
【0015】
以下、情報更新装置2において、加工異常診断のための情報を更新する手順について説明する。
図4は、加工データのラベルが異常だった場合に、加工異常診断のための情報を更新する手順を示すフローチャートである。
図5は、加工データのラベルが正常だった場合に、加工異常診断のための情報を更新する手順を示すフローチャートである。
まず、情報保持手段9が、保持している診断モデル、及び当該診断モデルにより診断可能な加工条件情報を、計算手段5及び情報更新手段7に送信する。計算手段5及び情報更新手段7は、情報保持手段9から送信された診断モデル、診断可能な加工条件情報を読み込む(S1)。
次に、作業者が、情報入力手段8を用い、診断を実施する加工条件を入力し、情報更新手段7に送信する(S2)。情報入力手段8は、診断を実施する加工条件を入力、送信可能な情報更新装置2の機能の一部でも良いし、情報更新手段7へ診断を実施する加工条件を送信するために用いられるキーボードのような実体のある装置であっても良い。
【0016】
その後、データ取得手段3が、制御装置から取得される工作機械1の制御情報や、各種センサから取得される測定値、例えば
図2に示すような加工トルク等を含む加工データを取得し、加工データをラベル付与手段4、計算手段5、及び情報更新手段7に送信する(S3)。なお、
図2は、実施形態を説明するための仮想的なグラフである。
そして、作業者が、診断を実施する加工の、実加工における成否を目視で確認した後、ラベル付与手段4を用いて加工データに正常または異常のラベルを付与(入力)する。ラベル付与手段4は、当該ラベルを可否判断手段6及び情報更新手段7に送信する(S4)。
【0017】
以下、加工データに異常のラベルが付与された場合について詳細に説明する。
S4において、加工データに異常のラベルが付与され、当該異常のラベルが、可否判断手段6及び情報更新手段7に送信された後、計算手段5は、データ取得手段3から取得した加工データをもとに、情報保持手段9から取得した現在の診断モデルによって診断を実施する加工の異常度E(t)を計算する(S5)。計算手段5は、異常度E(t)の計算結果を可否判断手段6に送信する。
次に、可否判断手段6が、計算手段5から取得した異常度E(t)の計算結果をもとに、数1を用いて、異常度E(t)の変化速度dE(t)を計算する。そして、可否判断手段6は、変化速度dE(t)の、所定の時間領域における変化速度の最大値Dmaxを取得する(S6)。
【0018】
【0019】
可否判断手段6は、変化速度dE(t)の時間領域における変化速度の最大値D
maxを取得すると共に、加工データに付与されたラベルが正常か異常かを判定する。そして、異常のラベルが付与されている場合、可否判断手段6は、変化速度の最大値D
maxが、予め設定された変化速度閾値D
Sを超えているか否かを判定する(S7)。加工データに付与されたラベルが異常である時、可否判断手段6は、変化速度の最大値D
maxが、予め設定された変化速度閾値D
Sを超えている場合を診断可、変化速度の最大値D
maxが、予め設定された変化速度閾値D
Sを超えていない場合を診断不可として判断する。
図3では、変化速度の最大値D
maxが変化速度閾値D
Sを超えている場合の異常度の変化速度dE(t)の波形、及び変化速度の最大値D
maxが変化速度閾値D
Sを超えてない場合の異常度の変化速度dE(t)の波形の一例をグラフとして示す。なお、
図3は、実施形態を説明するための仮想的なグラフである。
【0020】
S7において、変化速度の最大値Dmaxが変化速度閾値DSを超えていると判定された場合、すなわち、可否判断手段6が、診断を実施する加工データは診断可であると判断した場合、情報更新手段7は、診断を実施する加工条件とS1で読み込んだ加工条件情報を比較することで、診断を実施する加工条件が、S1で読み込んだ加工条件情報に含まれるか否かを判定する(S8)。診断を実施する加工条件が、S1で読み込んだ加工条件情報に含まれる場合、手順は、後述するS11に進む。一方、診断を実施する加工条件が、S1で読み込んだ加工条件情報に含まれない場合、手順は、後述するS10に進む。
【0021】
一方、S7において、変化速度の最大値Dmaxが変化速度閾値DSを超えていないと判定された場合、すなわち、可否判断手段6が、診断を実施する加工データは診断不可であると判断した場合、情報更新手段7は、加工データとラベルとをもとに、S1で読み込んだ診断モデルの追加学習を行い、情報保持手段9が保持する診断モデルを追加学習済みの診断モデルに更新する(S9)。
その後、情報更新手段7は、診断を実施する加工条件とS1で読み込んだ加工条件情報を比較することで、診断を実施する加工条件が、S1で読み込んだ加工条件情報に含まれるか否かを判定する(S8)。診断する加工条件が、S1で読み込んだ加工条件情報に含まれる場合、手順は、後述するS11に進む。一方、診断を実施する加工条件が、S1で読み込んだ加工条件情報に含まれない場合、手順は、S10に進む。
【0022】
S10において、情報更新手段7は、S1で読み込んだ加工条件情報に、診断を実施する加工条件を追加し、情報保持手段9がこれまで保持していた加工条件情報を、診断を実施する加工条件を追加した加工条件情報に更新する。
S11において、情報更新手段7は、診断を続行するか否かを判定する。診断を続行する場合はS1に戻り、続行しない場合は、終了となる。
【0023】
加工データに付与したラベルが正常である場合、可否判断手段6は、S7において、変化速度の最大値D
maxが変化速度閾値D
Sを超えていない場合を診断可であり、超えている場合を診断不可であると判断する。加工データに付与したラベルが正常である場合も、
図5に示すように、ラベルが異常である場合と同様、可否判断手段6による診断可否判断が、診断可である場合は、手順をS8に、診断不可である場合は、手順をS9に進める処理とすることで、対応可能である。
【0024】
以上は、本開示を図示例に基づいて説明したものであり、その技術範囲はこれに限定されるものではない。例えば、データ取得手段は、取得した波形に対し、適宜平滑化するフィルタを用いる等、計算手段及び情報更新手段において利用可能であれば、取得した加工データに対して所定の処理を実施しても良い。
また、データ取得手段、ラベル付与手段、計算手段、可否判断手段、情報更新手段、情報入力手段、及び情報保持手段は、それぞれが所望の機能を実現できれば、情報更新装置に接続された別体として設けられても良いし、一部が情報更新装置が有する機能として設けられ、その他が情報更新装置に接続された別体として設けられても良い。
【符号の説明】
【0025】
1・・工作機械、2・・情報更新装置、3,データ取得手段、4・・ラベル付与手段、5・・計算手段、6・・可否判断手段、7・・情報更新手段、8・・情報入力手段、9・・情報保持手段。