(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062245
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 15/00 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
B60C15/00 M
B60C15/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170111
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 雅光
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC25
3D131BC31
3D131HA01
(57)【要約】
【課題】リム外れや耐久性能の悪化を抑制すること。
【解決手段】空気入りタイヤ1は、ビード部10の外側面10aから突出するリブ51が環状に形成されてなる突部50を有し、突部50は、タイヤ周方向に間隔をおいて複数設けられ、タイヤ径方向最内側が規定荷重の50%以上を付加された場合にリムに当接可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビード部の外側面から突出するリブが環状に形成されてなる突部を有し、
前記突部は、タイヤ周方向に間隔をおいて複数設けられ、タイヤ径方向最内側が規定荷重の50%以上を付加された場合にリムに当接可能である、タイヤ。
【請求項2】
前記突部は、タイヤ径方向最内側が、リムチェックラインからタイヤ径方向外側へ5mm以下の距離に設けられている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記突部は、タイヤ径方向最内側が、リムチェックラインからタイヤ径方向外側へ1mm以上の距離に設けられている、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記突部は、前記ビード部の外側面からの突出量が2mm以上10mm以下で、タイヤ径方向最内側の突出量が最も大きい、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記突部は、前記リブの幅が一定で、2mm以上10mm以下である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記突部は、タイヤ径方向の最大高さHが5mm以上15mm以下である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記突部は、タイヤ径方向の高さHaがタイヤ断面高さHに対して0.05≦H/SH≦0.3の関係を満たす、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項8】
タイヤ周方向で隣り合う前記突部は、タイヤ周方向の間隔Lが、隣り合う前記突部のタイヤ径方向最内側におけるタイヤ周方向長さPLの80%以内である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記突部は、ビード部の外側面における環状の内側の面積が2mm2以上200mm2以下である、請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、タイヤの軽量化に伴う剛性および耐久性の低下を抑制するため、側部の外面に、半径方向に延びる複数本の凸部が、周方向に間隔をおいて形成された空気入りタイヤが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、コストの削減や転がり抵抗の低減などといった目的から、タイヤの軽量化が要求されている。軽量化の手法としては、例えば、ビードフィラーの高さを低くする、またはカーカスの巻き上げ量を少なくするなどの手法がある。しかし、上記手法は、サイド部の剛性が低下して撓み易くなり、タイヤ幅方向の一方に力が加わった場合に他方でリム外れが発生するおそれがある。また、サイド部の剛性が低下して撓み易くなると、コーナリング中では荷重を支えきれず耐久性が悪化し易くなるおそれがある。
【0005】
この発明は、リム外れや耐久性能の悪化を抑制することのできるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るタイヤは、ビード部の外側面から突出するリブが環状に形成されてなる突部を有し、前記突部は、タイヤ周方向に間隔をおいて複数設けられ、タイヤ径方向最内側が規定荷重の50%以上を付加された場合にリムに当接可能である。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、リム外れや耐久性能の悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面拡大図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大側面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大側面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大側面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大側面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0010】
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸であるタイヤ回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。
【0011】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、子午面断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2は、ゴム組成物から成るトレッドゴム層4を有している。また、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド接地面3として形成され、トレッド接地面3は、空気入りタイヤ1の輪郭の一部を構成している。トレッド部2には、トレッド接地面3にタイヤ周方向に延びる主溝30と、タイヤ幅方向に延びるラグ溝40とがそれぞれ複数形成されている。複数の主溝30は、タイヤ幅方向に並んで配置されており、複数のラグ溝40は、タイヤ周方向に並んで配置されており、これらの主溝30やラグ溝40により、トレッド部2の表面には複数の陸部20が画成されている。
【0012】
なお、主溝30とは、少なくとも一部がタイヤ周方向に延在する縦溝をいう。一般に主溝30は、4.0mm以上の溝幅を有し、5.0mm以上の溝深さを有し、摩耗末期を示すトレッドウェアインジケータ(スリップサイン)を溝底に有する。主溝30は、タイヤ周方向に直線状に延在していてもよく、タイヤ周方向に延びながらタイヤ幅方向に繰り返し振幅することにより、波形状またはジグザグ状に形成してもよい。
【0013】
ラグ溝40は、溝幅が2.0mm以上5.0mm以下の範囲内になっており、溝深さが5.0mm以上12.0mm以下の範囲内になっている。ラグ溝40は、タイヤ幅方向に直線状に延在していてもよく、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に傾斜したり、湾曲や屈曲したりしていてもよい。本実施形態では、ラグ溝40としては、複数の主溝30のうちタイヤ幅方向において最も外側に位置する最外主溝31のタイヤ幅方向外側に配置される、ショルダーラグ溝41を少なくとも有している。ショルダーラグ溝41は、本実施形態では、タイヤ幅方向内側の端部は、最外主溝31には開口せずに、最外主溝31のタイヤ幅方向外側に位置する陸部であるショルダー陸部21内で終端している。
【0014】
また、主溝30とラグ溝40とによって画成される陸部20は、タイヤ周方向の1周に亘ってリブ状に形成されていてもよく、タイヤ幅方向に隣り合う主溝30同士の間に亘ってラグ溝40が形成されることにより陸部20が主溝30とラグ溝とによって画成され、各陸部20がブロック状に形成されていてもよい。
【0015】
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両外側端にはショルダー部5が位置しており、ショルダー部5のタイヤ径方向内側には、サイドウォール部8が配設されている。即ち、サイドウォール部8は、トレッド部2のタイヤ幅方向両側に配設されている。換言すると、サイドウォール部8は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配設されており、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出した部分を形成している。
【0016】
タイヤ幅方向における両側に位置するそれぞれのサイドウォール部8のタイヤ径方向内側には、ビード部10が位置している。ビード部10は、サイドウォール部8と同様に、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配設されている。各ビード部10は、ビードコア11及びビードフィラー12が設けられている。ビードコア11は、スチールワイヤであるビードワイヤを束ねてタイヤ周方向において円環状に形成される環状部材である。ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側に配置されるゴム部材である。
【0017】
また、トレッド部2は、ベルト層14が配設されている。ベルト層14は、複数のベルト141、142が積層される多層構造によって構成されており、本実施形態では、2層のベルト141、142が積層されている。ベルト層14を構成するベルト141、142は、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向へのベルトコードの傾斜角として定義されるベルト角度が、所定の範囲内(例えば、20°以上55°以下)になっている。また、2層のベルト141、142は、ベルト角度が互いに異なっている。このため、ベルト層14は、2層のベルト141、142が、ベルトコードの傾斜方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成されている。つまり、2層のベルト141、142は、それぞれのベルト141、142が有するベルトコードが互いに交差する向きで配設される、いわゆる交差ベルトとして設けられている。トレッド部2が有するトレッドゴム層4は、トレッド部2におけるベルト層14のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0018】
ベルト層14のタイヤ径方向内側、サイドウォール部8及びビード部10のタイヤ赤道面CL側となるタイヤ内側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス層13が連続して設けられている。このため、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、いわゆるラジアルタイヤとして構成されている。カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設される一対のビード部10で折り返され、タイヤ周方向でトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。カーカス層13は、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部10の、一方のビード部10から他方のビード部10にかけて配設されており、ビードコア11及びビードフィラー12を包み込むようにビード部10でビードコア11に沿ってタイヤ幅方向外側に巻き返されている。ビードフィラー12は、このようにカーカス層13がビード部10で折り返されることにより、ビードコア11のタイヤ径方向外側に形成される空間に配置されるゴム材になっている。このようなカーカス層13のトレッド部2に位置する部分のタイヤ径方向外側にベルト層14が配置されている。カーカス層13のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維材から成る複数のカーカスコードを、コートゴムで被覆して圧延加工することによって構成されている。カーカスプライを構成するカーカスコードは、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつ、タイヤ周方向にある角度を持って複数並設されている。
【0019】
カーカス層13の巻き返し部のタイヤ幅方向外側、及びビード部10におけるビードコア11及びのタイヤ径方向内側には、リムクッションゴム17が配設されている。リムクッションゴム17は、リム100のリムフランジ100aに対するビード部10の接触面を構成する。また、カーカス層13のタイヤ内側であって、空気入りタイヤ1における内部には、カーカス層13に沿ってインナーライナ16が形成されている。インナーライナ16は、空気入りタイヤ1の内側の表面であるタイヤ内面18を形成している。
【0020】
上記のような構成の空気入りタイヤ1において、ビード部10のタイヤ幅方向の外側面10aから突出する突部50が設けられている。以下、突部50の詳細について説明する。
【0021】
図2は、実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面拡大図である。
図3は、実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大斜視図である。
図4は、実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大側面図である。
【0022】
突部50は、リブ51で構成されている。リブ51は、ビード部10のタイヤ幅方向の外側面10aから突出して形成されている。リブ51は、タイヤ幅方向の外側面10aに沿って延びて環状に形成されている。環状に形成された突部50は、タイヤ周方向に間隔をおいてタイヤ周方向に複数並んで設けられている。なお、
図1及び
図2で図示する突部50は、後述する突部150,250,350を総じて符号50を付している。
【0023】
図3及び
図4に示す突部50は、タイヤ径方向に延びる成分を有するリブ51A,51Bと、タイヤ周方向に延びる成分を有するリブ51Cを含む。タイヤ径方向に延びる成分とは、タイヤ周方向に対して交差するようにビード部10のタイヤ幅方向の外側面10aに沿って延びることを意味する。また、タイヤ周方向に延びる成分とは、タイヤ周方向に向かってビード部10のタイヤ幅方向の外側面10aに沿って延びることを意味する。リブ51Aは、タイヤ周方向に対して傾斜して直線状に設けられ、タイヤ周方向に間隔を空けて複数並んで設けられている。リブ51Bは、タイヤ周方向に対してリブ51Aとは逆方向に傾斜して直線状に設けられ、タイヤ周方向に間隔を空けて複数並んで設けられている。リブ51Cは、タイヤ周方向に直線状に連続して設けられている。突部50は、リブ51A及びリブ51Bにおいて、タイヤ径方向外側の端部が互いに接続されて逆V字形をなし、タイヤ径方向内側の端部がリブ51Cの各端部に接続されて、突部50全体として三角形の環状をなしている。リブ51A及びリブ51Bは、曲がって設けられていてもよい。リブ51A及びリブ51Bは、タイヤ径方向外側の端部の少なくとも一方が接続部よりさらに延びて交差してもよい。突部50において、後述するようにリム100のリムフランジ100aに当接する部分(リブ51C)は、リムフランジ100aの湾曲形状に合わせて湾曲形状に形成されていてもよい。
【0024】
突部50は、タイヤ径方向最内側のリブ51(51C)が、所定荷重である規定荷重の50%以上を付加された場合に規定リム100(
図3参照、以下、リムという)のリムフランジ100aに当接可能である。
【0025】
ここでいう規定リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。規定荷重とは、規定内圧を充填時において、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。規定内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。
【0026】
このように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、ビード部10の外側面10aから突出するリブ51が環状に形成されてなる突部50を有し、この突部50のタイヤ径方向最内側のリブ51が所定荷重を付加された場合、ショルダー部5やサイドウォール部8などのサイド部が変形することに伴ってリムフランジ100aに当接する。このため、本実施形態の空気入りタイヤ1は、リム外れを抑制でき、荷重を支えて耐久性の悪化を抑制できる。しかも、本実施形態の空気入りタイヤ1は、突部50のリブ51が環状をなすことで剛性が向上し、ビード部10の撓みを抑制でき、リム外れや耐久性の悪化を抑制する効果を顕著に得られる。また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、突部50がタイヤ周方向に間隔をおいて複数設けられているため、上記効果を得つつ重量増加を抑制できる。
【0027】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、
図3に示すように、タイヤ径方向最内側のリブ51とリムフランジ100aとのタイヤ径方向の距離Tを5mm以下とする。空気入りタイヤ1単体においては、リム100にビード部10が正確に収まっているかを確認するためのリムチェックライン10b(
図4など参照)からタイヤ径方向外側へ5mm以下の距離Tに突部50のタイヤ径方向最内側のリブ51が配置されている。
【0028】
リムチェックライン10bからタイヤ径方向外側へ5mm以下の距離Tに突部50のタイヤ径方向最内側のリブ51が配置されていることで、突部50のタイヤ径方向最内側のリブ51が、所定荷重を付加された場合にリムフランジ100aに当接でき、リム外れや耐久性の悪化を抑制できる効果を顕著に得られる。
【0029】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、タイヤ径方向最内側のリブ51とリムフランジ100aとのタイヤ径方向の距離Tであって、リムチェックライン10bからタイヤ径方向外側へ1mm以上の距離Tに突部50のタイヤ径方向最内側のリブ51を配置する。このようにすれば、所定荷重を付加された場合以外は、突部50がリムフランジ100aに当接することを防ぎ、所定荷重を付加された場合に突部50がリムフランジ100aに当接できる。従って、所定荷重を付加されていないときは、突部50がリムフランジ100aに干渉することを防いで不要な摩耗を防止できる。
【0030】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、突部50は、
図3に示すように、ビード部10の外側面10aからの突出量Pが2mm以上10mm以下であり、タイヤ径方向最内側のリブ51(51C)の突出量Pが最も大きい。
【0031】
ビード部10の外側面10aからの突出量Pを2mm以上とし、タイヤ径方向最内側のリブ51の突出量Pを最も大きくすることで、所定荷重を付加された場合に、突部50のタイヤ径方向最内側のリブ51がリムフランジ100aに当接でき、リム外れや耐久性の悪化を抑制できる。また、ビード部10の外側面10aからの突出量Pを10mm以下とすることで、空気入りタイヤ1の重量増加を抑制できる。
【0032】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、突部50は、
図3及び
図4に示すように、リブ51により形成され、当該リブ51の幅Wが2mm以上10mm以下である。リブ51の幅Wは、延在方向で一定であることが好ましい。
【0033】
リブ51の幅Wを2mm以上とすることで、リブ51がリムフランジ100aに当接したときのリブ51の変形や倒れ込みを抑え、リム外れや耐久性の悪化を抑制できる。また、リブ51の幅Wを10mm以下とすることで、空気入りタイヤ1の重量増加を抑制できる。本実施形態の空気入りタイヤ1では、突部50は、異なる方向に延びる複数のリブ51A,51B,51Cが相互に説側したり交差したりして形成されているため、リブ51の幅Wを10mm以下にしても、リブ51がリムフランジ100aに当接したときのリブ51の変形や倒れ込みを抑え、リム外れや耐久性の悪化を抑制できる。また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、リム外れや耐久性の悪化を抑制する効果を顕著に得るため、リブ51の幅Wが2mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0034】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、突部50は、タイヤ径方向の最大高さHが5mm以上15mm以下である。
【0035】
突部50のタイヤ径方向の最大高さHを5mm以上とすることで、リブ51がリムフランジ100aに当接したときのリブ51の変形や倒れ込みを抑え、リム外れや耐久性の悪化を抑制できる。また、突部50のタイヤ径方向の最大高さHを15mm以下とすることで、空気入りタイヤ1の重量増加を抑制できる。
【0036】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、突部50は、
図1及び
図2に示すように、タイヤ径方向の最大高さHがタイヤ断面高さSHに対して0.05≦H/SH≦0.3の関係を満たす。タイヤ断面高さSHは、タイヤ外径とリム径との差の1/2の距離であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。突部50は、タイヤ径方向の最大高さHは、リム外径から最もタイヤ径方向外側の位置までの高さである。
【0037】
突部50のタイヤ径方向の最大高さHを0.05≦H/SHとすることで、リブ51がリムフランジ100aに当接したときのリブ51の変形や倒れ込みを抑え、リム外れや耐久性の悪化を抑制できる。また、突部50のタイヤ径方向の最大高さHをH/SH≦0.3とすることで、空気入りタイヤ1の重量増加を抑制できる。
【0038】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、タイヤ周方向で隣り合う突部50は、タイヤ周方向の間隔Lが、隣り合う突部50のタイヤ径方向最内側のリブ51におけるタイヤ周方向長さPLの80%以内である。
【0039】
つまり、この空気入りタイヤ1では、タイヤ周方向で隣り合う突部50のタイヤ周方向の間隔Lが、リムフランジ100aに当接するリブ51のタイヤ周方向長さPLの80%以内であり、タイヤ周方向において間隔Lよりもリムフランジ100aに当接するリブ51のタイヤ周方向長さPLが長い。このため、本実施形態の空気入りタイヤ1は、リブ51がリムフランジ100aに当接したときにリム外れや耐久性の悪化をより抑制できる。
【0040】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、突部50は、ビード部10の外側面10aにおける環状の内側の面積が、2mm2以上200mm2以下である。
【0041】
突部50のビード部10の外側面10aにおける環状の内側の面積を2mm2以上とすることで、広い範囲にわたって剛性を向上してビード部10の撓みを抑制でき、リム外れや耐久性の悪化を抑制する効果を顕著に得られる。また、突部50のビード部10の外側面10aにおける環状の内側の面積を200mm2以下とすることで、突部50単体において剛性を向上してリム外れや耐久性の悪化を抑制する効果を顕著に得られる。
【0042】
以下、上記規定を満たす突部の他の例を説明する。
図5から
図7は、実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大側面図である。
【0043】
図5に示す突部150は、リブ151で構成されている。リブ151は、タイヤ径方向に延びる成分を有したリブ151A,151Bと、タイヤ周方向に延びる成分を有したリブ151C,151Dとを含む。リブ151Aは、タイヤ径方向に延びて直線状に設けられている。リブ151Bは、タイヤ径方向に延びて直線状に設けられ、リブ151Aに対してタイヤ周方向に間隔を空けて並んで設けられている。リブ151Cは、タイヤ周方向に延びて直線状に設けられている。リブ151Dは、タイヤ周方向に延びて直線状に設けられ、リブ151Cのタイヤ径方向内側にて間隔を空けて並んで設けられている。突部150は、リブ151A及びリブ151Bのタイヤ径方向外側の端部がリブ151Cの各端部に接続され、リブ151A及びリブ151Bのタイヤ径方向内側の端部がリブ151Dの各端部に接続されて、突部50全体として四角形の環状をなしている。この突部150は、リブ151Dがタイヤ径方向最内側に位置し、所定荷重を付加された場合にリムフランジ100aに当接する。リブ151A,151B,151Cは、曲がって設けられていてもよい。リブ151A及び151Bは、タイヤ周方向に対して傾斜して設けられ、突部50全体として平行四辺形や台形の環状をなしてもよい。リブ151Aとリブ151Cとの接続部において、少なくとも一方が接続部よりさらに延びて交差してもよい。リブ151Bとリブ151Cとの接続部において、少なくとも一方が接続部よりさらに延びて交差してもよい。リブ151Aとリブ151Dとの接続部や、リブ151Bとリブ151Dとの接続部において、リブ151Dが接続部よりさらに延びて交差してもよい。突部150において、リム100のリムフランジ100aに当接するタイヤ径方向最内側に位置する部分は、リムフランジ100aの湾曲形状に合わせて湾曲形状に形成されていてもよい。
【0044】
この空気入りタイヤ1は、突部150のタイヤ径方向最内側のリブ151が所定荷重を付加された場合リムフランジ100aに当接する。このため、この空気入りタイヤ1は、リム外れを抑制でき、荷重を支えて耐久性の悪化を抑制できる。また、この空気入りタイヤ1は、突部150のリブ151が環状をなすことで剛性が向上し、ビード部10の撓みを抑制でき、リム外れや耐久性の悪化を抑制する効果を顕著に得られる。また、この空気入りタイヤ1は、突部150がタイヤ周方向に間隔をおいて複数設けられているため、上記効果を得つつ重量増加を抑制できる。
【0045】
突部150は、リムチェックライン10bからタイヤ径方向外側へ5mm以下の距離Tにタイヤ径方向最内側のリブ151が配置されている。また、突部150は、リムチェックライン10bからタイヤ径方向外側へ1mm以上の距離Tにタイヤ径方向最内側のリブ151が配置されている。また、突部150は、ビード部10の外側面10aからの突出量Pが2mm以上10mm以下であり、タイヤ径方向最内側のリブ151の突出量Pが最も大きい。また、突部150は、リブ151の幅Wが2mm以上10mm以下である。リブ151の幅Wは、延在方向で一定であることが好ましい。また、突部150は、タイヤ径方向の最大高さHが5mm以上15mm以下である。また、突部150は、
図1及び
図2に示すように、タイヤ径方向の最大高さHがタイヤ断面高さSHに対して0.05≦H/SH≦0.3の関係を満たす。また、突部150は、ビード部10の外側面10aにおける環状の内側の面積が、2mm
2以上200mm
2以下である。
【0046】
図6に示す突部250は、リブ251で構成されている。リブ251は、タイヤ径方向に延びる成分を有したリブ251A,251B,251C,251Dを含む。リブ251A,251Cは、タイヤ周方向に対して傾斜して平行に設けられている。リブ251B,251Dは、タイヤ周方向に対してリブ251A,251Bとは逆方向に傾斜して平行に設けられる。突部250は、リブ251A,251Bのタイヤ径方向外側の端部が互いに接続され、リブ251C,251Dのタイヤ径方向内側の端部が互いに接続され、タイヤ周方向でリブ251A,251Cの端部が互いに接続され、タイヤ周方向でリブ251B,251Dの端部が互いに接続されて、突部250全体としてひし形の環状をなしている。この突部250は、リブ251C及びリブ251Dの互いに接続されたタイヤ径方向内側の端部がタイヤ径方向最内側に位置し、所定荷重を付加された場合にリムフランジ100aに当接する。リブ251A,251B,251C,251Dは、曲がって設けられていてもよい。リブ251A,251B,251C,251Dの接続部において少なくとも一方が接続部よりさらに延びて交差してもよい。突部250において、リム100のリムフランジ100aに当接するタイヤ径方向最内側に位置する部分は、リムフランジ100aの湾曲形状に合わせて湾曲形状に形成されていてもよい。
【0047】
この空気入りタイヤ1は、突部250のタイヤ径方向最内側のリブ251が所定荷重を付加された場合リムフランジ100aに当接する。このため、この空気入りタイヤ1は、リム外れを抑制でき、荷重を支えて耐久性の悪化を抑制できる。また、この空気入りタイヤ1は、突部250のリブ251が環状をなすことで剛性が向上し、ビード部10の撓みを抑制でき、リム外れや耐久性の悪化を抑制する効果を顕著に得られる。また、この空気入りタイヤ1は、突部250がタイヤ周方向に間隔をおいて複数設けられているため、上記効果を得つつ重量増加を抑制できる。
【0048】
突部250は、リムチェックライン10bからタイヤ径方向外側へ5mm以下の距離Tにタイヤ径方向最内側のリブ251が配置されている。また、突部250は、リムチェックライン10bからタイヤ径方向外側へ1mm以上の距離Tにタイヤ径方向最内側のリブ251が配置されている。また、突部250は、ビード部10の外側面10aからの突出量Pが2mm以上10mm以下であり、タイヤ径方向最内側のリブ251の突出量Pが最も大きい。また、突部250は、リブ251の幅Wが2mm以上10mm以下である。リブ251の幅Wは、延在方向で一定であることが好ましい。また、突部250は、タイヤ径方向の最大高さHが5mm以上15mm以下である。また、突部250は、
図1及び
図2に示すように、タイヤ径方向の最大高さHがタイヤ断面高さSHに対して0.05≦H/SH≦0.3の関係を満たす。また、突部250は、ビード部10の外側面10aにおける環状の内側の面積が、2mm
2以上200mm
2以下である。
【0049】
図7に示す突部350は、リブ351で構成されている。リブ351は、ビード部10のタイヤ幅方向の外側面10aにて円形の環状をなしている。この突部350は、リブ351のタイヤ径方向内側の部分がタイヤ径方向最内側に位置し、所定荷重を付加された場合にリムフランジ100aに当接する。リブ351は、楕円形の環状や、不定形の環状など様々な環状に設けられていてもよい。突部350において、リム100のリムフランジ100aに当接するタイヤ径方向最内側に位置する部分は、リムフランジ100aの湾曲形状に合わせて湾曲形状に形成されていてもよい。
【0050】
この空気入りタイヤ1は、突部350のタイヤ径方向最内側のリブ351が所定荷重を付加された場合リムフランジ100aに当接する。このため、この空気入りタイヤ1は、リム外れを抑制でき、荷重を支えて耐久性の悪化を抑制できる。また、この空気入りタイヤ1は、突部350のリブ351が環状をなすことで剛性が向上し、ビード部10の撓みを抑制でき、リム外れや耐久性の悪化を抑制する効果を顕著に得られる。また、この空気入りタイヤ1は、突部350がタイヤ周方向に間隔をおいて複数設けられているため、上記効果を得つつ重量増加を抑制できる。
【0051】
突部350は、リムチェックライン10bからタイヤ径方向外側へ5mm以下の距離Tにタイヤ径方向最内側のリブ351が配置されている。また、突部350は、リムチェックライン10bからタイヤ径方向外側へ1mm以上の距離Tにタイヤ径方向最内側のリブ351が配置されている。また、突部350は、ビード部10の外側面10aからの突出量Pが2mm以上10mm以下であり、タイヤ径方向最内側のリブ351の突出量Pが最も大きい。また、突部350は、リブ351の幅Wが2mm以上10mm以下である。リブ351の幅Wは、延在方向で一定であることが好ましい。また、突部350は、タイヤ径方向の最大高さHが5mm以上15mm以下である。また、突部350は、
図1及び
図2に示すように、タイヤ径方向の最大高さHがタイヤ断面高さSHに対して0.05≦H/SH≦0.3の関係を満たす。また、突部350は、ビード部10の外側面10aにおける環状の内側の面積が、2mm
2以上200mm
2以下である。
【0052】
本実施形態では、上記のように、タイヤの一例として空気入りタイヤについて説明した。しかし、これに限らず、本実施形態に記載された構成は、他のタイヤに対しても、当業者自明の範囲内にて任意に適用できる。他のタイヤとしては、例えば、エアレスタイヤが挙げられる。
【実施例0053】
図8は、実施形態に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、従来例の空気入りタイヤと、実施形態に係る空気入りタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、リム外れと荷重耐久性能についての試験を行った。
【0054】
リム外れの評価試験は、タイヤサイズ 195/65R15 91Sの空気入りタイヤをリムサイズ 15×6.0J のJATMAの規定の標準リムに組み付け、JATMAの規定内圧(150kPa)を付与した。そして、この空気入りタイヤを装着した車両にて、R25の半円に対し正接方向に入り、半円分を一定速度で走行する。時速30kmから計測を開始し、2回目以降は時速を3km/hずつ速く旋回し、リム外れが発生した際の車速を計測した。この評価は、従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど耐リム外れ性能が優れていることを示している。
【0055】
荷重耐久性能の評価試験は、タイヤサイズ195/65R15 91Sの空気入りタイヤをリムサイズ15×6.0JのJATMAの規定の標準リムに組み付け、JATMAの規定内圧(240kPa)を付与した。そして、この空気入りタイヤを室内ドラム試験機(ドラム直径:1707mm)を用いて、速度81km/hとし、規定荷重から負荷荷重を13%ずつ最大270%まで15ステップ継続して増加させ、故障の発生する走行時間が測定される。この評価は、従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が小さいほど荷重耐久性能が優れていることを示している。
【0056】
従来例の空気入りタイヤは、タイヤ径方向に直線状に延びるリブがタイヤ周方向に所定間隔を空けて設けられた突部が形成されている。
【0057】
一方、本実施例の空気入りタイヤは、
図3及び
図4に示す形態であり、環状をなしてタイヤ周方向に間隔をおいて複数設けられた突部が形成されている。
【0058】
そして、試験結果に示すように、本実施例の空気入りタイヤは、従来例に対してリム外れが少なく荷重耐久性能が改善されていることが分かる。
【0059】
本開示は以下の発明を包含する。
[発明1]
ビード部の外側面から突出するリブが環状に形成されてなる突部を有し、
前記突部は、タイヤ周方向に間隔をおいて複数設けられ、タイヤ径方向最内側が規定荷重の50%以上を付加された場合にリムに当接可能である、タイヤ。
[発明2]
前記突部は、タイヤ径方向最内側が、リムチェックラインからタイヤ径方向外側へ5mm以下の距離に設けられている、発明1に記載のタイヤ。
[発明3]
前記突部は、タイヤ径方向最内側が、リムチェックラインからタイヤ径方向外側へ1mm以上の距離に設けられている、発明2に記載のタイヤ。
[発明4]
前記突部は、前記ビード部の外側面からの突出量が2mm以上10mm以下で、タイヤ径方向最内側の突出量が最も大きい、発明1から3のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明5]
前記突部は、前記リブの幅が一定で、2mm以上10mm以下である、発明1から4のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明6]
前記突部は、タイヤ径方向の最大高さHが5mm以上15mm以下である、発明1から5のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明7]
前記突部は、タイヤ径方向の高さHaがタイヤ断面高さHに対して0.05≦H/SH≦0.3の関係を満たす、発明1から6のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明8]
タイヤ周方向で隣り合う前記突部は、タイヤ周方向の間隔Lが、隣り合う前記突部のタイヤ径方向最内側におけるタイヤ周方向長さPLの80%以内である、発明1から7のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明9]
前記突部は、ビード部の外側面における環状の内側の面積が2mm2以上200mm2以下である、発明1から8いずれか1つに記載のタイヤ。