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  • 特開-プッシュプル型卓上フード 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062252
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】プッシュプル型卓上フード
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20240430BHJP
   B01L 1/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
F24F7/06 C
B01L1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170119
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】512284033
【氏名又は名称】株式会社ダルトン
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】平野 秀樹
【テーマコード(参考)】
3L058
4G057
【Fターム(参考)】
3L058BF03
4G057AA02
4G057AA03
(57)【要約】
【課題】作業台の上に設置されるプッシュプル型の卓上フードにおいて、作業台の作業面の有効利用および卓上フードのフットプリントに対して作業面の面積を広く確保する。
【解決手段】プッシュプル型の卓上フードは、作業空間を包囲する側壁、天井壁および後壁を有するフード本体と、フード本体の前側上部に設けられ、作業空間内に、後方かつ下方に向けてプッシュエアーを吐出するプッシュエアー吐出口を有するプッシュエアー吐出ユニットと、後壁の下部において、作業面よりも上方の高さ位置に設けられたプルエアー吸込口を有するプルエアー吸込部と、を備え、排気装置が発生させた吸引力をプルエアー吸込口に作用させることにより、プッシュエアー吐出口から作業空間に吐出されたプッシュエアーがプルエアー吸込口に吸い込まれ、これにより作業空間内に前記プッシュエアー吐出口からプルエアー吸込口へと向かう斜降流が形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業台の上に設置され、作業面の上方の作業空間の換気を行うプッシュプル型の卓上フードであって、
前記作業空間を包囲する側壁、天井壁および後壁を有するフード本体と、
前記フード本体の前側上部に設けられ、前記作業空間内に、後方かつ下方に向けてプッシュエアーを吐出するプッシュエアー吐出口を有するプッシュエアー吐出ユニットと、
前記後壁の下部において、前記作業面よりも上方の高さ位置に設けられたプルエアー吸込口を有するプルエアー吸込部と、
を備え、
排気装置が発生させた吸引力を前記プルエアー吸込口に作用させることにより、前記プッシュエアー吐出口から前記作業空間に吐出された前記プッシュエアーが前記プルエアー吸込口に吸い込まれ、これにより前記作業空間内に前記プッシュエアー吐出口から前記プルエアー吸込口へと向かう斜降流が形成される、卓上フード。
【請求項2】
前記プッシュエアー吐出ユニットは、前記プッシュエアー吐出口を有するハウジングと、前記ハウジング内に設けられたファンと、前記プッシュエアー吐出口に設けられ前記プッシュエアーの吐出角度を調節するためのルーバーと、を有している、請求項1記載の卓上フード。
【請求項3】
前記作業面の前端部から、前記作業面に沿って、前記後壁に向けて補助エアを吐出する補助エア吐出部をさらに備え、前記補助エアが前記斜降流に合流して前記斜降流と一緒に前記プルエアー吸込口に吸い込まれる、請求項1または2に記載の卓上フード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュプル型卓上フードに関する。
【背景技術】
【0002】
化学実験等の作業を行う際に、作業に付随して生じる有毒ガス、臭気等の有害雰囲気が周囲環境に拡散することを防止するために、局所排気装置が用いられている。局所排気装置は、有害雰囲気を生じさせる実験機器等を収容する作業空間を内部に画定するフード(囲い)と、ダクト等を介して作業空間内の雰囲気を適当な場所に排出する排気設備とを少なくとも備えている。
【0003】
局所排気装置の一形式として「卓上フード」と呼ばれるものがある。本明細書において、「卓上フード」とは、既存の作業台(実験台)上に設置することが可能であるように構成されたものを意味する。但し、作業台は、卓上フードの構成要素の取り付けまたは組み込みのため小さな改造が施される場合もある。いずれにせよ、作業台は卓上フードの本質的な構成要素ではない。
【0004】
卓上フードには、「プッシュプル型」のものがある。本明細書において、「プッシュプル型」とは、通常この種の局所排気装置に設けられるプルエアー吸込部に加えて、プッシュエアー吐出部を備えたものである。プッシュプル型の卓上フードは、小さな排気流量(プルエアー吸込部の吸込流量)で、各種関連法規(例えば有機溶剤中毒予防規則、特定化学物質等障害予防規則)の要件を満足することができる点において有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一つの目的は、作業台の作業面を有効利用することができ、かつ、卓上フードのフットプリントに対して作業面の面積を広く確保することができるプッシュプル型の卓上フードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、作業台の上に設置され、作業面の上方の作業空間の換気を行うプッシュプル型の卓上フードであって、前記作業空間を包囲する側壁、天井壁および後壁を有するフード本体と、前記フード本体の前側の前側上部に設けられ、前記作業空間内に、後方かつ下方に向けてプッシュエアーを吐出するプッシュエアー吐出口を有するプッシュエアー吐出ユニットと、前記後壁の下部において、前記作業面よりも上方の高さ位置に設けられたプルエアー吸込口を有するプルエアー吸込部と、を備え、排気装置が発生させた吸引力を前記プルエアー吸込口に作用させることにより、前記プッシュエアー吐出口から前記作業空間に吐出された前記プッシュエアーが前記プルエアー吸込口に吸い込まれ、これにより前記作業空間内に前記プッシュエアー吐出口から前記プルエアー吸込口へと向かう斜降流が形成される、卓上フードが提供される。
【発明の効果】
【0007】
上記本発明の一実施形態によれば、作業台の作業面を有効利用することができ、かつ、卓上フードのフットプリントに対して作業面の面積を広く確保することができるプッシュプル型の卓上フードを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る卓上フードの概略縦断面図である。
図2図1の卓上フードの概略正面図である。
図3図1の卓上フードにおける要部の構成を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図1図3を参照して参照して、プッシュプル型の卓上フードの好適かつ非限定的な一実施形態について説明する。
【0010】
卓上フード1は、互いに独立した作業空間を有する前側部分1Aおよび後側部分1Bを備えている。卓上フード1は、中心線Cに対して実質的に前後対称に形成されており、図1に概略的に示された後側部分1Bは、中心線C(鏡映面)に関して前側部分1Aと実質的に鏡面対象の構成を有する。前側部分1Aと後側部分1Bとは、中央部分1Cにより互いに分離されている。
【0011】
卓上フード1は、作業台100の上に設置されている。作業台100の前側部分100Aの上に卓上フード1の前側部分1Aが位置し、作業台100の後側部分100Bの上に卓上フード1の後側部分1Bが位置し、作業台100の中央部分100Cの上に卓上フード1の中央部分1Cが位置している。
【0012】
以下の説明は、主に卓上フード1の前側部分1Aに対して行う。卓上フード1の前側部分1Aおよび作業台100の前側部分100Aの直ぐ前のところに、作業者Wが作業台100の前側部分100Aに正対して立った場合において作業者の右側を右、作業者の左側を左、作業者の正面を「奥」または「後」、作業者の手元側を「前」と呼ぶこととする。
【0013】
作業者Wは、作業台100の天板102の上面である作業面104の上で例えば実験のための作業を行う。
【0014】
卓上フード1の前側部分1Aは、フード本体2を有する。フード本体2は、左側壁4、右側壁6、後壁8および天井壁10を有している。左側壁4、右側壁6、後壁8、天井壁10および天板102により作業空間106が区画される。この作業空間106は、前側部分1Aの前面開口部以外が全て壁体(天板102も含む)で囲まれており、しかもこれらの壁体(天板102も含む)は、後述のプッシュエアー吐出口およびプルエアー吸込口を除き、エアが流通できる開口部を有していないため、卓上フードの技術分野においては「密閉型」と呼ばれる。前側部分1Aの前面開口部には開閉扉は設けられておらず、常時開放されている。
【0015】
左側壁4、右側壁6および天井壁10は、例えばスチールパイプにより形成された矩形の枠に透明なアクリル板を取り付けることにより形成されている。図示された実施形態においては、後壁8は、後の説明から理解できるように、複数の構成部品(後述の吸込部縦壁33A、カバーパネル36、スライドドア38等(図2を参照))を組み合わせることにより形成されている。後壁8を単一の板材で形成することも勿論可能である(例えば後述の薬品収納棚37を設けない場合等)。
【0016】
卓上フード1の前側部分1Aの前側部分1Aの前側上部、より詳細には天井壁10の前端部には、プッシュエアー吐出ユニット20が設けられている。プッシュエアー吐出ユニット20は、フード本体2の左右方向のほぼ全長にわたって延びるハウジング21を有している。ハウジング21の前面のほぼ全域は吸入口22となっている。吸入口22にはフィルタ23が設けられている。フィルタ23の下流側において、ハウジング21内には、複数(図示例では6台)のファン24が設けられている。
【0017】
ハウジング21の下面には、プッシュエアーを吐出する複数(例えば3個)のプッシュエアー吐出口25が設けられている。左右方向に隣接するプッシュエアー吐出口25同士の間隔は比較的小さい。3つのプッシュエアー吐出口25は、フード本体2の左右方向のほぼ全長にわたって存在している。図示された実施形態では、2台のファン24が1つのプッシュエアー吐出口25からのプッシュエアーエアの吐出を受け持っている。
【0018】
各プッシュエアー吐出口25には、プッシュエアーの吐出角度を調節するための複数のルーバー26概ね前後方向に並べて設けられている。各ルーバー26は、左右方向に延びる回転軸線周りに、好ましくは互いに独立して回転させることができる。これにより、換気区域(図2において2本の二点鎖線の曲線VAで挟まれた区域)特に捕捉面T内における風速分布の調節が可能となっている。図示された実施形態においては、各ルーバー26は手動のもの(作業者の手で操作するもの)である。
【0019】
ファン24の台数および分布、プッシュエアー吐出口25の数などは、所望の風速分布が得られるようになってさえいれば、任意である。
【0020】
プッシュエアー吐出ユニット20を通過するエアの流速を均一化するため(特に左右方向で均一化するため)、吸入口22にパンチングプレートまたは網状のグリルを設けてもよい。同様の目的で、吸入口22を複数の領域に分割するために仕切りを設けてもよい。さらに同様の目的で、ハウジング21内に邪魔板または整流板を設けてもよい。
【0021】
後壁8の、作業面104よりもやや高い高さ位置に、2つのプルエアー吸込口30が設けられている。左右方向に隣接するプッシュエアー吐出口25同士の間隔は比較的小さい。2つのプルエアー吸込口30は、フード本体2の左右方向の概ね全長(図示例ではコンセントが設けられている領域を除く)にわたって存在している。
【0022】
プルエアー吸込口30は、矩形断面の内部空間を画定するプルエアー吸込部31の前面開口部として設けられている。プルエアー吸込部31の内部空間は、フード本体2の左右方向の概ね全長にわたって延びている。プルエアー吸込部31は、卓上フード1の前側部分1Aと後側部分1Bとで共用されており、後側部分1Bの面にもプルエアー吸込口(図2では参照符号30’を付けた)が設けられている。前側部分1A(後側部分1B)の作業空間106から吸引したエアが後側部分1B(前側部分1A)側の作業空間に流れないように、プルエアー吸込部31の内部の中央部には仕切り32が設けられている。
【0023】
プルエアー吸込部31は、作業台の天板102の一部と、卓上フード1の前側部分1Aにある吸込部縦壁33Aと、卓上フード1の後側部分1Bにある吸込部縦壁33Bと、吸込部天井壁34とから形成することができる。これに代えて、プルエアー吸込部31を、単一の矩形断面の管部材から形成してもよい。
【0024】
特に図3に明瞭に示されるように、吸込部天井壁34の左右方向中央部には、排気ダクト35が接続されている。排気ダクト35は例えば円形断面の管からなる。排気ダクト35は、卓上フード1の中央部分1Cの左右方向中央部を鉛直方向上方に延びている。卓上フード1の前側部分1Aにおいて排気ダクト35の前方には、排気ダクト35を覆うカバーパネル36が設けられている。
【0025】
図示された実施形態においては、プルエアー吸込部31の上方の空間(排気ダクト35が上方に向けて延びる空間を除く)がエアの流れの形成に関与しないデッドスペースとなるため、この空間を例えば薬品収納棚37等の収納スペースとして有効利用することができる。薬品収納棚37の前面にはスライドドア38が設けられている。スライドドア38は例えば透明ガラス板に樹脂製取手を取付け、収納棚37に取付けられた樹脂製レールと組み合わせる形で形成されている。
【0026】
吸込部縦壁33A、カバーパネル36および閉じられた状態にあるスライドドア38が組み合わされることにより、卓上フード1の前側部分1Aにおける後壁8が形成されている。スライドドア38が閉じられているならば、後壁8には、プルエアー吸込口30以外に、エアが流通できる開口は存在しない。
【0027】
一実施形態において、排気ダクト35は、卓上フード1が設置されている部屋の天井裏まで延び、さらに建物の屋上まで延びている。排気ダクト35の途中の適当な位置、または排気ダクト35下流端に、あるいは排気ダクト35に連通する流路(例えば、複数の卓上フード1から延びる複数の排気ダクト35を合流させた合流ダクト)に、プルエアー吸込口30に吸引力を作用させるための排気ファン39(図3のみに概略的に示した)を設けることができる。また、プルエアー吸込口30を通って吸引されるエアの流量を調節するために、排気ダクト35にバタフライバルブ等の流量制御弁(図示せず)を設けることができる。排気ダクト35のうち、少なくとも卓上フード1内(中央部分1C内)にある部分は、卓上フード1の製造者が提供する卓上フード1の構成部品と見なすことができる。多くの場合、排気ダクト35のうち卓上フード1から離れた部分は、卓上フード1のユーザーが提供するものであり、卓上フード1の構成部品ではないと見なされる。上記の排気ファン39および流量制御弁は、卓上フード1の構成部品と見なせる場合もあるし、卓上フード1のユーザーから提供される卓上フード1の非構成部品と見なせる場合もある。
【0028】
排気ファン39が発生させた吸引力が、排気ダクト35およびプルエアー吸込部31を介してプルエアー吸込口30に作用する。プルエアー吸込口30に吸引力が均一に(特に左右方向に均一に)作用するように、プルエアー吸込口30にパンチングプレートまたは網状のグリルを設けてもよい。同様の目的で、プルエアー吸込口30を複数の領域に分割するために仕切りを設けてもよい。さらに同様の目的で、プルエアー吸込部31内に邪魔板または整流板を設けてもよい。
【0029】
卓上フード1の前側部分1Aにおいて、作業台100の天板102の前端部に、作業面104に沿って後壁8に向けて比較的小流量で補助エアを吐出する補助エア吐出部40を設けてもよい。補助エア吐出部40は、天板102の前端部の左右方向全域に亘って延びるとともに、左右方向に間隔を空けて設けられた複数の補助エア吐出口を有する細長い補助エア吐出ノズルから構成することができる。補助エア吐出部40の右側部分にファン41から、送気チューブ42を介してエアが供給される。補助エア吐出部40の左側部分にも、同様に、送気ファンから送気チューブを介してエアが供給される。これにより、図3において矢印FAで示すように、作業面104に沿って左右方向に関して概ね均一な風速分布で補助エアが吐出される。均一な風速分布を達成するため、補助エア吐出部40の内部に、邪魔板または整流板を設けてよい。
【0030】
卓上フード1の通常運転時には、プッシュエアー吐出ユニット20のプッシュエアー吐出口25から後下方に向かう斜降流が形成されるようにプッシュエアーが吐出される一方で、プルエアー吸込部31のプルエアー吸込口30によりプルエアーが吸い込まれる。これにより、プッシュエアー吐出口25からプルエアー吸込口30に至る換気区域(図2において2本の二点鎖線VAで挟まれた領域)に斜降流の形態でエアが流れる。この流れは、図2および図3において矢印FMにより概略的に示されており、作業空間106内を流れるエアの主流である。このエアの流れは、関連法規(例えば有機溶剤中毒予防規則、特定化学物質等障害予防規則)を満足するものである。
【0031】
ところで、プッシュプル型の装置においては、プッシュエアー吐出口25からの吐出流量よりもプルエアー吸込口30への吸込流量の方が大きいため、上記の主流以外にもプルエアー吸込口30に向かう流れが(流速は小さいながらも)存在する。例えば、卓上フード1の前側部分1Aにおいては、フード本体2の前面開口部を通って、フード本体2の外部の空気(卓上フード1が設置されている部屋の空気)がプルエアー吸込口30に向けて流れる。しかしながら、換気区域の下方領域ではエアの流速は小さいため、当該下方領域(作業面104の前端付近)の換気効率を高めたい要求がある場合には、補助エア吐出部40から吐出された補助エア(FA)が役立つ。補助エアは、特に流速が小さくなる傾向にある作業面104の前端部の表面近傍の領域にあるガスをプルエアー吸込口30に向けて押し出し、当該領域におけるエアまたは有害ガスの滞留を防止する。補助エア(FA)は主流(FM)に合流した後に、プルエアー吸込口30に吸い込まれる。
【0032】
上述したように補助エア吐出部40は設けた方が好ましいが、これを設けることは関連法規を満足する上で必須ではなく、省略することも可能である。
【0033】
以下に上記実施形態に係る斜降流を形成するプッシュプル型の卓上フード1の利点を他の流れ方式(下降流、水平流)のものと比較して説明する。
【0034】
下降流を形成する場合、すなわち、エアを真上から真下に向けて流す場合には、プルエアー吸込口を作業面内に設ける必要がある。この場合、作業面の全域を作業スペースとして有効活用することができない。また、作業面上に落ちた物質が比較的容易にプルエアー吸込口に侵入するおそれがある。プルエアー吸込口内に侵入した物質が例えば腐食性を有する薬液の場合、プルエアー吸込口の内部、その下流側の配管、装置等を損傷するおそれがある。このような腐食性物質の予期せぬ侵入に対応するため、プルエアー吸込口の内部、その下流側の配管等に耐薬品性を持たせると卓上フードのコストが嵩む。
【0035】
水平流を形成する場合、気流の向きは左右方向となる(作業台前方には人が立つため、前後方向は不可)。この場合、フード本体の左右の壁の一方にプッシュエアーの吐出ユニットを設け、他方にプルエアーの吸込構造を設けることになるので、卓上フードの全幅の一部がプッシュプルエアーを形成する機構のために占拠される。このため、卓上フードの全幅に対して作業台の左右方向幅が小さくなる。
【0036】
これに対して上記実施形態によれば、プッシュエアー吐出ユニット20が作業者の頭部上方に位置し、かつ、プルエアー吸込口30がフード本体2の後壁8の下部に設けられる。このため、卓上フード1のフットプリントに対する作業面104の有効面積の比率を他方式(下降流、水平流)のものと比較して大きくすることができる。プルエアー吸込口30は、作業面104の高さより高い高さ位置にあるため、作業面104上に落ちた物質がプルエアー吸込口30に侵入する確率は低く、特に作業面104上に零れた液体がプルエアー吸込口30に侵入する可能性は殆ど無い。このため、プルエアー吸込部31およびこれに連なる排気ダクト35に対する耐薬品性要求が緩和される。また、作業面104にプルエアー吸込口が設けられないため、作業台100の天板102として汎用の実験用天板(例えば表面に耐薬品性層を有するパーチクルボード等)を特別な加工無しでそのまま使用することができる。つまり、作業面104全体に十分な耐薬品性を確保することができる。
【0037】
上記実施形態においては、卓上フード1が前側部分1A、後側部分1Bおよび中央部分1Cを備えている構成(前後両側で別々に作業を行うことができる構成)を採用していたが、これには限定されない。例えば作業台100の前後方向長さが小さい場合には、図2に図示された構成から後側部分1Bを除去した構成としてもよく、さらにこの構成から薬品収納棚37を除去した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 卓上フード
2 フード本体
4,6側壁
8 後壁
10 天井壁
20 プッシュエアー吐出ユニット
21 ハウジング
24 ファン
26 ルーバー
30 プルエアー吸込口
40 補助エア吐出部
100 作業台
104 作業面
106 作業空間
図1
図2
図3