(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062265
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】芯無しトイレットペーパーロールの保形具
(51)【国際特許分類】
B65H 75/02 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
B65H75/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170141
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】596134172
【氏名又は名称】丸富製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】佐野 武男
(72)【発明者】
【氏名】八木 英一
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 征宏
【テーマコード(参考)】
3F058
【Fターム(参考)】
3F058AA02
3F058AB01
3F058AC11
3F058BB11
3F058CA09
3F058DB01
3F058DC01
3F058DC03
3F058JA17
(57)【要約】
【課題】芯無しタイプでは、段ボール箱に収納した状態での搬送時、積み下ろしの際の衝撃により芯潰れを起こすおそれがある。長尺となると、重量がかなり増すと共に強く巻き付けているのでより堅くもなるので、より芯潰れし易い。
【解決手段】トイレットペーパーロールの保形具1の円筒状部3の周面3aには外方から内方に向かって押圧されたかのように外周面側が凹んだ凹条部3bが形成されている。円筒状部3の上端側は全面的に開口されており、その上縁からはフランジ7が連設されている。トイレットペーパーロールの保形具1、1を、芯無しトイレットペーパーロールPの空洞Sの両端側にそれぞれ装着する。フランジ7に切込み9を入れて起立片11が形成されており、この起立片11はフランジ7と同じ平面状に存在している。起立片11の外縁を内側に押すと中間部が浮き上がって、アーチ状に起こされるので、容易に摘むことができ、これを摘み部とすれば、ホルダーにセットする際に容易に取り外すことができる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状部と、前記円筒状部の外周面に内方に向かって凹んで形成され、軸方向に延びる凹条部と、前記円筒状部の軸方向一端側に設けられ外方に拡がったフランジとを備え、前記凹条部が複数所定の間隔をあけて設けられて前記円筒状部が径方向に弾性的に縮径可能になっており、
前記円筒状部が芯無しトイレットペーパーロールの巻き芯部で囲まれた空洞に脱着自在に差し込まれて保形することを特徴とする芯無しトイレットペーパーロールの保形具。
【請求項2】
請求項1に記載した芯無しトイレットペーパーロールの保形具において、
円筒状部の軸方向他端側は底面部で閉塞していることを特徴とする保形具。
【請求項3】
請求項2に記載した芯無しトイレットペーパーロールの保形具において、
底面部は中心側が外周側よりも一段上がって段差が形成されていることを特徴とする保形具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した芯無しトイレットペーパーロールの保形具において、
巻き芯部の空洞に装着された状態から、手で摘まんで引き上げることで脱着できる摘み部が設けられていることを特徴とする保形具。
【請求項5】
請求項4に記載した芯無しトイレットペーパーロールの保形具において、
摘み部はフランジに形成された一対の対向する切込みにより、前記フランジから起こし可能になった前記切込みより外側の部位で構成されていることを特徴とする保形具。
【請求項6】
請求項4に記載した芯無しトイレットペーパーロールの保形具において、
摘み部は円筒状部の内側に設けられた突起で構成されていることを特徴とする保形具。
【請求項7】
請求項4に記載した芯無しトイレットペーパーロールの保形具において、
摘み部はフランジに延設されたフラップで構成されていることを特徴とする保形具。
【請求項8】
請求項1に記載した芯無しトイレットペーパーロールの保形具において、
保形具は軟質プラスチックで一体成形されていることを特徴とする保形具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯無しトイレットペーパーロールに容易に脱着できる保形具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙筒を使用せずに、ウエブの巻き付けの初期の数層を巻き芯部とした所謂芯無しトイレットペーパーロールがある。
この種の芯無しトイレットペーパーロールは、巻き取り機でウエブを巻軸に巻き付け始める際に、初期の数層に水を噴霧し、ウエブの巻軸への巻き取りを完了してペーパーロールを形成し、水分を含んだ内側の数層を乾燥固化して巻き芯部にした上で、巻軸から当該ペーパーロールを抜き取って完成させている。
芯無しのトイレットペーパーロールは芯ゴミを捨てる手間が省けるだけでなく、1ロールを長く使うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近では、特許文献1に記載のような、長尺トイレットペーパーロールが人気になっている。この長尺トイレットペーパーロールは、ロールの巻き長さが1プライで50m、2プライで25mよりも長いものを指している。
長持ちして買う回数を減らせることから、最近では急速に市場が拡大しつつあり、1プライで170mを超えるロングタイプのものも販売されている。
このような長尺トイレットペーパーロールは、長持ち効果を生かすために、芯無しタイプが多い。
【0005】
しかしながら、芯無しタイプでは、巻き芯部の強度が小さいため、段ボール箱に収納した状態での搬送時、例えば積み下ろしの際の衝撃により芯潰れを起こすおそれがある。芯潰れを起こしたトイレットペーパーロールは商品クレームの対象になることも少なくない。更に、芯潰れを起こしたトイレットペーパーロールをホルダーに装着して回転させると、大きな音が発生することで使用者に不快な感じを与えてしまうこともある。
有芯タイプの従来の巻き長さの場合には、120~130g程度であったのが、芯無しタイプの長尺となると、400gまたはそれ以上と重量がかなり増すと共に強く巻き付けているのでより堅くもなるので、上記したような芯潰れの問題がより顕在化する。
【0006】
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、簡易に構成され、芯無しタイプのトイレットペーパーロールに手作業で装着・脱着を容易にでき、装着したときには上記したような搬送時のトラブルにあっても芯潰れを起こさずに保形できる、新規且つ有用な保形具を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、円筒状部と、前記円筒状部の外周面に内方に向かって凹んで形成され、軸方向に延びる凹条部と、前記円筒状部の軸方向一端側に設けられ外方に拡がったフランジとを備え、前記凹条部が複数所定の間隔をあけて設けられて前記円筒状部が径方向に弾性的に縮径可能になっており、前記円筒状部が芯無しトイレットペーパーロールの巻き芯部で囲まれた空洞に脱着自在に差し込まれて保形することを特徴とする芯無しトイレットペーパーロールの保形具である。
【0008】
好ましくは、円筒状部の軸方向他端側は底面部で閉塞している。
より好ましくは、底面部は中心側が外周側よりも一段上がって段差が形成されている。
【0009】
好ましくは、巻き芯部の空洞に装着された状態から、手で摘まんで引き上げることで脱着できる摘み部が設けられている。
より好ましくは、摘み部はフランジに形成された一対の対向する切込みにより、前記フランジから起こし可能になった前記切込みより外側の部位で構成されている。
より好ましくは、摘み部は円筒状部の内側に設けられた突起で構成されている。
より好ましくは、摘み部はフランジに延設されたフラップで構成されている。
【0010】
現在のところでは、保形具は軟質プラスチックで一体成形されたものが推奨されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の保形具によれば、簡易な構成ながら、芯無しタイプのトイレットペーパーロールに手作業で装着・脱着を容易にでき、装着したときには上記したような搬送時のトラブルにあっても芯潰れを起さずに保形できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るトイレットペーパーロールの保形具の斜視図である。
【
図2】
図1のトイレットペーパーロールの保形具の底面図である。
【
図3】
図1のトイレットペーパーロールの保形具の平面図である。
【
図4】
図1のトイレットペーパーロールの保形具の側面図である。
【
図5】
図1のトイレットペーパーロールの保形具の装着方法の説明図である。
【
図7】
図6で装着した後の取外し方法の説明図である。
【
図8】本発明の第2の実施の形態に係るトイレットペーパーロールの保形具の斜視図である。
【
図9】
図8のトイレットパーパーロールの保形具の平面図である。
【
図10】
図8のトイレットペーパーロールの保形具のA-A断面図である。
【
図11】
図8のトイレットペーパーロールの保形具のB-B断面図である。
【
図12】本発明の第3の実施の形態に係るトイレットペーパーロールの保形具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施の形態に係るトイレットペーパーロールの保形具1を、図面にしたがって説明する。
図1~
図4に示すように、このトイレットペーパーロールの保形具1は薄肉の軟質プラスチックで立体的に構成された一体成形品になっている。
円筒状部3は、軸方向に直状に延びて、断面がほぼ真円の円筒状になっており、下方に向かっては僅かではあるが徐々に傾斜して縮径している。
【0014】
この円筒状部3の周面3aには外方から内方に向かって押圧されたかのように外周面側が凹んだ部分があり、この凹んだ部分が凹条部3bになっている。この凹条部3bは軸方向に沿って長く延びており、軸方向に直交する断面は半円弧状の凹曲面になっている。凹条部3bは一定の間隔をあけて8つ設けられている。従って、円筒状部3は、軸方向に直交する断面では、凹条部3bにより内方に向かって凹んだ部分が周期的に現れた凹凸状になっており、この凹凸状断面は円筒状部3の軸方向の両端面まで連続している。
【0015】
円筒状部3の下端側は底面部5で閉塞されている。この底面部5は円板状になっているが、円筒状部3の凹凸状端面との連なりにより、その外周縁側では凹曲縁5aが周期的に現れている。
底面部5の中心側は外周側よりも一段底上げされており、底上げ部5bは円筒状部3に同軸状の真円部になっている。底上げの高さは、精々円筒状部3の全体の高さの1/4程度になっている。底上げ部5bは、ある程度の面積を有して平面状になっているので、表面を印刷面にして、例えば浮き出しにより「PULL」等の表示を施すことが可能になっている。
【0016】
円筒状部3の上端側は全面的に開口されており、その上縁からは径方向外方に向かってフランジ7が連設されている。このフランジ7は平らな円環状になっている。
【0017】
フランジ7には対向して一対の円弧状の切込み9、9が形成されている。切込み9は、フランジ7の円環状に沿って円弧状になっている。切込み9の外側の部位は、切込み9を介してフランジ7からアーチ状に起こせるようになっており、その起立片11が摘み部になっている。
【0018】
トイレットペーパーロールの保形具1は、上記のように構成されており、サイズは、数字的に明記はされていないが、
図5に示す芯無しトイレットペーパーロールPとトイレットペーパーロールの保形具1との図示関係から想像されたい。
【0019】
図5に示すように、芯無しトイレットパーパーロールPの巻き芯部Rで囲まれた円柱状の空洞Sの端開口に底面部5側を向けて円筒状部3を差し込んで装着する。
芯無しトイレットペーパーロールPは、ホルダーに差し込んでセットするので、空洞Sのサイズは、ホルダーよりは大きいが必要以上に大きくならないように、調整されているが、メーカー毎に若干のバラつきがあり、また、ペーパーを巻取ってロール状にした後に巻き芯となったシャフトを抜き取るので、抜き取り易いように、僅かに切頭円錐形状になっている。
【0020】
トイレットペーパーロールの保形具1は、円筒状部3の外周面が、市販の芯無しトイレットペーパーロールPの空洞Sにガタつき無く差し込んで装着できるようになっており、小さめの空洞Sに差し込むような場合も出てくる。
しかしながら、円筒状部3には凹条部3b、3b、……が形成されており、隣り合う凹条部3bと凹条部3bとの間で相対的に外方に向かって隆起した周面3aが径方向内方に向かって弾性的に撓んで凹むことで縮径可能になっている。
この弾性的な凹みを利用して、市販の芯無しトイレットペーパーロールPであれば、いずれであっても対応可能になっている。
【0021】
フランジ7が巻き芯部Rの端面に当接するとそれ以上は差し込めないので、トイレットペーパーロールの保形具1が芯無しトイレットペーパーロールPの空洞Sの奥深くまで入り込んでしまうことはない。
保形機能は円筒状部3が主に担っているが、円筒状部3が凹凸状になっており、且つ、段付きの底面部5が設けられているので、装着後はこれらの形状が保形強度を増すように働く。
【0022】
トイレットペーパーロールの保形具1は、2つ一組として、
図6に示すように、一つの芯無しトイレットペーパーロールPの空洞Sの両端側にそれぞれ装着するようになっており、円筒状部3、3の軸方向の合計の長さが一つの芯無しトイレットペーパーロールPの空洞Sの長さよりかなり短くなってはいるが、中間部の芯崩れも両サイドのトイレットペーパーロールの保形具1、1が協働して阻止するようになっており、芯無しトイレットペーパーロールPの全体の芯崩れを効果的に阻止できる。
【0023】
トイレットペーパーロールの保形具1は、ホルダーにセットする段階で、芯無しトイレットパーパーロールPから取外すことになる。起立片11はフランジ7と同じ平面状に存在して、薄い平シート状になっているので、芯無しトイレットペーパーロールPにトイレットペーパーロールの保形具1を装着すると、その端面に張り付いたような状態になるが、起立片11の外縁を内側に押すと中間部が浮き上がって、
図7に示すようにアーチ状に起こされるので、容易に摘むことができる。
トイレットペーパーロールの保形具1は、このように簡易な構成ながら、芯無しタイプのトイレットペーパーロールに手作業で脱着を容易にでき、装着したときには上記したような搬送時のトラブルにあっても芯潰れを起さずに保形できる。
長尺のトイレットペーパーロールの場合には、芯潰れの問題が起こり易いので、このトイレットペーパーロールの保形具1は有用である。
【0024】
本発明の第2の実施の形態に係るトイレットペーパーロールの保形具13を、図面にしたがって説明する。
図8~
図11に示すように、このトイレットペーパーロールの保形具13も、第1の実施の形態に係るトイレットペーパーロールの保形具1と同様に、円筒状部3、底面部5を備えて構成されている。
【0025】
円筒状部3と底面部5で容器状になっており、その内側に摘み部が設けられている。この摘み部は、凸型突起15で構成されており、蒲鉾を薄切りした形状になっている。この凸型突起15は、底面部5の上面の直径方向に沿って立ち上がっており、対向する平らな主側面部15a、15aは僅かに傾斜して下方に向かうほど互いから離れていっている。その傾斜に伴い、主側面部15a、15aの間に挟まれた湾曲面部15bは、下端側に向かって幅広になっている。
凸型突起15の頂部は、円筒状部3の上端よりも下がった位置にある。
凸型突起15は中実になっているので、円筒状部3や底面部5よりも肉厚になっている。
【0026】
トイレットペーパーロールの保形具13は、上記のように構成されており、 ホルダーにセットする段階で、芯無しトイレットパーパーロールPから取外すことになるが、摘み部として主側面部15a、15aを手で挟むように摘まんで引き上げることで容易に取外すことができる。
【0027】
本発明の第3の実施の形態に係るトイレットペーパーロールの保形具17を、図面にしたがって説明する。
このトイレットペーパーロールの保形具17も、
図12に示すように、第1の実施の形態に係るトイレットペーパーロールの保形具1と同様に、円筒状部3、底面部5を備えて構成されている。
但し、摘み部として、フラップ19が設けられている。
【0028】
フランジ7の一部が外方に延設されており、フラップ19は先縁が半円弧になった舌状の部分で構成されている。
フラップ19はフランジ7と同じ平面状に存在して、薄い平シート状になっているので、芯無しトイレットペーパーロールPにトイレットペーパーロールの保形具17を装着すると、その端面に張り付いたような状態になるが、フラップ19の円弧縁19aを指でフランジ7側に押すと円弧縁19a側が浮き上がるので、容易に摘むことができる。
【0029】
摘み易さから見れば、凸型突起15が勝るが、起立片11やフラップ19は凸型突起15よりも構成が単純で、成形金型も単純化できるメリットがある。特に、起立片11はフランジ7に切込み9を入れるだけで作り出せるので、現状では最も有利なものになっている。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、保形具は、使い捨てが想定されているが、素材はプラスチックに限定されているわけではないので、紙素材であっても、例えばセルロースなのファイバー(CNF)をコーティングするなどして剛性化できれば、保形具の素材になり得る。
【0031】
また、摘み部の形状は、上記で示したのは一例であり、保形具としての保形機能と脱着の容易さが確保されるのであれば、種々の形状に具体化可能になっている。
【符号の説明】
【0032】
1…トイレットペーパーロールの保形具(第1の実施の形態)
3…円筒状部 3a…周面 3b…凹条部
5…底面部 5a…凹曲縁 5b…底上げ部
7…フランジ 9…切込み 11…起立片
13…トイレットペーパーロールの保形具(第2の実施の形態)
15…凸型突起 15a…主側面部 15b…湾曲面部
17…トイレットペーパーロールの保形具(第3の実施の形態)
19…フラップ 19a…円弧縁
P…芯無しトイレットペーパーロール
R…巻き芯部 S…空洞