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特開2024-6227保持チャックアタッチメント及び杭圧入施工方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006227
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】保持チャックアタッチメント及び杭圧入施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/20 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
E02D7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106927
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】村田 敏彦
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050CB21
2D050EE03
(57)【要約】
【課題】圧入杭と圧入杭とを縦継ぎにより連結して圧入する場合に、より丈の長い圧入杭の圧入を可能とする。
【解決手段】サドル1と、サドル1の下部に設けられ、地盤に圧入された既設杭の上端部を把持するクランプ装置2F,2Rと、サドル1上に立設されたマスト4と、昇降装置5と、昇降装置5を介してマスト4に支持され、圧入杭Pdを把持するチャック装置6とを備えた杭圧入装置10を用いて、複数の圧入杭Pdを縦継ぎにより連結して長手方向に連接されてなる連接杭を地盤に圧入する際に圧入杭Pdの上部を保持する保持チャックアタッチメント60であって、既設杭Pの上端部をクランプして保持チャックアタッチメント60を既設杭Pに固定する固定用クランプ装置64と、圧入杭Pdの上部を把持する保持用チャック装置61,62とを有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設杭の上端部を掴んで反力をとる杭圧入装置を用いて圧入杭と圧入杭とを縦継ぎにより連結して地盤に圧入する際に、一方の前記圧入杭の上部を保持する保持チャックアタッチメントであって、
既設杭の上端部をクランプして前記保持チャックアタッチメントを前記既設杭に固定する固定用クランプ装置と、
前記一方の圧入杭の上部を把持する保持用チャック装置とを有する保持チャックアタッチメント。
【請求項2】
前記杭圧入装置に対して連結と分離が可能な被連結部を有する請求項1に記載の保持チャックアタッチメント。
【請求項3】
前記固定用クランプ装置と前記保持用チャック装置の相互間の間隔を調節する調節機構を有する請求項1に記載の保持チャックアタッチメント。
【請求項4】
前記固定用クランプ装置は、前記既設杭の上端部の板状部分を下から挿入するスリットを有する請求項1に記載の保持チャックアタッチメント。
【請求項5】
前記固定用クランプ装置により前記既設杭に固定された状態で、前記固定用クランプ装置よりも前記保持用チャック装置の方が低位置となる請求項1に記載の保持チャックアタッチメント。
【請求項6】
請求項2に記載の保持チャックアタッチメントを用いて、圧入杭と圧入杭とを縦継ぎにより連結して地盤に圧入する杭圧入施工方法であって、
前記既設杭の上端部をクランプして当該既設杭に固定された前記保持チャックアタッチメントが一方の前記圧入杭の上部を把持した状態で他方の前記圧入杭を連結する杭連結工程を有する杭圧入施工方法。
【請求項7】
前記杭連結工程より前の工程であって、
前記保持チャックアタッチメントを装着した状態の前記杭圧入装置が、前記一方の圧入杭を圧入の目標位置に配置すると共に、当該圧入の開始前又は圧入の途中で前記保持チャックアタッチメントを前記既設杭の上端部に移設する移設工程を有する請求項6に記載の杭圧入施工方法。
【請求項8】
圧入杭と圧入杭とを縦継ぎにより連結して構成された連接杭の最後の圧入杭の圧入の完了に前後して前記保持チャックアタッチメントを前記杭圧入装置に連結して回収する回収工程を有する請求項6又は請求項7に記載の杭圧入施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持チャックアタッチメント及び杭圧入施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の杭圧入装置は、地盤に圧入された既設杭の上端部を掴んで反力をとり、杭を把持して地盤に圧入し、当該既設杭による杭列上を移動しつつ連続して杭を圧入していくことで地盤上に当該杭列を延長していくことが可能である。
【0003】
ところで、複数の杭を連接した連接杭の圧入が行われる場合がある。この連接杭の圧入作業は、連接前の杭の圧入と、新たな杭の継ぎ足し(連結)とを繰り返して連接しながらの圧入作業が行われる。
【0004】
従来の杭圧入装置は、連接杭の圧入作業のために、杭を把持するチャック装置の下方に、先行する杭を把持することが可能なサブチャックを設け、先行する杭の上端部をサブチャックで把持し、次の杭をチャック装置で把持した状態で互いを連結し(継ぎ足し作業)、一体化された杭の圧入を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6854939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記杭圧入装置にあっては、サブチャックがチャック装置の下方に配置されているため、サブチャックとの干渉を回避するために、杭の丈がより短いものしか使用することできないという問題があった。
【0007】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、杭と杭とを連結して圧入を行う場合に、より丈の長い杭の圧入を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するための本発明の一つの態様は、
既設杭の上端部を掴んで反力をとる杭圧入装置を用いて圧入杭と圧入杭とを縦継ぎにより連結して地盤に圧入する際に、一方の前記圧入杭の上部を保持する保持チャックアタッチメントであって、
既設杭の上端部をクランプして前記保持チャックアタッチメントを前記既設杭に固定する固定用クランプ装置と、
前記一方の圧入杭の上部を把持する保持用チャック装置とを有する保持チャックアタッチメントである。
【0009】
また本発明の他の一つの態様は、
上記保持チャックアタッチメントを用いて、圧入杭と圧入杭とを縦継ぎにより連結して地盤に圧入する杭圧入施工方法であって、
前記既設杭の上端部をクランプして当該既設杭に固定された前記保持チャックアタッチメントが一方の前記圧入杭の上部を把持した状態で他方の前記圧入杭を連結する杭連結工程を有する杭圧入施工方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、圧入杭と圧入杭とを連結して圧入を行う場合に、より丈の長い圧入杭の圧入を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態の杭圧入装置による杭圧入施工方法の実施状況を示す斜視図である。
図2図1から進んだ場面を示す斜視図である。
図3図2から進んだ場面を示す斜視図である。
図4図3から進んだ場面を示す斜視図である。
図5A】上空制限のある現場での杭圧入施工方法の実施状況を示す平面図である。
図5B図5Aの側面図である。
図6A図5Aから進んだ場面を示す平面図である。
図6B図6Aの側面図である。
図7】杭圧入施工時における配置も含めて示した保持チャックアタッチメントの平面図である。
図8】保持チャックアタッチメントの平面図である。
図9】保持チャックアタッチメントの側面図である。
図10】保持チャックアタッチメントを用いた分割杭の杭圧入施工方法の工程図である。
図11図10に続く分割杭の杭圧入施工方法の工程図である。
図12図11に続く分割杭の杭圧入施工方法の工程図である。
図13図12に続く分割杭の杭圧入施工方法の工程図である。
図14図13に続く分割杭の杭圧入施工方法の工程図である。
図15図14に続く分割杭の杭圧入施工方法の工程図である。
図16図15に続く分割杭の杭圧入施工方法の工程図である。
図17図16に続く分割杭の杭圧入施工方法の工程図である。
図18図17に続く分割杭の杭圧入施工方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
本実施形態では、圧入杭と圧入杭とを縦継ぎにより長手方向に連結して構成される連接杭を地盤に圧入する際に先頭となる圧入杭の上部を保持する保持チャックアタッチメントと連接杭の圧入を行う杭圧入装置及びこれらを用いた杭圧入施工方法を例示する。
なお、以下の説明では、連接杭を構成する複数の杭の各々を分割杭というものとする。
また、以下の説明において、「既設杭」とは、杭の種類に拘わらず、既に圧入が完了し、それ以上の圧入動作が行われない杭のことをいう。また、「圧入杭」とは、杭の種類に拘わらず、これから圧入を行う杭或いは、圧入の途中である杭のことをいう。
縦継ぎにより連接杭を構成する分割杭の場合には、杭圧入装置10のチャック装置6に把持された状態の分割杭や、地盤に圧入されている状態であって、さらに新たな分割杭が縦継ぎにより連結されて圧入動作が加えられる予定の分割杭は、いずれも「圧入杭」に相当する。
縦継ぎとは、長手方向を揃えて直列に配置された複数の杭の端部同士を連結することをいう。
【0013】
[杭圧入装置]
まずは、杭圧入装置10について、図1から図6Bに基づいて説明する。図1から図4は、杭圧入装置10の杭圧入時の各種の動作を4場面で示す。図5A図5B図6A及び図6Bは上空制限のある現場での実施状況における2場面を示す。方向の明示のため前後方向軸をX軸、左右方向軸をY軸、上下方向軸をZ軸として図中に直交3軸XYZを示す。
【0014】
杭圧入装置10は、サドル1と、サドル1の下部に設けられ、地盤に圧入された既設杭P1-P4・・・の上端部を把持する複数のクランプ装置2F,2Rと、サドル1上を水平移動可能に設けられたスライドベース3と、スライドベース3上にマスト旋回軸MZ回りに旋回可能に立設されたマスト4と、昇降装置5と、昇降装置5を介してマスト4に支持され、杭Pを把持するチャック装置6とを備える。なお、既設杭P1-P4・・・は、個々に区別する必要がない場合には、単に既設杭Pと記載する。この既設杭Pは、複数の分割杭(圧入杭)が縦継ぎにより長手方向に連接されてなる連接杭であってもよい。
【0015】
チャック装置6は、チャックフレーム7に設置され、把持中心軸CZ回りで回転可能であり、チャック装置6が杭を把持した状態で回転することにより杭を回転させながら圧入する回転圧入工法が実施可能である。
さらに杭圧入装置10は、チャック傾動機構9を備え、当該チャック傾動機構9によりマスト4に交わり、マスト4とチャック装置6とが並ぶ方向のチャック傾動軸CY回りにチャック装置6、チャックフレーム7とともに昇降装置5を傾動可能である。
チャック装置6、チャックフレーム7が昇降装置5を介してマスト4に支持されている。昇降装置5は、把持中心軸CZに沿ってチャック装置6及びチャックフレーム7を昇降させることができる。
チャック装置6及びチャックフレーム7からなる構造は、杭を挿入する貫通部8を有する。
複数のクランプ装置2F,2Rは、前方側のクランプ装置2Fと、後方側のクランプ装置2Rからなる。なお、3つ以上のクランプ装置を設けてもよい。
スライドベース3は、前後方向にスライド移動する。後方側のクランプ装置2Rも前後方向にスライド移動可能であり、前方側のクランプ装置2Fとの間隔が可変とされている。この機能により、杭と杭の間の間隔に合わせることができる。
【0016】
地盤に圧入された既設杭Pの上端部をクランプ装置2F,2Rで掴んだ状態から杭圧入施工方法を説明する。
いま、図示するように既設杭P2,P3の上端部をクランプ装置2F,2Rで掴んでいる。図1では、杭P1がすでに圧入完了されているが、杭P1をチャック装置6で把持して圧入途中である状況から説明すると、既設杭P2,P3の上端部をクランプ装置2F,2Rで掴んで反力をとりつつ、図1に示すように貫通部8の軸が圧入方向(上下方向)となった圧入姿勢で昇降装置5のストローク動作により、チャック装置6、チャックフレーム7とともにチャック装置6で把持している杭P1を下降(圧入方向へ移動)させて、杭P1を地盤に圧入し図1の圧入完了状態を得る。これにより、杭P1は既設杭による杭列の先頭杭となる。
【0017】
次に杭P0(圧入杭)を供給する。杭P0は、丈の長い一般的な鋼管杭でもよいが、ここでは、分割杭を例に説明する。
そのために、マスト4の旋回により図2に示すように杭列P1,P2,P3・・・の側方にチャック装置6を突き出す姿勢とする。
加えて、図3図5A及び図5Bに示すようにチャック傾動機構9によるチャック装置6の傾動により、チャック装置6を横倒しにする。これにより、杭を挿入する貫通部8の軸が略水平となったので、杭P0を横倒しの状態で供給し、横倒しの状態のまま貫通部8に挿入しチャック装置6に把持させる。
すなわち、図5Aに示すように既設杭を軸方向に見たときの杭列P1,P2,P3・・・の側方にチャック装置6を横倒しで突き出した状態としつつ、図6A及び図6Bに示すように杭P0を横倒しにして供給しチャック装置6に挿入し把持させる(杭供給工程)。なお、図5A図5B図6A及び図6Bでは、杭列上を走行可能な杭運搬装置20と、杭運搬装置20から杭を取り上げ杭圧入装置10のチャック装置6に杭を供給する杭供給装置30を用いている。
【0018】
クレーンを用いて杭P0を供給してもよい。供給側で杭P0を杭列P1,P2,P3・・・に沿った水平方向に移動可能である場合には、その移動動作により杭P0を貫通部8の軸方向に移動させてチャック装置6にまで挿入してもよい。
また、杭圧入装置10の動作により、杭P0をチャック装置6にまで挿入することが可能である。その動作とは、スライドベース3のストローク動作、昇降装置5のストローク動作である。図3に示す状態においては、スライドベース3のストローク方向及び昇降装置5のストローク方向は、杭P0をチャック装置6に挿入する方向に向いている。しがたって、スライドベース3のストローク動作により、杭P0をチャック装置6に挿入してもよい。また、昇降装置5のストローク動作により、杭P0をチャック装置6に挿入してもよい。
以上のように、杭P0の移動、スライドベース3のストローク動作及び昇降装置5のストローク動作のうち、いずれか1つまたは2以上を実施して杭P0をチャック装置6に挿入する。
杭供給工程において、少なくともスライドベース3のストロークによりチャック装置6への杭P0の挿入長さを稼ぐことが可能である。
同様に杭供給工程において、少なくとも昇降装置5のストロークによりチャック装置6への杭P0の挿入長さを稼ぐことができる。
【0019】
かくしてチャック装置6により杭P0を把持したら、杭圧入装置10は図4に示すようにマスト4の旋回とチャック装置6の傾動により、杭P0を地盤に圧入する姿勢に変遷する。
杭P1の圧入と同様に杭圧入装置10は、既設杭P2,P3の上端部をクランプ装置2F,2Rで掴んで反力をとりつつ、今度は杭P0を昇降装置5の動作により地盤に圧入する。
杭P0を途中まで圧入し、杭圧入装置10の重量を支えられるほど以上の支持力を得たら、杭圧入装置10は前進動作を行う。前進動作は次の通りである。
クランプ装置2F,2Rによるクランプを解除し、地盤に支持された杭P0をチャック装置6で把持したまま、昇降装置5の動作によりサドル1を上昇させる。さらにスライドベース3のストローク動作によりサドル1を前方に移動させることで、クランプ装置2Fを既設杭P1の上方に、クランプ装置2Rを既設杭P2の上方に配置し、昇降装置5の動作によりサドル1を下降させ、クランプ装置2Fにより既設杭P1をクランプし、クランプ装置2Rにより既設杭P2をクランプする。これにより、杭圧入装置10は1ピッチ分前進し、圧入時に反力をとる既設杭が杭P1,P2に移り変わる。
なお、各圧入位置の杭が、複数の分割杭を縦継ぎにより長手方向に連結した連接杭(圧入杭)である場合には、複数の分割杭(圧入杭)を同じ圧入位置で縦継ぎにより長手方向に連結して圧入を続行する過程が入る。杭圧入装置10の前進動作は、最上端部の分割杭をチャック装置6で把持した状態で行う。
【0020】
杭圧入装置10は、クランプ装置2F,2Rにより既設杭P1,P2をクランプしたら、杭P0の圧入を再開し、杭P0の圧入を完了する。これが、上述した杭P1の圧入完了(1サイクル前)に相当し、圧入作業が1サイクル進んだことになる。これを1圧入サイクルとして、圧入サイクルを繰り返し実行する。これにより、杭圧入装置10は、既設杭による杭列上を移動しつつ連続して杭を圧入していくことで地盤上に当該杭列を延長していく杭圧入施工方法を実行する。
【0021】
次に、杭供給装置30の構成と動作の詳細につき説明する。
杭供給装置30は、杭を横倒し状態のまま取り上げるとともに移動させるピックアップアーム30Aを備える。
本実施形態ではピックアップアーム30Aは、揺動アーム31を備える。揺動アーム31の両端は、垂直軸回りに回動可能なヒンジ連結部32,33が設けられている。揺動アーム31の基端部はヒンジ連結部32を介してサドル1に固定されている。揺動アーム31は、ヒンジ連結部32により水平面内で揺動するようになっている。揺動アーム31は伸縮機能を有する。
揺動アーム31の先端部に、杭を取り上げ昇降可能なフォーク34が設けられている。揺動アーム31側から、ヒンジ連結部33、第1昇降装置35、第2昇降装置36、フォーク34の順で連結されている。ヒンジ連結部33によりフォーク34を水平面内で揺動可能にしている。第1昇降装置35と第2昇降装置36とは直列的に連結されているので、第1昇降装置35の昇降ストロークに第2昇降装置36の昇降ストロークを加えた分だけ、フォーク34を昇降することができる。
【0022】
杭供給装置30を適用した杭供給工程につき説明する。
図5A及び図5Bに示すようにピックアップアーム30Aを後方に伸ばし、フォーク34を杭P0に挿入可能な高さに維持し、杭運搬装置20の前進により、杭P0にフォーク34が挿入される(図5A及び図5Bの状態)。
次に、フォーク34を上昇させて、杭P0を取り上げ、図6A及び図6Bに示すようにヒンジ連結部32,33の略90度の回動により、杭P0を杭列の側方に配置する。杭P0は、貫通部8の軸の高さに合わせる。
上述したように杭P0をチャック装置6に挿入し、チャック装置6により杭P0を把持して杭P0を地盤に圧入する。
【0023】
[保持チャックアタッチメント]
以下、既に説明した杭圧入装置10において、保持チャックアタッチメント60を用いて分割杭からなる杭(連接杭)の杭圧入を行う杭圧入施工方法について説明する。
図7は杭圧入施工時における杭圧入装置10及び杭列P1,P2,P3・・・に対する配置も含めて示した保持チャックアタッチメント60の平面図、図8は平面図、図9は側面図である。
本実施形態では、分割杭Pdが鋼管杭である場合を例示する。但し、圧入の対象は鋼管杭に限定されない。
【0024】
保持チャックアタッチメント60は、複数の分割杭(圧入杭)Pd1,Pd2・・・(図10図18参照)を縦継ぎにより長手方向に連結しながら順番に埋設する際に使用される。なお、以下の記載では、分割杭Pd1,Pd2・・・を特に区別する必要がない場合には、「分割杭Pd」と総称する。
各分割杭Pdは、いずれも外径及び内径が等しく、長手方向に短い鋼管杭である。これら分割杭Pd(圧入杭)の圧入作業は、圧入と新たな分割杭Pd(圧入杭)を継ぎ足す縦継ぎ(先行する分割杭の上端部に対する新たな分割杭の連結)とが交互に繰り返されて実施される。
【0025】
分割杭Pdは、前述したような上空制限S0が存在する上下方向に制限のあるエリアで杭圧入作業を行う場合に好適である。チャック装置6は、圧入姿勢で杭頭と上空制限S0との干渉を回避することができる長さの分割杭Pdを使用する。
そして、前述した通り、圧入初期の分割杭(例えば、一本目の分割杭Pd1等)の場合、昇降装置5のストロークでは、分割杭Pd1(圧入杭)の下端部が地盤に届かない場合や圧入深さが不十分となって不安定となり、次の分割杭Pd2(圧入杭)の連結作業を適正に行うことができなくなるおそれがある。このため、分割杭Pd1を保持するために保持チャックアタッチメント60が使用される。
保持チャックアタッチメント60は、既設杭P1(圧入杭)の杭頭に固定することができ、チャック装置6の下方で分割杭Pd1の上部を安定的に把持して、次の分割杭Pd2(圧入杭)の連結を可能とする。
なお、保持チャックアタッチメント60は、杭圧入装置10のチャックフレーム7に対しても装着可能であって、杭圧入装置10と共に移動することもできる。
【0026】
保持チャックアタッチメント60は、図7図9に示すように、分割杭Pdを上下方向に遊挿可能な枠体61と、枠体61内で分割杭Pdを把持する複数の把持機構62と、枠体61の後端部に連結された連結フレーム63と、連結フレーム63に設けられた複数の固定用クランプ装置64とを有する。
枠体61と複数の把持機構62は、保持用チャック装置を構成する。
【0027】
枠体61は、上下に広く開口した平面視略八角形状の枠体であり、その内側に分割杭Pdを遊挿可能である。なお、枠体61の平面視形状は、分割杭Pdを通すことが可能であれば八角形状に限らず、任意である。
【0028】
把持機構62の個体数は複数であればよく、その数量に限定はないが、本実施形態では、把持機構62が枠体61に四つ設けられている場合を例示する。
四つの各把持機構62は、枠体61の開口中心と同心となる円の円周に沿って均一間隔で枠体61に設けられている。以下、この同心円の中心軸を枠体61の中心軸Oとする。
そして、各把持機構62は、いずれも、枠体61の中心軸Oに向かって進退移動を行う凹状の把持爪621と、当該把持爪621に進退移動動作を付与するアクチュエーターとしての図示しない油圧シリンダ622とを有する。
【0029】
把持爪621は、凹部の内側が分割杭Pdの外周面に圧接して把持を行う。このため、把持爪621の内側には、凹凸やスパイク構造等の摩擦力を高める加工が施された圧接面が形成されている。
枠体61の開口に上下方向に沿って遊挿された分割杭Pdは、中心軸Oに向かって進出移動を行う四つの把持爪621の凹部が分割杭Pdの外周面に嵌合し、枠体61の中心軸Oと同心となる状態で保持される。
【0030】
油圧シリンダ622は、例えば、複動式油圧シリンダであり、シリンダチューブ623とピストンロッド624とを備えている。ピストンロッド624は、その先端部で把持爪621を支持している。そして、油圧シリンダ622は、中心軸Oを中心とする円周の半径方向に沿ってピストンロッド624が進退動作を行うように枠体61に保持されている。
【0031】
枠体61の上面における左右両端部の近傍と後端部の近傍とには、ブラケット66(図11参照)を介して、保持チャックアタッチメント60をチャックフレーム7に着脱可能に連結するための被連結部611~613を有する。
各被連結部611~613は、いずれも枠体61の上面から立設された板状部を有し、当該板状部を水平に貫通した二乃至三の貫通孔が形成されている。これに対して、ブラケット66の下端部には、各被連結部611~613の板状部を挿入可能な二枚の板状部を有し、これらの板状部には、被連結部611~613と同様に水平に貫通した二乃至三の貫通孔が形成されている。そして、被連結部611~613の各貫通孔とブラケット66の各貫通孔とが重合するように被連結部611~613をブラケット66の二枚の板状部の間に挿入し、重合した各貫通孔に連結ピンを挿入することで被連結部611~613の各貫通孔とブラケット66の連結を可能としている。連結ピンは、引き抜き可能であり、これにより、被連結部611~613の各貫通孔とブラケット66の分離も可能である。
なお、各被連結部611~613に対応する配置で、チャックフレーム7の下部にも被連結部611~613と同じ構造の被連結部が設けられており、ブラケット66の上端部との連結と分離が可能である。
【0032】
被連結部611~613によってチャックフレーム7の下部に装着された保持チャックアタッチメント60は、枠体61の中心軸Oとチャック装置6の把持中心軸CZとが同心となるように、被連結部611~613の配置が設定されている。
従って、チャックフレーム7の下部に保持チャックアタッチメント60を装着した状態で、チャック装置6による分割杭Pdの把持を支障なく行うことができる。
【0033】
連結フレーム63は、その前面の左右両端部から前方に延出された板状の一対の連結腕631を有する。これに対して、枠体61の後端上面の左右両端部には、各連結腕631に対応する一対の連結ブラケット65が固定装備されている。
各連結腕631は、図9に示すように、下端部に前後方向に並んで複数の連結孔632が左右方向に貫通形成されている。
これに対して、枠体61側の各連結ブラケット65は、上から連結腕631を挿入可能な二枚の板状部652を有し、これらの板状部652には、側方から見て同一位置に二つの連結孔651が形成されている。
そして、連結ブラケット65の二つの連結孔651と連結腕631の二つの連結孔632を重合させた状態で、重合した各貫通孔に連結ピンを挿入することで連結腕631(連結フレーム63)と連結ブラケット65(枠体61)の連結を可能としている。
また、各連結腕631には、より多くの連結孔632が前後方向に並んで形成されており、連結腕631を連結ブラケット65に対して前後方向スライドさせて他の連結孔632を連結ブラケット65の連結孔651と重合させることにより、連結フレーム63と枠体61との前後方向の相互の間隔を変更調節することができる。
【0034】
つまり、連結腕631と連結ブラケット65が固定用クランプ装置64と保持用チャック装置の相互間の間隔を調節する調節機構を構成している。
これにより、杭列P1,P2,P3・・・のピッチが異なる場合にも、分割杭Pdを適正な位置に把持することができる。
また、連結腕631が連結ブラケット65を介して枠体61の上に乗った状態で連結されているので、保持チャックアタッチメント60を既設杭Pに固定した状態で、固定用クランプ装置64よりも保持用チャック装置(枠体61)の方が低位置となる。このため、枠体61及び分割杭Pd1をより低位置に保持し、分割杭Pd2以降の分割杭Pdとして、より丈の長いものを使用することができる。
【0035】
固定用クランプ装置64は、連結フレーム63の後端部における左右両側に設けられている。
各固定用クランプ装置64は、下向きのスリット641が形成されており、当該スリット641に下方から既設杭Pの杭頭における管壁上端部(板状部分)を挿入することができる。なお、二つの固定用クランプ装置64は、それぞれのスリット641が既設杭Pの管壁の接線方向に沿うように、各々が連結フレーム63の後端部に対して傾斜した状態で固定装備されている。
【0036】
各固定用クランプ装置64は、スリット641を挟んで対向配置された二つのクランプユニット642を有する。
対向する二つのクランプユニット642は、圧接体643と油圧シリンダ644とを有し、各油圧シリンダ644は、例えば、複動式油圧シリンダであり、可動シリンダ645とピストンロッド646とを有する。
油圧シリンダ644のピストンロッド646は、固定用クランプ装置64内で背圧を支えて支持されており、当該ピストンロッド646に対して可動シリンダ645が油圧によって進退動作を行う。
可動シリンダ645の先端部は、圧接体643が装備され、圧接体643は、凹凸やスパイク構造等の摩擦力を高める加工が施された圧接面を有する。二つのクランプユニット642の圧接体643は、スリット641内において、圧接面を対向させて配置されている。
これにより、スリット641に下から挿入された既設杭Pの管壁を二つのクランプユニット642の圧接体643によってクランプすることができる。
従って、二つの固定用クランプ装置64が、既設杭Pの管壁を二か所に渡ってクランプすることで、保持チャックアタッチメント60を既設杭Pに対して安定的に固定することができる。
【0037】
[杭圧入施工方法]
図10図18は保持チャックアタッチメント60を用いた分割杭Pdの杭圧入施工方法を順番に示した工程図である。これらの図を参照して杭圧入動作を説明する。
【0038】
図10に示すように、杭圧入装置10が既設杭P2,P3の上端部をクランプ装置2F,2Rで掴み、杭列P1,P2,P3・・・の側方でチャック装置6を横倒し状態とし、杭供給装置30(可能であればクレーンでもよい)から分割杭Pd1(一方の圧入杭)がチャック装置6に供給された状態から説明する。
圧入の先頭(最深部)となる分割杭Pd1(圧入杭)を圧入する際には、予め、保持チャックアタッチメント60は、ブラケット66を介してチャックフレーム7の下部に装着された状態にある。保持チャックアタッチメント60は、分割杭Pd1が保持チャックアタッチメント60の枠体61に遊挿された状態でチャック装置6に把持されている。一方、今の時点では、保持チャックアタッチメント60の各把持機構62は、分割杭Pd1を把持していない。
【0039】
次いで、スライドベース3のストローク動作により既設杭P1の前側の目標とする圧入位置まで分割杭Pd1を搬送し、マスト4の旋回によりチャック装置6をマスト4の前側に移動する。さらに、図11に示すように、チャック傾動機構9によるチャック装置6の傾動により、把持中心軸CZが圧入方向(上下方向)となった圧入姿勢とする。
このとき、先に既設杭P1に保持チャックアタッチメント60が取り付けられていると、チャック装置6を圧入姿勢とする際に、分割杭Pd1の下端部が保持チャックアタッチメント60と干渉してしまう。このため、分割杭Pd1は、保持チャックアタッチメント60と干渉しないように、十分に短い長さとしなければならない。
しかしながら、保持チャックアタッチメント60をチャックフレーム7の下部に装着しておくことにより、分割杭Pd1との干渉が回避され、上空制限S0が存在する環境であっても、分割杭Pd1をより長いものを選択することが可能となる。例えば、分割杭Pd1は、地盤から上空制限S0までの高さに近い長さのものを選択可能である。
【0040】
そして、昇降装置5が下降方向にストローク動作を行いながら、チャック装置6が分割杭Pd1の回転を行い、圧入する(圧入工程)。
これにより、図12に示すように、保持チャックアタッチメント60は、チャックフレーム7と共に下降し、各固定用クランプ装置64のスリット641に既設杭P1の管壁が進入する。
この段階で、分割杭Pd1の回転とチャックフレーム7の下降を一旦停止して、各固定用クランプ装置64により、既設杭P1の杭頭に保持チャックアタッチメント60を固定する。そして、連結ピンを引き抜いて、チャックフレーム7から保持チャックアタッチメント60を分離させる(保持チャックアタッチメントの移設工程)。
【0041】
その後、杭圧入装置10は、チャック装置6による把持位置の上方移動と分割杭Pd1の回転圧入とを一乃至複数回行い、図13に示すように、分割杭Pd1の上部を保持チャックアタッチメント60が把持することが可能な高さ(例えば、既設杭Pと同じ高さ)まで圧入を行うと、保持チャックアタッチメント60は、各把持爪621により分割杭Pd1の上部を把持する。
そして、杭圧入装置10は、図14に示すように、チャック装置6が分割杭Pd1を解放し、杭列P1,P2,P3・・・の側方でチャック装置6を横倒し状態とし、後退移動して、次の分割杭Pd2の供給を受ける。
【0042】
その後、分割杭Pd2(他方の杭)を分割杭Pd1の上方に搬送し、図15に示すように、分割杭Pd1の上方で分割杭Pd2を圧入姿勢とする。
なお、二番目以降の分割杭Pdは、その下方に、既設杭P1に固定された保持チャックアタッチメント60及び先行する分割杭Pdが存在するので、これらとの干渉を避けるために、先頭の分割杭Pd1よりも丈の短いものが使用される。
但し、保持チャックアタッチメント60は、既設杭Pに固定することができるため、杭圧入装置側に常に保持されている保持チャックアタッチメントの場合と比較すると、保持チャックアタッチメント60をより低位置に配置することができる。従って、保持チャックアタッチメント60を使用すると、二番目以降の分割杭Pdも、より丈の長いものを使用することができる。
【0043】
一方、チャック装置6と共に圧入姿勢となった分割杭Pd2は、分割杭Pd1の上端部に縦継ぎにより連結される(杭連結工程)。分割杭Pd1と分割杭Pd2の縦継ぎの方法は、溶接等により連結してもよい。また、分割杭Pd1と分割杭Pd2が機械継手を有する場合には、これを利用して連結してもよい。
機械継手は、分割杭Pd1と分割杭Pd2の一方と他方とに凹凸構造を設け、これらを嵌合させて連結する継手である。例えば、一方の分割杭Pdに杭端部から杭長手方向に向かい、途中から周方向に屈曲する屈曲溝を設け、他方の分割杭Pdに屈曲溝に嵌合する嵌合凸部を設ける。そして、嵌合凸部が屈曲溝を辿るように、他方の分割杭Pdを杭長手方向に移動させてから回転させることにより、嵌合凸部が屈曲溝の最深部に到達して、互いの分割杭Pdを連結することができる。
杭圧入装置10は、昇降装置5のストローク動作とチャック装置6の回転動作によって、機械継手を有する分割杭Pd同士を好適に連結することができる。
【0044】
分割杭Pd1と分割杭Pd2とが連結されると、分割杭Pd1は、保持チャックアタッチメント60による把持状態が解除され、その後は、分割杭Pd1と分割杭Pd2が一体となって回転圧入が行われる。そして、杭圧入装置10は、チャック装置6による把持位置の上方移動と分割杭Pd2の回転圧入とを一乃至複数回行い、図16に示すように、分割杭Pd2の上端部を目標高さ(例えば、既設杭Pと同じ高さ)まで圧入すると、チャック装置6から解放する。
これ以降の分割杭Pdについては、分割杭Pd2と同様の動作が繰り返される。
【0045】
そして、最後尾(一番上)の分割杭Pdnを一つ手前の分割杭Pdの上端部に連結すると、圧入の開始前、又は、チャックフレーム7が保持チャックアタッチメント60を装着可能な高さまで分割杭Pdnの圧入が行われると、保持チャックアタッチメント60の既設杭P1のクランプ状態を解除すると共に、ブラケット66によって保持チャックアタッチメント60をチャックフレーム7に連結する。
【0046】
杭圧入装置10に保持チャックアタッチメント60を装着すると、杭圧入装置10の前進移動動作が行われる。
即ち、図17に示すように、杭圧入装置10は、分割杭Pdnをチャック装置6で把持した状態でクランプ装置2F,2Rによる既設杭P2,P3のクランプを解放し、昇降装置5によりチャックフレーム7の下降動作を行うことで相対的にサドル1、クランプ装置2F,2R、スライドベース3及びマスト4を上昇させる。さらに、スライドベース3の後退移動を行うことにより、相対的にサドル1、クランプ装置2F,2Rの前進移動を行い、昇降装置5によるチャックフレーム7の上昇動作によってサドル1、クランプ装置2F,2R、スライドベース3及びマスト4を下降させて、一つ前の既設杭P1,P2にクランプ装置2F,2Rを挿入してクランプさせる。これにより、杭圧入装置10は、杭列P1,P2,P3・・・の一ピッチ分の前進移動が行われる。
【0047】
そして、最後尾(一番上)の分割杭Pdnの回転圧入を行い、既設杭P1との天端合わせ(高さ調整)が行われると、最後尾の分割杭Pdnがチャック装置6から解放される。
杭圧入装置10は、杭列P1,P2,P3・・・の側方でチャック装置6を横倒し状態とし、後退移動する。
この時、図18に示すように、保持チャックアタッチメント60は、ブラケット66によってチャックフレーム7の下部に連結されているので、チャック装置6の後退移動と共に回収される(保持チャックアタッチメント回収工程)。
【0048】
[発明の実施形態の技術的効果]
上記保持チャックアタッチメント60は、既設杭Pの上端部をクランプして保持チャックアタッチメント60を既設杭Pに固定する固定用クランプ装置64を備えているので、保持チャックアタッチメント60が杭圧入装置10に保持されている従来技術と比較して、保持チャックアタッチメント60に保持された分割杭Pdをより低位置に保持し易くなる。このため、杭圧入装置10が保持する次の分割杭Pdと保持チャックアタッチメント60との干渉を生じ難くなり、当該次の分割杭Pdについてより丈の長いものを使用することが可能となる。
【0049】
また、保持チャックアタッチメント60は、杭圧入装置10に対して連結と分離が可能な被連結部611~613を有するので、既設杭P1の上端部をクランプしない状態で杭圧入装置10に装着することが可能である。このため、分割杭Pd1の圧入位置への移動の場合等のような、保持チャックアタッチメント60を使用しない際には、保持チャックアタッチメント60を杭圧入装置10に搭載した状態としておくことができる。
これにより、例えば、先頭の分割杭Pd1を圧入の目標位置に移動する場合に保持チャックアタッチメント60との干渉を回避することができるので、分割杭Pd1について、より丈の長いものを使用することが可能となる。
【0050】
また、保持チャックアタッチメント60は、固定用クランプ装置64と保持用チャック装置(枠体61等)との間での相互間の間隔を調節する調節機構を有するので、種々の杭ピッチで連接杭の圧入を行うことが可能となる。
【0051】
また、保持チャックアタッチメント60は、固定用クランプ装置64が既設杭Pの上端部の板状部分を下から挿入するスリット641を有するので、杭圧入装置10のチャックフレーム7の下降動作等を利用して保持チャックアタッチメント60の取り付けを行うことが可能となり、取り付け作業の容易化、作業負担軽減を図ることが可能となる。
【0052】
また、保持チャックアタッチメント60は、固定用クランプ装置64により既設杭Pに固定された状態で、固定用クランプ装置64よりも保持用チャック装置(枠体61等)の方が低位置となる構造のため、保持チャックアタッチメント60に保持された分割杭Pdをより低位置に配置することができ、次の分割杭Pdについてさらに丈の長いものを使用することが可能となる。
【0053】
また、杭圧入施工方法において、既設杭Pに固定された保持チャックアタッチメント60が先頭の分割杭Pd1の上部を把持した状態で次の分割杭Pd2を連結する杭連結工程を有するので、杭圧入装置10のチャック装置6に把持された分割杭Pd1が地盤に届かない場合や安定状態で立設される深さまで圧入できない場合でも、好適に分割杭Pd2を連結することが可能となる。
【0054】
また、杭圧入施工方法において、杭連結工程より前に、保持チャックアタッチメント60を装着した状態の杭圧入装置10が、チャック装置6に把持された先頭の分割杭Pd1を圧入の目標位置に配置すると共に圧入の途中で保持チャックアタッチメント60を既設杭Pの上端部に移設する移設工程を有している。
このため、先頭の分割杭Pd1を圧入の目標位置に配置する際には、保持チャックアタッチメント60が杭圧入装置10に保持されているため、チャック装置6から地盤までのスペースに分割杭Pd1を配置することができ、次以降の分割杭Pdよりも丈の長いものを使用することが可能となる。
なお、上記実施形態では、移設工程を分割杭Pd1の圧入の途中で実施する場合を例示したが、これに限らず、移設工程は、分割杭Pd1の圧入の開始前に行ってもよい。
【0055】
また、杭圧入施工方法において、複数の分割杭Pdから構成された連接杭の最後の分割杭Pdnの圧入の完了後に、既設杭Pの上端部のクランプ状態を解除すると共に保持チャックアタッチメント60を杭圧入装置10に連結して回収する回収工程を有している。
このため、既設杭Pから保持チャックアタッチメント60を撤去することができ、杭圧入装置10の前進移動の妨げとならず、円滑に次の連接杭の圧入作業に移行することができ、効率的な圧入作業を行うことが可能となる。
なお、保持チャックアタッチメント60を杭圧入装置10に連結する回収工程は、最後の分割杭Pdnの圧入の完了後でなくともよい。圧入杭としての分割杭Pdのいずれかが圧入によって地盤に安定して立設された状態となれば、それ以降のいずれかのタイミングで保持チャックアタッチメント60を杭圧入装置10に連結して回収してもよい。
【0056】
[その他]
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られるものではない。例えば、実施形態において、単一の部材により一体的に形成された構成要素は、複数の部材に分割されて互いに連結又は固着された構成要素に置換してもよい。また、複数の部材が連結されて構成された構成要素は、単一の部材により一体的に形成された構成要素に置換してもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0057】
例えば、保持チャックアタッチメント60について、杭圧入装置10に対して連結ピンを用いて着脱を行う構成を例示したが、これに限定されない。例えば、保持チャックアタッチメント60と杭圧入装置10の着脱は、連結と分離の制御を行うことが可能なアクチュエーターを杭圧入装置10に設け、杭圧入装置10の動作制御の一つとして、決まった工程で保持チャックアタッチメント60の連結と分離とを行う構成としても良い。これにより、保持チャックアタッチメント60の連結と分離とを人手によって行う必要がなくなり、全体的な作業の自動化を図ることができ、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0058】
また、本実施形態において、杭圧入装置10と保持チャックアタッチメント60について統括的に一つの制御装置が制御して、相互の動作の連携を図っても良いし、杭圧入装置10と保持チャックアタッチメント60に個別に制御装置を設け、これらの制御装置が通信を行って相互の動作の連携を図っても良い。
【0059】
また、保持チャックアタッチメント60の二つの固定用クランプ装置64は、連結フレーム63に対して、Z軸回りの向きやX-Y平面における取付位置を調節する調節手段を設けてもよい。また、固定用クランプ装置64の実装可能な個体数を増減可能としてもよい。
それらの場合、保持チャックアタッチメント60を固定する既設杭の形状の種類やサイズについて、より多くの範囲について取り付け可能となり、保持チャックアタッチメント60の汎用性を高めることができる。
【0060】
なお、分割杭Pdの圧入の際には、打下装置を使用してもよい。打下装置は、各分割杭Pdの上端部に着脱可能な分割杭Pdと外径の等しいアタッチメントであり、分割杭のチャック装置6による把持代を延長するためのものである。打下装置は、例えば、油圧等を利用して着脱を行うことができ、分割杭Pdと一体となって回転圧入を行うことができる。
打下装置を使用する場合には、打下装置を分割杭Pdに装着した状態でチャック装置6に供給し、分割杭Pdを目標とする高さまで圧入した後に、分離回収する工程が加わる。
【符号の説明】
【0061】
1 サドル
2F,2R クランプ装置
3 スライドベース
4 マスト
5 昇降装置
6 チャック装置
7 チャックフレーム
9 チャック傾動機構
10 杭圧入装置
60 保持チャックアタッチメント
61 枠体
611~613 被連結部
62 把持機構
63 連結フレーム
64 固定用クランプ装置
641 スリット
P,P0~P4 杭(鋼管杭)
Pd,Pdn 分割杭(杭)
Pd1 分割杭(一方の杭)
Pd2 分割杭(他方の杭)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18