(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062277
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】スクロール流体機械
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20240430BHJP
F04C 29/02 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
F04C18/02 311W
F04C29/02 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170158
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄太
(72)【発明者】
【氏名】石井 広大
(72)【発明者】
【氏名】伊能 聡
【テーマコード(参考)】
3H039
3H129
【Fターム(参考)】
3H039AA02
3H039AA12
3H039BB11
3H039CC02
3H039CC08
3H039CC28
3H129AA02
3H129AA17
3H129AB03
3H129BB01
3H129BB44
3H129CC04
3H129CC24
(57)【要約】
【課題】従来技術に比べて駆動部の潤滑性能を向上させることのできるスクロール流体機械を提供する。
【解決手段】スクロール流体機械の一例であるスクロール圧縮機1は、ハウジング2における可動スクロール50の第2基板51及びスラストプレート15に対応する部位に形成された吸入ポート20と、ハウジング2内の支持面14に形成されて吸入ポート20から吸入された潤滑油を含む流体を駆動部60側に案内する案内流路21と、支持面14に形成されて潤滑油を含む流体を駆動部60側からスクロールユニット6側に流出させる流出流路23と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板及び前記第1基板の一面に立設された第1渦巻壁を有する固定スクロールと、第2基板及び前記第2基板の一面に立設されて前記固定スクロールの前記第1渦巻壁にかみ合う第2渦巻壁を有する可動スクロールとを含むスクロールユニットと、
前記可動スクロールの前記第2基板の前記一面とは反対側の他面に突設されたボス部に連結されて前記可動スクロールを前記固定スクロールに対して旋回運動させる駆動部と、
前記スクロールユニットを収容すると共に前記駆動部の主軸を回転自在に支持するハウジングと、
前記ハウジング内に設けられた支持面と前記可動スクロールの前記第2基板の前記他面との間に配置されたスラストプレートと、
を含むスクロール流体機械であって、
前記ハウジングにおける前記可動スクロールの前記第2基板及び前記スラストプレートに対応する部位に形成された吸入ポートと、
前記支持面に形成されて前記吸入ポートから吸入された潤滑油を含む流体を前記駆動部側に案内する案内流路と、
前記支持面に形成されて前記潤滑油を含む流体を前記駆動部側から前記スクロールユニット側に流出させる流出流路と、
を有する、スクロール流体機械。
【請求項2】
前記支持面は、前記可動スクロールの前記第2基板の前記他面に対向すると共に前記ボス部を取り囲む円環状の面として形成され、
前記案内流路は、前記支持面の内周と外周との間を径方向に延びると共に前記駆動部が配置された駆動部配置空間と前記吸入ポートとを連通する溝として形成され、
前記流出流路は、前記支持面の内周と外周との間を径方向に延びると共に前記スクロールユニットが配置されたスクロール配置空間と前記駆動部配置空間とを連通する溝として形成されている、
請求項1に記載のスクロール流体機械。
【請求項3】
前記可動スクロールの第2基板には仕切部が設けられ、
前記仕切部は、前記固定スクロールに対する前記可動スクロールの旋回運動によって前記可動スクロールが前記吸入ポートに接近したとき、前記吸入ポート内を、前記スクロールユニット側の第1スクロール側空間と、前記駆動部側の第1駆動部側空間とに分けるように構成されている、請求項1に記載のスクロール流体機械。
【請求項4】
前記吸入ポート内の前記第1駆動部側空間の流路断面積が、前記吸入ポート内の前記第1スクロール側空間の流路断面積よりも大きい、請求項3に記載のスクロール流体機械。
【請求項5】
前記第1駆動部側空間の流路断面積は、前記第1スクロール側空間の流路断面積の2倍以上の大きさを有する、請求項4に記載のスクロール流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはスクロール流体機械の一例であるスクロール圧縮機が記載されている。特許文献1に記載されたスクロール圧縮機は、固定スクロールと、旋回スクロール(可動スクロール)と、前記旋回スクロールを前記固定スクロールに対して旋回(公転)運動させるクランク軸と、前記クランク軸を回転可能に支持するケース(ハウジング)と、を有する。また、特許文献1に記載されたスクロール圧縮機は、潤滑油を給油の必要な部位に供給可能とするため、前記ケースにおける前記旋回スクロールの端板(基板)背面に対応する部位に設けられた冷媒吸入口(吸入ポート)と、前記ケースに設けられて前記冷媒吸入口と前記クランク軸が存する空間とを連通する潤滑通路と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されたスクロール圧縮機において、前記潤滑通路は、単に前記冷媒吸入口と前記クランク軸が存する空間とを連通しているだけであり、前記冷媒吸入口から流入した潤滑油を含む冷媒が安定して流れるようにはなっていない。そのため、前記冷媒吸入口から流入した潤滑油を含む冷媒が、前記クランク軸が存する空間に十分に供給されず、前記クランク軸を含む駆動部の潤滑が不足するおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、従来技術に比べて駆動部の潤滑性能が改善されたスクロール流体機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、スクロール流体機械が提供される。スクロール流体機械は、第1基板及び前記第1基板の一面に立設された第1渦巻壁を有する固定スクロールと、第2基板及び前記第2基板の一面に立設されて前記固定スクロールの前記第1渦巻壁にかみ合う第2渦巻壁を有する可動スクロールとを含むスクロールユニットと、前記可動スクロールの前記第2基板の前記一面とは反対側の他面に突設されたボス部に連結されて前記可動スクロールを前記固定スクロールに対して旋回運動させる駆動部と、前記スクロールユニットを収容すると共に前記駆動部の主軸を回転自在に支持するハウジングと、前記ハウジング内に設けられた支持面と前記可動スクロールの前記第2基板の前記他面との間に配置されたスラストプレートと、を含む。スクロール流体機械はまた、前記ハウジングにおける前記可動スクロールの前記第2基板及び前記スラストプレートに対応する部位に形成された吸入ポートと、前記支持面に形成されて前記吸入ポートから吸入された潤滑油を含む流体を前記駆動部側に案内する案内流路と、前記支持面に形成されて前記潤滑油を含む流体を前記駆動部側から前記スクロールユニット側に流出させる流出流路と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、案内流路に加えて流出流路を有することにより、吸入ポートから吸入された潤滑油を含む流体が案内流路を前記駆動部に向かって円滑に且つ安定して流れ得る。そのため、本発明によれば、潤滑油を含む流体が駆動部に十分に供給され、従来技術に比べて駆動部の潤滑性能が改善されたスクロール流体機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスクロール圧縮機の概略断面図である。
【
図2】設置状態にあり且つリアハウジング及びスクロールユニットが取り外された状態のスクロール圧縮機をリア側から見た図である。
【
図3】フロントハウジングをリア側から見た斜視図である。
【
図5】可動スクロールが吸入ポートに接近していないときのスクロール圧縮機の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここでは、本発明が適用されるスクロール流体機械がスクロール圧縮機である場合について説明する。但し、本発明は、スクロール圧縮機に限られず、スクロール膨張機にも適用可能である。また、本明細書における第1、第2等の用語は、単に類似する要素を区別するために使用され、それらが用いられる要素を限定するものではない。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るスクロール圧縮機1の概略断面図である。
【0011】
実施形態に係るスクロール圧縮機1は、車両の空調システムの冷媒回路に組み込まれる冷媒圧縮機である。スクロール圧縮機1は、気体冷媒(流体)を前記冷媒回路から吸入して圧縮し、圧縮された気体冷媒を前記冷媒回路に吐出するように構成される。本実施形態において、前記冷媒回路から吸入される気体冷媒には潤滑油が含まれている。気体冷媒に含まれた潤滑油は、スクロール圧縮機1内に封入された潤滑油と同様に、スクロール圧縮機1内の軸受及び種々の摺動部分の潤滑並びに摺動面のシールなどに利用される。なお、以下では潤滑油を含む気体冷媒のことを「潤滑油を含む冷媒」又は単に「冷媒」という。
【0012】
図1を参照すると、実施形態に係るスクロール圧縮機1は、ハウジング2を有する。ハウジング2は、リアハウジング3及びフロントハウジング4を含み、これらが複数のボルト5によって締結されている。詳細には、フロントハウジング4は、スクロールユニット6をリア側に収容している。そして、リアハウジング3とフロントハウジング4とは、スクロールユニット6を構成する固定スクロール40のフランジ部47を挟持した状態で複数のボルト5によって締結されている。
【0013】
フロントハウジング4内には主軸7が水平に配置されている。主軸7は、フロントハウジング4に回転自在に支持されている。具体的には、主軸7は、スクロールユニット6側に位置する大径軸部8と、大径軸部8からフロント側に延びて先端がフロントハウジング4外に位置する小径軸部9とを有する。そして、大径軸部8が第1軸受11を介してフロントハウジング4に回転自在に支持され、小径軸部9が第2軸受12を介してフロントハウジング4に回転自在に支持されている。
【0014】
フロントハウジング4外に位置する主軸7の小径軸部9の先端には、電磁クラッチ31を内蔵した駆動プーリ33が取り付けられている。駆動プーリ33は、第3軸受35を介してフロントハウジング4の外周面に回転自在に支持されている。駆動プーリ33は、例えば車両のエンジンの動力が駆動ベルト等を介して伝達されることで回転する。電磁クラッチ31は、駆動プーリ33の回転を主軸7に伝達し、又は駆動プーリ33の回転の主軸7への伝達を遮断する。つまり、本実施形態においては、車両のエンジンの動作中に電磁クラッチ31がONされることにより、主軸7が駆動プーリ33と一体的に回転する。但し、これに限られるものではない。主軸7は、電動モータなどの他の駆動源からの動力によって回転してもよい。
【0015】
スクロールユニット6は、固定スクロール40と、固定スクロール40のフロント側に固定スクロール40に対向して設けられた可動スクロール50とを含む。
【0016】
固定スクロール40は、円板状の基板(以下「第1基板」という)41と、インボリュート曲線状の渦巻壁(以下「第1渦巻壁」という)43とを有する。第1基板41は、可動スクロール50側(ここではフロント側)の一面と、前記一面とは反対側(ここではリア側)の他面と、前記一面と前記他面との間の円筒状の側面とを有する。第1渦巻壁43は、第1基板41の前記一面に立設されている。
【0017】
固定スクロール40の第1基板41の前記側面における前記一面側(つまり、フロント側)の部位は、フロントハウジング4のリア側の開口に嵌合する嵌合部45を構成する。また、固定スクロール40の第1基板41の前記側面における前記他面側(つまり、リア側)には径方向外側に張り出したフランジ部47が形成されている。
【0018】
固定スクロール40は、Oリング等のシール材46が装着された嵌合部45がフロントハウジング4のリア側の前記開口に挿入嵌合され、その状態でフランジ部47がリアハウジング3とフロントハウジング4とに挟持されている。
【0019】
可動スクロール50は、固定スクロール40と同様、円板状の基板(以下「第2基板」という)51と、インボリュート曲線状の渦巻壁(以下「第2基板」という)53とを有する。第2基板51は、固定スクロール40側(ここではリア側)の一面と、前記一面とは反対側(ここではフロント側)の他面と、前記一面と前記他面との間の円筒状の側面とを有する。第2渦巻壁53は、第2基板51の前記一面に立設されている。
【0020】
可動スクロール50は、第2渦巻壁53が固定スクロール40の第1渦巻壁43にかみ合うように配置されている。また、固定スクロール40の第1渦巻壁43の先端部及び可動スクロール50の第2渦巻壁53の先端部のそれぞれにはチップシールが取り付けられている。そして、固定スクロール40の第1渦巻壁43の先端部が可動スクロール50の第2基板51の前記一面に摺動自在に接触し、可動スクロール50の第2渦巻壁53の先端部が固定スクロール40の第1基板41の前記一面に摺動自在に接触している。
【0021】
ここで、固定スクロール40の第1基板41の前記一面及び可動スクロール50の第2基板51の前記一面は、「表面」又は「渦巻形成面」と呼ばれてもよく、固定スクロール40の第1基板41の前記他面及び可動スクロール50の第2基板の前記他面は、「背面」と呼ばれてもよい。
【0022】
可動スクロール50の第2基板51の前記他面の中央部には円筒状(すなわち、中空)のボス部55が突設されている。可動スクロール50は、自転が阻止されており、ボス部55に連結された駆動部60によって駆動されることにより、固定スクロール40に対して旋回(公転)運動を行う。
【0023】
可動スクロール50が固定スクロール40に対して旋回(公転)すると、圧縮室13として機能する三日月形状の密閉空間(圧力室ともいう)が固定スクロール40の第1渦巻壁43と可動スクロール50の第2渦巻壁53との間に形成される。圧縮室(密閉空間)13は、スクロールユニット6の外周側に形成され、可動スクロール50の旋回(公転)運動に伴い、その容積を小さくしながらスクロールユニット6の中央側に向かって移動する。スクロールユニット6は、圧縮室13の形成時に周囲の冷媒を圧縮室13に取り込むことによって冷媒を圧縮する。
【0024】
駆動部60は、主軸7、クランクピン61、ニードル軸受63及び偏心ブッシュ65を含む。クランクピン61は、主軸7の大径軸部8のスクロールユニット6側の端面における主軸7の軸心から偏心した位置に固定されている。ニードル軸受63は、ボス部55の内部に装着されている。偏心ブッシュ65は、クランクピン61に回転自在に取り付けられていると共にボス部55の内部においてニードル軸受63によって回転自在に支持されている。偏心ブッシュ65にはカウンターウエイト67が取り付けられている。駆動部60は、主軸7の回転を可動スクロール50の旋回(公転)運動に変換するように構成されている。
【0025】
フロントハウジング4内には支持面14が設けられている。支持面14は、可動スクロール50の第2基板51の前記他面に対向すると共にボス部55を取り囲む円環状の面として形成されている。支持面14と可動スクロール50の第2基板51の前記他面との間には円環状のスラストプレート15が配置されている。スラストプレート15(及び支持面14)は、可動スクロール50のスラスト荷重を受けると共に、可動スクロール50を旋回(公転)可能に支持する。
【0026】
リアハウジング3には吐出室16が形成されている。吐出室16は、リアハウジング3のフロントハウジング4側の面に開口している。吐出室16の開口は、固定スクロール40の第1基板41によって閉塞されている。
【0027】
固定スクロール40の第1基板41の中央部には吐出孔17が形成されている。吐出孔17は、スクロールユニット6の中央側に移動してきた圧縮室13と吐出室16とを連通させるように構成されている。吐出室16内には吐出弁18が設けられている。吐出弁18は、例えばリード弁であり、圧縮室13の圧力と吐出室16の圧力との差に応じて吐出孔17の吐出室16側の開口を開閉するように構成され得る。
【0028】
また、リアハウジング3には吐出ポート19が形成されている。吐出ポート19は、吐出室16内に開口しており、圧縮された冷媒(すなわち、高圧の冷媒)を吐出室16から前記冷媒回路に吐出する。
【0029】
前記冷媒回路からの冷媒(すなわち、低圧の冷媒)を吸入する吸入ポート20は、フロントハウジング4の側面におけるスラストプレート15及び可動スクロール50の第2基板51に対応する部位に形成されている。具体的には、径方向外側(
図1における上方)から見たとき、吸入ポート20は、その開口部がスラストプレート15及び可動スクロール50の第2基板51を跨ぐようにフロントハウジング4の側面に形成されている。吸入ポート20の中心線(開口中心位置)C1は、スラストプレート15よりもスクロールユニット6側にオフセットされている。
【0030】
図2は、設置状態にあり且つリアハウジング3及びスクロールユニット6が取り外された状態のスクロール圧縮機1をリア側から見た図であり、
図3は、フロントハウジング4をリア側から見た斜視図である。
【0031】
図1~
図3を参照すると、フロントハウジング4内に設けられた支持面14には案内流路21及び流出流路23が形成されている。案内流路21は、吸入ポート20から吸入された冷媒を駆動部60側に案内する流路であり、流出流路23は、冷媒を駆動部60側からスクロールユニット6側に流出させる流路である。案内流路21は、支持面14における吸入ポート20のすぐ内側に位置する部位に形成されている。流出流路23は、支持面14における駆動部60を挟んで案内流路21の略反対側に位置する部位に形成されている。つまり、流出流路23は、駆動部60を挟んで案内流路21の略反対側に設けられている。また、スラストプレート15における流出流路23に対応する部位には、外周部から内側に円弧状に切り欠かれた切欠部15Aが形成されている。
【0032】
案内流路21は、支持面14の内周と外周との間を径方向に延びると共に駆動部60が配置された駆動部配置空間25と吸入ポート20とを連通する溝として形成されている。本実施形態において、案内流路21は、吸入ポート20側の第1入口部21Aの流路幅が駆動部配置空間25側(駆動部60側)の第1出口部21Bの流路幅よりも広く、且つ、第1入口部21Aの流路深さが第1出口部21Bの流路深さよりも浅くなるように形成されている。また、案内流路21の流路断面積は、第1入口部21Aから第1出口部21Bまで略一定である。
【0033】
流出流路23は、支持面14の内周と外周との間を径方向に延びると共にスクロールユニット6が配置されたスクロール配置空間27と駆動部配置空間25とを連通する溝として形成されている。駆動部配置空間25とスクロール配置空間27とはスラストプレート15を挟んで互いに反対側に位置している。本実施形態において、流出流路23は、流路幅が略一定であり、駆動部配置空間25側(駆動部60側)の第2入口部23Aからスクロール配置空間27側(スクロールユニット6側)の第2出口部23Bに向かって流路深さが徐々に浅くなるように形成されている。このため、流出流路23の流路断面積は、第2入口部23Aから第2出口部23Bに向かって徐々に小さくなっている。但し、これに限られるものではない。案内流路21と同様に、流出流路23の流路断面積が第2入口部23Aから第2出口部23Bまで略一定であってもよい。
【0034】
ここで、本実施形態において、流出流路23の流路断面積は、案内流路21の流路断面積よりも小さい。また、流出流路23は、スクロール圧縮機1の設置状態において、主軸7の軸線よりも上側に配置され、且つ、第2出口部23Bが第2入口部23Aよりも上側に位置している。
【0035】
ところで、上述のように、スラストプレート15は、可動スクロール50のスラスト荷重を受ける。但し、スラストプレート15に作用するスラスト荷重は、スラストプレート15上に一様に分布しているわけではなく、スラストプレート15上には相対的に大きなスラスト荷重が作用する場所が存在する。そこで、本実施形態において、案内流路21及び流出流路23は、スラストプレート15上のそのような場所、特にスラストプレート15において最大のスラスト荷重が作用する場所及びその近傍に対応する支持面14上の部位を避けて形成されている。
【0036】
可動スクロール50は、固定スクロール40に対する旋回(公転)運動によって吸入ポート20に対して接近及び離反する。また、本実施形態において、可動スクロール50の第2基板51の側面の所定部位、具体的には、可動スクロール50の第2基板51の側面の吸入ポート20に対応する部位は、可動スクロール50の他の部位よりも径方向外側に突出している。
【0037】
【0038】
図1及び
図4を参照すると、可動スクロール50の第2基板51の側面の前記所定部位は、可動スクロール50が吸入ポート20に接近したときに、吸入ポート20内を、スクロールユニット6側の第1スクロール側空間20Aと、駆動部60側の第1駆動部側空間20Bとに分ける仕切部として機能する。換言すれば、可動スクロール50の第2基板51には仕切部57が設けられている。仕切部57は、固定スクロール40に対する可動スクロール50の旋回(公転)運動によって可動スクロール50が吸入ポート20に接近したとき、吸入ポート20内をスクロールユニット6側の第1スクロール側空間20Aと駆動部60側の第1駆動部側空間20Bとに分けるように構成されている。第1スクロール側空間20Aは、スクロール配置空間27に連通しており、第1駆動部側空間20Bは、案内流路21を介して駆動部配置空間25に連通している。
【0039】
本実施形態において、可動スクロール50が吸入ポート20に接近したときに形成される吸入ポート20内の第1スクロール側空間20A及び第1駆動部側空間20Bに関し、第1駆動部側空間20Bの流路断面積は、第1スクロール側空間20Aの流路断面積よりも大きい。換言すれば、吸入ポート20における仕切部57より駆動部60側の流路断面積は、吸入ポート20における仕切部57よりスクロールユニット6側の流路断面積よりも大きい。好ましくは、第1駆動部側空間20Bの流路断面積は、第1スクロール側空間20Aの流路断面積の2倍以上の大きさを有する。
【0040】
図5は、可動スクロール50が吸入ポート20に接近していないとき、つまり、可動スクロール50から吸入ポート20から離れた位置にあるときのスクロール圧縮機1の概略断面図である。
【0041】
図5を参照すると、可動スクロール50が吸入ポート20の接近していないとき、吸入ポート20内は、スラストプレート15によって、スクロールユニット6側の第2スクロール側空間20Cと、駆動部60側の第2駆動部側空間20Dとに分けられる。第2スクロール側空間20Cは、第1スクロール側空間20Aと同様にスクロール配置空間27に連通しており、第2駆動部側空間20Dは、第1駆動部側空間20Bと同様に案内流路21を介して駆動部配置空間25に連通している。
【0042】
本実施形態において、可動スクロール50が吸入ポート20に接近していないときに形成される吸入ポート20内の第2スクロール側空間20C及び第2駆動部側空間20Dに関し、第2スクロール側空間20Cの流路断面積は、第2駆動部側空間20Dの流路断面積よりも大きい。換言すれば、吸入ポート20におけるスラストプレート15よりスクロールユニット6側の流路断面積は、吸入ポート20におけるスラストプレート15より駆動部60側の流路断面積よりも大きい。
【0043】
以上のような構成を有するスクロール圧縮機1では、主軸7の回転により、可動スクロール50が自転することなく固定スクロール40に対して旋回(公転)運動する。また、スクロール圧縮機1は、フロントハウジング4の側面に形成された吸入ポート20から潤滑油を含む冷媒を吸入する。すなわち、前記冷媒回路からの潤滑油を含む冷媒が吸入ポート20に流入する。
【0044】
上述のように、可動スクロール50が吸入ポート20に接近していないとき、吸入ポート20内は、スラストプレート15により、第2スクロール側空間20Cと第2駆動部側空間20Dとに分けられる(
図5参照)。そして、吸入ポート20内の第2スクロール側空間20Cの流路断面積は、吸入ポート20内の第2駆動部側空間の流路断面積よりも大きい。そのため、吸入ポート20に流入した潤滑油を含む冷媒は、スラストプレート15によってスクロールユニット6側と駆動部60側とに分流されて、スクロールユニット6側に向かう潤滑油を含む冷媒(ブロック矢印)が、駆動部60側に向かう潤滑油を含む冷媒(白抜きブロック矢印)よりも多くなる。
【0045】
他方、可動スクロール50が吸入ポート20に接近したとき、吸入ポート20内は、可動スクロール50の第2基板51に設けられた仕切部57により、第1スクロール側空間20Aと第1駆動部側空間20Bとに分けられる(
図1参照)。そして、吸入ポート20内の第1駆動部側空間20Bの流路断面積は、吸入ポート20内の第1スクロール側空間20Aの流路断面積よりも大きい。そのため、吸入ポート20に流入した潤滑油を含む冷媒は、仕切部57によってスクロールユニット6側と駆動部60側とに分流されて、駆動部60側に向かう潤滑油を含む冷媒(白抜きブロック矢印)が、スクロールユニット6側に向かう潤滑油を含む冷媒(ブロック矢印)よりも多くなる。
【0046】
スクロールユニット6側に向かう潤滑油を含む冷媒は、スクロール配置空間27に(直接)流入し、スクロールユニット6の外周側に形成される圧縮室13に取り込まれる。圧縮室13は、可動スクロール50の旋回(公転)運動に伴い、スクロールユニット6の中央側に向かって移動すると共にその容積が小さくなる。これにより、圧縮室13に取り込まれた潤滑油を含む冷媒が圧縮されると共に、スクロールユニット6の各摺動部に潤滑油が供給される。圧縮室13で圧縮された潤滑油を含む冷媒(高圧の冷媒)は、圧縮室13から吐出孔17、吐出室16及び吐出ポート19を通過してスクロール圧縮機1から吐出される。
【0047】
駆動部60側に向かう潤滑油を含む冷媒は、第1入口部21Aから案内流路21に流入し、案内流路21を流れ、第1出口部21Bから駆動部配置空間25に流入する。すなわち、潤滑油を含む冷媒が駆動部60側に案内される。これにより、駆動部60に潤滑油が供給され、主軸7、クランクピン61、ニードル軸受63、偏心ブッシュ65及びカウンターウエイト67などが潤滑される。
【0048】
駆動部配置空間25に流入した潤滑油を含む冷媒は、第2入口部23Aから流出流路23に流入し、流出流路23を流れ、第2出口部23Bからスクロール配置空間27に流出する。すなわち、潤滑油を含む冷媒が駆動部60側からスクロールユニット6側に流出する。スクロール配置空間27に流出した潤滑油を含む冷媒、換言すれば、吸入ポート20から駆動部配置空間25(駆動部60)を経由してスクロール配置空間27に流入した潤滑油を含む冷媒は、吸入ポート20からスクロール配置空間27に直接流入した上述の潤滑油を含む冷媒と同様、圧縮室13に取り込まれ、圧縮され、及びスクロール圧縮機1から吐出される。
【0049】
実施形態に係るスクロール圧縮機1によれば以下のような効果が得られる。
【0050】
スクロール圧縮機1は、ハウジング2におけるスラストプレート15及び可動スクロール50の第2基板51に対応する部位に形成された吸入ポート20と、ハウジング2内の支持面14に形成されて吸入ポート20から吸入された潤滑油を含む冷媒を駆動部60側に案内する案内流路21と、潤滑油を含む冷媒を駆動部60側からスクロールユニット6側に流出させる流出流路23とを有する。
【0051】
このようにスクロール圧縮機1が案内流路21及び流出流路23を有することにより、吸入ポート20から吸入された潤滑油を含む冷媒が案内流路21を円滑に且つ安定して流れることになり、潤滑油を含む冷媒が駆動部60に安定且つ十分に供給され得る。そのため、駆動部60の潤滑性能が改善され、スクロール圧縮機1の動作安定性及び信頼性が向上する。また、駆動部60の潤滑に利用された潤滑油を含む冷媒は、その後、流出流路23を流れてスクロールユニット6側に流出するので、潤滑油を含む冷媒が駆動部60側に長時間滞留してしまうことも抑制される。
【0052】
ここで、流出流路23は、駆動部60を挟んで案内流路21の略反対側に設けられている。そのため、駆動部60側に案内された潤滑油を含む冷媒が、駆動部60を潤滑せずに流出流路23に流出してしまうことが抑制される。また、流出流路23の流路断面積は、案内流路21の流路断面積よりも小さい。さらに、流出流路23は、スクロール圧縮機1の設置状態において、主軸7の軸線よりも上側に配置され、且つ、第2出口部23Bが第2入口部23Aよりも上側に位置している。そのため、駆動部60側に案内された潤滑油を含む冷媒が駆動部60の周囲の適度に留まることになり、駆動部60が安定して潤滑され得る。
【0053】
案内流路21は、円環状の支持面14の内周と外周との間を径方向に延びると共に駆動部配置空間25と吸入ポート20とを連通する溝として形成され、流出流路23は、円環状の支持面14の内周と外周との間を径方向に延びると共にスクロール配置空間27と駆動部配置空間25とを連通する溝として形成されている。そのため、所望の流路断面積を有すると共に潤滑油を含む冷媒が安定して流れ得る案内流路21及び流出流路23の形成が比較的容易に行える。
【0054】
ここで、案内流路21及び流出流路23は、スラストプレート15において最大のスラスト荷重が作用する場所及びその近傍に対応する支持面14上の部位を避けて形成されている。そのため、案内流路21及び流出流路23に起因するスラストプレート15の局所的な変形が抑制される。
【0055】
可動スクロール50の第2基板51には仕切部57が設けられ、仕切部57は、固定スクロール40に対する可動スクロール50の旋回(公転)運動によって可動スクロール50が吸入ポート20に接近したとき、吸入ポート20内をスクロールユニット6側の第1スクロール側空間20Aと駆動部60側の第1駆動部側空間20Bとに分けるように構成されている。第1スクロール側空間20Aは、スクロール配置空間27に連通し、第1駆動部側空間20Bは、案内流路21を介して駆動部配置空間25に連通している。
【0056】
このような構成によれば、可動スクロール50が吸入ポート20に接近したときにおいても吸入ポート20が駆動部配置空間25とスクロール配置空間27との両方に連通する状態が維持される。そのため、潤滑油を含む冷媒の駆動部60への供給が確保されつつ、冷媒吸入時の圧力損失、特に高回転時の圧力損失が抑制され得る。また、可動スクロール50の第2基板51の側面における仕切部57の位置及び/又は厚さなどに応じて、スクロールユニット6側に向かう潤滑油を含む冷媒量と、駆動部60側に向かう潤滑油を含む冷媒量との割合が調整され得る。
【0057】
ここで、可動スクロール50が吸入ポート20に接近して吸入ポート20内が仕切部57によって仕切られたとき、吸入ポート20内の(駆動部配置空間25に連通する)第1駆動部側空間20Bの流路断面積は、吸入ポート20内の(スクロール配置空間27に連通する)第1スクロール側空間20Aの流路断面積よりも大きい。
【0058】
このような構成によれば、可動スクロール50が吸入ポート20に接近したときに駆動部60側に向かう潤滑油を含む冷媒が多くなる。そのため、スクロールユニット6側に向かう冷媒量、つまり、スクロールユニット6で圧縮される冷媒が十分に確保されつつ、駆動部60に十分な量の潤滑油が供給され得る。
【0059】
可動スクロール50が吸入ポート20に接近していないとき、吸入ポート20内は、スラストプレート15により、スクロールユニット6側の第2スクロール側空間20Cと駆動部60側の第2駆動部側空間20Dとに分けられる。第2スクロール側空間20Cは、スクロール配置空間27に連通し、第2駆動部側空間20Dは、案内流路21を介して駆動部配置空間25に連通している。
【0060】
このような構成によれば、可動スクロール50が吸入ポート20に接近したときだけでなく、可動スクロール50が吸入ポート20に接近していないときにも潤滑油を含む冷媒が駆動部60に供給され得る。そのため、駆動部60のより良好な潤滑性能が得られる。
【0061】
ここで、可動スクロール50が吸入ポート20に接近していないとき、吸入ポート20内の(スクロール配置空間27に連通する)第2スクロール側空間20Cの流路断面積は、吸入ポート20内の(駆動部配置空間25に連通する)第2駆動部側空間20Dの流路断面積よりも大きい。そのため、可動スクロール50が吸入ポート20に接近したときを除くほとんどの場合において、より多くの潤滑油を含む冷媒がスクロールユニット6側に安定して供給され得る。
【0062】
なお、上述の実施形態においては、可動スクロール50の第2基板51に仕切部57が設けられ、可動スクロール50が吸入ポート20に接近したとき、仕切部57によって吸入ポート20内がスクロール配置空間27に連通する第1スクロール側空間20Aと、駆動部配置空間25に連通する第1駆動部側空間20Bとに分けられるようになっている。しかし、これに限られない。図示は省略するが、例えば、可動スクロール50は、吸入ポート20に接近したとき、主に第2基板51が吸入ポート20の一部を実質的に閉塞して吸入ポート20とスクロール配置空間27との連通を実質的に遮断するように構成されてもよい。この場合、可動スクロール50が吸入ポート20に接近したときはスクロールユニット6側に潤滑油を含む冷媒が供給されなくなるかほとんど供給されなくなるが、駆動部60側には可動スクロール50の位置にかかわらず潤滑油を含む冷媒が供給され得る。このようにしても、上述の実施形態と同様、潤滑油を含む冷媒が駆動部60に安定且つ十分に供給され得る。
【0063】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、上述の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらなる変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0064】
1…スクロール圧縮機(スクロール流体機械)、2…ハウジング、6…スクロールユニット、7…主軸、13…圧縮室、14…支持面、15…スラストプレート、16…吐出室、17…吐出孔、18…吐出弁、19…吐出ポート、20…吸入ポート、20A…第1スクロール側空間、20B…第1駆動部側空間、20C…第2スクロール側空間、20D…第2駆動部側空間、21…案内流路、23…流出流路、25…駆動部配置空間、27…スクロール配置空間、40…固定スクロール、41…第1基板、43…第1渦巻壁、50…可動スクロール、51…第2基板、53…第2渦巻壁、60…駆動部、61…クランクピン、63…ニードル軸受、65…偏心ブッシュ、67…カウンターウエイト