(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006228
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】タッチスイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 36/00 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H01H36/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106928
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 遼平
(72)【発明者】
【氏名】海老原 由治
(72)【発明者】
【氏名】矢野 樹史
(72)【発明者】
【氏名】下地 裕也
【テーマコード(参考)】
5G046
【Fターム(参考)】
5G046AA03
5G046AB02
5G046AC23
5G046AD02
5G046AD22
(57)【要約】
【課題】1つのスイッチ領域における電極パッドの数をあまり増やすことなく、誤検知が抑制できるようにする。
【解決手段】複数のスイッチ領域121の各々には、静電容量変化を検出する第1電極パッド102および第2電極パッド103を備え、第2電極パッド103は、第1電極パッド102とは絶縁分離された状態で、スイッチ領域121の範囲内で第1電極パッド102の周囲を囲って形成されている。例えば、第1電極パッド102は、平面視円形に形成し、第2電極パッド103は、平面視円環状に形成することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチ領域を備える静電容量式のタッチスイッチであって、
前記複数のスイッチ領域の各々に形成された静電容量変化を検出する第1電極パッドおよび第2電極パッドと、
前記第1電極パッドおよび前記第2電極パッドを覆って形成された絶縁層と
を備え、
前記第2電極パッドは、前記第1電極パッドとは絶縁分離された状態で、前記スイッチ領域の範囲内で前記第1電極パッドの周囲を囲って形成されている
ことを特徴とするタッチスイッチ。
【請求項2】
請求項1記載のタッチスイッチにおいて、
前記第1電極パッドと前記第2電極パッドとの間隔は、周方向に均一とされている
ことを特徴とするタッチスイッチ。
【請求項3】
請求項1記載のタッチスイッチにおいて、
前記第1電極パッドおよび前記第2電極パッドは、平面視で幾何中心に対して回転対称な形状とされ、
前記第1電極パッドと前記第2電極パッドとは、平面視で幾何中心が同一とされている
ことを特徴とするタッチスイッチ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のタッチスイッチにおいて、
前記第1電極パッドは、平面視円形に形成され、
前記第2電極パッドは、平面視円環状に形成されている
ことを特徴とするタッチスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式のタッチスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量のタッチスイッチは、プリント基板上に配置された電極パッドと、オーバーレイと呼ばれるガラスなどの絶縁体の層(絶縁層)により構成される。絶縁層の上に接触した導体と電極パッドとの間に生じた静電容量を計測し、計測値がしきい値を超えると接触を検出する。この静電容量の値は、絶縁層の誘電率と電極パッドの面積に比例し、電極パッドと導体との距離に反比例する。
【0003】
静電容量のタッチスイッチの問題として、隣り合う電極パッドの間隔が近い場合に、複数のスイッチが反応する誤検知が挙げられる。誤検知を防ぐ手段として、複数の電極パッドで1つのスイッチ領域を構成し、スイッチ領域においてすべての電極パッドが反応した時のみスイッチが接触を検知する方法がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、電極パッドを2分割する場合、指がスイッチ領域の中心から分割方向にずれた場合は誤検出防止の効果を発揮する一方、指が分割する方向に対して交差する方向にずれた場合には、隣接するスイッチ領域の電極パッドと指の距離が近いため、誤検出防止の効果が薄くなる。指のずれる方向によって効果に差が生じることを防ぐ方法として、1つのスイッチ領域における電極パッドの数を、3つ以上に増やす方法が挙げられる。しかし、静電容量を計測する検出回路には、接続可能な電極パッドの数に限りがあり、スイッチ領域の数が多い場合に、必要な数の電極パッドを配置できない場合がある。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、1つのスイッチ領域における電極パッドの数をあまり増やすことなく、誤検知が抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るタッチスイッチは、複数のスイッチ領域を備える静電容量式のタッチスイッチであり、複数のスイッチ領域の各々に形成された静電容量変化を検出する第1電極パッドおよび第2電極パッドと、第1電極パッドおよび第2電極パッドを覆って形成された絶縁層とを備え、第2電極パッドは、第1電極パッドとは絶縁分離された状態で、スイッチ領域の範囲内で第1電極パッドの周囲を囲って形成されている。
【0008】
上記タッチスイッチの一構成例において、第1電極パッドと第2電極パッドとの間隔は、周方向に均一とされている。
【0009】
上記タッチスイッチの一構成例において、第1電極パッドおよび第2電極パッドは、平面視で幾何中心に対して回転対称な形状とされ、第1電極パッドと第2電極パッドとは、平面視で幾何中心が同一とされている。
【0010】
上記タッチスイッチの一構成例において、第1電極パッドは、平面視円形に形成され、第2電極パッドは、平面視円環状に形成されている。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、スイッチ領域に第1電極パッドおよび第1電極パッドの周囲を囲って形成された第2電極パッドを設けたので、1つのスイッチ領域における電極パッドの数をあまり増やすことなく、誤検知が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るタッチスイッチの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係るタッチスイッチの一部構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係るタッチスイッチについて
図1、
図2を参照して説明する。このタッチスイッチは、複数のスイッチ領域121を備える静電容量式のタッチスイッチである。
【0014】
複数のスイッチ領域121の各々には、静電容量変化を検出する第1電極パッド102および第2電極パッド103を備える。第1電極パッド102および第2電極パッド103は、基板101の上に形成されている。第2電極パッド103は、第1電極パッド102とは絶縁分離された状態で、スイッチ領域121の範囲内で第1電極パッド102の周囲を囲って形成されている。第1電極パッド102および第2電極パッド103は、例えば、アルミニウムなどの金属から構成することができる。
【0015】
例えば、第1電極パッド102と第2電極パッド103との間隔は、平面視で周方向に均一な状態とすることができる。また、第1電極パッド102および第2電極パッド103は、平面視で幾何中心に対して回転対称な形状とし、第1電極パッド102と第2電極パッド103とは、平面視で幾何中心が同一とすることができる。この例では、第1電極パッド102は、平面視円形に形成し、第2電極パッド103は、平面視円環状に形成している。
【0016】
また、このタッチスイッチは、第1電極パッド102および第2電極パッド103を覆って形成された絶縁層104を備える。絶縁層104は、例えば、ガラスから構成することができる。また、絶縁層104は、プラスチックから構成することができる。また、絶縁層104は、板状に限らず、フィルム状とすることができる。
【0017】
また、このタッチスイッチは、検出回路105を備える。検出回路105は、基板101に形成された配線層(不図示)を介して、各スイッチ領域121の第1電極パッド102、第2電極パッド103に接続している。検出回路105は、各スイッチ領域121において、第1電極パッド102および第2電極パッド103の少なくとも一方に対応する絶縁層104に、導電物質が接触した場合にスイッチ領域121に手指が接触したと判定する。例えば、検出回路105は、第1電極パッド102および第2電極パッド103の対応する箇所の各々に対し、導電物質が接触したか否かを判定し、所定の判定時間内において導電物質が接触したと判定した場合に、スイッチ領域121に手指が接触したと判定する。
【0018】
検出回路105は、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)201と主記憶装置202と外部記憶装置203とを備えたコンピュータ機器とすることができる。主記憶装置202に展開されたプログラムによりCPU201が動作する(プログラムを実行する)ことで、上述した検出回路105の機能が実現されるようにすることができる。
【0019】
上述したように、第1電極パッド102に加え、第1電極パッド102の周囲を囲う第2電極パッド103を設けたので、2つの電極パッドで、1つのスイッチ領域121における誤検知が抑制できる。
【0020】
以下、スイッチ領域の平面視の直径が10mmの場合について、1つの電極パッドでスイッチを構成した場合と、実施の形態の場合とで、静電容量の計測値をシミュレーションした結果について表1,表2に示す。各表には、検出回路105における処理に合わせて、指がスイッチ領域の中心に触れた時の計測値が100となるように感度を調整した計測値を示している。目的のスイッチ領域をスイッチ1とし、スイッチ1に隣り合うスイッチ領域をスイッチ2とする。
【0021】
スイッチ1の中心からの指のずれと、各スイッチ領域のON/OFFの関係が以下を満たすように、計測値に対するON/OFF判定のしきい値を設定することを考える(条件)。第1に、ずれ量が4mm以下であればスイッチ1のみが反応する。第2に、ずれ量が4.5mm~6mmの範囲では、スイッチ1およびスイッチ2の両方が反応しない、または指の近い方のスイッチが反応する。第3に、ずれ量が、6.5mm以上であればスイッチ2のみが反応する。
【0022】
シミュレーション結果を以下の表1-1,表1-2,表1-3,表2-1,表2-2,表2-3に示す。表1-1,表1-2,表1-3は、各々の幾何中心が一致する円形の第1電極パッドと円環状の第2電極パッドとを用いた場合を示している。また、表2-1,表2-2,表2-3は、1つの円形電極パッドを用いた場合を示している。
【0023】
また、表1-1,表2-1には、ずれ量が4μm以下の条件の計測値を示している。表1-2,表2-2には、ずれ量が4.5μm~6mmの範囲の条件の計測値を示している。表1-3,表2-3には、ずれ量が、6.5mm以上の条件の計測値を示している。
例えば、表2-1の結果より、ずれ量が4μm以下の条件では、しきい値を36とすることで、スイッチ1では指の接触が検出され、スイッチ2では指の接触が検出されない状態にできることがわかる。
【0024】
【0025】
【0026】
表2-1、表2-2、表2-3に示すように、電極パッドが1つの場合には、しきい値を47~65の範囲で設定することで、上記の条件を満たすことができる。また、2つの電極パッドを用いる実施の形態によれば、表1-1、表1-2、表1-3に示すように、しきい値を31~52の範囲で設定すれば条件を満たすことができる。これらの結果から明らかなように、1つの電極パッドを用いる場合に比較して、実施の形態ではより広い範囲でしきい値の設定が可能となった。また、各スイッチ領域におけるON/OFFの判定は、各スイッチ領域を構成する各電極パッドのON/OFF状態のAND演算により判定可能で簡潔な処理を実現できている。
【0027】
以上に説明したように、本発明によれば、スイッチ領域に第1電極パッドおよび第1電極パッドの周囲を囲って形成された第2電極パッドを設けたので、1つのスイッチ領域における電極パッドの数をあまり増やすことなく、誤検知が抑制できるようになる。
【0028】
本発明によれば、隣り合うスイッチ領域における電極パッドの計測値との比較をする必要なく、目的のスイッチ領域における検知状態が判定可能である。また、本発明によれば、接触した指がスイッチ領域の中心からずれていても、このスイッチ領域で指の接触が検知できる。また、スイッチ領域における検知状態とするためのしきい値の設定幅を、より広くすることができる。また、2つの電極パッドで、本発明が構成でき、1つのスイッチ領域に多数の電極パッドを用いる必要がない。
【0029】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0030】
101…基板、102…第1電極パッド、103…第2電極パッド、104…絶縁層、105…検出回路、121…スイッチ領域。