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  • 特開-鮮度保持用包装容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062284
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】鮮度保持用包装容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/50 20060101AFI20240430BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240430BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240430BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B65D85/50 100
B32B27/00 H
B32B27/18 C
B32B27/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170168
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】永坂 彩芽
(72)【発明者】
【氏名】玉利 昇
(72)【発明者】
【氏名】橋田 智之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 考道
【テーマコード(参考)】
3E035
4F100
【Fターム(参考)】
3E035AA03
3E035AA04
3E035AA05
3E035AA11
3E035AA20
3E035BA01
3E035BA02
3E035BB10
3E035BC02
3E035BD01
3E035CA01
4F100AA20
4F100AK41B
4F100AK42
4F100AK42A
4F100AR00B
4F100AR00D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA10
4F100CA10B
4F100DE01
4F100EJ38
4F100GB16
4F100GB16C
4F100HB31D
4F100JA05
4F100JD03
4F100JD03A
4F100JD03B
4F100JD04
4F100JD04A
4F100JD04B
4F100JK02
4F100JK02A
4F100JK02B
4F100JK06
4F100JK06B
4F100JK06C
4F100JK08
4F100JK08A
4F100JK08B
4F100JL12
4F100JL12B
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】 青果物等の鮮度を保持するのに特に好適であり、防曇性、易開封性が良好である包装容器を提供することを目的とする。
【解決手段】 ヒートシール性蓋材と、ポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とする容器とを含む食品の鮮度保持用包装容器であって、前記ヒートシール性蓋材は、ポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とする基材層と、防曇剤を含むヒートシール層とを含む2層以上で構成され、前記ヒートシール性蓋材と前記容器とのヒートシール強度1.0N/15mm以上、15N/15mm以下であり、前記ヒートシール性蓋材の、温度23℃、相対湿度65%RH環境下で測定した酸素透過度が200[cc/(m2・d・atm)]以下であり、前記ヒートシール性蓋材の、温度40℃、相対湿度90%RH環境下での水蒸気透過度が100[g/(m2・d)以下である、鮮度保持用包装容器。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール性蓋材と、ポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とする容器とを含む食品の鮮度保持用包装容器であって、
前記ヒートシール性蓋材は、ポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とする基材層と、防曇剤を含むヒートシール層とを含む2層以上で構成され、
前記ヒートシール性蓋材と前記容器とのヒートシール強度1.0N/15mm以上、15N/15mm以下であり、
前記ヒートシール性蓋材の、温度23℃、相対湿度65%RH環境下で測定した酸素透過度が200cc/(m・d・atm)以下であり、
前記ヒートシール性蓋材の、温度40℃、相対湿度90%RH環境下での水蒸気透過度が100g/(m・d)以下である、鮮度保持用包装容器。
【請求項2】
前記ヒートシール性蓋材のヒートシール層が、ポリエステル樹脂及び防曇剤を含み、前記ヒートシール層におけるポリエステル樹脂と防曇剤の質量比が、99:1~80:20である、請求項1記載の鮮度保持用包装容器。
【請求項3】
前記ヒートシール性蓋材の長手方向または幅方向のいずれかの破断強度が180MPa以上、260MPa以下である、請求項1記載の鮮度保持用包装容器。
【請求項4】
前記ヒートシール性蓋材の長手方向または幅方向のいずれかの破断伸度が80%以上、170%以下である、請求項1記載の鮮度保持用包装容器。
【請求項5】
前記ヒートシール性蓋材がヒートシール層、基材層及び印刷層をこの順で有する、請求項1記載の鮮度保持用包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表される芳香族ポリエステルは、食品容器や飲料用の容器として幅広く使用されている。例えば、成形容器に嵌合蓋をする形態の容器では、優れた透明性や密閉性を利用して、汁物やサラダ類、生野菜などの包装に用いられている。とりわけ、サラダ類や生野菜などの食品を包装する際は、野菜等から出る水分によって容器包装内が曇ることがあるため、防曇性が求められる。
【0003】
特許文献1には、容器本体と防曇剤が塗布された蓋体をそれぞれ真空圧空成形により熱成形し、容器本体と蓋体をヒートシールにより接着させて製造した包装用容器が開示されている。
【0004】
近年、易開封化、蓋材の共通化(モノマテリアル)や厚み低減によるゴミ削減を目的に蓋材をトップシール化する傾向がある。トップシールによる蓋材は、嵌合蓋の構成と同様に、透明性、密閉性、防曇性に加え、易開封性等が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-14295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、青果物等の鮮度を保持するのに特に好適であり、シェルフライフ(消費期限)を延長できるだけでなく、商品価値(見た目)を高めることができ、防曇性、易開封性が良好である包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討した結果、ポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とする基材層と防曇剤を含むヒートシール層とを含むヒートシール性蓋材と、ポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とする容器とで構成される食品用包装容器が青果物等の鮮度保持に優れた効果を有することを見出し、下記に代表される発明を完成するに至った。
【0008】
(項1)
ヒートシール性蓋材と、ポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とする容器とを含む食品の鮮度保持用包装容器であって、
前記ヒートシール性蓋材は、ポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とする基材層と、防曇剤を含むヒートシール層とを含む2層以上で構成され、
前記ヒートシール性蓋材と前記容器とのヒートシール強度1.0N/15mm以上、15N/15mm以下であり、
前記ヒートシール性蓋材の、温度23℃、相対湿度65%RH環境下で測定した酸素透過度が200cc/(m2・d・atm)以下であり、
前記ヒートシール性蓋材の、温度40℃、相対湿度90%RH環境下での水蒸気透過度が100g/(m2・d)以下である、鮮度保持用包装容器。
(項2)
前記ヒートシール性蓋材のヒートシール層が、ポリエステル樹脂及び防曇剤を含み、前記ヒートシール層におけるポリエステル樹脂と防曇剤の質量比が、99:1~80:20である、項1に記載の鮮度保持用包装容器。
(項3)
前記ヒートシール性蓋材の長手方向または幅方向のいずれかの破断強度が180MPa以上、260MPa以下である、項1又は項2に記載の鮮度保持用包装容器。
(項4)
前記ヒートシール性蓋材の長手方向または幅方向のいずれかの破断伸度が80%以上、170%以下である、項1~項3のいずれかに記載の鮮度保持用包装容器。
(項5)
前記ヒートシール性蓋材がヒートシール層、基材層及び印刷層をこの順で有する、項1~項4のいずれかに記載の鮮度保持用包装容器。
【発明の効果】
【0009】
本発明の包装容器のヒートシール性蓋材は酸素透過度が低く、水蒸気透過度を所定の範囲としており、ヒートシール性蓋材の防曇性ヒートシール層に防曇剤が含有されており、容器本体とヒートシール性蓋材のヒートシール強度を1N/mm以上15N/mm以下とすることで、青果物等の内容物のシェルフライフ延長と商品価値向上に貢献することができ、防曇性、易開封性が良好である包装容器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例に用いたA-PET容器の形状の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
(ヒートシール性蓋材)
本発明のヒートシール性蓋材中の基材層は、主にポリエチレンテレフタレート系樹脂を構成成分とし、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を使用し、ジオール成分としてエチレングリコールを用いるものである。ここで、「主たる構成成分とする」とは、全構成成分量を100モル%としたとき、50モル%以上含有することをいい、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。
【0013】
本発明の目的を阻害しない範囲であれば、他のジカルボン酸成分およびジオール成分を共重合させても良い。他のジカルボン酸成分およびジオール成分の共重合量の上限は、全ジカルボン酸成分あるいはジオール成分に対して、好ましくはそれぞれ15モル%以下であり、より好ましくは10モル%以下であり、特に好ましくは5モル%以下である。ジカルボン酸成分およびジオール成分の共重合量を15モル%以下とすることで、厚みムラが良好となり、ロール形態で保管したときの防曇剤の裏移りによる防曇性低下を抑制することができる。
【0014】
上記の他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサジカルボン酸、2,5-ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸等の脂環族ジカルボン酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0015】
上記の他のジオール成分としては、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2―メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,10-デカンジオール、ジメチロールトリシクロデカン、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールC、ビスフェノールZ、ビスフェノールAP、4,4’-ビフェノールのエチレンオキサイド付加体またはプロピレンオキサイド付加体、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール等が挙げられる。
【0016】
本発明のヒートシール性蓋材中の基材層は、厚みムラを低減させる目的で、二軸延伸されていることが好ましい。二軸延伸は従来公知の方法で行うことができる。例えば、冷却ドラム上に押し出された未延伸樹脂シートを、続いてロール加熱、赤外線加熱などで加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムとする。この延伸は2個以上のロール周速差を利用して行うのが好ましい。縦延伸は通常、50~120℃の温度範囲で行われる。また、縦延伸の倍率は、3.0倍~4.0倍とするのが好ましい。延伸倍率を3.0倍以上とすることで得られる二軸配向フィルムの厚みムラが良好となり、ロール形態で保管したときの防曇剤の裏移りによる防曇性低下を抑制することができるばかりだけではなく、力学強度も十分強固なものとなる。
【0017】
縦延伸されたフィルムは、続いて横延伸、熱固定、熱弛緩の各処理工程を順次施して二軸配向フィルムとなる。横延伸は通常、60~130℃の温度範囲で行われる。横延伸の倍率は、3.0倍~5.0倍とするのが好ましい。延伸倍率を3.0倍以上とすることで得られる二軸配向フィルムの厚みムラが良好となり、ロール形態で保管したときの防曇剤の裏移りによる防曇性低下を抑制することができるばかりだけではなく、力学強度も十分強固なものとなる。また、延伸倍率を5.0倍以下とすることで製膜中の破断を抑えることができる。横延伸のあと、続いて熱固定処理を行うが、好ましい温度範囲は170℃~240℃である。また熱固定時間は1~60秒が好ましい。さらに熱収縮率の低減が必要な用途については、必要に応じて弛緩処理を行っても良い。
【0018】
本発明のヒートシール性蓋材中の基材層は、厚みの下限は好ましくは5μmであり、より好ましくは10μmであり、特に好ましくは15μmである。5μm以上とすることで衝撃強度および引裂強さを維持することができる。基材層の厚みの上限は好ましくは100μmであり、より好ましくは80μmであり、特に好ましくは50μmである。100μm以下とすることで、蓋材として好適に用いることができる。
【0019】
本発明のヒートシール性蓋材中の基材層の厚みムラの上限は、好ましくは15%であり、より好ましくは10%であり、特に好ましくは5%である。15%以下とすることで、ロール形態で保管したとき、厚みムラが悪い箇所に局所的に巻取り応力がかかることが防ぐことができ、結果的に非防曇面への防曇剤の裏移りによる防曇性低下を抑制することができる。
【0020】
本発明のヒートシール性蓋材中の基材層には、印刷層を積層しても良い。印刷層を形成する印刷インクとしては、水性および溶媒系の樹脂含有印刷インクが好ましく使用できる。ここで印刷インクに使用される樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂およびこれらの混合物が挙げられる。印刷インクには帯電防止剤、光遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、消泡剤、架橋剤、耐ブロッキング剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を含有させてもよい。
【0021】
印刷層を設けるための印刷方法としては、特に限定されず、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷方法が使用できる。印刷後の溶媒の乾燥には、熱風乾燥、熱ロール乾燥、紫外線乾燥等の公知の乾燥方法が使用できる。
【0022】
本発明のヒートシール性蓋材中の基材層には、本発明の目的を損なわない限りにおいて、無機薄膜層や金属層などのガスバリア層を設けることができる。
【0023】
ガスバリア層として無機薄膜層を用いる場合の無機薄膜層としては、金属または無機酸化物からなる薄膜である。無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、ガスバリア性の観点からアルミニウム、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合物等の無機酸化物が好ましく挙げられる。特に薄膜層の柔軟性と緻密性を両立できる点からは、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの複合酸化物が好ましい。
【0024】
この複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は金属分の質量比でAlが20~70%の範囲であることが好ましい。一方、70%以下であると無機薄膜層を柔らかくすることができ、印刷やラミネートといった二次加工の際に薄膜が破壊されてガスバリア性が低下することを抑制することができる。なお、ここでいう酸化ケイ素とはSiOやSiO等の各種ケイ素酸化物またはそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやAl等の各種アルミニウム酸化物またはそれらの混合物である。
【0025】
無機薄膜層の膜厚は、通常1~100nm、好ましくは5~50nmである。無機薄膜層の膜厚が1nm以下であると、より満足のいくガスバリア性が得られやすくなる。一方、100nm以下であると耐屈曲性や製造コストの点で有利となる。
【0026】
無機薄膜層を形成する方法としては、特に制限はなく例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD法)、あるいは化学蒸着法(CVD法)等、公知の蒸着法を適宜採用すればよい。以下、無機薄膜層を形成する典型的な方法を、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜を例に説明する。例えば、真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiOとAlの混合物、あるいはSiOとAlの混合物等が好ましく用いられる。これら蒸着原料としては通常粒子が用いられるが、その際各粒子の大きさは蒸着時の圧力が変化しない程度の大きさであることが望ましく、好ましい粒子径は1~5mmである。加熱には抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱などの方式を採用することができる。また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。さらに、被蒸着体(蒸着に供する積層フィルム)にバイアスを印加したり、被蒸着体を加熱もしくは冷却するなど、成膜条件も任意に変更することができる。このような蒸着材料、反応ガス、被蒸着体のバイアス、加熱・冷却等は、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。さらに、上記無機薄膜層上に印刷層を積層してもよい。
【0027】
(防曇剤を含むヒートシール層)
本発明のヒートシール性蓋材中の防曇剤を含むヒートシール層は2価以上の多価カルボン酸化合物からなるカルボン酸成分と、2価以上の多価アルコール化合物からなるアルコール成分とが重縮合して得られる化学構造のポリエステル系樹脂を構成成分とすることが好ましい。防曇剤を含むヒートシール層は蓋材として用いた時に防曇性が発現する必要があるので、ヒートシール性蓋材の最外層に位置することが望ましい。
【0028】
多価カルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸または脂肪族カルボン酸が好ましく、特に芳香族ジカルボン酸がより好ましい。ジカルボン酸成分の共重合量の下限は、カルボン酸成分の全量に対して、好ましくは40モル%以上であり、より好ましくは45モル%以上であり、特に好ましくは50モル%以上である。40モル%以上とすることで、ポリエステル容器とのヒートシール強度が十分に得られる。ジカルボン酸成分の共重合量の上限は、カルボン酸成分の全量に対して、好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは75モル%以上であり、特に好ましくは70モル%以上である。80モル%以下とすることで、ポリエステル容器とのヒートシール強度が強すぎて、易開封性が不良となることを防ぐことができる。
【0029】
ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナルタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、p-オキシ安息香酸、p-(ヒドロキシエトキシ)安息香酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0030】
多価アルコール成分としては脂肪族ジオールが好ましい。ジオール成分の共重合量の下限は、好ましくは70モル%であり、より好ましくは75モル%であり、特に好ましくは80モル%である。70モル%以上とすることでポリエステル容器とのヒートシール強度が十分に得られる。
【0031】
ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられるが、これに限定されない。
【0032】
本発明のヒートシール性蓋材中の防曇剤を含むヒートシール層は、少なくとも2種の異なるポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)を含むものであってもよい。特に、ガラス転移温度の異なる少なくとも2種のポリエステル樹脂を用いることにより、ヒートシール層中での凝集破壊を選択的に生じさせて、広い温度範囲で易開封性を発現することができる。
【0033】
ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度は、0℃~40℃の範囲にあることが好ましく、より好ましくは5℃~35℃の範囲であり、特に好ましくは10℃~30℃の範囲である。上記範囲内であることにより、内容保持に必要なヒートシール強度を有しつつ、易開封性が得られる。
【0034】
ポリエステル樹脂(A)の還元粘度(ηsp/c)の下限は好ましくは0.2dl/gであり、より好ましくは0.4dl/gであり、特に好ましくは0.6dl/gである。0.2dl/g以上とすることで樹脂凝集力が発現し、ヒートシール強度が発現する
【0035】
ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量(Mn)の下限は好ましくは5000であり、より好ましくは10000であり、特に好ましくは15000である。5000以上とすることで樹脂凝集力が発現し、ヒートシール強度が発現する。
【0036】
ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度は、41℃~80℃の範囲にあることが好ましく、より好ましくは46℃~75℃の範囲であり、特に好ましくは51℃~60℃の範囲である。上記範囲内であることにより、内容保持に必要なヒートシール強度を有しつつ、易開封性が得られる。
【0037】
ポリエステル樹脂(B)の還元粘度(ηsp/c)の下限は好ましくは0.1dl/gであり、より好ましくは0.2dl/gであり、特に好ましくは0.3dl/gである。0.1dl/g以上とすることで樹脂凝集力が発現し、ヒートシール強度が発現する。
【0038】
ポリエステル樹脂(B)の数平均分子量(Mn)の下限は好ましくは2000であり、より好ましくは5000であり、特に好ましくは10000である。2000以上とすることで樹脂凝集力が発現し、ヒートシール強度が発現する。
【0039】
ポリエステル樹脂(B)に対するポリエステル樹脂(A)の質量比の下限は、好ましくはポリエステル樹脂(A):ポリエステル樹脂(B)=50:50質量%であり、より好ましくは45:55質量%であり、特に好ましくは60:40質量%である。50:50質量%以上とすることで、防曇層を脆くすることができ、広い温度範囲で請求項に記載のヒートシール強度の範囲にすることができ、易開封性が得られる。
ポリエステル樹脂(B)に対するポリエステル樹脂(A)の質量比の上限は、好ましくはポリエステル樹脂(A):ポリエステル樹脂(B)=90:10質量%であり、より好ましくは85:15質量%であり、特に好ましくは80:20質量%である。90:10質量%以下とすることで、シール表面のシール強度を高めることができ、広い温度範囲で請求項に記載のヒートシール強度の範囲にすることができ、易開封性が得られる。
【0040】
本発明のヒートシール性蓋材の防曇剤を含むヒートシール層は防曇剤を含むことが好ましい。防曇剤としては、防曇性を付与するものであれば、とくに限定されるものではなく、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、または両性界面活性剤等を使用することができる。なかでもノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。ここで防曇性とは、包装容器に水を入れて蓋材でシールしたときに、蒸散する水分で包装材内表面の曇りを防止する性能をいう。特に野菜やフルーツなどの生鮮食品の包装容器の蓋材は、水分の蒸散により内容物が見えにくくなり、商品価値が低下することがあるため、優れた防曇性能が必要となることがある。
【0041】
例えば、アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフエート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート塩が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体等のポリオキシエチレン構造を有する化合物やソルビタン誘導体が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、トリアルキルアミン塩、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルベンザルコニウムが挙げられる。両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。
【0042】
ノニオン性界面活性剤としては、具体的には、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンジベヘネート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンジラウレート等のソルビタン系界面活性剤、グリセリンモノラウレート、グリセリンジラウレート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンジパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンジラウレート等のグリセリン系界面活性剤、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノパルミネート等のポリエチレングリコール系界面活性剤、トリメチロールプロパンモノステアレート等のトリメチロールプロパン系界面活性剤、ラウリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミド等のジエタノールアルキルアミン系およびジエタノールアルキルアミド系界面活性剤、ペンタエリスリトールモノパルミテート等のペンタエリスリトール系界面活性剤およびポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンジステアレート、ソルビタン-ジグリセリン縮合体のモノおよびジステアレートなどが挙げられる。これらは単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0043】
カチオン性界面活性剤としては、具体的には、ラウリルアミンアセテート、トリエタノールアミンモノ蟻酸塩、ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩等のアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩などが挙げられる。これらは単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0044】
本発明のヒートシール性蓋材中の防曇剤を含むヒートシール層における防曇剤の含有割合の下限は、ポリエステル系樹脂(AあるいはA+B)と防曇剤の質量比が、好ましくは99:1であり、より好ましくは97:3であり、特に好ましくは94:6である。99:1以上とすることで、防曇性が発現する。上記防曇剤の含有割合の上限は、ポリエステル系樹脂(AあるいはA+B)と防曇剤の質量比が、好ましくは80:20であり、より好ましくは83:17であり、特に好ましくは86:14である。80:20以上とすることで、ポリエステル容器とのヒートシール強度が十分に得られる。
【0045】
ヒートシール性蓋材中の防曇剤を含むヒートシール層には、耐ブロッキング性を付与する目的で、アンチブロッキング剤を含有してもよい。アンチブロッキング剤としては無機粒子、有機粒子、ワックス類等が挙げられ、ヒートシール強度を落とさない程度で含有することができる。これらアンチブロッキング剤は単独あるいは2種類以上併用して使用することができる。アンチブロッキング剤の含有量は、防曇層の固形分濃度換算において下限は好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%であり、特に好ましくは0.5質量%である。0.1質量%以上であると、耐ブロッキング性が発現する。アンチブロッキング剤の含有量は、防曇層の固形分濃度換算において上限は好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは4.5質量%であり、特に好ましくは4.0質量%である。5.0質量%以下であると、ヒートシール強度を阻害しない。
【0046】
本発明のヒートシール性蓋材中の防曇剤を含むヒートシール層の厚みの下限は、好ましくは0.1μmであり、より好ましくは0.2μmであり、特に好ましくは0.4μmである。0.1μm以上とすることで、防曇性およびヒートシール性が発現する。上記ヒートシール層の厚みの上限は、好ましくは5μmであり、より好ましくは3μmであり、特に好ましくは1μmである。5μm以下とすることで、積層体の厚みムラが悪化するのを防ぐことができ、結果的に防曇剤の裏移りによる防曇性低下を抑制することができる。
【0047】
本発明のヒートシール性蓋材の厚みムラの上限は、好ましくは15%であり、より好ましくは10%であり、特に好ましくは5%である。15%以下とすることで、ロール形態で保管したとき、厚みムラが悪い箇所に局所的に巻取り応力がかかることが防ぐことができ、結果的に非防曇面への防曇剤の裏移りによる防曇性低下を抑制することができる。
【0048】
(ヒートシール性蓋材の物性)
本発明のヒートシール性蓋材は、ヘイズが1%以上15%以下であると好ましい。ヘイズが10%を超えるとフィルムの透明性が悪くなるため、包装体とした場合に内容物の視認性が劣ることになる。ヘイズの上限は13%以下であるとより好ましく、11%以下であると特に好ましい。ヘイズは低くければ低いほど透明性は高くなり好ましいが、現状の技術水準では1%が下限であり、2%以上であっても実用上は十分好ましいといえる。
【0049】
本発明のヒートシール性蓋材の長手方向もしくは幅方向の破断強度の下限は好ましくは180MPaであり、より好ましくは185MPaであり、特に好ましくは190MPaである。180MPa以上であると、容器の蓋材としたときの力学強度が十分なものとなる。破断強度の上限は特に限定されないが、好ましくは260MPaであり、より好ましくは255MPaであり、特に好ましくは250MPaである。260MPa以下であると、実質的に延伸工程での異物起因の破断を抑制することができ、製膜性が良好なものとなる。
【0050】
本発明のヒートシール性蓋材の長手方向もしくは幅方向の破断伸度の下限は好ましくは80%であり、より好ましくは90%であり、特に好ましくは100%である。80%以上であると、実質的に延伸工程での異物起因の破断を抑制することができ、製膜性が良好なものとなる。破断伸度の上限は特に限定されないが、好ましくは170%であり、より好ましくは160%であり、特に好ましくは150%である。170%以下であると、容器の蓋材としたときの力学強度が十分なものとなる。
【0051】
本発明のヒートシール性蓋材は、温度23℃、相対湿度65%RH環境下での酸素透過度が200[cc/(m・d・atm)]以下である。これは、容器に青果物を入れたとき、容器内の酸素濃度が変化するためである。容器内では、青果物の呼吸によって酸素が消費されて二酸化炭素が発生する。フィルムの酸素透過度を上記の範囲とすることで、外部との酸素のやり取りが小さくなるため、MA包装に好ましい低酸素状態としやすくなり、結果として青果物の呼吸が抑制されてシェルフライフの延長につながる。酸素透過度が200[cc/(m・d・atm)]を超えると、青果物の呼吸量が増加して変色等を招きやすくなるため好ましくない。酸素透過度は、150[cc/(m・d・atm)]以下であると好ましく、100[cc/(m・d・atm)]以下であるとより好ましい。
【0052】
本発明のヒートシール性蓋材は、温度40℃、相対湿度90%RH環境下での水蒸気透過度が100[g/(m・d)]以下である。水蒸気透過度が100[g/(m・d)]を超えると、包装体として青果物を入れたとき、包装体内の水分が外部へ放出されやすくなり、青果物の水分蒸散量が増加してしまうため好ましくない。水蒸気透過度は、80[g/(m・d)]以下であると好ましく、60[g/(m・d)]以下であるとより好ましい。
【0053】
(容器)
本発明の包装容器は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主たる構成成分とするポリエステル樹脂からなる成形容器を含む。ここで、「主たる構成成分とする」とは、全構成成分量を100モル%としたとき、50モル%以上含有することをいい、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。容器がポリエステル系樹脂から構成されていることによって、蓋材含めて同一樹脂で構成されているモノマテリアル化が達成することができ、環境貢献の効果が得られる。本発明の容器は、層構成に特に限定はなく、1層構造でもよく、2層、3層、4層以上が積層された構造でもよい。
【0054】
上記ポリエステル樹脂は結晶状態および非晶状態のいずれでもよい。成形性の観点から、好ましくは非晶状態のポリエステル系樹脂であり、より好ましくは非晶状態のPETである。なお、非晶状態とはA-PETのような結晶化していない状態のPETおよびPET-Gのような完全に結晶化しない状態のPETを含む。
【0055】
(内容物)
本発明の容器に入れる内容物としては、ブロッコリー、コマツナ、ナバナ、トウミョウ、ネギ、トマト、サヤエンドウ、インゲン、ホウレンソウ、コマツナ、シュンギク、オオバ、栗、ニラ、ネギ、パセリ、ミズナ、ピーマン、キュウリ、ニガウリ、ナス、グリーンアスパラガス、ホワイトアスパラガス、ミョウガ、モヤシ、カイワレ、ハクサイ、キャベツ、ニンジン、カボチャ、レタス、パプリカ、タマネギ、ナガイモ、ダイコン、カブ、トウモロコシ、ジャガイモ等の豆類、穀物類、ハーブ類を含むあらゆる野菜、しいたけ、マッシュルーム、ナメコ、シメジ、エノキ、エリンギ、マイタケ、マツタケ、エダマメ等の茸類、スダチ、カボス、ブドウ、メロン、サクランボ、イチゴ、柿、キウイフルーツ、サクランボ、青梅、ナシ、リンゴ、バナナ、モモ、ビワ、ブルーベリー、スイカ等の果物類、バラ、カーネーション、キク、カラー、ユリ、桜、桃、梅、フリージア、アルメリア、スイートピー、アジサイ、サフィニア、ダリア等の花卉類、鮭、ひらめ、鰈、鰤、秋刀魚、鰯、鯖、蛸、烏賊、鯛、金目鯛、鮪、細魚、太刀魚、飛魚、穴子、鰻等の魚肉類、赤貝、蛤、アサリ、蜆、帆立貝、青柳等の貝類、豚肉、牛肉、鶏肉、羊肉等の肉類等を挙げることができる。これらの内容物の中でも、野菜類と果物類に好ましく使用することができ、さらに好ましくはブロッコリー、レタス、ネギ、キャベツ、しいたけ、シメジの包装体に使用することができる。また、これらの内容物は、皮や枝等の非可食部がついたまま包装体内に入れてもよく、非可食部を除去して可食部をカットした状態、または非可食部がついたまま可食部をカットした状態で包装体内に入れてもよい。
【実施例0056】
(蓋材用ポリエステルの合成例)
エステル反応缶を昇温して200℃に到達した時点で、テレフタル酸[86.4質量部]、及びエチレングリコール[64.4質量部]からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら、触媒として三酸化アンチモン[0.017質量部]及びトリエチルアミン[0・16質量部]を添加した。次いで加熱昇温を行い、ゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った。
【0057】
その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、酢酸マグネシウム4水塩[0.071質量部]、次いでリン酸トリメチル[0.014質量部]を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温した後、リン酸トリメチル[0.012質量部]、次いで酢酸ナトリウム[0.0036質量部]を添加した後、15分後に高圧分散機で分散処理を行い、さらに平均粒子径2.5μmのシリカ粒子を組成物全体に対して0.10質量部添加した。15分後に、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応を行い、蓋材用ポリエステルを得た。
【0058】
(防曇剤を含むヒートシール層用ポリエステルの合成例)
(ポリエステルA-1)
エステル反応缶内に、テレフタル酸[445質量部]、イソフタル酸[74質量部]、セバシン酸[270質量部]、エチレングリコール[277質量部]、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール[465質量部]およびテトラブチルチタネート[0.5質量部]を仕込み、230℃まで昇温しつつ4時間かけてエステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、系内を250℃まで昇温しながら60分かけて10torrまで減圧して250℃で60分間重縮合反応を行った。その後、系内に窒素を流し、真空破壊することで重縮合反応を終了させた。反応終了後、ポリエステル樹脂を取り出し、冷却することでポリエスエルA-1を得た。ガラス転移温度は7℃であった。
【0059】
(ポリエステルB-1)
原料の仕込みを、テレフタル酸ジメチル[455質量部]、イソフタル酸ジメチル[455質量部]、エチレングリコール[291質量部]、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール[488質量部]およびテトラブチルチタネート[0.5質量部]に変更した以外、ポリエステルA-1と同様の方法で作製し、ポリエステルB-1を得た。ガラス転移温度は67℃であった。
【0060】
(容器の製造例)
容器本体に用いたポリエステルは、シリカ粒子を添加しなかった以外は上記蓋材用ポリエステルと同様の方法で作製し、容器用ポリエステルを得た。上記容器用ポリエステルを用いて作製したA-PETシートを130℃で軟化させ、金型を用いて真空・圧空成形して図1に示す形状のA-PET容器を作製した。底部は100mm×100mm、高さは80mm、蓋材シール部は8mm幅、厚みは約300μmであった。
【0061】
各物性は以下の方法で測定した。
【0062】
[酸素透過度]
酸素透過度はJIS K7126-2法に準じて測定した。蓋材について、酸素透過量測定装置(MOCON社製、OX-TRAN 2/20)を用いて、温度23℃、湿度65%RH環境下において、酸素を透過させて酸素透過度を測定した。なお、測定前には温度23℃、湿度65%RH環境下でサンプルを4時間放置して調湿した。
【0063】
[水蒸気透過度]
水蒸気透過度はJIS K7126 B法に準じて測定した。蓋材について、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製、PERMATRAN-W3/33MG)を用いて、温度40℃、湿度90%RH環境下において、調湿ガスを透過させて水蒸気透過度を測定した。なお、測定前には温度23℃、湿度65%RH環境下でサンプルを4時間放置して調湿した。
【0064】
[ヘイズ]
JIS K7136に準拠して測定した。性蓋材について、ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製、NDH8000)を用いて測定した。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
【0065】
[破断強度]
JIS K7113に準拠して測定した。蓋材について、測定方向(フィルム長手方向、幅方向)が140mm、測定方向と直交する方向が20mmの短冊状のフィルムサンプルを1枚切り出した。引張試験機 (島津製作所製、オートグラフAG-Xplus)を用いて、サンプルの両端をチャックで片側20mmずつ把持(チャック間距離100mm)して、雰囲気温度23℃、引張速度200mm/minの条件にて引張試験を行い、破断した際の強度(MPa)を測定した測定は2回行い、その平均値を求めた。
【0066】
[破断伸度]
JIS K7113に準拠して測定した。蓋材について、測定方向(フィルム長手方向、幅方向)が140mm、測定方向と直交する方向が20mmの短冊状のフィルムサンプルを1枚切り出した。引張試験機 (島津製作所製、オートグラフAG-Xplus)を用いて、サンプルの両端をチャックで片側20mmずつ把持(チャック間距離100mm)して、雰囲気温度23℃、引張速度200mm/minの条件にて引張試験を行い、破断した際の伸度(%)を測定した。測定は2回行い、その平均値を求めた。
【0067】
[ヒートシール強度]
PET容器片と蓋材の防曇剤を含むヒートシール層側を重ねた。このサンプルをヒートシーラーにて接着した。ヒートシール条件は、上バー温度170℃、下バー30℃、圧力0.2MPa、時間2秒とした。ヒートシールサンプルはシール幅が15mmとなるように切り出した。ヒートシール強度は、引張試験機「AGS-KNX」(島津製作所製)を用いて引張速度200mm/分で測定した。ヒートシール強度は15mmあたりの強度(N/15mm)で示す。
【0068】
[易開封性]
PET容器の蓋材シール部と蓋材の防曇剤を含むヒートシール層側を重ねた。蓋材の上からヒートシールにて接着した。ヒートシール条件は、温度120℃、圧力0.2MPa、時間2秒とした。その後、蓋材を手で剥がしたときの剥がしやすさを以下の触感で評価した。
判定〇 十分に接着されており、手で容易に剥がせた
判定△ 接着が不十分で、力をいれずとも剥がせた
判定× 接着が強すぎて、手で剥がせないあるいは蓋材が破損してしまった
【0069】
[鮮度保持性能]
ブロッコリーを容器と蓋材により密閉した包装容器の中に入れ、30℃、85%RH環境下で3日間放置した後のカラー値変化と臭いで鮮度保持性能を評価した。以下に詳細な方法を示す。
【0070】
まず、市販のブロッコリーから花蕾を1房(5cm程度)切り取り、花蕾の天頂部をカラーメーター(コニカミノルタ製、カラーリーダー CR-20)により、L値、b値を測定した。なお、カラーL値、b値の測定は3回行い、それぞれの平均値を用いた。
【0071】
次に、カラーL値、b値を測定したブロッコリーを容器の中に入れ、容器の蓋材シール部と蓋材の防曇剤を含むヒートシール層側を重ねた。蓋材の上からカップシーラー(エーシンパック工業社製 EPK-ハンドシーラーNO)にて密封した。
【0072】
上記の方法でブロッコリーを密封した容器を、温度30℃、湿度85%RHに設定した恒温恒湿機(エスペック社製、LHU124)に入れ、3日間放置した。その後、容器の中からブロッコリーを取り出し、カラー値を測定した。カラー値の測定方法は、ブロッコリーを放置する前の方法と同じである。カラーL値、b値それぞれについて、放置後のカラー値変化を、下記式により算出した。
カラー値変化=(放置後のカラー値)-(放置前のカラー値)
【0073】
カラー値変化は、以下の基準に従って評価した。
○:カラーL値、b値の変化がともに5以下
△:カラーL値、b値いずれか1つの変化が5以下
×:カラーL値、b値の変化がともに5より大きい
【0074】
[防曇評価]
ブロッコリーを放置した後の包装体内面(青果物と接する面)についた水滴を、以下の基準に従って目視で評価した。
○:包装容器の蓋材の内面に水滴がついていない(包装容器の蓋材の面積の1/5未満)
×:包装容器の蓋材の内面に水滴がついている(包装容器の蓋材の面積の1/5以上)
【0075】
[臭気評価]
ブロッコリーを放置して包装容器から取り出した際の臭いを、以下の基準に従って評価した。
○:包装容器を開封したときに臭いがしない
×:包装容器を開封したときに臭い(漬物臭)がする
【0076】
[実施例1]
押出機に、上記蓋材用ポリエステルを投入した。押出機にて樹脂を280℃で融解させた後、280℃のT-ダイスからキャストし、10℃の冷却ロールに静電密着法により密着させて未延伸シートを得た。
次いで、得られた未延伸シートを115℃の温度で長手方向に3.2倍で延伸し、次いでテンターに通して110℃で幅方向に4.0倍延伸し、220℃で3秒間の熱固定処理と1秒間5%の緩和処理を実施して、厚さ25μmの二軸配向ポリエステルフィルム(基材層)を得た。
【0077】
ポリエステルA-1[75.8質量%]、ポリエステルB-2[19.3質量%]、防曇剤(理研ビタミン社製 リケマールL-71-D、ノニオン性界面活性剤、HLB7.3)[4.9質量%]を酢酸エチル溶液(固形分濃度10%)中で加熱攪拌してコート剤Aを得た。この二軸配向ポリエステルフィルム上にワイヤーバーコート法にて、コート剤Aを塗布し、90℃で20秒間乾燥し防曇層を積層しヒートシール性蓋材を得た。コートした層の厚みは1.5μmであった。
【0078】
[実施例2]
基材層を二軸延伸・無機二元蒸着バリアフィルム(東洋紡社製、エコシアール(登録商標)VE100-12μm)に変更した以外は、実施例1と同様の方法でヒートシール性蓋材を得た。
【0079】
[比較例1]
ポリエステルA-1[79.7質量%]、ポリエステルB-2[20.3質量%]を酢酸エチル溶液(固形分濃度10%)中で加熱攪拌してコート剤Bを得た。このコート剤Bを、実施例1で作製した二軸配向ポリエステルフィルム上にワイヤーバーコート法にて塗布し、90℃で20秒間乾燥してヒートシール性蓋材を得た。コートした層の厚みは1.5μmであった。
【0080】
[比較例2]
基材層として無延伸・直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(東洋紡社製 リックス(登録商標)L4102-40μm)を使用し、ヒートシール性蓋材とした。
【0081】
実施例1~2、比較例1~2について、ヒートシール性蓋材の物性と、包装容器の評価結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
実施例1~2の包装体はいずれも各特性に優れており、良好な評価結果が得られた。 比較例1の包装容器は、カラー値の変化が少なく、臭気もないため鮮度保持性能は良好であった。しかしながら、積層フィルムの防曇層は防曇性が発現しておらず、不良であった。比較例2の包装容器は酸素透過度が高く、水蒸気透過度が低く、野菜から発する水分を外に逃がすことができないため、鮮度保持性能に劣る結果となった。また、防曇性が発現しておらず、不良であった。さらに、基材層のシール層とPET容器との接着強度が弱すぎて、易開封性が劣る結果であった。
図1