(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062285
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】マルチピースソリッドゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
A63B37/00 640
A63B37/00 618
A63B37/00 644
A63B37/00 658
A63B37/00 538
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170171
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英郎
(57)【要約】
【課題】ロングヒッターのドライバー打撃時に対して飛距離を落とす距離を大きくしても、アベレージヒッターのドライバー打撃時の飛距離およびアイアン打撃時の飛距離の落とす距離は少なくすることが可能なゴルフボールを提供する。
【解決手段】コア、中間層及びカバーを具備し、ボールの初速が76.0m/s以下であり、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量が2.8mm以上であり、(コアの初速×コアの質量)の値をCiw、〔(中間層被覆球体の初速-コアの初速)×(中間層被覆球体の質量-コアの質量)〕の値をMiw、〔(ボールの初速-中間層被覆球体の初速)×(ボールの質量-中間層被覆球体の質量)〕の値をCViwとしたとき、Ciw+Miw+CViw≦2550の式を満たすゴルフボール。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア、中間層及びカバーを具備するマルチピースソリッドゴルフボールであって、ボールの初速が76.0m/s以下であり、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量が2.8mm以上であり、(コアの初速×コアの質量)の値をCiw、〔(中間層被覆球体の初速-コアの初速)×(中間層被覆球体の質量-コアの質量)〕の値をMiw、〔(ボールの初速-中間層被覆球体の初速)×(ボールの質量-中間層被覆球体の質量)〕の値をCViwとしたとき、下記式
Ciw+Miw+CViw≦2550
を満たすことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項2】
ボールの初速をV(m/s)、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をB(mm)とするとき、下記式
20≦V/B≦28
を満たす請求項1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項3】
コアの表面硬度と中間層被覆球体の表面硬度とボールの表面硬度との関係が、下記の2式
(ボールの表面硬度)<(中間層被覆球体の表面硬度)
(中間層被覆球体の表面硬度)≧(コアの表面硬度)
を満たす請求項1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項4】
コア、中間層被覆球体及びボールの各球体に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量(mm)をそれぞれC(mm)、M(mm)及びB(mm)としたとき、下記の2つの式
0.70≦C-B≦1.20
0.65≦C-M≦1.15
を満たす請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項5】
上記コアは基材ゴムを含有するゴム組成物により形成され、該基材ゴムは、スチレン・ブタジエンゴム15~100質量%及びその他のジエン系ゴム85~0質量%を含有する請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項6】
上記コアは、下記(A)~(D)成分
(A)基材ゴム
(B)共架橋剤
(C)水またはモノカルボン酸金属塩
(D)有機過酸化物
を含有するゴム組成物により形成され、上記(A)基材ゴムは、スチレン・ブタジエンゴム25~100質量%及びその他のジエン系ゴム75~0質量%を含有する請求項5記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項7】
上記コアの硬度分布において、コアの中心のショアC硬度をCc、コアの中心と表面との中点MのショアC硬度をCm、中点Mから内側に2mm、4mm、6mmの位置のショアC硬度をそれぞれCm-2、Cm-4、Cm-6、中心Mから外側に2mm、4mm、6mmの位置のショアC硬度をそれぞれCm+2、Cm+4、Cm+6、コアの表面のショアC硬度をCsとしたとき、下記の面積A~F
・面積A: 1/2×2×(Cm-4-Cm-6)
・面積B: 1/2×2×(Cm-2-Cm-4)
・面積C: 1/2×2×(Cm-Cm-2)
・面積D: 1/2×2×(Cm+2-Cm)
・面積E: 1/2×2×(Cm+4-Cm+2)
・面積F: 1/2×2×(Cm+6-Cm+4)
について、下記式
{(面積C+面積D)-(面積A+面積B)}×(Cs-Cc)≧30
を満たす請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項8】
上記コアの硬度分布において、下記の式
(Cs-Cc)≧18
を満たす請求項7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項9】
上記コアの硬度分布において、下記の式
面積B<面積C<(面積D+面積E)
を満たす請求項7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項10】
上記コアの硬度分布において、下記の式
面積A≦面積B<面積C<(面積D+面積E)
を満たす請求項7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア、中間層及びカバーを具備するマルチピースソリッドゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
2022年3月にR&AとUSGAとからゴルフボールの製造業者に対して、将来的にゴルフボールの標準総合距離(ODS)のテスト条件を変更することにより、ロングヒッターの飛距離を抑制する研究を開始するとの通知があった。このため、単純に飛距離を落とすのではなく、ロングヒッターのドライバー打撃時に対して飛距離を落とす距離を大きくしつつ、アベレージヒッターのドライバー打撃時の飛距離およびアイアン打撃時の飛距離の落とす距離は少なくすることにより、ロングヒッターのドライバー打撃時の飛距離が落ちること以外に対するプレーへの影響を小さくするゴルフボールにすることが好ましい。また、上記の変更により、飛距離を落としたゴルフボールについてプロや上級者が使用しても違和感が生じないように、ショートゲームのスピン特性についても、現在のツアーで使用されているボールに近似の性能となるようにボールを設計することが望まれる。
【0003】
なお、過去において、ボール初速を76.0m/s以下に制約したゴルフボールがいくつか提案されている。このような技術文献としては、例えば、下記の特許文献1~5が挙げられる。
【0004】
しかしながら、上記提案のゴルフボールについては、いずれも、単にゲームボールより飛距離が出ないように設計された練習場向けの練習ボールである。従って、ロングヒッターがドライバー(W#1)で打撃した時の飛距離を落としつつも、アベレージヒッターの飛距離の落ちる距離をロングヒッターの飛距離の落ちる距離よりも小さくするようなゴルフボールの設計はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-228470号公報
【特許文献2】特開2014-069045号公報
【特許文献3】特開2013-138857号公報
【特許文献4】特開2013-138839号公報
【特許文献5】特開2013-138840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、将来的にゴルフボールの標準総合飛距離(ODS)のテスト条件を変更することにより、ロングヒッターの飛距離を抑制するルールに変更される可能性が出てきたことに対して、単純に飛距離を落とすのではなく、ロングヒッターのドライバー打撃時に対して飛距離を落とす距離を大きくしつつも、アベレージヒッターのドライバー打撃時の飛距離およびアイアン打撃時の飛距離の落とす距離は少なくすることにより、ロングヒッターのドライバー打撃時の飛距離が落ちること以外に対するプレーへの影響を小さくすることを図ったゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、コア、中間層及びカバーを具備するマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、コアに中間層を被覆した球体(中間層被覆球体)の表面硬度とボールの表面硬度との関係が、下記式
(ボールの表面硬度)<(中間層被覆球体の表面硬度)
を満たし、ボールの初速を76.0m/s以下に設定すると共に、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量が2.8mm以上であり、(コアの初速×コアの質量)の値をCiw、〔(中間層被覆球体の初速-コアの初速)×(中間層被覆球体の質量-コアの質量)〕の値をMiw、〔(ボールの初速-中間層被覆球体の初速)×(ボールの質量-中間層被覆球体の質量)〕の値をCViwとしたとき、下記式
Ciw+Miw+CViw≦2550
を満たすことにより、ロングヒッターの飛距離を抑制するルールに準ずるゴルフボールにおいて、ロングヒッターのドライバー打撃時に対して飛距離を落とす距離が大きくなっても、アベレージヒッターのドライバー打撃時の飛距離およびアイアン打撃時の飛距離を落とす距離はできるだけ少なくすることにより、ロングヒッターのドライバー打撃時の飛距離が落ちること以外に対するプレーへの影響を小さくしたゴルフボールを見出し、本発明をなすに至ったものである。また、本発明のゴルフボールは、プロや上級者が使用して違和感が生じないように、ショートゲームのスピン特性についても、現在のツアーで使用されているボールに近似の性能を有するものである。
【0008】
なお、上記の「ロングヒッター」とは、ドライバー(W#1)打撃時のヘッドスピードが約50m/s以上のユーザーであり、上記の「アベレージヒッター」は、ドライバー(W#1)打撃時のヘッドスピードが約50m/s未満のユーザーを意味する。
【0009】
従って、本発明は、下記のマルチピースソリッドゴルフボールを提供する。
1.コア、中間層及びカバーを具備するマルチピースソリッドゴルフボールであって、ボールの初速が76.0m/s以下であり、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量が2.8mm以上であり、(コアの初速×コアの質量)の値をCiw、〔(中間層被覆球体の初速-コアの初速)×(中間層被覆球体の質量-コアの質量)〕の値をMiw、〔(ボールの初速-中間層被覆球体の初速)×(ボールの質量-中間層被覆球体の質量)〕の値をCViwとしたとき、下記式
Ciw+Miw+CViw≦2550
を満たすことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
2.ボールの初速をV(m/s)、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をB(mm)とするとき、下記式
20≦V/B≦28
を満たす上記1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
3.コアの表面硬度と中間層被覆球体の表面硬度とボールの表面硬度との関係が、下記の2式
(ボールの表面硬度)<(中間層被覆球体の表面硬度)
(中間層被覆球体の表面硬度)≧(コアの表面硬度)
を満たす上記1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
4.コア、中間層被覆球体及びボールの各球体に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量(mm)をそれぞれC(mm)、M(mm)及びB(mm)としたとき、下記の2つの式
0.70≦C-B≦1.20
0.65≦C-M≦1.15
を満たす上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
5.上記コアは基材ゴムを含有するゴム組成物により形成され、該基材ゴムは、スチレン・ブタジエンゴム15~100質量%及びその他のジエン系ゴム85~0質量%を含有する上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
6.上記コアは、下記(A)~(D)成分
(A)基材ゴム
(B)共架橋剤
(C)水またはモノカルボン酸金属塩
(D)有機過酸化物
を含有するゴム組成物により形成され、上記(A)基材ゴムは、スチレン・ブタジエンゴム25~100質量%及びその他のジエン系ゴム75~0質量%を含有する上記5記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
7.上記コアの硬度分布において、コアの中心のショアC硬度をCc、コアの中心と表面との中点MのショアC硬度をCm、中点Mから内側に2mm、4mm、6mmの位置のショアC硬度をそれぞれCm-2、Cm-4、Cm-6、中心Mから外側に2mm、4mm、6mmの位置のショアC硬度をそれぞれCm+2、Cm+4、Cm+6、コアの表面のショアC硬度をCsとしたとき、下記の面積A~F
・面積A: 1/2×2×(Cm-4-Cm-6)
・面積B: 1/2×2×(Cm-2-Cm-4)
・面積C: 1/2×2×(Cm-Cm-2)
・面積D: 1/2×2×(Cm+2-Cm)
・面積E: 1/2×2×(Cm+4-Cm+2)
・面積F: 1/2×2×(Cm+6-Cm+4)
について、下記式
{(面積C+面積D)-(面積A+面積B)}×(Cs-Cc)≧30
を満たす上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
8.上記コアの硬度分布において、下記の式
(Cs-Cc)≧18
を満たす上記7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
9.上記コアの硬度分布において、下記の式
面積B<面積C<(面積D+面積E)
を満たす上記7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
10.上記コアの硬度分布において、下記の式
面積A≦面積B<面積C<(面積D+面積E)
を満たす上記7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴルフボールによれば、R&AとUSGAから将来的にゴルフボールの標準総合飛距離(ODS)のテスト条件を変更することにより、ロングヒッターの飛距離を抑制するルールに変更される可能性が出てきたことに対して、単純に飛距離を落とすのではなく、ロングヒッターのドライバー打撃時に対して飛距離を落とす距離を大きくし、アベレージヒッターのドライバー打撃時の飛距離およびアイアン打撃時の飛距離の落とす距離は少なくすることにより、ロングヒッターのドライバー打撃時の飛距離が落ちること以外に対するプレーへの影響を小さくすることができる。また、本発明のゴルフボールは、プロや上級者が使用して違和感が生じないように、ショートゲームのスピン特性についても、現在のツアーで使用されているボールに近似の性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施態様であるゴルフボールの概略断面図である。
【
図2】コア硬度分布の面積A~Fを説明するために、実施例1のコア硬度分布データを用いて説明した概略図である。
【
図3】実施例1~3のコア硬度分布を示すグラフである。
【
図4】比較例1~4のコア硬度分布を示すグラフである。
【
図5】実施例1~3及び比較例1~4のCiw+Miw+CViwの値を示すグラフである。
【0012】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、コア、中間層及びカバーを有するものであり、例えば、
図1にその一例を示す。
図1に示したゴルフボールGは、単層コア1と、該コア1を被覆する単層の中間層2と、該中間層を被覆する単層のカバー3を有している。このカバー3は、塗料層を除き、ゴルフボールの層構造での最外層に位置するものである。コア、中間層及びカバーの各層は、
図1に示すような単層のほか、複数層の形成することができる。なお、上記カバー(最外層)3の表面には、通常、空力特性の向上のためにディンプルDが多数形成される。また、カバー3の表面には、特に図示してはいないが、通常、塗料層が形成される。以下、上記の各層について詳述する。
【0013】
上記コアは、ゴム材を主材とするゴム組成物を加硫することにより得られる。コア材料がゴム組成物ではないとコアの反発性が低くなり、アベレージヒッターの打撃時において所望の飛距離が得られなくなることがある。このゴム組成物としては、通常、基材ゴムを主体とし、これに、共架橋剤、架橋開始剤、不活性充填剤、有機硫黄化合物等を配合させてゴム組成物を得るものである。
【0014】
上記コアとしては、特に、下記(A)~(D)成分
(A)基材ゴム
(B)共架橋剤
(C)水またはモノカルボン酸金属塩
(D)有機過酸化物
を含有するゴム組成物により形成されることが好適である。
【0015】
(A)基材ゴムとしては、スチレン・ブタジエンゴムを15質量%以上含むことが好適であり、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上である。この含有量の上限値としては100質量%以下であり、好ましくは75質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。スチレン・ブタジエンゴムの配合比が少なすぎると、ボールの初速値が高くなりすぎてしまい、特にパワーヒッターのドライバー(W#1)打撃時の飛距離が飛びすぎることがある。一方、スチレン・ブタジエンゴムの配合比が多すぎると、ボールの初速値が低くなりすぎてしまい、アベレージヒッターのドライバー(W#1)打撃およびアイアン打撃時の飛距離が落ちすぎることがある。
【0016】
スチレン・ブタジエンゴムとしては、溶液重合スチレン・ブタジエンゴムや乳化重合スチレン・ブタジエンゴムを使用することができる。溶液重合スチレン・ブタジエンゴムとして具体的には、JSR社製の溶液重合SBR-SL552、SL555、SL563を挙げることができる。また、乳化重合スチレン・ブタジエンゴムとして具体的には、JSR社製の乳化重合SBR1500、1502、1507等を挙げることができる。
【0017】
上記(A)成分以外のジエン系ゴムを含むことができる。このジエン系ゴムの含有量は0質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、上限値としては、好ましくは85質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下である。このジエン系ゴムとしては、ポリブタジエン、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等を挙げることができる。
【0018】
(B)共架橋剤は、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩である。不飽和カルボン酸として、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。不飽和カルボン酸の金属塩としては特に限定されるものではないが、例えば上記不飽和カルボン酸を所望の金属イオンで中和したものが挙げられる。具体的にはメタクリル酸、アクリル酸等の亜鉛塩やマグネシウム塩等が挙げられ、特にアクリル酸亜鉛が好適に用いられる。
【0019】
上記不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩は、上記基材ゴム100質量部に対し、通常5質量部以上、好ましくは9質量部以上、更に好ましくは13質量部以上、上限として通常60質量部以下、好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下配合する。配合量が多すぎると、硬くなりすぎて耐え難い打感になる場合があり、配合量が少なすぎると、反発性が低下してしまう場合がある。
【0020】
(C)水については、特に制限はなく、蒸留水であっても水道水であってもよいが、特には、不純物を含まない蒸留水を使用することが好適に採用される。水の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上配合することが好ましく、より好ましくは0.2質量部以上であり、上限としては、好ましくは2質量部以下であり、より好ましくは1質量部以下である。
【0021】
コア材料に直接的に(C)成分として水または水を含む材料を配合することにより、コア配合中の有機過酸化物の分解を促進することができる。また、コア用ゴム組成物中の有機過酸化物は、温度によって分解効率が変化することが知られており、ある温度よりも高温になるほど分解効率が上がる。温度が高すぎると、分解したラジカル量が多くなりすぎてしまい、ラジカル同士で再結合や不活性化してしまうことになる。その結果、架橋に有効に働くラジカルが減ることになる。ここで、コア加硫の際に有機過酸化物が分解することで分解熱が発生するとき、コア表面付近は加硫モールドの温度とほぼ同程度を維持しているが、コア中心付近は外側から分解していった有機過酸化物の分解熱が蓄積されるため、モールド温度よりもかなり高温になる。コアに直接的に水または水を含む材料を配合した場合、水は有機過酸化物の分解を助長する働きがあるため、上述したようなラジカル反応をコア中心とコア表面において変化させることができる。即ち、コア中心付近では有機過酸化物の分解が更に助長され、ラジカルの不活性化がより促されることで有効ラジカル量が更に減少するため、コア中心とコア表面との架橋密度が大きく異なるコアを得ることができ、且つ、コア中心部の動的粘弾性特性の異なるコアを得ることができる。
【0022】
また、上記の水の代わりに、モノカルボン酸金属塩を採用することができる。モノカルボン酸金属塩は、カルボン酸が金属塩に対して配位結合していると推定され、化学式で〔CH2=CHCOO〕2Znで表わされるジアクリル酸亜鉛のようなジカルボン酸金属塩とは区別される。モノカルボン酸金属塩は、脱水縮合反応をすることによりゴム組成物中に水をもたらすため、上記水と同様の効果を得ることができる。また、モノカルボン酸金属塩は、粉体としてゴム組成物に配合することができるため、作業工程を簡略化することができると共に、ゴム組成物中に均一に分散させることが容易である。なお、上記の反応を効果的に行うためには、モノ塩であることが必要である。モノカルボン酸金属塩の配合量は、基材ゴム100質量部に対して1質量部以上配合することが好ましく、より好ましくは3質量部以上である。上限としては、モノカルボン酸金属塩の配合量は、60質量部以下配合することが好ましく、より好ましくは50質量部以下である。上記モノカルボン酸金属塩の配合量が少なすぎると、適切な架橋密度を得ることが困難となり、十分にゴルフボールの低スピン効果を得ることができないことがある。また、配合量が多すぎる場合には、コアが硬くなりすぎるため、適切な打感を保つことが困難になる場合がある。
【0023】
上記のカルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ステアリン酸等を使用することができる。置換金属としては、Na、K、Li、Zn、Cu、Mg、Ca、Co、Ni、Pb等が挙げられるが、好ましくはZnが好適に用いられる。具体例としては、モノアクリル酸亜鉛、モノメタクリル酸亜鉛等が挙げられ、特に、モノアクリル酸亜鉛を用いることが好ましい。
【0024】
(D)有機過酸化物としては、熱分解温度が比較的高温な有機過酸化物を使用することが好適であり、具体的には、1分間半減期温度が約165~185℃の高温な有機過酸化物を使用するものであり、例えば、ジアルキルパーオキサイド類を挙げることができる。ジアルキルパーオキサイド類として、例えば、ジクミルパーオキサイド(日油社製「パークミルD」)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(日油社製「パーヘキサ25B」)、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製「パーブチルP」)等が挙げられ、ジクミルパーオキサイドを好適に用いることができる。これらは1種を単独であるいは2種以上を併用してもよい。半減期は、有機過酸化物の分解速度の程度を表す指標の一つであり、もとの有機過酸化物が分解して、その活性酸素量が1/2になるまでに要する時間によって示される。コア用ゴム組成物における加硫温度は、通常、120~190℃の範囲内であり、その範囲内では、1分間半減期温度が約165℃~185℃と高温な有機過酸化物は比較的遅く熱分解する。本発明で用いられるゴム組成物によれば、加硫時間の経過とともに増加する遊離ラジカルの生成量を調整することにより、後述する特定の内部硬度形状を有するゴム架橋物であるコアを得ることができる。
【0025】
上記ゴム組成物には上記(A)~(D)成分以外の成分として、充填材、老化防止剤、有機硫黄化合物などを配合することができる。
【0026】
充填材としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を好適に用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。充填剤の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは4質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは12質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下とすることができる。
配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると適正な質量、及び好適な反発性を得ることができない場合がある。
【0027】
老化防止剤としては、例えば、ノクラックNS-6、同NS-30、同200、同MB(大内新興化学工業(株)製)等の市販品を採用することができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
老化防止剤の配合量については、特に制限はないが、基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、上限として好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.7質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以下である。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると、適正なコア硬度傾斜が得られずに好適な反発性、耐久性及びフルショット時の低スピン効果を得ることができない場合がある。
【0029】
有機硫黄化合物は、コアの反発性を上げる方向にコントロールするために配合することができる。有機硫黄化合物として具体的には、チオフェノール、チオナフトール、ハロゲン化チオフェノール又はそれらの金属塩を配合することが推奨され、より具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール等の亜鉛塩、硫黄数が2~4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド等が挙げられるが、特に、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、ジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。
【0030】
有機硫黄化合物は、上記基材ゴム100質量部に対し、5質量部以下、好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは2質量部以下配合する。この配合量が多すぎると、コアの硬さが軟らかくなりすぎてしまったり、コアの反発が高くなりすぎてロングヒッターのドライバー打撃時の飛距離が出すぎることがある。
【0031】
上記コアは、上記各成分を含有するゴム組成物を加硫硬化させることにより製造することができる。例えば、バンバリーミキサーやロール等の混練機を用いて混練し、コア用金型を用いて圧縮成形又は射出成型し、有機過酸化物や共架橋剤が作用するのに十分な温度として、100~200℃、好ましくは140~180℃、10~40分の条件にて成形体を適宜加熱することにより、該成形体を硬化させて製造することができる。
【0032】
本発明では、上記コアは単層もしくは複数層に形成されるが、単層に形成されることが好適である。複数層のゴム製コアに作製すると、これらのゴム層の界面の硬度差が大きい場合には繰り返し打撃した時に界面から剥離が生じ、フルショットした時にボールの初速ロスが発生する場合がある。
【0033】
コアの直径は、36.7mm以上であることが好ましく、より好ましくは37.3mm以上、さらに好ましくは37.9mm以上である。この直径の上限値は、好ましくは40.0mm以下、より好ましくは39.2mm以下、さらに好ましくは38.5mm以下である。コアの直径が小さすぎると、ボール初速が低くなりすぎたり、あるいはボール全体のたわみ量が小さくなり、フルショット時のボールのスピン量が増えてしまい、アベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなることがある。一方、コアの直径が大きすぎると、フルショット時のスピン量が増えてしまいアベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなり、あるいは繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0034】
コアに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量(mm)は、特に制限はないが、好ましくは3.1mm以上、より好ましくは3.4mm以上、更に好ましくは3.7mm以上であり、上限値として、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.7mm以下、さらに好ましくは4.4mm以下である。上記コアのたわみ量が小さすぎる、即ち、コアが硬すぎると、アベレージヒッターにとって、スピン量が増えすぎて飛ばなくなり、あるいは打感が硬くなりすぎることがある。一方、上記コアのたわみ量が大きすぎる、即ち、コアが軟らかすぎると、ボールの反発性が低くなりすぎてアベレージヒッターにとって飛ばなくなり、あるいは打感が軟らかくなりすぎ、または繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0035】
次に、上記コアの硬度分布については説明する。なお、以下に説明するコアの硬度はショアC硬度を意味する。このショアC硬度は、ASTM D2240規格に準拠したショアC硬度計にて計測した硬度値である。
【0036】
上記コアの中心硬度(Cc)は、好ましくは48以上、より好ましくは50以上、さらに好ましくは52以上であり、その上限値は、好ましくは62以下、より好ましくは60以下、さらに好ましくは58以下である。この値が大きすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、アベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなり、あるいは打感が硬くなりすぎることがある。一方、上記の値が小さすぎると、反発性が低くなりアベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなり、あるいは繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0037】
上記コアの中心と表面の中間の位置M(以下「中間位置M」ともいう。)から内側に6mmの位置硬度(Cm-6)は、特に制限されるものではないが、好ましくは54以上、より好ましくは56以上、更に好ましくは58以上とすることができ、また、その上限も特に制限はなく、好ましくは62以下、より好ましくは60以下、更に好ましくは58以下とすることができる。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの中心硬度(Cc)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0038】
上記コアの中心と表面の中間の位置M(以下「中間位置M」ともいう。)から内側に4mmの位置硬度(Cm-4)は、特に制限されるものではないが、好ましくは51以上、より好ましくは53以上、更に好ましくは55以上とすることができ、また、その上限も特に制限はなく、好ましくは63以下、より好ましくは61以下、更に好ましくは59以下とすることができる。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの中心硬度(Cc)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0039】
上記コアの中間位置Mから内側に2mmの位置硬度(Cm-2)は、特に制限されるものではないが、好ましくは53以上、より好ましくは55以上、更に好ましくは57以上とすることができ、また、その上限も特に制限はなく、好ましくは65以下、より好ましくは63以下、更に好ましくは61以下とすることができる。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの中心硬度(Cc)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0040】
上記コアの中間位置Mの断面硬度(Cm)は、特に制限されるものではないが、好ましくは58以上、より好ましくは60以上、更に好ましくは62以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、好ましくは69以下、より好ましくは67以下、更に好ましくは65以下とすることができる。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの中心硬度(Cc)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0041】
上記コアの表面硬度(Cs)は、好ましくは70以上、より好ましくは72以上、さらに好ましくは74以上であり、その上限値は、好ましくは85以下、より好ましくは83以下、さらに好ましくは81以下である。この値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなり、あるいは打感が硬くなりすぎることがある。一方、上記の値が小さすぎると、反発性が低くなり、あるいはフルショット時のスピン量が多くなりアベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなることがある。
【0042】
上記コアの中間位置Mからコア表面に向けて外側(以下、単に「外側」という。)に2mmの位置硬度(Cm+2)は、特に制限されるものではないが、好ましくは63以上、より好ましくは65以上、更に好ましくは67以上とすることができ、また、その上限も特に制限はなく、好ましくは75以下、より好ましくは73以下、更に好ましくは71以下とすることができる。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの表面硬度(Cs)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0043】
上記コアの中間位置Mから外側に4mmの位置硬度(Cm+4)は、特に制限されるものではないが、好ましくは66以上、より好ましくは68以上、更に好ましくは70以上とすることができ、また、その上限も特に制限はなく、好ましくは79以下、より好ましくは77以下、更に好ましくは75以下とすることができる。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの表面硬度(Cs)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0044】
上記コアの中間位置Mから外側に6mmの位置硬度(Cm+6)は、特に制限されるものではないが、好ましくは68以上、より好ましくは70以上、更に好ましくは72以上とすることができ、また、その上限も特に制限はなく、好ましくは81以下、より好ましくは79以下、更に好ましくは77以下とすることができる。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの表面硬度(Cs)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0045】
上記コアの表面硬度から中心硬度を引いた値、即ち、Cs-Ccの値は、好ましくは18以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは22以上であり、その上限値は、好ましくは30以下、より好ましくは27以下、さらに好ましくは25以下である。この値が小さすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、アベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなり、あるいは打感が硬くなりすぎることがある。一方、この値が大きすぎると、反発性が低くなり、アベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなり、あるいは繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0046】
また、上記コアの硬度分布について、(Cs-Cc)/(Cm-Cc)の値を適正化することが好適である。(Cs-Cc)の値は、コアの中心と表面との硬度差を示し、(Cm-Cc)の値は、コア表面及びコア中心の中間点と、コア中心との硬度差を示すものであり、上記式は、これらの硬度差の比を表す。(Cs-Cc)/(Cm-Cc)の値は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.5以上であり、上限値として、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下である。この値が小さすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、アベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなり、あるいは打感が硬くなりすぎることがある。一方、この値が大きすぎると、反発性が低くなり、アベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなり、あるいは繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0047】
上記コア硬度分布においては、下記の面積A~F
・面積A: 1/2×2×(Cm-4-Cm-6)
・面積B: 1/2×2×(Cm-2-Cm-4)
・面積C: 1/2×2×(Cm-Cm-2)
・面積D: 1/2×2×(Cm+2-Cm)
・面積E: 1/2×2×(Cm+4-Cm+2)
・面積F: 1/2×2×(Cm+6-Cm+4)
について、(面積C+面積D)-(面積A+面積B)の値が3.0以上であることが好ましく、より好ましくは4.0以上、より好ましくは5.0以上であり、上限値としては、好ましくは12.0以下、より好ましくは10.0以下、さらに好ましくは8.0以下である。この値が小さすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、アベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなり、あるいは打感が硬くなりすぎることがある。一方、この値が大きすぎると、反発性が低くなり、アベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなり、あるいは繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0048】
また、下記式
{(面積C+面積D)-(面積A+面積B)}×(Cs-Cc)の値を適正化することが好適である。この値としては、30以上であり、好ましくは60以上、より好ましくは90以上であり、上限値として、好ましくは250以下、より好ましくは200以下、さらに好ましくは180以下である。この値が小さすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、アベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなり、あるいは打感が硬くなりすぎることがある。一方、この値が大きすぎると、反発性が低くなり、アベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなり、あるいは繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0049】
なお、
図2には、実施例1のコア硬度分布データを用いて面積A~Fを説明した概略図を示す。このように面積A~Fは、各特定距離の差を底辺とし、各位置硬度の差を高さに持つ各三角形の面積である。
【0050】
コアの初速は、好ましくは71.0m/s以上、より好ましくは72.0m/s以上、さらに好ましくは73.0m/s以上であり、上限値としては、76.0m/s以下、好ましくは75.0m/s以下、より好ましくは74.0m/s以下である。この初速値が高すぎると、ロングヒッターのドライバー打撃時に対して現状のツアーボールに対しての飛距離の落ちる程度が足りずに、R&AおよびUSGAが想定する新たな飛距離ルールの標準距離よりも飛びすぎるおそれがある。一方、この初速が低すぎると、アベレージヒッターのドライバー(W#1)打撃及びアイアン打撃時の飛距離がこのレベルのユーザーの求める飛距離よりも小さくなってしまうことがある。この場合における上記の初速の値は、R&Aと同型のCOR型初速計にて計測した数値である。具体的には、米国のHye Precision製のCOR型初速装置を用いる。条件としては、測定の際は、エアの圧力を4段階に変更して測定し、入射速度とCORとの関係式を構築し、この関係式から、入射速度43.83m/s時の初速を求めるものである。なお、上記のCOR型初速装置の測定環境については、23.9±1℃に調整された恒温槽で3時間以上温調したボールを使用し、計測するときは、23.9±2℃の室温下で計測される。
【0051】
コアの初速をVC(m/s)、コアに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をC(mm)とするとき、Vc/Cの値は、13以上であることが好ましく、より好ましくは15以上、さらに好ましくは17以上であり、上限値としては、好ましくは26以下、より好ましくは23以下、さらに好ましくは20以下である。この値が大きすぎると、ロングヒッターのドライバー打撃時に対して現状のツアーボールに対しての飛距離の落ちる程度が足りずに、R&A及びUSGAが想定する新たな飛距離ルールの標準距離よりも飛びすぎるおそれがある。一方、上記値が小さすぎると、アベレージヒッターのドライバー(W#1)打撃の際の飛距離が出なくなりすぎることがある。
【0052】
次に、中間層について説明する。
中間層の材料硬度は、特に制限はないが、ショアC硬度で、好ましくは90以上、より好ましくは92以上、さらに好ましくは93以上であり、上限値として、好ましくは100以下、より好ましくは98以下、さらに好ましくは96以下である。ショアD硬度では、好ましくは61以上、より好ましくは63以上、さらに好ましくは65以上であり、上限値として、好ましくは72以下、より好ましくは70以下、さらに好ましくは67以下である。
【0053】
コアを中間層で被覆した球体(中間層被覆球体)の表面硬度は、ショアC硬度で、好ましくは95以上、より好ましくは96以上、さらに好ましくは97以上であり、上限値として、好ましくは100以下、より好ましくは99以下、さらに好ましくは98以下である。ショアD硬度では、好ましくは68以上、より好ましくは69以上、さらに好ましくは70以上であり、上限値として、好ましくは78以下、より好ましくは75以下、さらに好ましくは72以下である。
【0054】
これらの中間層の材料硬度及び表面硬度が上記範囲よりも軟らかすぎると、フルショットした時にスピン量がかかりすぎたり、実打初速が低くなったりして、アベレージヒッターのドライバー(W#1)打撃及びアイアン打撃時の飛距離が出なくなることがある。一方、中間層の材料硬度及び表面硬度が上記範囲より硬すぎると、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなったり、またはパターやショートアプローチ実施時の打感が硬くなりすぎたり、ショートアプローチ実施時のスピンが低くなりすぎることがある。
【0055】
中間層の厚さは、好ましくは1.0mm以上であり、より好ましくは1.2mm以上、さらに好ましくは1.4mm以上である。一方、中間層の厚さの上限値としては、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.8mm以下、さらに好ましくは1.6mm以下である。また、中間層の厚さは、後述するカバーより厚くすることが好適である。中間層の厚さが、上記範囲を外れ、あるいはカバーより薄くなると、ドライバー(W#1)打撃時のボ-ルの低スピン効果が足りずアベレージヒッターにおけるフルショット時の狙いの飛距離が出なくなることがある。また、中間層が薄すぎると、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0056】
中間層厚さからカバー厚さを引いた値は、好ましくは0mmより大きく、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.4mm以上であり、上限値としては、好ましくは1.2mm以下、より好ましくは0.9mm以下、さらに0.7mm以下である。この値が上記範囲を逸脱すると、フルショットでのボールのスピン量が増えたり、実打初速が低くなるなどして、アベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなることがある。この値が小さすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0057】
中間層の材料については、アイオノマー樹脂を主材料として採用することが好適である。アイオノマー樹脂を主材料として採用する場合、亜鉛中和型アイオノマー樹脂とナトリウム中和型アイオノマー樹脂とを混合して主材として用いる態様が望ましい。その配合比率は、亜鉛中和型/ナトリウム中和型(質量比)で5/95~95/5、好ましくは10/90~90/10、更に好ましくは15/85~85/15である。この比率内にZn中和アイオノマーとNa中和アイオノマーを含めないと、反発が低くなりすぎてアベレージヒッターの所望の飛びが得られなかったり、常温での繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなったり、さらに低温(零下)での割れ耐久性が悪くなることがある。
【0058】
中間層材料には、任意の添加剤を用途に応じて適宜配合することができる。例えば、顔料,分散剤,老化防止剤,紫外線吸収剤,光安定剤などの各種添加剤を加えることができる。これら添加剤を配合する場合、その配合量としては、基材樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、上限として、好ましくは10質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0059】
中間層材料については、後述するカバー材で好適に用いられるポリウレタンとの密着度を高めるために中間層表面を研磨することが好適である。更に、その研磨処理の後にプライマー(接着剤)を中間層表面に塗布するか、もしくは材料中に密着強化材を添加することが好ましい。
【0060】
コアに中間層を被覆した球体(中間層被覆球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量(mm)は、2.6mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.8mm以上、さらに好ましくは3.0mm以上である。一方、上記たわみ量の上限値としては、好ましくは4.2mm以下、より好ましくは3.9mm以下、更に好ましくは3.6mm以下である。中間層被覆球体のたわみ量が小さすぎる、即ち、硬すぎると、スピン量が増えすぎてしまいアベレージヒッターのドライバー(W#1)打撃及びアイアン打撃時の飛距離が出なくなることがあり、または打感が硬くなりすぎることがある。一方、上記のたわみ量が大きすぎる、即ち、上記球体が軟らかすぎると、アイアン打撃時にスピン量が少なくなりランが多くなり過ぎ、所望する距離のコントロールが難しくなったり、打感が軟らかくなりすぎたり、あるいは繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0061】
コアに中間層を被覆した球体(中間層被覆球体)の初速は、好ましくは73.0m/s以上、より好ましくは74.0m/s以上、さらに好ましくは75.0m/s以上であり、上限値としては、好ましくは76.5m/s以下、より好ましくは76.0m/s以下、さらに好ましくは75.5m/s以下である。この初速値が高すぎると、ロングヒッターのドライバー打撃時に対して現状のツアーボールに対しての飛距離の落ちる程度が足りずに、R&AおよびUSGAが想定する新たな飛距離ルールの標準距離よりも飛びすぎるおそれがある。一方、この初速が低すぎると、アベレージヒッターのドライバー(W#1)打撃及びアイアン打撃時の飛距離がこのレベルのユーザーの求める飛距離よりも小さくなってしまうことがある。この場合における上記の初速の値は、上述したコアの初速の測定で使用する装置及び条件と同様である。
【0062】
中間層被覆球体の初速をVM(m/s)、中間層被覆球体に対して初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をM(mm)とするとき、VM/Mの値は、17以上であることが好ましく、より好ましくは19以上、さらに好ましくは21以上であり、上限値としては、好ましくは29以下、より好ましくは27以下、さらに好ましくは25以下である。この値大きすぎると、ロングヒッターのドライバー打撃時に対して現状のツアーボールに対しての飛距離の落ちる程度が足りずに、R&A及びUSGAが想定する新たな飛距離ルールの標準距離よりも飛びすぎるおそれがある。一方、上記値が小さすぎると、アベレージヒッターのドライバー(W#1)打撃の際の飛距離が出なくなりすぎることがある。
【0063】
また、コアの初速(m/s)、中間層被覆球体の初速(m/s)、コアの質量(g)、及び中間層被覆球体の質量(g)の関係式、〔(中間層被覆球体の初速-コアの初速)×(中間層被覆球体の質量-コアの質量)〕の値(Miw)を適正化することが好適である。この値は、中間層材料部分の反発をその質量部との関係で示す値を意味する。上記のMiw値として、好ましくは1以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは7以上であり、上限値としては、好ましくは18以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは12以下である。この値が大きすぎると、繰り返し打撃耐久性が悪くなりすぎることがある。一方、上記値が小さすぎると、フルショットした時のボールのスピン量が増えてしまい、アベレージヒッターのドライバー(W#1)打撃及びアイアン打撃時の飛距離が出なくなりすぎることがある。
【0064】
次に、カバーについて説明する。
カバーの材料硬度は、特に制限はないが、ショアC硬度で、好ましくは50以上、より好ましくは57以上、さらに好ましくは63以上であり、上限値として、好ましくは86以下、より好ましくは74以下、さらに好ましくは71以下である。ショアD硬度では、好ましくは30以上、より好ましくは35以上、さらに好ましくは40以上であり、上限値として、好ましくは57以下、より好ましくは53以下、さらに好ましくは50以下である。
【0065】
中間層被覆球体をカバーで被覆した球体(ボール)の表面硬度は、ショアC硬度で、好ましくは73以上、より好ましくは78以上、さらに好ましくは83以上であり、上限値として、好ましくは95以下、より好ましくは92以下、さらに好ましくは90以下である。ショアD硬度では、好ましくは50以上、より好ましくは53以上、さらに好ましくは56以上であり、上限値として、好ましくは70以下、より好ましくは65以下、さらに好ましくは60以下である。
【0066】
これらのカバーの材料硬度及び表面硬度が上記範囲よりも軟らかすぎると、フルショットでスピン量が多くなり、アベレージヒッターのドライバー(W#1)打撃及びアイアン打撃時の飛距離が出なくなることがある。一方、カバーの材料硬度及び表面硬度が上記範囲より硬すぎると、アプローチでのスピンが掛からなくなり、あるいは耐擦過傷性が悪くなることがある。
【0067】
カバーの厚さは、好ましくは0.3mm以上であり、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは0.6mm以上である。一方、カバーの厚さの上限値としては、好ましくは1.2mm以下、より好ましくは0.9mm以下、さらに好ましくは0.8mm以下である。上記カバーが厚すぎると、フルショット時にボールの反発性が足りなくなったり、あるいはスピン量が多くなるなどして、その結果、アベレージヒッターのドライバー(W#1)打撃及びアイアン打撃時の飛距離が出なくなることがある。一方、上記カバーが薄すぎると、耐擦過傷性が悪くなり、あるいはアプローチでのスピンが掛からなくなりコントロール性が不足することがある。
【0068】
上記カバーの材料としては、ショートゲームでのスピンコントロール性と耐擦過傷性との観点から、ゴルフボールのカバー材で使用される各種のウレタン樹脂を使用することができる。更には量産性の観点から、熱可塑性ポリウレタンを主体とした樹脂材料を使用することが好適である。さらには、(I)熱可塑性ポリウレタン及び(II)ポリイソシアネート化合物を主成分とする樹脂配合物により形成することが好適である。
【0069】
上記の(I)成分と(II)成分とを合わせた合計質量が、カバーの樹脂組成物全量に対して、60%以上であることが推奨され、より好ましくは、70%以上である。上記(I)成分及び(II)成分については以下に詳述する。
【0070】
上記(I)熱可塑性ポリウレタンについて述べると、その熱可塑性ポリウレタンの構造は、長鎖ポリオールである高分子ポリオール(ポリメリックグリコール)からなるソフトセグメントと、鎖延長剤およびポリイソシアネート化合物からなるハードセグメントとを含む。ここで、原料となる長鎖ポリオールとしては、従来から熱可塑性ポリウレタンに関する技術において使用されるものはいずれも使用でき、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、共役ジエン重合体系ポリオール、ひまし油系ポリオール、シリコーン系ポリオール、ビニル重合体系ポリオールなどを挙げることができる。これらの長鎖ポリオールは1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうちでも、反発弾性率が高く低温特性に優れた熱可塑性ポリウレタンを合成できる点で、ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0071】
鎖延長剤としては、従来の熱可塑性ポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、例えば、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量400以下の低分子化合物であることが好ましい。鎖延長剤としては、1,4-ブチレングリコール、1,2-エチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。鎖延長剤としては、これらのうちでも、炭素数2~12の脂肪族ジオールが好ましく、1,4-ブチレングリコールがより好ましい。
【0072】
ポリイソシアネート化合物としては、従来の熱可塑性ポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限はない。具体的には、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-(又は)2,6-トルエンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン1,5-ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートからなる群から選択された1種又は2種以上を用いることができる。ただし、イソシアネート種によっては射出成形中の架橋反応をコントロールすることが困難なものがある。本発明においては生産時の安定性と発現される物性とのバランスとの観点から、芳香族ジイソシアネートである4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが最も好ましい。
【0073】
具体的な(I)成分の熱可塑性ポリウレタンとし、市販品を用いることもでき、例えば、パンデックスT8295,同T8290,同T8260(いずれもディーアイシーコベストロポリマー社製)などが挙げられる。
【0074】
必須成分ではないが、上記(I)及び(II)成分に、別の成分である(III)成分として、上記熱可塑性ポリウレタン以外の熱可塑性エラストマーを配合することができる。この(III)成分を上記樹脂配合物に配合することにより、樹脂配合物の更なる流動性の向上や反発性、耐擦過傷性等、ゴルフボールカバー材として要求される諸物性を高めることができる。
【0075】
上記(I)、(II)及び(III)成分の組成比については、特に制限はないが、本発明の効果を十分に有効に発揮させるためには、質量比で(I):(II):(III)=100:2~50:0~50であることが好ましく、さらに好ましくは、(I):(II):(III)=100:2~30:8~50(質量比)とすることである。
【0076】
さらに、上記の樹脂配合物には、必要に応じて、上記の熱可塑性ポリウレタンを構成する成分以外の種々の添加剤を配合することができ、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤等を適宜配合することができる。
【0077】
上述したコア,中間層及びカバー(最外層)の各層を積層して形成されたマルチピースソリッドゴルフボールの製造方法については、公知の射出成形法等の常法により行なうことができる。例えば、コアの周囲に中間層材料を射出成形用金型で射出して中間層被覆球体を得、最後に、最外層であるカバーの材料を射出成形することによりマルチピースのゴルフボールを得ることができる。また、半殻球状に成形した2枚のハーフカップを予め用意し、これでコアや中間層被覆球体を包み加熱加圧成形することによりゴルフボールを作製することもできる。
【0078】
ゴルフボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量(mm)は、2.8mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.9mm以上、さらに好ましくは3.0mm以上である。一方、上記たわみ量の上限値としては、好ましくは3.7mm以下、より好ましくは3.5mm以下、更に好ましくは3.3mm以下である。ゴルフボールのたわみ量が小さすぎる、即ち、硬すぎると、スピン量が増えすぎてしまいアベレージヒッターのドライバー(W#1)打撃及びアイアン打撃時の飛距離が出なくなることがあり、または打感が硬くなりすぎることがある。一方、上記のたわみ量が大きすぎる、即ち、上記球体が軟らかすぎると、アイアン打撃時にスピン量が少なくなりランが多くなり過ぎ、所望する距離のコントロールが難しくなったり、打感が軟らかくなりすぎたり、あるいは繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0079】
中間層被覆球体にカバーを被覆した球体(ボール)の初速は、好ましくは72.0m/s以上、より好ましくは73.0m/s以上、さらに好ましくは74.0m/s以上であり、上限値としては、76.0m/s以下、好ましくは75.5m/s以下、より好ましくは75.0m/s以下である。この初速値が高すぎると、ロングヒッターのドライバー打撃時に対して現状のツアーボールに対しての飛距離の落ちる程度が足りずに、R&AおよびUSGAが想定する新たな飛距離ルールの標準距離よりも飛びすぎるおそれがある。一方、この初速が低すぎると、アベレージヒッターのドライバー(W#1)打撃及びアイアン打撃時の飛距離がこのレベルのユーザーの求める飛距離よりも小さくなってしまうことがある。この場合における上記の初速の値は、上述したコア及び中間層被覆球体の初速の測定で使用する装置及び条件と同様である。
【0080】
ボールの初速をV(m/s)、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をB(mm)とするとき、V/Bの値は、20以上であることが好ましく、より好ましくは21以上、さらに好ましくは23以上であり、上限値としては、好ましくは28以下、より好ましくは27以下、さらに好ましくは26以下である。この値大きすぎると、ロングヒッターのドライバー打撃時に対して現状のツアーボールに対しての飛距離の落ちる程度が足りずに、R&A及びUSGAが想定する新たな飛距離ルールの標準距離よりも飛びすぎるおそれがある。一方、上記値が小さすぎると、アベレージヒッターのドライバー(W#1)打撃の際の飛距離が出なくなりすぎることがある。
【0081】
また、中間層被覆球体の初速(m/s)、ボールの初速(m/s)、中間層被覆球体の質量(g)及びボールの質量(g)の関係式、〔(ボールの初速-中間層被覆球体の初速)×(ボールの質量-中間層被覆球体の質量)〕の値(CViw)を適正化することが好適である。この値は、カバー材料部分の反発をその質量部との関係で示す値を意味する。上記のCViw値として、好ましくは-5以上、より好ましくは-4以上、さらに好ましくは-3以上であり、上限値としては、好ましくは0以下、より好ましくは-1以下、さらに好ましくは-2以下である。この値が大きすぎると、ショートゲーム時のコントロール性が不足することがある。一方、上記値が小さすぎると、フルショットでボールのスピン量が増えたり、ボールの反発が低くなって、アベレージヒッターのドライバー(W#1)打撃及びアイアン打撃時の飛距離が出なくなりすぎることがある。
【0082】
〔各球体の表面硬度の関係について〕
本発明は、中間層被覆球体の表面硬度とボールの表面硬度との関係が、アベレージヒッターにおけるフルショット時における優位な飛距離と、ショートゲーム時のコントロール性との両立の点から、下記式
(ボールの表面硬度)<(中間層被覆球体の表面硬度)
を満たすことを要する。中間層被覆球体の表面硬度からボールの表面硬度を引いた値は、ショアC硬度で、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上であり、上限値としては、好ましくは18以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは12以下である。上記値が小さすぎると、ショートゲームにおけるコントロール性が悪くなることがある。一方、上記値が大きすぎると、フルショット時のスピン量が増えて、アベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなることがある。
【0083】
中間層被覆球体の表面硬度からコアの表面硬度を引いた値は、ショアC硬度で、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上であり、上限値としては、好ましくは28以下、より好ましくは25以下、さらに好ましくは22以下である。上記範囲を逸脱すると、フルショットした時のボールのスピン量が多くなり、アベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなることがある。
【0084】
中間層被覆球体の表面硬度からコアの中心硬度を引いた値は、ショアC硬度で、好ましくは30以上、より好ましくは35以上、さらに好ましくは40以上であり、上限値としては、好ましくは53以下、より好ましくは48以下、さらに好ましくは45以下である。上記値が小さすぎると、フルショット時にボールのスピン量が増え、アベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなることがある。一方、上記値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなり、または実打初速が低くなりアベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなることがある。
【0085】
〔コア直径とボールの直径について〕
コア直径とボール直径との関係、即ち、(コア直径)/(ボール直径)の値が、0.859以上であることが好ましく、より好ましくは0.874以上、さらに好ましくは0.888以上である。一方、上限値としては、好ましくは0.937以下、より好ましくは0.918以下、さらに好ましくは0.902以下である。この値が小さすぎると、ボール初速が低くなり、あるいはボール全体のたわみ量が小さくなりボールが硬くなってしまい、フルショット時のボールのスピン量が増え、アベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなることがある。一方、上記値が大きすぎると、フルショット時のボールのスピン量が増えてアベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなり、あるいは繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0086】
〔各球体のたわみ量の関係について〕
コア及びボールの各球体に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量(mm)をそれぞれC(mm)、B(mm)としたとき、C-Bの値は、好ましくは0.70mm以上、より好ましくは0.80mm以上、さらに好ましくは0.90mm以上であり、上限値は、好ましくは1.20mm以下、より好ましくは1.15mm以下、さらに好ましくは1.10mm以下である。この値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなったり、実打初速が低くなって、アベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなることがある。一方、この値が小さすぎると、打感が硬くなりすぎたり、フルショットした時のスピン量が多くなり、アベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなることがある。
【0087】
コア及び中間層被覆球体の各球体に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量(mm)をそれぞれC(mm)、M(mm)としたとき、C-Mの値は、好ましくは0.65mm以上、より好ましくは0.68mm以上、さらに好ましくは0.72mm以上であり、上限値は、好ましくは1.15mm以下、より好ましくは1.00mm以下、さらに好ましくは0.85mm以下である。この値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなったり、実打初速が低くなって、アベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなることがある。一方、この値が小さすぎると、打感が硬くなりすぎたり、フルショットした時のスピン量が多くなり、アベレージヒッターの所望の飛距離が得られなくなることがある。
【0088】
〔Ciw+Miw+CViwの値〕
本発明のゴルフボールは、(コアの初速×コアの質量)の値をCiw、〔(中間層被覆球体の初速-コアの初速)×(中間層被覆球体の質量-コアの質量)〕の値をMiw、〔(ボールの初速-中間層被覆球体の初速)×(ボールの質量-中間層被覆球体の質量)〕の値をCViwとしたとき、下記式
Ciw+Miw+CViw≦2550
を満たすことを要する。Ciw+Miw+CViwは、コア、中間層材料、カバー材料部分それぞれの反発をその質量部との関係で示した値の総和を意味し、上記数式を満たすようにゴルフボールを設計することにより、ロングヒッターがドライバー(W#1)で打撃した時の飛距離を落としつつも、アベレージヒッターのドライバー(W#1)やロングアイアンでの飛距離の落ちる距離をロングヒッターの飛距離の落ちる距離よりも小さくすることができる。Ciw+Miw+CViwの上限値は、2550以下であり、好ましくは2530以下、より好ましくは2510以下であり、下限値としては、好ましくは2300以上、より好ましくは2400以上、さらに好ましくは2450以上である。この値が大きすぎると、ロングヒッターのドライバー(W#1)打撃条件で飛び過ぎるか、或いは、アベレージヒッターのドライバー(W#1)打撃や6番アイアン(I#6)で打撃条件において飛距離が少なくなりすぎることがある。一方、上記値が小さすぎると、アベレージヒッターのドライバー(W#1)で打撃または6番アイアン(I#6)での打撃条件において飛距離が少なくなりすぎることがある。
【0089】
カバーの外表面には多数のディンプルを形成することができる。カバー表面に配置されるディンプルについては、特に制限はないが、好ましくは250個以上、好ましくは300個以上、より好ましくは320個以上であり、上限として、好ましくは380個以下、より好ましくは350個以下、さらに好ましくは340個以下具備することができる。ディンプルの個数が上記範囲より多くなると、ボールの弾道が低くなり、飛距離が低下することがある。一方、ディンプル個数が少なくなると、ボールの弾道が高くなり、飛距離が伸びなくなる場合がある。
【0090】
ディンプルの形状については、円形、各種多角形、デュードロップ形、その他楕円形など1種類又は2種類以上を組み合わせて適宜使用することができる。例えば、円形ディンプルを使用する場合には、直径は2.5mm以上6.5mm以下程度、深さは0.08mm以上0.30mm以下とすることができる。
【0091】
ディンプルがゴルフボールの球面に占めるディンプル占有率、具体的には、ディンプルの縁に囲まれた平面の面縁で定義されるディンプル面積の合計が、ディンプルが存在しないと仮定したボール球面積に占める比率(SR値)については、空気力学特性を十分に発揮し得る点から70%以上90%以下であることが望ましい。また、各々のディンプルの縁に囲まれた平面下のディンプルの空間体積を、前記平面を底面とし、かつこの底面からのディンプルの最大深さを高さとする円柱体積で除した値V0は、ボールの弾道の適正化を図る点から0.35以上0.80以下とすることが好適である。更に、ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル容積の合計がディンプルが存在しないと仮定したボール球容積に占めるVR値は、0.6%以上1.0%以下とすることが好ましい。上述した各数値の範囲を逸脱すると、良好な飛距離が得られない弾道となり、十分満足した飛距離を出せない場合がある。
【0092】
なお、本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、ボール外径は42.672mm内径のリングを通過しない大きさであり、質量は好ましくは45.0~45.93gに形成することができる。
【実施例0093】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0094】
〔実施例1~3、比較例1~4〕
コアの形成
実施例1~3及び比較例1~3については、表1に示した各例のゴム組成物を調製した後、表1に示す各例の加硫条件により加硫成形することによりソリッドコアを作製した。
【0095】
比較例4については、上記と同様に、表1の配合に基づいてコアを作製する。
【0096】
【0097】
上記の配合についての詳細は下記のとおりである。
・ポリブタジエン A:商品名「BR01」(JSR社製)
・ポリブタジエン B:商品名「Diene645」(FIRESTONE POLYMERS社)
・ポリブタジエン C:商品名「BUDENE 1224G」(Goodyear Tire & Rubber Company社)
・イソプレンゴム:商品名「IR2200」(JSR社製)
・スチレン・ブタジエンゴム:商品名「SBR1507」(JSR社製)
・アクリル酸亜鉛:商品名「ZN-DA85S」(日本触媒社製)
・メタクリル酸亜鉛:商品名「ZDA-90」(浅田化学工業社製)
・ステアリン酸亜鉛:商品名「BR-3T」(Akrochem社製)
・有機過酸化物:ジクミルパーオキサイド、商品名「パークミルD」(日油社製)
・硫黄:商品名「サンミックスS-80N」(三新化学工業社製、ゴム用粉末硫黄を80wt%含有したもの)
・水:純水(正起薬品工業社製)
・老化防止剤:2,2-メチレンビス(4-メチル-6-ブチルフェノール)、商品名「ノクラックNS-6」(大内新興化学工業社製)
・酸化亜鉛:商品名「三種酸化亜鉛」(堺化学工業社製)
・ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩:和光純薬工業社製
【0098】
中間層及びカバー(最外層)の形成
次に、実施例1~3及び比較例1~3については、射出成形用金型を用いて、コア表面の周囲に、表2に示す中間層の樹脂材料No.1またはNo.2により射出成形し、中間層を形成した。次いで、別の射出成形用金型を用いて、上記の中間層被覆球体の周囲に、表2に示すカバー(最外層)の樹脂材料No.3により射出成形し、カバーを形成した。この際、カバー表面には、全ての実施例及び比較例に共通する所定の多数のディンプルを形成した。
【0099】
比較例4については、射出成形用金型を用いて、コア表面の周囲に、表2に示す樹脂材料No.4により射出成形し、カバーを形成する。比較例4は、中間層のないツーピースソリッドゴルフボールである。この際、カバー表面には、上記の実施例及び比較例に共通する所定の多数のディンプルを形成する。
【0100】
【0101】
表2の配合成分の詳細は下記のとおりである。
「ハイミラン1605」「ハイミラン1557」「ハイミラン1706」及び「AM7318」三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー
「トリメチロールプロパン」(TMP)東京化成工業社製
「TPU(1)」ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」、エーテルタイプ熱可塑性ポリウレタン、材料硬度(ショアD)「50」
「TPU(2)」ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」、エーテルタイプ熱可塑性ポリウレタン、材料硬度(ショアD)「47」
【0102】
得られた各ゴルフボールにつき、コアの各位置における内部硬度、コアや各被覆球体の外径、各層の厚さ及び材料硬度、各被覆球体の表面硬度、ボール初速などの諸物性を下記の方法で評価し、表3及び表4に示す。
【0103】
コア硬度分布
コアの表面は球面であるが、その球面に硬度計の針をほぼ垂直になるようにセットし、ASTM D2240に従ってショアC硬度で表面硬度を計測する。コアの中心及び所定位置については、コアを半球状にカットして断面を平面にして、中心部分及び表3に示した所定位置に硬度計の針を垂直に押し当てて測定し、中心及び各位置の硬度をショアC硬度の値で示す。硬度の測定には、ショアC型硬度計を備えた高分子計器株式会社製の自動ゴム硬度計「P2」が用いられる。硬度の値は最大値を読み取る。測定は、全て、23±2℃の環境下でなされる。なお、表中の数値はショアC硬度の値である。
また、コアの硬度分布において、コアの中心のショアC硬度Cc、コアの中心と表面との中点MのショアC硬度Cm、中点Mから内側に2mm、4mm、6mmの位置のショアC硬度Cm-2、Cm-4、Cm-6、中心Mから外側に2mm、4mm、6mmの位置のショアC硬度Cm+2、Cm+4、Cm+6、コアの表面のショアC硬度Csについては、下記の面積A~F
・面積A: 1/2×2×(Cm-4-Cm-6)
・面積B: 1/2×2×(Cm-2-Cm-4)
・面積C: 1/2×2×(Cm-Cm-2)
・面積D: 1/2×2×(Cm+2-Cm)
・面積E: 1/2×2×(Cm+4-Cm+2)
・面積F: 1/2×2×(Cm+6-Cm+4)
を計算し、下記の5個の数式の値を求める。
(1)面積A+面積B
(2)面積C+面積D
(3)面積D+面積E
(4)(面積C+面積D)-(面積A+面積B)
(5){(面積C+面積D)-(面積A+面積B)}×(Cs-Cc)
【0104】
コア硬度分布の面積A~Fの説明として、実施例1のコア硬度分布データを用いて面積A~Fを表した概略図を
図2に示す。
また、実施例1~3及び比較例1~4のコア硬度分布のグラフを
図3、
図4に示す。
【0105】
コア及び中間層被覆球体の各球体の外径
恒温槽にて23.9±1℃の温度で少なくとも3時間以上温度調節し、23.9±2℃の室内にて、任意の表面5箇所を測定し、その平均値を1個の各球体の測定値とし、測定個数10個での平均値を求める。
【0106】
ボールの直径
恒温槽にて23.9±1℃の温度で少なくとも3時間以上温度調節し、23.9±2℃の室内にて、任意のディンプルのない部分を15箇所測定し、その平均値を1個のボールの測定値とし、測定個数10個のボールの平均値を求める。
【0107】
コア、中間層被覆球体、及びボールのたわみ量
各対象被覆球体を硬板の上に置き、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷したときのたわみ量を計測する。なお、上記のたわみ量は、恒温槽にて23.9±1℃の温度で少なくとも3時間以上温度調節し、23.9±2℃の室内にて計測した測定値である。測定器はミュー精器社製の高荷重コンプレッションテスターを使用し、コア、各層の被覆球体またはボールを圧縮する加圧ヘッドのダウン速度は10mm/sとする。
【0108】
中間層及びカバーの材料硬度(ショアC硬度,ショアD硬度)
各層の樹脂材料を厚さ2mmのシート状に成形し、23±2℃の温度下にて2週間放置した。測定時には3枚のシートが重ね合わされる。ASTM D2240規格に準拠したショアC硬度計及びショアD硬度計にて、それぞれショアC硬度及びショアD硬度を計測する。硬度の測定には、ショアC型硬度計もしくはショアD型硬度計を取り付けた高分子計器株式会社製の自動ゴム硬度計「P2」が用いられる。硬度の値は最大値を読み取る。計測方法はASTM D2240規格に従う。
【0109】
中間層被覆球体及びボールの各球体の表面硬度
各球体の表面に対して針を垂直になるように押し当てて計測する。なお、ボール(カバー)の表面硬度は、ボール表面においてディンプルが形成されていない陸部における測定値である。ASTM D2240規格に準拠したショアC硬度計及びショアD硬度計にて、それぞれショアC硬度及びショアD硬度を計測する。硬度の測定には、ショアC型硬度計もしくはショアD型硬度計を取り付けた高分子計器株式会社製の自動ゴム硬度計「P2」が用いられる。硬度の値は最大値を読み取る。計測方法はASTM D2240規格に従う。
【0110】
各球体の初速
R&Aと同型のHye Precision Products製のCOR型初速計を用いて、各球体の初速を23.9±2℃で計測する。その測定原理は以下のとおりである。
エアの圧力を35.5、36.5、39.5、40.5psiの4段階に変更して、ボールを、それぞれの空気圧により、4段階の入射速度で発射し、バリアに衝突させて、そのCOR(反発係数)を測定する。即ち、エアの圧力を4段階に変更して入射速度とCORとの相関式を作る。同様に入射速度と接触時間との相関式を作る。
そして、これらの相関式から、入射速度43.83m/s時のCOR(反発係数)及び接触時間(μs)を求め、下記の初速換算式に代入し、各球体の初速を算出する。
IV=136.8+136.3e+0.019tc
〔ここで、eは反発係数、tcは衝突速度143.8ft/s(43.83m/s)での接触時間(μs)である。〕
各球体の初速の計測において、バレル径は、計測物の外径との間の片側のクリアランスが0.2~2.0mmの間で選択される。コアについては、実施例1~3及び比較例1~3は39.88mm、比較例4は41.53mmのバレル径を選択する。中間層被覆球体については全例が41.53mm、ボールについては全例が43.18mmである。
【0111】
Ciw+Miw+CViwの値
実施例及び比較例の各例において、(コアの初速×コアの質量)の値をCiw、〔(中間層被覆球体の初速-コアの初速)×(中間層被覆球体の質量-コアの質量)〕の値をMiw、〔(ボールの初速-中間層被覆球体の初速)×(ボールの質量-中間層被覆球体の質量)〕の値をCViwとしたときの、Ciw+Miw+CViwの値を計算する。その各例の数値を表4に記載すると共に、そのCiw+Miw+CViwの値を示すグラフを
図5に示す。
【0112】
【0113】
【0114】
各ゴルフボールの飛び(W#1)(I#6)及びアプローチ時のコントロール性について下記の方法で評価する。その結果を表5に示す。
【0115】
飛び評価(W#1,HS54m/s)
ゴルフ打撃ロボットにドライバーのクラブをつけて、ヘッドスピード(HS)54m/sにて打撃した時の、スピン量及び飛距離(トータル)を測定する。クラブは、ブリヂストンスポーツ社製の「TourB XD-5 ドライバー(2017年モデル)」(ロフト角9.5°)を使用し、下記の判定基準により評価する。
〔判定基準〕
○ ・・・ 比較例2対比のトータルが-10.0m以下である。
× ・・・ 比較例2対比のトータルが-10.0mより大きい。
【0116】
飛び評価(W#1,HS40m/s)
ゴルフ打撃ロボットにドライバーのクラブをつけて、ヘッドスピード(HS)40m/sにて打撃した時の、スピン量及び飛距離(トータル)を測定する。クラブは、ブリヂストンスポーツ社製の「JGRドライバー(2016年モデル)」(ロフト角9.5°)を使用し、下記の判定基準により評価する。
〔判定基準〕
○ ・・・ 比較例2対比のトータルが-10.0m以上である。
× ・・・ 比較例2対比のトータルが-10.0m未満である。
【0117】
飛び評価(I#6,HS42m/s)
ゴルフ打撃ロボットに6番アイアン(I#6)をつけて、ヘッドスピード(HS)42m/sで打撃した時の、スピン量及び飛距離(トータル)を測定する。クラブは、ブリヂストンスポーツ社製の「JGR Forged I#6(2016年モデル)」を使用し、下記の判定基準により評価する。
〔判定基準〕
○ ・・・ 比較例2対比のトータルが-10.0m以上である。
× ・・・ 比較例2対比のトータルが-10.0m未満である。
【0118】
飛び評価(I#6,HS35m/s)
ゴルフ打撃ロボットに6番アイアン(I#6)をつけて、ヘッドスピード(HS)35m/sで打撃した時の、スピン量及び飛距離(トータル)を測定する。クラブは、ブリヂストンスポーツ社製の「JGR Forged I#6(2016年モデル)」を使用し、下記の判定基準により評価する。
〔判定基準〕
○ ・・・ 比較例2対比のトータルが-10.0m以上である。
× ・・・ 比較例2対比のトータルが-10.0m未満である。
【0119】
アプローチ時のスピン量の評価
ゴルフ打撃ロボットにサンドウエッジをつけてヘッドスピード(HS)15m/sにて打撃した時のスピンの量で判断する。スピン量は同様に打撃した直後のボールを初期条件計測装置により測定する。サンドウエッジは、ブリヂストンスポーツ社製の「TourStage TW-03(ロフト角57°)2002年モデル」を使用する。
〔判定基準〕
○ ・・・ スピン量4500rpm以上
× ・・・ スピン量4500rpm未満
【0120】
【0121】
表5の結果に示されるように、比較例1~4のゴルフボールは、本発明品(実施例)に比べて以下の点で劣る。
比較例1は、ボール初速が76.0m/sを超えると共に、Ciw+Miw+CViwが2550より大きい。その結果、ドライバー(W#1,HS54m/s)で打撃した時の飛距離が飛び過ぎる。
比較例2は、現在、プロや上級者が使用するツアーボールの一つの実施形態であり、ボールのたわみ量が2.8mm未満であり、ボール初速が76.0m/sを超えると共に、Ciw+Miw+CViwが2550より大きい。その結果、ドライバー(W#1,HS54m/s)で打撃した時の飛距離が飛び過ぎる。
比較例3は、ボールのたわみ量が2.8mm未満であると共に、Ciw+Miw+CViwが2550より大きい。その結果、ドライバー(W#1,HS40m/s)、6番アイアン(I#6,HS42m/s)、6番アイアン(I#6,HS35m/s)で打撃した時の飛距離が低い。
比較例4は、練習場向けのツーピース構造の練習用ボールに相当するものであり、ボールのたわみ量が2.8mm未満であると共に、Ciw+Miw+CViwが2550より大きい。その結果、ドライバー(W#1,HS40m/s)、6番アイアン(I#6,HS42m/s)、6番アイアン(I#6,HS35m/s)で打撃した時の飛距離が低い。