(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062288
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】欠肉検査装置及び欠肉検査装置を備えたトランスファー型プレス加工機
(51)【国際特許分類】
B21D 43/05 20060101AFI20240430BHJP
B30B 13/00 20060101ALI20240430BHJP
B23Q 7/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B21D43/05 Z
B30B13/00 A
B23Q7/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170175
(22)【出願日】2022-10-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】591214527
【氏名又は名称】株式会社ジーテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三ツ村 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】清水 健司
【テーマコード(参考)】
3C033
4E090
【Fターム(参考)】
3C033BB03
3C033HH25
3C033NN02
3C033NN06
3C033PP01
3C033PP19
4E090HA03
(57)【要約】
【課題】検出の安定性及び検出の迅速性に優れた欠肉検査装置及び欠肉検査装置を備えたトランスファー型プレス加工機を提供する。
【解決手段】第一の方向H1の第1側LDにおいて縦向きに設けられた第1側ガイドと12A、12Bと、第2側RDにおいて縦向きに設けられた第2側ガイド14A、14Bと、第1側LDにおいて設けられた第1着座21と、第2側RDに設けられた、上方の第2上着座31及び下方の第2下着座32A、32Bと、を備え、第2上着座31は、第1着座21側に向けて、第一の方向H1に進退自在に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の方向の第1側において縦向きに設けられた第1側ガイドと、
前記第一方向における前記第1側に対向する第2側において縦向きに設けられた第2側ガイドと、
前記第1側において、前記第1側ガイドより前記第2側の位置に設けられた第1着座と、
前記第2側において、前記第2側ガイドより前記第1側の位置に設けられた、上方の第2上着座及び下方の第2下着座と、
を備え、
前記第2上着座は、前記第一の方向に進退自在に構成され、前進時、前記第2上着座の先端が前記第2下着座より前記第1側に進出する、
ことを特徴とする欠肉検査装置。
【請求項2】
前記第一の方向と交差する第二の方向において、少なくとも一つの前記第2上着座を挟んで、それぞれ少なくとも一つの第2下着座が設けられている、
請求項1記載の欠肉検査装置。
【請求項3】
前記第2上着座が、被検査用ワークにおける前記第一の方向の第2側の端縁部を支承し、前記被検査用ワークを水平方向に対し傾斜状態で支承するものである請求項1又は請求項2記載の欠肉検査装置。
【請求項4】
前記第2下着座が、被検査用ワークにおける前記第一の方向の第2側の端縁部を支承し、前記被検査用ワークをほぼ水平状態で支承するものである請求項1又は請求項2記載の欠肉検査装置。
【請求項5】
一組のスライド及びボルスタに複数の金型を配列し、ワークが複数の金型を備えた工程ごとの順番でプレス加工されるようにワークを搬送する搬送機構を備えたトランスファー型プレス加工機であり、
請求項1記載の前記欠肉検査装置が、前記複数の金型の配列内に設けられ、
前記搬送機構が、前記欠肉検査装置内に搬入された前記ワークを把持し、次の金型へ搬出するように構成された把持手段を有し、
前記把持手段は前記ワークの把持の可否検出手段を有しており、
前記把持の可否検出手段は前記ワークの把持が不可のとき、前記プレス加工機に対しそのプレス動作を停止させる信号を与えるようにしてある、
ことを特徴とする欠肉検査装置を備えたトランスファー型プレス加工機。
【請求項6】
前記欠肉検査装置が、前記複数の金型の配列内のアイドル工程位置に設けられている、請求項5記載の欠肉検査装置を備えたトランスファー型プレス加工機。
【請求項7】
前記欠肉検査装置が、前記複数の金型の配列内の成型工程より後工程の位置に設けられている、請求項5記載の欠肉検査装置を備えたトランスファー型プレス加工機。
【請求項8】
前記欠肉検査装置が、前記複数の金型の配列内の成型工程より前工程の位置に設けられている、請求項5記載の欠肉検査装置を備えたトランスファー型プレス加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠肉検査装置及び欠肉検査装置を備えたトランスファー型プレス加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用パネル(フロントピラー、クロスメンバ、アウターパネルやサイドドアパネルなど)は、プレス成形機で成型するのが一般的である。
一方で、生産性を高めるためのトランスファー型プレス加工機が知られている。
【0003】
このトランスファー型プレス加工機は、一組のスライド及びボルスタに複数の金型を配列し、ワークが複数の金型を備えた工程ごとの順番でプレス加工されるようにワークを搬送する搬送機構を備えたものである。
【0004】
コイル材からのブランキング加工においては、材料又はワークに付着するスタンピングオイルの量の変化により、送り装置(ロールフィーダ)上でワークとロールが滑り、コイル材からのワーク供給量が短くなり、正規寸法よりも短い状態のワークをブランキングしてしまう不具合が発生する。
絞り(ドロー)成形においては、ワークの搬送時の位置ずれや、金型内のワークの位置決め品の摩耗により、ワークが正規の位置からずれた状態となると、加工時のブランクホルダーによるワークの抑えが弱まり、ワークが偏って流入し、材料の端部が短くなる不具合が生じる。この場合、搬送方向とは異なる位置に正規寸法よりも短い状態のワークが発生することもある。
また、一連のプレス作業工程において、ヒューマンエラーを皆無とすることはできない。
これらの要因により、搬送方向あるいは異なる方向にワークの寸法が短くなる欠肉、金属板(例えば高張力鋼板)の場合において寸法が短い欠肉材料が生じることがある。
【0005】
欠肉は材料の外周に生じるものである。自動車パネル同士を接合する際は、製品外周は、他の製品との接合部分であり、欠肉が生じると自動車パネルの接合が適切に行われなくなる不具合が生じる。
また、欠肉が発生しても接合に不具合が生じないよう、あらかじめ製品外周に余裕を持たせ、トランスファープレスの最終工程で余分な領域をトリムすることも考えられるが、材料の歩留りが悪化し量産には不適である。
そこで発生した欠肉を確実に検知できるような仕組みが必要である。
【0006】
他方で、トランスファー型プレス加工機において、搬送方向に直交する端部に欠肉があるワーク(欠肉材料)が入り込むと、搬送機構を構成する把持手段(例えば把持するためのフィンガー)により欠肉材料を把持できない状態となる。
【0007】
前記把持手段には、材料を把持できない場合には、欠肉材料を排除するためにプレス機の運転を停止する信号を検出するセンサを有しており、センサが動作しないときプレス機の運転が停止するように構成されており、欠肉が例えば10mm以上の大きな欠肉材料がプレス機外に排出されることはない。
【0008】
しかし、前記金属板(プレス工程での送り方向の寸法が例えば250~1500mm)の場合、例えば10mm以内、特に5mm以内の欠肉が発生することがある。
しかるに、把持手段は、設備の関係で、プレス機による材料の送り方向に対し、直交する方向の両サイドにしか取り付けることができないため、欠肉の検出は、前記直交する方向の(サイド方向)寸法のみに限定され、送り方向の寸法の欠肉は検出できない。
したがって、送り方向の例えば5mm以内の欠肉を検出することが困難であり、生産性に影響を与える。
【0009】
一方、小さな欠肉を検出できる機構としては、特許文献1などの光学的検出形態がほとんどであるが、振動の発生するプレス機ではカメラの画像がぶれて正確な寸法は図れない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の検査装置は、透過光を光学的に検出するものであり、生産現場においては、アイドル工程で待機している材料に対してはスペースや周辺環境などの観点から適用できない場合がある。また、材料の寸法に関する欠肉の検出には不適である。
【0012】
さらに、トランスファー型プレス加工機における金属板に適用しようとした場合において、検出の安定性及び迅速な検出の点で十分でないことが課題として残されている。
【0013】
そこで本発明の主たる課題は、高精度に欠肉を検出しつつも、検出の安定性及び迅速な検出に優れた欠肉検査装置及び欠肉検査装置を備えたトランスファー型プレス加工機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決した欠肉検査装置の態様を次のとおりである。
第一の方向の第1側において縦向きに設けられた第1側ガイドと、
前記第一方向における前記第1側に対向する第2側において縦向きに設けられた第2側ガイドと、
前記第1側において、前記第1側ガイドより前記第2側の位置に設けられた第1着座と、
前記第2側において、前記第2側ガイドより前記第1側の位置に設けられた、上方の第2上着座及び下方の第2下着座と、
を備え、
前記第2上着座は、前記第一の方向に進退自在に構成され、前進時、前記第2上着座の先端が前記第2下着座より前記第1側に進出する、
ことを特徴とする欠肉検査装置。
【0015】
また、トランスファー型プレス加工機の態様を次のとおりである。
一組のスライド及びボルスタに複数の金型を配列し、ワークが複数の金型を備えた工程ごとの順番でプレス加工されるようにワークを搬送する搬送機構を備えたトランスファー型プレス加工機であり、
前記欠肉検査装置が、前記複数の金型の配列内に設けられ、
前記搬送機構が、前記欠肉検査装置内に搬入された前記ワークを把持し、次の金型へ搬出するように構成された把持手段を有し、
前記把持手段は前記ワークの把持の可否検出手段を有しており、
前記把持の可否検出手段は前記ワークの把持が不可のとき、前記プレス加工機に対しそのプレス動作を停止させる信号を与えるようにしてある、
ことを特徴とする欠肉検査装置を備えたトランスファー型プレス加工機。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高精度で、検出の安定性及び迅速な検出に優れた欠肉検査装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図9】形状を異にする他の材料に対する実施の形態の平面図である。
【
図10】トランスファー型プレス加工機の概要斜視図である。
【
図11】プレス工程に対する欠肉検査装置の第1の配置例の説明図である。
【
図12】プレス工程に対する欠肉検査装置の第2の配置例の説明図である。
【
図13】プレス工程に対する欠肉検査装置の第3の配置例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の態様を説明する。
【0019】
本発明に係る欠肉検査装置は、例えばトランスファー型プレス加工機の加工工程中に組み込むことができる。
そこで、まずトランスファー型プレス加工機1について、
図10によって概説する。
【0020】
まずトランスファー型プレス加工機1の実施の形態は、1組のスライド2及びボルスタ3に、複数の金型を配列したものである。上下動可能なスライド2の下面側に配置された上型4と、固定のボルスタ3の上側に配置された下型5間に、ワーク(例えば金属板である。
図10には図示していない。)が供給される。このワークに対して一組の上型4と下型5との間でプレス加工され、プレス加工後のワークは、搬送機構(図示せず)により搬出され、隣の一組の金型間に供給され、他の形式のプレス加工がなされる。このようにして、順次それぞれの段階でプレス加工が行われる。
ワーク側からみると、複数の金型の対により、順番でプレス加工工程を経ることになる。
【0021】
図1~
図3は、欠肉検査装置10の実施の形態を示したものである。この欠肉検査装置10は、例えばまずトランスファー型プレス加工機1の適宜の位置に配置される。この配置位置の例は後に
図11及び
図12を参照しながら説明する。
【0022】
欠肉検査装置10は、第一の方向H1(
図2の左右方向)の第1側LD(
図2の左側)において縦向きに設けられた第1側ガイド12A,12Bと、前記第1側LDに対向する前記第一の方向H1の第2側RD(
図2の右方)において縦向きに設けられた第2側ガイド14A、14Bとを有する。
【0023】
第1側LDにおいて、第1側ガイド12A,12Bより第2側RDの位置に第1着座21が設けられている。実施の形態の第1着座21は、第1台板41である。第1台板41に第1着座21を別途取り付けても、あるいは機台40の上面40aなどに設けても良い。
【0024】
他方で、第2側RDにおいて、上方の第2上着座31及び下方の第2下着座32A、32Bが設けられている。
第2上着座31は、第一の方向H1に進退自在に構成されており、前進時、第2上着座31の先端は、第2下着座32A、32Bの先端より第1側に進出するように構成されている
【0025】
第2上着座31は、実施の形態では第2下着座32A、32Bの上方である。
他の実施の形態においては、例えば第2下着座32A、32Bを設けない態様、あるいは第2下着座32A、32Bが第2側ガイド14A、14Bより第1側LD側に延出するものの、その延出程度が小さいために、第2上着座31が限度まで後退した位置において、第2下着座32A、32Bの延出縁を外れるように構成した態様も提案される。
これらの態様では、ワークWが第2上着座31をから外れて落下したとき、下方の第2台板42の上面、あるいは機台40の上面40aなどに着座する。
【0026】
実施の形態では、第2下着座32A、32Bは、第一の方向H1と交差する第一の方向H2において、平面視で、少なくとも一つの第2上着座31を挟んだ位置に設けられている。第2台板42を第2下着座32A、32Bとしても、あるいは機台40の上面40aなどに設けても良い。
【0027】
第1側ガイド12A,12B及び第2側ガイド14A、14Bのほか、第二の方向H2の片側又は両側に側面ガイド16を設けることができる。
実施の形態では、第1側ガイド12A,12B、第2側ガイド14A、14B及び側面ガイド16の上部には傾斜面が形成され、上方から下方に向けて供給されるワークW(例えば板状体である鋼板)の側面をガイドして所定の位置に載置されるようになって、係止部P1へのワーク位置決めができる。
【0028】
トランスファー型プレス加工機1においては、第一の方向H1は、ワーク(例えば鋼板)の送り方向とすることができる。
第1側ガイド12A,12Bと第2側ガイド14A,14Bが対向する方向は、
図1に示されるように、ワークの送り方向に限定されず、ワークの欠肉発生個所及び欠肉を検査したい方向に対応させて、平面視で適宜、自由に変更できる。
【0029】
欠肉検査装置10の上記各要素は例えば、機台40上に設けられ、この機台40の上方に第1台板41が設けられ、この第1台板41の片側の上面が第1着座21となっている。
第1台板41対向して第2台板42が設けられ、この第2台板42に、第2側ガイド14A、14B、第2下着座32A、32Bが固定されている。
第2下着座32A、32Bの上面は、第1台板41の上面とほぼ同じ高さとされている。
【0030】
第2上着座31は、既述のように、第1着座21側に向けて、第一の方向H1に進退自在に構成されている。実施の形態では、第2上着座31は中間ガイド34に固定されている。
第2台板42に前後進シリンダ33が固定され、前後進シリンダ33のロッドに中間ガイド34が固定され、第2上着座31は中間ガイド34と共に前後進するように構成されている。
第2上着座の先端は、第2上着座の前進時、前記第2下着座より前記第1側に変位した位置まで進出する。
【0031】
前後進の安定を図るために、第2台板42に第一の方向H1に沿う案内溝42aが形成され、中間ガイド34と共に移動するスライダー(図示されていない)が摺動自在に嵌まっている。
【0032】
実施の形態では、第2上着座31が中間ガイド34に固定され、一体化されている。
また、第2下着座32A、32Bは、別体に形成されているが、連続した一体の部材(例えば板体)でもよい。
【0033】
欠肉の検出は、以下のように行われる。欠肉の検出の態様を
図4~
図7に示してある。
欠肉検査装置10の動作及び搬送機構に設けられた把持手段としてのフィンガー1Fは、プレス加工機1の送り角度と連動するように構成されている。
【0034】
すなわち、プレス加工機1のスライドは、次の送り角度を示しながら上下の往復動を繰り返す。
・第1角度範囲(0度→90度):上型が上死点から中間点に達するまでの角度範囲
・第2角度範囲(90度→180度):上型が中間点から下死点に達するまでの角度範囲
・第3角度範囲(180度→270度):上型が下死点から中間点に達するまでの角度範囲
・第4角度範囲(270度→0度):上型が中間点から上死点に達するまでの角度範囲
【0035】
(第1ステップ)
まず、例えばトランスファー型プレス加工機1の搬送機構に設けられた把持手段としてのフィンガー1Fにより把持されたワークWが、
図4に示すように、欠肉検査装置10上に移送され、上方より下降された後、把持が解放される。
【0036】
把持が解放される結果、ワークWは、ガイド12A、12B、14A、14Bの間に自重で落下して欠肉検査装置に投入される。ワークWは落下時、最初に第2上着座31上のP2に接触し、一端の下降が止められる。その後、ワークWの左端(他端)は、自重により、ワークの長短(欠肉の有無)によらず、第1台板41上の第1着座21と第1ガイド12A,Bの角部が形成する係止部P1に係止され、位置固定がなされる。
結果として、ワークWは、第2上着座31上と第1台板41上の第1着座21上とに跨がって傾斜状態(第1の角度θ1を有した状態、すなわち、ワークWの底面が係止部P1を通る水平線とのなす角度である、第1の角度θ1をもって傾斜した状態)になる。
この第1の角度θ1としては、15~45度が好ましい。第1の角度θ1が過度に小さいと、ワークWの
図5状態から
図6状態への移行が明確にあらわれ難く、他方、第1の角度θ1が過度に大きいと、ワークWの第2上着座31上への係止が不安定となる傾向を招く。
【0037】
(第2ステップ)
次に、
図6に示すように、第2上着座31が中間ガイド34と共に後退移動すると、ワークWの前方端部は、第2上着座31から外れて落下する。このときにワークWは、第1台板41上の第1着座21上の係止部P1において固定されているため、係止部P1を回転中心に
図5において時計方向回りに回転して水平方向に対し第2の角度θ2(ワークWの底面が係止部P1を通る水平線とのなす角度)を有した状態となる。
第2の角度θ2は第1の角度θ1よりも小さく、ワークWをフィンガー1Fにより把持できる角度であるのが望ましく、この観点から、第2の角度θ2は+5度~-5度が望ましい。この角度範囲であると、欠肉の有無の判断が容易である。実施の形態では第2の角度θ2は水平方向に対してほぼ0度である。
【0038】
ここで、所定の前後寸法範囲内のワークWであれば、ワークWの前方端部が第2下着座32A、32B上に載置されたほぼ水平状態に維持されるようになっている。この状態ではフィンガー1Fによる搬出が可能である。
【0039】
(第3ステップ)
フィンガー1Fには、ワークWの把持の可否検出手段を構成するセンサ(図示せず)が付設されており、ワークWに傾きのないほぼ水平状態(例えば水平に対して±5度以内の角度範囲)では、センサが動作し、図示しない制御手段により、正常であると判断され、
図6に示すように、フィンガー1FによりワークWが把持され、欠肉検査装置10から次のプレス工程へと搬出される。
【0040】
これに対して、所定の前後寸法範囲内を下回る短い寸法のワークW(欠肉材料)である場合には、第1着座の係止部P1から第2下着座32A、32Bまでの距離が前記ワークより短くなり、
図7に示すように、ワークWの前方端部が、第2上着座31から外れて落下したとき、第2下着座32A、32B上に載置されず、第2台板42上又は機台40の上面40aに落下してしまう。
結果として、第1台板41上の第1着座21上と、第2台板42上又は機台40の上面40aとに跨がった、ワークWの前方側が下り傾斜状態となる。
この状態ではフィンガー1Fに付設のセンサが動作せず、制御手段により、異常であると判断され、プレス機が停止される。その結果、ワークWは欠肉検査装置10から次のプレス工程へと搬出されず、その後に、オペレータ又は他の搬出手段(図示せず)により取り除かれる。
【0041】
第1ステップ、第2ステップ及び第3ステップはワークの送り角度を基づいて実行される。送り角度の一例として、第1ステップのフィンガーの把持の開放時の角度が90度、第2ステップの第2上着座31が中間ガイド34と共に後退移動時の角度が180度、第3ステップのワーク把持時の角度を270度とすることができる。この送り角度はあくまで一例であり、トランスファー型プレス加工機の種類、プレス機の加工速度等に応じて適宜変更可能である。
上記のとおり、欠肉検査装置の動作とフィンガーの動作によるワークの投入及び搬送はプレス機の送り角度に基づき行われる。そのため、生産性を高めるためにプレス機の加工速度を上げても、ワークの投入、搬送と欠肉検査装置の動作のタイミングがずれることはなく、安定した欠肉の検出が可能である。
【0042】
付言しておくと、仮に、第2上着座31を設けない場合、ワークWが自重で落下し、第1側ガイド12A,12B及び第2側ガイド14A、14Bに沿って下降するとき、例えばプレス機の振動の影響によりワークWが傾いて落下する可能性があり、この場合には、第2下着座32A、32Bからも外れて、第1台板41上の第1着座21上と、第2台板42上又は機台40の上面40aとに跨がった、ワークWの前方側が下り傾斜状態となる(
図5A参照)。
その結果、実際は欠肉ではないワークWについて、フィンガー1Fに付設のセンサが動作せず、制御手段により、異常であると判断され、プレス機が停止される事態に陥る。
これに対して、第2上着座31を設けると、仮にワークWが傾いて落下したとしても、ワークWの前方端部を第2上着座31で支承できる利点がある。
【0043】
実施の形態の欠肉検査装置10によれば、不安定な姿勢で投入されるワークWを、その一端をP2に接触させて傾斜させる。これにより、ワークWの他端が係止部P1に突き当たり固定され、確実にワーク端の位置決めを行うことが可能になる。
ワークの他端の位置決めにより、ワークWの長短(欠肉の有無)を、ワーク一端が第2下着座32A,32Bに載置される否かを基準に判別可能になる。
【0044】
一方、第2上着座31による位置決めを介さず、ワークWを、そのままガイド12A、12B、14A、14Bの間に自重で落下させると、プレス機の振動等によりワークがふらつき、第1台板41上の第1着座21上と第2下着座32A、32B上でワークWの位置が左右方向にぶれるため確実な位置決めが行えず、高精度な検出が行えない。
【0045】
実施の形態の欠肉検査装置10を用いることで、ワークの一端が第2下着座32A、32Bに載置された良品と、載置されない不良品とを、区別でき、その結果、フィンガー1Fに付設のセンサで誤検知なく容易に判別可能となる。
【0046】
実施の形態の欠肉検査装置10は、ワークの寸法をいわば機械的に高精度に判断するものであるから、欠肉検出を安定して行うことができる。しかも、欠肉検出を直接的に行うものであるから、検出の迅速性に優れたものとなる。
【0047】
欠肉検査装置10は、例えばアイドル工程に設けることができ、そのアイドル工程において、ワークをガイド12A、12B、14A、14Bの間に落下させることとで寸法の検出が可能であり、プレス機の生産性にも影響を与えない。
【0048】
従来の光学的な製品の検査では、例えば搬入されるワークWの姿勢が一定でないなどの理由により、検出精度を高いものとするには限度があり、また、搬入から搬出まで迅速な搬送が要求されるトランスファー型プレス加工機1には不向きである。
要すれば、実施の形態の欠肉検査装置10は高精度で、検出の安定性及び検出の迅速性に優れたものとなる。
【0049】
従来においては、第二の方向H2(送り方向と直交する方向)の両端縁部において把持する、各フィンガー1Fで把持可能であるか否かをセンサにより検出し、これを欠肉検知に用いていた。
これに対し、実施の形態の欠肉検査装置10によれば、実際に、金属板(プレス工程での送り方向(第一の方向H1)の寸法が例えば25~150cm)の場合において、送り方向において、10mm以内、特に5mm以内の欠肉の検出が可能であることが判明している。
このことは、例えば
図13に示す形状の金属板について、従来はL2方向の欠肉検出であったものを、欠肉検査装置10によりL1方向の欠肉検出が可能となったことを意味している。
さらに、例えば、ガイド12C、14Cを設けることにより、L3方向の欠肉を検出することができるようになる。
なお、第2下着座32A、32Bの位置と長さを調整することにより、製品の公差に応じて、検出精度を容易に変更することができる。
【0050】
実施の形態の欠肉検査装置10に対し、必要により、種々の形態の変更が可能である。例えば、
図8に示すように、第2下着座32A、32Bを、第2上着座31と同様に前後進シリンダ33A、33Bのロッドに連結して、前後進するようにしてもよい。
【0051】
ワークが平面的に矩形でない形状、例えば
図9のように、楕円のワークW1である場合には、第1側ガイド12A,12B、第2側ガイド14A、14B及び第2下着座32A、32Bの位置や向きを適宜変更できる。
【0052】
第2上着座31は平面視で異なる位置に複数設けてもよい。同様に第2下着座の数についても適宜選択できる。
【0053】
欠肉検査装置10は、トランスファー型プレス加工機1に組み込むことができる。
トランスファー型プレス加工機1については、既述のとおりである。
トランスファー型プレス加工機1の搬送機構は、欠肉検査装置10内に搬入されたワークWを把持し、次の金型へ搬出するように構成されており、例えばフィンガー1Fを有する把持手段を備えている。
把持手段はワークWの把持の可否検出手段(例えば前記センサ)を有しており、把持の可否検出手段はワークWの把持が不可のとき、プレス加工機に対しそのプレス動作を停止させる信号を与えるようにしてある。自動でプレス機が停止するため欠肉材料の検出が容易である。
【0054】
欠肉検査装置10の配置は適宜選択できる。
例えば、トランスファー型プレス加工機1の一連の複数の金型の配列内に、アイドル工程部分を設け、その位置に欠肉検査装置10を配置することができる。アイドル工程では成形を行わない遊び工程である。プレス加工機のライン外に検査装置などを設置する場合と比べ工場の省スペース化を図ることができる。
【0055】
一方、成型用のトランスファー型プレス加工機1において、欠肉検査装置10を、
図11に示すように、複数の金型の配列内の成型工程DRより後工程の位置に設けることができる。
符号1A~1Dは、他の工程を示し、トリム工程、下方穴明け加工工程、横穴明け加工工程、曲げ加工工程などを示している。
成型後の複雑な形状のワークは、ワーク内に影ができやすく、カメラ等による検査は難しい。一方で欠肉検査装置10は、製品幅を直接検査する物である。そのため欠肉検査装置10を成型工程DRより後工程に配置すれば、製品の影等の影響を受けずに成型後の複雑形状のワークであっても容易に検査可能である。
【0056】
他方、ブランキング用のトランスファー型プレス加工機1において、欠肉検査装置10を、
図12に示すように、複数の金型の配列内の第1工程に配置することができる。
符号1E~1Hは、他の工程を示し、成形工程、トリム工程、下方穴明け加工工程、横穴明け加工工程、曲げ加工工程などを示している。
欠肉検査装置10を第1工程に配置することで、板状の材料の欠肉を、トランスファー型プレス加工機1に供給する段階で検査できる。
欠肉が発生した材料を成形すると、例えば成型工程が絞り(ドロー)成形の場合、ブランクホルダーによるワークの抑えが低下し、ワークの流入が大きくなりシワ等の不具合が発生する。成型工程でシワの発生したワークに、成型、曲げ、切断加工等を行うと、シワの発生した部分から金型の破損が生じる。欠肉検査装置10を第1工程に配置することでこのような問題を解消することができる。
【0057】
実施例は搬送方向の欠肉を検査するが、直交方向でも向きを代えて使用できる。センサはフィンガーに設けたワーク有無検知センサでもよい。係止部P1はガイドと着座部との角部以外に、着座の上面に設けた突起、凹み、カギ形状など引っ掛かるものであればよい。フィンガーはトランスファープレスの金型並び方向に左右一対あって、順次、金型から次の金型へワークの両端を挟み搬送する搬送装置である。マグネットグリッパや吸着パッドなどではセンサでワーク姿勢(角度など)を検知できるようにすればよい。ワークの欠肉が搬送方向と直交方向の2方向で発生する場合、本発明も2方向で検出できるように2セット用意すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る欠肉検査装置は、プレス機と関係なく設置することもでき、検出対象品は金属板(鋼板)のほか、上下方向に成型された、あるいは周囲が矩形でない板状体であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…トランスファー型プレス加工機
1F…フィンガー
2…スライド
3…ボルスタ
4…上型
5…下型
10…欠肉検査装置
12A,12B…第1側ガイド
14A、14B…第2側ガイド
16…側面ガイド
21…第1着座
31…第2上着座
32A、32B…第2下着座
33…前後進シリンダ
34…中間ガイド
40…機台
40a…上面
41…第1台板
42…第2台板
H1…第一の方向
H2…第二の方向
LD…第1側
RD…第2側
W、W1…ワーク