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特開2024-62290充電システム、制御装置、充電システムの制御方法、最大可能充電電力の算出方法及び電力制御システム
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  • 特開-充電システム、制御装置、充電システムの制御方法、最大可能充電電力の算出方法及び電力制御システム 図1
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  • 特開-充電システム、制御装置、充電システムの制御方法、最大可能充電電力の算出方法及び電力制御システム 図11
  • 特開-充電システム、制御装置、充電システムの制御方法、最大可能充電電力の算出方法及び電力制御システム 図12
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062290
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】充電システム、制御装置、充電システムの制御方法、最大可能充電電力の算出方法及び電力制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20240430BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
H02J7/02 F
H02J3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170182
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 宏彬
(72)【発明者】
【氏名】石上 雄太
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066GA01
5G066HB09
5G066JB03
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA10
5G503CA11
(57)【要約】
【課題】三相電源における電圧逸脱を抑制する充電システムを提供する。
【解決手段】第1相、第2相及び第3相を有する三相交流から単相交流が供給される複数の充電部と、前記三相交流の電圧を計測する電圧計測部と、前記複数の充電部のそれぞれを制御する制御部と、を備え、前記複数の充電部のそれぞれは、充電対象へ供給する充電電力を調整する電力調整部を備え、前記制御部は、前記電圧計測部が計測した前記三相交流の電圧が、予め定められた範囲を逸脱している場合に、前記三相交流の電圧が前記範囲内になるように、前記複数の充電部のいずれかにおける前記電力調整部を制御する充電システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1相、第2相及び第3相を有する三相交流から単相交流が供給される複数の充電部と、
前記三相交流の電圧を計測する電圧計測部と、
前記複数の充電部のそれぞれを制御する制御部と、
を備え、
前記複数の充電部のそれぞれは、充電対象へ供給する充電電力を調整する電力調整部を備え、
前記制御部は、
前記電圧計測部が計測した前記三相交流の電圧が、予め定められた範囲を逸脱している場合に、前記三相交流の電圧が前記範囲内になるように、前記複数の充電部のいずれかにおける前記電力調整部を制御する、
充電システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1相と前記第2相との第1相間、前記第2相と前記第3相との第2相間及び前記第3相と前記第1相との第3相間において、前記三相交流の電力が一番大きくなる最大相間を算出し、
前記最大相間において、前記三相交流の電圧が前記範囲内になる最大可能充電電力を算出し、
前記最大相間から電力が供給される前記複数の充電部の充電電力の和が、前記最大可能充電電力以下になるように、前記最大相間から電力が供給される前記複数の充電部のそれぞれの前記電力調整部を制御する、
請求項1に記載の充電システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記最大相間から電力が供給される前記複数の充電部のそれぞれの前記電力調整部を、前記最大可能充電電力を、前記最大相間から電力が供給される前記複数の充電部により充電されている前記充電対象の台数で割った充電電力により充電するように制御する、
請求項2に記載の充電システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記充電対象の充電率に基づいて、前記最大相間から電力が供給される前記複数の充電部において、前記充電率が低い前記充電部を、前記充電率が高い前記充電部より高い充電電力により充電するように、前記電力調整部を制御する、
請求項2に記載の充電システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記複数の充電部から三相交流線路までの距離に基づいて、前記最大相間から電力が供給される前記複数の充電部において、前記三相交流線路から近い前記充電部を、前記三相交流線路から遠い前記充電部より高い充電電力により充電するように、前記電力調整部を制御する、
請求項2に記載の充電システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記最大可能充電電力を、前記最大相間から電力が供給される前記複数の充電部により充電されている前記充電対象の台数で割り、更に、前記複数の充電部から三相交流線路までの距離に基づいて、前記最大相間から電力が供給される前記複数の充電部において、前記三相交流線路から近い前記充電部を、前記三相交流線路から遠い前記充電部より高い充電電力により充電するように、前記電力調整部を制御する、
請求項2に記載の充電システム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記充電対象の充電率に基づいて、前記最大相間から電力が供給される前記複数の充電部において、前記充電率が低い前記充電部を、前記充電率が高い前記充電部より高くなるような電力値を算出し、更に、前記複数の充電部から三相交流線路までの距離に基づいて、前記最大相間から電力が供給される前記複数の充電部において、前記三相交流線路から近い前記充電部を、前記三相交流線路から遠い前記充電部より高い充電電力により充電する状態に近づくように前記電力値を加減して、前記電力調整部を制御する、
請求項2に記載の充電システム。
【請求項8】
第1相、第2相及び第3相を有する三相交流から単相交流が供給される複数の充電部のそれぞれを制御する制御装置であって、
前記三相交流の電圧を計測する電圧計測部を備え、
前記複数の充電部のそれぞれは、充電対象へ供給する充電電力を調整する電力調整部を備え、
前記電圧計測部が計測した前記三相交流の電圧が、予め定められた範囲を逸脱している場合に、前記三相交流の電圧が前記範囲内になるように、前記複数の充電部のいずれかにおける前記電力調整部を制御する、
制御装置。
【請求項9】
第1相、第2相及び第3相を有する三相交流から単相交流が供給される複数の充電部を備える充電システムの制御方法であって、
前記三相交流における電圧が、予め定められた範囲を逸脱している場合に、前記三相交流の電圧が前記範囲内になるように、前記複数の充電部のいずれかにおいて充電対象へ供給する充電電力を調整する、
充電システムの制御方法。
【請求項10】
第1相、第2相及び第3相を有する三相交流から、前記第1相と前記第2相との第1相間から単相交流が供給される複数の第1充電部と、前記第2相と前記第3相との第2相間から単相交流が供給される複数の第2充電部と、前記第3相と前記第1相との第3相間から単相交流が供給される複数の第3充電部と、において、電力が一番大きくなる最大相間から単相交流が供給される前記複数の第1充電部、前記複数の第2充電部及び前記複数の第3充電部のいずれかにおける最大可能充電電力を算出する最大可能充電電力の算出方法であって、
(a)前記複数の第1充電部、前記複数の第2充電部及び前記複数の第3充電部のそれぞれの充電電力を抵抗に換算する工程と、
(b)前記三相交流に接続される三相平衡負荷を抵抗に換算する工程と、
(c)前記三相平衡負荷を換算した抵抗の抵抗値を算出する工程と、
(d)充電負荷端における電圧式を算出する工程と、
(e)前記電圧式から前記複数の第1充電部、前記複数の第2充電部及び前記複数の第3充電部における下限電圧となる抵抗値を算出する工程と、
(f)前記最大可能充電電力を算出する工程と、
を含む、
最大可能充電電力の算出方法。
【請求項11】
前記(c)の工程において、
(c1)前記複数の第1充電部、前記複数の第2充電部及び前記複数の第3充電部のそれぞれと、前記三相平衡負荷との合成抵抗を算出する工程と、
(c2)回路方程式を算出する工程と、
(c3)相間電流の式を算出する工程と、
(c4)負荷線間電圧の式を算出する工程と、
(c5)前記三相平衡負荷を換算した抵抗値を算出する工程と、
を含む、
請求項10に記載の最大可能充電電力の算出方法。
【請求項12】
第1相、第2相及び第3相を有する三相交流から単相交流が供給される複数の給電部と、
前記三相交流の電圧を計測する電圧計測部と
前記複数の給電部のそれぞれを制御する制御部と、
を備え、
前記複数の給電部のそれぞれは、充電対象へ供給する充電電力を調整する電力調整部を備え、
前記制御部は、前記電圧計測部が計測した前記三相交流の電圧が、予め定められた範囲を逸脱している場合に、前記三相交流の電圧が前記範囲内になるように、前記複数の給電部のいずれかにおける前記電力調整部を制御する、
電力制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、充電システム、制御装置、充電システムの制御方法、最大可能充電電力の算出方法及び電力制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、配電線路から受電し電動車両に搭載された蓄電池を充電する機能を有した電力調整装置と、配電線路の線間電圧が制限範囲の上限値以下に維持されるように電力調整装置の動作を制御する制御装置と、を備える電力管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-015801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電池を備えた電気自動車が普及している。電気自動車が備える蓄電池を充電する充電器には急速充電器と普通充電器とがある。急速充電器は短い充電時間で充電できる。一方、普通充電器は長い充電時間を必要とする。しかしながら、急速充電器は普通充電器より費用がかかる。したがって、多数台の電気自動車を同時に充電する大規模な駐車場では、多数の普通充電器が設置されることが見込まれる。また、多数の普通充電器が設置された大規模な駐車場において、多数の普通充電器が同時に使用されることが見込まれる。
【0005】
普通充電器は一般に単相交流を電源として動作する。単相交流は、例えば、三相3線式の交流線路の内のいずれか2線に接続することによって得られる。大規模な駐車場において、充電中の電気自動車の台数が増えると、配電線路における電圧降下が大きくなる場合がある。配電線路における電圧降下が大きくなると、負荷端における電圧が低下し、例えば、普通充電器をはじめとする負荷の定格電圧を逸脱したことによって負荷が停止したり、不足電圧継電器(UVR:Under Voltage Relay)が動作して負荷への給電が遮断されたりする場合がある。
【0006】
したがって、三相電源において、負荷の増加による電圧逸脱が無いことが望ましい。
【0007】
本開示は、三相電源における電圧逸脱を抑制する充電システム、制御装置、充電システムの制御方法、最大可能充電電力の算出方法及び電力制御システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一の態様によれば、第1相、第2相及び第3相を有する三相交流から単相交流が供給される複数の充電部と、前記三相交流の電圧を計測する電圧計測部と、前記複数の充電部のそれぞれを制御する制御部と、を備え、前記複数の充電部のそれぞれは、充電対象へ供給する充電電力を調整する電力調整部を備え、前記制御部は、前記電圧計測部が計測した前記三相交流の電圧が、予め定められた範囲を逸脱している場合に、前記三相交流の電圧が前記範囲内になるように、前記複数の充電部のいずれかにおける前記電力調整部を制御する充電システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の充電システム、制御装置、充電システムの制御方法、最大可能充電電力の算出方法及び電力制御システムによれば、三相電源における電圧逸脱を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る充電システムの構成の概要を説明する図である。
図2図2は、第1実施形態に係る充電システムにおける充電部の構成の概要について説明する図である。
図3図3は、第1実施形態に係る充電システムにおける制御部の処理を説明するフロー図である。
図4図4は、第1実施形態に係る充電システムにおける制御部の処理を説明するフロー図である。
図5図5は、第1実施形態に係る充電システムにおける制御部の処理を説明する図である。
図6図6は、第1実施形態に係る充電システムにおける制御部の処理を説明するフロー図である。
図7図7は、第1実施形態に係る充電システムにおける制御部の処理を説明するフロー図である。
図8図8は、第1実施形態に係る充電システムにおける制御部の処理を説明する図である。
図9図9は、第1実施形態に係る充電システムにおける制御部の処理を説明する図である。
図10図10は、第1実施形態に係る充電システムにおける制御部の処理を説明する図である。
図11図11は、第1実施形態に係る充電システムにおける制御部の処理を説明する図である。
図12図12は、第2実施形態に係る充電システムの構成の概要を説明する図である。
図13図13は、第3実施形態に係る充電システムの構成の概要を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の充電システム、制御装置、充電システムの制御方法、最大可能充電電力の算出方法及び電力制御システムの具体例を、以下に図面を参照して説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0012】
なお、各実施形態に係る明細書及び図面の記載に関して、実質的に同一の又は対応する機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する場合がある。また、理解を容易にするために、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。
【0013】
平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右及び前後等の方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直には、それぞれ略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直が含まれてもよい。
【0014】
例えば、略平行は、2つの線あるいは2つの面が互いに完全に平行でなくても、製造上許容される範囲内で互いに平行として扱うことができることを意味する。他の略直角、略直交、略水平及び略垂直のそれぞれについても、略平行と同様に、2つの線又は2つの面の相互の位置関係が製造上許容される範囲内であればそれぞれに該当することが意図される。
【0015】
≪第1実施形態≫
<充電システム>
第1実施形態に係る充電システムについて説明する。第1実施形態に係る充電システムは、第1相、第2相及び第3相を有する三相交流から単相交流が供給される複数の充電部と、三相交流の電圧を計測する電圧計測部と、複数の充電部のそれぞれを制御する制御部と、を備える。また、第1実施形態に係る充電システムにおける複数の充電部のそれぞれは、充電対象へ供給する充電電力を調整する電力調整部を備える。そして、第1実施形態に係る充電システムにおける制御部は、三相交流の電圧が、予め定められた範囲を逸脱している場合に、三相交流の電圧が予め定められた範囲内になるように、複数の充電部のいずれかにおける電力調整部を制御する。
【0016】
図1は、第1実施形態に係る充電システムの一例である充電システム1の構成の概要を説明する図である。充電システム1は、駐車場等において、複数の電気自動車を同時に充電可能なシステムである。充電システム1は、ショッピングセンタ等の駐車場に設けられる。充電システム1は、複数の電気自動車を、同時に普通充電する。
【0017】
充電システム1は、三相電源PSに接続する。三相電源PSは、三相3線式の電源である。三相電源PSは、互いに位相が120度ずつずれているa相、b相及びc相を有する三相交流TACを出力する。三相電源PSは、三相交流TACにおけるa相、b相及びc相を、それぞれ配線La、配線Lb及び配線Lcに出力する。配線La、配線Lb及び配線Lcをまとめて三相交流線路Labcという場合がある。
【0018】
なお、充電システム1は、三相電源PSと三相交流線路Labcとが直接接続されているが、充電システム1は、三相電源PSと三相交流線路Labcとの間に、変圧器を備えていてもよい。
【0019】
三相電源PSは、三相交流線路Labcに接続される三相交流機器50にも、電力を供給する。三相交流機器50は、例えば、空調機用のモータ、急速充電器等である。
【0020】
充電システム1は配線La、配線Lb及び配線Lcに接続することにより、三相電源PSから電力が充電システム1に供給される。
【0021】
充電システム1には、三相交流TACにおけるa相とb相との相間(ab相間)から単相交流ACabが供給される。充電システム1が配線La及び配線Lbに接続することにより、三相交流TACにおけるab相間から単相交流ACabが充電システム1に供給される。
【0022】
また、充電システム1には、三相交流TACのb相とc相との相間(bc相間)から単相交流ACbcが供給される。充電システム1が配線Lb及び配線Lcに接続することにより、三相交流TACにおけるbc相間から単相交流ACbcが充電システム1に供給される。
【0023】
さらに、充電システム1には、三相交流TACのc相とa相との相間(ca相間)から単相交流ACcaが供給される。充電システム1が配線Lc及び配線Laに接続することにより、三相交流TACにおけるca相間から単相交流ACcaが充電システム1に供給される。
【0024】
充電システム1は、制御部10と、電圧計測部20と、複数の充電部と、を備える。複数の充電部は、三相電源PSから単相交流ACabが供給される複数の充電部30Aと、三相電源PSから単相交流ACbcが供給される複数の充電部30Bと、三相電源PSから単相交流ACcaが供給される複数の充電部30Cと、を含む。なお、特に充電部30A、充電部30B及び充電部30Cを区別する必要がない場合は、充電部30A、充電部30B及び充電部30Cのそれぞれを総称して充電部30という。複数の充電部30のそれぞれは、駐車スペース40に設けられる。制御部10と電圧計測部20とをあわせて制御装置100という。
【0025】
[制御部10]
制御部10は、充電システム1の全体を制御する。制御部10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を備えるマイクロプロセッシングユニットにより構成される。制御部10は、CPUがROMに記録されているプログラムをRAMに展開して実行することにより処理を行う。
【0026】
制御部10は、複数の充電部30のそれぞれを制御する。制御部10は、複数の充電部30のそれぞれにおいて、電気自動車に充電する際に、三相交流TACの電圧が予め定められた範囲を逸脱しないように制御する。
【0027】
[電圧計測部20]
電圧計測部20は、三相交流TACにおける単相交流ACab、単相交流ACbc及び単相交流ACcaのそれぞれの相間電圧を計測する。電圧計測部20は、計測端20aを備える。計測端20aは、三相交流線路Labcに設けられる。計測端20aは、三相交流機器50に近い位置又は充電システム1が三相交流線路Labcに接続されている位置に近い位置に設けられる。
【0028】
電圧計測部20は、三相交流TACにおける単相交流ACabの相間電圧PVabと、単相交流ACbcの相間電圧PVbcと、単相交流ACcaの相間電圧PVcaと、を計測する。
【0029】
[充電部30]
充電部30は、電気自動車に充電用の電力を供給する。充電部30は、単相交流が入力される。充電部30は、単相交流により、電気自動車に給電し、電気自動車内の交直変換装置により交流が直流に変換され、直流により蓄電池が充電される。
【0030】
図2は、第1実施形態に係る充電システムの一例である充電システム1における充電部30の構成の概要について説明する図である。充電部30は、充電制御部31と、電力調整部32と、検出部33と、遮断部34と、を備える。充電部30は、駐車スペース40に設けられる充電コネクタ41を介して、電気自動車EVに単相交流ACab、単相交流ACbc及び単相交流ACcaのいずれかを供給する。充電部30は、単相交流ACab、単相交流ACbc及び単相交流ACcaのいずれかを電力調整部32で電力を調整し、調整した電力を電気自動車EVに供給する
【0031】
(充電制御部31)
充電制御部31は、充電部30全体を制御する。充電制御部31は、制御部10から送信された制御命令に基づいて動作する。充電制御部31は、電力調整部32を制御する。また、充電制御部31は、電気自動車EVに供給する電力である充電電力を測定した結果を検出部33から取得する。さらに、充電制御部31は、遮断部34において電路を接続又は切断するように、遮断部34を制御する。さらにまた、充電制御部31は、電気自動車EVと通信して、電気自動車EVから例えば充電率を取得する。
【0032】
充電制御部31は、制御部10との間で通信を行う。充電制御部31は、制御部10から制御命令を受信する。また、充電制御部31は、検出部33で検出した充電電力の検出結果を制御部10に送信する。さらに、充電制御部31は、電気自動車EVから取得した充電率等のデータを制御部10に送信する。
【0033】
(電力調整部32)
電力調整部32は、制御部10から送信された制御命令に基づいて、電気自動車EVに供給する電力を調整する。充電制御部31は、制御部10から送信された充電電力変更命令に基づいて、電気自動車EVに供給可能な充電電力を算出する。そして、充電制御部31は、算出した供給可能な充電電力を電力調整部32に指示する。電力調整部32は、充電制御部31から指示された充電電力に基づいて、電気自動車EVに電力を供給する。上述のようにして、電力調整部32は、制御部10が送信して、充電部30が受信した充電電力変更命令に基づいて、充電電力を調整する。
【0034】
(検出部33)
検出部33は、電力調整部32が電気自動車EVに供給する充電電力を検出する。また、検出部33は、電力調整部32が電気自動車EVに供給する充電電力の電流値及び電圧値を検出する。検出部33は、検出した充電電力、電流値及び電圧値を検出した結果を充電制御部31に出力する。
【0035】
(遮断部34)
遮断部34は、三相電源PSと、充電コネクタ41との間における電路を接続又は遮断する。遮断部34は、例えば、電磁接触器である。
【0036】
充電システム1は、充電部30として、配線La及び配線Lbに接続される複数の充電部30Aと、配線Lb及び配線Lcに接続される複数の充電部30Bと、配線Lc及び配線Laに接続される複数の充電部30Cと、を備える。
【0037】
複数の充電部30Aのそれぞれは、配線Laに接続する配線La1と、配線Lbに接続する配線Lb1と、に接続する。配線La1は、配線Laから分岐する。配線Lb1は、配線Lbから分岐する。複数の充電部30Aのそれぞれは、電気自動車EVに充電コネクタ41を介して単相交流ACabを供給する。
【0038】
複数の充電部30Bのそれぞれは、配線Lbに接続する配線Lb2と、配線Lcに接続する配線Lc1と、に接続する。配線Lb2は、配線Lbから分岐する。配線Lc1は、配線Lcから分岐する。複数の充電部30Bのそれぞれは、電気自動車EVに充電コネクタ41を介して単相交流ACbcを出力する。
【0039】
複数の充電部30Cのそれぞれは、配線Lcに接続する配線Lc2と、配線Laに接続する配線La2と、に接続する。配線Lc2は、配線Lcから分岐する。配線La2は、配線Laから分岐する。複数の充電部30Cのそれぞれは、電気自動車EVに充電コネクタ41を介して単相交流ACcaを出力する。
【0040】
<本実施形態に係る充電システムにおける処理>
次に、充電システム1における処理について説明する。充電システム1における処理について説明することにより、充電システム1の制御方法に含まれる工程について説明する。図3は、第1実施形態に係る充電システムの一例である充電システム1における制御部10の処理を説明するフロー図である。
【0041】
(ステップS10)
最初に、制御部10は、三相交流線路Labcの電圧を測定する(現在の状態を把握する工程)。制御部10は、三相交流TACにおける相間電圧PVab、相間電圧PVbc及び相間電圧PVcaのそれぞれを計測するように、電圧計測部20を制御する。電圧計測部20は、三相交流TACにおける相間電圧PVab、相間電圧PVbc及び相間電圧PVcaのそれぞれを計測する。そして、電圧計測部20は、相間電圧PVab、相間電圧PVbc及び相間電圧PVcaのそれぞれを計測した結果を制御部10に出力する。
【0042】
(ステップS20)
次に、制御部10は、電圧計測部20が計測した相間電圧PVab、相間電圧PVbc及び相間電圧PVcaのそれぞれが、下限電圧以下であるかどうか判定する(相間電圧が下限電圧以下かどうか判定する工程)。
【0043】
電圧計測部20が計測した相間電圧PVab、相間電圧PVbc及び相間電圧PVcaのいずれかが下限電圧以下である場合(ステップS20のYES)、制御部10はステップS30に処理を進める。電圧計測部20が計測した相間電圧PVab、相間電圧PVbc及び相間電圧PVcaのすべてが下限電圧より高い場合(ステップS20のNO)、制御部10はステップS40に処理を進める。
【0044】
(ステップS30)
次に、制御部10は、電圧低下改善措置を実行する(電圧低下改善措置を実行する工程)。制御部10は、電圧計測部20が計測した相間電圧PVab、相間電圧PVbc及び相間電圧PVcaのいずれかが下限電圧以下である場合、相間電圧PVab、相間電圧PVbc及び相間電圧PVcaのそれぞれが下限電圧より高くなるように充電部30を制御する。
【0045】
図4は、第1実施形態に係る充電システムの一例である充電システム1における制御部10の電圧低下改善措置の処理を説明するフロー図である。
【0046】
(ステップS31)
制御部10は、相間電圧が下限電圧以下になることを回避するために、相間電圧の低下を解消する最大可能充電電力を算出する(相間電圧の低下を解消する最大可能充電電力を算出する工程)。なお、最大可能充電電力とは、第1相間、第2相間及び第3相間のそれぞれの現時点における充電電力を測定し、充電電力が最大となる相間でない2つの相間の消費電力は現時点と変わらないことを前提とした場合に、第1相間電圧、第2相間電圧及び第3相間電圧のすべてが下限電圧より高くなるという条件を満たす、充電電力が最大となる相間における最大の充電電力である。
【0047】
相間電圧の低下を解消する充電電力を算出する際に想定する回路モデルについて説明する。図5は、第1実施形態に係る充電システムの一例である充電システム1における制御部10の処理を説明する図である。具体的には、図5は、相間電圧の低下を解消する充電電力を算出する際に想定する回路モデルを説明する図である。
【0048】
充電システム1において、三相電源PSは、複数の充電部30A、複数の充電部30B及び複数の充電部30Cにより消費される充電部負荷LD1と、三相交流機器50により消費される三相平衡負荷LD2と、に電力を供給する。三相平衡負荷LD2は、充電部負荷LD1と並列に三相電源PSに接続する。
【0049】
最初に、充電部負荷LD1について説明する。
【0050】
充電システム1において、複数の充電部30Aのそれぞれの充電電力の総和を相間充電電力Pab(単位:キロワット)とする。相間充電電力Pabは、ab相間における単相交流ACabが供給される複数の充電部30Aのそれぞれが接続されている電気自動車EVを充電する充電電力の総和である。すなわち、相間充電電力Pabは、ab相間における単相交流ACabの消費電力である。
【0051】
充電システム1において、複数の充電部30Bのそれぞれの充電電力の総和を相間充電電力Pbc(単位:キロワット)とする。相間充電電力Pbcは、bc相間における単相交流ACbcが供給される複数の充電部30Bのそれぞれが接続されている電気自動車EVを充電する充電電力の総和である。すなわち、相間充電電力Pbcは、bc相間における単相交流ACbcの消費電力である。
【0052】
充電システム1において、複数の充電部30Cのそれぞれの充電電力の総和を相間充電電力Pca(単位:キロワット)とする。相間充電電力Pcaは、ca相間における単相交流ACcaが供給される複数の充電部30Cのそれぞれが接続されている電気自動車EVを充電する充電電力の総和である。すなわち、相間充電電力Pcaは、ca相間における単相交流ACcaの消費電力である。
【0053】
次に、三相平衡負荷LD2について説明する。
【0054】
三相平衡負荷LD2は、三相交流線路Labcに接続する三相交流機器50による負荷である。三相交流機器50においては、各相の消費電力は等しいとする。言い換えると、三相平衡負荷LD2において、ab相間の消費電力、bc相間の消費電力及びca相間の消費電力は、互いに等しく消費電力Pmであるとする。
【0055】
次に、三相電源PSについて説明する。図5において、単相交流ACabにおける電源電圧を電源電圧Eab、単相交流ACbcにおける電源電圧を電源電圧Ebc、単相交流ACcaにおける電源電圧を電源電圧Eca、とする。また、図5において、三相電源PSと充電部負荷LD1及び三相平衡負荷LD2との間のインピーダンスをインピーダンスZbwとする。三相電源PSと充電部負荷LD1及び三相平衡負荷LD2との間のインピーダンスは、例えば、三相電源PSと充電部負荷LD1及び三相平衡負荷LD2との間の線路及び変圧器のインピーダンスを合計したインピーダンスである。
【0056】
図5において、ab相間の負荷線間電圧を電圧Vab、bc相間の負荷線間電圧を電圧Vbc、ca相間の負荷線間電圧を電圧Vcaとする。
【0057】
電源電圧Eab、電源電圧Ebc、電源電圧Eca、インピーダンスZbwは、既知であるとする。電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaは、電圧計測部20により測定可能であるとする。また、現時点での相間充電電力Pab、相間充電電力Pbc及び相間充電電力Pcaは、制御部10が充電部30のそれぞれと通信を行って取得して、算出することにより既知であるとする。三相平衡負荷LD2における消費電力Pmは未知であるとする。
【0058】
ステップS31の処理をより詳しく説明する。図6は、第1実施形態に係る充電システムの一例である充電システム1における制御部10の処理を説明するフロー図である。図6を用いて、制御部10が実行する最大可能充電電力の算出方法に含まれる工程について説明する。
【0059】
(ステップS51)
最初に、制御部10は、最大可能充電電力の算出に必要な変数を取得する(最大可能充電電力の算出に必要な変数を取得する工程)。制御部10は、電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaと、相間充電電力Pab、相間充電電力Pbc及び相間充電電力Pcaと、電源電圧Eab、電源電圧Ebc及び電源電圧Ecaと、インピーダンスZbwと、を取得する。
【0060】
制御部10は、電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaのそれぞれを計測するように、電圧計測部20を制御する。電圧計測部20は、電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaのそれぞれを計測する。そして、電圧計測部20は、計測した電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaのそれぞれを、制御部10に出力する。なお、電圧計測部20が計測した電圧Vab、電圧Vbc、電圧Vcaは、それぞれ相間電圧PVab、相間電圧PVbc、相間電圧PVcaに相当する。
【0061】
制御部10は、複数の充電部30A、複数の充電部30B及び複数の充電部30Cのそれぞれから充電電力を取得して、相間充電電力Pab、相間充電電力Pbc及び相間充電電力Pcaを算出する。制御部10は、複数の充電部30Aのそれぞれから、充電電力を取得する。そして、制御部10は、複数の充電部30Aのそれぞれから取得した充電電力の総和を相間充電電力Pabとして算出する。また、制御部10は、複数の充電部30Bのそれぞれから、充電電力を取得する。そして、制御部10は、複数の充電部30Bのそれぞれから取得した充電電力の総和を相間充電電力Pbcとして算出する。さらに、制御部10は、複数の充電部30Cのそれぞれから、充電電力を取得する。そして、制御部10は、複数の充電部30Cのそれぞれから取得した充電電力の総和を相間充電電力Pcaとして算出する。
【0062】
制御部10は、電源電圧Eab、電源電圧Ebc及び電源電圧Ecaのそれぞれを取得する。電源電圧Eab、電源電圧Ebc及び電源電圧Ecaのそれぞれは、事前に実際測定してもよいし、定格の値を用いてもよいし、外部から供給される情報を元に定めてもよい。
【0063】
制御部10は、インピーダンスZbwを取得する。制御部10は、三相電源PSと充電部負荷LD1及び三相平衡負荷LD2との間のインピーダンスであるインピーダンスZbwについて、事前に測定した値を用いてもよいし、設計値から算出してもよい。
【0064】
(ステップS52)
次に、制御部10は、各相間における充電部30の相間充電電力Pab、相間充電電力Pbc、相間充電電力Pcaをそれぞれ抵抗値Rab、抵抗値Rbc及び抵抗値Rcaに換算する(各相間における充電部の相間充電電力を抵抗値に換算する工程)。充電部30における負荷は定電力負荷と想定される。ここでは、計算を簡略化するために、充電部30における負荷は定抵抗負荷であるとして計算する。
【0065】
制御部10は、相間充電電力Pab、相間充電電力Pbc、相間充電電力Pcaを、式1に基づいてそれぞれ抵抗値Rab、抵抗値Rbc、抵抗値Rcaに換算する。
【0066】
【数1】
【0067】
(ステップS53)
次に、制御部10は、三相平衡負荷LD2における消費電力Pmである相間負荷を、抵抗値R2を持つ負荷として取り扱う(三相平衡負荷を抵抗に換算する工程)。三相平衡負荷LD2における消費電力Pmは未知である。ここでは、三相平衡負荷LD2における消費電力Pmを求めるために、三相平衡負荷LD2における各負荷が、抵抗値R2である定抵抗負荷であるとして計算する。三相平衡負荷LD2における各相間のそれぞれの負荷は、定電力負荷のこともあり得るが、ここでは、計算を簡略化するために、定抵抗負荷として計算する。
【0068】
(ステップS54)
電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaのいずれかが下限電圧以下になることを回避するため、相間充電電力Pab、相間充電電力Pbc及び相間充電電力Pcaのそれぞれをどのような値にするかを計算する。相間充電電力Pab、相間充電電力Pbc及び相間充電電力Pcaのそれぞれをどのような値にするかを計算するためには、消費電力Pmを換算した抵抗値R2を算出する必要がある。
【0069】
そこで、制御部10は、三相平衡負荷LD2を換算した抵抗値R2を算出する(三相平衡負荷を換算した抵抗値を算出する工程)。ステップS54の詳細を、図7に示す。図7は、第1実施形態に係る充電システムの一例である充電システム1における制御部10の処理を説明するフロー図である。
【0070】
(ステップS61)
制御部10は、各相間における充電部30すなわち充電部負荷LD1と三相平衡負荷LD2との合成抵抗を算出する(各相間における充電部と三相平衡負荷との合成抵抗を算出する工程)。上述の様に、相間充電電力及び三相平衡負荷LD2のそれぞれを抵抗に換算した。制御部10は、換算した抵抗を合成する。
【0071】
相間充電電力Pabを換算した抵抗値Rabと三相平衡負荷LD2を換算した抵抗値R2の合成抵抗を抵抗値Rab2とする。なお、抵抗値Rab2は、抵抗値R2の関数となる。また、相間充電電力Pbcを換算した抵抗値Rbcと三相平衡負荷LD2を換算した抵抗値R2の合成抵抗を抵抗値Rbc2とする。なお、抵抗値Rbc2は、抵抗値R2の関数となる。さらに、相間充電電力Pcaを換算した抵抗値Rcaと三相平衡負荷LD2を換算した抵抗値R2の合成抵抗を抵抗値Rca2とする。なお、抵抗値Rca2は、抵抗値R2の関数となる。
【0072】
制御部10は、抵抗値Rab2、抵抗値Rbc2及び抵抗値Rca2のそれぞれを、式2に基づいて算出する。
【0073】
【数2】
【0074】
抵抗値Rab2、抵抗値Rbc2及び抵抗値Rca2を用いた、充電システム1の回路モデルを図8に示す。図8は、第1実施形態に係る充電システムの一例である充電システム1における回路モデルを示す図である。
【0075】
充電部負荷LD1と三相平衡負荷LD2とをまとめた負荷を負荷LDとして示す。制御部10は、図8に示す回路モデルを用いて計算を行う。
【0076】
(ステップS62)
次に、制御部10は、図8に示した回路モデルの回路方程式を算出する(回路方程式を算出する工程)。図9は、第1実施形態に係る充電システムの一例である充電システム1における回路モデルについて説明する図である。
【0077】
図9に示すように、相間電流である電流Iab、電流Ibc及び電流Icaを定める。電流Iabは、インピーダンスZbwを介して電源電圧Eabの電源から抵抗値Rab2を有する抵抗を流れる電流である。電流Ibcは、インピーダンスZbwを介して電源電圧Ebcの電源から抵抗値Rbc2を有する抵抗を流れる電流である。電流Icaは、インピーダンスZbwを介して電源電圧Ecaの電源から抵抗値Rca2を有する抵抗を流れる電流である。図9に示す回路モデルの回路方程式を式3に示す。
【0078】
【数3】
【0079】
(ステップS63)
次に、制御部10は、相間電流である電流Iab、電流Ibc及び電流Icaのそれぞれを算出する式を求める(相間電流の式を算出する工程)。
【0080】
式3を変形すると、式4に示すような関係となる。ここで、抵抗値R2は未知である。制御部10は、式4により、相間電流である電流Iab、電流Ibc及び電流Icaのそれぞれを算出する。式4より、電流Iab、電流Ibc及び電流Icaのそれぞれは、抵抗値R2の関数として表される。
【0081】
【数4】
【0082】
(ステップS64)
次に、制御部10は、負荷線間電圧である電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaを算出する式を求める(負荷線間電圧の式を算出する工程)。制御部10は、式5より、電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaのそれぞれを算出する。電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaのそれぞれは、式5から明らかなように、抵抗値R2の関数として表すことができる。
【0083】
【数5】
【0084】
(ステップS65)
次に、制御部10は、三相平衡負荷LD2における抵抗値R2を算出する(三相平衡負荷を算出する工程)。図10は、第1実施形態に係る充電システムの一例である充電システム1における制御部10の処理を説明する図である。図10の横軸は、抵抗値R2を示す。また、縦軸は、電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaのそれぞれの電圧値を示す。線Lvabは、式5を用いて電圧Vabを描画した結果を示す。線Lvbcは、式5を用いて電圧Vbcを描画した結果を示す。線Lvcaは、式5を用いて電圧Vcaを描画した結果を示す。なお、線Lvab、線Lvbc及び線Lvcaのそれぞれは、特定のモデルに基づいて算出した一例である。
【0085】
図10より、電圧計測部20が計測した相間電圧PVab、相間電圧PVbc及び相間電圧PVcaを用いて抵抗値を逆算すると抵抗値R3となる。制御部10は、求めた抵抗値R3を三相平衡負荷LD2の相間のそれぞれの抵抗値とする。
【0086】
(ステップS55)
次に、制御部10は、ステップS54で算出した三相平衡負荷LD2の抵抗値R3を用いて、負荷線間電圧である電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaを求める式を算出する(充電負荷端における電圧式を算出する工程)。
【0087】
回路モデルとしては、図8に示す回路モデルを用いる。ただし、抵抗値Rab2、抵抗値Rbc2、抵抗値Rca2は、それぞれ抵抗値Rab3、抵抗値Rbc3、抵抗値Rca3に置き換える。制御部10は、抵抗値Rab3、抵抗値Rbc3及び抵抗値Rca3のそれぞれを、ステップS54で算出した三相平衡負荷LD2の抵抗値R3を用いて計算する。制御部10は、抵抗値Rab3、抵抗値Rbc3及び抵抗値Rca3のそれぞれを、式6に基づいて計算する。ここでは、例としてca相間の負荷が、ab相間及びbc相間それぞれの負荷より大きい状況を前提として説明する。すなわちステップS55、ステップS56及びステップS57では、例としてab相間及びbc相間それぞれの負荷(図1における充電部30A及び充電部30Bの充電電力)は現時点の値から変更せず、ca相間の負荷(図1における充電部30Cの充電電力)のみを変更するために計算を行う。
【0088】
【数6】
【0089】
ここで、Rca2については未知として、Rca2を求める。図8に示す回路モデルにおける回路方程式は、式6を用いると、式7となる。
【0090】
【数7】
【0091】
式7を変形して、電流Iab、電流Ibc及び電流Icaのそれぞれを求めると、式8となる。
【0092】
【数8】
【0093】
式8から、負荷線間電圧である電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaを求めると、式9となる。
【0094】
【数9】
【0095】
式9より、負荷線間電圧である電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaのそれぞれは、抵抗値Rca2の関数となる。
【0096】
(ステップS56)
次に、制御部10は、負荷線間電圧である電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaのすべてが下限電圧Vmin以上という条件を満たす、最小の抵抗値を算出する(充電負荷端における電圧式から、各相間における下限電圧となる抵抗値を算出する工程)。
【0097】
制御部10は、ステップS55において求めた電圧式から、負荷線間電圧である電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaのすべてが下限電圧Vmin以上となる最小の抵抗値である抵抗値R4を求める。図11は、ステップS55において求めた電圧式から算出した抵抗値Rca2と、負荷線間電圧である電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaのそれぞれとの関係を示す図である。
【0098】
図11の縦軸は、負荷線間電圧である電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaのそれぞれの電圧を示す。図11の横軸は、抵抗値Rca2を示す。線Lvab2は、式9を用いて電圧Vabを描画した結果を示す。線Lvbc2は、式9を用いて電圧Vbcを描画した結果を示す。線Lvca2は、式9を用いて電圧Vcaを描画した結果を示す。なお、線Lvab2、線Lvbc2及び線Lvca2のそれぞれは、特定のモデルに基づいて算出した一例である。
【0099】
上記の例で説明すると、制御部10は、線Lvab2、線Lvbc2及び線Lvca2より、線Lvab2、線Lvbc2及び線Lvca2のすべてが下限電圧Vmin以上となる最小の抵抗値である抵抗値R4を求める。上記の様に求めることにより、抵抗値R4は、負荷線間電圧である電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaのすべてが下限電圧Vmin以上となる相間抵抗となる。
【0100】
(ステップS57)
制御部10は、ステップS54において求めた抵抗値R3と、ステップS56において求めた抵抗値R4と、を用いて最大可能充電電力を算出する(最大可能充電電力を算出する工程)。
【0101】
制御部10は、式10に基づいて、ca相間における最大可能充電電力Pmaxを求める。なお、相間充電電力Pca2は、ca相間電力削減後に、ca相間において充電部負荷LD1及び三相平衡負荷LD2が消費する合計の電力である。
【0102】
【数10】
【0103】
(ステップS32)
制御部10は、相間負荷が一番大きくなる単相交流が供給される充電部30に供給可能な充電電力を算出する(各充電部を制御する充電電力を算出する工程)。制御部10は、ステップS31で算出した最大可能充電電力以下に限定されるように、充電電力を設定して充電部30を制御する。
【0104】
<均等配分>
制御部10は、最大可能充電電力を、接続されている電気自動車EVの台数で除することにより、各充電部30における充電電力を算出する。
【0105】
例えば、相間負荷が一番大きくなる単相交流が供給される複数の充電部30のそれぞれにおける最大可能充電電力をPmax(単位:キロワット(kW))、接続されている電気自動車EVの台数をNとする。充電部30のそれぞれにおける充電電力Pex1(単位:キロワット(kW))は式11により計算される。ただし、iは1以上N以下の整数を表す。
【0106】
【数11】
【0107】
充電電力Pex1により電力の配分を行うと、均等に配分を行うことから、利用者には公平感がある。
【0108】
<充電率を考慮した配分>
制御部10は、接続されている電気自動車EVの充電率に基づいて、各充電部30における充電電力を算出する。
【0109】
具体的には、制御部10は、電気自動車EVの充電率に基づいて、各充電部30における充電電力を制御する。制御部10は、接続されている電気自動車EVの充電率が低い充電部30を、接続されている電気自動車EVの充電率が高い充電部30より高い充電電力により充電するように、各充電部30における電力調整部32を制御する。充電率が低い電気自動車EVを優先して充電することにより、電気自動車EVの電池が空に近いほど優先的に充電できる。
【0110】
例えば、相間負荷が一番大きくなる単相交流が供給される複数の充電部30のそれぞれにおける最大可能充電電力をPmax(単位:キロワット(kW))、接続されている電気自動車EVの台数をNとする。複数の充電部30のそれぞれに接続されている電気自動車の充電率をSOC(i)(単位:パーセント(%))とする。充電部30のそれぞれにおける充電電力Pex2(i)(単位:キロワット(kW))は式12により計算される。ただし、iは1以上N以下の整数を表す。
【0111】
【数12】
【0112】
なお、式12により計算した結果、充電電力Pex2(i)が充電部30のそれぞれの定格電力を超える場合は、例えば、当該充電電力Pex2(i)には定格電力を割り当てる。
【0113】
充電電力Pex2により電力の配分を行うと、電気自動車EVの電池における充電率が低いほど優先的に充電されることから、利用者の満足につながる。
【0114】
また、制御部10は、接続されている電気自動車EVの充電率が高い充電部30を、接続されている電気自動車EVの充電率が低い充電部30より高い充電電力により充電するように、各充電部30における電力調整部32を制御してもよい。充電率が高い電気自動車EVを優先して充電することにより、充電が完了に近い電気自動車EVを優先的に充電できる。
【0115】
<配線長を考慮した配分>
制御部10は、充電部30のそれぞれから三相交流線路Labcまでの配線長(距離)に基づいて、各充電部30における充電電力を算出する。なお、上述の均等配分及び充電率を考慮した配分により設定した充電電力を、三相交流線路Labcまでの配線長(距離)に基づいて補正してもよい。ここで、充電部30のそれぞれから三相交流線路Labcまでの距離とは、充電部30のそれぞれから三相交流線路Labcまでの配線の長さを意味する。
【0116】
具体的には、制御部10は、充電部30の三相交流線路Labcからの距離に基づいて各充電部30の充電電力を算出する。制御部10は、三相交流線路Labcから近い充電部30を、三相交流線路Labcから遠い充電部30より高い充電電力により充電するように、各充電部30のおける電力調整部32を制御する。
【0117】
例えば、相間負荷が一番大きくなる単相交流が供給される複数の充電部30における最大可能充電電力をPmax(単位:キロワット(kW))、接続されている電気自動車EVの台数をNとする。複数の充電部30のそれぞれの三相交流線路Labcまでの距離をL(i)(単位:メートル(m))、充電部30のそれぞれにおける充電電力Pex3(i)(単位:キロワット(kW))は式13により計算される。ただし、iは1以上N以下の整数を表す。なお、Lmax(単位:メートル(m))は、三相交流線路Labcから一番離れた充電部30までの距離である。
【0118】
【数13】
【0119】
単相線路の末端に近い充電部30、すなわち、線路による損失が大きい充電部30ほど充電電力が抑制されることから、配電線路による損失をより減少させて、同じ充電抑制量で不平衡率をより改善できる。
【0120】
また、均等配分により設定した充電電力を、三相交流線路Labcまでの配線長(距離)に基づいて補正する例について説明する。最初に、制御部10は、充電電力Pex1(i)=Pavgを求める。そして、制御部10は、三相交流線路Labcまでの配線長(距離)に基づいて、充電電力Pex1(i)を補正して充電電力Pex4(i)を求める。
【0121】
制御部10は、充電電力Pavgにおける予め定められた割合の電力を最低限供給するようにする。そして、制御部10は、充電電力Pavgの残りを、距離により補正する。制御部10は、式14に基づいて、充電電力Pex4を算出する。
【0122】
【数14】
【0123】
なお、ηは、上述の予め定められた割合を表す0以上1以下の実数である。
【0124】
ここで、具体的な例について説明する。例えば、相間負荷が一番大きくなる相間に3台(N=3)の充電部30が接続されているとする。以下、3台の充電部30のそれぞれは、充電部30(1)、充電部30(2)及び充電部30(3)であるとする。そして、最大可能充電電力(Pmax)は、15キロワットであるとする。
【0125】
また、均等配分を考慮した配分により設定した場合、充電電力をPex1(i)とすると、Pex1(i)=Pavg=15/N=5キロワットとなる。ただし、iは1以上Nここでは3以下の整数である。
【0126】
さらに、充電部30(1)の三相交流線路Labcからの距離をL(1)を30メートル、充電部30(2)の三相交流線路Labcからの距離をL(2)を60メートル及び充電部30(3)の三相交流線路Labcからの距離をL(3)を90メートルとする。
【0127】
均等配分した充電電力Pavgの内、20パーセントの充電電力を、距離により補正するとする。その場合、η=0.8である。制御部10は、充電電力Pex4(i)を式14に基づいて求めると、Pex4(1)は6キロワット、Pex4(2)は5キロワット及びPex4(3)は4キロワットとなる。
【0128】
また、充電率を考慮した配分により設定した充電電力を、三相交流線路Labcまでの配線長(距離)に基づいて補正する例について説明する。最初に、制御部10は、充電電力Pex2(i)を求める。そして、制御部10は、三相交流線路Labcまでの配線長(距離)に基づいて、充電電力Pex2(i)を補正して充電電力Pex5(i)を求める。制御部10は、充電電力Pex2(i)によって求めた電力値を、三相交流線路Labcから近い充電部30において三相交流線路Labcから遠い充電部30より高い充電電力により充電する状態に近づくように充電電力Pex2(i)によって求めた電力値を加減する。
【0129】
例えば、制御部10は、式15に基づいて、充電電力Pex5(i)を算出する。
【0130】
【数15】
【0131】
関数fcal()は、距離が離れているほど、すなわち、距離L(i)が大きいほど、小さくなる関数である。なお、関数fcal()は、式16を満たす関数である。Nは、相間負荷が一番大きくなる単相交流が供給される充電部30に接続されている電気自動車EVの台数である。したがって、充電電力Pex5(i)によって求めた電力値は、充電電力Pex2(i)によって求めた電力値に対して、三相交流線路Labcから近い充電部30において三相交流線路Labcから遠い充電部30より高い充電電力により充電する状態に近づく。
【0132】
【数16】
【0133】
(ステップS33)
次に、制御部10は、充電部30のそれぞれにおける充電電力が、ステップS32で算出した充電電力になるように、充電部30のそれぞれに指令を送信する(各充電部に充電電力を指令する工程)。制御部10は、最大相間に接続されている充電部30の充電電力の総和が最大可能充電電力以下になるように、最大相間に接続されている充電部30のそれぞれの電力調整部32を制御する。なお、制御部10は、最大相間に接続されている充電部30の充電電力の総和が最大可能充電電力となるように、充電部30のそれぞれに充電電力を割り当てるように制御してもよい。また、制御部10は、充電部30の充電電力の総和を監視して、最大相間に接続されている充電部30の充電電力の総和が常に最大可能充電電力以下になるように、リアルタイムに充電部30における電力調整部32を制御してもよい。
【0134】
(ステップS40)
次に、処理を継続するか、終了するか判定する(処理を継続するかどうか判定する工程)。処理を継続する場合(ステップS40のYes)、制御部10はステップS10に戻って処理を繰り返す。処理を終了する場合(ステップS40のNo)、制御部10は処理を終了する。
【0135】
<まとめ>
第1実施形態に係る充電システムによれば、三相電源における電圧逸脱を抑制できる。
【0136】
なお、例えば、a相を第1相の一例とすると、b相が第2相の一例、c相が第3相の一例、である。また、a相とb相との相間(ab相間)が第1相間の一例、b相とc相との相間(bc相間)が第2相間の一例、c相とa相との相間(ca相間)が第3相間の一例、である。さらに、電気自動車EVが充電対象の一例である。複数の充電部30Aが複数の第1充電部の一例、複数の充電部30Bが複数の第2充電部の一例、複数の充電部30Cが複数の第3充電部の一例である。
【0137】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態に係る充電システムの一例である充電システム2について説明する。図12は、第2実施形態に係る充電システムの一例である充電システム2の構成の概要を説明する図である。
【0138】
充電システム2は、充電システム1に、複数の単相変圧器60を更に備える。充電システム2は、配線La及び配線Lbと、配線La1及び配線Lb1との間に、単相変圧器60を備える。また、充電システム2は、配線Lb及び配線Lcと、配線Lb2及び配線Lc1との間に、単相変圧器60を備える。さらに、充電システム2は、配線Lc及び配線Laと、配線Lc2及び配線La2との間に、単相変圧器60を備える。
【0139】
<まとめ>
第2実施形態に係る充電システムによれば、三相電源における電圧逸脱を抑制できる。また、第2実施形態に係る充電システムによれば、充電対象に最適な単相交流の電圧に変換して、充電対象に充電できる。
【0140】
≪第3実施形態≫
次に、第3実施形態に係る充電システムの一例である充電システム3について説明する。図13は、第3実施形態に係る充電システムの一例である充電システム3の構成の概要を説明する図である。
【0141】
充電システム1における電圧計測部20は、三相交流線路Labcに設けられる計測端20aを備えていたが、電圧計測を行う位置は、三相交流線路Labcに限らない。充電システム3は、充電システム1の電圧計測部20に換えて、電圧計測部120を備える。制御部10と電圧計測部120とをあわせて制御装置200という。
【0142】
電圧計測部120は、計測端120a、計測端120b及び計測端120cを備える。計測端120aは、配線La1及び配線Lb1により形成される単相線路に設けられる。計測端120aは、単相交流ACabの電圧を計測する。計測端120bは、配線Lb2及び配線Lc1により形成される単相線路に設けられる。計測端120bは、単相交流ACbcの電圧を計測する。計測端120cは、配線Lc2及び配線La2により形成される単相線路に設けられる。計測端120cは、単相交流ACcaの電圧を計測する。
【0143】
<まとめ>
第3実施形態に係る充電システムによれば、三相電源における電圧逸脱を抑制できる。
【0144】
なお、上記の例では、充電システム3は、計測端120a、計測端120b及び計測端120cにより単相線路の電圧を測定していたが、充電部30において単相線路における電圧を測定してもよい。充電部30において単相線路における電圧を測定する場合、例えば、充電部30と電圧計測部120とが通信によりデータをやりとりしてもよい。
【0145】
≪第4実施形態≫
次に、第4実施形態に係る充電システムについて説明する。第1実施形態に係る充電システムにおいて、第1相間、第2相間及び第3相間のそれぞれの現時点における充電電力を測定し、充電電力が最大となる相間について最大可能充電電力を求めている。第4実施形態に係る充電システムは、充電電力が最大となる相間と充電電力が2番目の相間とにおいて、充電電力に差がない場合に、充電電力が最大となる相間と充電電力が2番目の相間の両方における最大可能充電電力を求める。
【0146】
例えば、相間充電電力Pabが200キロワット、相間充電電力Pbcが395キロワット、相間充電電力Pcaが400キロワットの場合について説明する。充電電力が最大となる相間充電電力は、相間充電電力Pcaである。また、2番目に大きい相間充電電力は、相間充電電力Pbcである。相間充電電力Pbcと相間充電電力Pcaとの差は5キロワットである。例えば、相間充電電力Pbcと相間充電電力Pcaとの差の絶対値が予め定められた閾値(例えば、10キロワット)より小さい場合、相間充電電力Pbc及び相間充電電力Pcaの両方の充電電力を削減する。相間充電電力Pbc及び相間充電電力Pcaの両方の充電電力を削減する場合、2番目に大きい相間充電電力Pbcは、最大の相間充電電力Pcaと等しいと見なして計算を行う。
【0147】
なお、例えば、相間充電電力Pabが200キロワット、相間充電電力Pbcが385キロワット、相間充電電力Pcaが400キロワットの場合について説明する。充電電力が最大となる相間充電電力は、相間充電電力Pcaである。また、2番目に大きい相間充電電力は、相間充電電力Pbcである。相間充電電力Pbcと相間充電電力Pcaとの差は15キロワットである。例えば、相間充電電力Pbcと相間充電電力Pcaとの差の絶対値が予め定められた閾値(例えば、10キロワット)より大きいことから、第1実施形態に係る充電システムのように、相間充電電力Pcaについてのみ充電電力を削減する。
【0148】
上記の説明は例であって、最大となる相間充電電力と2番目となる相間充電電力は、上記の例に限らない。
【0149】
第4実施形態に係る充電システムは、第1実施形態に係る充電システムと、ステップS55、ステップS56及びステップS57における処理が異なる。第4実施形態に係る充電システムにおけるステップS55、ステップS56及びステップS57の処理について説明する。
【0150】
(第4実施形態に係る充電システムにおけるステップS55の処理)
制御部10は、ステップS54で算出した三相平衡負荷LD2の抵抗値R3を用いて、負荷線間電圧である電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaを求める式を算出する(充電負荷端における電圧式を算出する工程)。
【0151】
回路モデルとしては、図8に示す回路モデルを用いる。ただし、抵抗値Rab2、抵抗値Rbc2、抵抗値Rca2は、それぞれ抵抗値Rab5、抵抗値Rbc5、抵抗値Rca5に置き換える。制御部10は、抵抗値Rab5、抵抗値Rbc5及び抵抗値Rca5のそれぞれを、ステップS54で算出した三相平衡負荷LD2の抵抗値R3を用いて計算する。制御部10は、抵抗値Rab5、抵抗値Rbc5及び抵抗値Rca5のそれぞれを、式17に基づいて計算する。
【0152】
ここでは、例としてca相間の負荷及びbc相間の負荷が、ab相間の負荷より大きく、ca相間の負荷及びbc相間の負荷が略等しい状況を前提として説明する。すなわち、ステップS55、ステップS56及びステップS57では、例としてab相間の負荷(図1における充電部30Aの充電電力)は現時点の値から変更しない。そして、ステップS55、ステップS56及びステップS57では、bc相間の負荷及びca相間の負荷(図1における充電部30B及び充電部30Cの充電電力)を変更するために計算を行う。
【0153】
【数17】
【0154】
なお、抵抗値Rbc5は、抵抗値Rca5と等しい。ここで、Rca2については未知として、Rca2を求める。図8に示す回路モデルにおける回路方程式は、式17を用いると、式18となる。
【0155】
【数18】
【0156】
式18を変形して、電流Iab、電流Ibc及び電流Icaのそれぞれを求めると、式19となる。
【0157】
【数19】
【0158】
式19から、負荷線間電圧である電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaを求めると、式20となる。
【0159】
【数20】
【0160】
式20より、負荷線間電圧である電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaのそれぞれは、抵抗値Rca2の関数となる。
【0161】
(第4実施形態に係る充電システムにおけるステップS56の処理)
次に、制御部10は、負荷線間電圧である電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaのすべてが下限電圧Vmin以上という条件を満たす、最小の抵抗値を算出する(充電負荷端における電圧式から、各相間における下限電圧となる抵抗値を算出する工程)。
【0162】
制御部10は、第1実施形態に係る充電システムにおけるステップS56と同様の処理を行う。制御部10は、ステップS55において求めた電圧式から、負荷線間電圧である電圧Vab、電圧Vbc及び電圧Vcaのすべてが下限電圧Vmin以上となる最小の抵抗値である抵抗値R4を求める。
【0163】
(第4実施形態に係る充電システムにおけるステップS57の処理)
制御部10は、ステップS54において求めた抵抗値R3と、ステップS56において求めた抵抗値R4と、を用いて最大可能充電電力を算出する(最大可能充電電力を算出する工程)。
【0164】
制御部10は、式21に基づいて、ca相間における最大可能充電電力Pmax1及びbc相間における最大可能充電電力Pmax2を求める。なお、相間充電電力Pca2は、bc相間電力及びca相間電力削減後に、ca相間において充電部負荷LD1及び三相平衡負荷LD2が消費する合計の電力である。相間充電電力Pbc2は、bc相間電力及びca相間電力削減後に、bc相間において充電部負荷LD1及び三相平衡負荷LD2が消費する合計の電力である。
【0165】
【数21】
【0166】
制御部10は、式21に基づいて算出した最大可能充電電力Pmax1及び最大可能充電電力Pmax2に基づいて、ステップS32以降の計算を行う。
【0167】
<まとめ>
第4実施形態に係る充電システムによれば、三相電源における電圧逸脱を抑制できる。
【0168】
なお、上記の説明では、ca相間の負荷及びbc相間の負荷が略等しい状況を前提として説明したが、ab相間の負荷、bc相間の負荷及びca相間の負荷が略等しい状況を前提として処理を行ってもよい。例えば、ab相間、bc相間荷及びca相間のそれぞれの負荷が略等しい場合は、ステップS55において、ab相間、bc相間及びca相間のそれぞれの負荷が等しいとして、抵抗値Rab6、抵抗値Rbc6及び抵抗値Rca6を式22により計算してもよい。式22において、例として、抵抗値Rab6、抵抗値Rbc6及び抵抗値Rca6のそれぞれは、抵抗値Rca2を用いて計算している。なお、抵抗値Rab6、抵抗値Rbc6及び抵抗値Rca6は、互いに等しい抵抗値である。そして、計算した抵抗値Rab6、抵抗値Rbc6及び抵抗値Rca6を用いて、上記で説明したように、図8に示す回路モデルの回路方程式を解くことにより、最大可能充電電力を算出する。
【0169】
【数22】
【0170】
<変形例>
上記の開示では、三相電源PSとして、三相3線式の電源を用いて説明したが、三相電源PSとしては、三相3線式に限らず、例えば、三相4線式の電源を用いてもよい。
【0171】
また、上記の開示では、電気自動車EVに充電する充電システムについて説明したが、例えば、充電対象の電気自動車EVに換えて、給電対象としてモータ等の負荷を接続して、負荷に給電する電力制御システムに、開示の技術を適用してもよい。電力制御システムの場合は、充電システムにおける充電部が負荷に給電する給電部の一例、充電電力が給電電力の一例、に相当する。複数の充電部が、複数の給電部の一例に相当する。
【0172】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0173】
1、2、3 充電システム
10 制御部
20、120 電圧計測部
30、30A、30B、30C 充電部
31 充電制御部
32 電力調整部
33 検出部
34 遮断部
40 駐車スペース
41 充電コネクタ
50 三相交流機器
60 単相変圧器
100、200 制御装置
PS 三相電源
TAC 三相交流
ACab、ACbc、ACca 単相交流
EV 電気自動車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13