(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062292
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】樹脂組成物、ペレット、および、成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 77/06 20060101AFI20240430BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240430BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20240430BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
C08L77/06
C08K7/14
C08L23/00
C08L53/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170190
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】523168917
【氏名又は名称】グローバルポリアセタール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴大
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智則
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB212
4J002BP012
4J002CL031
4J002DL006
4J002FA046
4J002FB086
4J002FB276
4J002FD090
4J002FD160
4J002FD200
4J002GB00
4J002GC00
4J002GG02
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】 ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物であって、優れた曲げ特性を維持しつつ、耐衝撃性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物、ならびに、ペレットおよび成形品の提供。
【解決手段】 ポリアミド樹脂100質量部に対し、集束剤および/または表面処理剤を表面に有するガラス繊維1~200質量部と、衝撃改良材0~30質量部とを含み、ポリアミド樹脂が、ジカルボン酸由来の構成単位と、ジアミン由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上が、キシリレンジアミンに由来し、集束剤および/または表面処理剤を280℃で10分間加熱して得られるガス成分が、キシリレンジイソシアネートを含み、かつ、ガラス繊維の平均繊維径が3.0~9.0μmである、樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂100質量部に対し、
集束剤および/または表面処理剤を表面に有するガラス繊維1~200質量部と、衝撃改良材0~30質量部とを含み、
前記ポリアミド樹脂が、ジカルボン酸由来の構成単位と、ジアミン由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上が、キシリレンジアミンに由来し、
前記集束剤および/または表面処理剤を280℃で10分間加熱して得られるガス成分が、キシリレンジイソシアネートを含み、かつ、
前記ガラス繊維の平均繊維径が3.0~9.0μmである、樹脂組成物。
【請求項2】
前記集束剤および/または表面処理剤を280℃で10分間加熱して得られるガス成分が、さらに、グリコールを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記集束剤および/または表面処理剤を280℃で10分間加熱して得られるガス成分が、さらに、ポリアルキレングリコールおよび/またはアルキレングリコールを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記集束剤および/または表面処理剤を280℃で10分間加熱して得られるガス成分が、さらに、アルキレングリコールを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記集束剤および/または表面処理剤を280℃で10分間加熱して得られるガス成分が、さらに、エチレングリコールを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、炭素数4~20の脂肪族ジカルボン酸に由来する、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、セバシン酸に由来する、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記衝撃改良材が、オレフィン、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン(SEBS)ブロック共重合体、および、β-ファルネセンの少なくとも1種含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記衝撃改良材が、官能基含有衝撃改良材を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記集束剤および/または表面処理剤を280℃で10分間加熱して得られるガス成分が、さらに、エチレングリコールを含み、
前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、セバシン酸に由来し、
前記衝撃改良材が、オレフィン、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン(SEBS)ブロック共重合体、および、β-ファルネセンの少なくとも1種含み、
前記衝撃改良材が、官能基含有衝撃改良材を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~5および10のいずれか1項に記載の樹脂組成物のペレット。
【請求項12】
請求項1~5および10のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【請求項13】
請求項11に記載のペレットから形成された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、ペレット、および、成形品に関する。特に、ポリアミド樹脂を主要成分とする樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的なエンジニアリングプラスチックであるポリアミド樹脂は、加工が容易であり、さらに、機械的物性、電気特性、耐熱性、その他の物理的・化学的特性に優れている。このため、車両部品、電気・電子機器部品、その他の精密機器部品等に幅広く使用されている。
このようなポリアミド樹脂の中でも、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂は、優れた機械的強度を有することから、各種用途に広く用いられている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、ポリアミド樹脂の用途もさらに拡大し、ポリアミド樹脂から形成された成形品にさらに高い耐衝撃性が求められることがある。特に、優れた曲げ特性を維持しつつ、高い耐衝撃性が求められる傾向にある。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物であって、優れた曲げ特性を維持しつつ、耐衝撃性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物、ならびに、ペレットおよび成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、ポリアミド樹脂に繊維径が細めのガラス繊維であって、かつ、所定の集束剤および/または表面処理剤を有するガラス繊維を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリアミド樹脂100質量部に対し、
集束剤および/または表面処理剤を表面に有するガラス繊維1~200質量部と、衝撃改良材0~30質量部とを含み、
前記ポリアミド樹脂が、ジカルボン酸由来の構成単位と、ジアミン由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上が、キシリレンジアミンに由来し、
前記集束剤および/または表面処理剤を280℃で10分間加熱して得られるガス成分が、キシリレンジイソシアネートを含み、かつ、
前記ガラス繊維の平均繊維径が3.0~9.0μmである、樹脂組成物。
<2>前記集束剤および/または表面処理剤を280℃で10分間加熱して得られるガス成分が、さらに、グリコールを含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記集束剤および/または表面処理剤を280℃で10分間加熱して得られるガス成分が、さらに、ポリアルキレングリコールおよび/またはアルキレングリコールを含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<4>前記集束剤および/または表面処理剤を280℃で10分間加熱して得られるガス成分が、さらに、アルキレングリコールを含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<5>前記集束剤および/または表面処理剤を280℃で10分間加熱して得られるガス成分が、さらに、エチレングリコールを含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<6>前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、炭素数4~20の脂肪族ジカルボン酸に由来する、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、セバシン酸に由来する、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>前記衝撃改良材が、オレフィン、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン(SEBS)ブロック共重合体、および、β-ファルネセンの少なくとも1種含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9>前記衝撃改良材が、官能基含有衝撃改良材を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10>前記集束剤および/または表面処理剤を280℃で10分間加熱して得られるガス成分が、さらに、エチレングリコールを含み、
前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、セバシン酸に由来し、
前記衝撃改良材が、オレフィン、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン(SEBS)ブロック共重合体、および、β-ファルネセンの少なくとも1種含み、
前記衝撃改良材が、官能基含有衝撃改良材を含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物のペレット。
<12><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
<13><11>に記載のペレットから形成された成形品。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物であって、優れた曲げ特性を維持しつつ、耐衝撃性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物、ならびに、ペレットおよび成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書において、数平均分子量は、特に述べない限り、特開2018-165298号公報の段落0047の記載に従って測定することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
本明細書において、融点(Tm)は、特に述べない限り、示差走査熱量測定(DSC)に従い、ISO11357に準拠して、測定した値とする。具体的には、国際公開第2016/084475号の段落0036の記載に従って測定することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2022年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0008】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、集束剤および/または表面処理剤(以下、本明細書において、「表面処理剤等」ということがある)を表面に有するガラス繊維1~200質量部と、衝撃改良材0~30質量部とを含み、前記ポリアミド樹脂が、ジカルボン酸由来の構成単位と、ジアミン由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上が、キシリレンジアミンに由来し、前記集束剤および/または表面処理剤を280℃で10分間加熱して得られるガス成分が、キシリレンジイソシアネートを含み、かつ、前記ガラス繊維の平均繊維径が3.0~9.0μmであることを特徴とする。
本実施形態においては、平均繊維径が細めのガラス繊維を用いることにより、ポリアミド樹脂との密着点が多くなり、密着強度を高めることができる。
また、本実施形態においては、ガラス繊維の表面処理剤等として、キシリレンジイソシアネートを用いている。ガラス繊維の表面処理剤等として、キシリレンジイソシアネートを用いることは珍しい。これは、キシリレン系化合物は硬化剤にも使われているものであり、硬化速度が速いためである。しかしながら、本実施形態においては、ポリアミド樹脂として、ジカルボン酸由来の構成単位と、ジアミン由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上が、キシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂(以下、本明細書において、「キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂」ということがある)を用いることにより、ガラス繊維の表面処理剤等として、キシリレンジイソシアネートを用いて、優れた曲げ特性を維持しつつ、耐衝撃性に優れた成形品が提供可能な樹脂組成物が得られた。
この理由は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂とキシリレンジイソシアネートは、構造に共通する部分が多いため、ある程度馴染みがよく、また、反応性が早いので、ポリアミド樹脂と密着性を高くできたと推測される。
そして、細いガラス繊維を用いると、衝撃に対し割れの起点となりやすいが、本実施形態では、上述の通り、ポリアミド樹脂とガラス繊維の密着性を高くできたため、耐衝撃性を改善できたと推測される。
【0009】
<ポリアミド樹脂>
本実施形態においては、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂(以下、「キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂」ということがある)を含む。このようなポリアミド樹脂を含むことにより、キシリレンジイソシアネートを表面処理剤等として有するガラス繊維との密着性を高めることができる。
【0010】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジアミン由来の構成単位は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上、特に一層好ましくは99モル%以上が、キシリレンジアミン(好ましくはパラキシリレンジアミンおよび/またはメタキシリレンジアミン)に由来する。
【0011】
キシリレンジアミンは、パラキシリレンジアミンおよびメタキシリレンジアミンが好ましい。前記キシリレンジアミンが0~100モル%のメタキシリレンジアミンと、100~0モル%のパラキシリレンジアミン(ただし、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの合計が100モル%を超えることはない)を含むことが好ましく、0~90モル%のメタキシリレンジアミンと、100~10モル%のパラキシリレンジアミンを含むことがより好ましく、20~90モル%のメタキシリレンジアミンと、80~10モル%のパラキシリレンジアミンを含むことがさらに好ましく、50~90モル%のメタキシリレンジアミンと、50~10モル%のパラキシリレンジアミンを含むことが一層好ましく、50~80モル%のメタキシリレンジアミンと、50~20モル%のパラキシリレンジアミンを含むことがより一層好ましく、50~65モル%のメタキシリレンジアミンと、50~35モル%のパラキシリレンジアミンを含むことがさらに一層好ましい。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、パラキシリレンジアミン由来の構成単位とメタキシリレンジアミン由来の構成単位の合計が、ジアミン由来の構成単位の好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、一層好ましくは95モル%以上、より一層好ましくは98モル%以上、さらに一層好ましくは99モル%以上を占めることが好ましい。前記パラキシリレンジアミン由来の構成単位とメタキシリレンジアミン由来の構成単位の合計の上限は100モル%である。
【0012】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジアミン成分として用いることができるメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0013】
一方、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジカルボン酸由来の構成単位は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上、特に一層好ましくは99モル%以上が、炭素数4~20の脂肪族ジカルボン酸(好ましくは、炭素数が4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン)に由来する。
【0014】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、1,12-ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種または2種以上を混合して使用できるが、これらの中でもポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、セバシン酸および/または1,12-ドデカン二酸がより好ましく、セバシン酸がさらに好ましい。
本実施形態におけるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の好ましい一実施形態としてジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上(好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上)がセバシン酸に由来するものが例示される。
【0015】
上記炭素数4~20の脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸といったナフタレンジカルボン酸の異性体等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0016】
なお、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を主成分として構成されるが、これら以外の構成単位を完全に排除するものではなく、ε-カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類由来の構成単位を含んでいてもよいことは言うまでもない。ここで主成分とは、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を構成する構成単位のうち、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計数が全構成単位のうち最も多いことをいう。本実施形態では、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂における、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計は、全構成単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、97質量%以上を占めることがさらに好ましく、99質量%以上を占めることが一層好ましい。
【0017】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の融点は、150~350℃であることが好ましく、180~330℃であることがより好ましく、200~330℃であることがさらに好ましく、200~320℃であることが一層好ましい。
融点は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0018】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、数平均分子量(Mn)の下限が、6,000以上であることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましく、また、35,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、25,000以下がさらに好ましく、20,000以下が一層好ましい。このような範囲であると、耐熱性、弾性率、寸法安定性、成形加工性がより良好となる。
【0019】
本実施形態の樹脂組成物におけるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の含有量は、樹脂組成物100質量%中、45質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、ガラス繊維等のフィラー配合率が高くなり、剛性や強度面で高い物性値が得られやすい傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物におけるポリアミド樹脂の含有量は、樹脂組成物中、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましく、80質量%以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、ガラス繊維の配合率をある程度抑えることで流動性バランスを整えやすい傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0020】
本実施形態の樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂を含んでいてもよい。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂は、その種類を特に定めるものではなく、脂肪族ポリアミド樹脂であっても、半芳香族ポリアミド樹脂であってもよい。
脂肪族ポリアミド樹脂としては、ポリアミド4、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド666、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12等が例示される。
半芳香族ポリアミド樹脂としては、テレフタル酸系ポリアミド樹脂(ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T)、後述するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂などが例示される。
本実施形態の樹脂組成物は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂の含有量が、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の含有量の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが一層好ましく、0.1質量%以下であることがより一層好ましい。
【0021】
また、本実施形態の樹脂組成物は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂とガラス繊維と必要に応じて配合される衝撃改良材の合計が樹脂組成物の95質量%以上を占めることが好ましく、96質量%以上を占めることがより好ましく、97質量%以上を占めることがさらに好ましく、98質量%以上を占めることが一層好ましい。
【0022】
<ガラス繊維>
本実施形態の樹脂組成物は、平均繊維径が3.0~9.0μmのガラス繊維を含む。このように繊維径が細いガラス繊維を用いることにより、ポリアミド樹脂の密着点が多くなり、ポリアミド樹脂との密着強度が高くなる。また、密着強度が高いため、破断点が発生したとしても、密着している点が多いので、破断を抑制できる。
【0023】
ガラス繊維としては、一般的に供給されるEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、Rガラスおよび耐アルカリガラス等のガラスを溶融紡糸して得られる繊維が用いられるが、ガラス繊維にできるものであれば使用可能であり、特に限定されない。本発明では、Eガラスを含むことが好ましい。
【0024】
本実施形態で用いるガラス繊維は、集束剤および/または表面処理剤(表面処理剤等)を表面に有する。前記表面処理剤等は、280℃で10分間加熱して得られるガス成分が、キシリレンジイソシアネート(好ましくはメタキシリレンジイソシアネート)を含む。このような構成とすることにより、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂との密着性が向上する傾向にある。
本実施形態で用いるガラス繊維におけるキシリレンジイソシアネートの割合は、ガラス繊維の表面処理剤等を280℃で10分加熱して発生したガスをTD GC/MSにて分析したとき、ガラス繊維1g中のキシリレンジイソシアネートガス成分をデカン換算した値が、1μg/g以上であることが好ましく、2μg/g以上であることがより好ましく、また、20μg/g以下であることが好ましく、15μg/g以下であることがより好ましい。
【0025】
本実施形態においては、また、表面処理剤等を280℃で10分間加熱して得られるガス成分が、さらに、グリコールを含むことが好ましく、ガラス繊維1g中のグリコールガス成分のデカン換算した値が、1μg/g以上であることが好ましく、5μg/g以上であることがより好ましく、また、50μg/g以下であることが好ましく、30μg/g以下であることがより好ましい。
前記グリコールは、ポリアルキレングリコールおよび/またはアルキレングリコールであることが好ましく、アルキレングリコールであることがより好ましい。
ポリアルキレングリコール中のアルキレングリコール鎖およびアルキレングリコール中のアルキレン鎖は、炭素数1~10のアルキレン鎖であることが好ましく、炭素数1~5のアルキレン鎖であることがより好ましく、炭素数2~5のアルキレン鎖であることがさらに好ましく、炭素数2のアルキレン鎖、すなわち、ポリエチレングリコールおよび/またはエチレングリコールが一層好ましく、エチレングルコールがさらに一層好ましい。
【0026】
本実施形態においては、また、表面処理剤等を280℃で10分間加熱して得られるガス成分が、さらに、カプロラクトンを含むことが好ましく、ガラス繊維1gに対する、カプロラクトンガス成分のデカン換算した値が、1μg/g以上であることが好ましく、5μg/g以上であることがより好ましく、80μg/g以上であってもよく、また、200μg/g以下であることが好ましく、150μg/g以下であることがより好ましい。
【0027】
本実施形態の樹脂組成物に用いるガラス繊維は、市販品として入手できる。
ガラス繊維の断面は、円形および非円形(楕円形、長円形、長方形、長方形の両短辺に半円を合わせた形状、まゆ型等)のいずれであってもよく、円形であることが好ましい。本発明は、ガラス繊維として、円形断面を有するものを用いた場合に、特に、難燃性や機械的強度の向上効果が顕著である。
ここでの円形は、幾何学的な意味での真円に加え、本発明の技術分野において通常円形と称されるものを含む趣旨である。
非円形断面のガラス繊維は、特開2012-214819号公報の段落0048~0052に記載の扁平形状であるガラス繊維が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0028】
本実施形態の樹脂組成物中のガラス繊維は、数平均繊維長が100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましい。上限値としては、10mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることがさらに好ましい。
本実施形態では、ガラス繊維は、チョップドストランドが好ましい。
【0029】
本実施形態の樹脂組成物に用いるガラス繊維は、その平均繊維径が、3.0μm以上であり、4.0μm以上であることが好ましく、5.0μm以上であることがより好ましく、5.5μm以上であることがさらに好ましい。上限値としては、9.0μm以下であり、8.0μm以下であることが好ましく、7.0μm以下であることがより好ましく、6.6μm以下であることがさらに好ましい。
ガラス繊維の平均繊維径は、以下の方法によって測定される。
本実施形態の樹脂組成物から形成されたペレットないし成形品の破面を走査電子顕微鏡で観察し、観察画像内のガラス繊維の繊維径を測定し、その平均値を平均繊維径とした。
【0030】
本実施形態の樹脂組成物におけるガラス繊維の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、1質量部以上であり、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、さらには、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、50質量部以上であってもよい。上記下限値以上とすることにより、機械的強度を向上させることができる。また、本実施形態の樹脂組成物におけるガラス繊維の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、200質量部以下であり、160質量部以下であることが好ましく、140質量部以下であることがより好ましく、120質量部以下であることがさらに好ましく、100質量部以下であることが一層好ましく、80質量部以下であることがより一層好ましく、さらには70質量部以下、60質量部以下であってもよい。一方、ガラス繊維の量を上記上限値以下とすることにより、得られる成形品の外観がより向上する傾向にある。
また、本実施形態の樹脂組成物におけるガラス繊維の含有量は、樹脂組成物100質量%に対し、5~40質量%であることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、ガラス繊維を、1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0031】
<衝撃改良材>
本実施形態の樹脂組成物は、衝撃改良材を含んでいてもよい。衝撃改良材を含むことにより、耐衝撃性がより向上する傾向にある。
衝撃改良材は、その種類等特に定めるものではないが、オレフィン、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン(SEBS)ブロック共重合体、および、β-ファルネセンの少なくとも1種含むことが好ましい。
また、耐衝撃改質材は、官能基を含有している官能基含有衝撃改良材を含むことが好ましい。官能基含有耐衝撃改質材が有する官能基は、酸基および/または酸無水物基であることが好ましく、マレイン酸基および/または無水マレイン酸基であることがより好ましく、無水マレイン酸基であることがさらに好ましい。
本実施形態においては、官能基含有耐衝撃改質材が、酸変性オレフィン、および、酸変性スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン(SEBS)ブロック共重合体の少なくとも1種含むことが好ましく、無水マレイン酸変性オレフィン、および、無水マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン(SEBS)ブロック共重合体の少なくとも1種含むことがより好ましい。
【0032】
本実施形態で用いる耐衝撃改質材は、190℃、荷重2.16kgfにおけるメルトボリュームレート(MVR)が0.1g/10分以上であることが好ましく、0.2g/10分以上であることがより好ましく、0.4g/10分以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形不良(バリ)の抑制を効果的に抑制できる傾向にある。また、本実施形態で用いる耐衝撃改質材は、190℃、荷重2.16kgfにおけるメルトボリュームレート(MVR)が1g/10分以下であることが好ましく、0.8g/10分以下であることがより好ましく、0.7g/10分以下であることがさらに好ましく、0.6g/10分以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物が2種以上の耐衝撃改質材を含む場合、MVRは混合物のMVRとする。
【0033】
本実施形態の樹脂組成物が耐衝撃改質剤を含む場合、その含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、1質量部以上であり、2質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物からなる成形品の衝撃強度がより向上する傾向にある。また、前記耐衝撃改質材の含有量の上限値は、樹脂組成物100質量部に対し、30質量部以下であり、25質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよく、15質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物からなる成形品の強度や弾性率の著しい低下を抑制し、衝撃強度を高めることができる。
本実施形態の樹脂組成物は、耐衝撃改質材を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0034】
<核剤>
本実施形態の樹脂組成物は、核剤を含んでいてもよい。核剤を含むことによって、得られる成形品の外観を良好にすることができる。核剤は、タルクが好ましい。タルクは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類およびオルガノポリシロキサン類から選択される化合物の少なくとも1種で表面処理されたものを用いてもよい。この場合、タルクにおけるシロキサン化合物の付着量は、タルクの0.1~5質量部であることが好ましい。
【0035】
本実施形態の樹脂組成物が核剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましく、0.4質量部以上であることが一層好ましい。また、前記核剤の含有量の上限値は、樹脂組成物100質量部に対し、2.0質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以下であることがより好ましく、1.2質量部以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、核剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0036】
<離型剤>
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を含むことが好ましい。
離型剤は、主に、樹脂組成物の成形時の生産性を向上させるために使用されるものである。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸アミド系、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル、高級脂肪酸金属塩などが挙げられ、高級脂肪酸金属塩が好ましい。特に、本実施形態の樹脂組成物においては、ガラス繊維の量を樹脂組成物の20~50質量部であるため、一般的にアルカリ性が強い傾向にある離型剤である、高級脂肪酸金属塩も好ましく用いることができる。
高級脂肪酸金属塩を構成する高級脂肪酸は、好ましくは炭素数8以上の脂肪酸であり、より好ましくは8~40の脂肪酸である。脂肪酸は、モノカルボン酸であることが好ましい。高級脂肪酸の例には、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、セバシン酸などの飽和の脂肪酸や、エルカ酸、オレイン酸、リシノール酸などの不飽和の脂肪酸が含まれ、好ましくはモンタン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、およびベヘン酸であり、さらに好ましくはモンタン酸である。
本実施形態で用いることができる高級脂肪酸金属塩は、上記高級脂肪酸の金属塩であることが好ましい。金属塩を形成する金属元素の例には、ナトリウム、カリウムなどの第1族元素(アルカリ金属);カルシウム、マグネシウム、バリウムなどの第2族元素(アルカリ土類金属);亜鉛、アルミニウムなどの第3族元素が含まれ、好ましくはカルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩であり、より好ましくはカルシウム塩である。
高級脂肪酸金属塩の例には、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸アルミニウムが含まれ、好ましくはモンタン酸カルシウムである。
【0037】
離型剤の詳細は、上記の他、特開2016-196563号公報の段落0037~0042の記載、特開2021-161125号公報の段落0067~0070の記載、および、特開2016-078318号公報の段落0048~0058の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0038】
離型剤の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、上限は、1質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.8質量部以下であり、さらに好ましくは0.5質量部以下である。このような範囲とすることによって、射出成形等の金型成形をする場合などに、離型性を良好にすることができ、また、金型汚染を効果的に抑制することができる。
離型剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0039】
<着色剤>
本実施形態の樹脂組成物は、着色剤、特に、黒色着色剤を含んでいてもよい。
黒色着色剤の種類は特に定めるものではないが、カーボンブラック、チタンブラックなどの顔料、ニグロシンおよびアニリンブラックが例示され、カーボンブラックが好ましい。
【0040】
本実施形態に用いるカーボンブラックとしては、従来公知の任意のカーボンブラックを用いることができる。例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。中でも隠蔽力に優れる、DBP吸収量が30~300g/100cm3のカーボンブラック、特にファーネスブラックを用いることにより、安定した色調を発現させることができるので好ましい。
【0041】
本実施形態の樹脂組成物における着色剤(好ましくは、黒色着色剤)の含有量は、樹脂組成物100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、また、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましく、2質量部以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、より高い機械特性が得られる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、着色剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0042】
<他の添加剤>
本実施形態の樹脂組成物は、上記以外の添加剤(他の添加剤)を含んでいてもよい。
他の添加剤としては、アルカリ、酸化チタン、耐加水分解性改良剤、艶消剤、可塑剤、分散剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤等が例示される。これらの詳細は、特許第4894982号公報の段落0130~0155の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
他の添加剤は、合計で、樹脂組成物の20.0質量部以下であることが好ましく、10.0質量部以下であることがより好ましく、5.0質量部以下であることがさらに好ましく、1.0質量部以下であることが一層好ましい。他の添加剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
<樹脂組成物の特性>
本実施形態の樹脂組成物は、ISO179-1、2に準拠して、ISO引張り試験片(4mm厚)に成形したときの、温度23℃、湿度50%の環境下でのノッチ無シャルピー衝撃強さは、35kJ/m2以上であることが好ましく、50kJ/m2以上であることがより好ましく、60kJ/m2以上であることがさらに好ましく、65kJ/m2以上であることが一層好ましい。上限値は、特に定めるものではないが、100kJ/m2以下が実際的である。特に、耐衝撃改質材を実質的に含まなくても(例えば、樹脂組成物の1質量%未満、さらには、0.1質量%未満)、上記シャルピー衝撃強さを達成できる点で好ましい。
シャルピー衝撃強さは、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0044】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態において、樹脂組成物の製造方法は、特に定めるものではなく、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。具体的には、各成分を、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸押出機、二軸押出機、ニーダーなどで溶融混練することによって樹脂組成物を製造することができる。
【0045】
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、樹脂組成物を製造することもできる。
さらに、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって、ペレットを製造することもできる。
【0046】
<成形品>
本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物ないしペレットから形成される。
本実施形態の成形品の製造方法は、特に定めるものではない。一例として、射出成形により成形した射出成形品が例示される。
例えば、本実施形態の成形品は、各成分を溶融混練した後、直接に各種成形法で成形してもよいし、各成分を溶融混練してペレット化した後、再度、溶融して、各種成形法で成形してもよい。
【0047】
成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。
【0048】
本実施形態の成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、歯車状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等が挙げられる。
【0049】
本実施形態の成形品の利用分野については特に定めるものではなく、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、建材・住設関連部品、医療装置、レジャースポーツ用品、遊戯具、医療品、食品包装用フィルム等の日用品、防衛および航空宇宙製品等に広く用いられる。特に、サイドリリースバックルのスナップフィット嵌合部に好ましく用いられる。
【実施例0050】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0051】
1.原料
<ポリアミド樹脂>
MP10(6/4):M/Pモル比=6:4、下記合成例に従って合成した。
<<MP10(6/4)の合成例(M/Pモル比=6:4)>>
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置および窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、セバシン酸10.0kg(49.4mol)および酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウム・一水和物(モル比=1/1.5)11.66gを仕込み、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹搾しながら170℃まで加熱溶融した。
これにメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの6:4の混合ジアミン6.647k g(48.8mol、三菱ガス化学社製)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系内へ除きながら、内温を連続的に2.5時間かけて250℃まで昇温した。滴下終了後、内温を上昇させ、260℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、さらに 内温を上昇させて265℃で20分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素 で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、ペレット化すること により、ポリアミド樹脂(MP10(6/4))を得た。得られたポリアミドの融点は225℃であった。
【0052】
MP10(7/3):M/Pモル比=7:3、下記合成例に従って合成した。
<MP10(7/3)の合成例(M/Pモル比=7:3)>>
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置および窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、セバシン酸10.0kg(49.4mol)および酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウム・一水和物(モル比=1/1.5)11.66gを仕込み、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹搾しながら170℃まで加熱溶融した。
これにメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの7:3の混合ジアミン6.647k g(48.8mol、三菱ガス化学社製)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系内へ除きながら、内温を連続的に2.5時間かけて240℃まで昇温した。滴下終了後、内温を上昇させ、250℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、さらに 内温を上昇させて255℃で20分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素 で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、ペレット化すること により、ポリアミド樹脂(MP10(6/4))を得た。得られたポリアミドの融点は215℃であった。
【0053】
<核剤>
タルク:ミクロンホワイトMW5000S、林化成社製、平均粒径5μm
【0054】
<着色剤>
CBMB:カーボンブラック:#950B、三菱ケミカル製
【0055】
<離型剤>
ライトアマイドWH-255:共栄社化学社製、高級脂肪酸アマイド
CS8CP:日東化成工業社製、モンタン酸カルシウム
【0056】
<ガラス繊維>
ガラス繊維1:Eガラス繊維、円形断面、平均繊維径11μm
ガラス繊維2:Eガラス繊維、円形断面、平均繊維径6.5μm
ガラス繊維3:Eガラス繊維、円形断面、平均繊維径6.5μm
T-289DE:日本電気硝子社製、ガラス繊維、円形断面、平均繊維径6.5μm
【0057】
<<ガラス繊維の加熱発生ガス分析>>
各ガラス繊維について、サンプル5gを600℃で2時間の加熱処理し、質量変化を確認した。
ガラス繊維1gを280℃で10分加熱して発生したガス(但し、T-289DEのみ、280℃で1時間加熱したガス)について、TD GC/MS分析した。
発生ガス量(ガラス繊維1g当たりのが発生量)はいずれもデカン換算した値である。単位は、μg/gである。
結果を下記表1に示す。
【表1】
【0058】
<衝撃改良材>
タフマーMP0610:三井化学社、無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体、MFR 0.3g/10min (190℃/2.16kgf)
タフマーMH5040、三井化学社、無水マレイン酸変性エチレン-1-ブテン共重合体、MFR 0.5g/10min (190℃/2.16kgf)
FG1901GT:クレイトン社製、無水マレイン酸変性スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体、MFR 22g/10min (230℃/5kgf)
セプトンS8007:クラレ社製、スチレン系エラストマー、SEBS
セプトンBio SF902:クラレ社製、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体、MFR 190℃/21NでNo Flow、230℃/98Nで55g/10min
【0059】
2.実施例1~16、比較例1~6
<コンパウンド>
表3~表6に示す通り、それぞれ秤量し(各成分の単位は、質量部である)、ガラス繊維以外の成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(芝浦機械社製、TEM26SS)の根元から投入し、溶融した。その後、ガラス繊維をサイドフィードしてポリアミド樹脂のペレットを作製した。二軸押出機の温度設定は、280℃とした。
【0060】
<曲げ特性>
上記の製造方法で得られたペレットを120℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業社製、「NEX140III」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度130℃、成形サイクル50秒の条件で、ISO多目的試験片(4mm厚)を射出成形した。
ISO178に準拠して、23℃の温度で曲げ強さ(単位:MPa)および曲げ弾性率(単位:GPa)を測定した。
【0061】
<シャルピー衝撃強さ>
ISO179-1、2に準拠して、上記ISO多目的試験片(4mm厚)を用いて、温度23℃、湿度50%の環境下でノッチ無しシャルピー衝撃強さ(単位:kJ/m2)を測定した。
また、ISO多目的試験片を所定のサイズ形状に切削し、シャルピー衝撃強さ(ノッチ付)の測定を行った。
【0062】
<総合評価>
各実施例および比較例について、材料適性を総合的に評価した。
【表2】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、耐衝撃性が格段に改善された(実施例1~16)。