(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062301
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】液体浄化装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20230101AFI20240430BHJP
【FI】
C02F1/32
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170219
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】390029698
【氏名又は名称】テック大洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002181
【氏名又は名称】弁理士法人IP-FOCUS
(72)【発明者】
【氏名】鳥潟 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】二宮 美絵
【テーマコード(参考)】
4D037
【Fターム(参考)】
4D037AA06
4D037AA09
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB04
(57)【要約】
【課題】大量の液体を短時間に処理することが可能な液体浄化装置を提供する。
【解決手段】液体浄化装置1は、円筒状の側壁2aを有する処理槽2と、液体の流入路3及び流出路4とを備える。処理槽2の内部には、保護パイプで保護された円筒状の紫外線ランプ7が複数本設けられる。複数の紫外線ランプ7は、流入路3の開口部近傍に空間2bが形成され、流入路3に対面する4本の紫外線ランプ7が対面部7aとなり、それ以外の箇所では、ほぼ均等に配列された配列部7bとなる。対面部7aは、液体の流入方向に対して約60°傾斜している。流入路3から流入した液体は、空間2bを介して対面部7aに突き当たり、対面部7aの傾斜によって処理槽2の側壁2aに沿って螺旋状に旋回する。一方で、対面部7aの隙間を通った液体によって乱流が発生する。紫外線ランプ7の周囲の液体の乱流により、液体の浄化が効率よく行われる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に紫外線を含む光線を照射することにより液体の浄化を行う装置であって、
円筒状の側壁を有する処理槽と、
前記処理槽内に軸方向に沿って複数配列される筒状の光源筒体と、
前記処理槽の側方から接続され、浄化する液体を流入させる流入路及び浄化された液体を流出させる流出路とを備え、
前記流入路及び前記流出路は、前記処理槽の軸方向にオフセットして設けられており、
前記処理槽又は前記流入路内に、前記流入路から流入される液体が突き当たる箇所に設けられ、前記処理槽を軸方向から見て前記流入路からの液体の流入方向に対して傾斜して配列された対面部を有することを特徴とする液体浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体浄化装置であって、
前記対面部が、前記光源筒体の配列によって形成されていることを特徴とする液体浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体浄化装置であって、
複数の前記光源筒体のうち、前記対面部を除く複数の光源筒体が配列部に配列されており、
前記配列部における光源筒体は、処理される液体に対する紫外線の照射可能範囲同士が重なるように配列されていることを特徴とする液体浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大量の液体の浄化処理が可能な液体浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、魚類の養殖等において、養殖槽内の水のろ過を行う際に紫外線浄化装置により殺菌を行うことが行われている。特許文献1には、透明部材で形成され、内部に液体が流れるように形成された通路内に紫外線ランプを設置し、通路内を流れる液体の殺菌を行う液体浄化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-081990号公報
【特許文献2】特許第4664496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の液体浄化装置は、同文献の
図7に記載されているように、液体が流れる通路を複数設けることができ、液体の処理量に応じて通路の本数を増減させることができるので、比較的小規模な施設から、中規模の施設まで、施設の規模に応じた装置構成とすることができる。
【0005】
一方で、大規模な施設において大量の液体を処理する場合には、特許文献2のような、通路内に複数の紫外線ランプを設けた構成が適している。特許文献2に記載の処理装置は、流体の流れに沿って設けられ、内部に紫外線ランプを備えた円筒状の筒状部材を複数配置している。また、液体の流れの上流側に、筒状部材の周囲に渦流を生じさせる案内板を設けている。このような構成により、筒状部材の周囲を通る液体に長く紫外線を照射させることができるとされている。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の構成では、案内板が流れの抵抗となり、流速が遅くなるため、短時間に多量の液体の殺菌を行うことは困難である。
【0007】
本発明は、大量の液体を短時間に処理することが可能な液体浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の液体浄化装置は、液体に紫外線を含む光線を照射することにより液体の浄化を行う装置であって、円筒状の側壁を有する処理槽と、前記処理槽内に軸方向に沿って複数配列される筒状の光源筒体と、前記処理槽の側方から接続され、浄化する液体を流入させる流入路及び浄化された液体を流出させる流出路とを備え、前記流入路及び前記流出路は、前記処理槽の軸方向にオフセットして設けられており、前記処理槽又は前記流入路内に、前記流入路から流入される液体が突き当たる箇所に設けられ、前記処理槽を軸方向から見て前記流入路からの液体の流入方向に対して傾斜して配列された対面部を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の液体浄化装置によれば、処理槽又は流入路内に設けられる対面部が、処理槽の軸方向から見て流入路からの液体の流入方向に対して傾斜しているため、流入路から流入された液体が円滑に処理槽内に流入する。また、対面部の傾斜によって、流入された液体の流れの方向が変化して処理槽の側壁に沿って円弧状に旋回する流れとなる。
【0010】
本発明の液体浄化装置においては、前記対面部が、前記光源筒体の配列によって形成されていてもよい。当該構成により、流入路の開口部近傍には光源筒体の傾斜による空間が形成される。この空間によって、流入路から流入された液体が円滑に処理槽内に流入する。
【0011】
また、流入路と流出路が処理槽の軸方向にオフセットして設けられているので、液体の円弧状の旋回にオフセットが加わって螺旋状の流れになる。これにより、処理槽内の液体が複数の光源筒体に対して螺旋状に接触することになるので、光源筒体の周囲で乱流となり、効率よく液体の浄化を行うことができる。
【0012】
また、本発明の液体浄化装置は、複数の前記光源筒体のうち、前記対面部を除く複数の光源筒体が配列部に配列されており、前記配列部における光源筒体は、紫外線の照射可能範囲同士が重なるように配列してもよい。
【0013】
当該構成によれば、配列部における複数の光源筒体は、光源筒体の照射可能範囲同士が重なるように配列されているため、隣接する光源筒体の間の液体には、双方の光源筒体の紫外線が照射される。これにより、処理槽内の液体の浄化を効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、処理槽内に設けられた複数の光源筒体に対して、処理される液体を螺旋状に接触させることができるので、大量の液体を短時間に処理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の液体浄化装置を側面から見た状態を示す説明図。
【
図2】
図1の液体浄化装置を処理槽の軸方向から見たII-II線断面図であり、(A)は対面部と空間を示す説明図、(B)は紫外線ランプの照射可能範囲を示す説明図。
【
図3】(A)及び(B)は、処理槽内の液体の流れを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態の一例である液体浄化装置について、
図1~
図3を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の液体浄化装置1は、円筒状の側壁2aを有する筒状の処理槽2と、処理槽2に設けられた液体の流入路3及び流出路4とを備えている。なお、ここで処理する液体は、病原性大腸菌等で汚染された水等であり、特に海水に有効に適用できる。
【0017】
処理槽2は、上方に蓋部5が設けられ、下方に底部6が設けられている。処理槽2の内部には、光源筒体として円筒状の紫外線ランプ7が複数配列されている。紫外線ランプ7は、処理槽2の軸方向(
図1においては上下方向)に向けて設けられており、それぞれその外周に石英ガラス製の保護パイプ(図示省略)を備えている。なお、光源筒体は、水銀紫外線ランプ7以外に、紫外線を照射する機能を有するLED等を使用することもできる。
【0018】
紫外線ランプ7は、保護パイプが、蓋部5に設けられた蓋ホルダと、底部6に設けられた底ホルダの2箇所で保持されている(いずれも図示省略)。紫外線ランプ7は、蓋ホルダ及び底ホルダに、図示しない耐圧パッキンを介して固定されており、処理槽2内に水圧がかかった状態で、液体が外部に漏れないように形成されている。
【0019】
流入路3は、本実施形態では処理槽2の側方から接続されており、処理槽2の軸方向では下方に設けられている。流出路4は、処理槽2の側壁2aに対して側方から接続されており、処理槽の軸方向では上方に設けられている。
【0020】
本実施形態では、流入路3及び流出路4は、
図1に示すように、処理槽2の軸方向に対してオフセットして設けられている。なお、本発明でオフセットとは、流入路3と流出路4を処理槽2の軸方向に離して設置することを言う。オフセット量は、その軸方向の距離であり、好適範囲は40cmから200cmである。また、流入路3及び流出路4は、
図2に示すように、それぞれの中心軸が処理槽2の中心軸と交差するように処理槽2に固定されている。
【0021】
また、
図1に示すように、蓋部5の外側は保護カバー8で保護されており、底部6の外側は台座9で保護されている。処理槽2及び台座9は、設置フレーム10によって設置場所に固定される。
【0022】
図2は、
図1のII-II線断面図である。本実施形態では、複数の紫外線ランプ7のうち、液体の流入方向において流入路3に対面する4本の紫外線ランプ7を対面部7aとしている。この対面部7aは、流入路3の流入方向である中心軸方向に対して約60°となるように傾斜して形成されている。対面部7aの部分は、抵抗力を生じさせる機能を持つものであれば、紫外線ランプ以外に、金属類、木材、樹脂、セラミック等何でもよく、また断面形状は、丸、多角形、楕円、板等何でもよい。
【0023】
この紫外線ランプ7の対面部7aによって、処理槽2内には、流入路3の開口部近傍に空間2bが形成される。この空間2bの形状は、処理槽2の軸方向から見た断面形状において、略台形状となっている。
【0024】
紫外線ランプ7の対面部7aを除く箇所では、紫外線ランプ7がほぼ均等に同心円状に配置された配列部7bとなっている。紫外線ランプ7の本数は、本実施形態では34本としている。
【0025】
紫外線ランプ7の配列部7bにおける配置は、
図2(B)に示すように、紫外線ランプ7の周囲に照射される紫外線の照射可能範囲7cが重なる範囲で配置を行うことが好ましい。なお、ここで紫外線の照射可能範囲とは、本実施形態では光源筒体から半径12cm以内である範囲を言う。また、紫外線の照射可能範囲同士が重なるとは、隣り合う光源筒体の距離が24cm以内を言う。
【0026】
紫外線ランプ7の照射可能範囲7cは、処理される液体の状態と、紫外線ランプ7の出力よって変動する。このため、配列部7bにおいては、処理される液体の状態(透明度や汚染度等)と、紫外線ランプ7の出力と、処理槽2において必要な処理能力を考慮し、紫外線ランプ7の本数と配置を決定する。
【0027】
図2における対面部7aの角度と空間2bの面積は、流入路3から流入する液体の速度によって適宜変更することができる。液体の流速が速いときは、空間2bを大きめに取ることにより、液体を円滑に処理槽2内に流入させることができる。
【0028】
液体浄化装置1は、実施形態の一例として、処理槽2の内径が600mm、処理槽2の高さが1200mmであり、流入路3及び流出路4の内径が250mmとなっている。また、紫外線ランプ7は、液体と接する箇所における保護パイプの外径が30mmに形成されている。処理槽2の断面積と、紫外線ランプ7の断面積の比率は、本実施形態では約8.5%となっている。
【0029】
本実施形態の液体浄化装置1は、処理能力としては500m3/hの処理量が可能な構成となっている。当該処理能力での処理を行う場合、流入路3から流入する液体の速度は約10km/hとなり、通常の浄化装置と比べて液体の流速が速いものとなる。
【0030】
本実施形態の液体浄化装置1で液体の浄化処理を行う場合は、外部に設置されたポンプ(図示省略)から流入路3を介して液体が供給される。このとき、準備段階において、処理槽2の内部には液体が充填されている。
【0031】
処理槽2内の液体の流れを
図3に示す。ポンプによって供給された液体は、処理槽2内の空間2bに流入する。空間2bには紫外線ランプ7は設けられていないので、流入路3から流入した液体は、紫外線ランプ7に邪魔されることなく、最前部にある紫外線ランプ7の対面部7aに突き当たる。
【0032】
対面部7aに突き当たった液体は、対面部7aの流入路3に対する傾斜に沿って流れる方向が変化し、処理槽2の内壁に沿って円弧状に旋回する。一方で、対面部7aにおいても、それぞれの紫外線ランプ7との間には隙間が空いているので、流入した液体の一部はこの隙間を通って紫外線ランプ7の配列部7b内に進入する。
【0033】
本実施形態では、流入路3が
図1において下方に設けられており、流出路4が上方に設けられているため、液体の流れは、処理槽2の内壁に沿って円弧状に旋回しながら上方に移動する。即ち、上方向に向けて螺旋状に上昇するようになる。同時に、対面部7aの隙間を通って配列部7b内に進入した液体が螺旋状に流れる液体と合流するので、配列部7b内に液体の乱流が発生する。
【0034】
このように、流入路3から流入した液体が、処理槽2内で螺旋状に上昇すると共に乱流により攪拌されながら紫外線ランプ7による紫外線を含む光線の照射で殺菌されて浄化され、流出路4から外部に流出される。
【0035】
本実施形態の液体浄化装置1では、流入路3の開口部近傍に空間2bが形成されているため、流入路3から流入する液体の速度低下を防止することができる。従って、紫外線ランプ7を処理槽2内に均等に配置している場合に比べて、液体の流入速度を高くすることができ、対面部7aの傾斜による螺旋状の流れを効率よく生じさせることができる。
【0036】
さらに、対面部7aの隙間から流入する液体と、螺旋状の流れが合流して乱流が発生するので、紫外線ランプ7の周囲の液体の攪拌が行われる。これにより、浄化する液体が、透明度が低い液体であっても、紫外線ランプ7の周囲の液体が攪拌されるので、処理槽2内の液体に満遍なく紫外線を照射することができる。従って、本実施形態の液体浄化装置1によれば、大量の液体を短時間に処理することが可能となる。
【0037】
なお、上記実施形態では、対面部7aを構成する紫外線ランプ7について、4本の紫外線ランプ7を直線状に配列しているが、これに限らず、複数本の紫外線ランプ7を軸方向視で円弧状となるように配列してもよい。また、対面部7aを構成する紫外線ランプ7の隙間を抜けていく液体の量を調整するために、紫外線ランプ7同士の間隔を狭めてもよく、案内板のような流量調整手段を設けてもよい。また、対面部は、紫外線ランプ7の配列によって構成するのではなく、案内板のような部材を処理槽2又は流入路3の内部に設けることにより形成してもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、紫外線ランプ7の本数を34としているが、これに限らず、処理する液体の状態や処理槽2における処理能力、或いは紫外線ランプ7の出力等によって適宜変更することができる。
【0039】
また、上記実施形態では、流入路3を処理槽2の下方に設け、流出路4を処理槽2の上方に設けているが、上下を逆にしてもよい。また、流入路3及び流出路4は、
図2に示すように、それぞれの中心軸が処理槽2の中心軸と交差するように処理槽2に固定しているが、流入路3及び流出路4の中心軸を処理槽2の中心軸と離して配置してもよい。当該構成により、処理槽2内で液体を旋回させることが更に容易となる。
【符号の説明】
【0040】
1…液体浄化装置
2…処理槽
2a…側壁
2b…空間
3…流入路
4…流出路
5…蓋部
6…底部
7…紫外線ランプ(光源筒体)
7a…対面部
7b…配列部
7c…照射可能範囲