特開 2024-62305 スライディングウォール及びスライディングウォールシステム

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024062305

(43)【公開日】2024-05-09

(54)【発明の名称】スライディングウォール及びスライディングウォールシステム

(51)【国際特許分類】

   E04B 2/74 20060101AFI20240430BHJP

   E04B 2/82 20060101ALI20240430BHJP

【ＦＩ】

E04B2/74 551Z

E04B2/82 501E

【審査請求】未請求

【請求項の数】9

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022170229

(22)【出願日】2022-10-24

(71)【出願人】

【識別番号】000239714

【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100119091

【弁理士】

【氏名又は名称】豊山 おぎ

(72)【発明者】

【氏名】▲高▼木 将司

(57)【要約】      （修正有）

【課題】遮音性を有し圧接ゴムの操作性が良いスライディングウォールを提供する。
【解決手段】本発明は、空間を区画するパネルと、パネルの上端面又は下端面に配され、パネルの上方又は下方の設置面に向かって進出又は退避し、パネルと設置面との間を閉塞可能な圧接ゴムと、パネルの側端面上に配され、隣接するパネルと間を閉塞可能な連結ゴムとを備え、パネルの角部に配され、圧接ゴムと連動させる取付部と、パネルの側端面に沿って鉛直方向に延び隣接するパネルと対向させる面合わせ部とを具備し、パネルの左右いずれか一方の面合わせ部の表面に、同表面から突出し、湾曲又は屈曲して先端が表面を向いて開放端となった板状の突起片４１が上下方向に延伸し、突起片は表面に対し近接自在で、パネルの左右の他方側の面合わせ部の表面には、隣接する他のパネルの突起片を密接させる受け部４３が形成された角部圧接ゴムを有するスライディングウォール。
【選択図】図９

【特許請求の範囲】

【請求項1】

空間を区画するパネルと、前記パネルの上端面又は下端面に配され、前記パネルの上方又は下方の設置面に向かって進出又は退避し、前記パネルと前記設置面との間を閉塞可能な圧接ゴムと、前記パネルの側端面上に配され、隣接するパネルと間を閉塞可能な連結ゴムとを備え、
前記パネルの角部に配され、前記圧接ゴムと連動可能に固定され、前記パネルの側端面に沿って鉛直方向に延び、隣接するパネルと対向させる面合わせ部とを具備し、
前記パネルの左右いずれか一方の面合わせ部の表面に、この表面から突出し、先端が開放端となった板状の突起片が上下方向に延伸し、
前記突起片は、弾性変形及び弾性復帰力により前記表面に対し近接自在であり、
前記パネルの左右の他方側の面合わせ部の表面には、隣接する他のパネルに設けられた前記一方の面合わせ部の前記突起片を密接させる受け部が形成された角部圧接ゴムを有するスライディングウォール。

【請求項2】

前記突起片は、先端が湾曲又は屈曲して前記面合わせ部の表面を向いている請求項１に記載の角部圧接ゴム。

【請求項3】

前記突起片の先端部の延長線上には、前記先端部との接触を回避する凹溝が形成されている請求項１に記載のスライディングウォール。

【請求項4】

前記角部圧接ゴムの前記突起片と前記受け部とが同じ面合わせ部に水平方向に隣り合って形成され、複数のパネルを隣接させた際に互いに対向する一方の前記パネルの前記面合わせ部と他方の前記パネルの前記面合わせ部とが、前記突起片と前記受け部とを平面視で交互にして前記左右の角部に取り付けられる請求項１に記載のスライディングウォール。

【請求項5】

前記突起片の折曲部又は湾曲部分の内側に溝部が形成されている請求項１に記載のスライディングウォール。

【請求項6】

前記角部圧接ゴムは、前記圧接ゴムの端部として前記圧接ゴムと一体的に形成されている請求項１から５のいずれか一項に記載のスライディングウォール。

【請求項7】

前記突起片と前記受け部とが互いに接触し得る接触面に、前記接触面以外の部分よりも摩擦抵抗を少なくする滑り加工が施されている請求項１から５のいずれか一項に記載のスライディングウォール。

【請求項8】

前記パネルの側端面において、前記面合わせ部の水平方向両側に補助閉塞部材が設けられている請求項１から５のいずれか一項に記載のスライディングウォール。

【請求項9】

請求項１から５のいずれか一項に記載のスライディングウォールと、
前記スライディングウォールの上方又は下方に設けられたレール部と、
前記レール部内で回転自在に設けられ、前記スライディングウォールと連結したローラとを備えたスライディングウォールシステム。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、室内空間を分割可能なスライディングウォール及びスライディングウォールシステムに関する。

【背景技術】

【0002】

複数のパネルを連結させて室内空間を仕切るスライディングウォール等の間仕切部材が広く知られている。このような間仕切部材について、遮音性を高める技術が多数開発されている。
スライディングウォールは、隣接するパネルの側端面に突き合せる際に、隣接するパネルの縦框（縦枠又は竪枠ともいう）に着脱自在にかつ密に嵌合できる連結ゴムを備えて、隣り合うパネル間を密に閉塞し得るようになっている。
スライディングウォールの上下においては、遮音性を上げるために、天井面又は床面との隙間を塞ぐ圧接ゴムがパネルの上端面及び下端面に設けられたものがある。
パネルの上端面又は下端面に設けられた圧接ゴムは、パネルの移動時にはパネル内に引き込まれてパネルの摺動を許し、パネルが所定位置に設置された際の取り付け時には引き出されて天井面及び／又は床面等の設置面に密着させ得る構成になっている。

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0003】

圧接ゴムの端部は、パネルの上下端面と設置面との間を閉塞するとともに、隣接するパネルの圧接ゴムとも密着して閉塞できるようになっていることが望まれる。
しかし、そのような条件を確実に満たすと、隣り合う圧接ゴムとの摩擦が大きくなり圧接ゴムの引き出し及び収納が困難であったため、操作性の向上が望まれていた。
そこで本発明は、遮音性を有し、圧接ゴムの操作性が良いスライディングウォールを提供する。

【課題を解決するための手段】

【0004】

本発明のスライディングウォールは、空間を区画するパネルと、前記パネルの上端面又は下端面に配され、前記パネルの上方又は下方の設置面に向かって進出又は退避し、前記パネルと前記設置面との間を閉塞可能な圧接ゴムと、前記パネルの側端面上に配され、隣接するパネルと間を閉塞可能な連結ゴムとを備え、前記パネルの角部に配され、前記圧接ゴムと連動可能に固定され、前記パネルの側端面に沿って鉛直方向に延び、隣接するパネルと対向させる面合わせ部とを具備し、前記パネルの左右いずれか一方の面合わせ部の表面に、この表面から突出し、先端が開放端となった板状の突起片が上下方向に延伸し、前記突起片は、弾性変形及び弾性復帰力により前記表面に対し近接自在であり、前記パネルの左右の他方側の面合わせ部の表面には、隣接する他のパネルに設けられた前記一方の面合わせ部の前記突起片を密接させる受け部が形成された角部圧接ゴムを有する。
この構成によれば、隣接するパネル間で隣り合って対向する角部圧接ゴムの突起片と受け部との接触部分を可及的に小さく設計できかつ突起片が押圧に対して弾性変形及び弾性復帰できる。したがって、パネルの設置位置において圧接ゴム及び角部圧接ゴムを上下動する際には、隣接するパネルにかかる押圧を逃がして圧を低減し、対向する突起片と受け部とを合わせて密着させる際には、圧を付与して密着を確実にすることができる。

【0005】

本発明のスライディングウォールの前記突起片は、先端が湾曲又は屈曲して前記面合わせ部の表面を向いていてもよい。
この構成によれば、角部圧接ゴムの摺動時に突起片がめくれて対向する角部圧接ゴムとの摩擦が増大することを防止することができる。

【0006】

本発明のスライディングウォールの前記突起片の先端部の延長線上には、前記先端部との接触を回避する凹溝が形成されていてもよい。
この構成によれば、突起片が隣接するパネルへの押圧により自らの面合わせ部の表面側に押し付けられても、突起片の先端が前記表面に接触して突起片の押圧が強くなることを回避することができる。

【0007】

本発明のスライディングウォールの前記突起片と前記受け部とが同じ面合わせ部に水平方向に隣り合って形成され、複数のパネルを隣接させた際に互いに対向する一方の前記パネルの前記面合わせ部と他方の前記パネルの前記面合わせ部とが、前記突起片と前記受け部とを平面視で交互にして前記左右の角部に取り付けられていてもよい。
この構成によれば、隣接するパネル間の突起片と受け部とによる閉塞をパネルの厚さ方向に二重にすることができる。
また、この構成によれば、パネルの左右で取り付ける部材の向きを入れ替えるだけなので、部材を共通にすることができる。

【0008】

本発明のスライディングウォールの前記突起片の折曲部又は湾曲部分の内側に溝部が形成されていてもよい。
この構成によれば、突起片がより変形しやすい。したがって、突起片にかかる不要な押圧力を逃がしやすい。

【0009】

本発明のスライディングウォールの前記角部圧接ゴムは、前記圧接ゴムの端部として前記圧接ゴムと一体的に形成されていてもよい。
この構成によれば、スライディングウォールの部品点数を抑えることができる。

【0010】

本発明のスライディングウォールの前記突起片と前記受け部とが互いに接触し得る接触面に、前記接触面以外の部分よりも摩擦抵抗を少なくする滑り加工が施されていてもよい。
この構成によれば、角部圧接ゴムを円滑に上下動させることができる。
本発明のスライディングウォールの前記パネルの側端面において、前記面合わせ部の水平方向両側に補助閉塞部材が設けられていてもよい。
この構成によれば、圧接ゴム及び角部圧接ゴムを設置面に近接させた際に生じる連結ゴムとの隙間からの音漏れを抑制することができる。

【0011】

本発明のスライディングウォールシステムは、上記いずれか一のスライディングウォールと、前記スライディングウォールの上方又は下方に設けられたレール部と、前記レール部内で回転自在に設けられ、前記スライディングウォールと連結したローラとを備えている。
この構成によれば、上記いずれかの機能を有するスライディングウォールシステムを提供することができる。

【発明の効果】

【0012】

本発明のパネルは、より高い遮音性を発揮しつつ操作性を良好にすることができるという効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【0013】

【図1】本発明の一実施形態のスライディングウォールシステム及びスライドを示す概略図である。

【図2】図１に示すスライディングウォールの一部をＡ－Ａ線で切断した面で矢視した断面図である。

【図3】（ａ），（ｂ）本発明の一実施形態のスライディングウォールを連結ゴムで連結する過程を示したい横断面図である。

【図4】本発明の一実施形態のスライディングウォールを圧接ゴムの長手方向に直交する方向で切断して視た縦断面図である。

【図5】本発明の一実施形態のスライディングウォール同士を連結する前の状態を示す正面図である。

【図6】（ａ）本発明の角部圧接ゴムを示した右側面図である。（ｂ）本図（ａ）を平面視した図である。（ｃ）本図（ａ）を底面視した図である。（ｄ）本発明の角部圧接ゴムを示した背面図である。

【図7】本発明の一実施形態のスライディングウォールシステムであって、上方の設置面に対してスライディングウォールを移動可能にした状態を示す図である。

【図8】本発明の一実施形態のスライディングウォール間が閉塞した状態を角部圧接ゴムの水平延伸部を含む面で断面視した図である。

【図9】本発明の一実施形態のスライディングウォール間が閉塞した状態を角部圧接ゴムの上下延伸部を含む面で断面視した図である。

【図10】本発明の一実施形態のスライディングウォールの圧接ゴム及び角部圧接ゴムが隣接するパネルの圧接ゴム及び角部圧接ゴムと重なった状態を示す一部正面図である。

【図11】本発明の一実施形態のスライディングウォールの圧接ゴム及び角部圧接ゴムが上方の設置面に圧接した状態を示す側面図である。

【発明を実施するための形態】

【0014】

以下、図を参照して本発明のスライディングウォールシステム及びスライディングウォールの一実施形態について説明する。

【0015】

図１に示すように、本発明のスライディングウォールシステムＸは、スライディングウォール１と、スライディングウォール１の上方及び下方に設けられた設置面１００Ａ，１００Ｂと、設置面１００Ａ内で回転自在に設けられ、スライディングウォール１と連結したローラ１１０とを主として備えている。

【0016】

スライディングウォール１は、パネル１ａと、パネル１ａの上下の設置面１００Ａ，１００Ｂとの間を塞ぐ圧接ゴム２と、隣接するパネル１ａ，１ａ間を塞ぐ連結ゴム３と、パネル１ａの角部を覆う角部圧接ゴム２ｃとを主として備えている。
設置面１００Ａ，１００Ｂとは、それぞれ、スライディングウォール１が設置される空間の天井面若しくは天井面に設けられたレールの下面１００Ａ及び床面Ｆである。

【0017】

図１又は図２に示すように、パネル１ａは、左右一対の縦框４，４，上下一対の横框５，５、枠材の表裏に貼り合わせる一対の表面材６，６、及び、表面材６，６間に充填された不図示の遮音材を具備している。

【0018】

縦框４は、左右の竪枠を構成する部材である。
図２に示すように、縦框４は、表面材６，６の左右の間を塞ぐ長尺なほぼ矩形の基板部８と、表面材６，６の内側に向けるように、基板部８の一方の偏平面に形成された横桟保持部９と、基板部８の他方の偏平面に形成された接続部１０とを有している。

【0019】

横桟保持部９は、基板部８の短手方向（即ちパネル１ａの厚さ方向）の両端から基板部８の偏平面に対してほぼ垂直に突出する一対の側面部１１，１１と、一対の側面部１１，１１の先端から互いに対向する方向に折れ曲がって延びた後、再び折れ曲がって反対側の縦框４に向かって延びた一対の狭持部１２，１２とを有している。

【0020】

狭持部１２，１２間には、パネル１ａの剛性を付与する横桟１５をちょうど挟める間隔が設けられている。横桟１５の端部に面接触する接触部１３，１３間は、横桟１５を挿入させる開口部となっている。

【0021】

接続部１０は、基板部８、係止壁１０ａ，１０ａ、及び化粧板嵌合部１７，１７を有している。
係止壁１０ａ，１０ａは、それぞれ基板部８の偏平面の短手方向の両端近傍から外側に突出した後、互いに近接する方向に階段状に２度略直角に折れ曲がって延び、開口部をすぼめている。このようにして係止壁１０ａ，１０ａは、横桟保持部９の開口と反対の方向に開口している。

【0022】

基板部８及び係止壁１０ａ，１０ａに囲まれた接続部１０内は、図１に示す隣接するパネル１ａ，１ａの間に介在させる連結ゴム３又は角部圧接ゴム２ｃを嵌合させる凹所になっている。
係止壁１０ａ，１０ａには、やや厚板状の化粧板嵌合部１７が互いに反対方向に張り出している。

【0023】

化粧板嵌合部１７は、一対の表面材６，６の外面に向かって基板部８にほぼ平行に形成されている。
化粧板嵌合部１７には、その張り出し方向の先端の面を開口部として、化粧板嵌合部１７を厚さ方向に二分する溝１７ａが形成されている。溝１７ａは、後述する表面材６の化粧板３１の先端をぴったりと嵌合できる幅を有し、縦框４の延在の方向に貫通している。

【0024】

基板部８、横桟保持部９を形成している側面部１１及び狭持部１２、並びに接続部１０、は、表面材６のほぼ上端から下端に亘って一定形状で延伸している。

【0025】

図３（ａ）に示すように、パネル１ａの左右に設けられた縦框４，４のうちの一方（本実施形態では左側の縦框４）には、予め連結ゴム３が取り付けられている。これにより、左側のパネル１ａの縦框４は、隣接する右側のパネル１ａの左側の縦框４に連結できるようになっている。

【0026】

連結ゴム３は、固定部３ａと、間隔保持部３ｂ，３ｂと、嵌着部３ｃとを有した断面視偏平な形状で、縦框４を覆う長尺な部材である。
連結ゴム３の固定部３ａは、パネル１ａの一方の側端面の縦框４の接続部１０に一旦嵌合すると、係止壁１０ａとの係合で容易に取り外しできない形状で接続部１０内に固定されている。

【0027】

図３（ｂ）に示すように、連結ゴム３の間隔保持部３ｂは、固定部３ａと嵌着部３ｃとの間から水平方向に張り出している。連結ゴム３は、パネル１ａの右側端面と隣接するパネル１ａの左側端面とを突き合せた際に、左側のパネル１ａの係止壁１０ａ，１０ａ及び化粧板嵌合部１７，１７と右側のパネル１ａの係止壁１０ａ，１０ａ及び化粧板嵌合部１７，１７との間に介在する。これにより、隣接して端面が対向するパネル１ａ，１ａとの間の距離を一定以上に保持するとともに、パネル１ａ，１ａ間を密に閉塞している。

【0028】

連結ゴム３の嵌着部３ｃは、間隔保持部３ｂ，３ｂに間から接続部１０の外側に突出する部分である。嵌着部３ｃは、突出方向に向かってすぼむ、中空の平面視台形形状に形成されている。この連結ゴム３は、隣接するパネル１ａの接続部１０内に所定以上の力で完全に押し込まれて密に連結可能となっており、所定以上の力で隣接するパネル１ａの接続部から引き抜くことができるようになっている。

【0029】

以上の構成を有する連結ゴム３は、パネル１ａの右側端面の上端部及び下端部を除く側端面の全体を覆っている。
なお、連結ゴム３の取り付けは、右側端面又は左側端面のいずれかに決められていれば、どちらに取り付けられていてもよい。

【0030】

図２に示すように、表面材６は、パネル１ａの偏平面の基盤となる矩形のボード部材３０と、ボード部材３０の表面に貼り合わせられる化粧板３１とを備えている。
ボード部材３０は、石膏ボード等により形成されている。
化粧板３１は、薄い鋼板又は樹脂製の板等により形成されている。化粧板３１の端部は、左右の両端で端面側に折り返されて、化粧板嵌合部１７の溝１７ａに嵌め込まれている。

【0031】

図４に示すように、横框５は、表面材６，６の上端間及び下端間を塞ぐ部材である。
横框５は、箱状に形成され表面材６に固定されたボックス部２０と、ボックス部２０内に支持されるとともにボックス部２０に対して上下動し、設置面１００Ａ，１００Ｂに対して進出及び退避自在に構成された可動部材２１とを備えている。

【0032】

ボックス部２０は、表面材６，６の上端縁の長手方向の両端間に亘って延びる略矩形の凹部を成す凹状部２２と、凹状部２２の上端部から表面材６，６に向かって張り出すフランジ部２３，２３を有している。凹状部２２はボード部材３０，３０間の幅よりも小さい幅に形成されている。フランジ部２３は、化粧板３１の折り曲げられた上端部の下面に接した状態で、化粧板３１及びボード部材３０とビス等の締結部材によって固定されている。

【0033】

可動部材２１は、圧接ゴムを上下動させる部材であり、ボックス部２０の開口部を覆う水平板２４とボックス部２０内に挿入する脚部２５，２５を有している。
水平板２４は、表面材６，６の上端間又は下端間と略同等の長辺及び表面材６，６の上端間又は下端間よりもやや短い短辺を有する矩形板で、ボックス部２０の開口部を覆うように設けられている。水平板２４の短辺の両端には、圧接ゴム２を保持する略Ｃ型の嵌合部２６，２６が長辺に沿って形成されている。

【0034】

脚部２５は、偏平面が立ち上がった矩形板により構成され、ボックス部２０の側壁２０ａの内壁面とわずかな間隔を空けて、前記内壁面に沿って、ボックス部２０の長手方向のほぼ全体に亘って設けられている。脚部２５の先端部には、ボックス部２０内壁面に接して適度な摩擦を起こし、可動部材２１を安定的に保持するとともに、上下の摺動を許すシールゴム３５の保持部３６が設けられている。

【0035】

圧接ゴム２は、可動部材２１の短手方向両端部に２列平行に形成された嵌合部２６，２６に保持されて、可動部材２１の長手方向に延在する部材である。
圧接ゴム２は、レールボックスの下面１００Ａ又は床面Ｆに押し当てられて、仕切られた室内を閉塞する押圧部２ａと、嵌合部２６に固定される固定部２ｂとを有している。

【0036】

なお、上側の横框５の凹状部２２の下方には、シャフト８０を固定可能な吊りボックス２７と、その更に下方に固定された補強材２８が設けられている。下側の横框５は、凹状部２２の上方に補強材２８が設けられている。

【0037】

図５に示すように、互いに隣り合うパネル１ａ，１ａの角部には、レール１００の下面１００Ａ（又は床面）に向かって上下動可能な角部圧接ゴム２ｃが配されている。
図５又は図６に示すように、角部圧接ゴム２ｃは、設置面１００Ａ（若しくは床面）及び隣接するパネル１ａ，１ａの側端面ｐ，ｐに互いに対向させる面合わせ部４０と、面合わせ部４０の表面に形成された突起片４１，凹溝４２及び受け部４３を備えている。

【0038】

面合わせ部４０は、図７に示すように、パネル１ａの側端面を正面視して略Ｔ字状に形成されている。
面合わせ部４０は、パネル１ａの厚さ方向を長手方向として延びた水平延伸部４５と、水平延伸部４５の長手方向中央からパネル１ａの側端面に沿って延びた上下延伸部４６とを有している。

【0039】

図５又は図７に示すように、水平延伸部４５は、圧接ゴム２よりもわずかに大きい高さ寸法、圧接ゴム２の両端から係止壁１０ａの先端までの幅寸法、及び、パネル１ａ上の圧接ゴム２，２を側端面側からちょうど覆う奥行き寸法を有する矩形に形成されている。水平延伸部４５は、圧接ゴム２，２とほぼ隙間なく接するように配されている。
水平延伸部４５の設置面１００Ａ，１００Ｂに対向する面４５ｔは、設置面１００Ａ，１００Ｂを隙間なく閉塞し得る形状で形成されている。

【0040】

図８に示すように、水平延伸部４５の圧接ゴム２，２に対向する面には、可動部材２１に固定するための板状の取付部４４が設けられている。取付部４４と可動部材２１とは、ボルトなどの結合部材によって固定されている。

【0041】

図６（ｃ）又は図９に示すように、上下延伸部４６は、縦框４の接続部１０内にちょうど嵌合する偏平なほぼ凸状の板部材をベース部４６ａとして、縦框４の係止壁１０ａ，１０ａ内でこれらに係合させる爪部４７，４７を備えている。

【0042】

図７又は図９に示すように、面合わせ部４０全体の表面には、水平延伸部４５及び上下延伸部４６を左右に等分した縦半部側に、水平延伸部４５の上端から上下延伸部４６の下端まで貫く突起片４１、凹溝４２が形成され、他の縦半部に受け部４３が形成されている。
より具体的には、突起片４１及び凹溝４２は、面合わせ部４０の表面の幅方向中心から所定の間隔を空けた位置に形成されている。
これにより、角部圧接ゴム２ｃは、面合わせ部４０どうしを対向させた際に、突起片４１が互いに対向する受け部４３に対向し、一部材で向きの勝手なくパネル１ａの四隅に設置できるようになっている。

【0043】

図６（ｂ）に示すように、突起片４１は、面合わせ部４０の上面視で、表面４０ａから斜めに突出した後、突出元の表面４０ａに向かって湾曲又は屈曲した横断面形状で上下方向に延伸し、先端が開放端となったいわゆる板状（ないしひれ状）に形成されている。
突起片４１の折曲箇所の内側には、折曲を柔軟にするための溝部４８が上下方向に貫くように形成されている。

【0044】

凹溝４２は、突起片４１が押圧された際に、突起片４１の先端が表面４０ａに接触するのを回避させ得る位置に形成されている。
受け部４３は、上下延伸部４６の他の半部の偏平な表面により構成され、隣り合うパネル１ａの突起片４１を接触させるようになっている。

【0045】

角部圧接ゴム２ｃは、ベース部４６ａ、取付部４４、突起片４１、受け部４３の全てが一体的に形成されている。

【0046】

角部圧接ゴム２ｃを構成する素材としては、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、クロロプレンゴム等を用いることができる。これらのうち、特に突起片４１の弾性変形及び弾性復帰が容易で押圧や摩擦時にかかる力に対する耐久性の高いエチレンプロピレンジエンゴムを好適に用いることができる。また、室内の温度変化に柔軟に対応し得る耐候性の高いフッ素ゴム等も好適に用いることができる。

【0047】

以上の構成を有する角部圧接ゴム２ｃは、図５に示すように、突起片４１を有する表面ｐを外側（すなわち隣接するパネル１ａの端面）に向けてパネル１ａの両端の縦框４，４の上下端部の４隅に取り付けられている。これにより、互いに隣接するパネル１ａ，１ａの側端面ｐ，ｐ（及び縦框４，４）同士を突き合せた際に、図９に示すようにそれぞれの突起片４１の屈曲部分が受け部４３に対向して密接可能となる。そしてこの構成により、パネル１ａ，１ａ間は、連結時に厚さ方向に間隔を空けて２つの閉塞箇所が形成されるようになっている。

【0048】

上下延伸部４６を保持している縦框４の係止壁１０ａ，１０ａの一方の外側には、角部圧接ゴム２ｃの設置面１００Ａ，１００Ｂへの圧接時に生じうる圧接ゴム２と連結ゴム３との間を塞ぐ補助閉塞ゴム７０が設けられている。

【0049】

補助閉塞ゴム７０は、横断面視が略矩形の棒状の樹脂部材である。横断面視をした際の矩形の寸法は、隣り合うパネル１ａ，１ａを連結ゴム３で連結した際に対向する係止壁１０ａ，１０ａにより形成される隙間にちょうどフィットする大きさに設定されている。

【0050】

補助閉塞ゴム７０は、係止壁１０ａ，１０ａの一方の外側に固定されている。補助閉塞ゴム７０は、隣接するパネル１ａ，１ａの縦框４，４を連結ゴム３でつなげることによって、互いに対向する縦框４，４間に狭持され、スライディングウォールをパネルの厚さ方向から挟み込む構成となっている。
補助閉塞ゴム７０の素材としては、クロロプレンゴム等の樹脂素材が好適に用いられる。

【0051】

以上の構成により、補助閉塞ゴム７０についても、パネル１ａの厚さ方向両端の係止壁１０ａの一方に配されているもの同士を対向させることでパネル１ａ，１ａの厚さ方向に２箇所で閉塞する突起片４１を更に厚さ方向に２箇所で挟み、パネル１ａ，１ａ間の隙間を閉塞している。

【0052】

図４に示すように、シャフト８０は、天井面に設けたレール１００内でほぼ鉛直方向の軸線周り（すなわち水平方向）に回転しながら移動するハンガーローラ１１０の軸に連結して固定される棒部材である。
シャフト８０は、吊りボックス２７に固定された状態で、上方に突出した先端をハンガーローラ１１０の中心に形成された雌螺子孔に螺合してハンガーローラ１１０と着脱自在に連結している。

【0053】

パネル１ａ，１ａ等を吊り下げるハンガーローラ１１０及びレール１００は、概略以下のような構成となっている。

【0054】

図１１に示すように、ハンガーローラ１１０は、ほぼ鉛直方向の軸線周りに回転するローラ１１１と、ローラ１１１の中心に設けられた軸部１１２を備えている。
ローラ１１１は、特に限定されるわけではないが、本実施形態では、軸部１１２に上下に２つ備えられている。

【0055】

軸部１１２は、シャフト８０を軸部１１２の軸線に沿って螺合させる雌螺子孔を内部に有し、かつ、外周面側に駒部材を回転自在に保持している。
レール１００は、各ローラを摺動させるレール溝１０１を水平方向に形成し、レール溝１０１同士を対向配置させた一対の側板部１０２，１０２と、側板部１０２，１０２の上端を閉じる上板部１０３とを有している。

【0056】

側板部１０２，１０２のレール溝１０１は、側面視で略Ｕ字状又は逆Ｕ字状でローラの数に合わせて上下に並ぶよう形成されている。本実施形態では、レール溝１０１は上下に２つ平行に設けられている。なお、ローラ部１１１が１つのローラのみから形成されるスライディングウォールシステムＸにおいては、レール１００の側板部１０２，１０２には、２つのレール溝１０１が設けられている。

【0057】

側板部１０２，１０２の下側のレール溝１０１の下方には、下方に開口し、室内の天井の板部材に固定するフランジ部１１５が形成されている。
ハンガーローラ１１０は、水平方向に延びるレール溝１０１が対向するように形成されたレール１００内に配されている。

【0058】

次に、本発明のスライディングウォール１及びスライディングウォールシステムＸを使用した場合の作用について説明する。
室内空間に複数のスライディングウォール１を並べて室内を仕切るにあたっては、図７に示すように、上下の圧接ゴム２，２及び角部圧接ゴム２ｃを各パネル１ａの上端及び下端に退避させた状態でスライディングウォール１を所定位置まで移動させる。

【0059】

スライディングウォール１の設置位置にスライディングウォール１を配置したら、図１０及び図１１に示すようにスライディングウォール１の上下の圧接ゴム２，２及び角部圧接ゴム２ｃを不図示の上下動機構によりレール１００の下面１００Ａ及び床面Ｆに向けて突出させて、密接させる。

【0060】

一つのスライディングウォール１の設置が完了したら、このスライディングウォール１に隣接させるスライディングウォール１を移動させ、既に設置されたスライディングウォール１の縦框４の接続部１０に連結ゴム３を嵌合せて連結する。その上で、圧接ゴム２及び角部圧接ゴム２ｃを共に引き出す。

【0061】

この際、従来の角部圧接ゴム２ｃであれば、角部圧接ゴム２ｃ同士が密に接触し摩擦抵抗が大きいため圧接ゴム２及び角部圧接ゴム２ｃの上下動を行い難かった。

【0062】

しかし、上述した本願のスライディングウォール１の角部圧接ゴム２ｃは、突起片４１の屈曲部分（又は湾曲の先端部分）の外面（即ち接触面）と対向する受け部４３の表面とを接触させるようにしている。そして、角部圧接ゴム２ｃは、突起片４１を受け部４３に対して弾性変形及び弾性復帰容易に押圧させている。そして更に、突起片４１の先端を開放端として弾性変形容易な構成としている。

【0063】

したがって、角部圧接ゴム２ｃの突起片４１が対向する受け部４３に接して摩擦を生じる状態であっても、上方への引き出し時に突起片４１が自らの面合わせ部４０の表面側に屈曲しやすくなっているため、受け部４３に対する圧を軽減させながら動ける。これにより、突起片４１が図９に示すように対向する受け部４３に接した状態でも、操作性良く角部圧接ゴム２ｃを引き出すことができるという効果を奏する。これは角部圧接ゴム２ｃの突起片４１が対向する受け部４３に密着した状態で角部圧接ゴム２ｃ及び圧接ゴム２を設置面１００Ａ，１００Ｂから離間させる場合にも同様である。

【0064】

すなわち、本発明のスライディングウォール１及びスライディングウォールシステムＸは、角部圧接ゴム２ｃの上下動時に生じる突起片４１と受け部４３との摩擦抵抗を逃がしながら容易に操作することができるという効果を奏する。

【0065】

また、角部圧接ゴム２ｃは、開放端となっている突起片４１の先端を、屈曲又は湾曲させて自らを突出させている面合わせ部４０の表面に向けている。したがって、角部圧接ゴム２ｃの移動によって突起片４１の先端がめくれて対向する受け部４３との接触面が増大してしまうことを回避することができる。
したがって、スライディングウォール１及びスライディングウォールシステムＸは、角部圧接ゴム２ｃを安定的に操作性よく動かすことができるという効果を奏する。

【0066】

また、突起片４１が押圧され又は角部圧接ゴム２ｃの移動に伴う動きで突出元の面合わせ部４０側に突起片４１の先端が近接しても、先端が面合わせ部４０の表面との接触を回避する凹溝４２が形成されている。したがって、突起片４１の先端が表面に接して摩擦を生じさせることを回避することができる。

【0067】

また、スライディングウォールシステムＸ及びスライディングウォール１は、角部圧接ゴム２ｃの操作時には摩擦抵抗を回避できるが、スライディングウォール１の設置時には、圧接ゴム２及び角部圧接ゴム２ｃを設置面及び隣接するパネル１ａとの間で密接させ得る。したがって、スライディングウォール１及びスライディングウォールシステムＸにより、区分けされた室内空間の遮音性を高度に設定することができるという効果を奏する。

【0068】

また、面合わせ部４０の表面に、パネル１ａの厚さ方向に間隔を空けて２つの突起片４１，４１が設けられていることで、閉塞部分が１箇所のものに比べて高い遮音性を持たせることができるという効果を奏する。

【0069】

また更に、パネル１ａ，１ａ間で対向する係止壁１０ａ，１０ａの間であって、上下延伸部４６に隣り合う位置に補助閉塞ゴム７０を設置可能であるため、より一層遮音性を高くすることができる。また、角部圧接ゴム２ｃを上方に移動させた際に生じる連結ゴムとの隙間を塞ぐことができ、遮音性の低下を抑制することができるという効果を奏する。

【0070】

なお、上記実施形態では、角部圧接ゴム２ｃ同士との間で突起片４１が２つ受け部４３と密着する構成を示したが、対向する角部圧接ゴム２ｃ間で突起片４１が１つだけ受け部４３に密接させる構成であってもよい。すなわち、１つの突起片４１を有した角部圧接ゴム２ｃと受け部４３だけを設けた角部圧接ゴム２ｃの２種類を用意して、これらを互いに対向させるようにしてもよい。この構成であっても上述した本発明の作用及び効果を発揮し得る。

【0071】

また、スライディングウォール１及びスライディングウォールシステムＸは、補助閉塞ゴム７０を備えていることが好ましいが、必須ではない。
また、スライディングウォール１及びスライディングウォールシステムＸは、突起片４１に溝部４８を設けていることが望ましいが必須ではない。

【0072】

また、突起片４１は、先端が開放端となっており、自ら突出している表面４０ａに向かって曲がっていれば、アーチ型その他の形状であってもよい。
また、突起片４１と受け部４３とが互いに接触し得る接触面のいずれか一方又は双方には、摩擦抵抗を下げるフッ素樹脂加工などの滑り加工が施されていてもよい。

【符号の説明】

【0073】

１ スライディングウォール
２ 圧接ゴム
２ｃ 角部圧接ゴム
３ 連結ゴム
４ 縦框
４０ 面合わせ部
４１ 突起片
４２ 凹溝
４３ 受け部
Ｘ スライディングウォールシステム

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】