(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062317
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】ルーフドレン用の防塵筐体
(51)【国際特許分類】
E04D 13/04 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
E04D13/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206282
(22)【出願日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2022169727
(32)【優先日】2022-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592094243
【氏名又は名称】カネソウ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522415911
【氏名又は名称】ヒューリックプロパティソリューション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591275469
【氏名又は名称】三喜産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】豊田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】田中 延芳
(72)【発明者】
【氏名】畠中 章
(72)【発明者】
【氏名】澤田 貞章
(57)【要約】
【課題】降灰によりルーフドレンの排水作用が低減することを抑制し得るルーフドレン用の防塵筐体を提案する。
【解決手段】周部に開口を有する支持枠体22と、該開口を閉鎖するように支持枠体22に取り付けられた、降灰を濾過する防塵フィルタ23と、支持枠体22をルーフドレン1に固定する固定部材31とを備え、ルーフドレン1のストレーナ3に上方から被せて、支持枠体22の下端周縁部を屋外床面に密接させることにより、屋外床上に設置されるものである。かかる構成によれば、防塵フィルタ23で降灰の流入を抑制できるから、該降灰による排水作用の低減を防ぐことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口が開口されたドレン受皿部を有するドレン本体と、該ドレン本体に取り付けられたストレーナとを備えた、屋外床に配設されるルーフドレンに、該ストレーナを覆うように取り付けられるものであって、
前記ストレーナに上方から被せて、下端周縁部が前記ドレン受皿部を囲んで屋外床面に密接されることにより、該屋外床上に設置される、開口を周部に有する支持枠体と、
前記支持枠体の開口を閉鎖するように、該支持枠体に取り付けられた、降灰を濾過する通水性の防塵フィルタと、
前記支持枠体を、前記ルーフドレンに固定する枠体固定手段と
を備えたものであることを特徴とするルーフドレン用の防塵筐体。
【請求項2】
支持枠体は、その下部に設けられ、所定高さまで遮蔽する帯状の遮蔽部を備えたものであることを特徴とする請求項1に記載のルーフドレン用の防塵筐体。
【請求項3】
防塵フィルタは、アルミニウム製の細線がメリヤス状に編成されてなるものであって、少なくとも100μm以上の降灰を濾過可能なものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のルーフドレン用の防塵筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上やベランダ等の屋外床に配設されたルーフドレンのストレーナを覆うように、該屋外床上に設置されるルーフドレン用の防塵筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の屋上やバルコニー等の床には、雨水の排水手段としてルーフドレンが配設されている。ルーフドレンは、前記床に埋設されたドレン受皿部と該ドレン受皿部に開口された排水口を囲繞するように下方へ延成された排水管部とを具備するドレン本体と、該ドレン本体上に配設されて前記ドレン受皿部を通水可能に覆うストレーナとを備えている。そして、ストレーナに形成された複数の狭幅状通水間隙を介して流入する雨水がドレン本体の排水口に流下されることにより、排水を行い得るようになっている。
【0003】
屋外に配設されるルーフドレンは、雨水と共に流れてくる落葉等の塵芥をストレーナによって排水口へ流入することを防ぐことができる。しかし、ストレーナの狭幅状通水間隙を通過し得る比較的小さな塵芥は雨水とともに排水口に流れ込んでしまうことから、内部で滞留して排水作用が低減するという問題があった。こうした問題を解決するために、例えば特許文献1には、線杆からなる外郭フレームに金網を配設した筐体で、ストレーナを被覆するようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-193233号公報(
図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、火山灰の降灰によって交通、ライフライン、および生活に比較的大きな障害を引き起こすことが、問題視されている。火山灰は風などにより比較的遠くの都市まで運ばれて降ることが予測されることから、前記問題に対する対策が急務である。
こうした降灰による問題の一つとして、前述したルーフドレンにおける排水作用の低減が考えられている。すなわち、降灰は比較的細かいことから、前記したストレーナと特許文献1に記載された筐体の金網とを容易に通過できるため、排水口に流れ込んだ降灰が内部に滞留して、排水作用が低減する虞がある。
【0006】
本発明は、降灰によってルーフドレンの排水作用が低減することを抑制し得るルーフドレン用の防塵筐体を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、排水口が開口されたドレン受皿部を有するドレン本体と、該ドレン本体に取り付けられたストレーナとを備えた、屋外床に配設されるルーフドレンに、該ストレーナを覆うように取り付けられるものであって、前記ストレーナに上方から被せて、下端周縁部が前記ドレン受皿部を囲んで屋外床面に密接されることにより、該屋外床上に設置される、開口を周部に有する支持枠体と、前記支持枠体の開口を閉鎖するように、該支持枠体に取り付けられた、降灰を濾過する通水性の防塵フィルタと、前記支持枠体を、前記ルーフドレンに固定する枠体固定手段とを備えたものであることを特徴とするルーフドレン用の防塵筐体である。
【0008】
かかる構成にあっては、ストレーナを覆うように屋外床上に設置されることにより、防塵フィルタで降灰を濾過できることから、該降灰の流入を抑制できる。したがって、本発明の構成によれば、降灰の滞留を抑制でき、該滞留により排水作用が低減してしまうことを防ぐことができる。さらに、本構成は、枠体固定手段によりルーフドレンに固定されることから、雨や風等により動いたり倒れたりすることを防止できるため、前記降灰の流入を抑制する作用効果が一層安定して発揮され得る。
【0009】
前述した本発明のルーフドレン用の防塵筐体にあって、支持枠体は、その下部に設けられ、所定高さまで遮蔽する帯状の遮蔽部を備えたものである構成が提案される。
【0010】
ここで、遮蔽部により遮蔽される所定高さは、該高さまで屋外床に積もった降灰の重量に耐え得る建物の強度や、火山噴火により降り積もる降灰の予測量などに基づいて設定されることが好適である。
【0011】
一般的に、降灰は様々なサイズのものが混在していることから、防塵フィルタにより濾過できずに通過する極細なものもある。こうした極細な灰であっても、多量に流れ込むと、排水作用の低下が懸念される。本構成は、遮蔽部によって、屋外床に所定高さまで降灰を積もるようにして、火山灰の降り始めから前記極細な灰が流入することを抑制する。これにより、防塵フィルタにより濾過できない極細な灰の流入量を抑えることができ、該極細な灰の流入によって排水作用が低減してしまうことを抑制できる。したがって、降灰による排水作用の低下を抑制するという作用効果が、降灰開始から比較的長時間に亘って安定して発揮され得る。
【0012】
前述した本発明のルーフドレン用の防塵筐体にあって、防塵フィルタは、アルミニウム製の細線がメリヤス状に編成されてなるものであって、少なくとも100μm以上の降灰を濾過可能なものである構成が提案される。
【0013】
かかる構成によれば、防塵フィルタによって粒径が100μm以上のサイズの降灰を安定して濾過できることから、降灰による排水作用の低下を抑制するという本発明の作用効果が一層安定かつ確実に発揮され得る。
【0014】
ここで、降灰は、火山からの距離が離れるに従って小さくなる傾向にあるものの、粒径が100μm以上のものが含まれる。そのため、少なくとも粒径が100μm以上の灰を濾過できる防塵フィルタを用いることによって、降灰の流入による排水作用の低減抑制という上述した本発明の作用効果を一層安定して奏し得る。尚、防塵フィルタは、粒径が60μm以上のサイズの降灰を濾過可能なものが好適である。これによれば、火山から遠距離の場所であっても、降灰を一層安定して濾過でき、上述した本発明の作用効果が一層向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のルーフドレン用の防塵筐体によれば、降灰の流入を抑制でき、流入した降灰により排水作用が低減してしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明にかかる実施例1の防塵筐体21の施工状態を示す縦断面図である。
【
図2】防塵筐体21の左側を切り欠いて示す施工状態の平面図である。
【
図3】防塵筐体21の左側を切り欠いて示す側面図である。
【
図4】防塵筐体21の、(A)平面図と、(B)底面図である。
【
図5】防塵フィルタ23の濾過測定結果を示す図表である。
【
図6】実施例2の防塵筐体71の施工状態を示す縦断面図である。
【
図7】防塵筐体71の一部を切り欠いて示す施工状態の平面図である。
【
図8】防塵筐体71の施工状態を示す側面図である。
【
図9】別例の防塵筐体51の左側を切り欠いて示す施工状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明にかかる実施例1,2を添付図面を用いて説明する。
【実施例0018】
建物の屋上やバルコニー等の屋外床101には、
図1に示すように、ルーフドレン1が配設される。ルーフドレン1は、ドレン本体2とストレーナ3とを備えた構成である。ドレン本体2は、中央部に排水口4が開口されたドレン受皿部7と、該排水口4に連通されて該ドレン受皿部7から下方へ延成された排水管部8とを備え、ドレン受皿部7が前記屋外床101に埋設されると共に、前記排水管部8が円筒状の縦樋107を囲繞するように配設される。さらに、ドレン受皿部7の上面には、前記屋外床101を構成するシート防水層103の縁部を挟持する防水層押え盤9が、ドレン受皿部7に立設された螺子杆10aと該螺子杆10aに螺合されるナット10bとによって固定されている。ここで、屋外床101は、鉄筋コンクリート製の床スラブ102と、該床スラブ102の上面に敷設されたシート防水層103と、コンクリートやモルタル等により該シート防水層103上に設けられた床表層部104とから構成されており、床表層部104には、ドレン受皿部7に向けて下方傾斜する排水用勾配(図示せず)が設けられており、この排水用勾配によって雨水をドレン受皿部7へ導くように構成されている。
【0019】
ストレーナ3は、その下部鍔縁(図示せず)を螺子11によって前記防水層押え盤9に固定されて、該防水層押え盤9を介してドレン本体2に被着されている。このように防水層押え盤9上に配設されたストレーナ3は、複数の幅狭状通水間隙(図示せず)を有しており、該幅狭状通水間隙を介して雨水をドレン本体2の排水管部8へ通水可能である。
【0020】
こうしたルーフドレン1は、周囲の屋外床101の床面から雨水がストレーナ3の幅狭状通水間隙を介して流入して、ドレン受皿部7から排水管部8を介して縦樋107へ流れ込むことにより、排水を行い得るものである。
【0021】
次に本発明の要部について説明する。
前述したルーフドレン1上には、ドレン受皿部7とストレーナ3とを覆うように、防塵筐体21が配設される。防塵筐体21は、火山噴火で噴出されて風により運ばれる火山灰がルーフドレン1を介して排水管部8へ流入することを抑制するためのものである。
【0022】
本実施例1の防塵筐体21は、
図1~4に示すように、上方閉鎖され且つ下方開口された有天円筒状に形成されており、ドレン受皿部7とストレーナ3とに上方から被せて屋外床101上に設置されるものである。防塵筐体21は、支持枠体22と防塵フィルタ23とを備える。
【0023】
支持枠体22は、円形板状の天井部25と該天井部25の外周縁から下方へ延成された円筒状の支持周部26とからなる上枠部24と、前記支持周部26と同じ内外径から成る円筒状の下枠部27と、上枠部24と下枠部27とを同心状で上下方向に所定間隔をおいて連結する複数の連結杆部28とを備えたものである。
【0024】
下枠部27は、所定高さの帯状板材を周回して形成された円筒状のものであり、下端周縁部に円環状のパッキン29が取り付けられている。こうした下枠部27は、雨水や塵芥(降灰を含む)を侵入不能に遮蔽するものであるから、屋外床101上では、雨水や塵芥が該下枠部27の高さまで積もる。そのため、下枠部27の高さまで積もった雨水や塵芥などの重量に建物の強度が耐え得るように、該下枠部27の高さが設定されている。さらに、本実施例にあって、下枠部27には、周方向に所定間隔をおいて複数(四個)の通水孔30が開口形成されている。通水孔30は、その下縁が、後述する連結杆部28の下支持部28aよりも上方に位置するように形成されている。これにより、後述のように連結杆部28の下支持部28aに支持された防塵フィルタ23によって、各通水孔30が内側から塞がれる。
【0025】
また、複数の連結杆部28は、上枠部24の支持周部26と下枠部27との内側に、周方向に所定間隔をおいて配設される。そして、各連結杆部28は、支持周部26と下枠部27とから径方向に一定間隔をおいた位置に夫々設置される。ここで、連結杆部28は、上下方向に長尺な細幅状の略矩形状板材により形成されており、上端部が前記上枠部24の天井部25に固結されると共に、下端部に径方向外方へ折り曲げられて前記下枠部27に固結される下支持部28aが設けられている。この下支持部28aは、下枠部27の上端よりも下方の所定高さ位置で、該下枠部27に固結される。
【0026】
こうした支持枠体22は、上枠部24と下枠部27との間が、周方向に亘って開口されたものであり、この開口を閉鎖するように、防塵フィルタ23が配設される。本実施例の防塵フィルタ23は、アルミニウム製の極細線条をメリヤス状に編成した板状のものであり、詳しくは後述する。
【0027】
防塵フィルタ23は、前記支持枠体22の上枠部24および下枠部27と各連結杆部28との間に、周方向に隙間無く周回されて配設される。ここで、防塵フィルタ23は、その上部が前記上枠部24の内周面と各連結杆部28の上部との間に嵌め合わされると共に、該防塵フィルタ23の下部が前記下枠部27の内周面と各連結杆部28の下部との間に嵌め合わされて、各連結杆部28の下支持部28aで支持される。このように防塵フィルタ23が支持枠体22に配設されることによって、該支持枠体22の周部の開口が閉鎖され、下方へ開口された本実施例の防塵筐体21が構成される。
【0028】
さらに、防塵筐体21には、前記ルーフドレン1に固定させる固定部材31を備える。固定部材31は、ストレーナ3に係合させる係合部34が下部に取り付けられた断面円形の棒状杆32と、該棒状杆32の上部を防塵筐体21の支持枠体22に連結するナット33とを備える。棒状杆32は、上部にナット33と螺合される雄螺子部(図示せず)が設けられ、下部に前記係合部34が固結されたものである。ここで、係合部34は、ストレーナ3の外表面に当接される基部(図示せず)と、該基部から内方へ突出された弾性係止部(図示せず)とを備え、該弾性係止部が、該ストレーナ3の狭幅状通水間隙(図示せず)に外方から挿通されて、その挿通状態で拡開して該ストレーナ3の内面に係止されることによって、該ストレーナ3に係合されるようにしたものである。こうした固定部材31は、棒状杆32の係合部34をストレーナ3に係合させると共に、該棒状杆32の雄螺子部を、支持枠体22の上枠部24の天井部25に開口された透孔(図示せず)に下方から挿通させて、該天井部25上でナット33を螺合させる。そして、このナット33の締結作用により、防塵筐体21が、ストレーナ3を介してルーフドレン1に固定される。
【0029】
前述した防塵筐体21は、
図1,2に示すように、屋外床101に配設されたルーフドレン1のドレン受皿部7とストレーナ3とを上方から覆うように、該屋外床101上に載置され、固定部材31によりストレーナ3に固定されることで設置される。防塵筐体21は、下枠部27がドレン受皿部7を囲んで設置されて、パッキン29が屋外床101の床面に密接される。これにより、防塵筐体21の下端と屋外床101の上面との間からの雨水や塵芥の流入を防ぐことができる。このように防塵筐体21を設置することにより、ドレン受皿部7とストレーナ3とが密閉状に覆われる。
【0030】
次に、防塵フィルタ23について説明する。
本実施例1にあって、防塵フィルタ23は、前述したように、アルミニウム製の極細線条をメリヤス状に編成したものであり、該極細線条で編成された薄板状のものを複数枚積層することによって所望の厚み(例えば、約25mm)の板状に形成されている。かかる防塵フィルタ23は、質量法による捕集効率が約55%である(ASHRAE(米国暖房冷凍空調学会) Std.52、面速=1.0m/s)。
【0031】
本実施例の防塵フィルタ23について、降灰の捕集性能を測定した。測定には、塩化ビニリデン繊維製の不織布からなるフィルタ(2種類)についても行った。以下の3種類のフィルタについて、捕集性能を測定している。
(1) 第一フィルタ:アルミニウム製の極細線条を編成したもの(本実施例の防塵フィルタ)
(2) 第二フィルタ:塩化ビニリデン繊維製のフィルタ。質量法による捕集効率が約66%(ASHRAE Std.52、面速=2.5m/S)
(3) 第二フィルタ:塩化ビニリデン繊維製のフィルタ。質量法による捕集効率が約52%(ASHRAE Std.52、面速=2.5m/S)
【0032】
測定には、開口部を有する区画壁によって、左右の室域に区画された容器を用いる。この容器は、一方の室域に水を流入すると、該水が区画壁の開口部を通過して他方の室域に流れ込むように設計されている。この容器の区画壁に、その開口部を閉鎖するように前記第一~三フィルタを取り付ける。そして、一方の室域に所定量の火山灰を入れた後に、当該室域に水を流し込み、他方の室域に流出した水を採取して、該水の中にある火山灰を顕微鏡観察する。この顕微鏡観察によって、他方の室内に入った火山灰のサイズを確認する。
【0033】
ここで、測定には、異なる火山で採取された2種類の火山灰とこれら火山灰よりも細かい粒子とを用いて測定した。
(1)試料Aの火山灰:粒径が約10~500μmの粒子が分布している。粒径が約200~300μmの粒子が多いが、10μm程度の微細な粒子(ガラス状の石英)も混在している。
(2)試料Bの火山灰:粒径が10~50μmの微細な粒子が多いが、500μm程度の大きな粒子もある。全体的にガラス状の石英で構成されている。
(3)試料Cの粉体(JIS(Z8901)粉体1-7種):粒径が10μm前後の微細な粒子が多く、大きくとも100μmまでのものがほとんどである。資料A,Bに比して明らかに細かいが、粒径が60μm程度の粒子も散見される。
【0034】
この測定により、第一フィルタでは、試料A~Cのいずれの場合も、粒径が10~50μmの粒子が見られるものの、他方の室域に入った残渣物に60μm以上のものが殆ど見られない。これにより、第一フィルタは、粒径が60μm以上の火山灰を殆ど濾過でき、高い濾過性能を有している。第二フィルタでは、試料A,Bのいずれの場合も、200μm以上の残渣物が見られないが、60~100μm程度の残渣物が第一フィルタよりも多く散在している。これにより、第二フィルタは、粒径が100μm以下の粒子を透過してしまうものの、火山灰に対する十分な濾過性能を有する。試料Cの場合、第二フィルタでは、粒径が60μm程度の粒子(および、これ以下の粒子)が散見され、前記第一フィルタに比して濾過効果が低い。第三フィルタでは、試料Aの場合、150μm以下の残渣物が散在しており、150μm以上の残渣物も見られた。これにより、第三フィルタは、ある程度の濾過性能を有するものの、第一,二フィルタに比して濾過性能が低い。尚、第三フィルタについては、試料Aで150μm以上の粒子を透過してしまうことから、試料B,Cの測定を実施していない。
【0035】
こうした測定結果を
図5に示す。第一フィルタ(アルミニウム製のもの)は、降灰の濾過性能が最も高い。第二フィルタは、第一フィルタに比して劣るものの、降灰の濾過性能に優れている。第三フィルタは、降灰に対してある程度の濾過性能を有するものの、第一,二フィルタに比して濾過性能が低い。したがって、アルミニウム製の極細線条からなるフィルタ(第一フィルタと同じもの)を、本実施例の防塵フィルタ23に適用している。尚、塩化ビニリデン繊維製のフィルタ(第二,三フィルタ)は、本実施例のフィルタに比して降灰の濾過性能に劣るものの、ある程度の濾過性能を有することから、本発明の防塵フィルタとして適用可能である。
【0036】
本実施例1の防塵筐体21は、前述したように、ルーフドレン1のドレン受皿部7とストレーナ3とを上方から覆って屋外床101に設置され、防塵フィルタ23によって雨水を排出でき且つ降灰の流入を抑制できるものである。防塵筐体21は、支持枠体22の下端周縁部に設けられたパッキン29によって、屋外床101の床面に密接されることから、該支持枠体22と屋外床101との間から降灰が流入することを防ぐことができ、排水口4への流入経路を防塵フィルタ23の通過に限ることができる。これにより、防塵フィルタ23の濾過性能にしたがって、排水口4への降灰の流入を抑制する性能が発揮される。防塵フィルタ23は、前述した測定結果のように、粒径が60μm以上の降灰を殆ど濾過できる高い濾過性能を有することから、排水口4へ流入した降灰が滞留することを抑制でき、該滞留により排水作用が低減してしまうことを防ぐことができる。
【0037】
さらに、防塵筐体21は、その下部を構成する下枠部27によって、所定高さまで雨水の流入と降灰の濾過とを抑制する構成となっている。本実施例にあっては、下枠部27に通水孔30を有することから、該下枠部27を越えない雨量であっても、該通水孔30から雨水をある程度排水することができる。これにより、実施例の防塵筐体21は、降灰の無い常態における雨天時にも、前記通水孔30から雨水を排水できる。一方、降灰の際には、下枠部27によって火山灰が屋外床101上に下枠部27の高さまで積もり、該下枠部27の高さを越えると、防塵フィルタ23によって濾過される。そして、下枠部27以下の降灰量であっても、雨水を通水孔30から排出できると共に、火山灰を通水孔30の内側にある防塵フィルタ23により濾過できる。このように下枠部27に通水孔30を設けたことから、該下枠部27の高さまで雨水を排水しつつ降灰の濾過を抑制できるため、防塵フィルタ23を通過する微細な残渣物によって排水作用が低減してしまうことを抑えることができる。これにより、防塵筐体21の、降灰による排水作用の低下を抑制するという作用効果が、降灰開始から比較的長時間に亘って安定して発揮され得る。また、降灰の無い常態で比較的小雨時から雨水を排水できることから、本実施例の防塵筐体21は、ルーフドレン1に常設できる。尚、下枠部27の高さ寸法は、前述したように、建物の強度が該高さまで屋外床101上に積もる雨水や降灰の重量に耐え得るように設定されている。
【0038】
また、防塵筐体21は、固定部材31によりストレーナ3に固定されていることから、例えば強雨や風などにより動いたり倒れたりすることを防止でき、降灰を濾過する作用が一層安定して発揮される。そして、固定部材31による固定を解除することで、ルーフドレン1から防塵筐体21を取り外しできることから、破損や防塵フィルタ23の目詰まり等を生じた場合に補修や交換を容易に行うことができる。このようにメンテナンス性にも優れている。
【0039】
前述した実施例1にあって、防塵筐体21が、本発明にかかるルーフドレン用の防塵筐体に相当する。支持枠体22の下枠部27に周設されたパッキン29により、本発明にかかる支持枠体の下端周縁部が構成されている。支持枠体22の上枠部24と下枠部27との間が、本発明にかかる支持枠体の周部の開口に相当する。固定部材31が、本発明にかかる枠体固定手段に相当する。下枠部27が、本発明にかかる遮蔽部に相当する。
ドレン受皿部67上には、複数の狭幅状通水間隙(図示せず)を備え且つ前部が斜めに傾斜されてなるストレーナ63が配設されている。ストレーナ63は、その上部鍔縁(図示せず)を螺子によって防水層押え盤69に固定することによって、該防水層押え盤69を介してドレン本体62に被着されている。また、前記排水管部68には、屋外壁111を挿通して外側方に延出される排水樋117が取り付けられている。
こうしたルーフドレン61は、周囲の屋外床101の床面からストレーナ63を介してドレン受皿部67に流入した雨水を、排水樋117へ流し込んで外側方へ排水し得るようになっている。
筐体本体72の支持枠体75は、上枠部81と、該上枠部81の下方に間隔をおいて設けられた下枠部82と、該上枠部81と下枠部82とを連結する複数の連結杆部83とを備える。上枠部81は、略四角形板状の天井部85と、該天井部85の左右側縁および前縁から下方へ延成された平面視で略コ字形の側周部84とを備える。下枠部82は、屋外床101に載置される載置板部86と、該載置板部86に立設された平面視で略コ字形の外側周部87と、該外側周部87の内側に所定間隔をおいて立設された平面視で略コ字形の内側周部88とを備える。外側周部87は、所定高さの帯状板材を折曲加工されたものであり、周方向に所定間隔をおいて複数の外側通水孔87aが開口形成されている。内側周部88も同様に、帯状板材を折曲加工されたものであり、周方向に所定間隔をおいて複数の内側通水孔88aが開口形成されている。また、上枠部81の側周部84と下枠部82の外側周部87とは同じ寸法形状で形成されており、平面視で重なるように配置される。
こうした支持枠体75は、上枠部81の側周部84と下枠部82の外側周部87との間が周方向に開口されたものであり、この開口を閉鎖するように、前記防塵フィルタ76が配設される。防塵フィルタ76は、実施例1と同様に、アルミニウム製の極細線条をメリヤス状に編成した板状のもの(前記第一フィルタと同じもの)である。
防塵フィルタ76は、その下部を下枠部82の外側周部87と内側周部88との間に嵌め合わせ、且つ上部を上枠部81の側周部84と連結杆部83との間に嵌め合わせるようにして、支持枠体75に配設される。
こうした取付部材73は、支持枠体75の上枠部81と下枠部82とに、図示しない螺子杆によって固定されている。尚、本実施例2にあっては、取付部材73と支持枠体75との相対的な前後位置を変更可能としており、該前後位置を定めて螺子杆によって固定できる。
さらに、防塵筐体71は、前述した実施例1と同様に、前記ルーフドレン61に固定させる固定部材31を備える。固定部材31は、前述したように、下部に係合部34が固結された棒状杆32と、該棒状杆32の上部を支持枠体75に連結するナット33とを備え、該棒状杆32の上部にナット33と螺合される雄螺子部(図示せず)を有する。こうした固定部材31は、係合部34をストレーナ63に傾動させると共に、支持枠体75の天井部85に開口された透孔(図示せず)に棒状杆32の雄螺子部を下方から挿通させて、該天井部85上でナット33を螺合させる。これにより、防塵筐体71がストレーナ63を介してルーフドレン61に固定される。
実施例2の防塵筐体71は、ルーフドレン61のドレン受皿部67とストレーナ63とを上方および前方から覆うようにして、屋外床101上に載置板部86が載置されると共に取付部材73が屋外壁111に当接される。そして、固定部材31によりストレーナ63に固定されることで設置される。ここで、載置板部86は、ドレン受皿部67を前方から囲んで屋外床101の床面上に配置され、下面に設けたパッキン89が該屋外床101の床面に密接される。取付部材73は、その後側縁に設けたパッキン93がドレン受皿部67を上方から囲んで屋外壁111の前面に密接されると共に、傾斜下縁部92aに設けたパッキン94がドレン受皿部67の左右両側で入隅部115の傾斜面に密接される。これにより、載置板部86と屋外床101の床面との間、取付部材73と屋外壁111の前面との間、および取付部材73と入隅部115との間から、雨水や塵芥の流入を防ぐことができる。このように防塵筐体71は、横引き排水用のドレン受皿部67とストレーナ63とを密閉状に覆って設置される。
このように実施例2の防塵筐体71は、屋外床101との間や屋外壁111との間から降灰が流入することを防ぐことができ、ドレン受皿部67の排水口64への流入経路を防塵フィルタ76の通過に限ることができる。これにより、前述した実施例1と同様に、排水口64への降灰の流入を抑制できるため、排水口64へ流入した降灰の滞留により排水作用が低減してしまうことを防ぐことができる。
さらに、実施例2の構成は、支持枠体75の下枠部82を構成する外側周部87によって、該外側周部87の高さまで雨水の流入と降灰の濾過とを抑制する構成となっている。そして、外側周部87の外側通水孔87aと内側周部88の内側通水孔88aとによって、該外側周部87を超えない雨量であっても、これら通水孔87a,88aを介して雨水をある程度排水できる。これにより、防塵筐体71は、前述した実施例1と同様に、外側周部87の高さまで雨水を排水しつつ降灰の濾過を抑制でき、微細な残渣物による排水作用の低減を抑制できるため、降灰による排水作用の低減を抑制するという作用効果が、降灰開始から比較的長時間に亘って安定して発揮される。こうしたことから、実施例2の構成も、実施例1と同様に、ルーフドレン61に常設できる。
また、実施例2の構成は、固定部材31によりストレーナ63に固定されることから、前述した実施例1と同様に、強雨や風等により動いたり倒れたりすることを防止できると共にメンテナンス性にも優れる。
実施例2にあって、防塵筐体71が、本発明にかかるルーフドレン用の防塵筐体に相当する。支持枠体75の載置板部86に設けられたパッキン89により、本発明にかかる支持枠体の下端周縁部が構成されている。支持枠体75の上枠部81と下枠部82との間が、本発明にかかる支持枠部の周部の開口に相当する。下枠部82の外側周部87が、本発明にかかる遮蔽部に相当する。
実施例1は、防塵筐体(支持枠部)の形状を略円筒状としたものであるが、これに限らず、例えば、截頭円錐形状やドーム形状(半球形状)、又は矩形筒形状(三角筒形状や四角筒形状)などとすることも可能である。同様に、実施例2の防塵筐体にあっても、半円筒形状や半ドーム形状等としても良い。
実施例1,2では、固定部材が棒状杆とナットと係合部とにより構成されるものとしたが、これに限らず、適宜変更することが可能である。例えば、棒状杆の一端が支持枠体に回動可能に枢支され且つ他端に実施例と同様の係合部を備えた構成とすることができる。また、係合部に代えて、棒状杆の他端にストレーナに係止される鍵部を設けた構成としても良い。また、実施例では、ストレーナに係止されるものとしたが、ドレン受皿部や防水層押え盤に係止されるものであっても良い。
実施例1は、防塵筐体の下枠部に四個の通水孔を設けた構成であるが、これに限らず、通水孔の配設個数は適宜変更することができる。また、通水孔の形状も、実施例1に限定されず、適宜変更可能である。実施例2の、防塵筐体の外側周部(および内側周部)に設けた外側通水孔(および内側通水孔)にあっても、同様に適宜変更可能である。
さらに、実施例1にあって、防塵筐体の下枠部に通水孔を設けない構成とすることもできる。この構成では、下枠部の高さ以下で雨水の流入と降灰の濾過とを行うことができないことから、防塵フィルタを通過する微細な残渣物によって排水作用が低減してしまうことを抑えることができる。これにより、防塵筐体の、降灰による排水作用の低下を抑制するという作用効果が、降灰開始から比較的長時間に亘って一層安定して発揮され得る。尚、このように通水孔の無い構成では、比較的小雨時に雨水を排水できないことから、常態では設置せず、降灰した際にルーフドレンに取り付けて使用することが好ましい。実施例2にあっても、同様に、外側周部(および内側周部)に通水孔を設けない構成としても良い。
実施例2は、傾斜面を有する入隅部に取り付ける構成であるが、異なる形態の入隅部に取り付ける構成であっても良い。例えば、湾曲面を有する入隅部の場合には、取付部材が左右の側板部の下部に該湾曲面に倣う湾曲下縁部を有する構成によって実現できる。また、屋外床の床面と屋外壁の壁面とが略直交状に交わる入隅部の場合には、取付部材が矩形状の側板を備えた構成により実現できる。