(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062329
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】車両用ドアロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 81/14 20140101AFI20240430BHJP
E05B 81/42 20140101ALI20240430BHJP
E05B 77/34 20140101ALI20240430BHJP
E05B 81/50 20140101ALI20240430BHJP
【FI】
E05B81/14
E05B81/42
E05B77/34
E05B81/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033458
(22)【出願日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2022169662
(32)【優先日】2022-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(72)【発明者】
【氏名】横田 佳明
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ10
2E250JJ42
2E250KK02
2E250LL05
2E250PP02
2E250PP04
2E250PP05
2E250RR33
2E250RR46
(57)【要約】
【課題】車両用ドアロック装置において、モータ及び当該モータに係る構成要素のレイアウトを最適なものとして、構成を簡単にして、かつ小型化を可能にする。
【解決手段】ベース5を含むケーシング5、8、17と、ベース5に上下方向を向く軸により回動可能に支持されるラッチ6と、ベース5に上下方向を向く軸により回動可能に支持されるラチェット7と、ケーシング17に回転軸が左右方向を向くように配置されるモータ18と、ケーシング17に回転軸線方向が左右方向を向くように回動可能に支持され、モータ18のピニオンギヤ181に噛合するギヤ部191、及びラチェット7に設けた被操作部72が直接係合する螺旋状の溝条部193を有して、モータ18の回転軸の回転により一方向へ一回転することでラチェット7を係合位置からリリース位置へ移動させるリードスクリュー19と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア又は車体のいずれか一方に固定されるベースを含むケーシングと、
前記ベースに上下方向を向くラッチ軸により回動可能に支持され、前記ドアの閉鎖時に前記ドア又は前記車体のいずれか他方に設けられるストライカと噛合可能なラッチと、 前記ベースに上下方向を向くラチェット軸により回動可能に支持され、前記ラッチに係合する係合位置において前記ラッチをラッチ位置に保持し、前記係合位置からリリース方向へ移動することで前記ラッチから外れて前記ラッチのアンラッチ位置への移動を可能にするリリース位置へ回動可能なラチェットと、
前記ケーシングに回転軸が左右方向を向くように配置され、前記回転軸にピニオンギヤを止着したモータと、
前記ケーシングに回転軸線方向が左右方向を向くように回動可能に支持され、前記ピニオンギヤに噛合するギヤ部、及び前記ラチェットの後端に設けた被操作部が直接係合する螺旋状の溝条部を有して、前記回転軸の回転により一方向へ一回転することで前記ラチェットを係合位置から前記リリース位置へ移動させるリードスクリューと、を備えたことを特徴とする車両用ドアロック装置。
【請求項2】
前記リードスクリューを、平面視において、前記ギヤ部が前記ラッチ側にあって、かつ前記ラッチの移動範囲外に配置されるようにして、前記モータと前記ラッチ及び前記ラチェットとの間に配置したことを特徴とする請求項1記載の車両用ドアロック装置。
【請求項3】
前記リードスクリューは、ニュートラル位置から前記回転軸の回転により一方向へ一回転して前記ラチェットの前記被操作部に当接することにより、前記ニュートラル位置に停止することを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ドアロック装置。
【請求項4】
前記リードスクリューは、前記ニュートラル位置において、前記ケーシングに設けた係合溝に落ち込むことで前記ニュートラル位置に保持可能な弾性部を有することを特徴とする請求項3記載の車両用ドアロック装置。
【請求項5】
前記係合溝は、前記弾性部が落ち込んでいるとき、前記リードスクリューの一方向への回転を可能にする一方、一方向と反対方向の他方向への回転を阻止する形状であることを特徴とする請求項4記載の車両用ドアロック装置。
【請求項6】
前記リードスクリューにおける前記溝条部の進み角を、前記リードスクリューの前記ニュートラル位置から前記ラチェットをリリース方向へ移動させるほど前記ラチェットの移動速度が遅くなるように変化させたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ドアロック装置。
【請求項7】
前記リードスクリューにおける前記溝条部の進み角を、前記リードスクリューの前記ニュートラル位置から前記ラチェットをリリース方向へ移動させるほど前記ラチェットの移動速度が速くなるように変化させたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ドアロック装置。
【請求項8】
前記リードスクリューにおける前記溝条部の進み角を、少なくとも前記リードスクリューの前記ニュートラル位置から中間位置に向けて前記ラチェットの移動速度が速くなるように変化させたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ドアロック装置。
【請求項9】
前記リードスクリューにおける前記溝条部の進み角を、前記リードスクリューの前記ニュートラル位置から中間位置に向けて前記ラチェットを移動させるほど前記ラチェットの移動速度が早くなるように変化させ、前記中間位置から前記ラチェットの前記リリース位置に向けて前記ラチェットを移動させるほど前記ラチェットの移動速度が遅くなるように変化させたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ドアロック装置。
【請求項10】
前記リードスクリューは、回転軸線方向へ延伸し、かつ前記ニュートラル位置にあるとき前記ラチェットの前記被操作部の軌道上に一致するスリットを有し、
前記ラチェットの前記被操作部を、前記リードスクリューが前記ニュートラル位置にあるとき、前記スリット内を回転軸線方向へ自由に移動可能としたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ドアロック装置。
【請求項11】
前記ケーシングは、さらに前記ベースに固定されて、前記ラッチ及び前記ラチェットを覆う噛合カバーを含み、
前記噛合カバーに、前記ラチェットが前記リリース位置に移動した際、前記ラチェットを前記リリース位置に保持可能なブロック位置に移動するメモリレバーを支持したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ドアロック装置。
【請求項12】
前記メモリレバーは、前記ラッチがアンラッチ位置に移動した場合、前記ラッチに当接することで、前記ブロック位置から前記ラチェットの係合位置への回動を許可するアンブロック位置に移動することを特徴とする請求項11記載の車両用ドアロック装置。
【請求項13】
前記ケーシングは、さらにベースに固定されるモータカバーを含み、
前記モータ及び前記リードスクリューを、前記モータカバー内に支持したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ドアロック装置。
【請求項14】
前記ベースに前記ラッチ及び前記ラチェットを支持した構成を噛合ユニットとし、前記モータカバー内に前記モータ及び前記リードスクリューを支持した構成をアクチュエータユニットとして、
前記アクチュエータユニットの前記モータカバーを前記噛合ユニットの前記ベースに固定することにより、前記ラチェットの前記被操作部は前記リードスクリューの前記溝条部に係合されることを特徴とする請求項13記載の車両用ドアロック装置。
【請求項15】
前記モータカバーに、前記モータに電気的に接続される導電端子を収容し、接続相手のコネクタの抜き差し方向を上下方向としたコネクタを設けたことを特徴とする請求項13記載の車両用ドアロック装置。
【請求項16】
前記ラッチ、前記ラチェット、前記モータ、前記リードスクリュー及び前記ギヤ部を含む可動要素のうち、前記ギヤ部における最上部が位置する部分の上下方向の寸法Hを最大にしたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ドアロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に開閉可能に支持されるドアをストライカに噛合することによって閉鎖状態に保持するための車両用ドアロック装置に関する。より詳しくは、ドアを閉鎖状態に保持する機能に加えて、ストライカとの噛合状態を電動により解除してドアの開放を可能にする車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ストライカとの噛合状態を電動で解除可能な車両用ドアロック装置においては、例えば、特許文献1~3に開示されているように、主な構成要素として、ベースと、ベースに回動可能に支持され、ドアの閉鎖時にストライカに噛合可能なラッチと、ベースに回動可能に支持され、ラッチに係合することによりラッチのオープン方向への回動を阻止するラチェットと、ベースに支持され、ラッチに係合しているラチェットをラッチから離脱するリリース方向へ回動させるための動力を出力するモータを含む電動リリース機構(アクチュエータ機構)と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4755544号公報
【特許文献2】特許第6427803号公報
【特許文献3】特開平10-61288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の車両用ドアロック装置においては、電動リリース機構を、モータと、モータの回転軸に設けたウォームに噛合してニュートラル位置から解除方向へ回動可能なウォームホイールと、ウォームホイールに設けたギヤに噛合して揺動することによりラチェットをリリース方向へ回動させるオープンレバーと、を含む構成とすると共に、ウォームホイールの回転軸線方向をモータの回転軸の軸線方向に対して直交する方向とし、かつウォームホイールを戻しスプリングの付勢力によりニュートラル位置に戻す構成を採用しているため、電動リリース機構の構成要素が多くなって構成の複雑化を招くと共に、モータとウォームホイールとが同一平面上に配置されることから平面視において装置の大型化を招く問題点を有する。
【0005】
特許文献2に開示の車両用ドアロック装置は、電動リリース機構を、モータと、モータの回転軸に設けたウォームに噛合してニュートラル位置から解除方向へ回動可能なウォームホイールと、ウォームホイールの回動をリリース作動としてラチェット(ポール)に伝達可能なオープンレバーと、を含む構成とすると共に、ウォームホイールの回転軸線方向をモータの回転軸の軸線方向に対して直交する方向とし、かつウォームホイールを戻しスプリングの付勢力によりニュートラル位置に戻す構成を採用しているため、特許文献1と同様に、電動リリース機構の構成要素が多くなって構成の複雑化を招くと共に、モータとウォームホイールとが同一平面上に配置されることから平面視において装置の大型化を招く問題点を有する。
【0006】
特許文献3に開示の車両用ドアロック装置においては、電動リリース機構を、モータと、モータの回転軸と同一軸線回りに回転可能なスピンドルと、スピンドルに螺合してスピンドルの回転に伴って出発位置(ニュートラル位置)から直線移動すると共に、モータ停止後、戻しスプリングにより出発位置に戻るスピンドルナットと、スピンドルナットの直線移動をリリース作動としてラチェット(係止爪)に伝達して、ラチェットをリリース作動させるための解錠レバーと、を含む構成として、特許文献1、2のようにウォームホイールを有しない構成であるが、スピンドル、スピンドルナット、戻しスプリング及び解錠レバーを含む構成としているため、構成要素が多くなって構成の複雑化を招くと共に、平面視において装置の大型化を招く問題点を有する。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑み、モータ及び当該モータに係る構成要素のレイアウトを最適なものとして、構成を簡単にして、かつ小型化を可能にした車両用ドアロック装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
本発明に係る車両用ドアロック装置は、ドア又は車体のいずれか一方に固定されるベースを含むケーシングと、前記ベースに上下方向を向くラッチ軸により回動可能に支持され、前記ドアの閉鎖時に前記ドア又は前記車体のいずれか他方に設けられるストライカと噛合可能なラッチと、前記ベースに上下方向を向くラチェット軸により回動可能に支持され、前記ラッチに係合する係合位置において前記ラッチをラッチ位置に保持し、前記係合位置からリリース方向へ移動することで前記ラッチから外れて前記ラッチのアンラッチ位置への移動を可能にするリリース位置へ回動可能なラチェットと、前記ケーシングに回転軸が左右方向を向くように配置され、前記回転軸にピニオンギヤを止着したモータと、前記ケーシングに回転軸線方向が左右方向を向くように回動可能に支持され、前記ピニオンギヤに噛合するギヤ部、及び前記ラチェットの後端に設けた被操作部が直接係合する螺旋状の溝条部を有して、前記回転軸の回転により一方向へ一回転することで前記ラチェットを係合位置からリリース位置へ移動させるリードスクリューと、を備えたことを特徴とする。この構成により、装置の小型化を可能にする一方、簡単な構成でモータの動力によりラチェットを確実にリリース作動させることができる。
【0009】
好ましくは、前記リードスクリューを、平面視において、前記ギヤ部が前記ラッチ側にあって、かつ前記ラッチの移動範囲外に配置されるようにして、前記モータと前記ラッチ及び前記ラチェットとの間に配置する。この構成により、リードスクリューをラッチとラチェットとの係合部分に接近した位置に配置することができ、より装置の小型化を図ることができる。
【0010】
好ましくは、前記リードスクリューは、ニュートラル位置から前記回転軸の回転により一方向へ一回転して前記ラチェットの前記被操作部に当接することにより、前記ニュートラル位置に停止する。この構成により、リードスクリューをニュートラル位置に確実に停止させることができる。さらには、従来技術のように戻しスプリングを必要としないため、構成を簡単にして、かつリードスクリューを戻しスプリングの付勢力に抗して回転させる必要がなくなることから、小出力の小型モータによってラチェットをリリース方向へ作動させることができる。
【0011】
好ましくは、前記リードスクリューは、前記ニュートラル位置において、前記ケーシングに設けた係合溝に落ち込むことで前記ニュートラル位置に保持可能な弾性部を有する。この構成により、リードスクリューをニュートラル位置に保持することができる。
【0012】
好ましくは、前記係合溝は、前記弾性部が落ち込んでいるとき、前記リードスクリューの一方向への回転を可能にする一方、一方向と反対方向の他方向への回転を阻止する形状である。この構成により、リードスクリューをニュートラル位置に停止させる際の跳ね返りを阻止して、リードスクリューをニュートラル位置に確実に停止させることができる。
【0013】
好ましくは、前記リードスクリューにおける前記溝条部の進み角を、前記ラチェットをリリース方向へ移動させるほど前記ラチェットの移動速度が遅くなるように変化させる。この構成により、リードスクリューをニュートラル位置に停止させる際の当接音、及びラチェットをケーシングに当接させてリリース位置を超えた位置に停止させる際の当接音を緩和することができる。
【0014】
好ましくは、前記リードスクリューは、回転軸線方向へ延伸し、かつニュートラル位置にあるとき前記ラチェットの前記被操作部の軌道上に一致するスリットを有し、前記ラチェットの前記被操作部を、前記リードスクリューが前記ニュートラル位置にあるとき、前記スリット内を回転軸線方向へ自由に移動可能とする。この構成により、リードスクリューがニュートラル位置にあるとき、ラチェットは、他の要素の抵抗を受けることなく、円滑に回動することができる。
【0015】
好ましくは、前記ケーシングは、さらに前記ベースに固定されて、前記ラッチ及び前記ラチェットを覆う噛合カバーを含み、前記噛合カバーに、前記ラチェットがリリース位置に移動した際、前記ラチェットをリリース位置に保持可能なブロック位置に移動するメモリレバーを支持する。この構成のうち、特にメモリレバーを設けたことにより、例えば、降雪時に車体に積もった雪の重みで、モータによりラチェットをリリース作動させたにも係わらずドアが開くことなく、ラチェットがラッチに再び係合するような不都合を防止できる。さらには、メモリレバーを噛合カバー側に支持したことによって、メモリレバーをラチェット上に重ねて配置可能であるため、平面視においてケーシングの水平投影面積の拡大を抑止できる。
【0016】
好ましくは、前記メモリレバーは、前記ラッチがアンラッチ位置に移動した場合、前記ラッチに当接することで、前記ブロック位置から前記ラチェットの係合位置への回動を許可するアンブロック位置に移動する。この構成により、ドアが開いたあとの閉じ動作において、ラチェットの係合位置への回動を可能にする。
【0017】
好ましくは、前記ケーシングは、さらにベースに固定されるモータカバーを含み、前記モータ及び前記リードスクリューを、前記モータカバー内に支持する。この構成により、特にモータが配置される領域への雨水浸入を防止できる。
【0018】
好ましくは、前記ベースに前記ラッチ及び前記ラチェットを支持した構成を噛合ユニットとし、前記モータカバー内に前記モータ及び前記リードスクリューを支持した構成をアクチュエータユニットとして、前記アクチュエータユニットの前記モータカバーを前記噛合ユニットの前記ベースに固定することにより、前記ラチェットの前記被操作部は前記リードスクリューの前記溝条部に係合される。この構成により、装置の組み立ての効率化を図ることができる。
【0019】
好ましくは、前記モータカバーに、前記モータに電気的に接続される導電端子を収容し、接続相手のコネクタの抜き差し方向を上下方向としたコネクタを設ける。この構成により、コネクタをケーシングの水平投影面積内に収めることができ、装置における水平投影面積の拡大を抑止できる。さらには、接続相手のコネクタを左右いずれからも接続でき、車両搭載性の向上を図ることができる。
【0020】
好ましくは、前記ラッチ、前記ラチェット、前記モータ、前記リードスクリュー及び前記ギヤ部を含む可動要素のうち、前記ギヤ部における最上部が位置する部分の上下方向の寸法を最大にする。この構成により、装置の厚み方向の寸法を小さくできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、モータ及びリードスクリューのレイアウトを最適なものとして、構成を簡単にして、装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る車両用ドアロック装置の斜視図である。
【
図3】アクチュエータユニットを噛合ユニットに組み付ける前の状態の車両用ドアロック装置の斜視図である。
【
図4】アクチュエータユニットの後ろ斜め方向から見た分解図である。
【
図8】リリース作動時における要部の平面図である。
【
図9】アンラッチ状態における要部の平面図である。
【
図10】リードスクリューのニュートラル位置にあるときの要部の拡大平面図である。
【
図11】リードスクリューの一方向へ所定角度回転したときの要部の拡大平面図である。
【
図12】リードスクリューの
図11よりもさらに一方向へ回転したときの要部の拡大平面図である。
【
図13】
図5におけるXIII-XIII線断面図である。
【
図14】
図5におけるXIV-XIV線断面図である。
【
図16】
図5におけるXVI-XVI線断面図である。
【
図18】本発明の他の実施形態として、リードスクリューのニュートラル位置にあるときの要部の拡大平面図である。
【
図19】本発明の他の実施形態として、リードスクリューの一方向へ所定角度回転したときの要部の拡大平面図である。
【
図20】本発明の他の実施形態として、リードスクリューの
図19よりもさらに一方向へ回転したときの要部の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明で使用する方位は、本発明に係る車両用ドアロック装置1を車両のバックドアに取り付けた状態を基準とする。したがって、車両用ドアロック装置1の車両に対する取り付け形態が本実施形態と異なれば、以下に使用する方位も変化するのは当然である。
【0024】
車両用ドアロック装置1は、車体後部に開設されて荷物の出入時等に使用される後部開口を開閉可能な跳ね上げ式のバックドア(上端部が左右方向のヒンジ軸回りに車体後部に回動可能に支持されるドア)(図示略)の下部に装着され、車体側に固定されるストライカ2に噛合することによってバックドアを閉鎖位置に保持する機能、及びストライカ2との噛合を解除してバックドアの開きを可能にする機能を有する。
【0025】
図1~
図6に示すように、車両用ドアロック装置1は、ストライカ2に噛合可能な噛合ユニット3と、ストライカ2との噛合状態を解除させるためのアクチュエータユニット4とを備える。
【0026】
噛合ユニット3は、ボルト(図示略)によりバックドアの下部に固定され、ケーシング(特定の符号無し)の一部を形成する金属製のベース5と、ベース5に回動可能に支持されるラッチ6及びラチェット7と、ベース5の上側に固定され、ケーシングの他の一部を形成する合成樹脂製の噛合カバー8と、噛合カバー8の裏面側(下面側)に回動可能に支持されるメモリレバー9と、補強用の金属製のサブプレート10と、を有する。
【0027】
アクチュエータユニット4は、ベース5の後部上面に固定され、ケーシングのさらに他の一部を形成する合成樹脂製のモータカバー17と、モータカバー17内に支持されるモータ18及びモータ18の動力により回転し、当該回転を直線運動に変換してラチェット7に伝達するリードスクリュー19と、ラチェット7の位置を検出する検出スイッチ20と、モータ18及び検出スイッチ20に電気的に接続される導電端子21aを収容したコネクタ21と、を有する。
【0028】
(噛合ユニット3)
特に
図2から理解できるように、ベース5は、バックドアの閉鎖時、ストライカ2が前方から進入可能なように前方が開口するストライカ進入溝51と、左右の取付片52、52と、を有し、取付片52、52がボルト(図示略)によりバックドアの下部に締結されることによりバックドアの下部に固定される。
【0029】
ラッチ6は、ベース5におけるストライカ進入溝51の左側に上下方向を向くラッチ軸11により所定角度回動可能に支持されると共に、ラッチ軸11に巻装されるスプリング12の付勢力により、特に
図7~
図9に示す平面視において反時計方向(アンラッチ方向)へ付勢されて、
図7に示すラッチ位置(バックドアの閉鎖位置に対応する位置)から反時計方向へ所定角度回動した
図9に示すアンラッチ位置(バックドアの開位置に対応する位置)、及びその逆へ回動可能である。
【0030】
ラッチ6には、バックドアの閉鎖時、ベース5のストライカ進入溝51に進入してくるストライカ2に噛合可能な噛合溝61と、特に
図7~
図9に示すように、自体の外周縁に設けられるフルラッチ係合部62及びハーフラッチ係合部63と、自体の外周寄りの上面にあって、平面視で略弓形を呈して上方へ所定量突出するブロック解除部64とが設けられる。
【0031】
ラチェット7は、ベース5におけるストライカ進入溝51の右側に上下方向を向くラチェット軸13により所定角度回動可能に支持されると共に、ラチェット軸13に巻装
されるスプリング14により平面視で時計方向(係合方向)へ付勢されて、
図7に示す係合位置から反時計方向(リリース方向)へ所定角度回動した
図8に示すリリース位置、及びその逆へ回動可能である。
【0032】
ラチェット7には、ラッチ6のフルラッチ係合部62又はハーフラッチ係合部63に選択的に係合可能な爪部71と、後方、すなわちリードスクリュー19へ向く方向へ延伸する被操作部72と、自体の上面にあって、上方へ所定量突出するブロック部73とが設けられる。
【0033】
ラチェット7の爪部71は、
図7に示すラチェット7の係合位置において、ストライカ2に係合している状態のラッチ6のフルラッチ係合部62にスプリング14の付勢力により係合することによりラッチ6をラッチ位置(バックドアの閉鎖位置に相当)に保持し、ラッチ6のハーフラッチ係合部63に係合することによりラッチ6をハーフラッチ位置(バックドアの半ドア位置に相当)に保持し、
図8に示すラチェット7のリリース位置においてフルラッチ係合部62又はハーフラッチ係合部63から外れることによってラッチ6のアンラッチ位置への回動を許可して、バックドアの開きを可能にする。
【0034】
ブロック部73は、緊急時(例えば、電装系の故障で、モータ18が作動不能になったとき)、ラチェット7を手動で解除操作できるように噛合カバー8を貫通して噛合カバー8外に露出している。さらに、本実施形態においては、
図2から理解できるように、噛合カバー8に設けた長孔8cに別途用意される摘み部16を挿入すると共に、ラチェット7の端部74に差し込んで、摘み部16を手動操作することでも、緊急時にラチェット7を手動で解除操作できるようになっている。このように、手動操作部(ブロック部73、摘み部16)が2箇所あることで、車種毎に操作し易い方を選択して操作することができる。
【0035】
ラッチ軸11及びラチェット軸13は、下端部がベース5に回転不能に支持され、上端部が噛合カバー8を貫通して噛合カバー8の上面に固定されるサブプレート10に回転不能に固着される。これにより、ラッチ軸11及びラチェット軸13の支持強度を高めることができる。
【0036】
メモリレバー9は、ラチェット7の上側に重なる位置にあって、噛合カバー8の裏面側(下面側)に一体的に形成した下向の軸部8aに所定角度回動可能に支持されると共に、スプリング15により平面視で反時計方向へ付勢されて、
図7に示すように、ラッチ6がラッチ位置、ラチェット7が係合位置にそれぞれある場合には、自体の右側に設けた第1アーム部91がラチェット7のブロック部73に後側から当接して反時計方向への回動が阻止された待機位置に保持される。メモリレバー9をラチェット7の上側に重なる位置に配置することで、メモリレバー9をラチェット7と同一平面上に配置した場合に比して、各種構成要素を配置するための領域のケーシングの水平投影面積を小さくすることができる。
【0037】
図8に示すように、ラチェット7がリリース位置に移動し、ラッチ6がラッチ位置にある場合には、ラチェット7の爪部71がフルラッチ係合部62から外れると共に、ラチェット7のブロック部73がメモリレバー9の第1アーム部91から外れる。これにより、メモリレバー9は、スプリング15の付勢力により待機位置から反時計方向へ所定角度回動した
図8に示すブロック位置に移動する。
【0038】
メモリレバー9がブロック位置に移動した場合には、メモリレバー9の第1アーム部91の先端部がラチェット7のブロック部73の移動軌跡内に進入して、ブロック部73が第1アーム部91の先端部に右側から当接可能な状態となる。このため、一旦リリース位置に移動したラチェット7は、メモリレバー9がブロック位置にある限り、係合方向への回動が阻止されて、ラッチ6がアンラッチ位置に移動するまでリリース位置に保持される。
【0039】
図9に示すように、ラッチ6がアンラッチ位置に移動した場合には、ラッチ6のブロック解除部64がメモリレバー9に設けた第2アーム部92に対して後側から当接する。これにより、メモリレバー9は、スプリング15の付勢力に抗してブロック位置から時計方向へ所定角度回動した
図9に示すアンブロック位置に移動する。メモリレバー9がアンブロック位置に移動した場合には、メモリレバー9の第1アーム部91の先端部がラチェット7のブロック部73の移動軌跡外に退避することで、ラチェット7の係合位置への移動を可能にする。
【0040】
噛合カバー8は、噛合ユニット3を構成するラッチ6、ラチェット7等の全ての可動要素を上側から覆うようにベース5に固定される。これによって、特に
図5から理解できるように、ラッチ6、ラチェット7、メモリレバー9等の全ての可動要素は、ケーシング(ベース5及び噛合カバー8)の水平投影面積内に配置されると共に、ベース5と噛合カバー8との間の収容空間に収容される。但し、
図3から理解できるように、アクチュエータユニット4を噛合ユニット3に組み付ける際、アクチュエータユニット4のリードスクリュー19に対するラチェット7の被操作部72の係合を容易に行うことができるように、ラチェット7の被操作部72は噛合カバー8の後端よりも後方へ突出している。
【0041】
(アクチュエータユニット4)
アクチュエータユニット4は、前述のように、噛合ユニット3のベース5の後部上面に固定される合成樹脂製のモータカバー17と、モータカバー17内に支持されるモータ18及びリードスクリュー19と、モータカバー17の底部に固定される検出スイッチ20と、モータカバー17の上部に設けられるコネクタ21と、を有する。
【0042】
特に
図2、4から理解できるように、モータカバー17は、前方が開口する箱状を呈して、ベース5の後部上面に固定される第1カバー17Aと、第1カバー17Aの開口を閉塞するように第1カバー17Aの前部に固定される第2カバー17Bとを含む。
【0043】
第1カバー17A及び第2カバー17Bは、ボルト22によりベース5に固定される。第2カバー17Bは、第1カバー17Aの開口を前側から塞ぐ遮蔽部171Bを有する。
【0044】
第1カバー17Aと第2カバー17Bの遮蔽部171Bとにより覆われる第1空間領域17C(
図14、15参照)には、モータ18が配置される。これにより、電装部品であるモータ18が配置される第1空間領域17Cへの雨水浸入を阻止して、モータ18への雨水の付着を防止できる。
【0045】
第2カバー17Bにおける遮蔽部171Bと、当該遮蔽部171Bに対向する前部172Bと、遮蔽部171B及び前部172Bの上端を繋ぐ上部173Bと、遮蔽部171B及び前部172Bの両側に設けられる側部174Bと、及び第1カバー17Aの底部171Aとにより覆われる第2空間領域17D(
図14~
図16参照)には、リードスクリュー19が回動可能に設けられる。
【0046】
本実施形態に係るケーシングは、噛合ユニット3のベース5及び噛合カバー8と、アクチュエータユニット4のモータカバー17とにより形成される。モータカバー17は、第1カバー17Aと第2カバー17Bとを一体形成しても良い。
【0047】
モータ18は、回転軸18aが左右方向を向くように第1カバー17A内に支持される。回転軸18aの左端部には、ピニオンギヤ181が止着される。ピニオンギヤ181は、後述のように、リードスクリュー19のギヤ部191に噛合することで、モータ18の動力を減速してリードスクリュー19に伝達する。
【0048】
リードスクリュー19は、回転軸線方向が左右方向(モータ18の回転軸18aの回転軸線方向と平行な方向)を向き、かつモータ18とラッチ6及びラチェット7との間に位置するように第2カバー17B内に回動可能に支持され、左端部寄りに設けた大径のギヤ部191がモータ18のピニオンギヤ181に噛合することでモータ18の動力により、後述のニュートラル位置から一方向(
図2に示す矢印方向及び
図13に示す側面視において反時計方向)へ一回転する。
【0049】
ギヤ部191は、平面視において、ラッチ6側にあって、かつラッチ6の移動範囲外に配置される。これにより、リードスクリュー19をラッチ6(フルラッチ係合部62又はハーフラッチ係合部63)とラチェット7(爪部71)との係合部分に接近した位置に配置することができる。さらに、
図13から理解できるように、ラッチ6、ラチェット7、モータ18、リードスクリュー19及びギヤ部191を含む可動要素のうち、ギヤ部191における最上部が位置する部分の上下方向の寸法Hを最大にする。この構成により、装置の厚み方向の寸法を小さくできる。
【0050】
リードスクリュー19には、ギヤ部191に加えて、さらに、円柱状の外周部192にあって、螺旋状の溝条部193と、回転軸線方向へ延伸するスロット194と、
図14に示す側面視において略V字状の弾性部195と、右端部寄りにあって、外周面から径方向へ突出する被ストッパ部196と、が設けられる。
【0051】
溝条部193は、リードスクリュー19の外周部192に螺旋状に1周弱設けられる。溝条部193には、ラチェット7の被操作部72が係合する。これにより、リードスクリュー19がモータ18の動力により一方向へ一回転することによって、リードスクリュー19の溝条部193に係合しているラチェット7の被操作部72を右方向へ移動させる。これにより、ラチェット7は、係合位置からリリース方向へ回動してリリース位置に回動する。好ましくは、リードスクリュー19の回転に伴ってラチェット7がリリース移動する際、ラチェット7がリリース位置に向けて移動するほどラチェット7のリリース移動速度が遅くなるように、リードスクリュー19における螺旋状の溝条部193の進み角を変化させる。具体的には、
図10に示すように、リードスクリュー19がニュートラル位置にあるとき、ラチェット7の被操作部72が係合する部位の溝条部193の進み角をθ1とすると、
図11に示すように、リードスクリュー19が中間位置(ニュートラル位置から一方向へ略100度回転した位置)にあるときには、ラチェット7の被操作部72が係合する部位の溝条部193の進み角がθ1よりも鋭角のθ2となり、
図12に示すように、リードスクリュー19がさらに一方向へ回転したときには、ラチェット7の被操作部72が係合する部位の溝条部193の進み角がθ2よりも鋭角のθ3となるように設定される。すなわち、進み角をθ1>θ2>θ3となるようにする。なお、進み角とは、被操作部72が溝条部193に係合する点における接線とリードスクリュー19の回転軸に垂直な線とがなす角度をいう。
【0052】
上述のように、リードスクリュー19がニュートラル位置から一方向へ回転するほど溝条部193の進み角を鋭角とすることで、モータ18の回転速度が一定であっても、ラチェット7の動きが徐々に遅くなることから、リードスクリュー19の溝条部193に対するラチェット7の被操作部72の追従性が向上する。これにより、リードスクリュー19をニュートラル位置に停止させる際の当接音、及びラチェット7のリリース位置において、ラチェット7を噛合カバー8に設けたストッパ部8bに当接させて停止させる際の当接音を緩和 できる。また、ラチェット7をリリース位置を超えた位置に停止させる際の跳ね返りを抑制できるため、メモリレバー9のブロック位置への移動を確実にする。
【0053】
また、本発明の他の実施形態として、
図18~
図20に示すように、リードスクリュー19における螺旋状の溝条部193の進み角を、リードスクリュー19がニュートラル位置にあるときの進み角θ1を鋭角とし、ラチェット7のリリース側の位置での進み角θ3に向かって鈍角となる、すなわちθ1<θ2<θ3となる設定でもよい。
リードスクリュー19がニュートラル位置での進み角θ1を鋭角とすることで、ラチェット7の動きだし時の移動速度を遅くすることができることから、モータ18の回転速度が一定であっても、ラチェット7の動き出し時のトルクを大きくすることができ、ドアが重い車両やドアのシール反力が高い車両でラチェット7の操作荷重が必要な場合でも、ラチェット7を確実に作動させることが可能となる。
【0054】
なお、本発明のさらに他の実施形態として、リードスクリュー19がニュートラル位置にあるときの進み角θ1を鋭角とし、リードスクリュー19の中間位置の進み角θ2に向けて鈍角に変化させ、さらにリードスクリューの中間位置からラチェットのリリース側の位置での進み角θ3に向けて鋭角に変化させる、すなわちθ1<θ2>θ3となる設定としてもよい。
上述の設定とすることで、ラチェット7の動き出し時のトルクを大きくしつつ、リリース位置でのラチェット7の動きを遅くし、当接音を緩和することができる。
【0055】
スロット194は、溝条部193の始端部193aと終端部193bとを繋ぐようにリードスクリュー19の軸線方向へ延伸する。リードスクリュー19が
図7~
図9、
図13~
図16に示すニュートラル位置(スロット194が前方を向く姿勢にあって、ラチェット7における被操作部72の軌道に一致する位置)に保持されている場合には、ラチェット7の被操作部72は、他の要素に干渉することなく、スロット194内を左右方向へ自由に移動することができる。
【0056】
弾性部195は、リードスクリュー19の軸部外周にあって、ギヤ部191と溝条部193の始端部193aとの間に設けられ、側面視が略V字状を呈していることから、法線方向(リードスクリュー19の回転に伴う弾性部195の円弧軌道の一点において、その点での接線に垂直な方向)へ弾性変形可能である。
【0057】
弾性部195の先端部195aは、
図14、17に示すように、リードスクリュー19がニュートラル位置にあるとき、第2カバー17Bの裏面に設けた係合溝175Bに落ち込んで、リードスクリュー19をニュートラル位置に保持する一方、モータ18の駆動によりリードスクリュー19がニュートラル位置から一方向(解除方向で、
図14、17において反時計方向)へ回転した場合には、弾性部195を法線方向へ弾性変形させつつ係合溝175Bから抜け出る。そして、係合溝175Bから抜け出た弾性部195の先端部195aは、リードスクリュー19が一方向へ一回転した時点で、被ストッパ部196がラチェット7の被操作部72の上面に当接することで、リードスクリュー19がニュートラル位置に停止して、係合溝175Bに再び落ち込んで、リードスクリュー19をニュートラル位置に保持する。
【0058】
弾性部195の先端部195aが係合溝175Bに落ち込んだ状態では、リードスクリュー19におけるモータカバー17内でのガタ付きは抑止される。
【0059】
なお、弾性部195が係合溝175Bに落ち込むことで、リードスクリュー19をニュートラル位置に保持する形態においては、弾性部195の先端部195aが係合溝175Bの底部に接触することで弾性部195の弾性力で弾性保持しても良いし、または、弾性部195の先端部195aが係合溝175Bの底部に接触しないで緩く嵌った状態で保持しても良い。
【0060】
好ましくは、
図17に示す拡大図から理解できるように、係合溝175Bは、反時計方向へ向けて緩やかに傾斜する傾斜部176Bと、時計方向側の端において最深の部分から略直角に立ち上がる阻止部177Bとを含んだものとする。傾斜部176Bは、リードスクリュー19がニュートラル位置から一方向(
図17において反時計方向)へ回転した場合には、弾性部195の先端部195aが摺動しつつ係合溝175Bから抜け出ることを許容する。阻止部177Bは、リードスクリュー19のニュートラル位置から一方向と反対方向の他方向(
図17において時計方向)への回転を阻止するように、弾性部195の先端部195aが当接する。
【0061】
被ストッパ部196は、リードスクリュー19がモータ18の動力により一方向へ一回転して、ラチェット7をリリース位置に移動させた際、特に
図16に示すように、ラチェット7の被操作部72の上面に当接することでリードスクリュー19をニュートラル位置に停止させる。このようにすることで、従来技術のように戻しスプリングを必要としないため、構成を簡単にして、かつリードスクリュー19を従来技術のように戻しスプリングの付勢力に抗して回転させる必要がなくなることから、小出力の小型のモータ18によってラチェット7をリリース方向へ作動させることができる。
【0062】
上述のような構成においては、リードスクリュー19の被ストッパ部196がラチェット7の被操作部72の上面に当接した際、リードスクリュー19がニュートラル位置に一旦停止するものの、被ストッパ部196が被操作部72に当接したときの反動で、リードスクリュー19が他方向へ向けて跳ね返ってニュートラル位置からずれた位置に停止してしまうような状態が発生することが考えられる。このような状態が発生すると、リードスクリュー19におけるスリット194の位置が正規位置からずれてしまい、ラチェット7の被操作部72がリードスクリュー19のスリット194を移動不能になり、作動不良を起こす虞がある。しかしながら、本実施例においては、前述のように、リードスクリュー19がニュートラル位置に停止した際、係合溝175Bに落ち込んだ弾性部195が係合溝175Bの阻止部177Bに当接することで、リードスクリュー19の他方向への回転を阻止するため、上述のような跳ね返りを阻止して、リードスクリュー19をニュートラル位置に確実に停止させることが可能となる。
【0063】
検出スイッチ20は、特に
図16に示すように、第1カバー17Aの底部171Aとベース5との間に配置されて、ラチェット7がラッチ6のフルラッチ係合部62に係合した状態以外の位置にあるとき、ラチェット7の一部に接触してオンすることで、ラチェット7の非係合状態である旨の信号を出力する。
【0064】
コネクタ21は、接続相手のコネクタの導電端子の接続及び切り離し方向が上下方向を向くように、第1カバー17Aの右上面に上方へ向けて設けられる。コネクタ21内の導電端子21aは、モータ18及び検出スイッチ20に電気的に接続される。
【0065】
(車両用ドアロック装置1の組立方法)
本実施形態の車両用ドアロック装置1は、次のような行程に基づいて組み立てられる。第1組立工程において、ベース5にラッチ6及びラチェット7をラッチ軸11及びラチェット軸13によりそれぞれ支持し、スプリング12、14をラッチ軸11、ラチェット軸13にそれぞれ巻装し、噛合カバー8をベース5の上側に固定することで、噛合ユニット3の組立を終える。なお、ベース5に対する噛合カバー8の固定は、噛合カバー8の表面にサブプレート10を固定し、噛合カバー8の裏側にメモリレバー9及びスプリング15を予め支持した状態で行われる。
【0066】
第2組立工程において、モータカバー17内にモータ18、リードスクリュー19及び導電端子21aを支持し、モータカバー17における第1カバー17Aの底部171Aの下面側に検出スイッチ20を配置することで、アクチュエータユニット4の組立を終える。
【0067】
第3組立工程において、第1、2組立工程後、
図3に示すように、アクチュエータユニット4のモータカバー17の底部171Aを噛合ユニット3のベース5に上側から載置しボルト22により固定することで、車両用ドアロック装置1が完成する。
【0068】
(車両用ドアロック装置1の全体構造)
車両用ドアロック装置1は、ラッチ6、ラチェット7、モータ18及びリードスクリュー19等の主な可動要素は、互いに次のような位置関係になるようにケーシング内に配置される。なお、本実施形態に係るケーシングとは、ベース5と、ベース5に固定される噛合カバー8及びモータカバー17(第1カバー17A及び第2カバー17B)とにより形成されるケーシングを指す。
【0069】
ラッチ6は、ケーシングにおけるストライカ進入溝51の左側に上下方向を向くラッチ軸11により支持される。
【0070】
ラチェット7は、ケーシングにおけるストライカ進入溝51の右側に上下方向を向くラチェット軸13により回動可能に支持される。
【0071】
モータ18は、ラッチ6及びラチェット7の後方にあって、回転軸18aが左右方向へ向き、かつ回転軸18aに止着されたピニオン181が左側になるようにしてケーシングにおける後部に配置される。
【0072】
ラチェット7の被操作部72がリードスクリュー19の溝条部193に直接係合するように、平面視において、リードスクリュー19は、ラッチ6及びラチェット7とモータ18との間にあって、かつ溝条部193が右側(ラチェット7が位置する側)に位置するようにして、回転軸線方向が左右方向を向くようにケーシングに回動可能に支持される。
【0073】
リードスクリュー19をラッチ6のフルラッチ係合部62(又はハーフラッチ係合部63)とラチェット7の爪部71との係合部分に可能な限り接近させることができるように、平面視において、リードスクリュー19は、ラッチ6及びラチェット7とモータ18との間にあって、かつギヤ部191がラッチ6側にあって、かつラッチ6の移動範囲外に配置されるようにして、回転軸線方向が左右方向を向くようにケーシングに回動可能に支持される。
【0074】
各可動要素を上述のような位置関係とすることにより、リードスクリュー19をラッチ6とラチェット7との係合部分に接近させることができるため、各可動要素の設置スペースを縮小して、ケーシングにおける水平投影面積内に各可動要素を収まるように配置可能となり、車両ドアロック装置1の小型化を図ることができる。
【0075】
次に、
図7~
図9に基づいて、車両用ドアロック装置1の動作について説明する。
(バックドアを開ける際の動作)
バックドアが閉じた状態においては、
図7に示すように、噛合ユニット3は、ラッチ6がストライカ2に噛合しているラッチ位置にあり、ラチェット7がラッチ6のフルラッチ係合部62に係合している係合位置にあるラッチ状態にある。アクチュエータユニット4は、リードスクリュー19がニュートラル位置にあって、ラチェット7の被操作部72がリードスクリュー19における溝条部193の始端部193a側に位置する初期状態にある。
【0076】
噛合ユニット3がラッチ状態で、アクチュエータユニット4の初期状態において、操作スイッチの操作に基づいてモータ18が駆動すると、モータ18の回転軸18aの回転は、ピニオンギヤ181、ギヤ部191を介してリードスクリュー19に伝達される。これにより、リードスクリュー19は、ニュートラル位置から一方向(解除方向)へ回動をする。
【0077】
ラチェット7は、リードスクリュー19が一方向へ回動することによりリードスクリュー19の溝条部193に係合している被操作部72が右方へ移動させられることでリリース方向へ回動する。
【0078】
そして、リードスクリュー19がニュートラル位置から一方向へ一回転すると、
図8に示すように、ラチェット7がリリース位置に移動して、リードスクリュー19の被ストッパ部196がラチェット7の被操作部72の上面に当接することで、リードスクリュー19は再びニュートラル位置に停止する。この場合、ラチェット7がリリース方向へ移動するほど、ラチェット7の移動速度が遅くなるように、リードスクリュー19における溝条部193の進み角をθ1>θ2>θ3となるように変化させているため、ラチェット7の動きが徐々に遅くなり、リードスクリュー19の溝条部193に対するラチェット7の被操作部72の追従性が向上し、リードスクリュー19をニュートラル位置に停止させる際の当接音、及びラチェット7を噛合カバー8に設けたストッパ部8bに当接させてリリース位置に停止させる際の当接音を緩和できる。また、ラチェット7をリリース位置を超えた位置に停止させる際の跳ね返りを抑制できるため、メモリレバー9のブロック位置への移動を確実にする。
【0079】
ラチェット7がリリース位置に移動した場合には、ラチェット7の爪部71がラッチ6のフルラッチ係合部62から外れて、ラッチ6のアンラッチ方向への回動を許可し、また、ラチェット7のブロック部73がメモリレバー9の第1アーム部91の移動軌跡外に退避することで、メモリレバー9がスプリング15の付勢力によりブロック位置に移動する。
【0080】
図8に示す状態になると、ラッチ6に作用するスプリング12の付勢力、及びバックドアに作用するシール反力等により、バックドアがポップアップすることで、ラッチ6がアンラッチ方向へ回動して、バックドアを開けることが可能となる。そして、
図9に示すように、ラッチ6がアンラッチ位置に回動して、噛合ユニット4がアンラッチ状態になると、ラッチ6のブロック解除部64がメモリレバー9の第2アーム部92に当接することで、メモリレバー92をスプリング15の付勢力に抗してアンブロック位置に移動させて、ラチェット7の係合方向への回動を許可する。噛合ユニット4が
図9に示すアンラッチ状態にある場合には、ラチェット7は、爪部71がラッチ6の外周面に当接した位置に保持されて、ラッチ6がラッチ方向へ回動した際、爪部71がフルラッチ係合部62又はハーフラッチ係合部63に選択的に係合し得るような待機位置に保持されている。
【0081】
また、降雪時に雪が車両に積もっている等の環境下においては、
図8に示すように、ラチェット7がラッチ6から外れて、ラッチ6のアンラッチ方向への回動を許可しているものの、バックドアが雪の重みでポップアップしないで、ラッチ6がラッチ位置にとどまるような状態が発生する場合がある。このような状態が発生すると、モータ18の動力によりラチェット7をリリース作動させたにも関わらず、モータ18の駆動が停止すると、ラチェット7が再びラッチ6に係合するラッチ状態となって、バックドアを開けることができない、という不都合が生じる。
【0082】
しかし、本実施形態においては、ラチェット7をリリース位置に移動させることで、メモリレバー9がブロック位置に移動して、ラッチ6がアンラッチ位置に移動するまで、ラチェット7をリリース位置に保持するため、上述のような環境下での不都合の発生を抑止できる。
【0083】
(バックドアを閉じる際の車両用ドアロック装置1の動作)
バックドアが開状態にある場合には、
図9に示すように、噛合ユニット3は、ラッチ6がアンラッチ位置、ラチェット7が待機位置、メモリレバー9がアンブロック位置にとどまっているアンラッチ状態にある。アクチュエータユニット4は、リードスクリュー19がニュートラル位置に保持された初期状態にある。
【0084】
図9に示す状態において、バックドアが閉じられると、ストライカ2は、ベース5のストライカ進入溝51に進入して、ラッチ6の噛合溝61に噛合する。これにより、ラッチ6は、スプリング12の付勢力に抗してアンラッチ位置からハーフラッチ位置を通過してラッチ位置に回動する。
【0085】
ラッチ6がラッチ位置に回動すると、
図7に示すように、ラチェット7は、スプリング14の付勢力により待機位置から係合方向へ回動して爪部71がラッチ6のフルラッチ係合部62に係合する。この場合、ラチェット7の係合方向への回動に際しては、リードスクリュー19がニュートラル位置にあって、ラチェット7の被操作部72がリードスクリュー19のスリット194内をリードスクリュー19の回転軸線方向へ自由に移動可能であるため、ラチェット7の移動に対して障害になるようのものは存在しない。
【0086】
これにより、
図7に示すように、噛合ユニット3は、ラッチ6がストライカ2に噛合したラッチ位置に回動し、ラチェット7がラッチ6のフルラッチ係合部62に係合したラッチ状態となる。これにより、バックドアは閉鎖位置に保持される。一方、アクチュエータユニット4は、バックドアを閉じた際には、リードスクリュー19がニュートラル位置にある初期状態から何ら変化することはない。
【0087】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、本実施形態に対して、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
(i)車両用ドアロック装置1を車体に取り付け、ストライカ2をバックドアに取り付けたものとする。
(ii)車両用ドアロック装置1が取り付けられるドアを、バックドアに代えて、サイドドアまたはスライドドアとする。
【符号の説明】
【0088】
1 車両用ドアロック装置 2 ストライカ
3 噛合ユニット 4 アクチュエータユニット
5 ベース(ケーシングの一部) 51 ストライカ進入溝
52 取付片 6 ラッチ
61 噛合溝 62 フルラッチ係合部
63 ハーフラッチ係合部 64 ブロック解除部
7 ラチェット 71 爪部
72 被操作部 73 ブロック部
74 端部 8 噛合カバー(ケーシングの一部)
8a 軸部 8b ストッパ部
8c 長孔 9 メモリレバー
91 第1アーム部 92 第2アーム部
10 サブプレート 11 ラッチ軸
12 スプリング 13 ラチェット軸
14 スプリング 15 スプリング
16 摘み部 17 モータカバー(ケーシングの一部)
17A 第1カバー 171A 底部
17B 第2カバー 171B 遮蔽部
172B 前部 173B 上部
174B 側部 175B 係合溝
176B 傾斜部 177B 阻止部
17C 第1空間領域 17D 第2空間領域
18 モータ 18a 回転軸
181 ピニオンギヤ 19 リードスクリュー
191 ギヤ部 192 外周部
193 溝条部 193a 始端部
193b 終端部 194 スロット
195 弾性部 195a 先端部
196 被ストッパ部 20 検出スイッチ
21 コネクタ 21a 導電端子
22 ボルト