(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062341
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
B60W 40/00 20060101AFI20240430BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20240430BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20240430BHJP
【FI】
B60W40/00
B60W30/10
B60W40/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058312
(22)【出願日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2022170165
(32)【優先日】2022-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591280485
【氏名又は名称】ソフトバンクグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】孫 正義
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA15
3D241CA00
3D241CE01
3D241CE04
3D241CE05
3D241CE08
3D241DB42Z
3D241DC18Z
3D241DC28Z
3D241DC45Z
3D241DC46Z
3D241DC53Z
(57)【要約】
【課題】従来の自動運転車両では、道路における走行に際して生じる空気抵抗、摩擦等の要素の影響を走行しながら解析することができなかった。
【解決手段】本開示の情報処理装置は、車両に関連する複数の情報を取得可能な情報取得部と、前記情報取得部が取得した前記複数の情報からインデックス値を算出し、深層学習を用い、前記インデックス値から複数の制御変数を推論する推論部と、前記複数の制御変数に基づいて前記車両の運転制御を実行する運転制御部と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に関連する複数の情報を取得可能な情報取得部と、
前記情報取得部が取得した前記複数の情報からインデックス値を算出し、深層学習を用い、前記インデックス値から複数の制御変数を推論する推論部と、
前記複数の制御変数に基づいて前記車両の運転制御を実行する運転制御部と、を備える、
情報処理装置。
【請求項2】
前記推論部は、前記深層学習を用いた積分法による多変量解析により、前記複数の情報から前記複数の制御変数を推論する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記情報取得部は、所定の周期の単位で前記複数の情報を取得し、前記推論部及び運転制御部は、前記所定の周期の単位で取得された前記複数の情報を用いて、前記複数の制御変数の推論及び前記車両の運転制御を前記所定の周期の単位で実行する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記車両が目的地に到達するまでの走行戦略を設定する戦略設定部を更に備え、
前記走行戦略は、前記目的地までの最適ルート、走行速度、tilt、ブレーキングの少なくとも1つの理論値を含み、
前記運転制御部は、前記複数の制御変数と前記理論値との差分に基づいて前記走行戦略を更新する戦略更新部を備える、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記情報取得部は、前記車両の下部に設けられて走行する地面の温度、材質及びtiltを検出可能なセンサを備える、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の情報処理装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、深層学習を用いた多変量解析を含む情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動運転機能を有する車両について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の自動運転車両では、道路における走行に際して生じる空気抵抗、摩擦等の要素の影響を走行しながら解析することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施態様によれば、車両に関連する複数の情報を取得可能な情報取得部と、前記情報取得部が取得した前記複数の情報からインデックス値を算出し、深層学習を用い、前記インデックス値から複数の制御変数を推論する推論部と、前記複数の制御変数に基づいて前記車両の運転制御を実行する運転制御部と、を含む情報処理装置が提供される。
【0006】
本開示の一実施態様によれば、上記情報処理装置において、前記推論部は、前記深層学習を用いた積分法による多変量解析により、前記複数の情報から前記複数の制御変数を推論する。
【0007】
本開示の一実施態様によれば、上記情報処理装置において、前記情報取得部は、前記所定の周期の単位で前記複数の情報を取得し、前記推論部及び運転制御部は、前記所定の周期の単位で取得された前記複数の情報を用いて、前記複数の制御変数の推論及び前記車両の運転制御を前記所定の周期の単位で実行する。
【0008】
本開示の一実施態様によれば、上記情報処理装置において、前記車両が目的地に到達するまでの走行戦略を設定する戦略設定部を更に含み、前記走行戦略は、前記目的地までの最適ルート、走行速度、tilt、ブレーキングの少なくとも1つの理論値を含み、前記運転制御部は、前記複数の制御変数と前記理論値との差分に基づいて前記走行戦略を更新する戦略更新部を含む。
【0009】
本開示の一実施態様によれば、上記情報処理装置において、前記情報取得部は、前記車両の下部に設けられて走行する地面の温度、材質及びtiltを検出可能なセンサを含む。
【0010】
本開示の一実施態様によれば、コンピュータを、前記情報処理装置として機能させるためのプログラムが提供される。
【0011】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】Central Brainを搭載した車両の一例を示す概略図である。
【
図2】本開示の第1の実施の形態に係る情報処理装置の一例を示したブロック図である。
【
図3】本開示の第2の実施の形態に係る情報処理装置の一例を示したブロック図である。
【
図4】y=ax
nの関係により車両の速度(加速・減速)を制御する様子を説明する図である
【
図5】情報処理装置として機能するコンピュータのハードウェア構成の一例を概略的に示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
本開示の情報処理装置は、車両の制御に関連する多くの情報に基づいて、運転制御に必要な制御変数を高精度に求めるものであってよい。したがって、本開示の情報処理装置は、少なくとも一部が車両に搭載されて、車両の制御を実現するものであってよい。
【0015】
また、本開示の情報処理装置は、Autonomous DrivingをLevel6によるAI/多変量解析/ゴールシーク/戦略立案/最適確率解/最適スピード解/最適コースマネジメント/エッジにおける多種センサ入力により得られたデータを基にリアルタイムで実現でき、デルタ最適解に基づいて調整される走行システムを提供し得る。
【0016】
図1は、Central Brain120を搭載した車両12の一例を示す概略図である。Central Brain120は、本実施の形態に係る情報処理装置1の一例であってよい。Central Brain120は、
図1に示すように、複数のGate Wayが通信可能に接続されていてよい。本実施の形態に係るCentral Brain120は、Gate Wayを介して取得した複数の情報に基づいて、LeveL6の自動運転を実現し得るものである。Central Brain120は、情報処理装置の一例である。
【0017】
「Level6」とは、自動運転を表すレベルであり、完全自動運転を表すLevel5よりも更に上のレベルに相当する。Level5は完全自動運転を表すものの、それは人が運転するのと同等のレベルであり、それでも未だ事故等が発生する確率はある。Level6とは、Level5よりも上のレベルを表すものであり、Level5よりも事故が発生する確率が低いレベルに相当する。
【0018】
Level6における計算力は、Level5の計算力の1000倍程度である。したがって、Level5では実現できなかった高性能な運転制御が実現可能である。
【0019】
図1に示されているように、Central Brain120には、複数のGate Wayが通信可能に接続されている。Central Brain120は、Gate Wayを介して外部のクラウドに接続されている。Central Brain120は、Gate Wayを介して外部のクラウドへアクセスすることができるように構成されている。その一方で、Gate Wayの存在により、外部からCentral Brain120へ直接アクセスすることはできないように構成されている。
【0020】
Central Brain120は、所定時間が経過する毎に、要求信号をサーバへ出力する。具体的には、Central Brain120は、所定の周期の単位、例えば10億分の1秒毎に、問い合わせを表す要求信号をサーバへ出力する。
【0021】
図2は、本開示の第1の実施の形態に係る情報処理装置の一例を示したブロック図である。本実施の形態に係る情報処理装置1は、車両に関連する複数の情報を取得可能な情報取得部10と、情報取得部10が取得した複数の情報からインデックス値を求め、インデックス値を用いて複数の制御変数を推論する推論部20と、複数の制御変数に基づいて車両の運転制御を実行する運転制御部30と、を少なくとも含む。
【0022】
情報取得部10は、車両に関連する様々な情報を取得することが可能なものである。この情報取得部10としては、例えば車両の各所に取り付けられたセンサや、図示しないサーバ等からネットワークを介して取得可能な情報を取得するための通信手段を含むことができる。情報取得部10に含まれるセンサとしては、レーダー、LiDAR、高画素・望遠・超広角・360度・高性能カメラ、ビジョン認識、微細音センサ、超音波センサ、振動センサ、赤外線センサ、紫外線センサ、電磁波センサ、温度センサ、湿度センサ、スポ
ットAI天気予報、高精度マルチチャネルGPS、低高度衛星情報等が挙げられる。もしくは、ロングテールインシデントAI data等が挙げられる。ロングテールインシデントAI dataとは、レベル5の実装した自動車のTripデータである。
【0023】
複数種類のセンサが取得可能なセンサ情報には、地面(例えば道路)の温度や材質、外気温度の検知、外気湿度の検知、坂道の上下横斜め傾き角度の検知、道路の凍り方、水分量の検知、それぞれのタイヤの材質、摩耗状況、空気圧の検知、道路幅、追い越し禁止有無、対向車、前後車両の車種情報、それらの車のクルージング状態、周囲の状況(鳥、動物、サッカーボール、事故車、地震、火事、風、台風、大雨、小雨、吹雪、霧、など)等が挙げられ、本実施形態では、これらの検知を所定の周期の単位、例えば10億分の1秒毎に実施する。
【0024】
上述した情報取得部10に、車両の下部に設けられて走行する地面の温度、材質及びtiltを検出可能な車両下部センサを含んでいることは、特に留意すべき事項である。この車両下部センサを利用して、independent smart tiltを実行することができる。
【0025】
ここで、1つ以上のセンサ情報は車両周辺の状況を検出するセンサからのセンサ情報を適用可能である。また、1つ以上のセンサ情報として複数のセンサ情報を用いる場合は、予め定められた数のセンサ情報を適用可能である。予め定められた数は、例えば3個である。3個のセンサ情報に基づいて、車輪速、傾き、及びサスペンションを制御するためのインデックス値を算出する。3個のセンサ情報の組み合わせから算出するインデックス値の数は、例えば3個である。車輪速、傾き、及びサスペンションを制御するためのインデックス値には、例えば、センサ情報のうち空気抵抗に関する情報から算出したインデックス値、センサ情報のうち道路抵抗に関する情報から算出したインデックス値、センサ情報のうち滑り係数に関する情報から算出したインデックス値などが含まれる。
【0026】
また、推論部20は、1つのセンサ情報、またはセンサ情報の組み合わせが異なる複数のセンサ情報の組み合わせ毎に算出したインデックス値を集約して、車輪速、傾き、及びサスペンションを制御するための制御変数を算出する。例えば、推論部20は、車両の周囲の状況を検出するセンサのセンサ情報からインデックス値を算出して制御変数を算出する。また、複数のセンサ情報を用いる場合、推論部20は、例えば、センサ1、2及び3の組み合わせで複数のインデックス値を算出し、センサ4、5及び6の組み合わせで複数のインデックス値を算出し、センサ1、3及び7の組み合わせで複数のインデックス値を算出し、このインデックス値を集約して制御変数を算出する。
【0027】
一例を挙げれば、推論部20は、空気抵抗に関する情報からインデックス値を算出するためには、道路の材質、天気、風、傾斜の情報を使う。同様に、推論部20は、道路抵抗に関する情報からインデックス値を算出するためには、道路の材質、風、傾斜の情報を使う。また同様に、推論部20は、道路要素に関する情報からインデックス値を算出するためには、道路の材質の情報を使う。
【0028】
このように、推論部20は、センサ情報の組み合わせを変えながら予め定められた数、例えば300個のインデックス値を算出し、算出したインデックス値から制御変数を算出する。具体的には、算出部は、機械学習、より詳しくは深層学習(Deep Learning)を用いて、センサ情報から制御変数を算出することが可能なものであってよい。換言すると、インデックス値及び制御変数を算出する算出部は、AI(Artificial Intelligence)で構成することができる。
【0029】
推論部20は、機械学習、より詳しくは深層学習(Deep Learning)を用いて、情報取得部10で取得した複数の情報から車両の制御に関連するインデックス化された値を推論することが可能なものであってよい。換言すると、推論部20はAI(Artificial Intelligence;人工知能)で構成することができる。
【0030】
この推論部20は、情報取得部10において多くのセンサ群等で収集したナノ秒毎のデータやロングテールインシデントAI dataを、Level6の計算力を用い、下記式(1)に示すような積分法による多変量解析(例えば式(2)参照)を行うことで、正確な制御変数を求め得る。より詳しくは、推論部20は、Level6の計算力で各種Ultra High Resolutionのデルタ値の積分値を求めながら、エッジレベルで且つリアルタイムで各変数のインデックス化された値を求め、次のナノ秒に発生する結果を最も高い確率論値を取得し得る。これを実現するためには、例えば、空気抵抗、道路抵抗、道路要素(例えばゴミ)及び滑り係数等の各変数(例えば、情報取得部10によって取得された複数の情報)を特定可能な関数(換言すると、各変数の挙動を示す関数)のデルタ値(例えば、微小時間の変化値)を時間積分することにより得られる積分値を、推論部20の深層学習モデル(例えば、ニューラルネットワークに対して深層学習が行われることによって得られた学習済みモデル)に入力する。推論部20の深層学習モデルは、入力された積分値に対応する制御変数(例えば、最も高い確信度(すなわち、評価値)の制御変数)を出力する。制御変数の出力はナノ秒単位で行われる。
【数1】
【数2】
【0031】
なお、一例として、式(1)において、“f(A)”は、例えば、空気抵抗、道路抵抗、道路要素(例えばゴミ)及び滑り係数等の各変数の挙動を示す関数が簡略化されて表現された式である。また、一例として、式(1)は、“f(A)”の時刻aから時刻bまでの時間積分vを示す式である。式中のDLは深層学習(例えば、ニューラルネットワークに対して深層学習が行われることによって最適化された深層学習モデル)を示し、dAn/dtは、f(A,B,C,D,・・・,N)のデルタ値を示し、A,B,C,D,…,Nは、センサ情報から算出したインデックス値であり、例えば空気抵抗から算出したインデックス値、道路抵抗から算出したインデックス値、道路要素から算出したインデックス値及び滑り係数から算出したインデックス値等を示す。f(A,B,C,D,・・・,N)は、A,B,C,D,…,Nの挙動を示す関数を示し、Vnは、ニューラルネットワークに対して深層学習が行われることによって最適化された深層学習モデルから出力される値(すなわち、制御変数)を示す。
【0032】
なお、ここでは、関数のデルタ値を時間積分することにより得られる積分値を推論部20の深層学習モデルに入力する形態例を挙げているが、これは、あくまでも一例に過ぎない。例えば、空気抵抗、道路抵抗、道路要素及び滑り係数等の各変数の挙動を示す関数のデルタ値を時間積分することにより得られる積分値(例えば、次のナノ秒に発生する結果)が推論部20の深層学習モデルによって推論され、推論結果として、最も高い確信度(すなわち、評価値)の積分値がナノ秒毎に推論部20によって取得されるようにしてもよい。
【0033】
また、ここでは、深層学習モデルに積分値を入力したり、深層学習モデルから積分値を出力したりする形態例を挙げているが、これは、あくまでも一例に過ぎず、積分値を用いなくても本開示の技術は成立する。例えば、A,B,C,D,…,Nに相当する値を例題データとし、少なくとも1つの制御変数(例えば、次のナノ秒に発生する結果)に相当する値を正解データとした教師データを用いた深層学習がニューラルネットワークに対して行われることで最適化された深層学習モデルによって少なくとも1つの制御変数が推論されるようにしてもよい。
【0034】
推論部20にて得られた各制御変数は、Deep Learningの回数を増加させることによりさらに精緻化させ得る。例えば、タイヤや、モータの回転、ステアリング角度や、道路の材質、天気、ごみや二次曲線的減速時における影響、スリップ、バランス崩壊や再獲得のためのステアリングやスピードコントロールの仕方等の膨大なデータやロングテールインシデントAI dataを用いてより正確な制御変数を算出することができる。
【0035】
運転制御部30は、推論部20にて特定された複数の制御変数に基づいて車両の運転制御を実行するものであってよい。この運転制御部30は、車両の自動運転制御を実現することが可能なものであってよい。詳しくは、複数の制御変数から次のナノ秒に発生する結果を最も高い確率論値を取得し、当該確率論値を考慮した車両の運転制御を実施することができる。
【0036】
上述した構成を備える情報処理装置1によれば、Level5の計算力よりも極めて大きなLevel6の計算力を用いて情報の解析や推論を実施できるため、従前とは比較にならないレベルの精緻な解析が可能となる。これにより、安全な自動運転のための車両制御を可能にする。さらには、上記のAIによる多変量解析によりLevel5の世界と比べて1000倍の価値の差を生み出すことができる。
【0037】
図3は、本開示の第2の実施の形態に係る情報処理装置の一例を示したブロック図である。本実施の形態に係る情報処理装置1Aは、上述した第1の実施の形態に係る情報処理装置1に加えて、車両が目的地に到達するまでの走行戦略を設定する戦略設定部40を含む点で、情報処理装置1とは相違している。
【0038】
戦略設定部40は、車両の乗員等が入力した目的地の情報や、現在地と目的地の間の交通情報等に基づいて、現在地から目的地に到達するまでの走行戦略を設定するものであってよい。その際に、戦略設定を計算するその時点の情報、つまり情報取得部10が現在取得しているデータを加味して良い。目的地までの単なるルート計算だけでなく、その瞬間の周辺状況を加味することで、より現実に則した理論値を計算するためである。走行戦略は、目的地までの最適ルート(戦略ルート)、走行速度、tilt、ブレーキングの少なくとも1つの理論値を含んで構成されていてよい。好ましくは、走行戦略上述した最適ルート、走行速度、tilt、ブレーキングの全ての理論値で構成することができる。
【0039】
戦略設定部40で設定された走行戦略を構成する複数の理論値は、運転制御部30における自動運転制御に利用され得る。これに加えて、運転制御部30は、推論部20にて推論された複数の制御変数と戦略設定部40で設定された各理論値との差分に基づいて走行戦略を更新することが可能な戦略更新部31を含んでいると好ましい。
【0040】
推論部20にて推論される制御変数は、車両走行中に取得される情報、具体的には実際の走行時に検出される、例えば摩擦係数に基づいて推論されたものである。したがって、戦略更新部31においては、この制御変数を考慮することで、戦略ルート通行時における刻一刻と変わる変化へ対応することが可能となる。具体的には、戦略更新部31において、走行戦略に含まれる理論値と制御変数からその差分(デルタ値)を算出することで、再度最適解を導き出し、戦略ルートを再策定することができる。これにより、スリップをしないぎりぎりの自動運転制御をも実現できる。また、このような更新処理に際しても、上述Level6の計算力を用いることができるため、所定の周期の単位、例えば10億分の1秒単位で補正、微調整することが可能となり、より緻密な走行制御が実現できる。
【0041】
加えて、情報取得部10が上述した車両下部センサを有している場合には、この車両下部センサが地面の温度や材質なども検知するため、戦略ルート通行時における刻一刻と変わる変化へ対応することが可能となる。走行戦略に含まれる走行コースを計算する際、independent smart tiltを実施することもできる。更に、別の情報を検知(飛んでくるタイヤ、破片、動物など)した場合においても、戦略ルート通行時における刻一刻と変わる変化へ対応することで、瞬間瞬間に最適な走行コースを再計算し、最適コースマネジメントを実施することができる。
【0042】
また、本実施形態においては、Central Brain120は、車両の速度を制御する制御変数を算出し、当該制御変数に基づいて、所定の周期の単位、例えば10億分の1秒単位で車両の自動運転を制御する制御部として機能する。具体的には、Central Brain120は、y=ax
nの関係により車両の速度(加速・減速)を制御する。そして、フリクションのないパーフェクトなコーナリングを実現する。
図4は、y=ax
nの関係により車両の速度(加速・減速)を制御する様子を説明する図である。
【0043】
ここで、xは時間、yは速度、aは、比例定数であり、制御変数の一例である。また、nの値は例えば2であるが、他の値でもよい。すなわち、フリクションのないパーフェクトなコーナリングとは、美しい、滑らかなパーフェクトな加速のことをいう。このy=axnの関係となるように加速度を求めて加速開始時の自動運転を制御する。すなわち、加速度は時々刻々と変化し得るものである。そして、目標速度に近づくとy=1-axnのようなn次関数で減速する。1は目標速度を正規化したものである。
【0044】
また減速時には、減速開始時にy=1-axnで表すことができる加速のことである。1は減速時の速度を正規化したものである。このy=1-axnの関係となるように加速度を求めて減速開始時の自動運転を制御する。そして、目標速度に近づくとy=axnのようなn次関数で減速する。
【0045】
車両12の加速及び減速時に、上記のy=axn、y=1-axnの関係を満たすよう、車両12の駆動をコントロールするために用いられるのが、推論部20にて推論される制御変数である。
【0046】
比例定数は、所定の周期毎、例えば10億分の1秒毎に何段階にでも滑らかに変更可能である。Central Brain120は、走行時間(Driving Time)、電池の消耗(Battery Depletion)、咄嗟の危機回避といった状況(Avoid Accidents)、タイヤなどのマテリアルの状態(Material Condition)、風速等の変数(Wind Speed)などのセンサ情報から計算し、クラウドに蓄積されたデータを突き合わせて差分を微調整し、ゴールシークにより導き出された比例定数の数を正しく4つの車輪21にそれぞれ搭載されたインホイールモータと4つのスピン角度に伝達することで最適な加減速を行うパーフェクトスピードコントロール及びパーフェクトステアリングコントロールを実現する。これがオブジェクト指向のゴールシーク走行システムである。そして、かかる走行を実現することがLevel6の役割である。
【0047】
図5は、上述した情報処理装置(Central Brain)として機能するコンピュータ1200のハードウェア構成の一例を概略的に示す。コンピュータ1200にインストールされたプログラムは、コンピュータ1200を、上述した各実施の形態に係る装置の1又は複数の「部」として機能させ、又はコンピュータ1200に、各実施の形態に係る装置に関連付けられるオペレーション又は当該1又は複数の「部」を実行させることができ、及び/又はコンピュータ1200に、各実施の形態に係るプロセス又は当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ1200に、本明細書に記載のフローチャート及びブロック図のブロックのうちのいくつか又はすべてに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU1212によって実行されてよい。
【0048】
各実施の形態に係るコンピュータ1200は、CPU1212、RAM1214、及びグラフィックコントローラ1216を含んでいてよく、それらはホストコントローラ1210によって相互に接続されていてよい。コンピュータ1200はまた、通信インタフェース1222、記憶装置1224、DVDドライブ、及びICカードドライブのような入出力ユニットを含んでいてよく、それらは入出力コントローラ1220を介してホストコントローラ1210に接続されていてよい。DVDドライブは、DVD-ROMドライブ及びDVD-RAMドライブ等であってよい。記憶装置1224は、ハードディスクドライブ及びソリッドステートドライブ等であってよい。コンピュータ1200はまた、ROM1230及びキーボードのようなレガシの入出力ユニットを含んでいてよく、それらは入出力チップ1240を介して入出力コントローラ1220に接続されていてよい。
【0049】
CPU1212は、ROM1230及びRAM1214内に格納されたプログラムに従い動作することにより各ユニットを制御し得る。グラフィックコントローラ1216は、RAM1214内に提供されるフレームバッファ等又はそれ自体の中に、CPU1212によって生成されるイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス1218上に表示されるようにすることができる。
【0050】
通信インタフェース1222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信することができる。記憶装置1224は、コンピュータ1200内のCPU1212によって使用されるプログラム及びデータを格納することができる。DVDドライブは、プログラム又はデータをDVD-ROM等から読み取り、記憶装置1224に提供することができる。ICカードドライブは、プログラム及びデータをICカードから読み取り、及び/又はプログラム及びデータをICカードに書き込むことができる。
【0051】
ROM1230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ1200によって実行されるブートプログラム等、及び/又はコンピュータ1200のハードウェアに依存するプログラムを格納することができる。入出力チップ1240はまた、様々な入出力ユニットをUSBポート、パラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入出力コントローラ1220に接続してよい。
【0052】
プログラムは、DVD-ROM又はICカードのようなコンピュータ可読記憶媒体によって提供され得る。このプログラムは、コンピュータ可読記憶媒体から読み取られ、コンピュータ可読記憶媒体の例でもある記憶装置1224、RAM1214、又はROM1230にインストールされ、CPU1212によって実行され得る。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらすことができる。装置又は方法が、コンピュータ1200の使用に従い情報のオペレーション又は処理を実現することによって構成されてよい。
【0053】
例えば、通信がコンピュータ1200及び外部デバイス間で実行される場合、CPU1212は、RAM1214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース1222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース1222は、CPU1212の制御の下、RAM1214、記憶装置1224、DVD-ROM、又はICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、又はネットワークから受信した受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ領域等に書き込むことができる。
【0054】
また、CPU1212は、記憶装置1224、DVDドライブ(DVD-ROM)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイル又はデータベースの全部又は必要な部分がRAM1214に読み取られるようにし、RAM1214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックしてよい。
【0055】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU1212は、RAM1214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプのオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1214に対しライトバックし得る。また、CPU1212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU1212は、当該複数のエントリの中から、第1の属性の属性値が指定されている条件に一致するエントリを検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0056】
上で説明したプログラム又はソフトウエアモジュールは、コンピュータ1200上又はコンピュータ1200近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバシステム内に提供されるハードディスク又はRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ1200に提供するものとすることができる。
【0057】
本実施の形態におけるフローチャート及びブロック図におけるブロックは、オペレーションが実行されるプロセスの段階又はオペレーションを実行する役割を持つ装置の「部」を表わしてよい。特定の段階及び「部」が、専用回路、コンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、及び/又はコンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタル及び/又はアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)及び/又はディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、及びプログラマブルロジックアレイ(PLA)等のような、論理積、論理和、排他的論理和、否定論理積、否定論理和、及び他の論理演算、フリップフロップ、レジスタ、並びにメモリエレメントを含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0058】
コンピュータ可読記憶媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読記憶媒体は、フローチャート又はブロック図で指定されたオペレーションを実行す
るための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読記憶媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0059】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、又はSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語又は同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコード又はオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0060】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサ、又はプログラマブル回路が、フローチャート又はブロック図で指定されたオペレーションを実行するための手段を生成するために当該コンピュータ可読命令を実行すべく、ローカルに又はローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサ、又はプログラマブル回路に提供されてよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0061】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0062】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0063】
10 情報取得部
20 推論部
30 車両制御部
1200 コンピュータ
1210 ホストコントローラ
1212 CPU
1214 RAM
1216 グラフィックコントローラ
1218 ディスプレイデバイス
1220 入出力コントローラ
1222 通信インタフェース
1224 記憶装置
1230 ROM
1240 入出力チップ