(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062346
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】精密ノズルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 5/00 20060101AFI20240430BHJP
C22C 1/051 20230101ALI20240430BHJP
B23P 15/16 20060101ALI20240430BHJP
B23P 23/04 20060101ALI20240430BHJP
B23H 9/00 20060101ALI20240430BHJP
C22C 29/08 20060101ALN20240430BHJP
【FI】
B22F5/00 Z
C22C1/051 G
B23P15/16
B23P23/04
B23H9/00 Z
C22C29/08
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067550
(22)【出願日】2023-04-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2022169800
(32)【優先日】2022-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和4年11月8日 JIMTOF2022(第31回日本国際工作機械見本市)に発表
(71)【出願人】
【識別番号】000142023
【氏名又は名称】株式会社共立合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】池田 伸也
(72)【発明者】
【氏名】福市 安春
【テーマコード(参考)】
3C059
4K018
【Fターム(参考)】
3C059AA01
3C059AB01
3C059HA01
3C059HA11
4K018AD06
4K018BA04
4K018BA13
4K018BA20
4K018FA06
4K018HA04
4K018KA32
(57)【要約】
【課題】超硬合金で効率良く精密ノズルを製造する。
【解決手段】貫通孔を形成するための転写型を用いて原料粉末を圧縮成形し、注入口に相当する開口部を有し、かつ貫通していない穴部を有する成形体を得る圧粉成形工程、前記成形体を焼結し、注入口に相当する開口部を有し、かつ貫通していない穴部を有する焼結体を得る焼結工程、電極を用いて前記焼結体の穴部を放電加工する放電加工工程、放電加工した焼結体を、注入口となる開口部の反対側から研削し、吐出口を開口する研削工程を経て、精密ノズルを製造する。得られた精密ノズル1は、超硬合金で形成され、注入口2から吐出口4まで貫通する貫通孔3を有し、かつ前記貫通孔3が、前記吐出口4を起点として前記注入口2に向かって内径が増大する方向に延びるテーパ状孔部3bを少なくとも含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超硬合金で形成され、注入口から吐出口まで貫通する貫通孔を有し、かつ前記貫通孔が、前記吐出口を起点として前記注入口に向かって内径が増大する方向に延びるテーパ状孔部を少なくとも含む精密ノズルの製造方法であって、
前記貫通孔を形成するための転写型を用いて、原料粉末を圧縮成形し、前記注入口に対応する開口部を有し、かつ貫通していない穴部を有する成形体を得る圧粉成形工程、
前記成形体を焼結することにより、前記成形体に対応する焼結体を得る焼結工程、
前記焼結体の穴部に電極を挿入して放電加工する放電加工工程、
放電加工した焼結体を、注入口となる開口部の反対側から研削し、吐出口を開口する研削工程を含む、精密ノズルの製造方法。
【請求項2】
前記貫通孔の断面形状が円形状、楕円形状または多角形状である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記貫通孔の断面形状が円形状である請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
前記圧粉成形工程において、前記転写型の形状が、前記貫通孔の形状に対応し、かつ前記テーパ状孔部に対応するテーパ部の形状が円錐状、楕円錐状または多角錐状である請求項1または2記載の製造方法。
【請求項5】
前記テーパ状孔部に対応するテーパ部の形状が円錐状である請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
前記テーパ状孔部に対応する前記転写型の円錐状部の先端径が5μm以下である請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
前記放電加工工程において、前記電極の形状が、前記転写型の形状に対応している請求項1または2記載の製造方法。
【請求項8】
前記テーパ状孔部に対応する前記電極の形状が円錐状であり、かつ前記テーパ状孔部に対応する前記電極の円錐状部の先端径が5μm以下である請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記研削工程において、カメラを用いて研削面を撮像した画像に基づいて、吐出口となる孔の発生の有無およびその口径を確認する請求項1または2記載の製造方法。
【請求項10】
前記貫通孔が、前記テーパ状孔部と、前記テーパ状孔部から前記注入口まで延びる円筒状孔部とからなる請求項1または2記載の製造方法。
【請求項11】
前記吐出口の口径が30μm未満である請求項1または2記載の製造方法。
【請求項12】
前記精密ノズルが電子部品用ノズルである請求項1または2記載の製造方法。
【請求項13】
前記精密ノズルが、半田ボールを溶融して吐出するためのリフローノズルである請求項1または2記載の製造方法。
【請求項14】
超硬合金で形成され、
注入口から吐出口まで貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔が、前記吐出口から前記注入口に向かって内径が増大する方向に延びるテーパ状孔部を含み、
前記吐出口の口径が45μm未満であり、かつ
前記テーパ状孔部のノズル軸心方向の長さが1mm以上である、精密ノズル。
【請求項15】
前記テーパ状孔部のノズル軸心方向の長さが、前記吐出口の口径に対して10倍以上である請求項14記載の精密ノズル。
【請求項16】
前記吐出口の形状が円形状であり、かつ前記吐出口の真円度が5μm以下である請求項14または15記載の精密ノズル。
【請求項17】
前記吐出口における精密ノズルの外形状が等方形状であり、前記吐出口の形状が円形状であり、かつ前記外形状と前記吐出口との同心度が10μm以下である請求項14または15記載の精密ノズル。
【請求項18】
前記テーパ状孔部の傾斜角が3~60°である請求項14または15記載の精密ノズル。
【請求項19】
前記吐出口の口径が30μm未満である請求項14または15記載の精密ノズル。
【請求項20】
前記吐出口の口径が1μm以上30μm未満であり、
前記テーパ状孔部のノズル軸心方向の長さが1~20mmであり、
前記テーパ状孔部のノズル軸心方向の長さが、前記吐出口の口径に対して100倍以上であり、
前記吐出口の形状が円形状であり、かつ前記吐出口の真円度が5μm以下であり、
前記吐出口における精密ノズルの外形状が円形状であり、かつ前記外形状と前記吐出口との同心度が10μm以下であり、かつ
前記テーパ状孔部の傾斜角が4~50°である請求項14または15記載の精密ノズル。
【請求項21】
前記超硬合金が炭化タングステンを含む合金である請求項14または15記載の精密ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の分野などで利用される微小孔径の精密ノズルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の技術革新による電子機器の小型化に伴って、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータ(PC)、ゲーム機器、マザーボード、デジタルカメラなどに搭載される電子部品の分野では、半導体デバイスにおいて、半導体素子や集積回路の微細化や高密度化が進行している。このような半導体デバイスの製造過程において、微小部品の組み立てや基板上での実装などに利用されるノズルとして、リフローノズル、吸着ノズル、ソルダージェッティングノズルなどが知られており、いずれのノズルも微小な吐出孔または吸着孔を有する精密ノズルである。例えば、リフローノズルとしては、直径40μm程度の半田ボール(半田球)にレーザーを照射して溶融することにより、基板上に溶融した半田(半田クリーム)を供給するノズルも利用されている。そのため、このようなリフローノズルでは、半田ボールを吐出口に一時的に滞留させるために、吐出口の孔径も半田ボールの直径と同程度の微小孔径に調整する必要がある。さらに、リフローノズルなどの精密ノズルでは、正確に位置決めする必要があるため、流路形状にも精密さが要求される。そのため、リフローノズルなどの精密ノズルでは、高度な精密加工が必要となる。特に、リフローノズルでは耐久性も要求されるため、超硬合金で製造されているが、超硬合金は硬質であり、加工が困難であるため、精密加工の加工効率が低い。そのため、従来の技術では、リフローノズルなどの精密ノズルを効率良く製造するのは困難であった。
【0003】
特開2022-85914号公報(特許文献1)には、電子部品の実装に必要となる接着剤を吐出する電子部品接着用ノズルとして、超硬合金で形成され、かつ直径50μm以下の吐出口を有する吐出用貫通孔が形成された先端部と、この先端部に接着剤を供給するための内部空間を有する本体部とからなるノズルが開示されている。
【0004】
特開2022-89371号公報(特許文献2)には、電子部品の実装に必要となる接着剤を吐出する電子部品接着用ノズルとして、超硬合金で形成され、かつ直径50μm以下の吐出口を有する吐出用貫通孔と、この吐出用貫通孔に接着剤を供給するための内部空間とからなる本体部を備えたノズルが開示されている。
【0005】
特許文献1および2には、接着剤を微細な量および吐出径で吐出され易くするために、吐出用貫通孔の吐出口の直径が注入口の直径よりも小さいノズルが記載されており、図面には、注入口から下流方向に向かって次第に内径が小さくなる流路と、この流路から吐出口に向かって同一の内径を有する流路(ストレート流路)との2段階の流路形状を有するノズルが記載されている。また、特許文献1および2には、吐出口の直径について、高密度実装に適した接着剤の吐出が可能である点などから、30μm以下が好適であると記載されている。
【0006】
また、特許文献1および2には、吐出用貫通孔には内径、吐出軸の高い精度が求められるため、吐出用貫通孔の形成方法としては、所定位置を穿孔して形成する方法、張り合わせで形成する方法、型加工で形成する方法が利用できることが記載されている。
【0007】
さらに、特許文献1および2には、本体部や先端部を金属粉体の焼結体で形成する場合は、高い精度で吐出用貫通孔を形成する方法として、焼結体とする際に、吐出用貫通孔を設ける方法、焼結体となった後で、穿孔などにより吐出用貫通孔を形成する方法が記載されている。
【0008】
一方、特開2022-22419号公報(特許文献3)には、穿孔する穴径より大きい径の放電電極を用い、放電電極をプラス、工作物をマイナスとし、穿孔する穴径より大きい径の放電電極を回転させながら送り速度30~200μm/sで送り、放電電極が消耗しながら工作物に穴を形成することを特徴とする放電加工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2022-85914号公報
【特許文献2】特開2022-89371号公報
【特許文献3】特開2022-22419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1および2に記載されているノズルの製造方法では、超硬合金で精密ノズルを効率良く製造することは困難である。特に、超硬合金で吐出口の口径が45μm未満(特に30μm未満)である精密ノズルでは、製造すること自体が極めて困難であるが、特許文献1および2には、具体的な製造方法は記載されておらず、実際に製造されたノズルの吐出口の口径についても記載されていない。
【0011】
なお、特許文献2のノズルでは、接着剤を噴射するためか、吐出口に連なる流路はストレート状に形成されているが、用途によってはテーパ状が要求される場合もある。例えば、半田ボールを利用するリフローノズルでは、半田クリームを円滑に吐出するために、吐出口に連なる流路はテーパ状に形成されることも要求される。
【0012】
また、特許文献2では、微細な直径の吐出用貫通孔を形成するために機械加工で穿孔すると実現容易となることが記載されている。穴をあける場合の機械加工として一般的な加工方法はドリル加工であるが、超硬合金の加工では材料硬度が高く、一般的な工具では加工が困難であるため、放電加工を選択されることが大半である。比較的新しい加工方法として超硬合金のような高硬度材に特化した専用工具とその工具を高速回転させることができる特殊な加工機を用いた加工方法で微細な穴を加工することができる。しかし、この方法で直径が40μm程度の微細な穴を加工する場合、用いられるドリルが刃の強度を保持するためには、刃長を短くせざるを得ない。微細な直径を有するドリル刃の刃長が長くなると、製造時または使用時にドリルの刃が折れるためである。市販品の中で超硬合金に対して前記のような特殊な微細加工が可能なドリルとしては、ファインセラミック用極小径ドリル(オーエスジー(株)製「UVM-CERA(特殊品)」)が挙げられる。しかし、この極小径ドリルでは、ドリル刃の直径に応じてドリル刃の長さが選択されており、ドリル刃の直径が40μmの場合、ドリル刃の長さは0.4mmである。直径40μm程度の微細径で長さが0.4mmを超える細長形状では、ドリル刃としての強度を保持できないためである。従って、特許文献2に記載されている機械加工では、0.5mmを超えるような厚みを有する超硬合金に対して孔径40μm程度の微細な貫通孔を形成することはできない。
【0013】
さらに、特許文献3の放電加工方法では、放電電極の制御が煩雑であり、生産性が低い上に、製造過程で電極の形状が変化するため、精密ノズルの製造には向いていない。さらに、この方法でも、吐出口の口径が45μm未満である精密ノズルは製造できなかった。
【0014】
従って、本発明の目的は、超硬合金で効率良く精密ノズルを製造することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、生産性が高く、吐出口の口径が45μm未満であり、かつ薄肉でないテーパ状孔部を有する新規な超硬合金製精密ノズルおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、吐出口を起点として注入口に向かって内径が増大する方向に延びるテーパ状孔路を含む超硬合金製精密ノズルの製造方法において、前記貫通孔を形成するための転写型を用いて、原料粉末を圧縮成形し、前記注入口に相当する開口部を有し、かつ貫通していない穴部を有する成形体を得る圧粉成形工程、得られた成形体を焼結し、前記注入口に相当する開口部を有し、かつ貫通していない穴部を有する焼結体を得る焼結工程、前記焼結体の穴部に電極を挿入して放電加工する放電加工工程、放電加工した焼結体を、注入口となる開口部の反対側から研削し、吐出口を開口する研削工程を経ることにより、超硬合金で効率良く精密ノズルを製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
すなわち、本発明の態様[1]としての精密ノズルの製造方法は、
超硬合金で形成され、注入口から吐出口まで貫通する貫通孔を有し、かつ前記貫通孔が、前記吐出口を起点として前記注入口に向かって内径が増大する方向に延びるテーパ状孔部を少なくとも含む精密ノズルの製造方法であって、
前記貫通孔を形成するための転写型を用いて、原料粉末を圧縮成形し、前記注入口に対応する開口部を有し、かつ貫通していない穴部を有する成形体を得る圧粉成形工程、
前記成形体を焼結し、前記成形体に対応する焼結体を得る焼結工程、
前記焼結体の穴部に電極を挿入して放電加工する放電加工工程、
放電加工した焼結体を、注入口となる開口部の反対側から研削し、吐出口を開口する研削工程を含む。
【0018】
本発明の態様[2]は、前記態様[1]において、前記貫通孔の断面形状が円形状、楕円形状または多角形状である態様である。
【0019】
本発明の態様[3]は、前記態様[2]において、前記貫通孔の断面形状が円形状である態様である。
【0020】
本発明の態様[4]は、前記態様[1]~[3]のいずれかの圧粉成形工程において、前記転写型の形状が、前記貫通孔の形状に対応し、かつ前記テーパ状孔部に対応するテーパ部の形状が円錐状、楕円錐状または多角錐状である態様である。
【0021】
本発明の態様[5]は、前記態様[4]において、前記テーパ状孔部に対応するテーパ部の形状が円錐状である態様である。
【0022】
本発明の態様[6]は、前記態様[5]において、前記テーパ状孔部に対応する前記転写型の円錐状部の先端径が5μm以下である態様である。
【0023】
本発明の態様[7]は、前記態様[1]~[6]のいずれかの態様の放電加工工程において、前記電極の形状が、前記転写型の形状に対応している態様である。
【0024】
本発明の態様[8]は、前記態様[7]において、前記テーパ状孔部に対応する前記電極の形状が円錐状であり、かつ前記テーパ状孔部に対応する前記電極の円錐状部の先端径が5μm以下である態様である。
【0025】
本発明の態様[9]は、前記態様[1]~[8]のいずれかの態様の研削工程において、カメラを用いて研削面を撮像した画像に基づいて、吐出口となる孔の発生の有無およびその口径を確認する態様である。
【0026】
本発明の態様[10]は、前記態様[1]~[9]のいずれかの態様において、前記貫通孔が、前記テーパ状孔部と、前記テーパ状孔部から前記注入口まで延びる円筒状孔部とからなる態様である。
【0027】
本発明の態様[11]は、前記態様[1]~[10]のいずれかの態様において、前記吐出口の口径が30μm未満である態様である。
【0028】
本発明の態様[12]は、前記態様[1]~[11]のいずれかの態様において、前記精密ノズルが電子部品用ノズルである態様である。
【0029】
本発明の態様[13]は、前記態様[1]~[12]のいずれかの態様において、前記精密ノズルが、半田ボールを溶融して吐出するためのリフローノズルである態様である。
【0030】
本発明には、態様[14]として、
超硬合金で形成され、
注入口から吐出口まで貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔が、前記吐出口から前記注入口に向かって内径が増大する方向に延びるテーパ状孔部を含み、
前記吐出口の口径が45μm未満であり、かつ
前記テーパ状孔部のノズル軸心方向の長さが1mm以上である、精密ノズルも含まれる。
【0031】
本発明の態様[15]は、前記態様[14]において、前記テーパ状孔部のノズル軸心方向の長さが、前記吐出口の口径に対して10倍以上である態様である。
【0032】
本発明の態様[16]は、前記態様[14]または[15]において、前記吐出口の形状が円形状であり、かつ前記吐出口の真円度が5μm以下である態様である。
【0033】
本発明の態様[17]は、前記態様[14]~[16]のいずれかの態様において、前記吐出口における精密ノズルの外形状が等方形状であり、前記吐出口の形状が円形状であり、かつ前記外形状と前記吐出口との同心度が10μm以下である態様である。
【0034】
本発明の態様[18]は、前記態様[14]~[17]のいずれかの態様において、前記テーパ状孔部の傾斜角が3~60°である態様である。
【0035】
本発明の態様[19]は、前記態様[14]~[18]のいずれかの態様において、前記吐出口の口径が30μm未満である態様である。
【0036】
本発明の態様[20]は、前記態様[14]~[19]のいずれかの態様において、
前記吐出口の口径が1μm以上30μm未満であり、
前記テーパ状孔部のノズル軸心方向の長さが1~20mmであり、
前記テーパ状孔部のノズル軸心方向の長さが、前記吐出口の口径に対して100倍以上であり、
前記吐出口の形状が円形状であり、かつ前記吐出口の真円度が5μm以下であり、
前記吐出口における精密ノズルの外形状が円形状であり、かつ前記外形状と前記吐出口との同心度が10μm以下であり、かつ
前記テーパ状孔部の傾斜角が4~50°である態様である。
【0037】
本発明の態様[21]は、前記態様[14]~[20]のいずれかの態様において、前記超硬合金が炭化タングステンを含む合金である態様である。
【発明の効果】
【0038】
本発明では、特定の転写型を用いた圧粉成形工程と、焼結工程と、特定の電極を用いた型彫り放電加工工程と、特定形状に放電加工した焼結体を研削する研削工程とを組み合わせた製造方法によって、超硬合金で効率良く精密ノズルを製造できる。特に、吐出口の口径が45μm未満であり、かつ薄肉でないテーパ状孔部を有する新規な超硬合金製精密ノズルを簡便に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、本発明の精密ノズルの一例を示す概略透視斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の精密ノズルの他の例を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の精密ノズルのさらに他の例を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の精密ノズルの別の例を示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、
図4の精密ノズルにおける吐出口の口径およびテーパ状孔部の深さを説明するための図である。
【
図7】
図7は、
図5の精密ノズルにおける吐出口の口径およびテーパ状孔部の深さを説明するための図である。
【
図8】
図8は、本発明の精密ノズルの製造方法における圧粉成形工程および放電加工工程を説明するための概略工程図である。
【
図9】
図9は、本発明の精密ノズルの製造方法における焼結工程および放電加工工程を説明するための概略工程図である。
【
図10】
図10は、本発明の精密ノズルの製造方法における研削工程を説明するための概略工程図である。
【
図11】
図11は、実施例で用いた転写型(プレスピン)の先端部の顕微鏡写真である。
【
図12】
図12は、実施例で用いた電極の先端部の顕微鏡写真である。
【
図13】
図13は、実施例1において貫通孔の吐出口が開口した直後に得られた精密ノズルの先端部の顕微鏡写真である。
【
図14】
図14は、実施例1で得られた精密ノズルの先端部の断面の顕微鏡写真である。
【
図15】
図15は、実施例2において貫通孔の吐出口が開口した精密ノズルの先端部の顕微鏡写真である。
【
図16】
図16は、実施例3において貫通孔の吐出口が開口した精密ノズルの先端部の顕微鏡写真である。
【
図17】
図17は、実施例4において貫通孔の吐出口が開口した精密ノズルの先端部の顕微鏡写真である。
【
図18】
図18は、実施例5において貫通孔の吐出口が開口した精密ノズルの先端部の顕微鏡写真である。
【
図19】
図19は、実施例6において貫通孔の吐出口が開口した精密ノズルの先端部の顕微鏡写真である。
【
図20】
図20は、実施例8において貫通孔の吐出口が開口した精密ノズルの先端部の顕微鏡写真である。
【
図21】
図21は、実施例9において貫通孔の吐出口が開口した精密ノズルの先端部の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[精密ノズルの材質]
本発明の精密ノズルの材質である超硬合金は、特に限定されない。代表的な超硬合金としては、周期表4~6族金属炭化物を含む合金が挙げられ、なかでも、炭化タングステンWC(タングステンカーバイト)を含む合金(WC系合金)が汎用される。
【0041】
WC系合金は、主成分であるWCと、焼結により液相を形成し、結合相を形成する結合成分とで形成されていてもよい。
【0042】
結合成分としては、例えば、マンガンMn、鉄Fe、コバルトCo、ニッケルNiなど周期表8~10族金属などが挙げられる。これらの結合成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、コバルトCoおよび/またはニッケルNiが好ましく、コバルトCoが特に好ましい。
【0043】
結合成分(特に、Co)の割合は、炭化タングステン100質量部に対して30質量部以下であってもよく、好ましくは0.5~25質量部、さらに好ましくは1~20質量部である。
【0044】
WC系合金は、前記主成分以外の金属炭化物(他の金属炭化物)をさらに含んでいてもよい。他の金属炭化物としては、例えば、炭化チタンTiC、炭化ニオブNbC、炭化タンタルTaC、炭化クロムCr3C2などが挙げられる。これら他の金属炭化物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、TiC、TaC、Cr3C2が好ましい。
【0045】
WC系合金は、前記結合成分以外の金属単体(他の金属単体)をさらに含んでいてもよい。他の金属単体としては、例えば、チタンTi、ジルコニウムZr、バナジウムV、ニオブNb、タンタルTa、クロムCr、モリブデンMo、タングステンW、レニウムReなどが挙げられる。これら他の金属単体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、Vおよび/またはCrが好ましい。
【0046】
他の金属単体の割合は、WC系合金全体100質量部に対して5質量部以下であってもよく、好ましくは0.1~3質量部、さらに好ましくは0.2~2質量部である。
【0047】
WC系合金は、炭素源C(カーボンブラックなど)をさらに含んでいてもよく、不可避的に混入する成分を含んでいてもよい。
【0048】
WC系合金としては、例えば、WC-Co系合金、WC-TiC-Co系合金、WC-TaC-Co系合金、WC-TiC-TaC-Co系合金、WC-Ni系合金、WC-Ni-Cr系合金などが挙げられる。これらのうち、WC-Co系合金が汎用される。
【0049】
[精密ノズルの形状]
本発明の精密ノズルの形状は、注入口から吐出口まで貫通する貫通孔を有するとともに、前記貫通孔が、前記吐出口を起点として前記注入口に向かって内径が増大する方向に延びるテーパ状孔部を少なくとも含む形状であれば、特に限定されない。本発明のノズルの詳細な形状について、以下に図面を用いて説明する。
【0050】
図1は、本発明の精密ノズルの一例の概略透視斜視図であり、
図2のI-I線概略断面図である。
【0051】
この精密ノズル1は、被吐出体を注入するための円形状の注入口2から、被吐出体を吐出するための円形状の吐出口4まで貫通する断面円形状の貫通孔3を有しており、この貫通孔3は、気体、液体や固体などの被吐出体を通過するための通路(または流路)として機能する。前記貫通孔3は、前記吐出口4を起点として前記注入口2に向かって内径が増大する方向に延びるテーパ状孔部3bと、このテーパ状孔部3bの上流端から前記注入口2まで略同じ内径で延びる円筒状孔部3aとを備えている。さらに、テーパ状孔部3bに対応する外周は、吐出口4に向かって先細状に形成されている。具体的には、テーパ状孔部3bの傾斜角θ(ノズル軸心と傾斜壁との角度)は、ノズル軸心に対して10°である。
【0052】
図1に示す精密ノズル1では、前記テーパ状孔部3bの先端で開口している吐出口4の口径(直径)φは20μm程度である。従来の精密ノズルでは、吐出口の口径φは最小でも薄肉のノズルにおいて40μm程度であるが、特許文献2に記載されているような従来の製造方法では、吐出口の口径(または孔径)が30μm未満である精密ノズルの製造方法が困難であったためである。なお、特許文献2には、従来の製造方法の詳細について記載されていないが、微細な吐出口を形成するために高い精度が要求される場合、従来の技術では、通常、ノズル内部に対応する穴部を形成した焼結体に対して、吐出口側からノズル内部に向けて(注入口の反対側から)放電加工することにより、微細な吐出口を形成する方法が考えられる。放電加工で微細な吐出口を形成するためには、加工の入り口では、電極の形状に対応した形状を形成し易いが、加工が進むにつれて、均一な形状を維持するのが困難であるためである。特に、微細な吐出口を形成するためには、髪の毛のように、細くて曲がりやすい電極を用いる必要があるため、尚更である。そのため、このような従来の方法で加工した貫通孔は、特許文献2の図面に記載されている形状を有する貫通孔、すなわち吐出口を起点として注入口に向かって延びる円筒状孔部を有する貫通孔となる。さらに、曲がり易い微細な電極を用いると、注入口側との位置合わせも極めて困難であり、高精度のノズルを製造することが困難である。
【0053】
すなわち、貫通孔を形成するために最終的に吐出口側から加工する方法では、
図1のような吐出口から注入口に向かって内径が増大する方向に延びる形状を有するテーパ状孔部を有する精密ノズルは製造できない。そのため、特許文献2のような従来の方法で得られる精密ノズルにおいても、吐出口の口径が40μm程度の微細な吐出口が形成されているものの、吐出口から延びる孔部の形状は、吐出口から注入口に向かって内径が増大する方向に延びる形状ではなかった。特に、薄肉でないテーパ状孔部を有する精密ノズルでは、微細な吐出口を形成するのが困難であり、例えば45μm未満の微細な口径の吐出口を有し、かつ吐出口から注入口に向かって内径が増大する方向に延びる形状を有するテーパ状孔部を有する精密ノズルは、従来の製造方法では製造できない。
【0054】
図3は、本発明の精密ノズルの他の例である精密ノズルの概略断面図である。この精密ノズル11も、円形状の注入口12から円形状の吐出口14まで貫通する貫通孔13を有しているが、貫通孔13の形状が、
図1および2の貫通孔3の形状と異なっている。すなわち、この精密ノズル11では、前記貫通孔13が、前記吐出口14から前記注入口12まで内径が増大する方向に連続して延びるテーパ状孔部のみで形成されている。
【0055】
図4は、本発明の精密ノズルの他の例である精密ノズルの概略断面図である。この精密ノズル21は、円形状の注入口22から円形状の吐出口24まで貫通する貫通孔23の形状は
図1の精密ノズルと同一であり、ノズル21の外周形状が円筒形状である点で異なる例である。
図1の精密ノズルは、通常、
図4の精密ノズルを研削加工する方法によって成形される。
【0056】
図5は、本発明の精密ノズルの別の例である精密ノズルの概略断面図である。この精密ノズル31は、円形状の注入口32から円形状の吐出口34まで貫通する貫通孔33を有しており、この貫通孔33は、前記吐出口34を起点として前記注入口32に向かって内径が増大する方向に延びる第1のテーパ状孔部33bと、この第1のテーパ状孔部33bの上流端から前記注入口32に向かって内径が増大する方向に延びる第2のテーパ状孔部33aとからなる。この例では、第2のテーパ状孔部33aの傾斜角は、第1のテーパ状孔部33bの傾斜角よりも大きく形成されている。
【0057】
貫通孔(特に、テーパ状孔部)の断面形状(長さ方向または軸心方向に垂直な断面形状)は、特に限定されず、例えば、円形状、楕円形状、多角形状などが挙げられる。これらの断面形状のうち、楕円形状、長方形状などの異方形状であってもよいが、円形状、正方形状、正六角形などの等方形状が好ましく、円形状が特に好ましい。吐出口の形状も同様である。
【0058】
吐出口の形状(孔形状)が円形状である場合、本発明の方法では、特定の圧粉成形工程と放電加工工程と研削工程とを組み合わせているため、吐出口の円形状を真円度の小さい円形状に形成できる。吐出口の真円度は5μm以下(例えば0.1~5μm程度)であってもよく、好ましくは4μm以下(例えば0.3~4μm)、さらに好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下、最も好ましくは0.5μm以下である。真円度が大きすぎると、精密ノズルの機能が低下する虞がある。
【0059】
吐出口の形状が円形状である場合、吐出口の真円度は、吐出口の口径に対して0.3倍以下、好ましくは0.2倍以下、さらに好ましくは0.1倍以下であってもよく、例えば0.001~0.3倍、好ましくは0.005~0.25倍、さらに好ましくは0.01~0.2倍、より好ましくは0.03~0.15倍、最も好ましくは0.05~0.1倍である。口径に対する真円度の比率が大きすぎると、精密ノズルの機能が低下する虞がある。
【0060】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、吐出口の真円度は、JIS B 0621-1984に準拠して測定でき、具体的には、光学式画像測定器(OGP社製「スマートスコープZIP-300」)を用いて測定できる。
【0061】
吐出口における精密ノズルの外形状が等方形状(特に、円形状)であり、かつ吐出口の形状が円形状である場合、前記外形状と前記吐出口との同心度は10μm以下、好ましくは8μm以下、さらに好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下であってもよく、例えば0.1~10μm、好ましくは0.3~8μm、さらに好ましくは0.5~7μm、より好ましくは1~6μm、最も好ましくは1.5~5μmである。同心度が大きすぎると、精密ノズルの機能が低下する虞がある。
【0062】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、前記同心度は、JIS B 0021-1998で定義され、具体的には、光学式画像測定器(OGP社製「スマートスコープZIP-300」)を用いて測定できる。また、本明細書および特許請求の範囲において、前記同心度は、前記外形状の円形状の中心と、吐出口の円形状の中心とのズレ(外周円の中心と内周円の中心間の距離)を意味する。
【0063】
本発明の精密ノズルは、吐出口の口径(テーパ状孔部の下流側の出口における孔径)φが45μm未満であってもよく、好ましくは40μm未満、さらに好ましくは35μm未満、より好ましくは30μm未満である。また、吐出口の口径φは1μm以上であってもよい。特に、精密ノズルにおいて、吐出口の口径は25μm以下(特に20μm以下)であってもよく、例えば1~25μm、好ましくは2~20μm、さらに好ましくは3~10μm、より好ましくは4~7μmである。
【0064】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、吐出口の口径φは、光学式画像測定器(OGP社製「スマートスコープZIP-300」)などを用いて測定できる。吐出口の口径は最大径を意味し、円形状では直径であり、多角形状や異方形状では、長径などを意味する。
図6および
図7には、
図4および
図5の精密ノズルにおける吐出口の口径φが示されている。
【0065】
テーパ状孔部のノズル軸心方向の長さ(テーパ状孔部の深さ)Lは1mm以上であってもよく、30mm以下であってもよい。すなわち、テーパ状孔部の深さは、1~30m程度の範囲から選択でき、例えば1~20mm、好ましくは2~10mm、さらに好ましくは2.5~8mm、より好ましくは3~5mm、最も好ましくは3.5~4.5mmである。テーパ状孔部の深さが短すぎると、微小な吐出口を製造するのが困難となる虞がある。
【0066】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、テーパ状孔部のノズル軸心方向の長さは、テーパ状孔部の上流側の開口部と吐出口の中心との最短距離を意味する。
図6および
図7には、
図4および
図5の精密ノズルにおけるテーパ状孔部の深さLが示されている。
【0067】
本発明の精密ノズルは、吐出口の口径に対してテーパ状孔部の長さが大きく、薄肉ではない精密ノズルであることを特徴とする。テーパ状孔部が薄肉でない精密ノズルを超硬合金で形成することは困難であり、特に、超硬合金で吐出口の口径が45μm未満のテーパ状孔部を従来の機械加工で製造することはできないが、本発明の製造方法で精密ノズルを製造すると、微細な吐出口を有するテーパ状孔部を形成することができる。
【0068】
本発明の精密ノズルにおいて、吐出口の口径φに対するテーパ状孔部の深さLは比較的大きく、テーパ状孔部は薄肉ではない。テーパ状孔部の深さLは、吐出口の口径φに対して10倍以上であってもよく、例えば30倍以上、好ましくは50倍以上、さらに好ましくは80倍以上、より好ましくは100倍以上、最も好ましくは200倍以上であり、例えば50~10000倍(特に100~1000倍)であってもよい。
【0069】
テーパ状孔部の傾斜角θ(ノズル軸心と傾斜壁との角度)は、ノズル軸心に対して、例えば3~60°、好ましくは4~50°、さらに好ましくは5~30°、より好ましくは7~20°、最も好ましくは8~15°である。傾斜角θが小さすぎると、半田ボールを利用したリフローノズルなどの精密ノズルとしての機能が低下する虞があり、逆に大きすぎると、微細な吐出口を形成するのが困難となる虞がある。
【0070】
テーパ状孔部の内壁は平滑性に優れている。テーパ状孔部の内壁面の算術平均粗さRaは、例えば5~1000μm、好ましくは10~800μm、さらに好ましくは30~500μm、より好ましくは50~300μm、最も好ましくは100~200μmである。
図6には、
図4の精密ノズルにおける内壁21bが示され、
図7には、
図5の精密ノズルにおける内壁31b,31cが示されている。
【0071】
本発明の精密ノズルの吐出口の先端面(下流側の先端面)も、後述するように、研削工程を経て得られるため、平滑性に優れている。吐出口の先端面(研削面)の算術平均粗さRaは、例えば1~100μm、好ましくは5~50μm、さらに好ましくは8~40μm、より好ましくは10~30μm、最も好ましくは15~25μmである。
図6には、
図4の精密ノズルにおける吐出口の先端面21aが示され、
図7には、
図5の精密ノズルにおける吐出口の先端面31aが示されている。
【0072】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、テーパ状孔部の内壁面および吐出口先端面の算術平均粗さRaは、JIS B 0601-2001に準拠した方法で測定でき、具体的には、輪郭・形状測定機((株)東京精密製「サーフコム2600G-13」)を用いて測定できる。
【0073】
本発明の精密ノズルの貫通孔の形状は、前記テーパ状孔部を含む形状であれば特に限定されず、前記テーパ状孔部の上流側の孔形状は限定されず、適宜用途や被吐出体の種類などに応じて選択できる。そのため、前記貫通孔の形状は、
図1または
図2に示す形状の他、例えば、前記テーパ状孔部と他のテーパ状孔部とを組み合わせた形状、前記テーパ状孔部と複数の他のテーパ状孔部とを組み合わせた形状、前記テーパ状孔部と非テーパ状孔部(特に、円筒状孔部)と他のテーパ状孔部とを組み合わせた形状などであってもよい。
【0074】
非テーパ状孔部は、テーパ状孔部に対応した形状であれば、特に限定されず、円筒状孔部の他、内部形状が楕円柱状や多角柱状である非テーパ状孔部などが挙げられる。
【0075】
テーパ状孔部と非テーパ状孔部(特に、円筒状孔部)とを組み合わせた形状の場合、非テーパ状孔部の流路(特に、円筒状流路)の内径は、例えば0.5~10mm、好ましくは0.8~5mm、さらに好ましくは1~3mm、より好ましくは1.2~2mmである。
【0076】
[圧粉成形工程]
本発明の精密ノズルの製造方法は、ノズルの貫通孔を形成するための転写型を用いて、原料粉末を圧縮成形し、前記注入口に相当する開口部を有し、かつ貫通していない穴部を有する成形体を得る圧粉成形工程を含む。
【0077】
(原料粉末)
原料粉末は、超硬合金の種類に応じて適宜選択でき、通常、超硬合金の構成成分が、それぞれ粒子の形態で使用される。WC系合金では、原料粉末として、結合成分粒子に加えて、必要に応じて他の金属炭化物粒子、他の金属粒子が使用される。
【0078】
WC粒子の平均粒子径は、例えば0.1~15μm、好ましくは0.12~12μm、さらに好ましくは0.2~10μmである。
【0079】
結合成分粒子(特に、Co粒子)の平均粒子径は、溶融して結合相を形成するため、特に限定されないが、例えば0.1~5μm、好ましくは0.5~3μm、さらに好ましくは1~2.5μmである。
【0080】
他の金属炭化物粒子および他の金属粒子の平均粒子径は、それぞれ、例えば0.1~5μm、好ましくは0.5~3μm、さらに好ましくは1~2.5μmである。
【0081】
これらのWC系合金の原料粉末の使用量は、前述の超硬合金中における構成成分の割合と同一である。
【0082】
圧粉成形(圧縮成形)においては、これらの原料粉末に加えて、バインダーを配合してもよい。バインダーとしては、予備焼結や焼結の過程で加熱によって除去可能なバインダーが好ましい。このようなバインダーとしては、例えば、パラフィン、ワックスまたはロウなどの直鎖状または分岐鎖状脂肪族炭化水素類、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。これらのバインダーは、粒子状の形態であってもよい。さらに、これらのバインダーは、エタノールなどのアルコール類および/またはベンジン類と共に配合してもよい。
【0083】
バインダーの割合は、原料粉末100質量部に対して20質量部以下であってもよく、好ましくは0.1~10質量部、さらに好ましくは0.2~7質量部である。
【0084】
(圧縮成形)
原料粉末の圧縮成形では、ノズルの貫通孔を形成するための転写型を用いることにより、前記注入口に相当する開口部を有し、かつ貫通していない穴部(いわゆる「下穴」に相当)を有する成形体(粉末成形体)を得ることができる。
【0085】
圧粉成形工程の一例について、
図8を用いて説明する。
図8に示されるように、圧粉成形工程では、まず、ダイ42と下パンチ43とで形成された円筒状などの筒状型内に、超硬合金を形成するための原料粉末41を充填する[
図8(a)]。次に、転写型であるプレスピン45を装着した上パンチ44を前記筒状型内に挿入して原料粉末41を加圧することにより、プレスピン45が原料粉末41の充填物の内部に侵入するため、原料粉末41の成形体(または粉末成形体)に前記プレスピン45の形状が転写される[
図8(b)]。最後に、原料粉末41の粉末成形体が前記筒状型から取り出され、前記穴部を有する粉末成形体46が得られる[
図8(c)]。
【0086】
転写型であるプレスピン45は、円柱の先端を円錐にした形状である。圧粉成形工程では、金型内に充填した原料粉末41に対して、前記形状を有するプレスピン45を、加圧しながら円錐の先端部から差し込むことにより、原料粉末41を押し固めることができるとともに、転写型であるプレスピン45の形状を前記穴部の形状として原料粉末41の粉末成形体に転写できる。このようにして形成された穴部は、目的のノズルの貫通孔とは異なり、粉末成形体を貫通しない穴部として形成することにより、後述する型彫り放電加工工程および研削工程と組み合わせた工程によって前記穴部底の先端で微小な吐出口を形成できる。
【0087】
転写型の形状は、前記注入口に対応する開口部を有し、かつ貫通していない穴部を有する粉末成形体を転写できる形状であれば、特に限定されない。粉末成形体に貫通していない穴部を形成することにより、後述する研削工程によって、開口部の反対側から研削して微小な吐出口を形成できるためである。特に、穴部の先端形状(底形状)を先細の微小形状とすることにより、微小な口径を有する吐出口を容易に形成できる。
【0088】
このような転写型の形状は、貫通孔の形状に対応していればよく、微小な吐出口を形成し易い点から、前記貫通孔の形状に対応し、かつ前記テーパ状孔部に対応するテーパ部の形状が円錐状であるのが好ましい。すなわち、転写型の形状において、前記貫通孔の形状に対応する形状のうち、前記テーパ状孔部に対応する部分の形状のみ、前記貫通孔の形状に略対応しているが、完全には対応していない形状(前記テーパ状孔部の形状において、吐出口から先端部が延出した形状である円錐状)であってもよい。転写型の円錐状部も、前述の精密ノズルのテーパ状孔部と同様のテーパ角に形成することにより、微小な吐出口を形成することが容易になる。また、粉末成形体は、後述する焼結工程で20~30%程度収縮するため、転写型の形状は、貫通孔の形状よりも収縮率に応じて若干大きい形状で形成してもよい。
【0089】
転写型の円錐状部は、精密ノズルの微小な吐出口を形成し易い点から、円錐状部の先端径を小さくするのが好ましい。前記先端径は、吐出口の目的の口径に応じて選択できるが、例えば10μm以下(例えば1~10μm)であってもよく、好ましくは7μm以下(例えば、2~7μm)、さらに好ましくは5μm以下(例えば3~5μm)である。先端径が大きすぎると、微小な吐出口径を有する精密ノズルを容易に製造するのが困難となる虞がある。
【0090】
圧縮成形の成形圧は、例えば50~300MPa、好ましくは100~250MPa、さらに好ましくは150~200MPaである。
【0091】
[焼結工程]
本発明の精密ノズルの製造方法は、前記圧粉成形工程で得られた粉末成形体を焼結し、前記注入口に対応する開口部を有し、かつ貫通していない穴部を有する焼結体を得る焼結工程をさらに含む。
【0092】
焼結工程では、結合成分粒子を溶融させて液相を形成することにより、前記粉末成形体を緻密化および一体化した焼結体を得ることができるが、必要に応じて、結合成分粒子を溶融する本焼結の前工程として、前記粉末成形体を本焼結よりも低温で加熱して予備焼結(仮焼結)してもよい。粉末成形体がバインダーを含む場合、予備焼結により、バインダーを除去してもよい。
【0093】
予備焼結の温度は、例えば100~1000℃、好ましくは300~900℃、さらに好ましくは500~800℃である。予備焼結の圧力は、常圧下または減圧下のいずれであってもよいが、減圧下が好ましい。予備焼結時間は、例えば2~48時間、好ましくは4~12時間、さらに好ましくは6~10時間である。
【0094】
本焼結の温度は、例えば1200~1600℃、好ましくは1250~1550℃、さらに好ましくは1300~1500℃である。本焼結の圧力は、常圧下または減圧下(または真空下)であってもよく、常圧下または加圧下であってもよい。本焼結時間は、例えば1~48時間、好ましくは2~24時間、さらに好ましくは3~20時間である。
【0095】
[放電加工工程]
本発明の精密ノズルの製造方法は、前記焼結体の穴部に電極を挿入して放電加工する放電加工工程(型彫り放電加工工程)をさらに含む。
【0096】
圧粉成形工程で得られた粉末成形体を焼結により緻密化した焼結体は、転写型と収縮比を利用することにより、目的の精密ノズルに近い状態(ニアネットシェイプ)まで仕上げられているが、本発明では精密な被吐出体の通路形状および微細な吐出口を要求される精密ノズルを製造するために、さらに型彫り放電加工によって目的の精密ノズルの貫通孔に近い形状に仕上げることにより、微小な吐出口を有する精密ノズルを製造できる。特に、本発明では、型彫り放電加工工程において、特定の電極を用いることにより、後述する研削工程を経て30μm未満の口径を有する吐出口を精度良く製造でき、従来の製造方法では製造できなかった20μm以下の口径を有する吐出口も製造できる。この時、転写型でニアネットシェイプしている効果として、型彫り放電加工の電極消耗が少なく、精密加工精度を向上したり、コストを抑えることができる。
【0097】
焼結工程から型彫り放電工程に至る一連の流れについて、
図9を用いて説明する。
図9に示されるように、圧粉成形工程で得られた粉末成形体46[
図9(a)]は、焼結工程において緻密および一体化され、ニアネットシェイプされた穴部47aを有する焼結体47として得られる[
図9(b)]。この穴部47aに対して、精密ノズルの貫通孔に対応する形状の電極48を用いて放電加工し、穴部47aの内壁を仕上げ加工することにより、電極48の形状を焼結体47の穴部47aに精密に転写する[
図9(c)]。
【0098】
電極48も、前記圧粉成形工程のプレスピン45に対応した形状であり、円柱の先端を円錐にした形状である。型彫り放電加工工程では、このような円錐形状を有する電極48を用いて、電極の形状を転写することにより、焼結体47の穴部47aを、目的の精密ノズルの貫通孔の形状に、より近付けるとともに、後述する研削工程で微小な吐出口を形成し易くなる。
【0099】
電極の形状は、容易に目的の貫通孔の形状を形成できる点から、前記貫通孔に対応する形状が好ましく、後述する研削工程で容易に微小な吐出口を開口できる点から、前記貫通孔の形状に対応し、かつ前記テーパ状孔部に対応するテーパ部の形状が円錐状である形状であるのが好ましい。すなわち、電極の形状において、前記貫通孔の形状に対応する形状のうち、前記テーパ状孔部に対応する部分の形状のみ、前記貫通孔の形状に略対応しているが、完全には対応していない形状(前記テーパ状孔部の形状において、吐出口から先端部が延出した形状である円錐状)であってもよい。そのため、電極の円錐状部のテーパ角は、前述の精密ノズルのテーパ状孔部のテーパ角と同一にするのが好ましい。
【0100】
電極の円錐状部は、精密ノズルの微小な吐出口を形成し易い点から、円錐状部の先端径を小さくするのが好ましい。前記先端径は、吐出口の目的の口径に応じて選択できるが、例えば10μm以下(例えば1~10μm)であってもよく、好ましくは7μm以下(例えば、2~7μm)、さらに好ましくは5μm以下(例えば3~5μm)である。先端径が大きすぎると、微小な吐出口径を有する精密ノズルを容易に製造するのが困難となる虞がある。
【0101】
電極の材質としては、タングステンWを含むのが好ましく、タングステン単体、タングステンと他の金属との合金(例えば、タングステンと銅との合金)がさらに好ましく、タングステン単体がより好ましい。
【0102】
放電加工において、電極と穴部との隙間(放電代)は、例えば10~30μm、好ましくは10~20μm、さらに好ましくは5~10μmである。
【0103】
放電加工の条件としては、例えば、生産性と精度維持を考慮すると、5~8本の電極を用いて加工することが好ましい。
【0104】
[研削工程]
本発明の精密ノズルの製造方法は、前記型彫り放電加工で放電加工した焼結体を、注入口となる開口部の反対側から研削し、吐出口を開口する研削工程を含む。前記型彫り放電工程で得られた焼結体の内部には、精密ノズルの貫通孔に対応した形状の穴部が形成されているが、穴部の底に相当する円錐の先端部は、焼結体を貫通していない。そこで、研削工程では、穴部としての円錐の先端部まで焼結体を研削して吐出口を開口させる。
【0105】
研削方法としては、慣用の研削方法を利用でき、例えば、円盤状砥石を備えた研削機(平面研削盤など)などを利用してもよい。
【0106】
前記研削工程において、吐出口となる孔の発生の有無および口径の確認方法は、特に限定されず、気体や液体を流通させることにより確認する方法、カメラを用いて画像で確認する方法などが挙げられる。これらのうち、簡便性などの点から、カメラを用いて画像で確認する方法が好ましい。
【0107】
カメラを用いて研削面を撮像した画像で確認する方法を採用した研削工程について
図10を用いて説明する。研削工程では、型彫り放電加工工程で得られた焼結体47については、円盤状砥石を備えた研削機49を用いて、円盤状砥石を回転させながら移動させて前記焼結体47の表面を研削することにより[
図10(a)]、注入口となる開口部の反対側(裏面)から前記表面を所定時間研削した後、カメラ50で研削面の画像を確認する[
図10(b)]。画像確認の結果、研削面に孔が確認できなかった場合には、孔が確認できるまで所定時間および/または所定距離の研削を繰り返す。そして、孔が確認できると、測定機で口径を測定し、目的の吐出口径に達していない場合には、目的の口径が確認できるまで所定時間および/または所定距離の研削を繰り返すことにより、目的の吐出口を有する精密ノズル51を製造できる。
【0108】
円盤状砥石を備えた研削機を用いた研削方法において、円盤状砥石の周速度は、例えば15~35m/s、好ましくは20~30m/s、さらに好ましくは24~28m/s程度である。また、円盤状砥石を回転するための回転軸の回転速度は、例えば1400~2600rpm、好ましくは1600~2400rpm、さらに好ましくは1800~2200rpmである。速度が小さすぎると、生産性が低下する虞があり、逆に大きすぎると、吐出口の口径の調整が困難となる虞がある。
【0109】
砥石としては、慣用の砥石を利用でき、例えば、ダイヤ・レジン(SDC)質系砥石、ダイヤ・レジン(SD)質系砥石などが挙げられる。砥粒(砥石の番手)の大きさは、例えば#170~#2000、好ましくは#200~#1800、さらに好ましくは#325~#1500である。粒度が小さすぎると、生産性が低下する虞があり、逆に大きすぎると、吐出口の口径の調整が困難となる虞がある。
【0110】
カメラとしては、CCDカメラやCMOSカメラ、レーザカメラ、熱画像カメラ、ステレオビジョンカメラなどのデジタルカメラを用いることができる。これらのうち、画像処理の精度が高い点などから、CCDカメラが好ましい。
【0111】
研削面での孔およびその口径を確認する方法としては、特に限定されず、モニターの画像を目視で観察する方法であってもよく、画像処理して読み取られたデータを情報分析装置(パーソナルコンピュータなど)で解析し、研削速度と関連付けて、所定の口径に制御してもよい。
【0112】
研削工程を経て得られた精密ノズルは、種々の流体、例えば加熱または非加熱流体を吐出するためのノズルであってもよい。さらに、加熱した流体は、加熱溶融した流体(例えば、注入口から半田ボールを注入し、レーザー照射などの加熱手段によって半田ボールを孔内で溶融した半田クリーム)などであってもよい。
【実施例0113】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0114】
実施例1
[プレスピンの作製]
光学式倣い研削盤を用いて、超硬合金をプロファイル研削(PG)加工することにより、先端に限りなくストレートランドが無いシャープエッジが形成されたピンを作製した。得られたプレスピン(転写型)の先端部の顕微鏡写真を
図11に示す。プレスピンの先端径は5μmであった。
【0115】
[電極の作製]
光学式倣い研削盤を用いて、タングステンW丸棒をPG加工することにより、先端に限りなくストレートランドが無いシャープエッジを成形されたピンを作製した。得られた電極の先端部およびその拡大部分の顕微鏡写真を
図12に示す。電極の先端径は4μmであった。
【0116】
[圧粉成形工程]
粉末状炭化タングステンWC(平均粒径2.5μm程度)92gと、粉末状コバルトCo 8gと、パラフィン0.8gとを混ぜて作製した混合末を、
図8に示すダイと下パンチとで形成された型内に必要量充填し、前記プレスピンを装着した上パンチを用いて150MPaで加圧し、粉末成形体を得た。
【0117】
[焼結工程]
得られた粉末成形体を、真空下、1400℃で5時間焼結し、焼結体を得た。
【0118】
[放電加工工程]
型彫り放電加工機((株)ソディック製AQ35L)および限りなくシャープエッジに成形された電極を用いて、荒加工・中仕上げ加工・仕上げ加工に分割して前記焼結体を複数回型彫り放電加工した。
【0119】
[研削工程]
円盤状砥石を備えた研削機(アマダマシナリー(株)製「TECSTAR 52」)を用いて、研削工程において、CCDカメラを用いて研削面を画像で確認しながら、放電加工した焼結体に対して加工を行った。画像確認の結果、研削面に孔が確認できなかった場合には、孔が確認できるまで研削および研削面の画像の確認を繰り返した。孔が貫通し最初に吐出口が観察できた精密ノズルの先端部の顕微鏡写真を
図13に示す。吐出口の口径はφ5μmであった。写真中央に確認できる微小な白色の円形状開口部が口径5μmの吐出口である。得られた精密ノズルのテーパ状孔部の深さLは4240μmであり、吐出口の口径φに対するテーパ状孔部の深さ(アスペクト比L/φ)は848であった。前記テーパ状孔部の傾斜角θは10°であった。
【0120】
さらに研削を繰り返すことにより、目的の吐出口を有する精密ノズルを製造した。得られた精密ノズルの先端部の断面の顕微鏡写真を
図14に示す。吐出口にむけてテーパ状になっており、吐出口の口径はφ20μmであった。テーパ状内壁面の算術平均粗さRaは128μmであり、先端面の算術平均粗さRaは20μmであった。
【0121】
実施例2
実施例1と同様にして放電加工した焼結体を製造し、研削工程において、研削面の画像を確認する時期および頻度を変更し、最終的に、吐出口の口径φが39.1μmである精密ノズルを製造した。各確認時期における口径およびテーパ状孔部の深さを測定し、アスペクト比を算出し、吐出口の真円度を測定した結果を表1に示す。なお、最初および最後に確認した研削面については、精密ノズル先端部の同心度(吐出口における精密ノズルの外形状と吐出口との同心度)も評価した。
【0122】
【0123】
表1の結果から明らかなように、実施例2では、アスペクト比の大きいテーパ状孔部を有する精密ノズルにおいて、吐出口の口径を微細で、かつ小さい真円度に形成することができた。2回目の確認で得られた精密ノズルの先端部の断面の顕微鏡写真を
図15に示す。写真中央に円形状の吐出口が形成されているのが確認できる。
【0124】
実施例3
実施例1と同様にして放電加工した焼結体を製造し、研削工程において、研削面の画像を確認する時期および頻度を変更し、最終的に、吐出口の口径φが39.5μmである精密ノズルを製造した。各確認時期における口径およびテーパ状孔部の深さを測定してアスペクト比を算出し、吐出口の真円度を測定した結果を表2に示す。
【0125】
【0126】
表2の結果から明らかなように、実施例3では、アスペクト比の大きいテーパ状孔部を有する精密ノズルにおいて、吐出口の口径を微細で、かつ小さい真円度に形成することができた。2回目の確認で得られた精密ノズルの先端部の断面の顕微鏡写真を
図16に示す。写真中央に円形状の吐出口が形成されているのが確認できる。
【0127】
実施例4
実施例1と同様にして放電加工した焼結体を製造し、研削工程において、研削面の画像を確認する時期および頻度を変更し、最終的に、吐出口の口径φが39.3μmである精密ノズルを製造した。各確認時期における口径およびテーパ状孔部の深さを測定してアスペクト比を算出し、吐出口の真円度を測定した結果を表3に示す。なお、最後に確認した研削面については、精密ノズル先端部の同心度も評価した。
【0128】
【0129】
表3の結果から明らかなように、実施例4では、アスペクト比の大きいテーパ状孔部を有する精密ノズルにおいて、吐出口の口径を微細で、かつ小さい真円度に形成することができた。最後の確認で得られた精密ノズルの先端部の断面の顕微鏡写真を
図17に示す。写真中央に円形状の吐出口が形成されているのが確認できる。
【0130】
実施例5
実施例1と同様にして放電加工した焼結体を製造し、研削工程において、研削面の画像を確認する時期および頻度を変更し、最終的に、吐出口の口径φが39.2μmである精密ノズルを製造した。各確認時期における口径およびテーパ状孔部の深さを測定してアスペクト比を算出し、吐出口の真円度を測定した結果を表4に示す。なお、最後に確認した研削面については、精密ノズル先端部の同心度も評価した。
【0131】
【0132】
表4の結果から明らかなように、実施例5では、アスペクト比の大きいテーパ状孔部を有する精密ノズルにおいて、吐出口の口径を微細で、かつ小さい真円度に形成することができた。最後の確認で得られた精密ノズルの先端部の断面の顕微鏡写真を
図18に示す。写真中央に円形状の吐出口が形成されているのが確認できる。
【0133】
実施例6
放電加工時の仕上げ加工を複数回追加した以外は実施例1と同様にして放電加工した焼結体を製造した。円盤状砥石を備えた研削機を用いて、研削工程において、CCDカメラを用いて研削面を画像で確認しながら、放電加工した焼結体に対して加工を行った。各確認時期における口径およびテーパ状孔部の深さを測定してアスペクト比を算出し、吐出口の真円度を測定した結果を表5に示す。なお、最初および最後に確認した研削面については、精密ノズル先端部の同心度も評価した。
【0134】
【0135】
表5の結果から明らかなように、実施例6では、アスペクト比の大きいテーパ状孔部を有する精密ノズルにおいて、吐出口の口径を微細で、かつ小さい真円度に形成することができた。最後の確認で得られた精密ノズルの先端部の断面の顕微鏡写真を
図19に示す。写真中央に円形状の吐出口が形成されているのが確認できる。
【0136】
実施例7
実施例6と同様にして放電加工した焼結体を製造し、この焼結体を用いて、研削工程において、研削面の画像を確認する時期を変更し、吐出口の口径φが42.5μmである精密ノズルを製造した。得られた精密ノズルのテーパ状孔部の深さLは4133μmであり、吐出口の口径φに対するテーパ状孔部の深さ(アスペクト比L/φ)は97であった。吐出口の真円度は0.8μmであり、精密ノズル先端部の同心度は3μmであった。
【0137】
実施例8
実施例6と同様にして放電加工した焼結体を製造し、研削工程において、研削面の画像を確認する時期および頻度を変更し、最終的に、吐出口の口径φが39.9μmである精密ノズルを製造した。各確認時期における口径およびテーパ状孔部の深さを測定してアスペクト比を算出し、吐出口の真円度および精密ノズル先端部の同心度を測定した結果を表6に示す。
【0138】
【0139】
表6の結果から明らかなように、実施例8では、アスペクト比の大きいテーパ状孔部を有する精密ノズルにおいて、吐出口の口径を微細で、かつ小さい真円度に形成することができた。最後の確認で得られた精密ノズルの先端部の断面の顕微鏡写真を
図20に示す。写真中央に円形状の吐出口が形成されているのが確認できる。
【0140】
実施例9
圧粉成形工程において、粉末状炭化タングステンWCとして、より細かい粉末状炭化タングステンWC(平均粒径0.8μm程度)を用いる以外は実施例1と同様にして放電加工した焼結体を製造した。円盤状砥石を備えた研削機を用いて、研削工程において、CCDカメラを用いて研削面を画像で確認しながら、放電加工した焼結体に対して加工を行った。各確認時期における口径φおよびテーパ状孔部の深さLを測定してアスペクト比を算出した結果を表7に示す。なお、最初に確認した研削面については、精密ノズル先端部の同心度も評価し、5回目に確認した研削面については、吐出口の真円度も評価し、最初および最後に確認した研削面については、吐出口の真円度および精密ノズル先端部の同心度も評価した。
【0141】
【0142】
表7の結果から明らかなように、実施例9では、アスペクト比の大きいテーパ状孔部を有する精密ノズルにおいて、吐出口の口径を微細で、かつ小さい真円度に形成することができた。最後の確認で得られた精密ノズルの先端部の断面の顕微鏡写真を
図21に示す。写真中央に円形状の吐出口が形成されているのが確認できる。
【0143】
実施例10
放電加工時の仕上げ加工を複数回追加した以外は実施例1と同様にして、吐出口の口径φが5μm(真円度0.4μm)である精密ノズルを得た。
本発明の精密ノズルは、吐出口が微細な各種の精密ノズルとして利用でき、例えば、導体デバイスの製造過程において、微小部品の組み立てや基板上での実装などに利用される電子部品用ノズルとして、リフローノズル、吸着ノズル、ソルダージェッティングノズルなどに好適に利用でき、なかでも、半田ボールを溶融して吐出するためのリフローノズルとして特に好適である。