IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 星和電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-流体殺菌装置 図1
  • 特開-流体殺菌装置 図2
  • 特開-流体殺菌装置 図3
  • 特開-流体殺菌装置 図4
  • 特開-流体殺菌装置 図5
  • 特開-流体殺菌装置 図6
  • 特開-流体殺菌装置 図7
  • 特開-流体殺菌装置 図8
  • 特開-流体殺菌装置 図9
  • 特開-流体殺菌装置 図10
  • 特開-流体殺菌装置 図11
  • 特開-流体殺菌装置 図12
  • 特開-流体殺菌装置 図13
  • 特開-流体殺菌装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006235
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】流体殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20240110BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20240110BHJP
【FI】
A61L2/10
C02F1/32
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106941
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000195029
【氏名又は名称】星和電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104569
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正夫
(72)【発明者】
【氏名】黒川 篤
【テーマコード(参考)】
4C058
4D037
【Fターム(参考)】
4C058AA20
4C058BB06
4C058KK02
4C058KK46
4D037AA01
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB04
(57)【要約】
【課題】中心部分の流体の速度と周辺部分の流体の速度とを均一化、すなわち流路の位置の違いによって流路内を流れる水の速度のばらつきがなく、流路内を流れる位置の違いに関わらず、殺菌の程度を均一化する。
【解決手段】殺菌対象となる流体である水が流通される流路100と、流路100に流体を導く導入管500と、導入管500と流路100との間に設けられる整流部700と、流路100内を流通する水に紫外線を照射する光源210を含む光源モジュール200とを備え、整流部700は複数個の開口711、721が開設された上流側整流板710と下流側整流板720とを間隔を空けて設置したものであり、整流板710、720は同一の金型を用いて板材に開口711、721を一定間隔で開設したものであり、開口711、721を開設する際に板材をずらすことで各整流板710、720ごとに開口711、721の位置を異ならせている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌対象となる流体が流通される断面円形の流路と、この流路に流体を導く導入管と、この導入管と流路との間に設けられる整流部と、前記流路内を流通する流体に紫外線を照射する光源を含む光源モジュールとを具備しており、前記整流部は複数個の開口が開設された整流板を複数枚所定の間隔を空けて設置したものであり、整流板の開口の位置は整流板ごとに異なっていることを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項2】
前記整流板は、同一の金型を用いて板材に複数個の開口を開設したものであり、開口を開設する際に板材をずらすことで整流板ごとに開口の位置を異ならせていることを特徴とする請求項1記載の流体殺菌装置。
【請求項3】
前記整流板は、同一の金型を用いて板材に複数個の開口を開設したものであり、開口の位置はすべての整流板で同一であり、かつ整流板を回転させることで整流板ごとに開口の位置を異ならせていることを特徴とする請求項1記載の流体殺菌装置。
【請求項4】
前記開口は、すべてが同じ大きさに設定されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の流体殺菌装置。
【請求項5】
前記整流板は、2枚であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の流体殺菌装置。
【請求項6】
前記整流板は、2枚であることを特徴とする請求項4記載の流体殺菌装置。
【請求項7】
殺菌対象となる流体が流通される断面円形の流路と、この流路に流体を導く導入管と、この導入管と流路との間に設けられる整流部と、前記流路内を流通する流体に紫外線を照射する光源を含む光源モジュールとを具備しており、前記整流部は複数個の開口が開設されており、かつ流体の上流側に向かって凸になったドーム状に形成されていることを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項8】
前記流体は、液体であることを特徴とする請求項1、2、3又は7記載の流体殺菌装置。
【請求項9】
前記光源は、波長200nm以上280nm以下の紫外線を発するUVC発光ダイオードであることを特徴とする請求項1又は7記載の流体殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を照射して水等の流体を殺菌する流体殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線を照射して水を殺菌する流水殺菌装置が知られている。
紫外線のうち、波長が200nm以上280nm以下のUVCは特に殺菌力が強いため、流水殺菌装置には適したものとなっている。
流水殺菌装置としては、特開2019-034297号公報に記載されたように、紫外線を照射する光源に発光ダイオードを用いたものがある。この流水殺菌装置で使用される紫外線は、波長250nm以上350nm以下の紫外線が、かつ照射する光に波長200nm以下の光を含まないものである。
【0003】
【特許文献1】特開2019-034297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流路内を流通する水の速度は、流路の中心部分では大きく、周辺部分では小さくなる。すなわち、流路の位置の違いによって水の速度が異なる。
流路の位置によって水の速度が異なると、殺菌が不均一になる。すなわち、速度の大きい中心部分の水はUVCの照射時間が短く、速度の小さい周辺部分の水はUVCの照射時間が長くなる。このため、中心部分の水は、周辺部分の水より殺菌の程度が低く、全体で殺菌の程度の不均一が生じる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたもので、中心部分の流体の速度と周辺部分の流体の速度とを均一化、すなわち流路の位置の違いによって速度のばらつきがなく、流路内を流れる位置に関わらず、殺菌の程度を均一化した流体殺菌装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る流体殺菌装置は、殺菌対象となる流体が流通される断面円形の流路と、この流路に流体を導く導入管と、この導入管と流路との間に設けられる整流部と、前記流路内を流通する流体に紫外線を照射する光源を含む光源モジュールとを備えており、前記整流部は複数個の開口が開設された整流板を複数枚所定の間隔を空けて設置したものであり、整流板の開口の位置は整流板ごとに異なっている。
【0007】
また、前記整流板は、同一の金型を用いて板材に開口を一定間隔で開設したものであり、開口を開設する際に板材をずらすことで整流板ごとに開口の位置を異ならせている。
【0008】
さらに、前記整流板は、同一の金型を用いて板材に開口を一定間隔で開設したものであり、開口の位置はすべての整流板で同一であり、かつ整流板を回転させることで整流板ごとに開口の位置を異ならせるようにしてもよい。
【0009】
本発明に係る他の流体殺菌装置は、殺菌対象となる流体が流通される断面円形の流路と、この流路に流体を導く導入管と、この導入管と流路との間に設けられる整流部と、前記流路内を流通する流体に紫外線を照射する光源を含む光源モジュールとを具備しており、前記整流部は複数個の開口が開設されており、かつ流体の上流側に向かって凸になったドーム状に形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る流体殺菌装置は、整流部を開口が異なる位置に開設された複数枚の整流板から構成したり、流体の上流側に向かって凸になったドーム状の整流板を用いたりすることで、流路内を流通する流体の速度を流路内の位置に関わらずほぼ均一にすることで光源モジュールからの紫外線の照射時間をほぼ均一化し、殺菌の度合いをほぼ均一化するこことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る流体殺菌装置の概略的端面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る流体殺菌装置の整流部を構成する整流板の図面であって、同図(A)は上流側整流板の概略的正面図、同図(B)は下流側整流板の概略的正面図、同図(C)は下流側整流板の中心位置を示す概略的正面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る流体殺菌装置の整流部を構成する整流板に開設される開口のパターンを示す図面であって、同図(A)は60°千鳥の模式図、同図(B)は45°千鳥の模式図、同図(C)は並列の模式図である。
図4】本発明の実施の形態に係る流体殺菌装置の整流部を構成する上流側整流板の開口と下流側整流板の開口との位置関係を示す模式図である。
図5】本発明の実施の形態に係る流体殺菌装置の整流部を構成する上流側整流板と下流側整流板とをそれぞれの開口がずれた位置にある場合の流路内における水の速度を示す概略的説明図である。
図6】整流部が上流側整流板と下流側整流板との2枚の整流板から構成され、かつ2枚の整流板の開口の位置が揃っている場合の流路内における水の速度を示す概略的説明図である。
図7】整流部が1枚の整流板のみで構成されている場合の流路内における水の速度を示す概略的説明図である。
図8】整流部が上流側整流板と下流側整流板との2枚の整流板から構成され、かつ上流側整流板に対して下流側整流板を15°回転させた場合の流路内における水の速度を示す概略的説明図である。
図9】整流部が上流側整流板と下流側整流板との2枚の整流板から構成され、かつ上流側整流板に対して下流側整流板を30°回転させた場合の流路内における水の速度を示す概略的説明図である。
図10】整流部が上流側整流板と下流側整流板との2枚の整流板から構成され、かつ上流側整流板に対して下流側整流板を45°回転させた場合の流路内における水の速度を示す概略的説明図である。
図11】同図(A)は整流部が1枚のドーム状の整流板(高さ1mm)から構成されている場合の流路内における水の速度を示す概略的説明図、同図(B)は高さが1mmのドーム状の整流板の概略的正面図、同図(C)は高さが1mmのドーム状の整流板の概略的側面図である。
図12】同図(A)は整流部が1枚のドーム状の整流板(高さ2mm)から構成されている場合の流路内における水の速度を示す概略的説明図、同図(B)は高さが2mmのドーム状の整流板の概略的正面図、同図(C)は高さが2mmのドーム状の整流板の概略的側面図である。
図13】同図(A)は整流部が1枚のドーム状の整流板(高さ5mm)から構成されている場合の流路内における水の速度を示す概略的説明図、同図(B)は高さが5mmのドーム状の整流板の概略的正面図、同図(C)は高さが5mmのドーム状の整流板の概略的側面図である。
図14】ドーム状の整流板でも流路内の水の速度にばらつきがなく均一化される原理を説明する図面であって、同図(A)は平らな1枚の整流板の場合の概略的説明図、同図(B)はドーム状の整流板の場合の概略的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る流体殺菌装置1000は、殺菌対象となる流体が流通される流路100と、この流路100に流体を導く導入管500と、この導入管500と流路100との間に設けられる整流部700と、前記流路100内を流通する流体に紫外線を照射する光源210を含む光源モジュール200とを備えており、前記整流部700は複数個の開口711、721が開設された上流側整流板710と下流側整流板720とを所定の間隔を空けて設置したものであり、上流側整流板710の開口711の位置と下流側整流板720の開口721の位置とは異なっている。
【0013】
なお、以下の説明では殺菌対象となる流体は水とするが、本発明に係る流体殺菌装置は、水以外の液体や気体等の他の流体にも適用することができることはいうまでもない。
【0014】
この流体殺菌装置1000を構成する流路100は、始端と終端にフランジ110、120がそれぞれ設けられた円筒形の直管型に形成されている。この流路100の終端は、フランジ120よりも後側に突出しており、この突出した部分の側面に複数個の流出孔130が等間隔で形成されている。複数個の流出孔130は流路100の終端側に開設されていることになる。
なお、この流路100は、フッ素樹脂で成形されている。
【0015】
かかる流路100の始端には、殺菌対象となる水を流路100に導く導入管500が接続されている。この導入管500と流路100との間には、流路100内を流通する水を整流するための整流部700が介在されている。
水は導入管500の中心位置から流路100内に導入されるようになっている。
この導入管500と整流部700とは、ステンレススチール(SUS304)製である。
【0016】
前記整流部700は、上流側に設置される上流側整流板710と、下流側に設置される下流側整流板720との2枚の整流板から構成される。
上流側整流板710と下流側整流板720とは、流路100の内側形状に対応した円形に形成されている。かかる上流側整流板710と下流側整流板720とは、パンチングメタルと称されるものであって、図2に示すように、複数個の円形の開口711、721が等間隔に開設されている。
【0017】
前記上流側整流板710は、図2(A)に示すように、外径が32mmの円形の金属板材に直径が1mmの開口711を複数個開設したものである。しかも、複数個の開口711の間隔は2mmピッチに設定されている。
また、前記下流側整流板720は、図2(A)に示すように、外径が32mmの円形の金属板材に直径が1mmの開口721を複数個開設したものである。しかも、複数個の開口721の間隔は2mmピッチに設定されている。
【0018】
しかも、上流側整流板710は外径32mmの円形の金属板材の中心に開口711が開設されるように、下流側整流板720は外径32mmの円形の金属板材の中心が図2(C)に示すように3つの開口721で形作られる正三角形の中心と一致するようにしている。
すなわち、上流側整流板710と下流側整流板720とは同一の金型で形成されるが、開口711、721の開設の際に金属板材をずらすことでそれぞれの開口711、721の位置がずれるようになっている。
【0019】
なお、開口711、721は、図3(A)に示すように、60°で交差する3組の平行線の交点を中心として開設されるようになっている。この開口711、721の配置パターンは、60°千鳥と称されている。
なお、開口711、721の配置パターンは60°千鳥に限定されるものではなく、図3(B)に示すような45°千鳥と称されるパターン、図3(C)に示すような並列と称されるパターンや同心円上に一定間隔で配置されるようなものであってもよいし、その他のパターン、例えばランダムに配置されるものであってもよいことはいうまでもない。
また、各整流板710、720の外径寸法や開口711、721の直径、ピッチ間隔は上述のものに限定されるものでないことはいうまでもない。
これは以下の実施の形態でも同様である。
【0020】
前記 上流側整流板710と下流側整流板720とで、同一の金型を使用し、開口711、721を開設する際に板材をずらすことでそれぞれの開口711、721の位置を異ならせているが、上流側整流板710と下流側整流板720とで金型を違うものして両整流板710、720のそれぞれの開口711、721の位置を異なるようにしてもよいことはいうまでもない。
ただし、同一の金型を使用することで製造工数、製造コストの低減を図ることができるというメリットがある。
【0021】
上流側整流板710と下流側整流板720とを加工する際に、上流側整流板710の開口711は上流側整流板710の中心に開口711が開設されるように金型をセットして開口711を開設し、下流側整流板720の開口721は下流側整流板720の中心にからずれた位置に開口721が開設されるように金型をセットして開口721を開設するので、開口711、721が開設された上流側整流板710と下流側整流板720を所定の間隔を有して平行に設置すると、図4に示すように、上流側整流板710の開口711と下流側整流板720の開口721とはずれた位置に存在することになる。
【0022】
なお、図4に示す上流側整流板710の開口711と、下流側整流板720の開口721とは一部が重なった状態になっているが、両開口711、721が完全に重ならないようになっていてもよい。
【0023】
流路100の下流側には、導出管600が設けられる。この導出管600は、流路100内を流通した水を外部に排出するための複数個の流出孔130をカバーする導出部610と、光源モジュール200がセットされる光源セット部640とを有している。
この導出管600は、ステンレススチール(SUS304)製である。
【0024】
前記導出部610は、流路100のフランジ120より下流側の外周面を覆うようになっている。この導出部610により流出孔130を覆った環状の流出路620が形成されることになる。
従って、流路100内を流通した水は、排出孔130を介して流出路620に導かれ、流出路620を介して導出口630に導かれ外部に排出されることになる。
【0025】
前記光源モジュール200は、前記流路100の終端側に位置するものであって、波長200nm以上280nm以下の紫外線を発するUVC発光ダイオードである光源210と、この光源210が実装される実装基板220と、この実装基板220が設置される蓋部230と、流路100の終端を閉塞するガラス窓400とを有している。
すなわち、光源モジュール200は、上流側からみるとガラス窓400、光源210、実装基板220、蓋部230の順に並ぶことになる。
【0026】
前記ガラス窓400は石英ガラス製であり、その周縁にはフッ素ゴム製のパッキン410が設けられている。このガラス窓400は、前記光源210の前面側(紫外線が発される側)に位置することになり、流路100内を流通する水に対して光源モジュール200からの紫外線を透過させることになる。従って、このガラス窓400は光源210から発せられる波長200nm以上280nm以下の紫外線を透過させることができるものが使用される。
また、このガラス窓400は、光源モジュール200の内部に流路100内を流通する水が浸入しないようにする役目をも有している。
【0027】
このように構成された流体殺菌装置1000においては、導入管500から流路100内に導入された水は、流路100の終端側に位置する光源モジュール200の光源210から発せられる波長200nm以上280nm以下の紫外線によって効率的に殺菌される。
【0028】
流路100内において殺菌された水は、流路100の終端側の流出孔130→導出管600の導出部620→導出口630の順に通過して、外部に排出される。
【0029】
整流部700が上流側整流板710と下流側整流板720との2枚の整流板から構成されるものであり、かつ上流側整流板710の開口711と下流側整流板720の開口721とがずれている場合、流路100内での水の速度は図5に示すようになる。
すなわち、流路100内での水の速度は、その位置に関わらず、中心部分でも周辺部分でもばらつきなくほぼ同一の速度になることが確認されている。
【0030】
なお、流路100内での水の速度は、色の濃度で示されており、黒色になるほど速度が高いことを示している。なお、この水の速度の表し方は、本願における他の図面でも同様である。
【0031】
これに対して、整流部1700上流側整流板710と下流側整流板720との2枚の整流板から構成されるものであっても、上流側整流板710の開口711と下流側整流板720の開口721とが一致している場合、流路100内での水の速度は図6に示すようになる。
すなわち、流路100内での水の速度は、中心部分で大きく、周辺部分にいくに従って小さくなる。つまり,流路100内での水の速度には場所によってばらつきが生じていることが確認できる。
【0032】
また、整流板が1枚で構成された従来の整流部が組み込まれた流体殺菌装置における流路100内での水の速度は、図7に示すように、中心部分で大きく、周辺部分にいくに従って小さくなる。つまり,流路100内での水の速度には場所によってばらつきが生じていることが確認できる。
すなわち、流路100内を流通する水の速度は、整流板が1枚では、図6に示す2枚の整流板710、720の開口711、721の位置が一致しているものとほぼ同等になることが確認できる。
【0033】
上流側整流板710の開口711と下流側整流板720の開口721とがずれている場合、流路100内での水の速度は、その位置に関わらず、中心部分でも周辺部分でもばらつきなくほぼ同一の速度になるのは以下のような理由によると考えられる。
すなわち、水は導入管500の中心位置から流路100内に導入されるようになっているため、導入管500の中心部分、ひいては流路100の中心部分には水が最短距離で供給されるが、周辺部分には水が拡散した後に供給される。このため、中心部分での水の速度は大きく、周辺部分での水の速度は小さくなる。
【0034】
ここで、上流側整流板710の開口711の位置と下流側整流板720の開口721の位置とがずれていると、中心部分の水も上流側整流板710と下流側整流板720との間の隙間で拡散される。
また、周辺部分の水も上流側整流板710と下流側整流板720との間の隙間で拡散されることになる。
このため、中心部分の水の速度と周辺部分の水の速度は、上流側整流板710と下流側整流板720との間の隙間で拡散されることによってばらつきがなくほぼ均一化される、すなわち流路100内での位置の違いに関わらず水の速度はばらつきなくほぼ均一化されることになると考えられる。
【0035】
水の速度が流路100内での位置の違いに関わらずほぼ均一になると、流路100のどの位置を通過しても光源モジュール200の光源210から発せられる波長200nm以上280nm以下の紫外線に晒される時間もほぼ均一になる。このため、流路100内を流通する水は、流路100内での位置の違いに関わらずほぼ同等に殺菌されることになる。
【0036】
なお、上流側整流板710と下流側整流板720との2枚の整流板を使用していても、両整流板710、720の開口711、721の位置が一致していると、上流側整流板710の開口711を通過した水はそのまま下流側整流板720の開口721を通過するので、上流側整流板710と下流側整流板720との間の隙間で拡散されることがなく、中心部分の水の速度は大きいまま、周辺部分の水の速度は小さいままになると考えられる。すなわち整流板が1枚の場合と同じようになる。
【0037】
このため、上流側整流板710と下流側整流板720との2枚の整流板を使用していても、両整流板710、720の開口711、721の位置が一致していると流路100内での位置の違いによって光源モジュール200からの紫外線に晒される時間が異なるため、流路100内での位置の違いによって殺菌の度合いが異なることになる。
【0038】
上述した実施の形態では、上流側整流板710と下流側整流板720とは同一の金型で開口711、721を開設するが、上流側整流板710の開口711は上流側整流板710の中心に開口711が開設されるように金型をセットして開口711を開設するが、下流側整流板720の開口721は下流側整流板720の中心にからずれた位置に開口721が開設されるように金型をセットして開口721を開設するようにしている。
このようにすることで上流側整流板710と下流側整流板720とでは、それぞれの開口711、721の位置がずれて開設されるようになっている。
【0039】
しかしながら、上流側整流板710の開口711と下流側整流板720の開口721との位置をずらすのは上記の方法に限定されるものではない。
上流側整流板710も下流側整流板720に位置をずらすことなく、まったく同一の位置に開口711、721がそれぞれ開設されるものであっても、流体殺菌装置1000にセットする際に上流側整流板720と下流側整流板720とを相対的に回転してセットすることによって両整流板710、720の開口711、721の位置をずらすことができる。
【0040】
上流側整流板710に対して下流側整流板720を15°回転させた場合、30°回転させた場合、45°回転させた場合の流路100内での水の速度をそれぞれ図8図9及び図10に示している。
いずれも場合でも、上流側整流板710の開口711と下流側整流板720の開口721とは重なることなくその位置がずれることになる。
【0041】
上流側整流板710に対して下流側整流板720を回転させると、上流側整流板710の開口711の位置と下流側整流板720の開口721の位置とが揃っている場合に比較すると、流路100内での水の速度はばらつきが少なくなっているのが確認できる。
なお、上流側整流板710と下流側整流板720とは、外径が32mmの円形の金属板材に直径が1mmの開口711を複数個開設したものである。しかも、複数個の開口711の間隔は2mmピッチに設定されている。両整流板710、720とも、外径32mmの円形の金属板材の中心に開口711、721が開設されている。
【0042】
流路100内での水の速度にばらつきがなくなると、流路100内を流れる水は流路100内での位置の違いに関わらずほぼ同様に光源モジュール200の光源210から発せられる波長200nm以上280nm以下の紫外線の照射を受けることができる。このため、流路100内を流通する水は、流路100内での位置の違いに関わらずほぼ同様に殺菌されることになる。
【0043】
なお、上述した実施の形態では、流体殺菌装置1000の整流部700は上流側整流板710、下流側整流板720の2枚の整流板を備えているとしたが、3枚以上の整流板を備えるものであってもよいことはいうまでもない。
【0044】
上述した2つの実施の形態では、2枚の整流板、すなわち上流側整流板710と下流側整流板720を使用したが、図11~13に示すようなドーム状の整流板730を用いると、1枚であっても流路100内での水の速度のばらつきが少なくなることが確認された。
【0045】
このドーム状の整流板730は、図11(B)~図13(B)に示すように、外径が32mmの円形であって、複数個の開口731が開設されており、かつ水の上流側に向かって凸になったドーム状に形成されている。
複数個の開口731の間隔は2mmピッチに設定されており、かつ各開口731は60°千鳥パターンで開設されている。
【0046】
例えば、高さが1mmのドーム状の整流板730を用いた場合の流路100内での水の速度は図11(A)に示すように、高さが2mmのドーム状の整流板730を用いた場合の流路100内での水の速度は図12(A)に示すように、高さが5mmのドーム状の整流板730を用いた場合の流路100内での水の速度は図13(A)に示すようになる。
図11(A)~図13(A)に示したように、いずれも流路100内の中心部分の水の速度と周辺部分の水の速度はほぼ均一化されている、すなわち流路100内での位置の違いに関わらず水の速度はばらつきなくほぼ均一化されることになると考えられる。
【0047】
なお、ドーム状の整流板730を用いることで流路100内での位置の違いに関わらず流路100内での水の速度がばらつきなくほぼ均一化されるのは、現時点で詳細は不明であるが、以下のような理由によるものと推定できる。
導入管500から流路100内に導かれた水は、1枚の平らな整流板であると、流路100の周辺部分の水(図14(A)に矢印αで示す)は、図14(A)に示すように2回も直角に曲がって開口を抜けていき、中央部分の水は1回も曲がることなくストレートに開口を抜けていくため、中央部分の水の速度は大きく、周辺部分の水の速度は小さくなると考えられる。
一方、ドーム状の整流板730であると、流路100の周辺部分の水(図14(B)に矢印βで示す)は、図14(B)に示すように2回も鈍角に曲がって開口731を抜けていく。すなわち、ドーム状の整流板730の場合、水は平らな整流板の場合より滑らかに開口731を抜けるので、全体として滞りなく流れることになり、流路100内での水の速度がばらつきなく均一になると考えられる。
【0048】
また、上述した流体殺菌装置1000では、殺菌対象としての流体を水として説明したが、本発明がそれに限定されるものでないことはいうまでもない。
他の流体、例えば水以外の液体、ガス等の気体も含まれるものであることはもちろんである。
【0049】
なお、上述した流体殺菌装置1000では、光源モジュール200は、UVC発光ダイオードである光源210と、この光源210が実装される実装基板220とから構成され、光源10とガラス窓400との間は空間であると説明したが、この空間部分を放熱性に優れた樹脂モールドで充填することも可能である。
前記空間を樹脂モールドで充填することにより、光源210のより高い水密性を確保することができるので、ガラス窓400における水密性はそれほど高いものでなくてもよくなるというメリットもある。
【符号の説明】
【0050】
100 流路
200 光源モジュール
210 光源
500 導入管
700 整流部
710 上流側整流板
711 (上流側整流板の)開口
720 下流側整流板
721 (下流側整流板の)開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌対象となる流体が流通される断面円形の流路と、この流路に流体を導く導入管と、この導入管と流路との間に設けられる整流部と、前記流路内を流通する流体に紫外線を照射する光源を含む光源モジュールとを具備しており、前記整流部は複数個の開口が開設されており、かつ流体の上流側に向かって凸になったドーム状に形成されていることを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項2】
前記流体は、液体であることを特徴とする請求項1記載の流体殺菌装置。
【請求項3】
前記光源は、波長200nm以上280nm以下の紫外線を発するUVC発光ダイオードであることを特徴とする請求項1又は2記載の流体殺菌装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明に係る流体殺菌装置は、殺菌対象となる流体が流通される流路と、この流路に流体を導く導入管と、この導入管と流路との間に設けられる整流部と、前記流路内を流通する流体に紫外線を照射する光源を含む光源モジュールとを備えており、前記整流部は複数個の開口が開設されており、かつ流体の上流側に向かって凸になったドーム状に形成されている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明に係る流体殺菌装置は、流体の上流側に向かって凸になったドーム状の整流板を用いることで、流路内を流通する流体の速度を流路内の位置に関わらずほぼ均一にすることで光源モジュールからの紫外線の照射時間をほぼ均一化し、殺菌の度合いをほぼ均一化することが可能になる。