(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062368
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】オープンケーソン工法
(51)【国際特許分類】
E02D 23/00 20060101AFI20240430BHJP
E02D 27/18 20060101ALI20240430BHJP
E02D 27/20 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
E02D23/00 B
E02D27/18
E02D27/20
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090086
(22)【出願日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2022169928
(32)【優先日】2022-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】392030494
【氏名又は名称】ヤマハ化工建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 壬則
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046CA12
(57)【要約】
【課題】薄肉で、品質安定性および信頼性に優れた底版が得られるケーソン工法を提供する。
【解決手段】ケーソン工法は、刃口部1aを有する筒状の第一ケーソン躯体1を沈設する第1工程と、沈設された第一ケーソン躯体1の内側に配置された第2ケーソン躯体2を地中に根入れさせる第2工程と、第一ケーソン躯体1の底部に打設したコンクリートで、第一ケーソン躯体1の底部開口を封口する底版5を築造する第3工程とを有する。第3工程で底版5を築造する際に、第二ケーソン躯体2の少なくとも一部を底版5に埋め込む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃口部を有する筒状の外側構造体を沈設する第1工程と、
沈設された外側構造体の内側に配置された内側構造体を地中に根入れさせる第2工程と、
前記外側構造体の底部に打設したコンクリートで、前記外側構造体の底部開口を封口する底版を築造する第3工程と
を有し、
前記第3工程で前記底版を築造する際に、前記内側構造体の少なくとも一部を底版に埋め込むことを特徴とするオープンケーソン工法。
【請求項2】
前記内側構造体を前記外側構造体の内側の複数箇所に配置した請求項1に記載のオープンケーソン工法。
【請求項3】
前記外側構造体を、外側壁体と当該外側壁体と連結した内側壁体とを備える二重壁構造とした請求項1に記載のオープンケーソン工法。
【請求項4】
前記外側構造体として、前記外側壁体の下端と、前記内側壁体の下端とを異なる高さに配置したものを用いる請求項3に記載のオープンケーソン工法。
【請求項5】
前記第1工程で、前記外側構造体を最終的な目標深度よりも浅く沈設し、次いで前記第2工程を行い、その後、前記外側構造体を前記最終的な目標深度まで沈設する請求項1に記載のオープンケーソン工法。
【請求項6】
前記外側構造体の沈設後に、外側壁体と内側壁体の間の空間にコンクリートを充填する請求項3に記載のオープンケーソン工法。
【請求項7】
筒状の外側壁体と当該外側壁体と連結した筒状の内側壁体とを備え、前記外側壁体の下端と前記内側壁体の下端とが異なる高さに配置されたケーソン躯体を、前記外側壁体と前記内側壁体の間の空間の地盤を掘削排土することにより沈設することを特徴とするオープンケーソン工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンケーソン工法に関する。
【背景技術】
【0002】
水底又は地下水面下に根入れされる地下構造物(護岸、橋脚、立杭等の建設物)を構築する際には、ケーソン工法が多用されている。このケーソン工法は、一般にニューマチックケーソン工法とオープンケーソン工法に大別され、このうちニューマチックケーソン工法は、地盤を深く掘削する場合に障害となる地下水の湧水を、各深度の水圧に相当する空気圧力でおさえてケーソンを沈設する工法である。一方、オープンケーソン工法は、圧縮空気を使わずに大気圧下でケーソンを掘削沈埋する工法である。
【0003】
ニューマチックケーソン工法では、閉鎖された高気圧下の作業室内に作業員が入って作業を行う必要があるため、潜函病予防のための作業時間制限により、作業能率が低下すること、機械設備が大型化すること、などの問題がある。これらの課題からニューマチックケーソン工法では工費が高騰する傾向にある。特に近年求められる地中構造物の大深度化に伴い、これらの問題がより顕在化する傾向にある。
【0004】
一方、オープンケーソン工法は、大気圧下での作業となるため、この種の問題点は全て回避することができる。しかしながら、オープンケーソン工法では、地下水の湧水等により、躯体内部が水で満たされて溶接が困難となるため、躯体底部を封口する底版を有筋コンクリートとすることは難しく、水中コンクリートによる無筋コンクリート造りとせざるを得ない。
【0005】
沈設したケーソン躯体の底部が、地下水面よりも下方に位置する場合、底版には大きな揚圧力が作用する。また、底版には地盤反力も作用する。底版は、揚圧力及び地盤反力(以下、これらを「反力」と総称する)を側壁に伝達する機能を有するが、
図9に示すように、底版15内の応力伝達の伝達線T(θ=45°)が重ならない場合、底版15には反力により大きな曲げ応力が作用することになる。この曲げ応力による底版15の変形を防止するため、ケーソン躯体10の底版厚さH2を厚くする必要がある。このように底版厚さH2が厚くなることで、地下空間の利用率が低下し、これを補うためのさらなる大深度化を要し、そのために施工コストの高騰を招く。従って、オープンケーソン工法では、底版を極力薄肉化することが求められる。
【0006】
オープンケーソンの底版強化を図った提案として、例えば下記の特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載の工法では、ケーソンが設置底面地盤に到達する前の地盤に変形や緩みが生じていない段階で、設置底面地盤領域に対して鋼棒、鋼管、鋼心モルタルパイル等の地盤補強材を埋設するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の工法では、地盤補強材を埋設するタイミングを判断することが難しい。また、地盤補強材の埋設を水中で行う必要があるため、作業性も悪い。そのため、底版の品質安定性や信頼性に難がある。
【0009】
そこで、本発明は、薄肉で、品質安定性および信頼性に優れた底版が得られるオープンケーソン工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかるオープンケーソン工法は、刃口部を有する筒状の外側構造体を沈設する第1工程と、沈設された外側構造体の内側に配置された内側構造体を地中に根入れさせる第2工程と、前記外側構造体の底部に打設したコンクリートで、前記外側構造体の底部開口を封口する底版を築造する第3工程とを有し、前記第3工程で前記底版を築造する際に、前記内側構造体の少なくとも一部を底版に埋め込むことを特徴とする。
【0011】
このように内側構造体を地盤に根入れすると共に、内側構造体の少なくとも一部を底版に埋め込むことで、内側構造体が底版に作用する揚圧力に対して抵抗する抵抗体として機能する。すなわち、底版の支持スパンが従来工法による底版の支持スパンよりも短くなる。そのため、揚圧力による底版の変形を抑制することができ、延いては底版の薄肉化を図ることが可能となる。また、水中作業は特に必要がなく、既存技術で施工可能となるため、品質安定性、信頼性に優れた底版を得ることができる。
【0012】
前記内側構造体は前記外側構造体の内側の複数箇所に配置することができる。これにより、底版の支持スパンをさらに短くできるため、底版のさらなる薄肉化を図ることが可能となる。
【0013】
前記外側構造体は、外側壁体と当該外側壁体と連結した内側壁体とを備える二重壁構造とするのが好ましい。
【0014】
この場合、前記外側構造体として、前記外側壁体の下端と、前記内側壁体の下端とを異なる高さに配置したものを用いることができる。例えば前記内側壁体の下端を前記外側壁体の下端よりも上方に配置しておけば軟質地盤での沈設に適合し、前記外側壁体の下端を、前記内側壁体の下端よりも上方に配置しておけば硬質地盤での沈設に適合する。
【0015】
このケーソン工法では、前記第1工程で、前記外側構造体を最終的な目標深度よりも浅く沈設(1回目の沈設)し、次いで前記第2工程を行い、その後、前記外側構造体を前記最終的な目標深度まで沈設(2回目の沈設)することができる。
【0016】
このように外側構造体の沈設を1回目と2回目の二段階に分け、その間に第2工程(内側構造体の沈設工程)を行うことで、例えば大口径の外側構造体を大深度まで沈設させる際の刃口部付近での地盤の崩壊(円弧滑り等)を回避することができ、安定した沈設作業を行うことが可能となる。
【0017】
外側構造体として、外側壁体と当該外側壁体と連結した内側壁体とを備える二重壁構造のものを使用する場合、外側構造体の沈設後に、外側壁体と内側壁体の間の空間にコンクリートを充填するのが好ましい。
【0018】
これにより地下構造物の強度を十分に確保することが可能となる。また、仮に外側構造体の沈設中に外側壁体あるいは内側壁体にクラックが発生していても、外側壁体と内側壁体の間のコンクリートを打設することでクラックを補修し、外側構造体の強度を確保することができる。
【0019】
また、本発明に係るオープンケーソン工法は、筒状の外側壁体と当該外側壁体と連結した筒状の内側壁体とを備え、前記外側壁体の下端と前記内側壁体の下端とが異なる高さに配置されたケーソン躯体を、前記外側壁体と前記内側壁体の間の空間の地盤を掘削排土することにより沈設することを特徴とする。
【0020】
この場合、例えば前記内側壁体の下端を前記外側壁体の下端よりも上方に配置しておけば軟質地盤での沈設に適合し、前記外側壁体の下端を、前記内側壁体の下端よりも上方に配置しておけば硬質地盤での沈設に適合する。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、薄肉で、品質安定性および信頼性に優れた底版を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第一実施形態のケーソン工法で沈設された地中構造物を示す平面図である。
【
図2】第一実施形態のケーソン工法で沈設された地中構造物を示す断面図である。
【
図3】ケーソン工法の第一実施形態を示す縦方向の断面図である。
【
図4】ケーソン工法の第一実施形態を示す縦方向の断面図である。
【
図5】ケーソン工法の第一実施形態を示す縦方向の断面図である。
【
図6】ケーソン工法の第一実施形態を示す縦方向の断面図である。
【
図7】ケーソン工法の第一実施形態を示す縦方向の断面図である。
【
図8】ケーソン工法の第一実施形態の変形例を示す縦方向の断面図である。
【
図9】従来のケーソン工法で沈設したケーソン躯体を示す縦方向の断面図である。
【
図10】ケーソン工法の第二実施形態を示す縦方向の断面図である。
【
図11】ケーソン工法の第二実施形態を示す縦方向の断面図である。
【
図12】ケーソン工法の第二実施形態を示す縦方向の断面図である。
【
図13】第三実施形態のケーソン工法で沈設された地中構造物を示す平面図である。
【
図15】ケーソン工法の第三実施形態を示す断面図(
図13のXV線方向)である。
【
図16】ケーソン工法の第三実施形態を示す断面図(
図13のXV線方向)である。
【
図17】ケーソン工法の第三実施形態を示す断面図(
図13のXV線方向)である。
【
図18】ケーソン工法の第三実施形態を示す断面図(
図13のXV線方向)である。
【
図19】第四実施形態のケーソン工法で沈設された地中構造物を示す平面図である。
【
図22】(a)(b)ともケーソン工法の第五実施形態を示す断面図である。
【
図23】(a)~(d)ともケーソン工法の第五実施形態を示す断面図である。
【
図24】第六実施形態のケーソン工法を説明する断面図であり、(a)図は単壁構造を有する第一ケーソン躯体の刃口部を示し、(b)図は二重壁構造を有する第一ケーソン躯体の刃口部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明にかかるオープンケーソン工法の実施形態を
図1~
図24に基づいて説明する。既に述べたように、オープンケーソン工法は、大気圧(水中も含む)下で地盤を掘削排土してケーソン躯体を沈設する工法である。
【0024】
図1は、本実施形態で説明するオープンケーソン工法で沈設された地中構造物を示す平面図であり、
図2は当該地中構造物の縦方向の断面図である。
図1および
図2に示すように、この地中構造物は、外側構造体としての第一ケーソン躯体1と、第一ケーソン躯体1の内側に配置された内側構造体としての第二ケーソン躯体2と、第一ケーソン躯体1の底部を封口する底版5とを有する。第二ケーソン躯体2は地中に根入れされ、かつその一部が底版5に埋め込まれている。
【0025】
第一ケーソン躯体1および第二ケーソン躯体2は、上下を開口させた中空の筒状、例えば円筒状に形成される。第一ケーソン躯体1および第二ケーソン躯体2の横断面形状は円形に限らず、任意の形状とすることができ、例えば矩形型、小判型、楕円型等の横断面形状も採用することができる。第一ケーソン躯体1および第二ケーソン躯体2の下端には、その全周にわたって縦断面で楔型をなす刃口部1a、2aが形成されている。第一ケーソン躯体1および第二ケーソン躯体2としては、鉄筋あるいは鉄骨の何れか一方または双方を補強材として使用した有筋コンクリート構造が代表的であるが、両躯体1、2を鋼板、鉄骨等の金属材料だけで形成することもできる。第二ケーソン躯体2の高さ寸法は、第一ケーソン躯体1の高さ寸法よりも小さく、概ね底版5の厚さと同程度(
図8参照)か底版5の厚さよりも僅かに大きい(
図2参照)。
【0026】
本実施形態では第一ケーソン躯体1として単壁ケーソンを例示しているが、後で詳細に述べるように、第一ケーソン躯体1として、二重壁ケーソンを用いることもできる。二重壁ケーソンは外側の側壁、および当該側壁の下端に形成した外側刃口部を有する外側壁体と、内側の側壁、および当該側壁の下端に形成した内側刃口部を有する内側壁体とを鉄骨等の連結材で結合したものである。
【0027】
本実施形態のオープンケーソン工法は、第1工程、第2工程、および第3工程を順次経るものである。以下、このオープンケーソン工法の第一実施形態について説明する。
【0028】
[第1工程]
【0029】
図3に示すように、第1工程では、第一ケーソン躯体1が、その内側の地盤を掘削、排土することにより地中に沈設される。沈設に際し、第一ケーソン躯体1の内側の空間は大気に開放されている。沈設後の第一ケーソン躯体1の内側地盤は、刃口部1aの下端と概ね同レベルとされる。沈設に際しては、地中にアンカーをとった油圧ジャッキの圧入力により第一ケーソン躯体1を地中に圧入することができる。この他、第一ケーソン躯体1の自重だけで地中に沈設することも可能である。なお、図中の符号Wは地下水面を表している。
【0030】
また、第一ケーソン躯体1は、その全体を地上で構築してから沈設する他、先の工程で躯体を1ロット分だけ沈下させ、沈下した躯体上に次ロット分の躯体を継ぎ足し、以後、沈下と躯体の継ぎ足しを繰り返す、という手順で沈設することもできる。
【0031】
この第1工程での第一ケーソン躯体1は、二点鎖線で示すように、最終的な目標深度D2まで沈設する他、実線で示すように目標深度D2よりも浅い深度D1まで沈設する(1回目の沈設)こともできる。例えば、
図3に示すように、目標深度D2よりも底版5の厚さH1(
図2参照)と概ね同程度分だけ浅い深度D1まで沈設することができる(D2-D1≒H1)。このように第一ケーソン躯体1の沈設工程を2回に分け、1回目の沈設時に目標深度D2よりも浅い深度D1まで沈設する技術的意義は後で述べる。
【0032】
[第2工程]
次に第二ケーソン躯体2の沈設が行われる。この工程では、
図4に示すように、先ず地上にて築造した第二ケーソン躯体2が、第一ケーソン躯体1の上方からその内側空間に吊り降ろされる。吊り降ろしは、クレーンや油圧ジャッキを用いて行うことができる。
【0033】
また、第二ケーソン躯体2の上面が水面Wよりも上方の大気中に存在する間に、第二ケーソン躯体2の上面に受圧部材3が取り付けられる。受圧部材3は、
図4に示すように、第二ケーソン躯体2の上面に配置した筒状(例えば円筒状)の部材で形成する他、第二ケーソン躯体2の周方向の複数箇所に配置した柱状の部材で形成することもできる。
図5に示すように、受圧部材3の上面に次ロットの受圧部材3を順次継ぎ足しながら、第二ケーソン躯体2を徐々に吊り降ろし、刃口部2aを第1ケーソン躯体1内側の地盤に着底させる。第二ケーソン躯体2が着底した時点で、最上段の受圧部材3の上面は大気中に位置させる。
図5では、第二ケーソン躯体2の下端を第一ケーソン躯体1の下端と同じ高さ(底版5の上面と同じ位置)で底部地盤に着底させている。
【0034】
次いで、油圧ジャッキを含む圧入設備(図示省略)を用いて最上段の受圧部材3に圧入力を付与し、第二ケーソン躯体2を地中に圧入する。受圧部材3を継ぎ足しながら、以上の操作を繰り返すことで、第二ケーソン躯体2が、その下端が最終的に築造される底版5の下面よりも下方に達するまで沈設される。これにより、第二ケーソン躯体2の下部が地中に根入れされた状態となる。第二ケーソン躯体2の圧入に際しては、必要に応じて、第二ケーソン躯体2の内側の地盤が掘削、排土される。
【0035】
第二ケーソン躯体2を圧入する際の反力は、第一ケーソン躯体1の外側あるいは内側の地中に打設したグランドアンカーで支持する。第一ケーソン躯体11の内側の地中にグランドアンカーを配置すれば、油圧ジャッキを支持する加圧桁は最上段の受圧部材3に架け渡せる程度の長さで足りるようになる。そのため、加圧桁に要求される曲げ剛性を低くすることができ、工費の削減を図ることができる。圧入反力は、グランドアンカーの他、第一ケーソン躯体1の自重で支持することもできる。
【0036】
その後、圧入や自重沈下により第一ケーソン躯体1を
図3に示す最終的な目標深さD2まで沈設させる(2回目の沈設)。第一ケーソン躯体1を最終的な目標深さD2まで沈設した状態では、第二ケーソン躯体2の下端は、第一ケーソン躯体1の下端よりも下方にあり、第二ケーソン躯体2が地中に根入れされた状態にある。
【0037】
このように第一ケーソン躯体1の沈設を1回目と2回目の二段階に分け、1回目と2回目の沈設の間に第2工程を行うことで、例えば大口径の第一ケーソン躯体1を大深度まで沈設させる際の刃口部1a付近での地盤の崩壊(円弧滑り等)を回避することができ、安定した沈設作業を行うことが可能となる。もちろん外側構造体の1回目の沈設工程で第一ケーソン躯体1を最終的な目標深度D2(
図3参照)まで沈設する場合には、第一ケーソン躯体の2回目の沈設工程は不要となる。
【0038】
なお、沈設後の第一ケーソン躯体1の内側がドライの状態である時は、第一ケーソン躯体1の内側の地盤上で第二ケーソン躯体2の築造することができる。この場合、受圧部材3を使用せず、第二ケーソン躯体2に直接圧入力を付与して第二ケーソン躯体2を沈設することができる。
【0039】
[第3工程]
次いで、第一ケーソン躯体1の底部にコンクリート(水中コンクリート)を打設し、第一ケーソン躯体1の底部開口を全て封口する底版5(
図2参照)を築造する。この底版5は鉄筋等の補強材のない無筋コンクリートである。本実施形態では、
図2に示すように、底版5の上面を第二ケーソン躯体2の上面と同レベルに配置しているが、底版5の上面を第二ケーソン躯体2の上面より高くしてもよい。底版5の厚さH1は、少なくとも第二ケーソン躯体2の一部が底版5に埋め込まれる程度であれば足りる。
【0040】
その後、第一ケーソン躯体1の内側空間を排水し、さらに受圧部材3を撤去することで、
図1および
図2に示すように、第二ケーソン躯体2の下端が地中に根入れされると共に、第二ケーソン躯体2の一部が底版5に埋め込まれた地中構造物が完成する。この地中構造物では、第一ケーソン躯体1、第二ケーソン躯体2、および底版5が一体構造物となる。なお、
図6に示す第2工程において、根入れした第二ケーソン躯体2の下端に至るまで第二ケーソン躯体2の内側の地盤を掘削、排土することにより、
図8に示すように、第二ケーソン躯体2の内側の底版5を第二ケーソン躯体2の下端まで達するように築造してもよい。
【0041】
このように、沈設後の第二ケーソン躯体2のうち、刃口部2aを含む下端を地中(底部地盤)に根入れすると共に、第二ケーソン躯体1の一部を底版5に埋め込むことで、第二ケーソン躯体2と地盤との間の摩擦力により、第二ケーソン躯体2が底版5に作用する揚圧力等の反力に対して抵抗する抵抗体として機能する。すなわち
図2に示すように、底版4の支持スパンSo、Siが従来工法による底版15の支持スパンS(
図9参照)よりも短くなる。そのため、揚圧力による底版5の変形を抑制することができ、延いては底版5の薄肉化を図ることが可能となる。また、このオープンケーソン工法では、水中作業は特に必要がなく、既存技術で施工可能となるため、品質安定性、信頼性に優れた底版5を得ることができる。
【0042】
図9に、本実施形態と同形状、同サイズ(断面円筒形、高さ57m程度、外径寸法52m程度)の第一ケーソン躯体1を使用して既存のオープンケーソン工法で同深度まで沈設した場合に、強度的に必要とされる底版15を示す。
図2と
図9の対比から明らかなように、従来のオープンケーソン工法では20.7m程度の底版厚さH2を必要とするのに対し、本実施形態のオープンケーソン工法により、底版5を薄肉化し、底版厚さH1を従来工法による底版15の厚さH2よりも小さく(例えばH1=6.7m程度)できることが理解できる。このような底版5の薄肉化を通じて、工費及び工期の削減を図ることが可能となる。
【0043】
[第二実施形態]
図10~
図12に本発明に係るオープンケーソン工法の第二実施形態を示す。この第二実施形態では、第一ケーソン躯体1、第二ケーソン躯体、および受圧部材3は、既に述べた第一実施形態で使用したものと同じものが使用される。
【0044】
図10に示すように、第二の実施形態では、第1工程で第一ケーソン躯体1を沈設する際、第一ケーソン躯体1は最終的な目標深度D2まで沈設されている。第一実施形態の第1工程では、第一ケーソン躯体1の下端まで地盤が掘削、排土されていたが(
図3参照)、第二実施形態の第1工程では、第一ケーソン躯体1の下端まで掘削、排土せず、地盤を当該下端よりも上方に残している点が第一実施形態と異なる。
【0045】
次いで、第2工程が行われ、
図11に示すように、第二ケーソン躯体2および受圧部材3が第一ケーソン躯体1の内側に吊り降ろされる。この際、第二ケーソン躯体2は、第一ケーソン躯体1の下端よりも上方で地盤に着底する。その後、第二ケーソン躯体2が、例えば圧入設備を用いる等して地中に沈設される。この際、必要に応じて、第二ケーソン躯体2の内側地盤、および第一ケーソン躯体1と第二ケーソン躯体2の間の地盤が掘削、排土される(
図12参照)。その後、第3工程を行い、底版5を築造することで、
図2に示す地中構造物が完成する。
【0046】
この第二実施形態でも、刃口部付近での地盤の崩壊(円弧滑り等)を回避することができ、安定した沈設作業を行うことが可能となる。
図10では、第1工程で第一ケーソン躯体1を最終的な目標深度D2まで沈設しているが、第一実施形態と同様に、第一ケーソン躯体1の沈設を二段階に分け、その間に第2工程(第二ケーソン躯体2の沈設)を行うようにしてもよい。
【0047】
[第三実施形態]
次に、本発明に係るオープンケーソン工法の第三実施形態を
図13~
図18に基づいて説明する。
図13は、第三実施形態で説明するオープンケーソン工法で沈設された地中構造物を示す平面図であり、
図14は当該地中構造物のXIV線方向(
図13参照)の断面図である。この第三実施形態は、第一ケーソン躯体1として二重壁構造の躯体を使用する点、および第一ケーソン躯体1の内側に複数の第二ケーソン躯体2を配置した点が、第一実施形態および第二実施形態と異なる。
【0048】
第一ケーソン躯体1は、外側壁体11と、外側壁体11の内側に配置された内側壁体12とを備えた二重壁構造を有する。外側壁体11と内側壁体12は、結合部13により結合されている。外側壁体11および内側壁体12は上下を開口した中空の筒状、例えば円筒状、角筒状、あるいは断面小判型等の形状に形成される。
【0049】
外側壁体11は、その下端に形成された外側刃口部11aと、外側刃口部11aの上方に延びる外壁11bとを一体に有する。内側壁体12は、その下端に形成された内側刃口部12aと、内側刃口部12aの上方に延びる内壁12bとを一体に有する。外側壁体11、内側壁体12、および結合部13の構造としては、鉄筋あるいは鉄骨の何れか一方または双方を補強材として使用した有筋コンクリート構造が代表的であるが、外側壁体11、内側壁体12、および結合部13おうちの一部または全部を鋼板、鉄骨等の鋼材料で形成することもできる。
【0050】
結合部13は、外側壁体11と内側壁体12の間の空間14(以下、壁間空間と呼ぶ)内で、周方向の複数箇所に配置される。また、壁間空間14の高さ方向の複数箇所に結合部13が配置される(
図15参照)。この結合部13により、外側壁体11と内側壁体12が結合、一体化されている。結合部13は、高さ方向の複数箇所に配置する他、外側壁体11の高さ方向の全長にかけて延びる板状のものであってもよい。周方向で隣接する結合部13の間の壁間空間14は、側壁部2の上端および下端に開口し、側壁部2の上端から下端に至るまで上下方向で直線的に連続している。
【0051】
内側構造体としての第二ケーソン躯体2は、第一ケーソン躯体1の内側壁体12よりも内側の空間15(以下、単に内側空間15と呼ぶ)の一箇所もしくは複数箇所に配置される。本実施形態では、内側空間15の複数箇所(例えば4カ所)に第二ケーソン躯体2を配置した場合を例示している。第二ケーソン躯体2は単壁構造とされる。
【0052】
第三実施形態のオープンケーソン工法では、第一実施形態と同様に、第1工程、第2工程、および第3工程を経て地中構造物が築造される。各工程の主要部は第一形態および第二実施形態と共通するので、以下では、両実施形態とは異なる点を中心に各工程を説明する。
【0053】
図15に示すように、先ず第1工程が行われ、二重壁構造の第一ケーソン躯体1が、壁間空間14の地盤および内側壁体12の内側空間15の地盤を掘削、排土することにより地中に沈設される。第一ケーソン躯体1の沈設は、圧入あるいは自重による自然沈下で行われる。
【0054】
次に第2工程が行われ、複数の第二ケーソン躯体2が地中に沈設される。具体的には、第二ケーソン2を、
図16に示すように、次ロットの受圧部材3の継ぎ足しを繰り返しながら徐々に吊り降ろして、第二ケーソン躯体2の刃口部2aを第1ケーソン躯体1内側の地盤に着底させ、次いで、
図17に示すように、第二ケーソン躯体2を圧入力の付与等により沈設することで第2工程が行われる。これにより、各第二ケーソン躯体2の下部が地中に根入れされた状態となる。第二ケーソン躯体2の圧入に際しては、必要に応じて、第二ケーソン躯体2の内側の地盤が掘削、排土される。
【0055】
なお、第2工程において、複数の第二ケーソン躯体2を同時に吊り降ろして同時に着底させる他、複数の第二ケーソン躯体2を一つずつ順番に吊り降ろして着底させてもよい。また、複数の第二ケーソン躯体2を同時に沈設する他、複数の第二ケーソン躯体2を一つずつ順番に沈設してもよい。
【0056】
次いで第3工程が行われる。すなわち、
図18に示すように、第一ケーソン躯体1の底部にコンクリート(水中コンクリート)を打設し、第一ケーソン躯体1の底部開口を全て封口する底版5(
図14参照)を築造する。その後、壁間空間14および内側空間15を排水し、さらに受圧部材3を撤去することで、
図13および
図14に示すように、各第二ケーソン躯体2の下端が地中に根入れされると共に、各第二ケーソン躯体2の一部が底版5に埋め込まれた地中構造物が完成する。この地中構造物では、第一ケーソン躯体1(外側壁体11および内側壁体12を含む)、第二ケーソン躯体2、および底版5が一体構造物となる。
【0057】
以上に述べた第三実施形態では、第一ケーソン躯体1の内側に、複数の第二ケーソン躯体2を根入れさせ、各第二ケーソン躯体2の一部を底版5に埋め込んでいるので、底版5の支持スパンS1、S2、S3(
図14)が第一実施形態の支持スパンSi、So(
図2参照)に比べてさらに短くなる。そのため、底版5のさらなる薄肉化を図ることが可能となり、工費の削減を図ることができる。
【0058】
[第四実施形態]
次に第四実施形態を
図19~
図21に基づいて説明する。
第一実施形態~第三実施形態では、地中に根入れさせる内側構造体としてコンクリート造りのケーソン躯体(第二ケーソン躯体2)を用いているが、第四実施形態では、内側構造体として、杭あるいは板材の何れか一方または双方を用いている。
【0059】
例えば杭を使用する場合、
図19および
図20に示すように、第1工程で第一ケーソン躯体1を沈設し、内側空間15を掘削、排土した後、第2工程で内側構造体2となる杭20(例えば鋼管杭)を第一ケーソン躯体1の内側空間15の地盤に打ち込み、地中に根入れさせる。地盤が軟弱であるほど杭20の根入れ深さは深くする。以後は、第一実施形態~第三実施形態と同様に、第一ケーソン躯体1の底部にコンクリート(水中コンクリート)を打設し、その後、壁間空間14および内側空間15を排水することで、
図19および
図20に示す地中構造物が得られる。この地中構造物では、第一ケーソン躯体1、内側構造体2としての杭20、および底版5が一体構造物となる。
【0060】
底版5のコンクリートとの付着力を増大させるため、
図21に示すように、杭20の表面に多数の凹凸部21を設けておくのが好ましい。杭打ち工法としては既存の各種工法を採用することができる。杭としては鋼杭の他、コンクリート杭を使用することもできる。
【0061】
この第四実施形態では、第2工程において、杭20を内側空間15の地盤の複数箇所に配置するのが好ましい。例えば、
図19に示すように内側空間15の地盤に複数の杭20を円形に隙間なく並べて配置することが考えられる。このように杭20を隙間なく並べることで内側構造体2が概ね無端状の壁体構造となる。その後、杭20で囲まれた空間の地盤を、内側空間15の地盤(杭20で囲まれた空間よりも外側の地盤)よりも深く掘削排土する。これにより、底版5を築造した際に、杭で囲まれた内側の空間に水中コンクリートが充填されるため、
図20に示すように、部分的に底版5の厚さを増して底版5の強度を高めることができる。
【0062】
内側構造体2として、杭の他、地中に打ち込まれた鋼矢板等の板材を使用することもできる。板材を使用する場合、内側構造体2を一枚板状の連続壁の形態とする他、複数の板を繋ぎ合わせた形態、例えば板を上方から見て格子状に並べ、各板を結合一体化した形態とすることもできる。このように第四実施形態の内側構造体2は、必ずしも筒状に形成する必要がない。本実施形態では、第一ケーソン躯体1として二重壁構造のものを使用しているが、
図1~
図2に示す単壁構造の第一ケーソン躯体1を使用してもよい。
【0063】
第四実施形態のように、内側構造体2として杭や板材を用いることで、既存の杭打ち工法等により地中に根入れさせることができるため、大掛かりな圧入設備4を用いたケーソン躯体の沈設作業が不要となる。そのため、施工コストの低廉化を図ることができる。
【0064】
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態を
図22(a)(b)および
図23(a)(b)に基づいて説明する。第五実施形態では、第四実施形態で使用された二重壁構造の第一ケーソン躯体1において、外側壁体11の下端と内側壁体12の下端の高さ方向の位置を異ならせている。なお、第五実施形態では、第一実施形態~第四実施形態で述べた内側構造体2(第二ケーソン躯体)を省略することもできる。
【0065】
例えば軟弱地盤で施工する場合、
図22(a)(b)に示すように、内側壁体12の下端を外側壁体11の下端よりも高い位置に配置した第一ケーソン躯体1を使用するのが好ましい。
【0066】
軟弱地盤では、特に沈設初期は、躯体自重による沈下力が沈下抵抗よりも大きくなり易く、第一ケーソン躯体1が自然沈下傾向となる。第一ケーソン躯体1がある程度沈下すると、躯体自重と沈下抵抗がバランスし、自然沈下が止まる。自然沈下が止まった後は、主に壁間空間14の地盤の掘削排土を行うことで、第一ケーソン躯体1を徐々に自然沈下させることができる。この時、
図22(a)に示すように、掘削排土を行わない内側空間15は盛り土状態となるため、内側空間15の地盤と外側壁体11よりも外側の周囲地盤との間で土圧バランスをとることができる。従って、外側壁体11よりも外側の周辺地盤の土砂が壁間空間14に流入移動(破線矢印で示す)する量を減らし、壁間空間14での排土量が増大することを抑制することができる。また、外側壁体11が内側壁体12よりも深く根入れされることによっても周辺地盤の土砂の壁間空間14への流入移動を抑制することができる。
【0067】
沈設が進み、刃口部が中深度~大深度に到達すれば、壁間空間14の掘削排土を中止し、内側空間15の地盤の掘削排土に切り替える。これは、沈設深さが増すと、排土用バケットの吊り降ろし・吊り上げ距離が増すため、開口面積が小さく小容量バケットしか投入できない壁間空間14での掘削排土の作業効率が低下することによる。内側空間15での掘削排土により沈下が進行することで、
図22(b)に示すように、壁間空間14が盛り土状態となるため、外側壁体11の外側の周囲地盤から壁間空間14への土砂の流入(破線矢印で示す)が抑制される。その一方で、内側空間15を掘削排土することで、土圧差により壁間空間14の土砂が内側壁体12の下端を回り込んで少しずつ内側空間15に流入移動するため(実線矢印で示す)、壁間空間14で掘削排土を行わず、内側空間15での掘削排土だけで第一ケーソン躯体1を沈下させることが可能となる。内側空間15では、開口面積が大きく大容量バケットの吊り降ろし・吊り上げが可能であるため、大深度まで到達した際にも排土効率は良好なものとなる。そのため、工期短縮を図ることができる。
【0068】
なお、内側壁体11の上端の位置を低くした第一ケーソン躯体1を用いれば(例えば内側壁体11の上端を
図20に示す内側構造体2の上端と同じ高さ程度にする)、壁間空間14から小容量バケットで掬い上げた土砂を当該バケットの水平方向移動により内側空間15に排出し、これと並行して内側空間15の土砂を、大容量バケッドを用いて排土することで排土効率を高めることもできる。従って、この場合は中深度~大深度に到達後も壁間空間14の掘削排土を継続することができる。
【0069】
一方、硬質地盤で施工する際には、
図23(a)~(d)に示すように、外側壁体11の下端が内側壁体12の下端よりも高い位置にある第一ケーソン躯体1を使用するのが好ましい。
【0070】
硬質地盤では、沈下抵抗が大きくなるため、刃口部直下の地盤を全周にわたって掘削排土する(「刃口落とし」と呼ばれる)ことで、ケーソン躯体を沈下させる必要がある。従前のように、単壁構造のケーソン躯体を沈設する場合、刃口部直下の掘削量が多くなるため、全周の掘削を進める間に先に掘削した領域で周辺地盤からの土砂の流入移動が生じ、刃口部直下の空隙の形態が変わり易い。従って、刃口部直下を全周で均一な深さに掘削することは困難となり、周方向で沈下量にバラツキを生じてケーソン躯体が傾いて沈下(不等沈下)する場合が多くなる。
【0071】
これに対し、本実施形態では、外側壁体11の下端が内側壁体12の下端よりも高い位置にある第一ケーソン躯体1を使用して、第1工程において、外側刃口部11aの直下の掘削排土と、内側刃口部12aの直下の掘削排土とを交互に行うこととしている。
【0072】
具体的には、先ず、
図23(a)~(b)に示すように、壁間空間14の掘削を行い、次いで、
図23(c)に示すように、内側空間15の掘削排土を行って内側刃口部12aの直下を掘削排土(刃口落とし)する。この際、外側刃口部11aの直下の地盤は掘削せずに僅かに残す。これにより第一ケーソン躯体1が外側壁体11の直下に残った僅かな地盤で支持され、内側壁体12の下端部とその直下の地盤との間に空隙22が設けられる。空隙22の高さhは全周にわたって極力均一にする。
【0073】
次いで、外側刃口部11aの直下に残った地盤を掘削排土すれば、
図23(d)に示すように、内側壁体12の下端が地盤に突き当たるまで第一ケーソン躯体1が沈下する。この場合、第一ケーソン躯体1の沈下量は概ね空隙22の高さh分となる。以後、この作業を繰り返すことで、第一ケーソン躯体1を目標深度まで沈設することができる。
【0074】
以上の手順であれば、外側刃口部11aで刃口落とし(
図23(c)~(d))を行う際の掘削量が極僅かとなるため、周辺地盤から壁間空間14に流入移動する土砂の量が減る。そのため、空隙22の高さhを全周で均一高さに維持することができ、第一ケーソン躯体1の全周を空隙22の高さh分だけ均等に沈下させて不等沈下を抑制することが可能となる。また、周辺地盤の土砂が壁間空間14に流入し難くなるので、周辺地盤に与える影響を抑えることができる。
【0075】
次に、本発明の第六実施形態を説明する。
図24(a)に示すような単壁構造の第一ケーソン躯体1’を大口径とし、かつ大深度まで沈設しようとすると、強度確保のため、壁体部1b’の壁厚tを大きくする必要がある。しかしながら、壁体部1b’の壁厚tが増すほど、刃口部1a’直下の土砂を掘削し難くなり、ケーソンを沈下させることが困難となる。これに対し、
図24(b)に示すように、二重壁構造の第一ケーソン躯体1を用いれば、壁間空間14の地盤を直接掘削することができるため、第一ケーソン躯体1’の大深度への沈設が容易なものとなる。
【0076】
第六実施形態では、第一ケーソン躯体1の沈設後に壁間空間14にコンクリートが充填される。これにより、第1ケーソン躯体1の壁厚を単壁ケーソンの壁厚tと同等にすることができる。そのため、地下構造物の強度を十分に確保することが可能となる。また、仮に第一ケーソン躯体1の沈設中に外側壁体11あるいは内側壁体12にクラックが発生していても、壁間空間14にコンクリートを打設することでクラックを補修し、第一ケーソン躯体1の強度を確保することができる。そのため、クラックの補修作業性が向上する。
【符号の説明】
【0077】
1 外側構造体(第一ケーソン躯体)
1a 刃口部
2 内側構造材(第二ケーソン躯体)
2a 刃口部
3 受圧部材
5 底版
11 外側壁体
11a 刃口部
12 内側壁体
12a 刃口部