(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006238
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】アンテナ装置及びそれを用いたレクテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 7/00 20060101AFI20240110BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20240110BHJP
H02J 50/27 20160101ALI20240110BHJP
H01Q 21/08 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
H01Q7/00
H01Q1/38
H02J50/27
H01Q21/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106945
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】野口 啓介
(72)【発明者】
【氏名】伊東 健治
(72)【発明者】
【氏名】坂井 尚貴
【テーマコード(参考)】
5J021
5J046
【Fターム(参考)】
5J021AA09
5J021AB04
5J021JA07
5J046AA03
5J046AB03
5J046AB11
(57)【要約】
【課題】レクテナの整流効率の向上と小型化及びアレイ化するのに有効なアンテナ装置及びそれを用いたレクテナ装置の提供を目的とする。
【解決手段】ループ状素子と、前記ループ状素子に対して上下方向に所定のギャップを介して配置した線状素子とから構成されることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループ状素子と、前記ループ状素子に対して上下方向に所定のギャップを介して配置した線状素子とから構成されることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記アンテナ装置を用いてループ状素子に整流回路を有していることを特徴とするレクテナ装置。
【請求項3】
基板上に前記レクテナ装置を複数配置し、アレイ化を図ったことを特徴とするアレイ化レクテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レクテナの整流効率の向上を図るのに適した高インピーダンスのアンテナ装置及びそれを用いたレクテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レクテナは、高周波の電波をアンテナで受信し、整流回路にて直流電力に変換する機能を有するものをいう。
近年、無人飛行機(UAV),スマートフォン等の移動機器や移動端末等に無線で電力供給できる無線電力伝送が普及しつつある。
その場合には、小型で高効率であることが要求される。
レクテナの整流効率を高めるためには、アンテナの高インピーダンス化が必要とされている。
また、移動機器や移動端末に必要な電力に対応した高出力を得るためにはアンテナ装置のアレイ化も要求されている。
【0003】
非特許文献1のFigure4には、RFID(Radio Frequency Identification)の分野ではあるが、ワイヤ状の素子をループ状の素子に寄生素子として結合した技術が開示されている。
しかし、この技術はループ状素子とワイヤ状素子とを同一平面上に配置したものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Gaetano Marrocco, The Art of UHF RFID Antenna Design:Impedance-Matchingand Size-Reduction Techniques, 68 IEEE Antennas and Propagation Magazine, Vol. 50, No. 1, February 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、レクテナの整流効率の向上と小型化及びアレイ化するのに有効なアンテナ装置及びそれを用いたレクテナ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るアンテナ装置は、ループ状素子と、前記ループ状素子に対して上下方向に所定のギャップを介して配置した線状素子とから構成されることを特徴とする。
ここで「上下方向に所定のギャップを介して」と表現したのは、非特許文献1に開示する同一平面上に配置したものを除く趣旨であって、相互に一部が重なるように配置されていれば文言上の上下方向に限定するものではない。
【0007】
アンテナをこのように構成すると、例えば線状素子を約0.5波長の放射素子として直列共振させ、ループ状素子を励振素子として並列共振させることができるので、28GHZ等の準ミリ波を想定すると小型化、オンチップ化が可能になる。
また、本発明においては線状素子側からループ状素子に向けて透視した場合に線状素子がループ状素子の外形部又はそれより内側に線状素子が位置している。
【0008】
詳細は後述するがループ状素子単独では高インピーダンスであっても、28GHz帯において充分なアンテナ特性が得られないのに対してループ状素子に線状素子を寄生素子として結合させると、高インピーダンスにて広帯域化を図ることができる。
【0009】
本発明においてループ状素子とは全体としてループ状に形成されていればよく、四角形、多角形等の角形状、円形状、楕円形状等が例として挙げられる。
また、本発明において線状素子とはループ状素子に所定のギャップを介して寄生素子として作用するものであり直線状のみならず、ジグザグ形状、蛇行形状等のいわゆるメアンダ形状や両端部が開放されているスプリットリング形状でもよい。
また、寄生素子としてループ状素子に結合されるものであればリング状であってもよい。
【0010】
本発明においてループ状素子と線状素子との間のギャップ代は、ギャップが大きい程インピーダンスが上昇し、ループ素子単独の特性に近づくので、小型化を図りつつ高インピーダンスで広帯域化を図るには、素子の大きさ等によっても異なるものの400μm以下が好ましく、さらには10~400μm程度の範囲である。
【0011】
本発明は上記アンテナ装置において、ループ状素子に整流回路を接続することで、小型で高効率のレクテナ装置になる。
また、基板上に前記レクテナ装置を複数配置し、アレイ化を図ることもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るアンテナは、高インピーダンス化を図るのに有効で、マイクロ波・ミリ波帯において広帯域な特性を有する。
このようなアンテナを用いることで小型で整流効率の高いレクテナ装置となる。
さらには小型のレクテナ装置であることでアレイ化を図り、高出力のレクテナ装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るアンテナ装置の構造例を示し、(a)は斜視図、(b)は平面視、(c)は側面視を示す。
【
図2】(a)はループ状素子に線状素子を結合させた状態のスミスチャート、(b)は参考にループ状素子単独のスミスチャートを示す。
【
図3】インピーダンス特性を示し、(a)はループ状素子(loop)に、線状素子(Wire)を結合させた例、(b)は参考にループ状素子単独の場合を示す。
【
図4】ループ状素子と線状素子との間のギャップ代を100μmから50μm毎に400μmまで変化させた際の放射効率変化を示す。
【
図10】電波の指向性を有するアレイ化レクテナ装置の例を示す。
【
図11】本発明に係るレクテナ装置の応用例として、(a),(b),(c)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に本発明に係るアンテナ装置の構造例を示す。
(a)は斜視図、(b)は平面視、(c)は側面視をそれぞれ示す。
基板1の表面にループ状素子10を配設し、その上部に所定のギャップ代Gを設けて、線状素子20を配設してある。
ループ状素子10には給電部11を有し、これに整流回路を接続するとレクテナ装置となる。
図1に示した実施例は、ループ状素子10の一辺の上に線状素子20が重なるように配置されているが、ループ状素子の外形から内側に位置していればよい。
【0015】
基板1の誘電体GaAs,サイズ1.7×1.8×0.2mm,εr=12.9,tanδ=0.00028
ループ状素子10の大きさ外形が0.6×0.6mm,導体幅30μm,材質Au
線状素子20の長さ2.6mm,線幅0.55mm、材質:Au
からなるアンテナ装置を用いて評価した結果を以下、説明する。
図2(a)にスミスチャートを示し、(b)に参考としてループ状素子単独の場合を示す。
図3(a)インピーダンス特性、(b)に参考としてループ状素子単独の場合を示す。
図2(a)には28GH
Z付近にキンクカープが出現し、
図3(a)からはR=約900Ω,28GH
Z付近で広帯域を示すことが分かる。
図4にギャップ代(G)の変化を示し、G:400μm以上になるとループ素子単独の特性に近づくのでG:100~400μmがよいことが分かる。
また、同図ではGが小さな値となるほどループ素子と線上素子の結合が密となり、アンテナの放射効率が向上する。
図4ではG:100μmが最小値であるが、計算上10μmであってもこの傾向は続き、より高効率となる。
これらの結果から線状素子の長さ0.5波長レベルにて、ループ状素子の長さを1mm以下に小型化できる。
【0016】
図5に本発明に係るレクテナ装置(実施例1)の例を示す。
本実施例は、誘電体材料によるマザーボードの上に線状素子を形成し、GaAs、GaNあるいはSiなどの半導体基板の表面にループ状素子と整流回路を形成し、半導体基板をマザーボードと接合し、ギャップGを形成するための複数の突起(バンプ)を介して線状素子の上部に接合した例になっている。
整流回路やループ状素子が形成された半導体表面が線状素子と向き合うよう接合されている。
このように本発明に係る高インピーダンスのアンテナを用いた小型のレクテナ装置が得られる。
【0017】
レクテナ装置の構造としては、実際に使用する用途に合せて、いろいろな形態に設計することができる。
図5に示した実施例1の他に、例えば
図6には実施例2としてループ状の素子を半導体基板の上面に上向きになるように実装し、この半導体基板の下面でマザーボードの線状素子と結合した例を示す。
図7には実施例3として、半導体基板に設けたバンプとマザーボードとの間に誘電体材料からなるアンダーフィルを用いて、接合強度を補強してもよい。
また、
図8には実施例4として、マザーボードの上面にループ状素子を形成し、このマザーボードの下面に線状素子を配置した例を示す。
【0018】
図9はマザーボードの上に複数の線状素子を配置し、それぞれに対応させてループ状素子を配置することでアレイ化を図った例を示す。
図9では16ヶのレクテナをアレイ化した例になっているが数に制限はない。
【0019】
図10はレクテナのアレイ化を図る際に、線状素子を
図11(a)に示したメアンダ形状素子にすることで、電波の指向性を持たせ、アンテナを高利得化した例を示す。
本発明においては、
図11(b)に示すような線状素子をスプリットリング形状素子や、(c)に示すような複数のループ形状素子を配置することもできる。
なお、
図11では説明上、ループ状素子と線状素子を平面方向に少しずらして表現してあるが、実際には線状素子とループ状素子とは平面視の透視にて一部が重なっている。
【符号の説明】
【0020】
1 基板
10 ループ状素子
11 給電部
20 線状素子