(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062382
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】走行車両用のトランスミッション
(51)【国際特許分類】
F16H 47/04 20060101AFI20240430BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20240430BHJP
B60K 17/06 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
F16H47/04 A
B60K17/04 D
B60K17/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023141657
(22)【出願日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2022169971
(32)【優先日】2022-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山岸 憲幸
【テーマコード(参考)】
3D039
【Fターム(参考)】
3D039AA03
3D039AB22
3D039AC39
3D039AC40
3D039AC74
3D039AD43
3D039AD44
(57)【要約】
【課題】変速系歯車機構と旋回系歯車機構とをコンパクトに配置してミッションケースの大型化を抑制することができるクローラ走行車用のトランスミッションを提供する。
【解決手段】直進用HST11の直進ポンプ31及び直進モータ32と、旋回用HST12の旋回ポンプ41及び旋回モータ42と、遊星ギヤ機構13L・13Rと、を備え、直進モータ32の動力を直進系入力部に伝達する直進ギヤ機構17と、旋回モータ42の動力を旋回系入力部に伝達する旋回ギヤ機構18と、をミッションケース16に内設させるクローラ走行車用のトランスミッション1において、直進ギヤ機構17は、複数の直進用動力伝達軸54・57を備え、旋回ギヤ機構18は複数の旋回用動力伝達軸92・96を備え、直進用動力伝達軸54・57の内の少なくとも一つと旋前記回用動力伝達軸92・96の少なくとも一つとが同一軸心上であって、かつ、軸長さ方向に並置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直進用駆動装置と、
旋回用駆動装置と、
左右の駆動輪に動力を分配して出力する遊星ギヤ機構と、を備え、
前記直進用駆動装置の動力を前記遊星ギヤ機構の直進系入力部に伝達する直進ギヤ機構と、
前記旋回用駆動装置の動力を前記遊星ギヤ機構の旋回系入力部に伝達する旋回ギヤ機構と、
をミッションケースに内設させる走行車両用のトランスミッションにおいて、
前記直進ギヤ機構は、複数の直進用動力伝達軸を備え、
前記旋回ギヤ機構は複数の旋回用動力伝達軸を備え、
前記直進用動力伝達軸の内の少なくとも一つと前記旋回用動力伝達軸の少なくとも一つとが同一軸心上であって、
かつ、軸長さ方向に並置されていることを特徴とする走行車両用のトランスミッション。
【請求項2】
前記直進用駆動装置は、
第一油圧無段変速装置を構成する直進ポンプ及び直進モータであり、
前記旋回用駆動装置は、
第二油圧無段変速装置を構成する旋回ポンプ及び旋回モータである請求項1に記載の走行車両用のトランスミッション。
【請求項3】
前記複数の直進用動力伝達軸は少なくとも、前記直進モータから動力が伝達される直進入力軸と、前記直進入力軸に対して平行し、減速比の異なる複数の副変速ギヤ列を介して連結自在な直進出力軸であり、
前記複数の旋回動力伝達軸は少なくとも、前記旋回モータから動力が伝達される旋回入力軸と、前記旋回入力軸に対して平行し、伝動ギヤ列を介して伝達される旋回出力軸であり、
前記旋回出力軸と、前記直進入力軸とが同一軸心上であって軸長さ方向に重なるように配置され、
前記旋回入力軸と、前記直進出力軸とが同一軸心上であって軸長さ方向に重なるように配置される、
ことを特徴とする請求項2に記載の走行車両用のトランスミッション。
【請求項4】
直進用動力を供給する直進電動モータと、
旋回用動力を供給する旋回電動モータと、
左右の駆動輪に動力を分配して出力する遊星ギヤ機構と、
前記直進電動モータの動力を前記遊星ギヤ機構の直進系入力部に伝達する直進ギヤ機構と、
前記旋回電動モータの動力を前記遊星ギヤ機構の旋回系入力部に伝達する旋回ギヤ機構と、
をミッションケースに内設させる走行車両用のトランスミッションにおいて、
前記直進ギヤ機構は、複数の直進用動力伝達軸を備え、
前記旋回ギヤ機構は、複数の旋回用動力伝達軸を備え、
前記直進用動力伝達軸の内の少なくとも一つと前記旋回用動力伝達軸の少なくとも一つとが同一軸心上であって、
かつ、軸長さ方向に並置されていることを特徴とする走行車両用のトランスミッション。
【請求項5】
前記直進電動モータと前記直進ギヤ機構との間に直進用遊星歯車機構を介在させて、
前記旋回電動モータと前記旋回ギヤ機構との間に旋回用遊星歯車機構を介在させたことを特徴とする請求項4に記載の走行車両用のトランスミッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車両用のトランスミッションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圃場の穀稈を連続的に刈り取って脱穀するコンバインまたは耕耘トラクターなどの走行車両は公知となっている。上記走行車両用のトランスミッションにおいては、左右走行クローラを同一方向に駆動する油圧無段変速構造の直進ポンプおよびモータと、左右走行クローラを逆方向に駆動する油圧無段変速構造の旋回ポンプおよびモータを、遊星ギヤ機構を介して走行クローラに駆動力を伝達するミッションケースに取り付けるとともに、操向ハンドルおよび変速レバー操作によって直進および旋回の各ポンプ及びモータ出力を制御し、左右走行クローラの両方に駆動力を伝えながら前後進および旋回走行させる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、直進ポンプおよびモータから遊星ギヤ機構へと動力を伝達する動力伝達軸およびギヤからなる動力伝達機構を格納するミッションケースにおいては、変速モータから遊星ギヤ機構の直進系入力部への回転速度を調整する副変速機構などを有する直進系歯車機構と、操向モータから遊星ギヤ機構の旋回系入力部へ動力を伝達する旋回系歯車機構とを、個別に収容しており、ミッションケースは大型化する傾向があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、直進系歯車機構と旋回系歯車機構とをコンパクトに配置してミッションケースの大型化を抑制することができる走行車両用のトランスミッションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
すなわち、本願に開示する走行車両用のトランスミッションは、直進用駆動装置と、
旋回用駆動装置と、
左右の駆動輪に動力を分配して出力する遊星ギヤ機構と、を備え、
前記直進用駆動装置の動力を前記遊星ギヤ機構の直進系入力部に伝達する直進ギヤ機構と、
前記旋回用駆動装置の動力を前記遊星ギヤ機構の旋回系入力部に伝達する旋回ギヤ機構と、
をミッションケースに内設させる走行車両用のトランスミッションにおいて、
前記直進ギヤ機構は、複数の直進用動力伝達軸を備え、
前記旋回ギヤ機構は複数の旋回用動力伝達軸を備え、
前記直進用動力伝達軸の内の少なくとも一つと前記旋回用動力伝達軸の少なくとも一つとが同一軸心上であって、
かつ、軸長さ方向に並置されているものである。
【0008】
本願に開示する走行車両用のトランスミッションにおいて、前記直進用駆動装置は、
第一油圧無段変速装置を構成する直進ポンプ及び直進モータであり、
前記旋回用駆動装置は、
第二油圧無段変速装置を構成する旋回ポンプ及び旋回モータであることが好ましい。
【0009】
本願に開示する走行車両用のトランスミッションにおいて、前記複数の直進用動力伝達軸は少なくとも、前記直進モータから動力が伝達される直進入力軸と、前記直進入力軸に対して平行し、減速比の異なる複数の副変速ギヤ列を介して連結自在な直進出力軸であり、
前記複数の旋回動力伝達軸は少なくとも、前記旋回モータから動力が伝達される旋回入力軸と、前記旋回入力軸に対して平行し、伝動ギヤ列を介して伝達される旋回出力軸であり、
前記旋回出力軸と、前記直進入力軸とが同一軸心上であって軸長さ方向に重なるように配置され、
前記旋回入力軸と、前記直進出力軸とが同一軸心上であって軸長さ方向に重なるように配置されることが好ましい。
【0010】
また、本願に開示する走行車両用のトランスミッションは、直進用動力を供給する直進電動モータと、
旋回用動力を供給する旋回電動モータと、
左右の駆動輪に動力を分配して出力する遊星ギヤ機構と、
前記直進電動モータの動力を前記遊星ギヤ機構の直進系入力部に伝達する直進ギヤ機構と、
前記旋回電動モータの動力を前記遊星ギヤ機構の旋回系入力部に伝達する旋回ギヤ機構と、
をミッションケースに内設させる走行車両用のトランスミッションにおいて、
前記直進ギヤ機構は、複数の直進用動力伝達軸を備え、
前記旋回ギヤ機構は、複数の旋回用動力伝達軸を備え、
前記直進用動力伝達軸の内の少なくとも一つと前記旋回用動力伝達軸の少なくとも一つとが同一軸心上であって、
かつ、軸長さ方向に並置されているものである。
【0011】
本願に開示する走行車両用のトランスミッションにおいて、前記直進電動モータと前記直進ギヤ機構との間に直進用遊星歯車機構を介在させて、
前記旋回電動モータと前記旋回ギヤ機構との間に旋回用遊星歯車機構を介在させたことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、変速系歯車機構と旋回系歯車機構とをコンパクトに配置してミッションケースの大型化を抑制することができるクローラ走行車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る走行車両用のトランスミッションを示す正面図。
【
図2】同じくトランスミッションを示す平面一部断面図。
【
図3】同じくトランスミッションを示す動力伝達図。
【
図4】本発明の第二の実施形態に係るトランスミッションを示す動力伝達図。
【
図5】本発明の第三の実施形態に係るトランスミッションを示す動力伝達図。
【
図6】同じく本発明の第三の実施形態に係るトランスミッションを示す斜視図。
【
図7】本発明の第四の実施形態に係るトランスミッションを示す動力伝達図。
【
図8】本発明の一実施形態に係る走行車両用のトランスミッションを用いたクローラ走行車の構成を示す概略図。
【
図9】本発明の一実施形態に係る走行車両用のトランスミッションを用いた四輪作業車の構成を示す概略図。
【
図10】本発明の一実施形態に係る走行車両用のトランスミッションを用いた四輪運搬車の構成を示す概略図。
【
図11】本発明の一実施形態に係る走行車両用のトランスミッションを用いた三輪運搬車の構成を示す概略図。
【
図12】本発明の一実施形態に係る走行車両用のトランスミッションを用いたアティキュレートタイプの四輪運搬車の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第一の実施形態)
本発明の一実施形態に係る走行車両用のトランスミッションについて説明する。走行車両は、
図1および
図2に示すように、エンジンEから、走行クローラ駆動用のスプロケット15L・15Rに動力伝達するトランスミッション1は、第1油圧無段変速装置である直進用HST11と、第2油圧無段変速装置である旋回用HST12と、を備える。また、トランスミッション1は、ミッションケース16内に、直進用HST11の動力を伝達する直進ギヤ機構17と、旋回用HST12の動力を伝達する旋回ギヤ機構18と、左右のスプロケット軸14L・14Rに動力分配する遊星ギヤ機構13L・13Rとを設ける。15L・15Rは、スプロケット軸14L・14Rの軸外端に配したスプロケットであり、車両の駆動輪である図外のクローラにそれぞれ連動連結される。
【0015】
図1に示すように、直進用HST11を構成する可変容量型の直進ポンプ31および固定容量型の直進モータ32は図外の閉回路を介して流体接続され、オペレータが図外の、レバーやペダル等で構成される主変速操作具によって直進ポンプ31の容量を変更することにより直進モータ32の停止および正逆転の出力制御を行うものである。
【0016】
また、
図1に示すように、旋回用HST12も同様に、可変容量型の旋回ポンプ41および固定容量型の旋回モータ42は図外の閉回路を介して流体接続され、オペレータが図外の、ステアリングハンドル等で構成される旋回操作具によって旋回ポンプ41の容量を変更することにより旋回モータ42の停止および正逆転の出力制御を行うものである。
【0017】
図1に示すように、直進用HST11および旋回用HST12は、ミッションケース16の一側面において前後方向に沿って並置されている。また、直進用HST11において、直進ポンプ31が上側に、直進モータ32が下側に配置されており、旋回用HST12において、旋回ポンプ41が上側に、旋回モータ42が下側に配置されている。直進ポンプ軸31aを駆動するポンプギヤ31bと、旋回ポンプ軸41aを駆動するポンプギヤ41bとは共通のエンジンギヤEaに対して噛み合っている。
【0018】
図2および
図3に示すように、トランスミッション1は、ミッションケース16内に格納される。直進ギヤ機構17は、副変速装置51と、駐車ブレーキ52と、を有する。副変速装置51は、直進モータ32の直進モータ軸32aに設けられた直進駆動ギヤ32bと噛合する入力用ギヤ53を固定した直進入力軸である直進用第1軸54と、該直進用第1軸54と平行な直進出力軸である直進用第2軸57と、両軸間を連結自在とする副変速ギヤ列を構成する変速ギヤ機構55と、を備える。
【0019】
直進用第1軸54は、直進入力軸であり、変速ギヤ機構55を構成する径の異なる複数の駆動ギヤ55a・56aが相対回転不能に固定支持されている。
【0020】
また、直進用第2軸57は、直進出力軸であり、副変速ギヤ列を構成する変速ギヤ機構56を構成する、駆動ギヤ55a・56aの各々と常時噛合する被駆動ギヤ55b・56bが相対回転可能に嵌設されている。さらに、直進用第2軸57にはクラッチスライダ60を相対回転不能でかつ軸方向に摺動自在に備え前記被駆動ギヤ55b・56bのいずれかと選択的に係合することにより、直進用第1軸54からの回転動力を変速して直進用第2軸57へと伝達することが可能となっている。クラッチスライダ60は、図示せぬ変速操作レバーと連動連係しており、オペレータの操作により変速ギヤ機構55の切り替えが行われる。なお、本実施例において変速ギヤ機構は2速式としたが車両の仕様に応じて3速切替式に構成することもできる。
【0021】
直進用第2軸57の軸長方向の略中間位置には、出力用の大径ギヤ61が相対回転不能に固定支持されている。変速ギヤ機構56は大径ギヤ61の一方側に配置される。大径ギヤ61はサンギヤ軸62の入力ギヤ63に噛合する。サンギヤ軸62は左右の遊星ギヤ機構13L・13Rの直進系入力部を構成し、後述する旋回系入力部が駆動されないときは、直進用HST11の動力を左右走行クローラの駆動用のスプロケット15L・15Rに伝えて前進または後進駆動する。
【0022】
左右の遊星ギヤ機構13L・13Rは、サンギヤ軸62の両端部に形成するサンギヤ81・81と、出力軸19L・19Rに遊嵌支持させるリングギヤ82・82と、出力軸19L・19Rに対し相対回転不能に固定させるキャリヤ83・83と、各々のサンギヤ81とリングギヤ82の内側ギヤ82aに噛合させる遊星ギヤ84・84を備えるとともに、サンギヤ軸62の両端部をキャリヤ83・83に回転自在に支持させる。また、遊星ギヤ84・84は、キャリヤ83・83に固定されたピニオン軸85に遊嵌支持させる。
【0023】
直進用第1軸54からの直進用回転動力は、サンギヤ軸62から左右の遊星ギヤ機構13L・13Rのサンギヤ81に伝達され、遊星ギヤ84を回転(自転)させる。
このとき、旋回ポンプ41が中立位置をとり旋回モータ42が停止していればリングギヤ82・82は回転不能となるため遊星ギヤ84・84は公転し左右のキャリヤ83・83が同一方向に回転することとなり、直進用回転動力は一対の出力軸19L・19Rを同一回転速度且つ同一回転方向で駆動して、スプロケット軸14L・14Rを駆動する。
【0024】
旋回用HST12の旋回モータ軸42aから旋回駆動ギヤ42bを経て出力される旋回用回転動力は旋回ギヤ機構18に伝達される。
旋回ギヤ機構18は、互いに平行な旋回入力軸である旋回用第1軸92と旋回出力軸である旋回用第2軸96とを備える。旋回用第1軸92は、旋回モータ軸42aから動力が伝達される、中空軸形状の旋回入力軸であり、前記大径ギヤ61の他方側にある直進用第2軸57と同一軸心上に被嵌されるように支持されている。このように構成することにより、旋回用第1軸92を配置するスペースが不要とされる。また、ミッションケース16には旋回用第1軸92を支持するための軸受も不要とされる。したがってミッションケース16のレイアウトに余裕が生まれ小型化を図ることができる。
【0025】
前記旋回用第1軸92の他端側には入力ギヤ93が、一端側には出力ギヤ95がそれぞれ一体形成されている。該入力ギヤ93は前記旋回駆動ギヤ42bに噛合いし、出力ギヤ95は、旋回用第2軸96の第2軸側入力ギヤ97に噛合している。
【0026】
旋回用第2軸96は、旋回用第1軸92からの動力を左右の遊星ギヤ機構13L・13Rに分配する旋回出力軸であり、直進用第1軸54と同一軸心上であって軸長さ方向に重なるように配置されている。このように構成することにより、旋回用第2軸96を配置するスペースが縮小される。したがって、ミッションケース16のレイアウトに余裕が生まれ小型化を図ることができる。
【0027】
また、旋回用第2軸96には、左右の遊星ギヤ機構13L・13Rへ動力を伝達するための第1出力ギヤ98および第2出力ギヤ99が、大径ギヤ61を挟むように設けられている。第1出力ギヤ98は、アイドルギヤ100を介して左側のリングギヤ82の外側ギヤ82bと噛合する。また、第2出力ギヤ99は、右側のリングギヤ82の外側ギヤ82bと直接噛み合う。
【0028】
なお、アイドルギヤ100は、大径ギヤ61の一方側に隣接して、直進用第2軸57と同一軸心上に重なるように遊嵌支持されている。このように構成することにより、アイドルギヤ100を配置するスペースが縮小される。したがってミッションケース16のレイアウトに余裕が生まれ小型化を図ることができる。
【0029】
旋回用HST12の旋回モータ軸42aから出力される旋回用回転動力は、旋回駆動ギヤ42bから入力ギヤ93より、旋回用第1軸92に伝達される。旋回用第1軸92から出力される旋回用回転動力は、第1軸側出力ギヤ95と噛合する第2軸側入力ギヤ97へ伝達され、旋回用第2軸96へ伝達される。
【0030】
旋回用第2軸96から出力される旋回用回転動力は、左右に分配される。左側の旋回用回転動力は、第1出力ギヤ98、アイドルギヤ100、およびリングギヤ82の外側ギヤ82bによって、左側の遊星ギヤ機構13Lに正転方向に伝達される。一方、右側の旋回用回転動力は、第2出力ギヤ99からリングギヤ82の外側ギヤ82bに右側の遊星ギヤ機構13Rに直接に伝達される。
【0031】
したがって、旋回用HST12の旋回モータ軸42aから出力される旋回用回転動力は、一対の遊星ギヤ機構13L・13Rのリングギヤ82・82を、同一回転速度ではあるが、回転方向については互いに対して反対とされた状態で駆動する。
【0032】
直進状態において、図示せぬ操向操作具によって旋回操作がなされたときは、キャリヤ83に連動するリングギヤ82が、同方向に回転している側の該キャリヤ83を増速させると共に、逆方向に回転している側のキャリヤ83を減速させる。操向操作具の操作量を大きくして旋回用HST12の出力回転を上げていくにつれて、両キャリヤ83・83(出力軸19L・19R)の差動回転は大きくなり車両の旋回半径を小さくすることができる。
【0033】
以上のように本発明に係るクローラ走行車用のトランスミッション1は、第1油圧無段変速装置である直進用HST11の直進ポンプ31及び直進モータ32と、第2油圧無段変速装置である旋回用HST12の旋回ポンプ41及び旋回モータ42と、左右の駆動輪に動力を分配して出力する遊星ギヤ機構13L・13Rと、を備え、直進モータ32の動力を遊星ギヤ機構13L・13Rの直進系入力部に伝達する直進ギヤ機構17と、旋回モータ42の動力を遊星ギヤ機構13L・13Rの旋回系入力部に伝達する旋回ギヤ機構18と、をミッションケース16に内設させるクローラ走行車用のトランスミッション1において、直進ギヤ機構17は、複数の直進用動力伝達軸54・57を備え、旋回ギヤ機構18は複数の旋回用動力伝達軸92・96を備え、直進用動力伝達軸54・57の内の少なくとも一つと旋前記回用動力伝達軸92・96の少なくとも一つとが同一軸心上であって、かつ、軸長さ方向に並置されているものである。
このように構成することにより、旋回用第1軸92および旋回用第2軸96を配置するスペースが縮小される。したがってミッションケース16のレイアウトに余裕が生まれ小型化を図ることができる。
【0034】
また、複数の直進用動力伝達軸は少なくとも、直進モータ32から動力が伝達される直進入力軸である直進用第1軸54と、前記直進入力軸である直進用第1軸54に対して平行し、減速比の異なる複数の副変速ギヤ列55・56を介して連結自在な直進出力軸である直進用第2軸57であり、
前記複数の旋回動力伝達軸は少なくとも、前記旋回モータ42から動力が伝達される旋回入力軸である旋回用第1軸92と、旋回入力軸である旋回用第1軸92に対して平行し、伝動ギヤ列95・97を介して伝達される旋回出力軸である旋回用第2軸96であり、
前記旋回出力軸である旋回用第2軸96と、直進入力軸である直進用第1軸54とが同一軸心上であって軸長さ方向に重なるように配置され、
前記旋回入力軸である旋回用第1軸92と、直進出力軸である直進用第2軸57とが同一軸心上であって軸長さ方向に重なるように配置されるものである。
このように構成することにより、旋回用第1軸92および旋回用第2軸96を個別に配置する場合と比べて、ミッションケース16のレイアウトに余裕が生まれ小型化を図ることができる。
【0035】
(第二の実施形態)
また、第二の実施形態にかかる走行車両用のトランスミッションについて、
図4を用いて説明する。
走行車両は、
図4に示すように、直進用動力を供給する直進電動モータ111と、旋回用動力を供給する旋回電動モータ112と、を備える。また、トランスミッション101は、ミッションケース116内に、直進電動モータ111の動力を伝達する直進ギヤ機構117と、旋回電動モータ112の動力を伝達する旋回ギヤ機構118と、左右の駆動軸114L・114Rに動力分配する遊星ギヤ機構113L・113Rとを設ける。115L・115Rは、駆動軸114L・114Rの軸外端に配した駆動輪であり、車両の駆動装置にそれぞれ連動連結される。
図4に示すように、トランスミッション101は、ミッションケース116内に格納される。直進ギヤ機構117は、副変速装置151と、駐車ブレーキ152と、を有する。副変速装置151は、直進電動モータ111の直進モータ軸111aに設けられた直進駆動ギヤ111bと噛合する入力用ギヤ153を固定した直進入力軸である直進用第1軸154と、該直進用第1軸154と平行な直進出力軸である直進用第2軸157と、両軸間を連結自在とする副変速ギヤ列を構成する変速ギヤ機構155と、を備える。
【0036】
直進用第1軸154は、直進入力軸であり、変速ギヤ機構155を構成する径の異なる複数の駆動ギヤ155a・156aが相対回転不能に固定支持されている。
【0037】
また、直進用第2軸157は、直進出力軸であり、副変速ギヤ列を構成する変速ギヤ機構156を構成する、駆動ギヤ155a・156aの各々と常時噛合する被駆動ギヤ155b・156bが相対回転可能に嵌設されている。さらに、直進用第2軸157にはクラッチスライダ160を相対回転不能でかつ軸方向に摺動自在に備え前記被駆動ギヤ155b・156bのいずれかと選択的に係合することにより、直進用第1軸154からの回転動力を変速して直進用第2軸157へと伝達することが可能となっている。クラッチスライダ160は、図示せぬ変速操作レバーと連動連係しており、オペレータの操作により変速ギヤ機構155の切り替えが行われる。なお、本実施例において変速ギヤ機構は2速式としたが車両の仕様に応じて3速切替式に構成することもできる。
【0038】
直進用第2軸157の軸長方向の略中間位置には、出力用の大径ギヤ161が相対回転不能に固定支持されている。変速ギヤ機構155は大径ギヤ161の一方側に配置される。大径ギヤ161はサンギヤ軸162の入力ギヤ163に噛合する。サンギヤ軸162は左右の遊星ギヤ機構113L・113Rの直進系入力部を構成し、後述する旋回系入力部が駆動されないときは、直進電動モータ111の動力を左右走行装置の駆動輪115L・115Rに伝えて前進または後進駆動する。
【0039】
左右の遊星ギヤ機構113L・113Rは、サンギヤ軸162の両端部に形成するサンギヤ181・181と、出力軸119L・119Rに遊嵌支持させるリングギヤ182・182と、出力軸119L・119Rに対し相対回転不能に固定させるキャリヤ183・183と、各々のサンギヤ181とリングギヤ182の内側ギヤ182aに噛合させる遊星ギヤ184・184を備えるとともに、サンギヤ軸162の両端部をキャリヤ183・183に回転自在に支持させる。また、遊星ギヤ184・184は、キャリヤ183・183に固定されたピニオン軸185に遊嵌支持させる。
【0040】
直進用第1軸154からの直進用回転動力は、サンギヤ軸162から左右の遊星ギヤ機構113L・113Rのサンギヤ181に伝達され、遊星ギヤ184を回転(自転)させる。
【0041】
このとき、旋回電動モータ112に直結されたブレーキ機構112cが作動して軸回動を停止させると、リングギヤ182・182は回転不能となるため遊星ギヤ184・184は公転し左右のキャリヤ183・183が同一方向に回転することとなり、直進用回転動力は一対の出力軸119L・119Rを同一回転速度且つ同一回転方向で駆動して、駆動軸114L・114Rを駆動する。
【0042】
旋回電動モータ112の旋回モータ軸112aから旋回駆動ギヤ112bを経て出力される旋回用回転動力は旋回ギヤ機構118に伝達される。旋回モータ軸112aの中途部には、下流の回転を停止可能とするブレーキ機構112cが設けられている。
旋回ギヤ機構118は、互いに平行な旋回入力軸である旋回用第1軸192と旋回出力軸である旋回用第2軸196とを備える。旋回用第1軸192は、旋回モータ軸112aから動力が伝達される、中空軸形状の旋回入力軸であり、前記大径ギヤ161の他方側にある直進用第2軸157と同一軸心上に被嵌されるように支持されている。このように構成することにより、旋回用第1軸192を配置するスペースが不要とされる。また、ミッションケースには旋回用第1軸192を支持するための軸受も不要とされる。したがってミッションケースのレイアウトに余裕が生まれ小型化を図ることができる。
【0043】
旋回用第1軸192の他端側には入力ギヤ193が、一端側には出力ギヤ195がそれぞれ一体形成されている。該入力ギヤ193は旋回駆動ギヤ112bに噛合し、出力ギヤ195は、旋回用第2軸196の第2軸側入力ギヤ197に噛合している。
【0044】
旋回用第2軸196は、旋回用第1軸192からの動力を左右の遊星ギヤ機構113L・113Rに分配する旋回出力軸であり、直進用第1軸154と同一軸心上であって軸長さ方向に重なるように配置されている。このように構成することにより、旋回用第2軸196を配置するスペースが縮小される。したがって、ミッションケースのレイアウトに余裕が生まれ小型化を図ることができる。
【0045】
また、旋回用第2軸196には、左右の遊星ギヤ機構113L・113Rへ動力を伝達するための第1出力ギヤ198および第2出力ギヤ199が、大径ギヤ161を挟むように設けられている。第1出力ギヤ198は、アイドルギヤ200を介して左側のリングギヤ182の外側ギヤ182bと噛合する。また、第2出力ギヤ199は、右側のリングギヤ182の外側ギヤ182bと直接噛み合う。
【0046】
なお、アイドルギヤ200は、大径ギヤ161の一方側に隣接して、直進用第2軸157と同一軸心上に重なるように遊嵌支持されている。このように構成することにより、アイドルギヤ200を配置するスペースが縮小される。したがってミッションケース116のレイアウトに余裕が生まれ小型化を図ることができる。
【0047】
旋回電動モータ112の旋回モータ軸112aから出力される旋回用回転動力は、旋回駆動ギヤ112bから入力ギヤ193より、旋回用第1軸192に伝達される。旋回用第1軸192から出力される旋回用回転動力は、第1軸側出力ギヤ195と噛合する第2軸側入力ギヤ197へ伝達され、旋回用第2軸196へ伝達される。
【0048】
旋回用第2軸196から出力される旋回用回転動力は、左右に分配される。左側の旋回用回転動力は、第1出力ギヤ198、アイドルギヤ200、およびリングギヤ182の外側ギヤ182bによって、左側の遊星ギヤ機構113Lに正転方向に伝達される。一方、右側の旋回用回転動力は、第2出力ギヤ199からリングギヤ182の外側ギヤ182bによって、右側の遊星ギヤ機構13Rに直接に伝達される。
【0049】
したがって、旋回電動モータ112の旋回モータ軸112aから出力される旋回用回転動力は、一対の遊星ギヤ機構113L・113Rのリングギヤ182・182を、同一回転速度ではあるが、回転方向については互いに対して反対とされた状態で駆動する。
【0050】
直進状態において、図示せぬ操向操作具によって旋回操作がなされたときは、キャリヤ183に連動するリングギヤ182が、同方向に回転している側の該キャリヤ183を増速させると共に、逆方向に回転している側のキャリヤ183を減速させる。操向操作具の操作量を大きくして旋回電動モータ112の出力回転を上げていくにつれて、両キャリヤ183・183(出力軸119L・119R)の差動回転は大きくなり車両の旋回半径を小さくすることができる。
【0051】
(第三の実施形態)
また、第三の実施形態として、
図5及び
図6に示すように、直進用動力を供給する直進電動モータ111と、直進ギヤ機構117との間に遊星歯車機構211を設ける構成とし、また、旋回用動力を供給する旋回電動モータ112と、旋回ギヤ機構118との間に遊星歯車機構212を設ける構成としてもよい。
【0052】
図6に示すように、直進電動モータ111はトランスミッション101の右方に配置されており、旋回電動モータ112はトランスミッション101の左方に配置されている。このように、トランスミッション101を中心として、直進電動モータ111と旋回電動モータ112とが左右に配置されていることにより、左右のバランスがとれて、搭載性が向上する。
【0053】
遊星歯車機構211は、直進電動モータ111の直進モータ軸111aと連結するサンギヤ軸222の端部に形成するサンギヤ223と、出力軸224に回動支持されて、軸方向周りに相対回転不能にケース内に固定されるリングギヤ225と、出力軸224に対し相対回転不能に固定させるキャリヤ226と、サンギヤ223とリングギヤ225の内側ギヤ225aに噛合させる遊星ギヤ227を備えるとともに、サンギヤ軸222の他端をキャリヤ226に回転自在に支持させる。また、遊星ギヤ227は、キャリヤ226に固定されたピニオン軸228に遊嵌支持させる。
【0054】
直進電動モータ111の駆動力は、直進モータ軸111aと連結するサンギヤ軸222からサンギヤ223に伝達され、遊星ギヤ227を回転させる。遊星ギヤ227は、リングギヤ225の内側ギヤ225aと噛合しており、自転しながらキャリヤ226の固定された出力軸224を中心に公転する。これにより、直進電動モータ111の駆動力が減速されて出力軸224へ伝達される。出力軸224に設けられた直進駆動ギヤ224aは、直進用第3軸230に設けられた入力用ギヤ229に噛合される。直進用第3軸230の出力用ギヤ231は、入力用ギヤ153に噛合される。
【0055】
このように構成することにより、出力軸224からの出力は高いトルクを実現することができるため、直進電動モータ111を小型にしても、高トルク出力を実現することができるのである。
【0056】
また、遊星歯車機構212は、旋回電動モータ112の旋回モータ軸112aと連結するサンギヤ軸242を備える。遊星歯車機構212は、サンギヤ軸242の端部に形成するサンギヤ243と、出力軸244に支持させて、軸方向周りに相対回転不能にケース内に固定されるリングギヤ245と、出力軸244に対し相対回転不能に固定させるキャリヤ246と、サンギヤ243とリングギヤ245の内側ギヤ245aに噛合させる遊星ギヤ247を備えるとともに、サンギヤ軸242の他端をキャリヤ246に回転自在に支持させる。また、遊星ギヤ247は、キャリヤ246に固定されたピニオン軸248に遊嵌支持させる。
【0057】
旋回電動モータ112の駆動力は、旋回モータ軸112aと連結するサンギヤ軸242からサンギヤ243に伝達され、遊星ギヤ247を回転させる。遊星ギヤ247は、リングギヤ245の内側ギヤ245aと噛合しており、自転しながらキャリヤ246の固定された出力軸244を中心に公転する。これにより、旋回電動モータ112の駆動力が減速されて出力軸244へ伝達される。出力軸244に設けられた旋回駆動ギヤ244aは、旋回用第3軸250に設けられた入力用ギヤ249に噛合される。旋回用第3軸250の出力用ギヤ251は、入力ギヤ193に噛合される。また、旋回用第3軸250には、旋回用第3軸250の回転を停止させるための旋回用ブレーキ252が設けられている。
【0058】
このように構成することにより、出力軸244からの出力は高いトルクを実現することができるため、旋回電動モータ112を小型にしても、高トルク出力を実現することができるのである。
【0059】
(第四の実施形態)
また、別の実施形態として、直進用動力を供給する直進電動モータ111と、直進ギヤ機構117との間に遊星歯車機構211を設ける構成とし、また、旋回用動力を供給する旋回電動モータ112と、旋回ギヤ機構118との間に遊星歯車機構212を設ける構成とする。さらに、遊星歯車機構211のリングギヤ225を出力軸244に対して遊嵌支持させて、リングギヤ245の外側ギヤ245bに、作業用原動機261からの動力を伝達させる構成としてもよい。
【0060】
遊星歯車機構211は、直進電動モータ111の直進モータ軸111aと連結するサンギヤ軸222の端部に形成するサンギヤ223と、出力軸244に対して遊嵌支持されるリングギヤ225と、出力軸224に対し相対回転不能に固定させるキャリヤ226と、サンギヤ222とリングギヤ225の内側ギヤ225aに噛合させる遊星ギヤ227を備えるとともに、サンギヤ軸222の他端をキャリヤ226に回転自在に支持させる。また、遊星ギヤ227は、キャリヤ226に固定されたピニオン軸228に遊嵌支持させる。
【0061】
直進電動モータ111の駆動力は、直進モータ軸111aと連結するサンギヤ軸222からサンギヤ223に伝達され、遊星ギヤ227を回転させる。遊星ギヤ227は、リングギヤ225の内側ギヤ225aと噛合しており、自転しながらキャリヤ226の固定された出力軸224を中心に公転する。これにより、直進電動モータ111の駆動力が減速されて出力軸224へ伝達される。出力軸224に設けられた直進駆動ギヤ224aは、直進用第3軸230に設けられた入力用ギヤ229に噛合される。直進用第3軸230の出力用ギヤ231は、入力用ギヤ153に噛合される。
【0062】
一方、作業用原動機261からの動力は出力プーリ262、出力ベルト263および入力プーリ264を介して、作業用動力入力ギヤ265と噛合するリングギヤ225の外側ギヤ225bに伝達される。リングギヤ225の回転により、同方向に回転している側のキャリヤ226を増速させる。これにより、作業用原動機261の駆動力を補助的に直進用動力に用いることができるのである。
【0063】
また、遊星歯車機構212は、旋回電動モータ112の旋回モータ軸112aと連結するサンギヤ軸242を備える。遊星歯車機構212は、サンギヤ軸242の端部に形成するサンギヤ243と、出力軸224に遊嵌支持されるリングギヤ245と、出力軸244に対し相対回転不能に固定させるキャリヤ246と、サンギヤ243とリングギヤ245の内側ギヤ245aに噛合させる遊星ギヤ247を備えるとともに、サンギヤ軸242の他端をキャリヤ246に回転自在に支持させる。また、遊星ギヤ247は、キャリヤ246に固定されたピニオン軸248に遊嵌支持させる。
【0064】
旋回電動モータ112の駆動力は、旋回モータ軸112aと連結するサンギヤ軸242からサンギヤ243に伝達され、遊星ギヤ247を回転させる。遊星ギヤ247は、リングギヤ245の内側ギヤ245aと噛合しており、自転しながらキャリヤ246の固定された出力軸244を中心に公転する。これにより、旋回電動モータ112の駆動力が減速されて出力軸244へ伝達される。出力軸244に設けられた直進駆動ギヤ244aは、旋回用第3軸250に設けられた入力用ギヤ249に噛合される。旋回用第3軸250の出力用ギヤ251は、入力ギヤ193に噛合される。
【0065】
このように構成することにより、出力軸244からの出力は高いトルクを実現することができるため、旋回電動モータ112を小型にしても、高トルク出力を実現することができるのである。
【0066】
次に走行車両用のトランスミッション1、101を搭載する走行車両の実施形態について以下に説明する。
【0067】
本実施形態における走行車両は、
図8に示されるクローラ走行車301であってもよい。
図8に示されるクローラ走行車301は、第二の実施形態に係るトランスミッション101を備えている。
クローラ走行車301は、車体左右に配置された駆動輪であるスプロケット115L・115R及び従動スプロケット303と、スプロケット115L・115R及び従動スプロケット303に巻回されている無端状のクローラ304と、を有する。スプロケット115L・115Rは、駆動源である直進電動モータ111及び旋回電動モータ121によって駆動する。直進電動モータ111及び旋回電動モータ112は、左右に一つずつ配置されている。
【0068】
直進電動モータ111及び旋回電動モータ112は、車両前方中央部に配置されたバッテリ310に接続されている。バッテリ310と直進電動モータ111及び旋回電動モータ112との間には直流電流を交流電流に変換するためのインバータ311・311が設けられている。バッテリ310からインバータ311・311を介して交流電流が直進電動モータ111及び旋回電動モータ112に供給されることにより、直進電動モータ111及び旋回電動モータ112が駆動する。
【0069】
また、本実施形態における走行車両は、
図9に示される作業部331を有する四輪作業車321であってもよい。
図9に示される四輪作業車321は、第三の実施形態に係るトランスミッション101を備えている。作業部331は車両前部に設けられており、バケットのような土砂を運搬する器具で構成されている。作業部331は、バケットの他に、排土板であってもよい。
四輪作業車321は、車体前後左右に四か所配置された駆動輪332を有する。駆動輪332は、駆動源である直進電動モータ111及び旋回電動モータ112によって駆動する。車体の左右に配置された前後の駆動輪332の間には、動力伝達機構333が設けられている。動力伝達機構333は、前後方向中央部に配置され、トランスミッション101のからの駆動力を出力するスプロケット115L・115Rと、前後の駆動輪332の駆動軸332aに設けられた従動スプロケット332bと、スプロケット115L・115Rと、従動スプロケット332bとの間に巻回されたチェーン335と、を備えている。トランスミッション101の出力は、スプロケット115L・115Rに伝達され、スプロケット115L・115Rから、チェーン335を介して前後の駆動輪332に同方向の回転力として伝達される。
【0070】
また、直進電動モータ111及び旋回電動モータ112は、左右に一つずつ配置されている。本実施形態においては、直進電動モータ111及び旋回電動モータ112は、図示せぬバッテリに接続されている。前記バッテリからインバータを介して交流電流が直進電動モータ111及び旋回電動モータ112に供給されることにより、直進電動モータ111及び旋回電動モータ112が駆動する。また、直進電動モータ111と、直進ギヤ機構117との間に遊星歯車機構211を設ける構成とし、旋回電動モータ112と、旋回ギヤ機構118との間に遊星歯車機構212を設ける構成とする。これにより、スプロケット115L・115Rからの出力は高いトルクを実現することができるため、直進電動モータ111及び旋回電動モータ112を小型にしても、高トルク出力を実現することができるのである。
【0071】
本実施形態における走行車両は、
図10に示される四輪運搬車341であってもよい。
図10に示される四輪運搬車341は、第二の実施形態に係るトランスミッション101を備えている。
四輪運搬車341は、車体前後左右に四か所配置された後輪351および前輪352を有する。四輪運搬車341は四輪駆動である。四輪運搬車341は、車体左右に配置されたスプロケット115L・115R及び従動スプロケット353と、スプロケット115L・115R及び従動スプロケット353に巻回されているチェーン354と、を有する。スプロケット115L・115Rは、駆動源である直進電動モータ111及び旋回電動モータ121によって駆動する。直進電動モータ111及び旋回電動モータ112は、左右に一つずつ配置されている。
【0072】
スプロケット115L・115Rは直接駆動輪351に接続されており、後輪351を駆動する。また、従動スプロケット353は、前輪352の車軸352aに接続されている。
【0073】
直進電動モータ111及び旋回電動モータ112は、車両前方中央部に配置されたバッテリ310に接続されている。バッテリ310と直進電動モータ111及び旋回電動モータ112との間には直流電流を交流電流に変換するためのインバータ311・311が設けられている。バッテリ310からインバータ311・311を介して交流電流が直進電動モータ111及び旋回電動モータ112に供給されることにより、直進電動モータ111及び旋回電動モータ112が駆動する。
【0074】
本実施形態における走行車両は、
図11に示される三輪運搬車361であってもよい。
図11に示される三輪運搬車361は、第二の実施形態に係るトランスミッション101を備えている。
三輪運搬車361は、車体後部に二か所配置された後輪371と、車体前部に一か所配置された前輪372を有する。三輪運搬車361は後輪駆動である。三輪運搬車361は、駆動源である直進電動モータ111及び旋回電動モータ112によって駆動する。直進電動モータ111及び旋回電動モータ112は、左右に一つずつ配置されている。
【0075】
トランスミッション101からの出力は左右の駆動軸373L・373Rから直接後輪371に伝達されており、後輪371を駆動する。また、前輪372は軸支部374によって揺動自在にされている。
【0076】
直進電動モータ111及び旋回電動モータ112は、車両前方中央部に配置されたバッテリ310に接続されている。バッテリ310と直進電動モータ111及び旋回電動モータ112との間には直流電流を交流電流に変換するためのインバータ311・311が設けられている。バッテリ310からインバータ311・311を介して交流電流が直進電動モータ111及び旋回電動モータ112に供給されることにより、直進電動モータ111及び旋回電動モータ112が駆動する。
【0077】
本実施形態における走行車両は、
図12に示される381であってもよい。
図12に示される四輪運搬車381は、第二の実施形態に係るトランスミッション101を前後に二つ備えている。
四輪運搬車381は、アティキュレートタイプの車両であり前車体と後車体との間にジョイント部391を備え、ジョイント部を中心にして前車体392Aおよび後車体392Bが独立に移動可能に構成されている。前車体392Aおよび後車体392Bは、連結シリンダ393により相対移動可能に連結されている、またジョイント部391は、回動軸391aを有し、回動軸391aを中心として、前車体392Aと後車体392Bとが移動可能としている。前車体392Aおよび後車体392Bには後輪394および前輪395を有する。四輪運搬車381は四輪駆動である。四輪運搬車381は、駆動源である直進電動モータ111及び旋回電動モータ112を前後に一つずつ計2個設けている
【0078】
後車体392Bに配置されたトランスミッション101からの出力は左右の駆動軸396L・396Rから直接後輪394に接続されており、後輪394を駆動する。また、前車体392Aに配置されたトランスミッション101からの出力は左右の駆動軸397L・397Rからは直接前輪395に接続されており、前輪395を駆動する。
【0079】
前後に配置された直進電動モータ111及び旋回電動モータ112は、それぞれ前車体392Aおよび後車体392Bに配置されたバッテリ398、398に接続されている。バッテリ398、398と直進電動モータ111及び旋回電動モータ112との間には直流電流を交流電流に変換するためのインバータ399・399がそれぞれ設けられている。バッテリ398からインバータ399・399を介して交流電流が直進電動モータ111及び旋回電動モータ112に供給されることにより、直進電動モータ111及び旋回電動モータ112が駆動する。なお、バッテリ398及びインバータ399は一つの装置を用いることにより、前後の直進電動モータ111及び旋回電動モータ112で共通化してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 トランスミッション
11 直進用HST
12 旋回用HST
13L・13R 遊星ギヤ機構
14L・14R スプロケット軸
16 ミッションケース
17 直進ギヤ機構
18 旋回ギヤ機構
19L・19R 出力軸
31 直進ポンプ
32 直進モータ
32a 変速モータ軸
41 旋回ポンプ
42 旋回モータ
42a 旋回モータ軸
51 副変速装置
54 直進用第1軸(直進入力軸)
55 変速ギヤ機構(副変速ギヤ列)
56 変速ギヤ機構(副変速ギヤ列)
57 直進用第2軸(直進出力軸)
62 サンギヤ軸
81 サンギヤ
82 リングギヤ
83 キャリヤ
84 遊星ギヤ
92 旋回用第1軸(旋回入力軸)
96 旋回用第2軸(旋回出力軸)
101 トランスミッション
111 直進電動モータ
111a 直進モータ軸
111b 直進駆動ギヤ
112 旋回電動モータ
112a 旋回モータ軸
112b 旋回駆動ギヤ
112c ブレーキ機構
113L・113R 遊星ギヤ機構
114L・114R 駆動軸
116 ミッションケース
117 直進ギヤ機構
118 旋回ギヤ機構
119L・119R 出力軸
151 副変速装置
154 直進用第1軸(直進入力軸)
155 変速ギヤ機構(副変速ギヤ列)
156 変速ギヤ機構(副変速ギヤ列)
157 直進用第2軸(直進出力軸)
162 サンギヤ軸
181 サンギヤ
182 リングギヤ
183 キャリヤ
184 遊星ギヤ
192 旋回用第1軸(旋回入力軸)
196 旋回用第2軸(旋回出力軸)
211 遊星歯車機構
212 遊星歯車機構
222 サンギヤ軸
223 サンギヤ
225 リングギヤ
226 キャリヤ
227 遊星ギヤ
230 直進用第3軸
242 サンギヤ軸
243 サンギヤ
245 リングギヤ
246 キャリヤ
247 遊星ギヤ
250 旋回用第3軸
252 旋回用ブレーキ
261 作業用原動機
262 出力プーリ
263 出力ベルト
264 入力プーリ
301 クローラ走行車
321 四輪作業車
341 四輪運搬車
361 三輪運搬車
381 四輪運搬車